――闘いは終わった。

 数々の運命を弄び……、
 幾多の人生を狂わせた邪蛇は……、

 虹の英雄の後継者達と、
彼らを支えた多くの戦士達によって倒された。

 崩壊していく封印要塞――

 リーフ島の崖上で、
その光景を見上げる戦士達……、

 だが、彼らの表情に……勝利の喜びは無い。

 英雄達に残されたのは――
 1つの指輪と精霊石――

 ――そう。
 闘いに勝利した彼らの中には……、





 混沌の道化師――

 ケイオス=ダルクの姿は無かった。






Leaf Quest TRPG』 リプレイ

ふぁんぶら〜ズ冒険譚 ED

『遥かなるお笑いの中で』 







―― PHASE-01 残されたモノ ――


GM:ライルが放った虹の翼によって、アジ=ダハーカは討たれ……、
   それと同時に、崩壊を始める封印要塞……、
   アレスタの転移魔術によって、脱出を果したライル達は、
   先に脱出していた他の戦士達と、リーフ島にある崖……、
   かつて黒騎士と闘った……冒険の始まりの場所で合流します。
   だが、共に闘った仲間達の中に、ケイオスの姿は……無い。
   激しい戦いの末……、
   あの場に残されていたのは、精霊石と魔晶の指輪だけ……、
   確かに、ケイオスの魂と心は巣食われた。
   しかし、酷使された肉体は、滅びの道しか残されていなかったのだ。


ライル:「…………」
綾:「…………」
イルス:「…………」


アレスタ:「生体装甲による体への付加……、
     そして、何より、これまで酷使され続けた肉体には、
     あのバグの暴走には堪え切れなかったのじゃ」
ナーフ:『そう……かい……』
    無言の仲間達の中、ようやく口を開く。
ライル:「バカ野郎……だから、酒と煙草は止めろって……っ!!」
    冗談めかして誤魔化そうにも、涙が止まらない。
イルス:「…………」
    何も言わず、言えず……ただ、へたり込むしかできない。
綾:「あー……そうですか」
  茫然と、ケイオスさんから借りていたナイフを弄ぶ。
  形見のつもりで借りたわけじゃないのに……、
アレスタ:「許せ……わしには、これを回収するのが、精一杯だった」
     そう言うと、アレスタは、精霊石と指輪を、綾に渡し、
     今、脱出してきたばかりの、海上に浮く封印要塞を見上げる。
GM:崩壊していく封印要塞……、
   いや、そこにあるのは、もう要塞ではない。
   崩壊した外壁の中から現れたのは、
   青黒い光を放つ、大きな異形の化け物……、
   異形の化け物は、空間に、黒い巨大な穴を開け、
   その中へと、ゆっくりと姿を消していく。
ライル:「なんだよ、あれ……」
綾:「アジ=ダハーカは……倒したんじゃ……」
ナーフ:『また負け戦かよ……いや、今度は勝ったのか?
    あーもう、どっちだか分かりゃしねぇじゃねぇか』
ワイズマン:「諸君のおかげで、自爆によるバグの蔓延は防ぐことが出来た。
      しかし、アジ=ダハーカの能力によって、
      バクは異質化し、あの要塞ごと、異形の化け物としてしまったようだ。
      我々、ドットハッカーズは、あの怪物を『クビア』と命名し、追撃に入る。
      ……ここから先は、我々の仕事だ」
ライル:「……お願いします」
綾:「どっちでも関係ないです。こんな気分の悪い終り……」
ライル:「勝った、負けた……言葉による定義は、どうとでもとれる。
    ただ、一つの事実は、兄者は、ここにはいない……、
    ごめん、兄者……助けられなかった……」
イルス:「アレスタさん……、
    僕ら、疲れましたから……ここで、少し休みますね」
アレスタ:「そうじゃな……今は、休むが良い。
     わしも、そろそろ、休む時がきたようじゃ」
     アレスタは、力なく呟くと、ヨロヨロとその場に座り込む。
ナーフ:『……テリオン?』
アレスタ:「あとは任せたぞ……コロン」


