GM:さあ、何事も無かったかのように、
セッションの続きを始めましょうか。(笑)
ケイオス:それは良いが……、
ちゃんと話の展開は考えて来たのか?
イルス:ナーフが、クワルナフ持って逃げちゃったからねぇ。
GM:大丈夫です、よ〜く考えたら、
逃亡するナーフを妨害できて、それをする理由もある人物が1人いました。
ライル:そんなの……いるか?
そんな真似するって事は、オレ達の敵だろ?
GM:まあ、敵の味方は敵、とは限りませんがね。
綾:――はい?
ケイオス:とにかく、始めようか?
その答えも、すぐに分かるだろうし……、
GM:というわけで……、
最初は、GMシーンから入りま〜す。
一同:りょうか〜い♪
『Leaf Quest TRPG』 リプレイ
ふぁんぶら〜ズ冒険譚 15
『静かなる大首領』 後編
―― PHASE-09 ファリードゥーン ――
戦場から、遥か離れた場所――
とても、目が届くとは思えない程に離れた場所から、
アジ・ダハーカとケイオス達の闘いを傍観している者がいた。
「――ちっ、あのバカ鳥め、余計な真似を」
その者は、吐き捨てるように呟くと、
持っていた得物を構え、魔力で強化した視力で、目標を捕捉する。
「ちょっと痛いかもしれんが、許せよ」
呟くと同時に……、
その魔方陣の使い手は、砲撃を放った。
全力全開で――
GM:――はい、GMシーン終了。
イルス:ちょっ、全力全開って……っ!?(笑)
ケイオス:いくら相手がナーフとはいえ……、
鳥一羽に対して、なんてえげつない事を……、
ライル:ナーフ……南無。
お前の雄姿は忘れない。
綾:まだ死んでませんよ……、
あくまでも『まだ』ですけど……、
アジ:「いつもいつも、この私をコケにしおって……、
覚悟しろ、ファリードゥゥゥゥンッ!!」
と、アジは怒り狂った形相で、飛び去ろうとするナーフを睨みつけています。
ケイオス:「くくく……いいツラが出来るじゃないか」
ライル:「ナーフが、ファリードゥーン……?」
綾:「確か、虹の剣の英雄でしたっけ?」
ライル:「信憑性はともかくとして……、
仮定だけで考えれば……辻褄は合うな」
ナーフ:『――けっ』
確かに、この鷹は笑った。アジ・ダハーカには、そう見えた。
GM:と、不敵に笑った、次の瞬間、
ナーフは、とてつもない悪寒を感じた。
ナーフ:『――っ!?』
そのまま、悪寒に引っ張られるように天高く舞い上がる。
GM:しかし、その悪寒は、刻一刻と増していく。
そして、野生の本能の感じるままに、
その悪寒を覚える方角に目を向けると――
ナーフ:『へ……?』
GM:ちょっとシャレにならない威力の魔力波が……しかも、直撃コース♪
ナーフ:『なんとぉぉぉっ!?』
一同:なぁぁぁぁふぅぅぅぅぅっ!!
GM:皆が見上げると同時に、ナーフに魔力波が直撃……、
いや、まさに奇跡的な反応で回避するも、
砲撃は、翼にかすり、その衝撃で、腕輪を落としてしまう。
綾:「――伏兵?!」
ケイオス:「まだ、これ程の火力を持つ相手がいたとは……」
アジ:「――今度こそ、確保しろ、ウロボロス!」
白仮面:「もらったっ!!」
皆がナーフに気を取られた隙に、即座に、クワルナフを確保する。
ライル:「ちくしょうが……、
まあいい、奴をぶっ倒して奪い返してやる」
アジ:「しかし、今の砲撃は、まさしく……、
奴め、どういうつもり――なるほど、そうか、そういうことか。
舐められたものだ。いいだろう、その傲慢さを後悔させてくれる」
ケイオス:「敵を前にして余所見か?」
ライル:「おう、ハゲ! 伏兵たぁ、セコイ真似してくれるじゃねえか」
アジ:「伏兵? まあ、確かに、そうとも言えるかもな。
もっとも、こちらとしても、少々、予想外だったが……」
ライル:「予想外……今の攻撃は、仲間じゃないのか?」
<第5ターン>
ライル:さて、オレ達のターンだが……、
取り敢えず、ウロボロスには、攻撃を仕掛けても無駄だよな?
綾:ウイルスバグがある以上、
まずは、ケイオスさんに、データドレインを使って貰わないと……、
ライル:だから、殺るなら、まず、あのハゲだ。
また、あいつにテトラカーンを使われたら厄介だからな。
イルス:ってゆ〜かさ……、
何か、目的は果たしちゃっただろうし……、
一端、引くだろうね、あっち……、
綾:確かに、手に入れたばかりで、
余裕ぶっこいて、ここで使ったりはしないでしょうし……、
ケイオス:生体装甲アジ・ダハーカ……、
その装着者となる為の2つのクワルナフは、奴の手にある。
となると、装着者は……ウロボロス?
生体装甲とウイルスバグのコンボは、かなり厄介だが……、
綾:どっちにしても、狙いはアジですね。
武装される前に倒してしまえば良いんです。
ライル:じゃあ、綾っちとイルスで、アジを攻撃してくれ。
綾っちが先制して、それでダメっぽかったら、
イルスは、またスパイダーネットで、アジの動きを封じるんだ。
兄者は、データドレインを! オレは唄い続けて、回避を封じる!
イルス:おっけー。
綾:「戦場じゃ、余所見してると――死にますよ?」
余所事を考えているアジに攻撃っ!
ライルさんの歌の効果で、回避は出来ませんよね?
ブースト2点使って(ころころ)クリティカル込みでダメージ40点です!
アジ:「うっ……ぐっ……」
綾の銃弾が、アジの脇腹を抉る。
しかし、アジは怯むこと無く……、
いや、むしろ、ジリジリと前に出てきます。
まるで、ウロボロスを……あの腕輪を守るかのように……、
ケイオス:「貴様のその力……奪わせてもらうぞ!」
デッドエンドの時の魔方陣が、腕の先に現れ、ウロボロスを捕捉する!
復活ブーストの残り最後の1点を使い、データドレインを発動!
