ライル:「――ところで、一つ訊いて良いか、ハゲ?」
アジ:「ハゲじゃない! スキンヘッドと言え!」
ナーフ:『じゃあ、チキンヘッド』
アジ:「鳥公に言われたくはない!」
綾:「……どっちでも良いじゃないですか、ハゲ」
ライル:「意外に変な所に拘る奴だな。
まあ、『剃ったのだ!』と言わんところを見ると、本物か?
それはともかく、アヌーラさんって、解封印者の継承者じゃないのか?
死なれちゃ困るんじゃないのか?」
アジ:「構わんさ……もう、その役目は果たした。
既に、アヌーラの血を使って、イリスからのクワルナフの抽出は完了している」
ケイオス:「ほほう? あのじゃじゃ馬が、
すんなり役目を果たさせてくれたかな?」
アジ:「――うん、苦労した」
綾:「何だか、途端に苦労人っぽい感じが……」
ライル:「……同情はせんがな」
GM:ちなみに、そのゴタゴタで、
ナナセリアン事件が起こったんです。
一同:お疲れ、ハゲ……、(笑)
『Leaf Quest TRPG』 リプレイ
ふぁんぶら〜ズ冒険譚 15
『静かなる大首領』 中編
―― PHASE-07 ウロボロス ――
<第1ターン>
GM:さあ、戦闘を始めますよ。
相手は、ザッハークの大首領アジ=ダハーカ、
白仮面ウロボロス、武装状態のアヌーラの3人です。
ライル:アジ=ダハーカも注意が必要だが……、
どいつもコイツも、厄介そうな相手だな。
イルス:白仮面は、なんか、妙な力で攻撃を防いでたし……、
あの緑色の光、僕達、見覚えあるんだよね?
綾:何処で見たんでしたっけ?
ケイオス:さあな、だが、一番気になるのは、アヌーラの生体装甲だ。
あれの性能と、武装の解除の方法……、
この闘いの中で、その方法を見つけなければ……、
まあ、1つだけ、手は考えてあるのだが……、
GM:それを試す為にも、イニシアティブは重要ですよ。
(ころころ)こっちは12です。
綾:ここは、確実にいきます!
ブースト1点使用で(ころころ)14です!
ライル:よしっ、オレから行く!
綾っちは、待機してくれ!
綾:いつものパターンですね、了解です!
ライル:いや、いつもとは、ちょっと違うぜ!
『ショックボイス』を使うのは、いつも通りだが、
復活ブーストを1点使用して、これを使う際に、
敵に対する『悪意』ではなく『兄者の想い』をぶつけることにしたい。
GM:良いですよ。ただし、ケイオスとの合体技っぽいから、
ライルとケイオスの2人分の行動消費にしますからね。
ケイオス:「頼む、弟者……、
私だけでは、届けられる目算が低い……、
だが……お前の、力なら!」
弟者の手を、しっかりと握る。
手から、伝わる気持ちは、
ただ『救いたい』『護りたい』という意志!
ライル:「任せろ、こんな時に何もできないで、何が魂の兄弟だっ!!
お互い拳を握り合って、ショックボイスをアヌーラにぶつける!
イルス:「ライルさん、ケイオスさん、お願い……邪魔は、弾くから」
綾:「そーですね。特に、そこの変態白仮面。
脇役は脇役同士、仲良く……潰し合いましょうか」
ライル:「ケイオス……いや、アルベルト=カーライソン!
あんたの魂、オレが代わりにぶつけてやる!
アヌーラさん、オレの……いや、オレ達の歌を聞けぇぇぇぇぇっっ!!」
いくぞ、最後のブーストも使って、さらに、必殺技の特殊効果の3倍消費!!
(ころころ)クリティカル!(ころころ)また、クリティカル!!
いっけぇぇぇぇっ!!(ころころ)達成値46だぁぁぁっ!!
GM:なんだ、その達成値っ!?
ぼ、防御して(ころころ)ひぃぃぃぃっ!!
30ターンの間、命中と回避に−10!?
ほとんど無力化されてるぅぅぅっ?!