 ――カラン。

 座り込んだ魔術師の手から、杖が落ちた。

 元々、素養などなかった。
 三流以下のモノを、強引に一流へと押し上げていた。

 魔力の酷使――
 激し過ぎる闘いの連続――

 そして、何より、永過ぎる歳月を生きて来た。

 友を捨て、仲間を捨て、愛する者も捨て……、
 多くの罪を、多くの業を……、

 ……その小さな体で背負ってきた。

 ずっと、ずっと、たった一人で……、

 限界だったのだ。
 とうに限界は過ぎていたのだ。

 ……それは、幻だったのかもしれない。

 だが、確かに……、
 その場にいた戦士達は見た。

 永い永い闘いを終えた英雄の魂が、天に昇っていく。
 まるで、迎えに来たかのように、天から、多くの手が差し伸べられる。

 魔術師が手を伸ばす。
 だが、その手が、繋がる事はなかった。

 多くの罪と、深き業――
 そして、悪魔との契約――

 ――許されるわけがない。

 罪を背負った者が逝くべき場所は、光溢れる空ではない。

 深き深き闇の中……、
 決して出ることは叶わぬ地の底……、

 魔術師の魂は、血の底から伸びた、
無数の禍手に掴まれ、地底へと引き摺り込まれていく。

 ……魔術師が、諦めた表情で、血の底へと堕ちて逝く。

 魔術師に導かれた戦士達は……、
 その光景を、ただ見ている事しか出来なかった。


 
コロンゾン:「――魂の契約は、ここに完了した。
      現時点を以って、契約者アレイスター=クロウリーの肉体は、
      大悪魔コロンゾンのモノとなる」
      アレスタが死亡すると同時に、
      まるで、別人のように、声質が変わり……、
      落ちた杖を拾い、再び立ち上がったのは、
      アレスタに憑依していた大悪魔『コロンゾン』(以下コロン)……、
ライル:「だ、大悪魔って……っ!!」
コロン:「そんなに警戒しなくていいよ。
    皆に危害は加えないから……、
    とにかく、あの子の遺言に従い、これからは、ボクが、皆の力になる」
ライル:「な、なんか、妙に……その、フレンドリーな悪魔さんですね」
綾:「それは……有りがたいです。
  で、早速なんですけど……静ちゃんの爆弾の件なんですけど?」
コロン:「取り除くことは無理だけと、コマンドワードを、
    彼女が絶対に口しないようなモノにすれば大丈夫だよ」
ライル:「絶対、口にしない言葉か……」
ナーフ:『超かっこいいファーリドゥーン様ばんざーいとか……ごめん、自重する』
綾:「とにかく、ワードは、静ちゃん自身が決めるべきですね」
GM:では、そんな話をしていると、アルフィミィが目を覚まします。
アル:「――ケイちゃん……は?」
綾:「ああ……静ちゃん……」
ライル:「兄者は……」
イルス:「…………」
    ちらっ、と綾ちゃんの持っている指輪を視線で示す。
アル:「――指輪は? ケイちゃんの指輪はある!?」
   ケイオスの不在を知り、しばらく放心する。
   しかし、突然、我に返ると、
   綾が持つ指輪と、精霊石を奪うように持っていく。
綾:「し、静ちゃん?! 別に持って行ったりなんか――」
アル:「できる……よね……貴方なら……?」
   魔晶の指輪と精霊石……、
   アルフィミィは、それをコロンに差し出す。
コロン:「心から生まれし奇跡の石……、
    魂の欠片を宿す指輪……そして、願い桜の枝……」
ライル:「……?」