白仮面:「ちっ……来るか!?」
それを相殺しようと、データドレインの体勢に入る……が間に合わない!
ケイオス:「データドレイィィィィンッ!!」
白仮面:「お゛お゛お゛お゛お゛
お゛お゛お゛ぁぁぁぁぁぁっ!!」
ケイオスのデータドレインが直撃し、
ウロボロスのウイルスバグを消去していく!!
ケイオス:これで、物理攻撃も通用するようになったな!
ちなみに、GM、ウイルスコアをドレイン出来たりは?
GM:コア抽出は出来ませんが……1d6振を2回ってみて。
ケイオス:(ころころのころ)4と2だが?
GM:じゃあ、最大HPが2点増えました。
ケイオス:微妙に切ない結果だな。
白仮面:「ちっ、俺のバグが……だが、まあ、いい。
感染なんて、また、いつでも出来る……今は――」
と、白仮面は、ドレインされたのにも構わず、懐をゴソゴソやっています。
ナーフ:『おい、こりゃ逃げる気だぜ、白仮面!』
撃墜されて地に倒れたまま、イルスに叫ぶ。
イルス:「なら……捕まえるっ!」
スパイダーネットを(ころころ)白仮面に投げつける!
GM:(ころころ)それは、アジ様が対抗行動で庇う!
アジ:「――ぬっ、ぐあ!!」
白仮面の前に躍り出るアジ。
そして、スパイダーネットに絡まれ、その場に倒れる。
ケイオス:「……どういう、事だ?」
首領が部下を庇うなんて、基本的に有り得ないだろう?
GM:その答えは、すぐに分かりますよ。
では、こちらのターン、白仮面は、懐から、あの南京錠の転送機を取り出す。
そして、手に入れたばかりのクワルナフと反応させ、転送ゲートを出現させます。
アジ:「ゆけ、ウロボロス! ここは、わたしが抑える!
最後のクワルナフを――に届けるのだ!」
ライル:「どういうことだ?! あいつがボスじゃないのか!?」
ナーフ:『ちっ、ありゃ間に合わねぇ!
腕輪を取られた時点で、もう勝負は決まってらっ!』
ケイオス:「――逃げる気かぁ!」
白仮面:「あばよ、兄弟……テリオンに伝えておきな。
お前の考えはよく分かった。
その挑戦、ザッハークは全力で受けて立つ、ってな」
ケイオス:「テリオン、だと……?」
白仮面:「さっきの砲撃の主だよ……、
じゃあな、道化師には勿体ない、最高の舞台を用意しておいてやるよ」
と言い残し、白仮面は、転送ゲートに飛び込み、逃亡します。
追おうとしても無駄です。ゲートはすぐに閉じてしまいます。
ライル:「ちっ、逃げられた……か」
綾:「目標を見誤りましたね……、
優先すべきは、クワルナフと、それを持つ白仮面……、
アヌーラさんのことで、ちょっと熱くなってたみたいです」
ライル:「だな……一番、状況が見えてたのはナーフだけだった」
ケイオス:「まあ、構わんさ……、
一応、大首領(?)を確保できたからな」
ライル:「おい、ハゲ! てめぇには、色々と訊かせてもらうからな!」
アジ:「ふっははは……これでいい……、
これで、我が力は、完全に解き放たれるのだ……、
はぁーはっはっはっはっ!!」
狂ったように笑い声を上げながら、
アジは、スパイダーネットの中でもがきながらも、自分の腹をかっさばく!
ライル:「なっ……っ!?」
綾:「自分で……まさか、偽者!?」
ライル:「偽者にしては『我が力』って……何なんだ?」
アジ:「ふっ……はは……、
こんなものでお前達が倒せると思わぬが、
まあ、足止めにはなるだろう……、
ダマーヴァンドで待っているぞ、虹の英雄の後継者達よ」
と言い残し、アジは息絶える。
すると、腹の傷口から、無数の毒虫が、
ウジャウジャわらわらと這い出てきます。
一同:――気持ち悪っ!!
ケイオス:「……受けて、立ってやるよ、古の邪竜」
この毒虫が足止めか……ってことは、包囲されるよな?
アヌーラを後ろに庇いながら、構えるぞ。
ライル:「しかし、この毒虫の群れは……」
綾:「もしかして、これが自己増殖?」
イルス:「“しかし、森の如き命は、夥しいまでに増え続け――”か」
GM:というわけで、改めて戦闘開始です。
敵は『アジ・ダハーカの幼虫』(モブ)です。
アジの累計ダメージが83なので、モブのHPも83です。
ケイオス:ダメージ分かよっ! とことこ厄介だなっ!
<第1ターン>
綾:改めて、イニシアティブ判定(ころころ)勝ちました〜!
で、MPが無いので、まじっくぽ〜しょん〜♪
GM:てってけてってってっ〜♪
綾:「……ぷは、 不味い、もう一杯」
腰に手を当てて、グイッと……、
神聖治療のおかげで、MP10点回復です。
ケイオス:「……まぁ、あまり美味しいものじゃないな」
GM:ああ、ちなみに、この毒虫は、最初はイモ虫みたいな奴でしたが、
皆さんがモタモタしている間にも、どんどん進化しています。
具体的には、今、頭の部分だけが、アジ様になってます。
一同:さらに、気持ち悪っ!!
ライル:「ちいっ、早めに手打たないと、
こいつら、あのハゲと同じレベルになるわけか!」
毒虫:「呪え呪え呪え呪え――」
「恨め恨め恨め――」
「さあ、私を殺すがいい、アルベルトォォォ〜」
ケイオス:「怒りも、憎しみも通り越して……ただ、哀れでならんよ」
毒虫:「守れない守れない――」
「お前は間違っている間違っている――」
「何も守れてない守れていない――」
「哀れなのは哀れなのはお前お前――」
ケイオス:魔典込みでウイング・オブ・ディスペア!
命中判定(ころころ)低いっ!?
ここは、時の懐中時計を使って振り直す!
発動判定にブースト1点(ころころ)6、2、6っ!?
いつもいつも……どうして、この出目が命中で出ないっ!!
GM:運命ですよ、運命♪
ケイオス:ええい、うるさーい!!