――な〜んてね♪
実は、ここまでは想定通り。
ライルが、ブーストを、
使い切っちゃったけど、そのへんは、いくらでもフォローできる。
あとは、こっちのターンになったら、
アジ様の行動で、ケイオス達に、アヌーラを救う為のヒントを――
ライル:「ど、どうでぇ……て、てめぇらなんかに、兄者を……、
兄者の『家族』を弄ばれてたまるかってんだ」
アヌーラ:「――っ!!」
ライルの歌に、狂化しているはずのアヌーラが一瞬、ひるむ。
そして『ピシィ!』と、僅かに、彼女の顔を覆う黒い仮面にヒビが入ります。
ライル:「オレの役目は……ここまでかも知れねぇ。
すまん、皆、後は頼む」(がっくり)
ブーストは残り0、MPも1だ。
ケイオス:「ありがとう。後は、きっちり……始末をつけてくる」
イルス:「大丈夫……魂、届いたみたい」
アジ:「ちっ、忌まわしき虹の楽譜か……だが、かつての英雄には遠く及ばんな」
ライル:「けっ、かつての英雄なんか目指してねえよ。
オレが目指すのは『彼女』だけの英雄だ」
ケイオス:「そうだ、私達は、私は…独りだと英雄になんてなれやしない」
だから、寄り添うんだよ。
そこに気付くまで、大分、寄り道してしまったがな」
ナーフ:『――ちなみに、参考までに聞くけどよー。
その過去の英雄って、どんなんだったんだい?』
アジ:「それは、自分の胸に手を当てて訊いて見るがよい。
もっとも、そんな惨めな姿となってしまっていては、もう、分からぬだろうがな」
ナーフ:『――何のこっちゃ?』
動物使役を使って、天空を大回りに迂回し、アジにスパイダーネットを投下。
――えっ?
すぱいだーねっと?
……しまったぁぁぁぁっ!!
このアイテムの効果の事、すっかり忘れてた!!
やばい、やばいぞ……、
アジ様の行動が封じられたら、計画が……、
アヌーラ救出のフラグが立てられないっ!!
イルス:(ころころ)14で命中!
アジ:「くっ……小癪な……」
(ころころ)13で回避失敗。
これで、アジは、1ターン行動不能です。
注釈:このセッション時の、スパイダーネットの効果は、
『相手の行動を1ターン封じる』でした。
イルス:続け様に、僕の攻撃っ!
必殺技『大地と風の特攻部隊』っ!!
ナーフ:『とりあえず――存在がむかつく。
そこで黙ってろ、ハゲ――いくぞ、イルスッ!!』
スパイダーネットを投擲後、クルッとアジの前で旋回し、
即座に、必殺技の体勢に入るっ! 目標は、白仮面っ!
白仮面:「なんだ? 俺と遊びたいのか、坊主?」
イルス:「……踊ろう、生命のダンス」
ナーフ:『ちょっと激しいから躓くなよ!』
両手持ちで、命中は(ころころ)14っ!
白仮面:(ころころ)ギリギリ回避失敗!
くそっ、この技、いい加減、封印してやりたいっ!
イルス:ダメージに、ブースト2点使用っ!
(ころころ)クリティカルして(ころころ)合計42点っ!
僕も、結構、怒ってるよっ!!
GM:イルスとナーフの同時攻撃が白仮面に襲い掛かる。
しかし、その攻撃に対して、白仮面は、ただ、左手を前にかざすのみ。
すると、その腕に、また、あの緑色の光が発生し……、
白仮面:「はっはっはっはっ!
届かねぇなあ!? そんな攻撃よぉ!!」
防御判定2d6+99(ころころ)106でダメージ0です。
綾:緑色の光……ああ、そうかっ!!
ライル:この防御力は……っ!!
ケイオス:ウイルスバグかぁぁぁっ!!
GM:そう、白仮面の腕に浮き上がるのは、
緑色の光苔……ウイルスバグの証……、
ケイオス:それが意味するモノ……、
白仮面はドラゴンの眷属なのか……、
ナーフ:『なんだこりゃぁぁぁっ!?』(←ウイルスバグは見たこと無い)
イルス:「……そっかっ! 僕の馬鹿……っ!
