GM:――というわけで、ケイオスがラスボスになりました。
   ここからが、本当の闘いです♪
ライル:楽しげに言うなっ!
    たった3人で、どうやって闘えと?!
GM:あ〜、その辺は、ちゃんと考えてあります。
   あのセッションの後、ケイオスのPLには、ネタバレしてあります。
イルス:……大丈夫なの?
ケイオス:ああ、だいたい理解した。
     この展開は、かなり驚くと思うぞ。
綾:まあ、それはともかく……、
  ケイオスさんを助ける方法を考えないといけませんねぇ。
GM:それは、闘いながら手段を探して貰うしかない。
イルス:最近、こ〜ゆ〜闘いばっかりじゃない?
GM:単純に殴り合うだけの戦闘は、そろそろ飽きたでしょ?
   さあ、とにかく、これが、本当に最後の闘いです。
   ハッピーエンド目指して頑張ってください♪
ライル:ここまで来て、バットエンドは嫌すぎるからな。
    絶対に、誰も欠けること無く、邪蛇をブッ倒すっ!





GM:あ、ちなみに……、
   便宜上、シナリオのタイトルは変えてるけど、
   データは全部、前回のを引き継ぐからね?

一同:それじゃあ、ブーストが、
   ほとんど残ってないじゃないか〜っ!!






Leaf Quest TRPG』 リプレイ

ふぁんぶら〜ズ冒険譚 17

『英雄伝説 〜虹の奇跡〜 前編







―― PHASE-01 援軍 ――


 生体装甲『アジ=ダハーカ』――

 その力は、邪蛇の名の相応しく……、
 まさに、最強種族である竜の如き強大な力であった。

 だが、ライル達が闘っていたのは、その力の、ほんの一部に過ぎなかった。 

 何故なら、邪蛇は、兵器であるが故に、
真の力を発揮するには、自身を装着する者が必要だったから……、

 ……そして、邪蛇は手に入れた。

 魔力も、精神も、肉体も……、
 全てを奪い尽くし……、

 己の意のままに動く、最高の装着者を……、

 その名は、ケイオス=ダルク。

 ザッハークに、身も心も、
運命すらも弄ばれた、道化師という名の操り人形……、

 今、その操り人形に……操糸が巻き付いた。

 ――そう。
 獲物に喰らいつく蛇のように……、


アジ:
「すばらしい、すばらしいぞ……、
   
、ここに、究極の邪蛇アジ・ダハーカは降臨したっ!!」
ナーフ:「なんてこった……この腐れジジィが!!」
ライル:「この野郎……その為に、今まで、兄者を……っ!!」
アジ:「ああ、そうとも……、
   この男を組織に招き、魔典を与え、幾多の試練を与え……、
   全て……
全て、この瞬間の為だけに!
   ふはははははっ!!
綾:「へー、すごいすごーい」(ぱちぱち)
  適当に手を叩きつつ、相手を観察します。
  GM、精霊石は見えますか?
GM:はい、精霊石は、アジの手に握られています。
   もちろん、魔典も持ってますよ。
ライル:精霊石も魔典も……、
    強力なアイテムが、全部、アジの手に……、
ナーフ:となると、もう、頼みの綱は、
    俺が持ってるグルザ=イ=ガウサールだけか……、
    使用限界は、あと2発……いけるか?
GM:ちなみに、アジの能力は、ケイオスをベースとして、
   生体装甲の効果で、大幅に底上げされています。
   当然、ケイオスの技は、全部、使えますし、アジ自身の技も使えます。
   しかも、武装前と同様、1ターンで、最低でも3回は行動できます。
ライル:――なんだそりゃっ!!
    いくらなんでも、強すぎるぞっ!!
イルス:
いーじゃん、いーじゃん、スゲーじゃん!
    
面白ぇ、燃えてきたぜっ!!
ライル:「どうする……こっちの力は、実質、使い切る寸前……、
    向こうには、どれだけ余力が残っている?
    いや、それより……兄者としての意識は残ってるのか?」
ケイオス:(結局……私は……)
     薄れゆく意識の中……、
     状況を見ていることしかできない。
アジ:「くっくっくっ……光栄に思うが良い人間達よ!
   この記念すべき瞬間に、お前達は立ち会うことが出来たのだからな!」
   精霊石を掲げ、勝利を確信したかのように、
   アジは、余裕の笑みを浮かべる。
   それに呼応して、両肩から伸びる蛇も、
   今にも、敵を噛み砕こうと、キシャーッと、鋭い牙を剥く


???:
「――ならば、その記念日を、
    
同時に、邪蛇が滅せられた記念日にもしてやろう!」


ライル:「――っ!? この声は!?」
GM:聞き覚えのある声がしたかと思うと、
   次の瞬間、天井をブチ破り、巨大な『何か』が乱入して来る!


タイタン:「他人様のお宅に、このような乱暴な手段で、
     お邪魔してしまい、大変申し訳ありません。
     なにぶん、緊急時でありましたので、突然の無礼をご了承ください」
アレスタ:「相変わらず、バカ丁寧じゃの。
     蛇相手に、わざわざ、玄関を通ってやる必要なんて無いわい」
     と、土煙の中から現れたのは、アレスタとゴールドタイタンです。


綾:
「タ、タイタンさん……!?」
アロエッテ:「ゴーレムさんだけではありませんわよ」
ランティス:「微力ながら、以前の借りを返しにきたよ」
      突入して来たタイタンの巨腕に抱えられていたのは、
      アロエッテとランティスとスアラです。
綾:「ランティスさんやスアラさんまで!?
  人形に戻ったはずじゃ……?」
ナーフ:「うっへ〜、こりゃ、総出演パターンか!?」
ライル:「ど、どうして、キミ達が……っ!?」
アロエッテ:「詳しい話は後ですわ! 敵から目を離さないで!」
      いつの間に着替えたのか……、
      真紅のドレスに身を包んだアロエッテが、タイタンの腕から降り立つ。
ランティス:「さあ、スアラ……始めよう。
      明日の為に闘う戦士達に力を……希望の歌を届けよう!」
GM:タイタンの右手にランティスが、左手にスアラが立つ。
   黄金の巨人の腕に掲げられた2人は、すぐに演奏の準備を始める。
   その中央で、アロエッテが、あの金のマイクを構える。
   同時に、タイタンの全身が、キラキラと輝き出し……、
   その光景は、まるで、即席のステージのよう……、
アジ:「誰かと思えば、テリオンか……、
   一体、何を始めるつもりだ?
   今更、出てきて、お前に何が出来ると言うのだ?
   万全の状態ならともかく、そんなホロボロの体で……?」
アレスタ:「確かに、今のわしでは、貴様にカスリ傷一つ負わせる事は出来ぬじゃろう。
     だが、そこの小僧共に未来を託すことなら……、
     ここに、
闘う為の力を運んでやる事くらいなら……出来るっ!」
     そう言うと、アレスタは、一歩前に進み出て、
     ライルに不敵な笑みを浮かべて見せる。
ライル:「マスターテリオン……いや、アレスタ……何を……?」
アレスタ:「――覚えているか、ライル=フィッシャー?
     以前、わしの工房で闘ったゴーレムのことを?」
ライル:「あ、ああ、オレ達の中にある最強の具現……」
アレスタ:「そう、あれは、おぬしらの魂に刻まれた『最強』のイメージの具現。
     そして、今、見せてやろう……、
     わしの記憶に刻まれし――『最強』の力をっ!!」
     アレスタが、杖で床を突くと同時に、巨大な球型魔方陣が展開される。
     魔方陣は、ライルやアジダハーカ達を中心に広がり、
     戦場は、白一色に統一された無景色の空間になる。





「クリエイト・イメージ――
『彼方なる夢記憶』リメンバー・マイ・メモリーズ展開っ!!」





「血塗られし豪剣で敵を打ち砕け!
『紅の殲滅鬼』ブラムヴァーン=キンスレイヤー!」

「数多なる技で敵を翻弄せよ!
『風と戯れる追い人』エリィヌ=サイス!」

「光の刃で悪を切り裂け!
『開闢の使者』リクス=ウォスキー!」

「雷の如き一矢で闇を貫け!
『漆黒の雷迅龍』ディック=コール!」

「無限の銃器で全てを蹂躙せよ!
『鋼鉄歩兵』ファング!」





「頼む……わしに力を貸してくれ!
我が生涯、最高、最強にして……最愛の盟友達よ!!」





ディック:「Ya-Ha-! 随分と苦労してるみてぇじゃねぇか、色白チビ助!
     言われるまでもなく、手ぇ貸してやらぁ!」
ファング:「呼ぶのが、遅いですよ。待ちくたびれたじゃないですか」
リクス:「やっと呼んだと思ったら土壇場か……、
    まっ、呼ばれたからには、いっちょ派手にやりますか!」
エリィ:「まったく……人をもうちょっと信用してよ〜、あ〜くん」
ブラム:「おうけいおうけい……、
    てめぇが其処まで言うんだ……強敵だろ?」


アレスタ:「詳しい説明している暇は無い。
     だから、頼む……何も言わず、何も聞かず……、
     
おぬし達の命……わしにくれ!」
ファング:「Yes Sir――
     現時点より、僕達は、貴方達の指揮下に入ります」

GM:というわけで、
ラストバトルには、第3PTが参戦します。
   ケイオスのPLには、ファングをお願いしますね。
一同:
うおおおおおおおっ!!
   