(ころころのころ)ダメージは34点っ!
毒虫:「いいぞいいいぞ――」
「もっとだもっとよこせ――」
「甘美甘美お前のお前の怨念怨念――」
防御して(ころころ)最大HPごと27点のダメージ。
ケイオスの魔術が、毒虫の群れをなぎ払う。
ブチブチと嫌な音を立てて虫が潰れ、
その亡骸から、腐臭とともに、毒の瘴気が噴出する。
というわけで、全員、2d6の防御無視ダメージね♪
(ころころ)はい、8点です。
一同:何処まで厄介なぁぁぁっ!!
ライル:「攻撃する度に、こっちがダメージ受けて……、
かといって放置すれば、向こうが進化するわけか」
ケイオス:「全く持って、タチが悪いもんだ」
ライル:「そうなると、ちまちまやってはいられねぇな」
イルス:そういえば、アヌーラさんは?
GM:もちろん、アヌーラもダメージ受けますよ。
まあ、HP100もあるから、放置してもOKでは?
ケイオス:何という問題の無さ。(笑)
ってか、この場合、HPがエネミーデータのままで良いのか?
ライル:気にする必要が無いなら、OKだろ?
とりあえず、オレはMPを回復しておこう。(ごくごく)
よし、7点回復して、残りMPは8点だ。
イルス:僕の番だね。両手持ちで、銀斧を振り回すっ!
(ころころ)11……?
久し振りに来たよ『はた迷惑な幸運』。(笑)
GM:(ころころ)命中はしたから、取り敢えず、ダメージを出して。
イルス:銀斧は重斧だから、モブでもペナルティは無い(ころころ)30点ダメージ!
防御は7点? じゃあ、23点抜けたね。
GM:じゃあ、また毒の瘴気が出て(ころころ)全員に11点ダメージ。
で、はた迷惑の効果は、イルスの銀の斧の旋風で、毒虫が薙ぎ倒される。
そのあまりの勢いに、毒の瘴気はイルスには届かない。
ただし、イルス分のダメージが他の人にいきます。
誰が喰らうかは1d6で決めましょうか。
綾:ということは、防御無視の22点ダメージ?
それ、喰らう人によっては死にません?
GM:それは出目次第ですねぇ(ころころ)
あら、アヌーラにいっちゃった……つまらん。
アヌーラ:「ケホッ……ゲホッ!!」
ライル:「何やってるんだ、イルス……って、責めるのは、酷すぎるか」
イルス:「ご、ごめん! 為るべくさっさと終わらせる!」
GM:じゃあ、毒虫の行動ですが……、
こいつらは、まだ、生まれたてなので攻撃手段を持ちません。
なので……共食いします。(爆)
むしゃむしゃ、グチヤグチャ、モグモグ……、
ケイオス:共食いでの自爆で、こっちに瘴気ダメージを与えるわけか。
思考も、やり方も、本当に胸糞悪い。
GM:まず、共食いのダメージから(ころころ)あ、6ゾロ。(爆)
ここでクリティカルしてどうするっ!!
一同:共食いしすぎだぁっ!!(爆笑)
GM:(ころころのころ)えー、15点ダメージ受けて、
瘴気のダメージが6点です。
ケイオス:防御無視ってのが地味に痛い。
ライル:ってゆ〜か、そろそろ、死にそうなのが何人か……、
ところで、この毒虫って、毎ターン進化していくのか?
ターンが過ぎる度に、厄介な能力を持ったりしないよな?
GM:そんなに勘繰っちゃダメですよ?
ボクは善良なGMですよ?
綾:怪しすぎて、ビクビクですよ〜。
<第2ターン>
ケイオス:残りHPは、すでに一桁……、
お嬢さん、回復しておくれ、ゲフゲフ!
綾:もう、攻撃は、皆さんに任せました。
+3d6アレンジでメディア発動〜!
(ころころのころ)27点回復です〜!
一同:お〜し、全快っ!!
ライル:「これで、心置きなくいけるな」
GM:ちっ、これで、このターンくらいで倒されるな。
イルス:善良なGMが、舌打ちなんてしちゃダメだよ。
GM:いいもん、最後の一撃に期待するから。
綾:うわっ、やっぱり、何か企んでますよ?!
とにかく、わたしは、もう息切れです。魔術は使えません。
ケイオス:任せろ、威力アレンジ+1d6で、マハガル発動!
毒虫:「ファ〜ンブル、ファ〜ンブル――」
「ふぁ〜んぶる、ふぁ〜んぶる――」
ケイオス:「(ぷっつん)死ねオラァァァ!!」
(ころころのころ)29点ダメージ!!
毒虫:「げぺぇぇぇぇぇ!!」
防御して(ころころ)……あ、ピッタリで死んだ。
ケイオスの放った闇の魔術で、毒虫達は瘴気を発する余裕も無く消滅していきます。
イルス:「これで、終わり……?」
ライル:「ふう……何とか、全員、無事だな」
GM:なんだよ〜、もっとダメージ叩き出せよ〜。
もしくはHP1だけ残しの、別名『慢心アタック』しろよ〜。
そしたら、死んだ時のオーバーダメージ分だけ、全員にダメージだったのに〜。
ケイオス:そこまで、GMの思惑に乗るつもりは無い!
てか、そんなの喰らったら、マジで全滅するわ!
毒虫: 「ま――って――いる、ぞ――
アル――ベル――ト――」
と言い残し、最後の一匹が、シュウシュウと溶けていきます。
ライル:「――黙れっての」
最後まで言うのを許さず、踏み潰す。
―― PHASE-10 アルナワーズ=ジャムシード ――
イルス:「ナーフ、無事ー?」
撃墜されたナーフに、トテトテと駆け寄る。
ナーフ:『し、死ぬかと思ったぜー』
綾:「さて、これで、かの伝説の邪蛇アジ・ダハーカと、
ガチで闘うことになっちゃいましたね」
ケイオス:「スマンな、巻き込んで……」
ナーフ:『おい、てめーら……やること終わったなら、とっとと行くぞ』
イルスに抱き上げられたまま、ムスッとした声で言う。
綾:「何を急いでるんですか、ナーフ?」
ナーフ:『派手な闘いになるんだろ?