もっと、早く気付いていれば……」
ノーダメージってことは、必殺技は封印だよね。
GM:ついに破りましたよ、その技……、
すげぇ姑息な手でしたけどね。(笑)
ケイオス:まあ、ちゃんとヒントは出ていたからな。
それに気付かなかった時点で、こっちの負けだ。
綾:物理攻撃はダメ、となると……、
魔術攻撃は、マカラカーンで反射されることを考えると……、
あっ、でも、アジは、ネットの効果で行動できないんですよね?
ライル:白仮面がマカラカーンを使う可能性は否定出来んけどな。
綾:「やっぱり、ビョーキ持ちですか?
移るとヤだから近寄らないでくださいよー」
スクカジャも効果は薄いし……えい、いっちゃいます!
様子見の意味も込めて、白仮面にザンを(ころころ)――
白仮面:「はっ、何処狙ってやがる!」
(ころころ)綾の放った衝撃波を、軽く体を捻るだけでかわします。
GM:さあ、今度は、アジ達の行動です。
と言っても、アジは行動できないので、まずは、白仮面から……、
白仮面:「へっへっへっ……どうやら、コイツが何なのか知ってるようだな。
となれば、俺の正体にも、察しがつくと思うがねぇ」
ケイオス:「……だから、どうしたと言うのだ?」
綾:「どーせブチ殺すんだったら一緒です」
白仮面:「半分だけとはいえ、竜の力ってのは便利なもんだ。
ちょっと応用してやれば、こんな風に――」
と言うと、白仮面の顔がライルそっくりになります。
ライル:「な、なにぃぃぃぃぃっ!?
て、てめえっ、その顔やめろっ!
今すぐ止めやがれっ!! クソ野郎がぁぁっ!!」
白仮面:「驚くことは無いだろ?
竜ってのは、変化の術に長けてるんだ。
こんなマネは朝飯前ってやつだ。
それと、言われなくてもそうする。
誰が好き好んで、こんなギョロ目になるかよ。
まあ、『色々と』役には立ってくれたがな」
ライル:「オイコラ、色々たぁ何だ? 色々たぁ?」
白仮面:「さ〜てな……心当たりはあるんじゃないか?」
ライル:「酒場のおっちゃんが言ってたのは、これの事か……、
どうりで、行動が下品だと思ったぜ」
ケイオス:「結局、何をするにしても、
人の顔を借りねば何もできない、情けない男だ」
白仮面:「はっ、何とでも言えよ……、
ウイルスバグ……この病気に犯されると、
気が狂うって聞いたが、どうやら、元から狂っていれば、関係なかったようだな」
と言いつつ、白仮面は、持っていた銃を天に向ける。
その銃に、緑色の光が集束し、巨大な砲身に姿を変える。
それは、いつか見た、ドラゴンの――
ライル:来たぁぁぁぁっ!?
イルス:データドレインッ!?
最大LVの技能値を低下させるレベルドレイン!!
白仮面:「――いくぜ、ドレインハート!!」
白仮面が緑光の砲弾を、天に向かって放つ!
それは、空中で破裂し、迫撃砲の如く、ケイオス達に降り注ぐ!
レベルドレインの全体攻撃です。
綾:ひやぁぁぁぁっ!?
なんて鬼畜な攻撃っ!!
ケイオス:ウイルスバグが、ドラゴンにのみ感染するのなら……、
GM、復活ブースト1点使って、ドレインハートを相殺する!
私なら、それが出来るはずだっ!
ライル:――兄者っ!?
ケイオス:私のギャグ特徴に『黒竜の兼族』というのがある。
ならば、パナップがウイスルバグに倒れた時に、
この私にも感染している可能性はあるだろう!
ここで、ウイルスバグとしての力を発現し、データドレインを撃つ!
GM:その通りっ! ケイオスは、ウイルスバグに感染しています。
なので、復活ブースト1点消費で、データドレインが撃てます。
判定は通常魔術攻撃と同じ。全体攻撃へのアレンジも出来ます。
ケイオス:「うっ……おおおおおおおおっ!!」
実物と見紛うかの如き、漆黒の竜の翼が展開っ!