まさに、総力戦だぁぁぁぁっ!!
ライル:まさか、この展開の為に、
    わざわざ、第3PTのメンバーを集めていたのか?
綾:てっきり、皆さん、見学に来てるだけかと……、


 ――そう。
 これが、GMの最後の悪戯。

 実は、GMは、第3PTに参戦して貰う為、
事前に、メンバーと連絡を取り合っていたのだ。

 しかも、ふぁんぶら〜ズには内緒で……、
 見学のフリをして、セッションに来てもらうよう指示をして……、

 全ては、最終回を飾るラストバトルを、より熱いモノにする為に……、


ブラム:しかし、ラスボスが、生体装甲を身に付けたケイオスとは……、
    もしかして、ケイオスに魔典を渡した時点で、
    この展開を考えていたのか?
GM:
正確に言うと、DEVILさん(ブラムのPL)から、
   
生体装甲の案を貰った時に、ですね。
ブラム:
呆れたっ! そんな時からかっ!(爆)
ナーフ:「随分と大所帯じゃねぇか、テリオン!?」
ライル:「正直、びっくりだ……、
    ここまで追加戦力が出てきたなんて……」
アレスタ:「これでも足りぬくらいかもしれん。
     だが、わしがしてやれるのは、これが精一杯じゃ」
ライル:「充分です……本当にありがとう」
アロエッテ:「舞台は整いましたわね?
      では、ライル、わたくしに虹の楽譜を貸してくださいまし」
ライル:「……あ、ああ」(楽譜を渡す)
アロエッテ:「はじめましょう、ライル……、
      
わたくしとあなたの、最初のコンサートを!」
      アロエッテが、楽譜を宙に放り上げる。
      一枚、また一枚と、本のページが、
      まるで舞うように周囲を回り、虹色の輝きを放つ。
      いつしか、その輝きは、アロエッテ達のステージを彩る虹の輪に……、
      それと同時に、タイタンの手の上でランティスが、フォルテールを奏で、
      演奏に合わせて、スアラがコーラスを紡ぐ。
      そして、タイタンの前に立つアロエッテが、マイクを高々と上げ、
      虹の楽譜の真なる旋律を――歌い上げるっ!



 ここで、GMは、用意していたBGMを流す。

 ラストバトルに選んだ曲は――
 水樹奈々の『Justice to Believe』――


アロエッテ:「これこそが、虹の楽譜の真の力……、
      
想いを繋げる虹の架け橋!
GM:アロエッテの歌により、特殊効果が発動!
   その効果は、以下の通りです。


『想いを繋げる虹の架け橋』

 その場にいるPC全員のブーストダイスを共有する。
 ただし、使用できる上限は、使用するPCのヒーローLVど同値まで。



ナーフ:
きたきたきたぁぁぁぁっ!!
    俺達の残りのブーストダイスと、
    第3PTの
ブーストダイスの合計は26
    
これで、まだ……闘えるっ!!
綾:逆に怖くもありますけどね……、
  つまり、それだけの数が必要になってくるわけですし……、
ライル:――だが、光は見えたっ!
    あの蛇野郎を倒し……絶対に兄者を救い出す!
ナーフ:「っは――ははは――」
     思い出す……己の魂を燃やしたあの時を……、
    そして、気付く――
    それと変わらぬか、それ以上に魂を燃やしている今に……、
ライル:「なんて、力強く優しい旋律だ……、
    これが、楽譜の真の力……」
綾:「戦で、こんなにも高揚したのは初めてです。
  今は何でも出来る……そう、心の底から思います」
ナーフ:
「はっはっはっはっはっはぁぁぁぁぁっ!!
    
行くぜ、ライル! 行くぜ、綾ちー! 行くぜ、鉢植え!
    
こっからが――本当のクライマックスだぁぁぁぁ!」
ファング:「さあ……指示をください。
     虹の英雄の皆さん……僕達は、あなた達の指示に従います!」
ライル:「アジ=ダカーハを倒す為に、最大の協力を!!
    そして、兄者を救う手助けを!!」
ナーフ:「仲間が間抜けにも身体を奪われちまってる!
    あのアホタレを奪い返して、蛇野郎をぶちのめす!」
綾:「中の人は必要なので……、
  あの趣味の悪い鎧を、徹底的に、叩き潰してくださいな」
ファング:「了解――これより『鋼鉄歩兵』ファングは、
     目標の撃滅、及び救出任務に突入する!
     撃ち抜いて見せます。誇りにかけて……」 
     リニアガンを支えていた右手で、軽く敬礼する。
ブラム:「中身を切るな……か難しい注文をしやがる。
    だが……やぁぁぁぁってやるぜ!」
ディック:「OK! 魔王だってブチのめしたオレ達だ!
     蛇ごときに負けるかってんだ!」
リクス:「もう、これ以上悲しみは生ませない!」
エリィ:「――うんっ! 私達に出来る事をする!」
ディック:「おいテメェら、足引っ張りやがったら、全員黒コゲにすっからな!!」
ファング:「ディックさん……この『物語』の主役は彼らです。
     端役は端役らしくいきましょう」
ディック:「へっ、そりゃそうだ……、
     でもよ、あんまり不甲斐なかったら、
     端役が主役を食う事だってあるんだぜ、武器オタク?」
ファング:「ま、たしかに……」
ライル:「ええい、足引っ張る気はさらさら無い!
    黒焦げにでもバーベキューにでもしやがれ!!」
アレスタ:「さあ、舞台は、完璧に整った!
     あとは、この歪んだ運命を打ち破るのみ!」
ナーフ:
「主役は俺達だ――いくぜ、イルス!」
イルス:
『うん――いくよ、ナーフ!』





―― PHASE-02 固有結界 ――


アジ:「――本番だと?
   ああ、確かに本番だな……、
   貴様らに、恐怖と絶望を与える悲劇の舞台の始まりだ!
   我が真の力で、その舞台の幕を開けてやろう!
   頭数を揃えた程度で、この邪蛇に勝てると思うなっ!」
ライル:「真の力……
来るかっ!?」



アジ:「――固有結界『絶対幸運圏』アブソリュート・ユーフォリア!!」



GM:まるで、世界を塗り替えるかのように、
   アジの周囲が金色の魔力に包まれていくる。
   その背景に浮かぶは、巨大な天秤……、
   運命と幸運を、強引に術者へと傾けるモノ……、
   
これこそが、アジ=ダハーカの真の力――
   
――運命と幸運を操る固有結界!
アジ:
「生き汚くも、抵抗してみせるがよい、人間達よ!
   
尤も、お前達に、かつての仲間の体を傷付ける事ができるかな?」
ナーフ:「来やがったな……絶対幸運圏」
ファング:「この力……そうか、アナタは、
     コレで想うように捻じ曲げたのですね。
     本来は闘う運命でなかった青年を……、
     死すべきでなかった女性を……」

綾:……GM、この固有結界の効果は?
GM:はい、その効果はですね……、
   ちょっと、ややこしいですよ?


固有結界『絶対幸運圏』(アブソリュート・ユーフォリア)

 ・術者のクリティカル値を6のみにする。
 ・1ターンに1度だけ、敵味方を問わず、あらゆる判定のダイスの1つを任意の値にする。
 ・結界の維持に毎ターンMPを1d6消費する。



綾:「これが固有結果……魔術の究極……」
  
クリティカル値が6『のみ』!?
  
ほとんど期待値じゃないですかっ!!
ライル:「運命と幸運の操作……厄介な力だな……」
    6以上じゃないだけマシだが……、
    しかも、ダイス目を操作できるってことは、
    確実に、1ターンに1回は、クリティカルしてくるってことだぞ?


イルス:『……大丈夫だよ』


ナーフ:「イルス……どうした?」
イルス:『ナーフ、ちょっと代わって』
ナーフ:「――あ?」
    虹の刃が消え、主導権をイルスに渡す。
    というわけで、GM……このタイミングで良いよね?
GM:はい、条件は満たされたので、ここでお願いします。
ライル:――なんだ、イルス?
    イルスも、GMと、何か事前に打ち合わせてたのか?
イルス:「アジ=ダハーカ……、
    この固有結界を起動するにあたって、
    キミには、1つ大きな……すっっっごく大きな誤算があったんだ」
アジ:「……なに?」
イルス:「僕達が、ここまでどんな道のりを辿ってきたか知ってるよね?
    山あり――谷あり――
    ナーフに言わせるなら……、
    ギャグあり、ボケあり、
    お約束あり、萌えあり、
    まいっちんぐあり……
    淡々と、理論の矛盾点でも突くかのように言葉を続ける。
アジ:「……何が言いたい?」
イルス:「何で、ここまで乱れたと思ってる?
    何で、ここまでおかしな道になっちゃったと思う?」





「――僕ね、気付いちゃったんだ」

 あくまでも淡々と……、
 言葉を紡ぎながら、イルスは、己を指差す。





「――全部を覆す冗談と酔狂の権化がここにいるんだよ」





 アジ=ダハーカの固有結界――
 幸運の結界の上に――

 ――もう1つの結界が広がる。

 その真名は――





「――固有結界『不幸の感染源』ミスフォーチュン・パンデミック





GM:その真名が唱えられると同時に、
   イルスの周囲に、心像世界が展開される!
   無数に浮かぶ、不幸の象徴であるダイス……、
   そのダイスの出目は、全て「1」しかない!
   ――そう。
   邪蛇の固有結界が幸運を招くモノなら、
   イルスの固有結界は……、
   
自分を中心に不運と不幸をまき散らすっ!
アジ:
「こ、これは……固有結界?!」
ナーフ:『お、おいおいおいおいおい、イルス!?
    何だこりゃ、聞いてねぇよ!?』
イルス:「僕だって、今、気付いたんだ――
笑いたければ笑っていいよ!!
ナーフ:
『わ、笑うぜ!? オレ、笑うぜ!?
    
笑っちまっていいよなぁ!?』
アジ:「なるほど、報告には受けていた……、
   あらゆる失敗が、何故か、有利に働く現象……、
   全ては、この固有結界から派生したものだった、ということか!!」

綾:ちょっ、どういうことですか、GM!?
GM:イルスの特徴の『はた迷惑な幸運』……、
   そして、ここ一番でのファンブルと、その効果……、
   それらは、全て、どういうわけか、
   悉くが、皆さんにとって有利な結果へと繋がっていました。
   それらは全て――
この固有結界の所為だったんだよっ!
一同:
なんだって、GMぁぁっ!?
ライル:いや、ちょっと待て! ダイスの出目は乱数だ!
    それが、全部、固有結界の所為なんて――
GM:
――そうとでも思わなきゃやってられるか!
   
いつもいつもいつもいつも――っ!!
   
とにかく、そういう事にしたのっ!
   
お前らのPT名を言ってみろぉぉぉぉっ!!
一同:
ふぁんぶら〜ズだぁぁぁぁっ!!
ファング:ああ、そういえば……、
     この名前の由来も、そもそもがイルスのファンブルだったっけ……、
ライル:やばい、すげー納得できた。
    それで、イルスの固有結界の能力は?