なら、こっちも、やれる事をやっとくべきだ。
アヌーラとエルトに関しては……アイツに訊けば、何とかしてくれるだろ?』
ケイオス:「アイツ……テリオンか」
イルス:「あの砲撃って、やっぱり、そうだよね?」
綾:「結局、何がしたいのか……わたし達にはわからないですけど?
あの人、味方なんですか? 敵なんですか?」
ライル:「さぁな、悪い奴とは思えんが……、
まあ、性格はアレだけど……」
イルス:「とにかく、行こうよ……、
あのタイミングの砲撃から考えても、
あの人、全部、知ってる気がするから」
と、砲撃が飛んできた方角を示す。
ケイオス:「ああ、そうだな……、
アヌーラとりあえず、武装解除してもらえるか?」
アヌーラ:「は、はい――っ!?」
状況が掴めていないのか、呆然としていたアヌーラは、
ケイオスの言葉に頷きつつ、あなたに歩み寄ります。
いえ、歩み寄ろうとしたら、いきなり転んでしまいます。
ケイオス:「――あ、アヌーラ?!」
転ぶ前に、慌てて支えよう。
GM:では、支えたところで、ケイオスは気付きます。
アヌーラの足首のあたりから、
少しずつ、灰になり始めていることに……、
一同:――えっ?
ケイオス:「な、なんで……なんで……?!」
アヌーラ:「…………」
予想はしていたのか、アヌーラは、あまり驚いた様子も無く、
灰化が進んでいく自分の体を見つめています。
ケイオス:「すぐに、すぐに助けるから……絶対、助けるから!」
既に力を使った懐中時計を握り締め――
ライル:「そ、そんなことって……そんなことってっ!!
助けたのに……兄者の魂は届いたはずなのにっ!」
アヌーラ:「ありがとう、ケイオスさん……、
でも、これは、最初から、決まっていたことなんです」
ケイオス:「決まってた……そんな事、そんな事あるかぁっ!」
その顔は、今にも泣きだしそうで――
ええい、GMっ!! どういうことだっ!!
GM:確かに、ケイオスのパトラで『狂気』と『洗脳』は解除されました。
でも、武装が解除されていない以上……、
『灰になって死ぬ』という副作用は消せていないんです。
ケイオス:あ、あ、あぁぁぁぁぁぁ!!
綾:「決まってたって! だからって……だからって!
誰か何とか――いえ、マスターテリオン!
居るんでしょう!? 見ているなら、助けてっ!!」
悲痛な声で空に向かって叫みます。
断定だけど、そうあって欲しいことを言ってるだけ……、
アヌーラ:「アジ・ダハーカが言っていました。
ここで、あなたの目の前で死ぬのが、私の役目だと」
ケイオス:「な、そんな……ソレって……、
ソレって……私のせいで……私の……?!」
ナーフ:『あんにゃろう……、
この可能性まで考えて、彼女を投入してやがったんか!』
イルス:「全部、予定調和……とでも言う気なの、アイツっ!」
アヌーラ:「だから、悲しまないで……恨みに身を委ねないで……、
自分を呪わないで……それが、彼の本当の……」
ライル:「本当の狙い……なのか?」
ケイオス:「魔典よ……力を示せ!
救いたいという意志を汲み取ってくれ!!」
声が枯れる程に、血を吐く程に叫び、魔典に訴える。
GM:無理です。それは、所詮は“魔”典……、
魂を削る事は出来ても、与える事は出来ません。
ケイオス:「ぁ、あ、ぁぁぁぁ……」
両目から、滂沱のごとく涙が――
イルス:「ケイオスさん……もう間に合わない。
せめて、最後まで彼女を……感じてあげて……」
アヌーラ:「あ……また、ボタンが……」
と、言われてみれば、先の戦闘の所為か、
ケイオスのスーツのボタンが取れ掛かっています。
ケイオスの腕の中で、アヌーラが、ボタンに手を伸ばす。
それは、初音島で、初めてアヌーラと会った時と同じ光景……、
綾:「…………」
もう、じっと見ることしかできない。
アヌーラ:「ふふっ……また、つけてあげ――」
と、彼女の指がボタンに触れる……、
いや、触れる直前で、その腕がボロッと落ちて、灰になる。
ケイオス:「あ、アヌーラ……アヌーラ……」
アヌーラ「どうやら、無理みたいです。
だから、今度こそ……ちゃんと、恋人さんに……」
ケイオス:「う、ひぐっ、ごめん、ごめん……、
結局、僕は……また、君を……」
泣きながら、声にならない声を上げながら。アヌーラを抱きしめる。
アヌーラ:「あったかいな……お母さんの料理は食べられなかったけど……、
お父さんに抱かれるのって、こんな感じな……のか――な」
ケイオスの腕の中で、瞳を閉じるアヌーラ。
そして、ゆっくりと、ゆっくりと……全身が灰になり、崩れていく。
ケイオス:「なんで……彼女が、何を……?
僕達が何を? なんで、彼女が、死ななきゃ……?」
アヌーラ:「ゴメンね、エルト……、
私、あなたの、お母――には――なれな――」
エルト:『ううん、アヌーラと一緒で幸せだった。
アヌーラに会えて……良かった。
ありがとう……手品……楽しかったよ」
ケイオス:「イヤだ……逝かないでくれ……、
もう置いてかないでくれ……、
頼むから、お願いだからぁ……っ!」
恥も外聞もなく、涙声で叫ぶ。
アヌーラ:「――――」
もう、何も応えられない。
ただ、最後に、幸せそうに微笑んだ後、その顔も灰となり、崩れる。
そして、強い風が吹いた。
その風が、ケイオスの腕の中から、灰となったアヌーラとエルトを奪っていく。
ケイオス:「止めろ……吹くな……連れていくな……」
無駄と分かっていても、必死に灰を掻き集める。
GM:そんなケイオスの行為も虚しく……、
風は、ケイオスの腕の中を吹き抜け、アヌーラ達の亡骸は、空へと霧散していく。
綾:魔術の風で、何とか出来ませんか?