「可能かもしれないね……アルベルト=カーライソンの復活」





一同:
なんですとっ!?
綾:「――ほ、本当なんですか!
  そんなこと、本当に出来るんですかっ!?」
コロン:「肉体なんて、所詮は魂の入れ物でしかない。
    それは、そこの音楽人形(ランティス)が証明してくれている」
ライル:「た、確かに、そうだけど……」
イルス:「でも、ケイオスさんの魂は……」
コロン:「あの子が言ってたでしょ? 『心と魂は救われた』って……、
    その内の1つ……『心』はここにある」
    と、コロンが見せるのは、心より生れし奇跡の石……、
    ケイオスの闇の精霊石……、
綾:「じやあ、もう1つ……魂は……?」
コロン:「この中にあるよ……魂の欠片は……」
    と、次のコロンが見せたのは、ずっとケイオスの指に嵌められていた指輪……、
    所持者の精神力を保管する指輪……、
ナーフ:『そういや、静ちゃん……兄者に言ってたな。
    絶対に外すな、って……、
    誰かにあげてもダメ……兄者がつけていなければダメ、って……』
コロン:「賢明な娘だね……、
    この事態を、想定していたんだよ……最悪の事態を……」
ライル:「つまり……希望が……」
綾:「希望が、見えてきました! 静ちゃんのおかげでっ!!」
コロン:「復活させる方法は2つ……、
    1つは、この二つに宿ったモノを誰かの体に移植する。
    そうすれば、その人が産む子供が『彼』になる。
    ……これが、一番、可能性は高いね」
綾:「……もう1つは?」
コロン:「もう一つは、精霊石と指輪と桜を合成して、彼自身を復活させる。
    ただし、これは、第3魔法にも匹敵する所業……可能性は低いよ。
    『奇跡』でも起きない限りはね」
ライル:「奇跡……か……」
コロン:「奇跡を信じるなら、ボクは全力をつくすよ。
    それが、アレスタの遺言だからね」


 迫られる選択――

 可能性の高い方を選ぶか。
 それとも、奇跡を信じるか。

 考えるまでもない。
 問われるまでもない。
 
 元より、彼らは――





 ――幾度も、奇跡を起こしてきた。





綾:「――さあ、どうしましょう?
  わたし的には答え決まってるんですけど?」
ライル:「まあ、回答と言ったらこれしかねえよな。
    何度でも起す……起せるよな……奇跡を」
イルス:「――だよね」
綾:「でなきゃ、わたし達が納得できませんし」
ナーフ:『う〜っし! 何か無理くさいことやり遂げて、
    兄者を思いっきり笑ってやる――オーケィ?』
ライル:「オウケイだ! そして、笑ったらぶん殴ってやる!!
    んでもって、一生、禁酒禁煙な」
綾:「もっちろん!」
イルス:「それしかないよねぇ、全くもって!」
コロン:「じゃあ、ノーチェの街で待ってて。
    出来るだけ早く、結果を伝えられるよう努力するから」
    それだけを言い残し、コロンは精霊石と指輪を持って姿を消します。
ライル:「ノーチェ、か……、
    そういや、修道院の子達があそこにいたよな。
    会いにいくのも悪くないか」
イルス:「ジェーンも待ってるだろうし……、
    まぁ、ほんとに笑えるかが、まだ分かってない報告だけど……」
綾:「戻って、待ちましょう……奇跡を信じて」