『不幸の感染源』(ミスフォーチュン・パンデミック)

 ・アジ=ダハーカが固有結界を発動すると同時に発動する。
 ・結界内では、敵味方を問わず、判定によるゾロ目は全てファンブルとなる。
  3個以上のダイスを振った場合は、ゾロ目は、頭2つのダイスの出目で判断する。
  この効果は、クリティカルすらも無効化する。
 ・1ターンに1度だけ、敵味方を問わず、あらゆるクリティカルをファンブルに出来る。
 ・結界の維持に毎ターンMPを1d6消費する。



ライル:「――つまり、なんだ?
    
イルスのずっこけは、偶発的でなく、
    
それ自体が能力だったと!?
ナーフ:
『ぶはははははははははっ!!』(大笑)
イルス:「いいよ、もうそれで!
    とにかく、これで、フィフティ、フィフティ!」
ファング:「……あの時の決戦でいてくれたら、楽だったかもしれません」
     どの決戦かはともかく、ちょっと遠い目をする。
     この能力は……まさに『アジ=ダハーカ』キラー!
ディック:「とんでもねぇヤツだな、この糞女装は……」
ブラム:「楽しいじゃないか、偶然と必然の交わる戦闘か……、
    そんなもん、ぶっちぎってやらぁ」
    しかし、敵味方問わずってのが……、
    ゾロ目がファンブルってことは、6分の1でファンブルするってことだぞ。
リクス:「人は見かけによらないな〜、まったく……」
エリィ:ねえ、これって……、
    ファンブルが出る度に、ファンブル表も振るの?
GM:出来れば、そうしたいところですが……、
   そこまでやると処理が追いつかないので、
   イルスの固有結界が展開している間のファンブルは、自動失敗のみとします。
ライル:「ふっ……ふははははははは……、
    わーっははははははははははははは!!
    なんてこった、この局面でこんなお笑い戦闘になるとはなぁ?
    へへへ、どうだい? 喜劇のメインキャストになった気分はよお?
    オレ達は、すっかり慣れっこになっちまったがな!」

アジ:「ファリードゥーンだけでなく、貴様までも、我が天敵だったとは……、
   虹の剣に楽譜……我が力の対となる固有結界……、
   ヴォーカリオンすらも、ここに揃いつつある現状……、
   ――何故だっ! 運命と幸運は、我が手の中にある筈っ!
   何故、その悉くが覆るっ!?」

綾:「――決まっていますっ!
  運命も、幸運も……自分の手で掴むモノだから!
  あんたの固有結界なんて関係ないっ!
  
わたし達には、それ以上のモノがあるっ!
ファング:「……人、それを『奇跡』と呼ぶ」
ライル:「そうそう……それに、この世界は、
    さらに、それ以上のモノに満ちてるんだぜ?
    ――そうだろう、ナーフ?」
ナーフ:
『あっははははははははははは!!!
    ……よし、もう良いぜ、イルス!』
    再び、虹の刃が出現し、主導権をナーフへ……、
    「俺が言っただろ、アジ=ダハーカ!
    世界は……愉快とお約束とご都合主義で満たされている!
    
今までも、これからもなっ!!」
アジ:「危険だ……あまりにも危険な存在だ!
   貴様等は確実に、ここで消してやる!」

綾:「――やってみろ、糞ハゲ!
  ここまでお膳立てしてもらったからには……絶対に負けない!!」
アジ:「くはっ……ふはははははっ!!
   そうだ……考えてみれば、これは好都合な展開だ!
   邪魔者が一つに集まって、排除する手間が省けたのだ!
   この精霊石と、我が真なる力で、全てを蹂躙するのみ!
   過程など、どうでも良いのだっ! 
結果は覆らん!
   
我に幸運と運命が味方する限りっ!
ディック:「強がりにしか聞こえねぇなぁっ!!
     だったら、テメェの頼みの幸運と運命とやらも、こっちの味方にしてやらぁっ!」
ライル:「アルナワーズ、アヌーラ、アルフィミィ……、
    そして、アロエッテ……、
    女神様は、いつだって、オレ達のそばで微笑んでいるっ!!
    
お前の紛いモノの運命と幸運なんて、オレ達が叩き潰すっ!!
アレスタ:
「空に輝く虹は、未来への架け橋っ!
     
その剣と歌で……今日と明日を繋げっ!
     
虹の英雄の後継者達よっ!!」





―― PHASE-03 最終決戦 ――


GM:では、クライマックスフェイズです。
   手加減抜きで、本気で、容赦なく攻撃していきますから、覚悟してください。
   ちなみに、第3PTは、HPかMPが0になったら、即座に退場してください。
   具現体ですから、死亡判定とかは無しです。

ブラム:俺達は、あくまで露払いってわけか。
    好都合だ、俺達は、ハイリスク&ハイパワーだからな。
リクス:捨て身で全力攻撃して……、
    あとは、ふぁんぶら〜ズに任せるぜ!
GM:あと、アレスタは、魔方陣を展開している間は、
   1d6+具現PC人数分のHPまたはMPを毎ターン消費します。
   アレスタが力尽きたら、第3PTは、問答無用で消滅しますからね。
   もちろん、アレスタもHPが0になったら死にます。

ディック:短期決戦か……ますます好都合だ。
ファング:アレスタさんが力尽きる前に、
     彼を救い出す方法を見出さないといけないわけですね。
アレスタ:「皆、この術式は長くはもたん。速攻でケリをつけろ!」
一同:
「――了解っ!!」
アジ:「ゆくぞ……木端どもがっ!!」
   ――運命のイニシアティブ判定!!
   (ころころ)達成値は15っ!!
エリィ:ここは、あたしが……イニシアティブの修正値は+6だから、一番高い!
    ブースト1点使用!(ころころ)
出目は5、5、2……って!?
    ゴメンッ、
いきなりファンブルしたっ!!
ナーフ:「――イルス、おい!
    この結界、何とかなんねぇのか!」
イルス:『――無理無理無理!
    そもそも意識してない力を全部放し飼いにしてるから!』


<第1ターン>

 いきなりの、エリィのファンブルで、
ライル達は、貴重な初手を奪われてしまう。

 機先を制したアジは、まず、右肩の蛇の行動で、テトラカーンを発動。


ファング:「ソレは……させませんよ!」
     テトラカーンを張られると、後手に回る!
     右目の射撃補正機能起動!
     リニアガンで、口を開いた瞬間にブチ抜く!
アジ:「なるほど……流石は、テリオンの手勢、ということか」
   ルナティックフェアリィまで使って、
   命中を上げられると、さすがに妨害されるか……、
ファング:「どうやら、まだ、その体を制御しきれてないようですね。
     それとも、依り代となった人が抵抗しているのか……」


 ファングの機転で、テトラカーンは防いだものの……、

 間髪入れず、左肩の蛇に、
全体MP攻撃の怪光線を放たれ、ファングは舌打ちする。


ファング:しまった……僕の出番は、寧ろ今でした。
     リアクティブフィールドの使い時だったのに……、
リクス:だったら、俺が『反鏡剣』を使う!
    対抗行動! ブースト1点使用(ころころ)ぐあ、低い!?
GM:(ころころ)その出目では防げませんね。


 MPの低いファングは、この防御にブーストを2点使用。

 全員、防御の出目が良く、ダメージは最低限で抑えられたものの、
この時点で、貴重なブーストダイスを4点も消費してしまった。


GM:じゃあ、アジ本体の
1回目の行動!
ブラム:1回目?! 不吉な事をっ!!
綾:こっちのターンが来る前に、全滅の予感?!
ライル:縁起でも無いこと言うな〜っ!
アジ:「さて……予定よりも早かったせいか、まだ、この男が煩いな」
   と、アジは無造作に魔典を開きます。
ナーフ:うげっ、最大HP削られる!?
ライル:「煩い? ということは……?」
綾:「ケイオスさん……まだ、意識が……?」
アジ:「お前の役目は終わった。もう逝け」
   アジは、魔典効果を乗せたガルを……
『ケイオス』に撃ちます。
一同:
なにぃぃぃぃっ!?
ディック:「なっ……糞アル中を殺っておいて、制御を確実にするつもりかよ!?」
GM:(ころころ)ケイオスの最大HPに33点ダメージです。
   防御はケイオス(のPL)にお願いしますね。
ケイオス:(が、ぁぁぁぁぁぁぁっ……!)
     混濁した意識の中、魔典の力に魂が軋む。
     すまん、ここはブーストを2点使用(ころころ)4点削られた。
GM:さらに、魔典の副作用で(ころころ)最大MPが2点削られます。
ケイオス:こ、これで、HP26/26で、MP0/19……、
ライル:「黒エルフが言うように、制御を確実にする為に兄者を潰す?
    少なくとも、兄者が『持つ』限りは、その力を完全に発揮できないって事か」
綾:「それもありますけど……、
  魔典を使う事で、ケイオスさんの精神を破壊する?」
エリィ:ちょっと……それって……、
    GM、ケイオスの最大HPかMPが0になったら、どうなるの?
GM:ケイオスは、廃人確定です。
   救う手立ては無くなるでしょうねぇ。

一同:
それが狙いかぁぁぁぁっ!!
ライル:前もって、兄者に魔典を渡していたのも……、
    この時が来るまでに、可能な限り、兄者の精神を消費させる為っ!?
ナーフ:どうりで、あれ以来、やたらと自己再生する敵が出て来やがると思ったら、
    
全部、そういう事だったってわけかっ!!
綾:アジ=ダハーカ……ってゆ〜か、このGM、どこまでっ!!
  
遠望にも程がありますよっ!!
GM:ふはははははっ! 何とでも言え〜っ!
   さあさあ、アジ本体の2回目の行動いきます!
アジ:「しぶといな……だが……」
   アジがユラリと腕を突き出す。
   その手に握るは、闇の精霊石……、
   アジが精霊石に魔力を込めると、
その腕に、あの黒い翼が出現する。
綾:「黒い翼……魔典……そんな、嘘……っ!!」
アジ:「試してみるか……カーライソンの最強の技……」
   魔典使用、精霊石の効果込みの
『エンド・オブ・ディスペア』発動!
   その威力は、
防御無視の8d6+14っ!!
ファング:
ちょっ――!!
ライル:
さ、殺意高ぇぇぇぇぇっ!!
ナーフ:
GM、殺る気満々にも限度がっ!!
ブラム:き、期待値だけで……42点……しかも、防御無視……、
    これ、喰らったら、
俺以外は、みんな死ぬぞ?!
ファング:喰らったら、じゃない……、
     アジにダイスを操作されたら……、
     命中判定をクリティカルされる!?
ナーフ:いや、イルスの固有結界の効果で、そのクリティカルを無効化すれば……、
綾:ダイス操作で、クリティカルにするんじゃなく、単純に達成値を上げられたら?
  いえ、それなら、まだ、ブーストを使いまくれば良いです。
  でも、もし、素の判定だけで、達成値が高かったら、
  こっちの回避判定を操作する余裕を与えちゃいます。
  そうなったら、アジが、誰の回避を失敗にするか、と言えば――  
ディック:当然、糞鳥だな……、
     糞鳥がやられたら、その時点で、こっちは負け確定だ。
     おい、てめぇら……いざとなったら、体張ってでも、糞鳥だけは守るぞ。
リクス:OK、やってやるぜっ!
GM:さあ、この一発で、第3PTだけでも消したいな♪
   命中判定は3d6+8(ころころ)
5、5、2……おや?


