<F.保科 智子の場合>
「おおっ!! あそこに人待ち顔の女の子発見っ!」
街へナンパに繰り出した俺は、駅前へとやって来た。
そこで人を待っているように装いながら女の子達をさり気なく物色していると、
早速、俺は人を待っているであろう女の子を発見した。
長い髪が綺麗な胸の大きい美少女だ。
よっしゃっ!! 俺ってついてるぜっ!!
ナンパを初めていきなり、あんなに可愛い子を発見するなんてっ!
というわけで、いざ、レッツ・トラ……ちぃっ! 先に声かけた野郎が……、
って、あれは藤田の野郎じゃねーかっ!!
あの野郎、神岸さんという人がありながら、あの巨乳まで手に入れようというのかっ!!
ゆるせんっ!! 邪魔してやるっ!!
「おい、ふじ……ん?」
おっ、藤田の奴、どっか行ったぞ。
さてはフラレたな、いい気味だ。
さて、気を取り直して……レッツ・トライッ!!
「やあ、待ち合わせの相手、なかなか来ないみたいだね?」
「……はぁ?」
俺は早速、彼女に歩み寄ると、まずは友好的な態度で彼女に話し掛けた。
もちろん、歯をキラーンと光らせるのも忘れない。
ちなみに、この技は、普通の男がどんなに頑張って歯を磨いても使えやしない。
俺のようなイイ男にしか使えない必殺技なのだ。
まあ、それはともかく……、
突然、俺のようなイイ男に話し掛けられて戸惑っているのだろう。
彼女はキョトンとした顔で俺を見上げている。
ふっふっふっふっ……、
わかるっ! わかるぞっ!!
一見、彼女は呆れているようにも見えるが、
内心では、俺のスマイルボンバーにすっかりまいってしまっているに……、
……はて?
彼女と面と向かい合って、
俺はようやく、彼女に見覚えがあることに気が付いた。
この子……どこかで会ったことがある?
もしかして、同じ学校の生徒?
なんてこったいっ!!
俺って奴は、同じ学校の生徒をナンパしようとしていたのかっ!
…………。
……ま、いいか。
彼女が同じ学校なら、それはそれで好都合だ。
こんなに可愛い子が体操服とブルマ姿で、放課後の体育倉庫で……、
そして、俺はあの巨乳を飽きる事無く……、
いいっ! いいぞっ!!
やはり体育倉庫での……は漢の浪漫だぜっ!!
「ぐふ……ぐふふふ……♪」
「ちょっと……なにか用があるんと違うの?」
…………はっ!!
いかんいかん。ちょっとトリップしていたようだ。
こんなところで妄想に耽ってたら変質者に間違えられちまうからな。
俺の悪い癖だ……気をつけないと。
「あ、ごめん。 キミのあまりの美しさに見とれてたんだよ」
「はぁ? 何言うてんの。 あんたどっかで頭うったんと違う?」
「その大阪弁も可愛いよ」
「大阪と違うっ!! 神戸や」
んんっ? 今の台詞聞いたことがあるような……、
でも、俺の知り合いで、こういう言葉遣いするのって……、
「あれ? 矢島じゃねーか。 何してんだ?」
「あっ、藤田君、このアホなんとかしてくれへん?」
何っ!? 藤田だとっ!?
この野郎、俺が考え事している間に、またのこのこと現れやがったなっ!
「藤田っ! お前また俺の邪魔をしようってのかっ!」
「はぁ? 何言ってんだお前。
俺がいつお前の邪魔をしたって言うんだよ」
「黙れっ! この子は俺が先に目を付けたんだっ!
フラレたお前はおとなしく引き下がってればいいんだよっ!!」
と、俺は叫びつつ、彼女を守るように藤田の前に立ち塞がる。
安心したまえ、俺の可愛い子猫ちゃん!
俺が、この最低男から守ってやるからなっ!!
でも、藤田って、格闘技やってやがるからなぁ。
さすがに、ちょっと勝つ自身は……、
……まあ、いい。
やられたらやられたで、彼女に優しく解放してもらえば良いし、
俺に暴力を振るったのをネタにして、神岸さんと別れさせてやるぜっ!
「何言ってんだコイツ?」
「さぁ? さっきからこの調子でな」
「おいっ! ちゃんと聞いてるのかっ?」
「まぁいいか。 それより、買ってきたぞ、コーヒー。
ミルクと砂糖が入ったのだったよな?」
「ありがとう。覚えててくれたんや」(ポッ☆)
「おいっ!! 藤田っ!!」
「おっ、あそこにいるの、親父さんじゃないか?」
「あっ、ホンマや……せっかく藤田君と話とるんやから、もう少し遅うても良かったんやけどな」
「俺の話を聞けぇっっ!!!」
「ん? 何か言ったか? 矢島がうるさくて聞こえなかった」
「いや、なんでもないよ。ほな、私もう行くから」
「ああ、じゃあな、委員長」
「だいたいだな! 藤田、てめぇには……って………いいんちょう?」
藤田の口から飛び出した単語を聞き、俺は言葉を詰まらせた。
……ちょっと待った。
今、委員長って言ったよな?
委員長って……あの委員長か?
三つ編みで、眼鏡かけてて……、
いつも近寄り難い雰囲気出してて……、
この巨乳美人が……あの委員長?
つまり、保科……さん?
「ごめ〜ん、ヒロ、待った?」
「おせーぞ志保。ちょっとっつって何分待たせんだ」
「だから謝ったじゃない。あれ、あかりは?」
「あかりならお前がおせーから、先にノートのコピー撮りに行ってるよ」
「しつこいわねー。そんなにしつこいとあかりに嫌われるわよ。
っと、そんなことより、さっきから気になってたんだけど……コレどーしたの?」
「……あれが……保科……あれが……」
「矢島か? それがよくわかんねーんだよ。 委員長と話してたみたいなんだけど、
先に目を付けたとか言ってたと思ったら、急に黙っちまったんだ」
「はは〜ん……なるほど、そういうことか。
こりゃ、明日の志保ちゃんニュースはコレで決まりねー♪」
「なんだ志保、コイツがどーしてこうなったか解るのか?」
「そんなことより、あかり待たせてるんでしょ。さっさと行くわよ」
「お、おい。元はといえば、お前が待たせたんじゃねーか」
「いーからいーから。ほら、急ぐわよ」
「あれが保科さんだなんて
嘘だぁぁぁぁーーーっ!!
誰か嘘だと言ってくれぇーっ!」
うう……、
明日、学校に行くのが怖い……、(泣)
<保科 智子編 おわり>
原案 柾木
加筆・修正 STEVEN
――さあ、この後、どうする?