GM:じゃあ、風の魔術で、綾の手に、
ほんの一握りの灰だけが、残されます。
ケイオス:「アヌーラ……アヌーラ……、
あ、ああ……ぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!」
消えてしまった、亡くなってしまった事を思い知らされ……、
もう、ほとんど残っていない灰を抱きしめ、泣き叫ぶ。
GM:その慟哭に呼応するかのように、ケイオスの全身から、魔力の奔流が溢れ出す。
自分への怒り、後悔、憎悪、悲しみ……、
いくつもの負の感情が膨大な魔力を生み、黒い魔の本流を生み出す。
ケイオス:「――ぁぁぁぁぁぁ GAAAAAAA!!」
慟哭は、やがて咆哮へと……、
世界への、運命への憎悪を込めた呪いの歌へと変わる。
GM:慟哭が、咆哮が、魔力が……集束していく。
そして、魔力の暴走はおさまり……、
いつの間にか、ケイオスの手には、小さな黒い石が握られていた。
綾:「ケイオス……いえ、アル……、
彼女を……どうか、安らかな場所で眠らせてあげましょう。
そうそう、桜とか良い感じですよね」
手の中に残った灰を、ケイオスさんに差し出します。
ケイオス:「っ……ぁ、ぁ……ぅだ……な……、
ここは…寂しすぎる、ものな」
ぼろぼろと、枯れたと思った涙が溢れ……、
綾から彼女達の亡骸を受け取り、抱きしめる。
ライル:「兄者、オレには、立ち直ってくれ、なんて偉そうに言えない。
ただ、無駄だった、とは思わないでくれ……」
イルス:「ケイオスさん……つらいこと言うけれど……、
まだ、しなきゃいけないことが残ってる。
まだ、夜は明けてない……」
ケイオス:「ああ、分かって……いる」
アヌーラは、悲しむな、と……恨むな、と……、
だったら、私は何を以て……闘えば良い?
―― PHASE-11 マスター・テリオン ――
ナーフ:『さて、全ては想定通りかい、マスターテリオン――答えろ!』
見てたんだろ? サッサと姿を見せろよ。
???:「心より生まれし奇跡の石……闇の『精霊石』か」
では、ナーフの呼び掛けに対して、空から聞き覚えのある声が――
ナーフ:「――っ!!」
ビュンッと、イルスの手の中から飛び立ち、
そいつに『虚空からの強襲者』を発動。
(ころころのころ)クリティカルして、33点ダメージな。
ライル:怒ってるな、ナーフ……まあ、当然か。
???:「なるほど、その石こそが――うぼっ!?」
上空で魔方陣の足場の上に立っていた、
何処ぞの女学生服の上にポンチョを羽織った魔術師が、
ナーフの攻撃を受けてべちょっと地面に落ちる。
ナーフ:『悪いな、一発は一発だ。で、俺の質問に答えろ』
と、落ちたそいつ……アレスタの髪を爪でグイッと引っ張り上げる。
テリオン:「痛っ! 痛たたっ! 悪かった、砲撃したことは謝る!
しかし、非殺傷設定で撃ったから、せいぜい気を失うだけで済んだじゃろうが!
痛い! いたたた! すみません、ごめんなさい! ゆるしてー!!」
イルス:「ナ、ナーフ、その辺にしてあげて!」
テリオン:「痛たたた……甘んじて受けたとはいえ、酷い目に遭ったわい」
ナーフ:『お互い様だっての』
イルス:「――で、ナーフの言った通り、これは全て想定通りの出来事なの?
『精霊石』とか言ってたけど……そのあたりまで?」
テリオン:「砲撃までした以上、何を言っても言い訳にしかなるまい。
概ね、わしの想定通り、と言っておこう。
ただ、精霊石……アヌーラについては、予想外じゃったがな」
ライル:「当たり前だ。こんな事態まで予想通りで、
何もしなかった、って言ったら、死をもっても償えない怠慢だ」
綾:「テリオンさん、わたし達は、最後まで関わると決めました。
もう、全部、話しちゃってもらえませんか?
ナーフを撃って、わざわざ、あいつらにクワルニフを渡して……、
それで想定通り、と言いましたよね? どういう事なんです?
あなた、一体、何なんです? 何がしたいんです?」
ライル:「そうだよ、あんた、何を考えてるんだ?」
テリオン:「そうじゃな……大局的に見れば、わしの目的は『世界を救うこと』じゃな」
ナーフ:『世界を救う為に、オレを撃って、
アジ・ダハーカにクワルナフを渡したのか?
言ってる事と、やってる事が真逆じゃねーか』
テリオン:「……では、問おう。
近い将来、破壊神ガディムが復活する、と言ったら、どう思う?」
綾:「あの……大昔の、ガディム大戦のことですよね?」
ナーフ:『頭打ったかって、指差して笑うな」
ケイオス:「この一連に関与するまでは、笑い飛ばしてただろうがな……」
ライル:「真面目に言ってるんだろうけど……、
正直、スケールが大きすぎて、信じる、信じないのレベルにいけないな」
テリオン:「まあ、それが普通の反応じゃ。
故に、それが事実になった時、人類は、確実に対応が遅れるじゃろう。
現に、ザッハークをはじめ、多くのガディムの尖兵が、既に活動を開始している。
にも関わらず、人々は、今だ危機感を持っておらん」
ナーフ:『まあ、当然だわな……、
自分に被害が無い以上、何処で何が起ころうが、所詮は他人事だしよ』
テリオン:「人は、得体の知れないモノ……、
何時、訪れるかも分からぬ脅威には鈍感じゃ。
わしが、どんなに、破壊神の復活を警告しても、聞く耳を持たぬ。
それどころか、人同士で争い、種族の違いなど些細な事に拘り、諍いが絶えぬ。
エルフの年寄り連中など、それが病的なまでに顕著じゃ。
そんな事に拘っている余裕など、もう無いと言うのに……、
そこで、わしは考えた……、
危機感を持とうとせぬなら、もっと明確な、身近な脅威を与え、
無理矢理にでも、人類を一つにしてやろう、とな」
ライル:「随分と、傲慢な考え方だな?」
テリオン:「何とでも言え。どんな批難をも受ける覚悟は、遥か昔にできておる。
そして、わしは、自ら汚名を被り、深業を背負う事にした。
世界各地で災厄を振り撒き……、
敢えて、ガディムの尖兵の活動を早め……、
また、それとは逆に、英雄候補達にも力を与えた。
そうして、わしは、人類の敵となり、味方となり……、
人々の危機感に刺激を与え続けてきたのじゃ」
綾:「じゃあ、アジ・ダハーカに件も……?」
テリオン:「……無関係とは言えぬ」
ライル:「ふざけるなっ! その為に兄者が――
いや、兄者だけじゃない!