ライル:
ファンブルだぁぁぁぁぁっ!!

ナーフ:
ナイス、イルスの固有結界っ!!
    
流石は、俺達、ふぁんぶら〜ズ!!


GM:
何故だぁっ!!
   
どうして、ここで、ファンブルなんだぁっ!!
ライル:忘れてないか、GM……、
    兄者の、ココ一番での黒翼と言えば……、
GM:――はっ! そうか、黒翼と言えば、
   
発動失敗命中でファンブルダメージしょぼい……、
   しまった……
この運命は、既に決まっていたことだったのか。
ファング:失敗してくれて嬉しいんだけど、
     なんか、素直に喜べない……、
GM:アジの腕より放たれる黒き翼。
   その一撃は、間違いなく、ライル達に致命傷を与えたであろう。
   しかし、技が放たれようたした刹那、
   アジの腕が、その意思に反して、明後日の方に向けられる。
   見当違いの場所へと放たれた黒翼は、要塞の内壁を抉るだけに終わった。
アジ:「構わんさ……カーライソンの魂は、着々と削られている」
   と、取り敢えず(ころころ)魔典の副作用で、
   ケイオスの最大MPを4点削っておいてください。
ケイオス:確かに、着々と魂が削られてる……、
     これで、MP0/15……、
ライル:「クックック…そうか、分かった。
    分かったぜ……カラクリがよォ!!
    ――綾っちも、気付いたか?」
綾:「ええ、でも、ちょっと、色々と不安要素があるんですよねー」
ブラム:「未だ、足掻いているのか?
    蛇にとっ捕まってるヤツはよ……?」
エリィ:「足掻いててくれないと、色々と困るよ」
ディック:「同感だ。死んでももがきやがれ、この糞アル中が」
リクス:「まだ生きてるって事は、まだ諦めて無いってことだ」
ケイオス:(もう……奪わせ……ない……)
     アジの脳裏に、消えそうだが、
     確かに響く、ケイオスの声……、
ナーフ:「何かするなら、早いうちにやんねーとだぜ、綾ちー」
綾:「まあ、わかっちゃいるんですけど……、
  というわけで、そこな弓士さんと銃士さん、ちょっとお願いがあるんですけど?」
ディック:「――あ? オレと武器マニアの事かよ?」
綾:「あの魔典は、中の人の精神力を削ります。
  なんとか、手から落とすこと、できます?
  ついでに精霊石も……あの人、魔術の火力だけは、べらぼうにありますしー」
ファング:「やってみせましょう。無理は慣れっこです」
     じゃあ、精霊石は任せてください。
ディック:「OK、糞記者。年季の違いってヤツを教えてやるよ」
     だったら、魔典は任せな。
綾:「遠距離攻撃の強みってヤツを後輩に見せてくださいな♪」


 運良く、アジの猛攻を凌いだライル達……、

 まずは、綾がアナライズで、全員のクリティカル値を下げる。
 もちろん、同時にMP薬を使用して、消費した分のMPを回復するのも忘れない。

 続いて、ブラムが、様子見の意味で、
アジに普通に斬り掛かるが、その大剣は空を斬るのみ。

 次に、ディックは、作戦通り、アジが持つ魔典を狙い……、


ディック:「さーて、この糞蛇……お熱いのはお好きかい?」
     魔典を目掛けてヒートシューターを乱射で撃ち込む!
     部位狙いは命中に−2?
     だったら、ブースト1点使用して(ころころ)――クリティカル!
GM:早々に、魔典を失うわけにはいかない!
   ここは、右肩の蛇が、対抗行動でテトラカーン!
   (ころころ)2と6だから、6を4に操作して回避をクリティカルに――
イルス:『そうは――させない!』
    ガラララ――ッ!
    固有結界の背景に浮かぶダイスが2つだけ転がる――出た目は双方1だ!
    能力発動! そのクリティカルをファンブルにする!
アジ:
「な、なんだとぉぉぉぉっ!?
   ちぃ、余計な真似をぉぉぉっ!!」
   アジが発動したテトラカーンが掻き消され、
   ディックの放った炎の矢が、見事に魔典に命中する!
   魔典は炎に包まれ、あっけなく焼失してしまう。
ナーフ:「はっ……この空間は、てめぇを拒んだぜ?」
ライル:「――やったな、ディック!!」
ディック:「へへっ、こいつが年季の差ってやつよ!」
アジ:「ちっ、これで、今すぐには、カーライソンを葬れなくなったか。
   だが、まぁいい……魔典は失われたが、後で時間を掛けて殺ればいい。
   今は、全力で、貴様等を倒すだけだ。
   魔典が無くなったことで、話は単純になったな」


 アジから魔典を奪い、多少の余裕が出来た。

 さらに、エリィが、ブーストを1点使い、
確実に『ゼフィルス』を発動させ、仲間の回避力を強化する。

 ――その効果は、なんと+7!

 GMとしては、その技を、
強引にファンブルにして、封印したかったところです。

 
ライル:これで、かなり戦闘は楽になったな。
    そして、この調子で一気に畳みかける!
    アジが固有結界を展開し続けている以上、MP攻撃は有効なはず!
    
虹の楽譜の第七楽章! いくぜぇぇぇっ!!
綾:さくら姫のおかげで、聖杯からの魔力供給もストップしています!
  アジのMPが尽きれば、もしかしたら、武装も解けるかも!
GM:しかし、今、虹の楽譜はアロエッテが使っているので、
   宝具発動は−2d6されますよ。
   よーするに、発動&達成判定は0d6+6です。
ライル:そこは、ブーストを使って補う!
    今、残ってるブーストは……19点?
    だったら、ブースト3点使用で(ころころ)21!
    これで、アジのMPに毎ターン7点のダメージだ!
GM:指向性判定も忘れないでね?
   それに失敗したら、仲間諸共ですから。
ライル:わかってるって!
    ここで、さらにブースト1点使って(ころころ)
げっ、失敗!?
一同:
ぎゃぁぁぁぁぁっ!!


 ブーストを大量に使ったにも関わらず、
指向性判定の失敗で、味方にも被害が及ぶ羽目に……、

 流石に、それはマズイので、
ライルは、時の懐中時計を使用して、判定を振り直そうとするが……、


GM:時計を使うには、MP10点必要なんですが?
ライル:――MPが足りねぇっ!!
    GM、ここは、時計は大破確定でも良いから、使わせてくれ!
GM:……まあ、良いでしょう。
   じゃあ、時計は大破確定で使えます。
ライル:まずは時計を発動させないと……、
    2d6で目標値が6……、
    スマン、ここで失敗するわけにはいかない!
    ブースト2点使用(ころころ)よし、成功だ!
GM:では、指向性判定の振り直しを……、
   それと同時に、時計は壊れて、二度と使えなくなります。


 この振り直しに、ライルは、
さらに、ブーストを2点使用して、判定を成功させます。

 これで、仲間への被害は無く、
毎ターン、アジに7点のMPダメージが蓄積されることになる。

 しかし、その代償は、あまりに大きかった。
 ここだけで、ブーストを8点も使ってしまったのだ。

 これで、残ったブーストは11点――


ライル:「――いくぜぇ、兄者!!
    
オレの歌を聴けぇぇぇぇぇぇっ!!」
    アロエッテ達の歌に乗せて、ライルの魂の歌声が響く!!
    精神力は限界一杯! しかし、後ろで歌ってるアロエッテへの想いが……、
    そして、兄者への想いが……その限界を超えて魂の演奏を続けさせる!!
アジ:
「ぐっうぁぁぁぁぁぁっ!?
   
またしても、この歌かぁぁぁぁっ!!」
ブラム:「あ〜、なんだ?
    一瞬、耳が腐るかと思ったんだが……急に平気になったな?」
ディック:「ヒュウ♪ さっきまでの音痴振りが嘘みてぇだぜ……魂が震えやがる!」
ケイオス:(うたが……こえが……きこえ……)
     埋没した意識が、少しずつ覚醒しようと思考がまとまり始める。
ナーフ:「ちっ……時間切れか……」
    結界薬EXを使用。これで、瘴気は完全に防げるぜ。
    そして、先の戦闘からターンが継続してるから、ここで、獣人化が強制解除。
    バサリッと羽飾りがズリ落ち、ナーフが地面に転がる。
アジ:「なかなか用意がいい……少し面倒になったか」
   結界薬EXから、紫色の煙が立ち昇り、周囲に霧散していく。
   その様子を見て、アジは、やや顔をしかめる。
ブラム:「おっ……あいつ、なんか分かれたぞ?」
ディック:「獣人化ってやつだな、ありゃ……、
     オレや色白チビ助も使う奴だ」
リクス:「アレスタが使うブラスタモードってやつか」
    俺は対抗行動したから、このターンは行動できない。
ファング:僕も、同じくです。
     次のターンで、ノアシステムを使ってでも精霊石を狙いたいですね。
GM:じゃあ、ここでターン終了ですね。
   アレスタの魔力を消費して(ころころ)……、
アレスタ:「半畜、黒いの……おぬしら、何をやっておる!
     わしは言っただろう? 『お前達の命をくれ』と!
     奴の能力を恐れるな! 全力で攻撃しろ!
     そして
――死ね!
     おぬし達は、露払いでしかない!
     決着をつける事が出来るのは、虹の英雄なのじゃ!」

リクス:「へっ、死ねか……言ってくれるじゃんよ!」
ブラム:「ほほう、そう言う事かい……良いだろう、見せてやるよ、俺の全力を!
    