―― PHASE-02 希望の苗木 ――


GM:では、封印要塞での闘いから数週間後……、
   ノーチェの街で待っていた皆さんの下へ、消耗し切ったコロンがやって来ます。
   その手には、鉢植えに植えられた、小さな桜の苗木があります。
ライル:「――コロンさんっ!」
    待ってました、とばかりに駆け寄る。
綾:「お疲れ様です……その、えーっと……結果は?」
コロン:「――お待たせ。一応、成功したよ。
    第3魔法の……真似事とはいえ、
    魂の移送が、こんなに大変だとは思わなかったよ」
    と言いつつ、コロンは
鉢植えを綾に渡す。
イルス:「成功……?」
    綾ちゃんが渡された鉢植えを見る。
コロン:「これが、ボクの限界……
この桜の木が『彼』だよ。
    今、この木には、彼の魂が、間違いなく宿っている。
    話し掛ければ、返事は無いけど、理解は出来るよ」
ナーフ:『なんという……う、ううむ、なんという……」
    唸りつつ、苗木を軽く蹴り蹴りする。
イルス:「こらっ、ナーフ!」
綾:「苗木って弱いから、あんまり弄っちゃだめですよ」
ナーフ:『えー、だって兄者だぜ?
    あ、そーだ、水の代わりに酒注げばすくすく育つんじゃね?』
ライル:「空気はあれか、煙草の煙か?」
ナーフ:『そうそう――って、なんちゅー最悪の環境なんだ』
ライル:「まあ、それはともかく……、
    多分、こっから先は、オレ達の役目ですよね?」
コロン:「うん、彼の肉体は、ボクには用意できない。
    そーゆーのに詳しい専門家じゃないとね。
    例えば、アオザキみたいな、優秀な人形師とか?」
ライル:「そうか、後は肉体の問題か」
綾:「当ては……無いこともないですね」
  ランティスさんの口から『アオザキ』の名前が出てた筈です。
コロン:「ただし、彼の魂の存在は、今、願い桜に依存してる。
    だから、肉体を手に入れても、出来れば、願い桜の影響下……、
    初音島から離れない方が良いんだけど……そうもいかないよね?
    だから、これを常に携帯させること」
    と、コロンは桜の模様のついたペンダントを綾に渡す。
綾:「これは……?」
コロン:「願い桜の枝を加工した物だよ。
    それを持っていれば、初音島から出ても魂の存在は維持できる」
イルス:「えっと……話が見えないんだけど……、
    存在の維持って、どういうこと?」
コロン:「彼の『存在』は、今、願い桜の力によって維持されている。
    つまり、彼の『存在』は、桜に『依存』しているんだ。
    それは、とても不安定なモノ……、
    桜があるから、彼は存在している。逆を言えば、桜が無ければ、彼は存在出来ない」
綾:「その為の、桜のペンダントですか?」
コロン:「でも、それだって完全じゃない。
    できれば、早いうちに、この世界と、魂の存在の繋がりを強めた方がいいね。
    具体的には、肉体的、精神的な繋がりというか……、
    彼が『存在』することに『依存』するモノ……、
    彼がいなければ存在出来ない、確固たる存在……」
ナーフ:『あー、もう少し噛み砕いてくれると助かる』
コロン:「ぶっちゃけ、
誰かと子供つくるのが一番確実♪
    子供という存在が、彼の存在を確かなモノにするからね」
ライル:
「――ぶはっ!!」
イルス:
「そんな身も蓋もなくっ!?」
綾:「おー、それはわりと安心ですねっ!
  
学生の女の子を孕ますくらいお盛んだったみたいですし!」
ライル:「げほっ……げほっ……そ、そうですか……、
    まあ、それについては、可能性が低いわけではないから、
    多分、大丈夫……かな」
ケイオス:あー、GMGM?
     できれば、皆と話がしたいんだが……、
     最終回なのに、蚊帳の外ってのは寂しい。
GM:じゃあ、コロンが桜の苗木に、拡声器でも設置しましょうか。
綾:拡声器って……?
コロン:「まじかるスピーカー♪」(てってけてってって〜♪)
ライル:なんでも『まじかる』つければ、何とかなると……まあ、いいや。



