Heart to Heart 外伝
       To Heart 編

           
「がんばれ 矢島君」







 最近、俺はちょっと焦ってきている。

 ――え?
 何を焦っているのか、って?

 そりゃもちろん、高校三年にもなって、
いまだに彼女がいないっていう事実に決まってるじゃねーか。

 高校生活も残りあと一年――

 このままでは、入学当時予定していたバラ色の学生ライフが、
灰色に染まってしまう。

 ……ちくしょう。
 何でこんなことになっちまってるんだ?

 俺って、バスケやってるから背は高いし、爽やかなスポーツマンだし、
顔だって良い部類に入るはずだ。

 それなのに、何故、俺には彼女が出来ないんだっ?!


 ………………。

 …………。

 ……。


 …………そう。
 分かっているんだ。

 原因は、もうすでに分かっているんだ。

 ――藤田 浩之。

 こいつが、俺の不幸の全ての元凶なんだ。

 去年、俺は憧れの神岸さんに告白する為に、彼女の幼馴染みである藤田に仲介を頼んだ。
 藤田は、神岸さんとは別に付き合っているわけじゃなさそうだったしな。

 で、あいつは少々渋ったものの、俺の頼みを引き受けてくれた。

 この時、俺は心底、藤田に感謝した。
 本気で、コイツはいい奴だと思った。

 それなのに……、
 ああ、それなのに……、

 ――ちくしょうっ!!
 何が『あいつには他に好きな奴がいるらしい』だっ!!
 その『好きな奴』って、テメェのことじゃねーかっ!!

 しかも、よく分かんねーけど、
その一件の後、藤田と神岸さん、前以上に仲良くなりやがったし……、

 これじゃあ、まるで俺が二人の仲を取り持ったみたいじゃねーか。

 ちくしょう! ちくしょう! どちくしょう!
 俺って、とんだピエロ野郎じゃねーかっ!!

 思えば、この時からだ。
 俺の高校ライフにケチがつき始めたのは……、

 神岸さんと藤田が公認のカップルになってからというもの、
神岸さんはそれまで以上に藤田にベッタリになるし……、

 いつの間にか、俺、神岸さんに名前まで忘れられるし……、

 クジ引きで席替えして、運良く神岸さんの隣になったってのに、
気を利かしたつもりなのか、藤田の隣になった奴が、
神岸さんと席を交代するなんて余計な真似しやがるし……、

 で、さすがに、もう神岸さんに俺の想いは届かないかも、と、
半ば諦めかけていた俺は、今度は一年生の間で可愛いと噂されている、
とある二人の女の子に、アタックしてみることにした。

 しかし、そこで俺は、第二の敵に遭遇した。

 藤井 誠――

 俺がアタックした二人の一年生、園村さんと河合さんは、
二人してコイツの事が好きだと言いやがった。

 ……まあ、それは良いとしよう。
 他に好きな奴がいるのなら、それは仕方ないからな。

 ただ許せんのは、その藤井という奴は、
園村さんと河合さんの二人を恋人にしているということだっ!

 ――なんて奴だっ!
 男の風上にも置けない羨ましい……じゃなくて、最低な奴だっ!!

 どうして、あの二人は、あんな最低な奴が好きなんだ?
 ってゆーか、二股かけられてるのに、何で平気でいられるんだ?

 どうして……どうして……、
 あんな奴にさえ可愛い恋人がいるのに、俺には一人もいないんだっ!!

 ちくしょうっ!! 世の中、不公平だっ!!
 絶対に間違ってるっ!!!

 ……こうなったら、最後の手段だ。

 男として、こんな軽薄な真似はしたくなかったが、
残された高校生活をバラ色のものにするために、俺は敢えてあの禁断の手段を取るっ!!

 即ち……
ナンパだっ!!

 別に、神岸さんを諦めたわけじゃないが、
これから楽しい学生生活を送る為、背に腹は替えられないからな。

 ふっふっふっふっ……、
 今日からの俺は今までの俺とは違うぜっ!!

 待ってろよっ!! まだ見ぬ可愛い女の子達っ!!
 今、俺がキミ達の前に颯爽と現れてあげるからなっ!!
















 というわけで、一念発起した俺は、可愛い恋人をゲットするために、
意気揚々と街へと繰り出したのだった。








 ……さて、誰に声を掛けるかな?


あんなところに俺と同じ高校の制服を着た美少女がっ!
金髪で、小柄で……でも、この学校にあんな子いたっけ?
エリア・ノース
おおっ!! あそこに買い物帰りの女の子発見っ!
まるでフランス人形のように可愛い子だっ!
フランソワーズ
う〜ん……年上の女性ってのもいいよな。
例えば、あそこにいるお姉さん達なんか……、
園村 はるか
河合 あやめ
うおおっ! 神岸さんそっくりの女性がいるではないかっ!
もしかして、お姉さん? とにかく、声を掛けねばっ!
神岸 ひかり
そういえば、商店街に新しく出来た食堂に、
可愛い子がいるって噂を聞いた事が……行ってみるか?
ホシノ・ルリ

むむっ! あそこに人待ち顔の巨乳美女がっ!!
よっしゃっ! あの巨乳は俺のモンじゃぁぁぁぁーーーっ!!

保科 智子

う〜む……ただ闇雲に歩き回っても意味無いな。
よし! まずは情報収集だ! 適当なコンビニにでも……、

アレイ

とりあえず、人通りの多い駅前にでも行ってみるか。
おっ! あそこにキョロキョロとしているおかっぱ頭の美少女がっ!

柏木 楓

ほお……寺女の生徒か。もしかしたら、俺に似合う女の子がいるかもな。
ぬぬぬっ! あの美人こそ、この俺の運命の女性に違いないぞっ!

来栖川 綾香









<STEVENからのお願い>

 このSSは、見て分かる通り分岐式です。

 各パートで、矢島君の見事なフラれっぷりor自爆っぷりを書いていこう思っています。
 ですが、やり方次第では、上記のもの以外にも選択肢を増やしていける筈です。

 そこで、矢島君が誰に声を掛けるのか、その選択肢のリクエストを募集しようと思います。
 また、各パートの投稿も募集します……というか、誰か書いてください。<(_)>

 あと、このSSは性質上、完全に矢島君をイジメ抜いてしまう内容です。
 というわけで、全国の矢島君ファンの皆様には、前もって謝罪させて頂きます。

 でわでわー。

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