そして、最高の死に様をなっ!!
ファング:「やれやれ……
任務、了解!
エリィ:「
分ったよ……それが、あたし達の役目なんだね。
    ゴメンね、あーくん……つらいことを言わせて……」
ディック:「ハッ、焦んなよ。こっからが本番!
     テメェじゃねぇが、全力全開だぜ!
ライル:「そんな……死ねって……!!」
綾:「結局のところ、あの人達は投影……、
  だから、アレスタさんの言葉は間違ってない。
  でも……かつての仲間に『死ね』だなんて……、
  なんて、修羅……これが、あの人が選んだ道……」
ナーフ:『言うねぇ、テリオン――』
イルス:「――なら、思い切りやってもらうしかない」
アレスタ:「許せ……許してくれ……」
     血を吐くようなアレスタの言葉に、ディック達の覚悟が決まる。
     そして、アレスタは復活ブーストを消費して、
     アレスタの分のブースト5点を、皆さんに追加してくれます。


<第2ターン>

GM:1ターン目では、誰も倒せなかったか……、
   とはいえ、この調子だと、アレスタのHPとMPは、
   あと2〜3ターンで尽きますね。
ライル:それまでに兄者を助けて、ケリつけないと……、
    でも、まだ、碌にダメージを与えてないぞ。
    それに、兄者を救う方法だって……、
綾:それについては考えが……、
  GM、一応、ケイオスさんの意識、と言うか……、
  MPは0でも、最大MPは残ってるんですよね?
GM:はい、残ってますよ。
綾:「あー、でも……あれ、なのかなー。
  アレしかないかな〜……」
ディック:「どうした、糞記者? 何か良い案でもあんのかよ?」
綾:「えーと、あるにはあるんですけど……」
ディック:「なら言いやがれ。今は僅かでも突破口が欲しいんだ」
綾:「えと、あの人……起こしてみます」
  渋々と、思い付いたことを喋ります。
  でも、具体的な方法は内緒! 相手に勘付かれたら嫌なので!
リクス:「何する気か知らねぇが……、
    その為の道を作るのが、俺達の役目だな」


 何やら、綾に秘策があるようですが……、

 どんな手段であれ……、
 まずは、アジの攻撃を凌ぐのが先決です。

 結界薬EXによって、瘴気プレスは封じられた、
右肩の蛇が、厄介な歌を唄うライルに通常攻撃。

 鋭い牙がライルを襲うが、ゼフィルスの効果によって、楽々と回避。

 左肩の蛇は、対抗行動をした為、行動不能。

 アジ本体は、1回目の行動で、
『ブラッドハウンド』を全体アレンジで発動します。


アジ:
「さあ、いけ……我が血犬よ!」
   アジは自ら、手首を切り、その真っ赤な血を床に落とす。
   すると、その血が、無数の凶暴な赤き狂犬となり、ライル達に襲い掛かる!
   誰か1人でも命中すれば、ゼフィルスの効果は切れ、封印される!
   ここは、命中力を重視した技で……っ!
ライル・イルス:ブースト使用で回避〜!!


 ここで、ライルとイルスが、
1点ずつブーストし、回避に成功するものの……、

 綾がファンブルしてしまい、ゼフィルスの効果は消えてしまう。

 しかも、同様に、回避に失敗したファングは、
大ダメージを受けて、残りHP6となってしまう。


綾:「――うっ! だけど、こんなことで……止まってなんていられない!」
  秘策を思い付いたけど……、
  その手段の所為で、狼狽えて喰らっちゃった。
ファング:「――っぐぅ!!」
     装甲のあちこちが弾け飛び、兜が吹き飛ばされる。
ブラム:「武器屋……っ!!」
    振るった剣圧で、血犬を消し飛ばしつつ、ファングを見る。
ファング:「……問題、ありません!」
     兜が飛び、露になった顔は、
     まだあどけない少女にも見えかねない少年の姿……、
ディック:「あたりめーだろうが……、
     この程度で倒れる、鋼鉄歩兵じゃねぇだろ?」
ブラム:「……生きてるな? 死に時はまだだぜ」
アジ:「なるほど、今のを耐え切るか……、
   カーライソンの技……派手な割には、あまり威力は無いな」
ナーフ:『相性の問題じゃねぇかな……、
    そいつぁ、幸運の作用の確立を重視した術式だろ?
    おめーさんには無用の長物ってやつだ』
    アジは、クリティカル値が6のみだからな。
    命中もそうだが、ダメージのダイス数が増えると、
    逆にクリティカルしにくくなる。
ライル:精霊石の効果は、魔術ダメージに+1d6だから……、
    寧ろ、アジの足を引っ張ってることになるのか?
ブラム:ダメージの期待値……確実性が上がってるのに変わりはないがな。
GM:この技の代償で、アジのHPは−10……、
   ダメージが入ったので、瘴気蟲(HP10のモブ)が生まれます。
   と言っても、結界薬EXのせいで、
共食いアタックは出来ないんだよな〜。
ライル:
されてたまるかっ!
    
あれが一番、性質が悪いっ!
GM:とりあえず、瘴気蟲には前衛に出てもらって、アジは後衛になります。
   で、アジ本体2回目の攻撃は『デッドエンド』――
ファング:――げっ!?
GM:と言いたいところですが、発動条件が満たされてないので、
   普通にガルっ! 目標は、もちろんライルで!
   (ころころ)17と言って命中!
ライル:ゼフィルスが切れたから、盾防御!
    (ころころ)当然、平目で回避なんて無理!
GM:闇魔術の威力は、精霊石の効果込みで、
   なんと、4d6+20(ころころ)
おや、クリティカル?
ブラム:おひっ! 
なにを、4d6で6なんて出してんだよっ!
リクス:流石は、ケイオス……火力がしょぼい。
    
いや、GMの出目の悪さを忘れてたな。
GM・ファング:
――ほっとけ!!
綾:クリティカルしたから、追加で2d6……、
  ここからが怖い! ヘタしたら、何度も回るっ!?
GM:
ふははーっ! 回れ〜っ!(ころころ)ちっ、34点止まりか。
ライル:盾防御には定評がある!
    (ころころ)よし、残りHP25! まだまだぁっ!!
GM:ええい、意外と硬いな、あんたらっ!!
ディック:「おい、糞音痴! 死ぬなら後にしろよ!!」
ブラム:「てめぇらが死んだら、そこでオシマイだぜ?」
エリィ:「倒れる場所は、ここじゃないでしょ?」
ライル:「まだだ、まだ死ねねぇさ!!」
アジ:「ちっ、なかなかにしぶとい……、
   だが、そろそろ、その援軍達の具現も限界ではないか?
   そいつらが消えてしまえば、もう終わりだ。
   結局は、時間の問題なのだよ」
綾:「あんただって、そんな無茶な魔力の使い方して無事なわけないでしょうに!」
ディック:「おい、糞ハゲ! 一つ教えてやるぜ!
     その『限界』ってヤツを超える『可能性』を持ってるのが、
     人間ってやつなんだよ!」

アジ:「ああ、知っているともっ!
   その限界とやらを超える為に作られたのが、この我なのだからな!」

ブラム:うわっ、いい台詞だっ!
    確かに、EL計画は、その為のモノだからな。


エリィ:「限界を超える事を想定されてるなら、
    そこには『限界』と言う名のリミッターがある!!」

リクス:「俺達は知ってるぜっ! 極限の、さらに上に行った奴を!」
ブラム:「才能なんて、これっぽっちも無い三流以下……、
    それでも諦めずに、唯一つのモノを突き詰め、
    自分のスタイルを貫き通して――」

ディック:「――白い悪魔なんて呼ばれるようになった砲撃馬鹿をなぁっ!!」
ファング:「その人のおかげで、僕達は、ここにいる!
     その人の力で、貴方は……ここまで追い詰められた!」

エリィ:「貫くよ、その仮初の『限界』を……、
    あーくんと、あたし達の――」




「「「「「――全力全開でっ!!」」」」」



ブラム:「我が真名"ブランディッシュ=ウィル=ノーザンディア"において、
    血に枷し封を解く! 血封・解除!」

    『ブラッディトルネード』&『クリムゾン』いくぞっ!!
    これを撃ったら、反動だけで死亡確定!
    
お望み通り死んでやるぜ、アレスタァァァッ!!
ディック:「見せてやるぜ、糞ハゲ!
     かつて伝説のダークエルフが得意とした技……、
     雷の魔術、その究極をなぁ!」

     出し惜しみは無しだ! 『漆黒雷撃弾』のチャージに入る!
ファング:「――『ノアシステム』起動!
     腕部連装グレネード、『オメガクラッシャー』発射!!」

     近接攻撃の人は、待機してください!
     まずは、あの邪魔な瘴気蟲を掃除しますっ!


 超火力を誇る第3PTの捨て身の攻撃――

 ターン最後の3連撃の為、
まず、ファングが、瘴気蟲の排除を試みる。

 だが、ダメージが振るわず、瘴気蟲を殺し切る事が出来ない。


ナーフ:『詰めがあめぇ! 一手ミスったら世界ごと死ぬ空間だぜ!』
    すかさず『動物使役』で、瘴気蟲を攻撃!
    鷹の爪が、未だ息のある蟲に対して一撃を加える!
ファング:「――感謝します!」
ディック:「鳥の癖にやるじゃねぇか!」
GM:ファングとナーフの連携攻撃で、瘴気蟲が一掃……、
   もちろん、瘴気が発生しますが、結界薬EXの効果で影響無し。
   そして、アジが前衛に出てくる!
ディック:「道が出来たぜ、糞記者!!」
ライル:「頼む、綾っち! 兄者を起こせるのは、お前だけだ!!」
ナーフ:『――しっかりやれよ、綾ちー!
    こうなっちまった以上、
てめぇが鍵なんだからな!
リクス:
「血塗られたバージンロードだが……、
    無事に花婿の所まで案内させてやるぜ!」

ライル:
「うおおおおおおっ!!」
    オレは、第7楽章を続行っ!!
    俺の精神力と邪蛇の精神力……どっちが先に尽きるか、勝負だっ!!