ウイルスバグの力で、黒翼に緑光が宿り、
白仮面のドレインハートから、仲間達を守る!
対抗行動で(ころころ)命中は17だ!
白仮面:こっちの命中は(ころころ)11か!
白仮面のドレインハートは、ケイオスの黒翼で、悉く弾かれる!
ケイオス:「……なんだ、そう大層なことでもないな」
白仮面:「なっ、データドレイン……ウイルスバグだと!?
何故、それに感染して、正気でいられる!?」
ケイオス:「胸糞悪い話だが、お前と同じだよ……、
私はな、とうの昔に狂ってるのさ。
彼女を目の前で陵辱され、亡骸を目の当たりにした時からな!」
ライル:「兄者にウィルスバグ……ってことは、兄者も竜の血が?」
ケイオス:「どうもそうらしい、両親共に人間だったはずなのだが……」
ライル:「なるほど、そういうことか……、
おい、そこの腐れ偽者。てめえの腐ったバグと、
兄者のバグとじゃ、全然『質』が違うんだよ!
おそらく、兄者のバグは、パナップから感染したやつだからな。
パナップのバグが、パーパの害になるわけがないだろ!」
GM:実際には、イイ感じで、蝕まれてますけどね。
竜の要素が薄いのか、感染の進行は、かなり遅いですけど……、
まあ、ここで、それをツッコむのは、野暮ってやつですな。
白仮面:「その台詞、そっくりそのまま返してやる。
この力は、大首領様から頂いたものだ。
その力が、そんな道化師の力に負けるわけがない!」
ライル:「(無視して)いいか、兄者、これは偶然かも知れねえけど、ご都合主義で聞いておけ!!
兄者の支えになってるのはな、ここにいるオレ達だけじゃねえ!
パナップも、お師匠様も……皆で、あんたを守ってるんだ!!」
ケイオス:「わかった……肝に、命じておく」
ライル:「おうけい、いい顔だ」(親指グッ)
ケイオス:「…………」
無言で、親指を立てて応えよう。
GM:続いて、アヌーラの攻撃です。
あっ、その前に、アヌーラの生体装甲の効果を教えておきましょう。
イルス:きっと、ロクでも無い効果だよ。
GM:生体装甲『エルトゥガランサス』の効果は、
魔術の威力アレンジをペナルティ無しで使用できるようにします。
ただし、アレンジで追加できるダイス数は1d6でランダムで決定されます。
綾:つまり、威力アレンジの最低が+1d6で、最大は+6d6?
ケイオス:で、当然、自属性の攻撃魔術を使ってくるだろうから、
それに+3d6されて……、
イルス:4d6〜9d6……?
このダイス数だと、期待値だけでクリティカルするから……、
ライル:6d6〜11d6+固定値?
これ、喰らったら、一発で死ねるぞ?
開幕でショックボイス使って正解だったな。
GM:では、アヌーラは綾にブフを放ちます!
生体装甲の効果は(ころころ)1……、(泣)
綾:わたしですか?! でも、そのくらいなら……、
GM:命中判定は−10されてるから、
2d6−2(ころころ)無理だよ、こんなの!
ええいっ、メイン火力が完全に役立たずだ!
綾:(ころころ)回避成功です!
でも、−10されてて、それでも、修正値は、たったの−2ですか?
つまり、元々は魔術命中+12? 鬼みたいな強さですね。
ライル:つくづく、ショックボイスは正解だった。
GM:白銀の籠手から放たれた刃の如き冷気が、綾の脇をかすめていきます。
ちなみに、本来なら2回行動だったんですよ?
でも、ライルとケイオスの歌によって、1回行動になってるんです。
ライル:ふはははははっ!
ショックボイス万歳! 経験値の借金がすげぇけどな!(笑)
GM:で、最後のアジ様の行動は、
スパイダーネットから抜け出して終わり。
<第2ターン>
続く、第2ターン……、
ケイオスは、前ターンに対抗行動をした為、行動不可。
そして、綾は、念のために、
全員の命中力を上げようと、スクカジャの全体アレンジを使用。
しかし、ここでファンブルしてしまい、発動失敗。
綾:「スクカ……っくしゅん……ありゃ?」
さっき通り過ぎた冷気による寒気で、クシャミをしちゃいました。
白仮面:「くはははは! 笑わせてくれるじゃないか!
