Heart to Heart 外伝
     To Heart  Kanon 

        
「がんばれ 矢島君 北国遠征編」







 突然だが――

 今、俺は北国のとある街に来ている。

 ――え?
 何でわざわざそんな場所に来ているのか、って?

 そんなの決まってるだろ?
 この街に来た目的はただ一つ……ナンパだよ、ナンパっ!

 俺の地元の街の近辺では全然ナンパが成功しないモンだから、
こんな北国までやって来たのだ。

 ――なに?
 たかがそれだけのことでご苦労なこと、だと?

 ……しょうがねぇだろ。

 地元近辺に住んでるめぼしい子って、ほとんどが既に彼氏にらぶらぶだったりするし、
運良く、フリーの子を見つけても、大抵が藤田・藤井・テンカワ関係だっりするんだよ。

 他にも、直接面識は無いが、柏木とか長瀬とか宮田とか城戸とか……、
 藤井 誠と同じ苗字の藤井とか……ああ、あと折原って名前も耳にしたな。

 さらに、ちょっと遠出して代々森駅方面にいった時も、
千堂って名前がやたらと出てきやがったし……、

 ……とにかく、俺の地元周辺はやたらと強敵が多いんだよ。

 だから、俺としては正直なところ不本意ではあるが、
地元周辺はあいつらに譲ってやることにし、
俺は連休を利用して、この街へとやって来たわけだ。

 あ……、
 だからと言って、こんな遠くに来ることも無いだろうって思ってるだろ?

 ふっふっふっふっ……、
 甘いっ! 甘いなっ!!

 この俺が、わざわざこんな遠くの地を選んだのにはちゃんと理由があるのだっ!

 俺は去年、修学旅行でこの街に立ち寄っている。

 その時に、いつかこんな時も来るだろうと思い、
めぼしい女の子の存在をチェックしておいたのだっ!

 ふはははははははっ!
 この用意周到さっ! 我ながら惚れ惚れしてまうぜっ!

 で、その事前調査の結果――

 この街には、俺的美少女ランキングに入ることが出来る女の子が、
かなりの率で存在していることが明らかになっている。

 そして、これが第二次ナンパ作戦の決行場所を、
この遠く離れた北国の街に決めた最もな理由なのだが……、

 この街には……、
 藤田や藤井のような強敵の存在が確認されていないのだっ!!

 つまり、美少女の存在の比率に対して、俺に対抗できる程の強敵がいないということは、
それだけ競争率が低いという事になり……、

 ――ようするに、ウッハウハなわけだっ!!

 少なくとも、去年、俺がこの街に来た時は、俺に対抗できるレベルの男はいなかった。

 今はどうか知らんが、そんな一年かそこらで強敵が現れるわけがない。
 それこそ、突然、転校生でも現れない限りなっ!

 だが、そんな漫画みたいな事が現実に起こるわけがないっ!
 となれば、もはや、この街の女の子はみ〜んな俺のものってことが、
決定されたも同然なのだっ!!(作者談 残念♪ 今は祐一がいます))

 ふっふっふっふっふっ……、
 さあ、行くぜっ!! 栄光は我が手中にありっ!!

 待ってろよっ!!
 まだ見ぬ可愛い仔猫ちゃん達っ!!
 遠距離恋愛というのも、なかなか燃えるもんだぜっ!!

 それに、遠距離恋愛なら、
多少の浮気はバレないだろうし……、(作者談 コイツ、やっぱり最低)

 というわけで、あの子もその子も、ついでにあっちの子も、
み〜んな俺の魅力でメロメロにしてやるからなぁーっ!!
















 そして、俺は、これからのバラ色の未来を確信しながら、
見知らぬ街へと走っていったのだった。








 ……さて、誰に声を掛けるかな?


んん? あんなところで可愛い女の子が寝てるぞ?
いかんなぁ……取り敢えず安全なところへ連れていってあげよう。
水瀬 名雪

むむっ! なかなか可愛い女の子がっ!
でも、まだまだガキだが……まあ、先物買いも一興か……、

月宮 あゆ

ぬっ!? 何処からか、口喧嘩が聞こえてくるぞ?!
しかも、この声は間違いなく美少女の声っ! よしっ! あわよくば……、

美坂 栞

ほお……なかなか気の強そうな女の子が……、
うむっ! 彼女こそ俺の恋人に相応しいっ! では、レッツトライッ!

美坂 香里

ちくしょうっ! 何で誰も俺に見向きもしないんだっ!?
こうなったら、気晴らしに夕日に向かって叫んで……ん? あの子は?

沢渡 真琴

なんか、さっきから視線を感じるんだが……、
もしかしてあの子かな? でも、雰囲気がおばさんクサイな……、

天野 美汐

おっ! クールな雰囲気を醸し出す美人発見っ!
早速、声を掛けねば……って、あれ?

川澄 舞

う〜む……取り敢えず,ゲーセンにでも行ってみるかな?
お? あそこで格ゲーやってるお嬢様っぽい女の子なんかどうだ?

倉田 佐祐里

うう、まさか、こんな所で路銀が尽きてしまうとは……、
ああ、意識が朦朧としてきた……女神様の声が聞こえる〜……、

水瀬 秋子



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