 今にも倒れそうになるのを、
ギリギリの精神力で堪え、虹の楽譜を演奏するライル。

 しかし、かつてない消耗を強いる戦いは、次第に、ライルの視界をぼやけさせていく。

「……おいおい、しっかりしろ。
『俺のギター』を使うやつが、こんなのでへたばってどうする?」

 ぼやけた視界の先に、苦笑を浮かべて立つ青年……、
 その姿は、どこかライルに似ている。

「俺のギター? まさか……」

「お前はまだやれる。今も、そして、これからも……、
いいか、自分を信じろ、奇跡を起すという気持ち、絶対に折るんじゃないぞ。
俺のギターと『あいつ』の魂を受け継ぐ者……、
今、ここで俺『達』を超えるんだ」

「『あなた』と、お師匠様を超える……、
できるのだろうか……オレに……」

「できるさ……お前ならできる。
お前は一人じゃない。『俺』とは違うんだ。
仲間の想い、そして、彼女の想い……、
全て背負ってきたお前なら……、
俺達が進めなかった先を切り拓いていけるさ。
――勝て。ヤツにも、そして自分自身にも。
そして、彼女と一緒に叶えてくれ……『俺達』の夢……」

 そして、青年は笑顔を浮かべ、視界から消える。

 その後に見えるは……倒すべき敵!!



アジ:
「ぐっうぅぅぅ……歌の力が上がった?!
   
まだ、そんな精神力が残っているのか!!」
ライル:「てめぇがくたばるか、オレがくたばるか……、
    ――いや、オレは倒れない! 
勝利の凱歌を奏でるのはオレ達だ!
ナーフ:『さっきので、鷹としてのフォローは終わりだからな!』
    瘴気蟲を攻撃した後、イルスに向けて舞い戻る。
イルス:「行くよ、ナーフ! まだ僕らは終わらない――終わらせない!」
    
もう一度『獣人化』を発動っ!!
ナーフ:「――てめぇら気張れよ!
    世界を終わらせたくなければな!」
    獣人化完了! 再び、斧に虹色の輝きが宿る!


 ――邪蛇を討つ準備は整った。

 そして、ケイオスを救うため……、
 勝利の鍵を握る少女が――走るっ!!


綾:「――っ!!」
  左手に安らぎの呪文薬を持って、アジに肉薄します!
GM:俊足の綾が、蟲の死骸の合間に出来た道を駆け抜け、アジに肉薄する!
ディック:「なかなか速いじゃねぇか、あの糞記者」
綾:「この……っ!!」
  接敵した瞬間、右手で、
アジの鼻っ柱に全力パンチを叩き込む!
アジ:「ぶは――っ!? 小娘、何を!!」
綾:一瞬、怯んだ隙に、薬を口に含み、
  
口移しで無理やり飲ませるっ!!
  これで、『ケイオス』さんのMPが(ころころ)9点回復するはず!
アジ:「ぅ……ぐっ!?」(ごくっ)
   口移しによって、薬を飲まされ、
   『ケイオス』の精神力が、僅かばかり回復する!
   これで、未だ体の制御は支配されているものの、
   間違いなく、ケイオスの意識は――甦る!
ケイオス:(あ……っ……)
     闇に沈んでいた意識が、徐々に浮上してくる。
綾:
「とっとと起きろ、このスカタン!!」
  口移ししたものの、中身はアジなんですよね。
  なので、怒りがフツフツと湧き上がって、バキッとパンチを追加します!
ケイオス:
「――ぐあっ!?」
     更なる呻き声……、
     しかし、それは、まさしくケイオスのモノ……、
ライル:「兄者っ! 意識を取り戻したのか!?」
リクス:「どうやら、目的は達成したみたいだな」
ディック:「おいおい、何を言ってんだよ、糞十字架。
     まだ半分しか、目的は達成してないぜ?」
リクス:「そうだったな。残る半分は――」
綾:「――あの人が着ている武装を引っぺがして、
  木端微塵にブチ壊すだけです!」
ナーフ:「クソ兄者! 現状の把握は出来るか?
    目が覚めたなら、可能な限り抗えっ! 自分を取り戻せっ!」
GM:ケイオスが意識を取り戻したことで、アジ本体の行動が1回減ります。
   また、ケイオスのヒーローLVと同値の回数だけ、
   アジの判定を邪魔することが出来ます。
   ただし、アジとケイオスで2d6の即決勝負をして、勝たなきゃダメですけどね。

ライル:また゜、武装は解除出来ないのか?
GM:ケイオスの意思で、武装解除は出来ません。
   その理由を説明しましょう。
   皆さん、ちょっと今までの冒険を思い出してください。
   三頭蛇も、この要塞も……、
   ザッハークが関わる蛇って、全部、頭が3つありましたよね?

ナーフ:……だな。3つの頭は、アジの象徴と言っても良い。
GM:じゃあ、訊きますが……、
   
今、目の前にいるアジには、頭がいくつありますか?
   もちろん、ケイオスの頭はノーカウントですからね。
綾:右肩に1匹……左肩に1匹……、
ナーフ:2匹しか……いねぇな……、
ライル:
あと1匹は……何処にいるんだ?
GM:意識を取り戻したケイオスなら判ります。(ごにょごにょ)
ケイオス:――なるほど、運命は最後まで残酷だったか。
     GM、この事実を、皆に伝えても良いかな?
GM:……どうぞ。



ケイオス:「く、はは……すまん、な。
     起きるのが、遅くなって……、
     だけど、私は、どうやら……ここまで、みたいだ。
     
私の、心臓に……この、元凶はいる。
     ――幕を、下ろしてくれるか?」



GM:体の制御をほとんど奪われながらも……、
   ケイオスは、瞳から一筋の涙を流し……、
   その言葉を最後に、ケイオスがもぎとった制御は、
   アジの手に引き戻される。


 ――アジ=ダハーカは言った。

 「仲間を傷付けることが出来るのか」と――

 ――アレスタは言った。

 「決して迷うな」と――



ライル:「そういう……ことだったのかよ」
ナーフ:「心臓、だと……?」
綾:「そんな……そんな……」
ブラム:「あいつの心臓ごと、蛇を叩き切れってのかっ!!」
エリィ:「だったら、心臓を避けて、蛇の本体だけを――」
ディック:「どんだけ精密射撃だ、それは!
     俺や武器オタクにだって、そんな真似できねぇぞ!」
リクス:「幕を下ろすとは、こう言う事かよ……残酷すぎるぜ」


 ケイオスから語られた事実に、絶望する戦士達……、

 だが、一人だけ……、
 この状況で、なお、冷静な者がいた。


イルス:『――ナーフ、貸して』


 イルス=クークルーは、マイペースである。
 何事にも、動じない意志を持っている。

 ナーフに戦闘を任せつつ、彼は考えていたのだ。

 針の穴よりも小さな……、
 細い細い、勝利への突破口を……、


イルス:「ようやく、ようやくだ――方針が、決まった」
ライル:「イルス……?」
イルス:「綾ちゃん――ケイオスさんの心臓を打ち抜ける?」
綾:「そんなこと、わたしには――」
イルス:「――綾ちゃんなら出来るよ。
    ううん、綾ちゃんだけじゃ無理かもしれない。
    でも、『僕達』には『もう1人の』仲間がいる。
    『彼女』と力を合わせれば
……出来る
ライル:「イルス……オレは、何をすれば良い?」
イルス:「綾ちゃんが、心臓からヤツを追い出す。
    その瞬間に“僕達”がアジ=ダハーカを仕留める。
    ライルさんは、その次の瞬間に、ケイオスさんに治癒魔術を……いける?」
    奴を滅ぼすには、“僕達”の剣が必要……、
    だからこその、今の提案だよ」
GM:確かに、それなら、アジを倒し、ケイオスを救う事も出来ますね。
   ただし、その全ての行為を1ターン中に行う必要があります。


 綾の射撃が成功すれば――
 たった一度の攻撃で仕留められれば――
 回復魔術が間に合えば――

 仮定、仮定、仮定――全てが仮定の話。


イルス:「全部を全部……瞬間にこなす。
    “それが可能ならば”……ケイオスさんは、助かる」
ディック:「『可能ならば』じゃねぇんだよ。
     『絶対可能』にするんだよ」
ファング:「取り急ぎ、邪魔な精霊石とやらから、撃ち落すとしましょうか」
エリィ:「フォローは任せて。伊達に器用貧乏じゃないよ」
リクス:「安心しな。お前らに手出しはさせねぇよ」
ライル:「実戦で、回復魔術を使うのは初めてだが……やってやるさ」
綾:「当ててみせます、必ず……」
ナーフ:『やっぱ、おめぇは最高だぜ、イルス!
    やることが判りやすくなったところで、一気に行くぜ!』


 虹の英雄達は――それに賭けた。

 今、己が出来る最善を……、
 いや、最高の結果を力尽くで手繰り寄せる!


ブラム:「さて、そこの蛇野郎……、
    てめぇにゃ勿体無い程の一撃ってのを――魅せてやるぜ!」
綾:「――気を付けてください!
  文献では、下手にダメージを与えすぎると復活します!」
ライル:「ナーフの虹の剣じゃないと、仕留めきれないんだ!」
ディック:「となると、ちょっとは手加減が必要か?」
ナーフ:「ぶっちゃけよ……、
    一度、再生させる段階までいけば、仕留められる自信はある!
    だから、手加減なんていらねぇ! 遠慮無くやってくれっ!!」
    このターンは、とにかく、奴にダメージを与える!
    あと一撃ってトコまでいくのがベストだが、いっそHP0にしても良い!
    再生すると言っても、たかが10d6……、
    そのくらいなら……やってみせるっ!
ディック:
「――SET! HUT!!」
     まずは俺からだ! 見せてやるぜ、俺の全力全開!!
     ディックの手の中で、稲妻がアメフトボールの形に圧縮、収束されていく。
     バヂバヂと激しいスパークを放つソレを、投擲の態勢に入る!!
     命中にブースト1点使用!(ころころ)――
GM:(ころころ)回避失敗!!
   綾の突然の行動で、完全に不意を突かれたアジは、その雷撃に反応できない!
ディック:
「喰らいやがれ! これがオレの――
     
ブラックサンダーバレットだぁぁぁ!
     
