<B.フランソワーズの場合>
「おおっ!! あそこに買い物帰りの女の子発見っ!」
街へナンパに繰り出した俺は、
まずはこの近辺で一番人通りの多い商店街へとやって来た。
そこをブラブラと歩きつつ、通り過ぎていく女の子達をさり気なく物色していると、
早速、俺は買い物が帰りであろう女の子を発見した。
スーパーの袋を持った、華奢な体付きの金髪美少女だ。
いや……可愛いだけじゃない。
その物腰はとても清楚かつ上品で、容姿と相俟って、まるでフランス人形のようだ。
よっしゃっ!! 俺ってついてるぜっ!!
ナンパを初めていきなり、あんなに可愛い子を発見するなんてっ!
では……レッツ・トライッ!!
「やあやあ、重そうだねぇ」
「――はい?」
俺は早速、彼女に歩み寄ると、まずは友好的な態度で彼女に話し掛けた。
だが、決して馴れ馴れしくはしない。
こういうのは、第一印象が肝心だからな。
突然、俺のようなイイ男に話し掛けられて戸惑っているのだろう。
彼女はキョトンとした顔で俺を見上げている。
ふっふっふっふっ……、
わかるっ! わかるぞっ!!
一見、彼女は無表情にも見えるが、
内心では、俺のあまりのカッコ良さに乙女心をときめかせて……、
……って、んんっ?
彼女と面と向かい合って、
俺はようやく、彼女が普通じゃない事に気が付いた。
この子……人間じゃない?
もしかして、メイドロボって奴か?
なんてこったいっ!!
俺って奴は、ロボットを口説こうとしていたのかっ!
まったく、一年の『マルチ』とかいうメイドロボと一緒に暮らしているような、
メカフェチの藤田じゃあるまいし、こんな……こんな……、
………………。
…………。
……。
――ま、いいか。(爆)
こんなに可愛いんだから、ロボットだろうが何だろうが構うものか。
人間とロボットとの間に生まれた禁断の愛!
おおっ……なんとロマンチックな響きであろうか!
それに、メイドロボならば、それはそれで好都合だ。
こんなに可愛い子がメイド服着て……、
『ご主人様(はぁと)』――
……なんて呼んでくれたりしたら、俺はもう死んでもいいぞ。
「ぐふ……ぐふふふ……♪」
「あ、あの……もしもし? 何かご用でしょうか?」
それに、それに……、
俺はご主人様なわけだから、どんな事だって要求できるわけで……、
となれば、あ〜んなことだって夢ではないっ!
いや、それどころか、そ〜んなことまでっ!
「……ふっふっふっふっ」(じゅる)
「…………」(汗)
最初の内は、ご主人様に言われるまま御奉仕するメイドも、
いつしかそれが悦びに変わっていって……、
そして、ついにはメイドの方が積極的に……、
「お〜い、フラン! 何やってるんだ?」
「あ……何故、誠様がここに?」
「何故って……今夜は俺ン家に来るって言ってたのに、
時間になっても来ないから迎えに来たんだよ」
「心配をおかけして申し訳ありません」
「お前が時間に遅れるなんて珍しいな。何かあったのか?」
「は、はい……実はこちらの方が……」
「――あ?」
毎晩のように続くご主人様とメイドの愛に満ちた日々――
そして、ついにご主人様とメイドという立場を越え、
二人の関係は生涯の伴侶となり、幸せな家庭を……、
くっくっくっくっくっ……、
いいぞっ!! バラ色の未来が見えてきたぜっ!!
「……何やってんだ? この馬鹿は」
「お知り合いなのですか?」
「……いや、全然、まったく、これっぽっちも知らない奴だ」
「そうですか」
「とにかく、サッサと帰ろうぜ。腹減っちまったよ」
「くすっ♪ そうですね。すぐに晩御飯をお作りしますから」
「あ、それと、一応、注意しとくけど、ああいう変質者には気をつけろよ。
まあ、お前なら、大抵の人間は撃退出来るだろうけどな」
「はあ……ですが、ワタシが変質者等に狙われる理由はありませんが?」
「何言ってんだ。お前は可愛いんだから…………あっ!」
「……ま、誠……様?」
「…………」(真っ赤)
「…………」(もっと真っ赤)
「え、え〜っと……そういえば、今日の晩メシは何なんだ?」
「こ、今夜はですね、フランソワーズ特製のコロッケです」(ポッ☆)
「そ、そうか。そいつは楽しみだなぁ……あははははは」
「は、はい。楽しみにしていてください……」(ポポッ☆)
そうだなぁ……、
やっぱり、子供は男の子と女の子が一人ずつかな。
あ、でも、メイドロボなんだから、さすがに子供は無理か。
まあ、そのへんは二人の愛の力でなんとでもなるだろう。
あとは、ペットも飼いたいかな。
王道としては犬だか、猫も捨て難いし……、
……ああ、夢が膨らむなぁ〜♪
「……ヤマダさん、こっちです」
「俺の名前はダイゴウジ・ガイだっ!!」
「それは分かりましたから、早くこの怪しい人を捕まえてください。
こんな人が道の真ん中で不気味に笑っていたら、怖くて外を歩けません」
「おうっ! 分かってるって! あとは俺に任せとけっ!」
「それでは、よろしくお願いしますね」
「じゃあな、アキトにも、もう安心だって言っておいてくれ。
……しかしまあ、ルリ坊の言ってた通り、いかにも変質者だな。
おい、お前っ! 職務質問だっ! 俺の話を聞けっ!」
……俺と彼女の娘なんだから、きっと可愛いんだろうなぁ。
しかも、かなりの甘えん坊で、中学生になっても、
まだパパと一緒にお風呂に入りたがったりして……、
いかん、いかんなぁ。
そういうイケナイ子には、父親としてちょっとお仕置きをしてあげないと……、
「……返事は無し、か。まあ、いいや。
おいっ! 取り敢えず、ちょっと交番まで来てもらうからなっ!」
「ほらほら〜……おいたするイケナイ子はお仕置きだぞ〜」
「何をブツブツ言ってやがるっ!
おらっ! キリキリ歩けっ! この曲がった性根をキッチリ叩き直してやるからなっ!」
それから、しばらくして――
……気が付くと、俺はいつの間にか、交番でカツ丼を食べながら、
暑苦しい男に変なアニメを見せられていた。
――あれ?
どうなってんだ?
あの子はどこに行ってしまったんだ?
何で、俺、こんなトコにいるんだ?
ハッキリ言って、訳の分からない事だられだった。
ただ、一つだけ……、
ハッキリと分かっていることは……、
俺……、
もしかして、補導されたの?
<フランソワーズ編 おわり>
――さあ、この後、どうする?