どれだけの人が巻き込まれ、不幸になったと……っ!」
テリオン:「わしの行いが最善だとは思ってはおらん。
いずれは、全ての報いを受ける時が来るじゃろう。
それまで、わしは、泥に塗れながらも、己を貫く。
例え、誰を犠牲にしようと……、
この手を、愛する仲間の血で汚そうと、な……」
ライル:「狂ってる……あんた……悪魔か……?」
テリオン:「悪魔は悪魔なりに、この世界を愛しておる。
ならば、悪魔らしいやり方で、世界を守るだけじゃ。
全ての人など救えはせぬ……、
常に正しい選択肢など、この世には無いのじゃよ。
わしが正しいか否かは、後の世の人が決める事じゃ」
ナーフ:『大を生かす為に小を殺す……、
そいつは自然の摂理だ。理解は出来るぜ?』
イルス:「……納得できない事もあるけどね」
ナーフ:『ま、この件についちゃ、これ以上話しても禅問答にしかならねぇな。
コイツは、全て覚悟の上でやってやがる』
綾:「わたし達は、わたし達に出来る事をしましょう」
ライル:「……テリオン、あんたの目的は分かった。
じゃあ、何故、クワルナフをアジ・ダハーカに渡した?
それに、奴らは、何故、こうも兄者に拘る?
何故、こうも、兄者をいたぶるような真似をする?」
テリオン:「まず、後者から答えよう……、
ケイオス……いや、アルベルト=カーライソン……、
奴が、おぬしをいたぶるのは……おぬしの望みを叶える為じゃ」
ケイオス:「私の……望み?」
テリオン:「ザッハークに入る時、おぬしは力を望んだのじゃろう?
その願いは、今、叶えられた。
心より生まれし奇跡の石……、
街一つを消し飛ばす程の強大な魔力を持つ『闇の精霊石』というカタチでな」
ケイオス:「……いらなかった。
彼女を、大切な人も救えない力など……、
そんな力なんて……欲しくなかった!!」
テリオン:「おぬしの感情など、蛇には関係ない。
どんなモノであれ、その石は、おぬしが欲した力じゃ」
ライル:「そうか……分かったぞ。
奴らの本来の目的は、アルナさんの確保だった。
しかし、白仮面の暴走から、兄者という、思わぬ副産物ができたんだ」
イルス:「『恋人を守れなかった』と、
自暴自棄の状態のケイオスさんに目をつけ、組織に引き入れる」
綾:「そして、ケイオスさんをいたぶり続けて……、
負の感情を育て上げて、精霊石を生み出させる」
ライル:「でも、どうして、アジの野郎は、そんな力を兄者に渡そうとしたんだ?」
テリオン:「――わからぬか?
あの白仮面は『待っている』と言ったのじゃろ?」
イルス:「……今、その力が精霊石って形で持ち運べるようになった」
ライル:「『裏切りは予想通り』? 『待っている』?
それは、つまり……」
ナーフ:『オイシイとこだけ頂いていく、ってわけか』
綾:「道化師の出番は終り。
それを置いて、サッサと舞台から降りろ、って事ですか」
ケイオス:「じゃあ、この石の為に……、
こんな石コロ1つの為に、アルナは……アヌーラは……、
――ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!」
握り締めた精霊石を地面に叩きつける。
ライル:「兄者……」
ケイオス:「マスター・テリオン……頼みがある」
テリオン:「アレイスター=クロウリーじゃ。
アレスタと呼ぶことを許そう」
ケイオス:「アレスタ……私に力を……、
必要なら腕も目も耳も捧げる、だから――
奴らを滅ぼす力を……コレ以上、彼女を……、
アヌーラ達のような存在を生み出さない為に――力をっ!」
アレスタ:「――やなこった。
おぬしにくれてやる力なんぞ、もう無いわい」
ケイオス:「そんな……っ!」
アレスタ:「この馬鹿者が……、
今、おぬしの周りにいるモノを良く見ろ」
ケイオス:「……仲間、と言って良いのか?」
アレスタ:「それ以上の力が、何処にある……、
それに、この闇の精霊石は、確かに、負の感情から生まれた禍々しき力……、
しかし、光があれば闇があるように、闇がなければ光はうまれぬ。
闇とは、本来、命に安らぎを与えるものじゃ。
その石は、心から生まれたもの。
ならば、心の持ちようで、力はどんなものにでも変わる。
そう、今度こそ、大切なものを守れる力にな」
と言って、精霊石を拾い、ケイオスの手に握らせる。
ケイオス:「私が守りたいもの……」
アレスタ:「それに、その力は、
おぬしの娘がくれたもの……そうは思えぬか?」
ナーフ:『つ〜わけで、おい、この酔っ払い!
爆走野次馬記者に毒舌鉢植えに音痴剣士に女装少年に素敵な鷹が、
今のテメェの手持ちの乏しい力だ。
さぁ、あまりの少なさに落胆したか?』
ケイオス:「いや、十分過ぎる……、
そして、娘が遺してくれた力……勿体無いくらいだ」
アルナ、アヌーラ、エルト……、
私は、もう少し足掻いてみるよ。
―― PHASE-12 アレイスター=クロウリー ――
ライル:「――で、兄者については分かったが、
もう1つの疑問にも答えてくれよな?」
イルス:「どうして、ナーフを撃ってまで、
クワルナフを、あいつらに渡したの?」
アレスタ:「無論、奴等に、
全てのクワルナフを揃えてもらわなければ困るからじゃ」
綾:「そこが分からないんですよ?