YaーーーーーHaーーーーー!!」
     渾身の力で放たれた魔力弾が、
     鮮やかなスパイラル弾道を描き、アジに襲い掛かる!!
     (ころころ)65点のダメージ!!
アジ:「ぐっがぁぁぁ! さすがは、テリオンの手駒……だが、まだまだ!!」
   とはいえ、さすがは火力重視の第3PT!
   防御しても、41点も抜けたっ!!
ファング:
「――ターゲット、ロック!」
     ノアシステムによる追加行動!
     魔眼の射撃補正機能と『フェアリィ』込みで、
     アジの手の中の精霊石を狙う!
     命中にブースト1点(ころころ)クリティカル!
アジ:「貴様等の狙いはお見通しだ! 精霊石を手放したりするものか!」
   回避は(ころころ)出目は1と4だから、
   
固有結界の力で1を2に変えてクリティカルに――
イルス:なら、そのクリティカルを、
    僕の固有結界の力でキャンセル――

ファング:
――ちょっと待った!
     ここは、アジに能力を使わせただけで僥倖と考えるべき!
     
使い時は、今じゃないっ!
イルス:『――ここじゃない。運命改変のタイミングは、ここじゃない』
    そ、そうか……こっちの本命は、次の攻撃だ!
ファング:「もう、カードを切っちゃったんですか?
     じゃあ、この後の攻撃はどうするつもりです?」
アジ:「かまわんさ! 斬ってみるがいい!
   しかし、その吸血鬼の攻撃では、我を殺しきることはかなわぬ!」
ブラム:「ンなこたぁ、最初から承知の上だ!
    さあ、最後だし、一華咲かせてもらうぜ……血の華だがなっ!」
    
合成必殺技『クリムゾントルネード』発動!!


 封印を解いた瞬間……、
 全身から血が噴き出し、滴り落ちて血溜まりを作る。

 瞳の色は血溜まりを映すかの様に紅く染まり――
 顔は血の気をなくした様に青白く――
 口元を飾るは白き牙――

 その姿は……夜の王(ヴァンパイア)。

「目覚めろ、魔を統べし血よ!
       形なせ、思いを繋ぐ血よ!
           我が意に従い、剣持ちて敵を滅ぼせ!」

 その声に応え、血溜まりから、
幾つもの血が線となって疾り、地に魔方陣を描き出す。

 血溜まりも幾つかに別れ、それぞれが泡立つように伸縮を繰り返し……、

 ――ドン!

 血主の姿を模した血の人形へと姿を変える。

「さぁ、血の人形どもよ……、
吹き荒れる狂風(かぜ)となりて、思いを踏みにじりし愚か者に滅びを与えん!」

 紅い血人形達は陣形を組み、更に身をねじり溜めて突撃に備える。



『血より生れしクリムゾン――

      ――殲滅の狂風』トルネード!!」


ブラム:予測戦闘を使用して……、
    (ころころ)命中はクリティカル!!
GM:ダメで元々っ! 左肩の蛇が対抗行動でテトラカーン!
   跳ね返して、無駄死にさせてやる!!
イルス:――問題無いよ。
    例え、クリティカルしても、
それは打ち消す!
GM:(ころころ)そういえばそうだった!
   どっちにしても回避は失敗!!
ブラム:「受けて見るか、この一撃……、
    我が名は”ブランディッシュ”!
    
一撃の威力は星でも砕くぜ!」
    (ころころ)
ダメージは116点っ!!
GM:
なんだ、そのダメージはっ!!
   (ころころ)防御しても99点抜けっ!?
   これで、アジ=ダハーカのHPは−60に到達!
   特殊能力『自己再生』が発動します!

アジ:「くっくっくっ……これで、もう、その技は我には通用しない」
   まるで、自らその身を晒したかのように……、
   ブラムの豪剣を受け、アジ=ダハーカは、血飛沫を上げて倒れる。
   だが、すぐさま、その傷は再生されていく。
   アジが倒れたので、この時点でターンは強制終了。
   10d6で(ころころ)HP31まで回復です。
   また、オーバーダメージ分の最大HPが増えるので、
   アジ=ダハーカのステータスはHP31/150になります。

ナーフ:「――いいんだよ、これで」
    最大HP? 今更、そんなのが増えたところで……、
GM:(一応、意味はあるのよね。
   とはいえ、これで、勝負はついたかな)
ディック:「成る程……英雄ヘラクレスの『十二の試練』みたいなもんだな」
ブラム:
「俺はここまでだ……後は任せるぜ」
    と言いつつ、スーッと空間に融けて消えていく。
    必殺技の代償だけで、HPが0に達するからな。
ディック:「デカブツ……またな!」
ファング:「…………」
     無言のまま、空いた手で敬礼する。
リクス:「よくやったぞ……あっちでゆっくり待っとけ!」
GM:おっと、忘れるところだった。
   今のダメージで、また瘴気蟲が発生しますよ。
   そして、再生したアジは、後衛になります。
ライル:ちぃっ、また壁が……っ!
ディック:問題ねぇ! 次のターンで、俺達で排除する!
     てめぇらは、手筈通り待機してろっ!
GM:で、アジが固有結界の維持の為(ころころ)MPを消費して……、
   アレスタの消費が(ころころ)
あっ、HPが0になった。
一同:
うわぁぁぁぁぁっ!!
アレスタ:「――がはっ!!(吐血)
     わ、わしに構うな……まだ、いける」
     血を吐きながらも、杖に寄り掛かり、結界を維持する。
ナーフ:「おいこら、マスターテリオン!
    まだ、てめぇが潰れるわけにはいかねぇんだろ!?」
    回復は? 回復は出来ないのか?
GM:アレスタは、具現化の魔方陣の外にいるので、回復や支援は受けられません。
   アロエッテ達と同様、戦闘の対象外なのです。
   もし、アレスタへの支援等を有効なら、
   とっくに、アジはアロエッテ達を攻撃してます。
ディック:要するに、アジとの闘いの舞台である、この魔方陣結界は、
     外からは遮断された空間なわけか。
     なるほど、俺達が具現化できてるわけだ。
GM:そういう事です。
   まあ、戦闘は終わるまでは、結界は維持されますよ。
   もちろん、アレスタのダメージは蓄積されますが……、
   蓄積された上で、ちゃんと死亡判定もします。
アレスタ:「大丈夫……死んでも、結界は維持する」
ディック:「馬鹿野郎!! 死ぬのは、今のオレ達の役目だろうが!
     テメェは死ぬな! 生きろ、アレスタ!!」
リクス:「俺らに死ねと言いながら、先に逝くってのは無しだぜ!」
ファング:「ええ、アレスタさんには見届ける義務があります。
     逝くのは、残影である僕達だけでいい」
アレスタ:「わかっとるわ! わしには、まだ、果たさすべき役目が残っておる。
     そう簡単に死ぬものか……、
     それにな、ディック……具現体であるおぬしは知らぬだろうが……、
     わしを殺す役目は――
ディック:「――うるせぇ、黙れ! そんな余裕あるなら集中しろ!
     約束だぜ……生きろ! 絶対にだ!!」


<第3ターン>

アジ:「耐え切る事はできたが、再生が追いつかんか……、
   しかも、カーライソンの影響が、思いのほか強い……、
   どうやら……決着はついた、ということか……
ナーフ:「諦めるのか……てめぇらしくねぇな?
    やるんなら、やれるとこまでやる……、
    てめぇはクソったれたジジイだが、その執念だけは認めてたんだぜ?」
アジ:「無論、諦めるつもりなど無い。
   だが、今、ここで、我が勝利するのは無理だ、と悟っただけだ」
ナーフ:「ちっ……そういうことかよ……、
    自己増殖……てめぇの分身……いや、空蝉か?
    とにかく、別の『アジ=ダハーカ』は、もう世界中に散らばっているのか」

アジ:「そう……だから、せめて、残された我が眷属のためにも、
   ここで、貴様等だけは……
虹の英雄だけは――
ディック:「生かしてはおかない……ってか? 悪党の決まり文句だな」
アジ
「――ここで、排除するっ!!」
  と、叫ぶと同時に、
アジは右肩蛇を、左肩蛇で食いちぎる!
一同:
なにぃぃぃっ!!
GM:そして、その食い千切った蛇の魔力を利用して――
リクス:
「食い千切って魔力を補給しやがった!?」
アジ:
「これで最後だっ!! 虹の英雄達よ!!」
   いくぞ、最後の手段っ!!
   
必殺『ウイング・オブ・ディスペア』!!
   食い千切られた蛇の頭を、高々と掲げると、そこから巨大な黒い魔力翼が出現!
   全てを薙ぎ払う為、禍々しき黒翼が、羽ばたく!






ケイオス:『させは、しない……さ』





アジ:
「――カーライソン!?
   
邪魔をするなぁぁぁぁぁっ!!」
ケイオス:その黒翼の命中判定――邪魔させてもらう!
     GM、即決判定で勝負といこうじゃないか!!
GM:
OK、受けて立つ!!
   ここで黒翼を放てれば、まだ勝機はある!
   2d6による即決勝負っ!!

ケイオス・GM:
せーのっ!!(ころころ)――


 アジ=ダハーカの最後の一撃――

 ケイオスの象徴――
 絶望の歌を奏でる黒き翼――

 立ち向かうのは、道化師の想い――





ケイオス:
4と5で……9!!

GM:
5と5で……10!!





ケイオス:
くそぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
     みんな、すまんっ!!
     この攻撃に、何とか耐えてくれっ!!
ライル:――く、来るっ! 絶望の翼が!!
ディック:糞音痴どもは下がれっ!!
     ここは、俺達が体を張ってでも――
ナーフ:――いや、その必要はねぇな。





イルス:この勝負……僕達の勝ちだ。





GM:えっ、でも……、
   この即決判定は、アジの勝ちじゃ……、
イルス:残念だったね、アジ=ダハーカ。
    
キミの幸運は……僕の不幸に塗り潰された。
GM:イルスのって……
あ、ああああああっ!!
ライル:
――ああ、そうかっ!
    
イルスの固有結界の効果っ!!
綾:GMの出目は、5のゾロ目!!
  
その判定は、ファンブルになるっ!!
  つまり、最後の一撃は……
不発ですっ!!
GM:
そんな馬鹿なぁぁぁぁぁっ!!
   『エンド・オブ・ディスペア』に続いて、
   最後の一撃の『ウイング・オブ・ディスペア』まで!?

ディック:
今まで、イルスのファンブルに泣かされてきたPTが、
     
イルスのファンブルに救われたぁぁぁっ!!
リクス:
てめぇら、何処まで
    
『ふぁんぶら〜ズ』だぁっ!!


