「ぐむむむむ……」
俺はPCの画面と睨めっこし、腕を組みながら唸り声をあげる。
別にプログラミングが上手くいっていない訳じゃない。
というか、プログラミング作業をしている訳でもない。
俺がこうして悩んでいる理由、それは……。
「まさか、ゴミでここまで悩む日が来ようとは……」
Heart to
Heart
番外編
「地球に優しく」(前編)
「ううーむ……」
俺は両手を頭の後ろにやり、大きく伸びをした。
ついでにデスクの脇にあるお茶「選ばれしもの」(※ようは綾○の事である)のペットボトルを飲み干すと、潰してゴミ箱に入れる。
俺がこうして悩んでいる理由…それは数刻前に遡る。
「……足りねぇ」
財布の中身と預金通帳を取出し、今月の収支をチェックする。
俺は家計簿はノートにはつけていない。
おっと、ズボラとか言うなよそこ……
あくまで「ノートに」つけてないだけで、お金の収支はきっちりとPCの帳簿ソフトで管理しているのだ。
少し間違いがあっても書き直しに手間はかからないし、計算はソフトの方でしてくれる。
便利な世の中になったもんだね。
さて、話を本題に戻すと……
どうも今月の出費は嵩んでいる。
いや、ここ最近少しばかり出費の多い月が重なっている。
という訳で冒頭のPCの画面と睨めっこしながら唸っていた訳だ。
「こりゃあ……ちょっと、どこが省くべき無駄かきっちり把握しておかないとな」
普通の学生ならそんなに問題でもないのかもしれないが、一人暮らしで収支をきっちり管理しなければならないとなると
落ち着いた事は言っていられない。まさに死活問題、という訳だ。
ちょうど手も空いていて暇なので、ここ最近何ヶ月かの収支データを引っ張り出す事にした。
「何か出費が多いと思ったらこれか……」
ここ最近の出費データを照合すると、何に使っていたのかすぐに問題が判明した。
ここ最近出費が嵩んでいた理由、それは……
ゴミ袋である。
おっと、ゴミ袋とバカにする事なかれ……
ゴミ袋だって意外と高いんだぞ?
近年各市町村の自治体の財政悪化……
そして限りある資源を大切にしようという事により
各地でゴミ袋有料化が進められてきた。
勿論東鳩市もその例外に漏れず
ゴミ袋1枚あたり小で200円、大で300円という取り決めがなされている。
市役所で直接買う事もできるが、同じ値段でスーパーやコンビニ、商店街の各店舗でも買う事ができる。
市役所だと時間の融通が利きにくいが、特にコンビニだといつでも買えるからな……
まあ、かといって、値段はどこで買っても同じなのだが。
で、それが何故出費が嵩む事に繋がるのかというと……
「ゴミ……出し過ぎだな、俺」
そんな事を誰もいない俺の部屋で、一人のたまった。
勿論誰かさんのように、資源の無駄遣いをしているという訳ではない。
俺の場合、食後のゴミが半端なくなってしまうのだ。
普通の人が1食でカップ麺を1個食べる。
そうすると出るゴミはカップ麺1個分。
俺は1食でカップ麺を4個は軽く食べる。
もっと食べる時もあるが……仮に4個で計算すると、1食で出るゴミはカップ麺4個分。
単純計算で、普通の人の4倍はゴミを出している計算になる。
流石にこれは由々しき事態だ。
ゴミ袋で生活苦になるなんて、地球にも財布にも優しくない。
「これは流石に対策しないとな……でも原因がゴミ袋による出費ってわかった以上、対策のしようもあるはずだ!」
そう思った俺は、自分にできるゴミを減らす……エコ活動を模索してみるのだった。
とはいってもまずは食事の量。
食事を減らす訳にもいかないので、どうやったら食事を減らさずゴミだけ減らせるか試行錯誤してみる。
まず思いついたのは、カップ麺を袋麺にする事。
これならカップ麺と比べるとカップと比べてゴミは少なくなるし、5食分まとめて買えて財布にも優しい……