さすがは道化師(ピエロ)! 最高だ!」
綾:「あ〜……タンマ、今の無し! てーせーをようきゅうするー!
この場で失敗するって何ですか!?
赤っ恥もいいとこですよっ!?
うわーん、穴があったら埋まりたいー!!」
MP1でフラフラのライルは、
予測戦闘込みで、スパイダーネットを使用。
これで、白仮面の行動を1ターン封じる。
さらに、イルスまでも、
ナーフにスパイダーネットを使わせて、再び、アジ様は行動不能に……、
うわ〜い、何もさせてもらえない〜。
このまま、行動を封じられると、
アヌーラの件どころか、もう一つの目的まで果たせない〜。
ライル:「てめぇは、少し黙ってろ!!」
白仮面:「くっ、この、さっきから同じ手ばかりで……っ!!」
ライル:「つまり、学習能力なっしんぐ、あーゆーおーけい?」
イルス:「悪いね……急所は逃さない性質なんだ。
筋力が人間並なら、いい道具はいくらでもある」
ナーフ:『けぇーっ!!』
アジに足払いしつつ、スパイダーネット投擲っ!
アジ:「うぬあっ、またしてもっ!?」
ナーフ:『昔の英雄さんとやらは持ってなかった手だろう?
人は日々成長するもんだぜ』
ライル:「オレ達はな……英雄にゃ及ばねえ力だが、
その分、悪知恵には長けてるんだよ」
続いて、GMのターン……、
アジ様と白仮面は、
スパイダーネットから抜け出して終わり。
アヌーラも、ライルの歌による、
マイナス修正が大きく、綾への攻撃を外してしまう。
<第3ターン>
綾が、先程、失敗したスクカジャ全体アレンジを使用。
今度は、ギリギリ発動に成功する。
続くライルは、また、スパイダーネットを使い、白仮面を行動不能に。
そして、ケイオスが……、
アヌーラを救う為の賭けに出る。
ケイオス:「アヌーラ……さあ、帰ろう。
こんな闘い、もう……終わりにしよう」
アヌーラへ声をかけながら、接近して、魔典を取り出す。
GM、ここで、復活ブーストを1点使わせてもらうぞ?
GM:良いですけど……何するつもり?
(多分、アレを使うつもりなんだろうな〜)
ケイオス:「憎しみを、絶望を……人の心を糧とするなら……、
救いたいと言う願いを、意思を……汲み取ってみせろ!」
アヌーラを、そっと包み込むように抱きしめ……、
イメージは、暗い闇の中、
2人だけでいるアヌーラとエルトに、手を差し伸べるように……、
いくぞ、魔典を使用しつつ『パトラ』!!
状態変化を回復させる魔術なら、これで、アヌーラは正気に戻るはずだ!
――そう。
これが、ケイオスの切り札。
GMも、ケイオスがパトラを取得した時点で、この手段は考えていた。
確かに、この方法なら、
アヌーラの『狂気』と『洗脳』は解除される。
しかし、それだけでは足りないのだ。
あと、もう一手……、
どうしても、あと、もう一手が必要なのだが……、
GM:……よく気がついたっ!
それが、アヌーラの『狂気』と『洗脳』を解く鍵だっ!
ケイオス:「君達は孤独じゃない……、
私も、ライルも綾もイルスも……、
他にも暖かい人達は、たくさんいるんだ。
だから……帰って来いっ!」
アヌーラを抱きしめながら、知らないうちに、両目からは涙が……、
アヌーラ:「あ……ああ……」
虚ろな瞳から、止めどなく涙があふれ、
その両腕が、ケイオスの……父の背中に回される。
そして、抱き合う二人が、魔典の光に包まれ、
パキィィィィンと、黒き仮面が割れ、弾ける!