 いや、まったく……、

 最後の最後まで……、
 ファンブルに振り回されるなんて……、

 幸運を操る邪蛇と――
 不幸を招く深緑の盟友――

 勝利の女神が微笑んだのは――


アジ:
「馬鹿な、馬鹿な、馬鹿なぁぁぁぁぁっ!!
   何故、こうも不幸が重なるっ!?
   何故、幸運は、我に味方しないのだっ!?」

   最後の一撃とばかりに、展開する黒翼!
   しかし、ケイオスの意志の力がアジの意志を捻じ伏せ……奇跡を起こすっ!!
ケイオス:「く、はは、ははは……、
     もう貴様に誰も殺させない。
     奪わせたり……するものか……」
ナーフ:「俺は、何度でも、てめぇを否定してやる!
    言っただろ! 所詮この世界は、愉快とご都合主義で出来てるんだよ!」
綾:「奇跡は……起こるから奇跡なんです!」
ライル:「オレ達は信じてるんだよっ!
    諦めなければ、奇跡は何度でも起こせるってな!!」
ディック:「いけぇ、糞音痴ども!!
     お前が只の音痴野郎なのか……、
     それとも稀代の歌の英雄なのか、真価が問われるぞ!!」
リクス:「ファング、エリィ、ディック!!
    もう一度、道を作るぞ!! それが俺達の最後の仕事だ!」


 ――奇跡は起こった。

 実質、誰一人として、
倒されることなく、ラストバトルは最終局面を迎える。

 最早、彼らを邪魔するモノは、壁となっている瘴気蟲のみ。

 ファングの銃弾が――
 ディックの炎の矢が――
 エリィの稲妻の魔術が――

 ――瘴気蟲に着実にダメージを与える。

 そして、第3PTの最後の1人――
 リクスの必殺『ミスラ・セイバー』が――


リクス:「これで……消えて無くなれ! 
ミスラ・セイバー!!
    アジと瘴気蟲を巻き込んでの全体攻撃!!
    (ころころ)ダメージは49点だ!
GM:(ころころ)その攻撃で、瘴気蟲は全滅!!
   そして、アジは(ころころ)
残りHP……1っ!?
   な、なんという……なんという……、
ナーフ:
「――てめぇら、やっぱ最高だ!」
    アジの残りHPは崖っぷちだ!!
    最高の舞台を演出してくれたぜっ!!
ライル:さあ、最後の詰めだ!! 頼んだぞ、綾っち!!
ファング:その前に、ノアシステムノ追加行動で、
     安らぎの呪文薬を使ってライルのMPを回復。
     (ころころ)これで、回復魔術が使えますよ。
イルス:僕は、綾ちゃんが失敗する可能性は、まったく考慮してないよ!
    
この意味は……わかるよねっ!?
綾:――もちろんです!
  銃の残弾を全部抜いて
『あの弾』を装填します!
  って、この場合、リロード?
GM:まあ、良いですよ。演出重視。
綾:「……いきます、アルベルト=カーライソン」
  銃を両手で構え、狙いを定めます。
  狙うのは、ケイオスさんの心臓……、
  そこに巣食う邪蛇の核とも言える、最後の一匹……、
アジ:「またしても、お前か、小娘……、
   最後まで、お前が、我が計画の計算外だった」
綾:「それはどーも。だって、前世とか分かんないですしー。
  ぶっちゃけ、貴方が何者でも関係ないですしね?
  気に入らないからブチ倒す、それだけです」
アジ:「だが、我が眷属は、すでに世界中に散らばっている。
   我は、その礎となろう……、
   我が子達のために、最後の置き土産を残して、な」
綾:「――ちょっとだけ痛よ、ゴメンね」
ケイオス:「気にするな」
     綾の言葉に、確かに、アジの顔は……、
     ケイオスは穏やかに笑む。
GM:綾の銃口が、ピタリとケイオスの心臓を狙う。
   しかし、銃を舞える両手が震える。
   もし外したら……その恐怖を抑えることが出来ない。


イリス:『ったく、あたしは脳天にブチ込めって言ったんだけど……、
    まあ、良いわ。キッチリ決めてよね』



綾:「あなたは……」
GM:それは、幻だろうか……、
   だが、確かに、震える綾の手に、少女の手が添えられる。
   その少女は、イリス=スノーフィールド……、
   ケイオス達の5人目の仲間……、
綾:
「いきます……アルベルト!!」
  『イリスの弾丸』使用して、アジ本体に攻撃!
  その効果は、どんな状況であろうと、
必ずターゲットに命中する!





 ――乾いた銃声が鳴り響いた。

イルス:
『ミラン――』
    綾ちゃんの成功を確信し、斧を構えて駆け出す。

 綾の放った、イリスから託された弾丸が、ケイオスの胸を貫く。
 だが、その弾丸は、ケイオスの心臓に傷一つ付ける事なく、
 そこに巣食うアジだけを的確に打ち抜き――

ナーフ:
「ダルム――」
    駆ける、風のように――
    遮るものは……全て仲間が排除した!

 ――ケイオスの体外へと、弾き出される!!

イルス・ナーフ:
「――スティアァァァァッ!!」





『ディッグレー・ジェイン――』
「深緑の盟友達はかく答えん――」



 振るうは、虹の斧。
 全ての愉快とご都合主義の結晶。



『ルント、アイ、ファラム――』
「森は、大地は、草花は――」



 呟く言葉は、2人の意思。
 そして……彼らを育んだ、大地の意思。






『イルス――』
「汝を――」






「――クークルー(許す)!!」





GM:虹の一閃……それが、アジ=ダハーカを……、
   アジダハーカの核ともいえる小さな蛇に振り下ろされるっ!
ナーフ:「――後に続け、ライル!!」
ライル:「兄者……っ!!」
    高々と掲げた左腕を兄者に向ける。
    試みるのは、初めて使う回復魔術……、
    脳裏に、今までの兄者の言葉が甦る。
    『だけど、な……二度と手が届かなくなってからじゃ、遅いんだぞ』
    『構うな! お前は、唄う事だけを考えろ!!』


「くくく……はははは……そうか、そうだよな……、
最後の締めは、このオレの手で……魂の兄弟だもんな」

「――そう。わかったろ、ケイオス。
愉快とご都合主義なんだよ。
例え、悲劇がどんなに重なろうとも……、
世界は、ハッピーエンドを、望んでいる」

「ケイオスさん……あなたに出来ることは……、
それに、応えることだけなんだ」

「さあ、帰ってきて……そして……」






「――明日に生きろっ!
兄者ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」






―― PHASE-04 ウイルス暴走 ――


GM:虹色の光に貫かれ、アジ=ダハーカの核が消滅していく。
   それと同時に、ライルの回復魔術が、
   銃弾で貫かれたケイオスの胸の傷を癒す。
   ――バサリ。
   ケイオスを拘束していた邪悪な外套が落ちた。
   残った左肩の蛇も力無く地に落ち、ピクリとも動かない。
   そして、邪蛇から解放されたケイオスもまた、その場に倒れる。

綾:「ケイオスさん……っ!!」
  慌てて駆け寄って、抱き起こします。
ケイオス:「すまん……世話を掛けた……」
綾:「まったくです……でも、これで借りはチャラですね。
  胸に痕も残っちゃいそうですし……」
  ケイオスさんの胸にある銃痕を撫でつつ、
  零れそうになる涙をグッと堪えて微笑みます。
アレスタ:「終わった……か……」
     決着を悟ったアレスタは、その場に座り込み、魔方陣を解除する。
     それと同時に、具現体であるディック達の姿も消えていく。
ファング:「どうやら、決着は付いたみたいですね。
     さようなら、虹の英雄の末裔達。
     君達の物語の行く末に、運命と言う名の旅路に、幸多からん事を……」
リクス:「っと、ここまでか。
    そんじゃな……あんたら、最高の英雄だぜ」
エリィ:「バイバイ。少しは役に立てて良かったよ。
    あーくんのこと、よろしくね」
ライル:「ありがとう、本当に……」
イルス:「世界は救われた……みたいだね」
GM:次々と消えていく、アレスタの仲間達……、
   そして、最後に残ったディックは、アレスタと見つめ合う。
   二人の間に言葉はない。ただ、簡潔に……、
アレスタ:「……またな、黒いの」
ディック:「おう……」
GM:ゆっくりと消えていくデッイク……、
   その姿を見送るアレスタ……、
   大規模な魔術の疲れか頭を垂れ、その表情は見て取れない。
アレスタ:「さようなら、ディック……、
     次に会った時は、わしを――」
     俯くアレスタが、ポツリと呟く。
     それは、あまりに小さく、聞き取ることが出来ない。   
     いや、違う……その呟きは
『奴』の声によって掻き消された。


アジ:
「見事だ、虹の英雄達よ!
   
だが、まだだっ!
   切り札は、最後までとっておくものだ!」


ライル:
「なにぃっ!? この期に及んで――っ!?」
ナーフ:
『んなっ! クソジジィ、まだっ!?』
イルス:
「この上、何を――っ!!」
綾:
「――なにをするつもりっ!!
  
まだ……まだ終わらないんですかっ!!」





 右肩の蛇は、自ら食い千切り……、
 心臓に巣食っていた一匹は虹の刃に消され……、

 だが、未だ残っていた左肩の蛇が、
断末魔にも似た叫びを上げ、倒れたケイオスに襲い掛かる!

 そして、ケイオスに食い付くと同時に蛇が弾け、中から無数の瘴気蟲が発生する!

 傍にいた綾を弾き飛ばし、
蟲達はケイオスの体を包み込み、瞬く間に、巨大な蟲塊となる!

 蟲塊の表面で明滅するのは、
ウイルスバグの証である、緑色の光……、

 緑光は明滅を繰り返す度に、
その数が増えて、蟲塊を汚染、侵食していく。






「自己再生、自己進化、自己増殖……、
我が最後の力で、カーライソンの体に未だ残るウイルスバグを暴走させてやろう!
我が滅びると同時に、ウイルスバグは、世界に弾け、ばら撒かれる!
そうなれば、世界中の竜族は、全てウイルスバグとなるだろう!
それが、我が最後の・・我が子達への置き土産だ!
ウイルスバグの力で、ガディムを倒せっ!!
その後に、世界に君臨せよっ! 我が子らよっ!!」






「てめぇ、まだ、まだ……、
まだ、兄者を苦しめるつもりかぁぁぁぁっ!」





<後編に続く>
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注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。

注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
    その為、今後、ルールが改訂される場合があります。