クワルナフが揃う前に潰しちゃえば良いじゃないですか」
アレスタ:「不完全な状態の蛇を倒しても無意味じゃ。
知っておるじゃろう? 奴が増殖と再生能力を持つ事を……」
ケイオス:「ヤツが、完全な状態じゃないと、
殲滅しても意味が無いのか」
アレスタ:「そう、やつが完全な状態でなければ意味が無い。
しかし、完全な状態の蛇を倒すのは、困難を極まるのも事実……、
自己再生、自己進化、自己増殖……、
それだけじゃなく、奴は、もう1つ、厄介な能力をもっておるからの」
ライル:「4番目の能力? まだあるのかよ?」
アレスタ:「運命を歪め幸運を操る力……固有結界じゃよ」
ケイオス:――固有結界かよっ!?
イルス:それ……何?
綾:魔術師が最後に至る究極の領域です。
ほら、衛宮士郎の『無限の剣製』も固有結界なんです。
ライル:「固有結界……それを使えると知っていて、
尚、奴を完全体にする必要が何処にあるんだ?」
アレスタ:「それはな……運が良い事に、
今、奴を倒す為の全ての条件が揃っておるからじゃ。
だから、わしは、この機会に賭けることにした」
イルス:「条件って……虹の英雄の宝具……?」
アレスタ:「そう、虹の楽譜フィルドゥスィーと、その担い手……
そして、虹の宝剣グルザ・イ・ガウサール……」
ライル:「でも、肝心の、剣の担い手が……、
いるにはいるが、まだ赤ちゃんだぞ?
尤も、そこにいるエロ鷹が、かつての英雄って言うなら、話は別だけどな」
アレスタ:「そのまさか、じゃよ。
確かに、この時代の虹の剣の担い手は、まだ赤子じゃが……、
宝具を使える者は、担い手以外にも、もう一人いるじゃろう?」
綾:「担い手以外……え、それってほんとですか!?」
ケイオス:「かつての英雄……その本人、か」
アレスタ:「そうじゃ(ナーフを示し)……虹の剣の本来の持ち主……、
その馬鹿鳥こそが、真なる担い手、英雄ファリードゥーンなのじゃ」
イルス:「アップルフィールド修道院で、
宝剣の話をしてる時に、ナーフのことをチラチラ見てたけど……、
そういうことだったんだね」
GM:あと、ナカザキで、川名みさきが、ナーフを『1人』って数えてたでしょ?
あれも、この設定の伏線だったのです。
ケイオス:「……お前、実は凄かったんだな。
いや、前から普通の鷹じゃないとは思ってはいたが……」
ナーフ:『……らしいな。
いや〜、さして実感はねぇけどなー。
ただ、あの話を聞いた時に、すげぇ目を背けたい気になって……、
あのジジイは凄まじくムカッ腹が立った。
オレにとっての事実は、それだけだな』
ライル:「天の架け橋の剣の英雄、空の王者となり、今も尚、天を駆ける――
天の架け橋の歌の英雄、彼の者を想い、今も尚、唄い続ける――
できれば、オレ、英雄になるのは、少し拒絶したい気分っす」
ナーフ:『どーいう意味だ! いや、わかるから言わんでいい!』
ライル:「こっちも、これ以上、言いたくないわあっ!!」
アレスタ:「彼の剣と楽譜の英雄は、恋人同士だったらしいしのぅ」
ライル:「そーゆー黒歴史を語るの止めいっ!!
オレは天の架け橋の歌の英雄でもなんでもねぇ!
ライル=フィッシャーの何者でもねぇ!」
ナーフ:『そうそう、俺も、ナーフウェイト……、
イルス=クークルーのパートナー以上の何者でもない』
ライル:「お互い意見が一致して何よりだ」
ナーフ:『まったくだ。オレは鳥公だから、
他人と意思疎通できないかと思ったが、別にそんなことは無かったぜ』
ライル:「世の中そんなもんだな……、
『別にそんなことは無かったぜ』ばかりだ」
綾:「まあ、それはともかく、ナーフが英雄本人だとしても、
何の問題の解決にもなってませんよ?
確かに、使える要素は十分……でも、鳥に剣なんて……、
結局、打つ手は無いじゃないですか?」
ナーフ:「――いや、無きにしも非ず……かもしれねぇ』
ケイオス:「手立てがあるのか?」
イルス:「無きにしも非ず、だよ。
“それ”で良いのかも分からないし……、
“それ”が可能なのかも分からないし……、
そもそも、僕は“それ”の実在を見たことが無い」
綾:「……? よくわかりませんね?」
イルス:「あまり期待はしないで、ってこと」
アレスタ:「――さて、訊きたい事は、もう無いな?
わしにも、色々と準備がある。
おぬし達は、タイプムーンの盗賊ギルドで待っておれ」
ケイオス:「準備って……協力してくれるのか?」
アレスタ:「無論じゃ。自分で蒔いた種じゃしな。
――では、決戦の地で会おうぞ」
と言い残し、アレスタは、空に向かって魔力道を走らせると、
両足に磁力場を発生させ、凄いスピードでカッ飛んでいきます。
綾:「あ〜、アレ……結構、羨ましい、かも」
ライル:「あいつが協力してくれる、ってんなら、心強いな。
とにかく、オレ達は、言われた通り、盗賊ギルドに行こう」
―― PHASE-13 アルベルト=カーライソン ――
GM:では、シーンは変わって……、
皆さんは、タイプムーンの盗賊ギルドに戻って来ました。
すると、ゆかりが、皆さんを出迎えるなり、
慌てた様子で、ギルド支部の奥へと引っ張っていきます。
ゆかり:「み、皆さん、急いで来てください! た、大変なことが!?」
連れて来られたのは、中央に、大きな水晶玉が鎮座する部屋です。
どうやら、遠く離れた場所と連絡を取り合う為のモニタールームの様です。
その水晶玉には、何処かの海の映像が映っていて、
映像の片隅には、リーフ島が見えます。
ライル:「オレ達が出会った島……、
一体、リーフ島で何があったんです?」
ゆかり:「――これは、先程、弁慶さんから送られてきたリーフ島近海の映像です。
ここからです……よく見ていてください」
と言うと同時に、海面が激しく波打ち、
海の中から、巨大な『何か』が現れ、浮上し始めます。
いや、それは、さらに海面を離れ……ついには、宙に浮かびます。
綾:「……え、えぇ!? 何、これ!?」
巨大って……どのくらいの大きさなんです?