ケイオス:『あー、遅くなったが……ただいま』



綾:「――おかえり」
ライル:「遅すぎるわ、このヨッパライ!!」
イルス:「あっはっは……まぁ、ともかく、お帰り」
ケイオス:『すまん、速達であの世から送り返された……苦労かけるが宜しく』
ナーフ:『こんな姿に成り下がりおって!
    毎晩、てめぇのつまみをすくねる計画がパーだ、どうしてくれる!』
ケイオス:『知らんわ! というか、くすねるつもりだったんかい』
ライル:「まったく、ここに及んでまで心配させてからに……、
    いいか、肉体を手に入れたら、分かってるんだろうな?」
ケイオス:『酒も煙草も、当分は無理そうだし、
     戻ったとしてもやるつもりはないんだけどな』
ライル:「ふははははは、禁酒禁煙だけで済むと思ってるのか。
    毎日、野菜を摂って、食物繊維の補充が義務じゃ!!」
ケイオス:『お、お手柔らかに頼む……、
     というか、戻ったら共食いしてるような複雑な気分になりそうだ』
綾:「まー、とにかく、今度はアルの身体を探す旅、ですね!」
ライル:「――そうだな」
イルス:「ううん……それは綾ちゃんに頼んだ方がいいと思う」
コロン:「そうだね。人形師探しは、綾っちに任せた方がいい。
    ライちゃん達には、別の役目があるし……」
ライル:「別の役目……?」
コロン:「近いうちに、大きな戦いが起こるよ。
    そして、この街は、魔物の大侵攻の進路上にある」
ライル:「ガディム……ですか?」
コロン:「うん……だから、キミ達は、ここに残って、この街を守らなきゃいけない」
ライル:「はいっ! 今度こそ、この街を守ってみせる!」
ナーフ:『けーっ、お仕事終わんねぇでやんの。
    おーい、イルス、森にはいつ帰る?』
イルス:「予定は未定じゃ無いのかな?
    ここだけは、僕らが護らなきゃいけないし」
    それとも、ナーフ一人で帰る?」
ナーフ:『阿呆言え、おめー1人だと、すぐ泣き出すだろ』
綾:「それにー、ジェーンさんも居ますしねー」
ジェーン:「じゃあ、これを
『着てもらう』のは、闘いの後ですね」
     と、かねてから用意していた
白いドレスを出す。
ナーフ:
『そうそう、それを“イルスに”着せてやらないとな!』
    えっ、共謀者? それは私です。(笑)
イルス:
「え、えええっ!?
    ちょっと、もしかして四面楚歌!?」
ケイオス:『なーに、苗木になるわけじゃないんだから気にするな』
ライル:「い、いや、オレはイルスが嫌って言うなら味方するぞ、うん」
イルス:「……ホントに味方してくれる?」(じぃ〜)
ライル:「…………もちろんだ」(目逸らし)
イルス:「その間は?! 目逸らしたのは?!」
綾:「じゃあ、しばらくは、コミパとタイプムーンで身体探し、ですね。
  いざって時には駆けつけてあげますよ?」
ライル:「ああ、できれば早めに頼む」
ケイオス:『苦労かけるな……今に限らず、随分前から……』
綾:「ほんとーです。幾つ年下だと思ってるんですか」(くすくす)
  そういえば、GM、静ちゃんは、どうしてるの?
GM:爆弾のコマンドワードの処理も終わって、
   今頃は、ナカザキにいるんじゃないかな?
ケイオス:ミューのところかっ!!
コロン:「ああ、そうそう……アルちゃんから伝言だよ。
    “お父さんをよろしく”だって」
綾:「はあ……まあ、こんな姿になるまで助けられなかったのは、
  わたし達の過失でもありますし……、
  きっちり責任取って、身体を見つけましょうね」
ケイオス:『うむ……早く、体を取り戻して、あのクソッタレ吸血鬼を……』
     どうやら、あの世の手前で『お前が欲しい』発言を知ったらしい。
コロン:「じゃあ、そろそろ出立した方がいいよ。
    あまり時間は無いからね。
    ボクも色々と忙しいから、そろそろ行くよ」
綾:「……そうなんですか。じゃあ、行ってきます」
ケイオス:『いってくるー』
ライル:「それじゃあ、無事を祈るぜ、兄者、綾っち。
    またな……この意味、分かるよな?」
綾:「――すぐに、全部済ませて、助けに来ますよ」
イルス:「じゃあ、またね、ケイオスさん、綾ちゃん」
コロン:「頑張ってね。彼の娘達の情報は、可能な限り集めておくから」
ナーフ:『世話になったなぁ、テリオン……じゃなくてコロンゾン。
    しかしまー、なんだ……?』
イルス:「ギリギリなんとか、ハッピーエンドに滑り込んだ……かな?」
ナーフ:『ほんとに滑り込んだかはしらねーけど……、
    まぁ、覚えておけよ兄者。
    “世界は愉快とご都合主義”だからな』
ケイオス:『おうよ、ちょっとくらい世界と運命と女神を信じてみるぜ』



綾:「それじゃあ、いきますよっ!
  鞍馬の綾ちゃんにぃー、不可能はなぁーい!
  ライルさん、イルスさん、ナーフ……皆、
いってきまーす!
  びしっと天を指差しして、ケイオスさんを抱えてダーッシュ!!