ケイオス:「もう、失くさないから……、
傍にいるから……だから……っ!」
後半は、声が震え。言葉にならない。
アヌーラ:「あ、あれ……ケイオス……さん……?」
ケイオス:「救えた……今度は……護れたっ!」
ライル:「やった……やったな、兄者!!」
イルス:「……届いちゃったね、ご都合主義」
ナーフ:『まー、そーゆう世界なんだよな、俺らのいる場所はよ』
綾:「でも、まだ、油断はできませんよ。
無粋なのが2匹残ってますからね」
ライル:「ああ、そうだな……、
折角、あの捻くれ飲んだくれのプータローが、
ようやく社会復帰できそうなんだ。何が何でも、復帰させるぞ!」
イルス:「オッケーっ!!」
綾:「護りきるには……もーちょっと無理しないといけませんよ?」
ライル:「ここまで来たら、泣き言も愚痴も言ってられねえ」
アジ:「くっくっくっ、見事だ、ケイオス……、
だが、それで、本当に守れたと思っているのか?」
――これは、GMの心の台詞でもある。
彼らは気付いていないのだ。
アヌーラの生体装甲は……、
まだ、解除されていないことに……、
生体装甲『エルトゥガランサス』――
使用制限回数を越える事で起こる副作用は、
『死んで灰になる』まで闘い続けるし『狂戦士になる』である。
ケイオスのパトラによって『狂気』は解除された。
まだ、残っている……、
もう一つ、致命的な副作用が……、
――さて、ここで、ちょっとネタバレをしよう。
GMが考えていた戦術プランは、以下の通りである。
まず、生体装甲を装備したアヌーラの、
超火力に対抗するため、ライルが『ショックボイス』を発動。
それによってアヌーラが無力化された為、
アジ様が、アヌーラにディスペル(解呪)を試みる。
だが、ここで、アジ様は逡巡し、結局、解呪を諦めてしまう。
何故なら、アヌーラに解呪を掛けてしまうと、
ショックボイスの効果だけでなく、生体装甲すらも解除してしまうからだ。
……これが、フラグである。
アジ様の、この行動で、
ケイオス達に、ヒントを与える予定だったのだ。
しかし、スパイダーネットによって、
行動を封じられ、ヒントを出すことが出来なかった。
本当の答えは……、
『支援魔術の効果を消去』だと……、
ライルの宝具の第6楽章こそが、アヌーラを救う手段だったのだと……、
……完全に、GMのミスである。
スパイダーネットの存在を失念し、
アヌーラを救う為のフラグを立てられなかった。
そして、その結果、ケイオス達は、
もう、アヌーラの件は解決したと思い込んでしまった。
つまり、この段階で……、
アヌーラの死は確定してしまったのだ。
ケイオス:「思っちゃいないさ……まだ、一つ突破しただけだ。
貴様らを殲滅して……やっと、護れたと、彼女に胸を張れるんだ!」
アジ:「なるほどなるほど、そうか、気付いていないのか。
なら、それでも構わんさ。お前が信じるように行動してみるが良い」
ケイオス:「そうさせて、もらうさっ!」
ライル:「その減らず口、とっとと黙らせてやる!」
イルス:「容赦はしないと言った――
憂いもなくなったし……まずは、手の内を見せてもらうよ」
アジにふつうに攻撃(ころころ)17で命中。
アジ:(ころころ)回避失敗。ダメージは?
イルス:あれ? 何もしてこないの?
斧でズバッと(ころころ)18点のダメージ!
アジ:「ぬっ、わたしの体を傷付けるとは……、
さすがは――に認められし者か」
(ころころ)6点のダメージですね。
イルス:「……?」
今、アジが何を言ったのか気になるけど……、
GM:それは、聞き取れませんでした。
では、こっちのターンですね。
さて、こっちのターンだけど……、
アジ様と白仮面は、どういう行動をとるべきだろうか?
アヌーラの洗脳が解けた以上、
彼女は、もう、アジ様にとって、何の利用価値も無い。
いや、あるにはあるが……、
これはもう『達成された』と考えて良い。
アヌーラ救出フラグに固執する理由は……もう無い。
なら、とるべき行動は……、
『もう一つの目的』の達成を、最優先とする事……、
となると、もう、スパイダーネットは勘弁だから……、
ケイオス:どうした、GM……?
珍しく長考しているな?