「おぉっ、なんて経済的なんだ!」
あまりの名案に、一人台所で感嘆の声を上げる。
「さてさて、いただきまーす……」
腹が減っては何とやら。
さっきの名案を試すべく、さっそく袋麺を5食まとめていただく。
「……ぐむむぅ」
結果、俺は一人再度台所で唸る事になった。
「名案だと思ったんだけどなぁ……」
膨れた腹を擦りながらも、俺は欠点を復習する。
さっきの案の欠点はこうだ。
まず、5食分の麺を茹でないといけない。
そうなるとお湯を沸かすのにも時間がかかる。
普段はカップにお湯を入れるだけなのでやかんでお湯を沸かす分、それなりに早いのだが……
鍋だと大きく口が開いている分、どうしても熱が逃げてしまうのだ。
鍋につきっきりで麺を混ぜないといけないため、暑いし光熱費の無駄にもなる。
そして肝心の食事。
確かにラーメンはうまい。
うまいのだが……5食分同じ味というのは、飽きが来てしまう。
更に言えばラストの方は食べ終わるまでに麺がスープを吸い、伸びてしまう。
伸びたラーメンにひどい経験がある俺としては、流石に伸びたラーメンは避けたい。
かといって器を5つ用意するのは手間だし、今度は器を5つ洗う分の水道代もかかる。
「だからカップ麺なのかぁ……」
溜息とともに、改めて俺はカップ麺の便利さを思い知る。
カップ麺なら1食1食、違う味を楽しむ事もできる。
お湯を入れるタイミングをずらして、麺が伸びないように調整する事もできる。
ゴミが出るという今回の論点を除けば、これだけのメリットがあるのだ。
「となるとこの案はボツだな……」
名残惜しくもお腹も満たされた事だし、取り敢えずこの案は廃案とする。
「他に何ができるか……」
食欲が満たされ頭も冴えてきた俺は、他にどうすればいいのか思慮を張り巡らせるのだった。
まず自炊。
本格的に食事を作ればそれだけ出来合いのゴミは減らすことができる。
反面、やっぱり面倒臭い。
簡単な料理はそれなりに作れるものの、やっぱりさくらやエリアが作るような本格的なものは作れない。
それに本格的なものを作るなら空腹に耐えきれる自信がない。
「そうなるとさくらやあかねに作りに来てもらう……」
口に出しておいて、いやいやそれはないと首を横に振った。
確かにさくらやあかねに作りに来て貰えば、出るゴミはぐっと減るだろう。
しかしながらそんなさくらやあかねの好意の上に胡坐を掻くような真似をするのは、俺の信条が絶対に許さない。
ただでさえ土日はエリアに作りに来てもらってるのだから、それ以上を求めれば確実に自堕落な自分が出来上がってしまう。
「それにさくらやあかねに作りに来てもらうなんて……それは結婚してからで十分だっての」
何気なく自分自身がつぶやいた言葉なのに、急速に頬が熱くなっていくのを感じる。
……一人で何をやってるんだ、俺。
「……ふぁ」
色々手段を考えているうちに、眠くなってきた。
満腹になったから仕方ないか……
などと適当な理由をつけると、俺は自室に戻り、ベッドに潜り込む。
今日のところはこれまでにしよう……おやすみなさい。
後編へ続く!
<コメント>
浩之:「……メシの量を減らせば良いだけの話じゃね?」(−o−)
誠:「お前、俺に死ねと?」(−−;
浩之:「そこまでは言ってねぇだろ?
でも、結局のところ、お前の、その際限無い食欲が、一番の原因だろ?」ヽ( ´ー`)ノ
誠:「いや、まあ、そうなんだけどさ……」(T_T)
浩之:「分かってるなら、行動に移そうぜ?」(^〜^)
誠:「……あのさ?」(−−メ
浩之:「――ん?」(・_・?
誠:「逆に言わせてもうが……、
そうと分かっていて、お前なら『減らせるのか』?」(−o−)
浩之:「お前、オレに死ねと?」(−−;
誠:「…………」(・_・)
浩之:「…………」(・_・)
誠:「別の方法を考えよう」(−−ゞ
浩之:「――だな」(−−ゞ