ケイオス:
『ちょ、落ちる落ちる! 風がぁぁぁぁ!?』 

綾:
「あっはっはっはっ!!」(ドドドドドドッ!)



ナーフ:『――速っ!?』
ライル:「テンション全開だなあ……おい」
イルス:「あれなら、心配は必要無さそうだねぇ」
ライル:「次に会う時には、綾っちのお腹が大きくなってるか、
    もしくは、赤ちゃん抱っこしてそうだな」
イルス・ナーフ:「――ありえる」





―― PHASE-03 エピローグ ――


 こうして……、
 虹の英雄と邪蛇との闘いは終った。

 しかし、彼らに、安息の日は、まだ訪れない。

 第二次ガディム大戦の勃発――

 カノン王国、タイプームーン、リーフ島……、
 魔物の軍勢による、三つの都市への同時侵攻……、

 この魔軍の侵攻ルート上に、一つの小さな街がある。

 孤児の街『ノーチェ』――

 迫り来る魔の軍勢から、
ノーチェの街を守る闘いの中に、彼らの姿はあった。



 彼の者は『世を唄う剣士』――

 振るう剣は、熱き魂の如く燃え盛り……、
 生涯の伴侶と奏でる歌は、共に闘う戦士達に、決して挫けぬ勇気を与えた。



 彼の者は『深緑の盟友』――

 銀の斧の輝きは、森を侵す闇を薙ぎ払い……、
 その傍らには、常に、空の王者と美しきシスターの姿があった。



 彼の者は『疾風の語部』――

 白き翼の語り手は、風の如く戦場を駆け抜ける。
 絶望的な闘いを続ける仲間達に、希望を伝える為に……、










 そして――

 最後に、もう一人――










 小さな街へと押し寄せる黒き軍勢――

 それを見下ろす丘の上に、一人の男が立っていた。

 男は、持っていた酒瓶を、
グイッと飲み干し、空になったそれを投げ捨てる。

 すると、まるで手品のように……、
 いつの間にか、その手には、黒く輝く石が握られていた。

 その色が示すは闇の力……、

 かつては、怒りと憎悪と後悔と……、
 負の感情の塊でしかなかった、禍々しき闇……、

 だが、光あるところに闇があるように……、
 闇がなければ、決して、光は生まれない。

 今や、その闇は、光を生むための闇……、

 あらゆるモノに……、
 等しく安らぎ与える闇……、


「やれやれ……英雄なんて、ガラじゃないんだがねぇ」


 男は、そうボヤくと、口に煙草を咥え、呪文を唱える。

 そして、生まれしは……、
 その男を象徴する黒き翼……、

 今も尚、闘い続ける仲間達の、希望の翼……、



 彼の者は『混沌』――

 決して定まらぬ運命……、
 渦巻く未来の如き、たゆたいしモノ……、



 彼の者は『道化師』――

 人々に笑顔を与え……、
 あらゆる悲喜劇の最後に幕を下ろすモノ……、

 その男の名は――










「さあ、唄おうか、絶望の……、
いや、希望の歌を!
羽ばたけ! 混沌へと誘う黒き翼よっ!」











<ふぁんぶら〜ズ冒険譚 完>





GameMaster
STEVEN

WorldDesigner
STEVEN
ふぇぽん
天城風雅
Shingo

SystemDesigner
近衛真魚
STEVEN
DEVIL


PlayerCharacter
イルス=クークルー
ナーフウェイト
のたくる魚

ライル=フィッシャー
くのうなおき

ケイオス=ダルク
健康胞子

イリス=スノーフィールド
咲善

鞍馬 綾
umi



NonPlayerCharacter
アヌーラ=シャーナーメ
アルフィミィ=マーマレード
アルナワーズ=ジャムシード
アロエッテ=マドレーヌ
ジェーン=ドゥ=ナイン
エルト=スノードロップ
エル=トゥ=ポインセチア(フォルビア)
ランティス
スアラ
ゴールドタイタン
アレイスター=クロウリー
etc

Special thanks to
読者の皆様
Presented by
学園の図書室

<おまけ>
<戻る>


注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。

注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
    その為、今後、ルールが改訂される場合があります。