GM:いえいえ、ちょっと迷っていただけです。
白仮面は、スパイダーネットから脱出して終わり。
で、アジ様は、テトラカーンを全体アレンジで発動します。
ライル:物理攻撃を防がれたか……、
もしかして、これで、スパイダーネットも?
GM:もう使えませんね。
アレも物理攻撃とみなされます。
―― PHASE-08 ナーフウェイト ――
<第4ターン>
綾:わたし達のターンです。
ここは、白仮面のウイルスを除去してもらわないと……、
ケイオス:わたしのデータドレインか?
いや、ここは魔典込みの黒翼だな。
あっちには、ほとんどダメージを与えてないから、
初撃で、最大HPごと削ってやらんと……、
ライル:だったら、その下地作りをさせてもらう!
宝具の第5楽章! 回避行動を封じてやるっ!
(ころころ)おっしゃ、クリティカル!!
GM:(ころころのころ)アジ様も白仮面も抵抗失敗です。
ライルが唄い続ける限り、回避行動が封じられます。
ケイオス:(ころころ)こっちは、綾だけが抵抗成功か?
綾:回避キャラの面目を保ちました!
ライル:「かつての英雄には及ばないかもしれないが……、
てめぇら、想いの力……思い知れぇぇぇぇぇぇぇ!!」
アジ:「虹の楽譜――ええい、忌々しいっ!!」
アジ様と白仮面は、ライルの歌によって、回避不能にされる。
そこへ、ケイオスが、最大MPを犠牲にして、
魔典込みの『ウイング・オブ・ディスペア』を発動。
ダメージの出目は揮わなかったが、
それでも、アジ様と白仮面の最大HPを、ごっそりと奪った。
畳み掛けるように、
イルスが新技『忘れられし封の代行者』を使用し――
イルス:「皆、頑張ってるから……、
僕だけ、隠し球を使わないのは無しだよね」
軽やかに跳んで、宙返りしつつ、背中を向けた状態で、白仮面の目前に降りる。
そして、バンダナを外し――
白仮面:「――なっ!?」
いきなり目の前に現れ、後ずさる。
イルス:「――畏れよ」
振り返り、その眼光が白仮面を射抜くっ!
ライル:出た、零距離スーパーイルスビーム!(笑)
イルス:ちなみに、この時、白仮面とアジは、
ゴ○ゴ13な目のイルスを見た!(爆)
一同:ぎゃあああああああっ!!(爆笑)
白仮面:「こ、このプレッシャー……!?」
アジ:「て、天敵がぁぁぁぁぁっ!!」
ナーフ:『なーんか、そこのチキンヘッド、俺のこと知ってるらしーけどさぁ……、
イルスのコレについても説明できたりできんのかなー?』
この技によって、7ターンもの間、
アジ様達の行動に、さらなるマイナス修正が加わり……、
最後は、綾が、残りMPのほとんどを使って、
マハザンを全体+威力増加+5d6のMAXアレンジ発動する。
アジ様と白仮面は、大ダメージを受けるが、まだ倒れない。
綾:「しぶといですねぇ……、
こっちは弾切れです〜、あとはよろしく〜」
GM:じゃあ、こっちの番ですね。
アジ様がチャンバースタッフを構え、イルスに攻撃!
イルス:回避は出来ないよ。ダメージは?
GM:実は、アジ様が撃ったのはペイント弾なので、ダメージは無しです。
イルス:――ほえ?
GM:ペイント弾が、イルスに命中し、イルスの身体が赤く染まる。
ただ、その匂いは、塗料のモノではなく……生臭い、血の臭い。
イルス:「――わっ!?」
ペイントが顔にかかって、思わず目を閉じる。
ナーフ:『なんだこりゃ……血ぃ?!
なんで、こんな真似……いや、そうかっ! 奴の狙いはっ!!』
GM:それが血だと気付いた瞬間、イルスの胸から淡い光が発せられ……、
イルスの体の中から浮き出るように、1つの腕輪が出現する!
アジ:「ふははははははははっ!
ついに見つけたぞ、ドゥッシュクワルナフ!!」
ケイオス:そうか、イルスは内包者……、
解封者の血を浴びれば、その身から、クワルナフを具現化させる!