GM:だいたい小さな島1つ分くらい……、
まあ、軽く1000平方メートルはあると思ってください。
で、その物体は、何やら、建造物……台形型の海底遺跡のようです。
ライル:「――城? いや、そんなもんじゃねえ」
綾:「……いくらなんでも、これはないでしょー」
ゆかり:「あれが……封印要塞ダマーヴァンドです」
ケイオス:「アレが……あそこに、アジ・ダハーカが……」
ゆかり:「驚くのは、まだ……もう少し見ていてください」
GM:モニターに映る封印要塞から、突然、三つの巨大な蛇の首が突き出る。
さらに、翼、四肢、尻尾と……、
まるで、何かが要塞を汚染しているかのように、異形のモノへと変貌していく。
分かり易く言うと、巨大なメカキングギドラをイメージしてくれれば良いです。
ケイオス:「こいつは……ブチ殺し甲斐がありそうだ」
綾:「いやいやいやいや、これちょっと無理ですって!
そもそも、質量差というものがあるわけで――」
ゆかり:「おそらく、アジダハーカの、自己再生、自己進化、自己増殖……、
その力が、封印していた要塞すらも掌握してしまったものと推測します」
ライル:「つまり、この中に……奴のの本体がいると?」
よーするに、このキングギドラはコロニーガン○ムで、
その中に、本体であるデビルガ○ダムがいる、って考えれば良いのか。
ゆかり:「……はい」
ナーフ:『おい、イルス……』
イルス:「――何、ナーフ?」
ナーフ:『何で、こんなにワクワクしてるんだろうなぁ、オレ!』
イルス:「不謹慎だよ……でも、同感」
エディ:「Hey! ボーイ達!
リーフ島にいるミスター・ベンケーから通信が入ったゼイ!」
と、部屋にやって来たエディが、皆さんの前に通信機を置きます。
弁慶:『――し、もしもし……聞こえるか?』
ケイオス:「ああ、こちらケイオス。聞こえているぞ」
ライル:「弁慶さん、弁慶さんっ!!」
弁慶:『おお、その声は、ライル殿か……』
ライル:「ええ、ライルです! 弁慶さんは……無事ですか!!」
弁慶:『すまない、ライル殿……、
わたしが不甲斐ないばかりに……奴等に、アロエッテ殿を攫われた」
ナーフ:『かーっ! 何から何まで味な真似ってレベルじゃねぇ!』
ライル:「そんな……いや、弁慶さんは悪くない」
弁慶:『まさか、ライル殿に化けて現れるとは……、
アロエッテ殿はすぐに気付いたのだが、もう、その時には――すまない』
ライル:「そうか……奴が『役に立った』と言ったのは、
やっばり、その事だったのか……」
そうか、彼女は『すぐに気付いて』くれたんだ。
弁慶:『先刻、救出隊が、ダマーヴァンドに投入した。
マスター・テリオン殿が連れてきた手練ればかりだ。
彼女のことは、安心して、彼らに任せて欲しい。
酷なことを言うが、キミにはキミにしか出来ないことを――』
ライル:「分かりました。オレは、オレのやらなきゃいけないことをします」
本当なら、オレが真っ先に救出にいきたいっ!!
ごめん、ごめんよ、アロエッテ……っ!
弁慶:『頼む……奴に対抗できるのは、
おそらく、キミ達だけ――なっ!? 要塞から無数の魔物がっ!!
なんて数だ! 1000、2000、3000――!?』
ライル:「べ、弁慶さんっ!!」
ケイオス:「おい、弁慶! 弁慶っ!!」
弁慶:『そ、空が黒い!? 敵の数が多くて空が見えない!
敵が七分で空が三分! 敵が七分で空が三分!?
ぬぅああああああああ――』(プツン)
弁慶の断末魔の叫びを残し、通信が途切れます。
綾:「――弁慶さぁぁぁぁぁんっ!!」
ケイオス:「……大丈夫だ。
もう誰も、こんなふざけた喜劇で――死なせはしない」
ライル:「ああ、当然だっ!!
必ずヤツをぶっ叩く!! そして、その後にいるガディムも潰す!!
そして、オレ達、皆が幸せを手に入れるんだ!!」
綾:「そ、そうですね……そうですよね!」
イルス:「――餌はある、距離も近い、情報も万端、対抗手段も……ある。
行こう、ナーフ。後は、僕達が剣を抜けるかどうかだけだ」
ナーフ:『だな……見えてない切り札は、俺達のだけだ』
ケイオス:「さて、とりあえず、まずは、足を確保して――」
GM:では、そこで、モニターに、
ザザッとノイズが走り、アレスタの顔が映し出されます。
アレスタ:「――すぐに港に来い!
あそこまで行く移動手段が必要じゃろ? 最高のモノを用意した」
ケイオス:「気が利いてるじゃないか」
綾:「ナイスタイミング!」
ライル:「取り敢えず、まともなヤツを希望しますよ」
アレスタ:「ふっ……まあ、来ればわかる。実力は保障付きじゃ」
イルス:「実力……?」
とにかく、港に行こうか。
GM:では、アレスタに呼ばれ、港に向かうと、
そこには、あの『ラブラブニューハート号』略してゲンジ丸の雄姿が!
その甲板に仁王立ちして、アレスタが待ち構えています。
当然、今回は本気モード! コスチュームは白いバリアジャケットです!
綾:「これって、あの噂のラブラブニューハート号っ!?
HtH海洋保安局の鉄腕の人魚姫『向坂 環』が率いる戦闘帆船1番艦!?」
ケイオス:「いやはや、一番あると嬉しかったモノに乗せてもらえるとはね。
コレなら、火力・機動力・防御力、全て問題なしだ」
アレスタ:「さあ、行くぞ――決戦の地へ!」
ライル:「おうさ!! 決着つけてやるぜ!!」
イルス:「夜明け前が一番暗い――
そして、その暗い時は、もう過ぎたっ!」
ナーフ:『そう、全てはご都合主義だ……気張っていくぜぇ、イルス!!』
<おわり>
<戻る>
注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。
注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
その為、今後、ルールが改訂される場合があります。