綾:アジ・ダハーカの封印を解く最後の鍵である腕輪……、
あのペイント弾の血は、解封者の血だったんですね。
おそらく、ボスが直々に出てきたのは、これが目的……、
ライル:ちょっと待て……、
内包者イリスの解封者はアヌーラだった。
じゃあ、内包者イルスの解封者は……、
あのペイント弾の血は……誰の血だっ!?
GM:さっき、白仮面が言いましたよね?
『色々と役に立った』って……それが答えです。
ライル:うああああっ!
やっぱり、そういう意味かぁぁぁっ!!
アジ:「確保しろ、ウロボロス!!」
アジが命じると同時に、白仮面が腕輪を確保しようと動く!
イルス:GM、動物使役を使って、ナーフが腕輪を奪う!
GM:イルスの対抗行動扱いになりますが……、
こっちの思惑に、すぐに気付いたようですし、
一番近くにいたナーフだけが反応できた事にします。
ナーフ:『――っ!!』
その疾風は、見逃さなかった。
まだ、ブーストは1点残ってるっ!
(ころころ)命中による対抗判定はクリティカル!
白仮面:「――な、なにっ!?」
(ころころ)クリティカルは、さすがに無理っ!
ナーフ:『ンなこったろーと思ったぜ!
そりゃそーだなぁ。今このメンバーの中で、
お前さんにとって価値のある人材はイルスだけだろ。あとは邪魔だけだ!』
誰が確保するよりも早く……それを掴み取り、天高く舞い上がる。
アジ:「な、何をしている、この無能がっ!!」
ナーフ:『性格、思考、能力、存在……、
すっげぇな、根本から何から、
全部気にいらねぇのは、あんたが始めてたぜジジイ』
アジ:「くっ、言わせておけば……、
覚悟しろ、ファリィィィドゥゥゥンッ!!」
何としてでも腕輪を奪おうと、激高したアジは、ナーフに向って杖を構える!
ナーフ:『イルス、あとは自分で何とかできるな――あばよ』
そして、ナーフは、ニヤリと笑い――
笑ったんだろう、少なくともアジにはそう見えた。
――空の彼方へと飛び去った。
GM:なにぃぃぃぃぃっ!?
――はい?
ナーフ、逃げちゃうの?
イルスすらも置き去りにして?
ここから、クワルナフの奪い合いになるんじゃないの?
それ、持って行かれると困るんだけど?
えーと、えーと……、
いかん、飛んで逃げるナーフを妨害する術がない。
GM:――っ!? ――っ!?(←悶えてる)
ケイオス:ど、どうした、GM?(汗)
GM:どーすんだよっ!!
何で、ナーフ、逃げちゃうんだよ!?
シナリオが〜! 今後の予定が〜っ!!
イルス:だって、これが、一番、確実にクワルナフを奪える手段だし……、
ちなみに、ナーフの性格上、この後、僕達と合流するって選択肢は無いよ?
GM:それは、尚更、悪いわっ!!
打開策、打開策、打開策……、
落ち着け、GM……KOOLになれ、GM……、
そうだ、こういう時は素数を数えるんだ……、
綾:なんか、かなりテンパってますよ?
ライル:相当、予想外の展開だったみたいだな〜。
GM:うーん、うーん、うーん……、
よしっ、ここで、一旦、シーンを切る!
諸君、非常に申し訳ないが……、
この愚かなGMに時間を与えてくれやがりなさい!
ケイオス:それって……セッションの日を改めるってことか?
GM:ナーフとクワルナフを探す為に、
シナリオを1本追加するのもありだが、
すでに、次のシナリオが最終回だったりするので、
ここに来て、シナリオ追加は避けたい。
じっくり時間を掛けて、この状況の打開策を考えて来ます。
ライル:……り、了解した。
綾:珍しいケースですよね?
シナリオの修正の為に、セッションの日を改めるって……、
GM:というわけで、お疲れ様でした〜っ!!
一同:お、お疲れ様でした〜……、(汗)
<後編に続く>
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注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。
注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
その為、今後、ルールが改訂される場合があります。