綾:そういえば、私、錬金精錬を取ったんですよ。
  誰か装備を精錬したい人〜?
  あっ、もちろん、費用は自腹でお願いしますね?
ライル:じゃあ、オレの軽鎧、お願いしちゃおうかな。
    てか、綾っちは、何気に万能系だよな。
ケイオス:物理戦闘、魔術戦闘、情報収集、製造……、
     なんでもござれ、だからな。
ライル:先が、まだまだ見えないぷーさん(仮名)には、
    打ってつけの奥さんと言えるな。
イルス:僕も、銀斧の精錬、お願いして良い?
    お金に余裕はあるから、Lv2くらいまで……、
GM:じゃあ、シナリオの冒頭に、その辺も踏まえつつ、
   そろそろ、セッションを始めますよ。
綾:か〜ん、か〜ん、か〜ん……、(早速始めた)





GM:では、ふぁんぶら〜ズセッション、
   『静かなる大首領』の始まり始まり〜♪

綾:――うきゃ〜っ!?(失敗したらしい)






Leaf Quest TRPG』 リプレイ

ふぁんぶら〜ズ冒険譚 15

『静かなる大首領』 前編







―― PHASE-01 御前 静 ――


GM:では、プロローグのシーンを始めます。
   アヌーラを追って、旅を続ける皆さんは、
   タイプムーンの近くまでやって来ています。
   で、今、野宿をしているわけですが……、
   夜の見張りは、綾の番ってことで良いですよね?
綾:はい、頼まれた鎌金精錬をやってます。
GM:暗い森の中、カーンカーンという精錬作業をするの音と、
   それに失敗した、綾の悲鳴が木霊します。
綾:「うきゃ〜っ!? やっちゃった〜っ!」
ケイオス:「……失敗、か」
ライル:「ふわぁ〜……なんか、悲鳴が上がったんだが……、
    お〜い、綾っち、何があった……って、ぶわっ!?
    こ、これまた、物凄い惨状だな、おひ」(汗)
ケイオス:「……大丈夫か?」(のそのそ)
ナーフ:『あ〜らら、知〜らね』
    ちなみに、イルスは起きない。(笑)
綾:「と、途中で失敗したけど、何とか強化は出来てますよ!?」
  ちなみに、ライルさんの軽鎧が+1、イルスさんの銀斧が+1です。
  銀斧の時に、1回失敗しちゃいましたけど……、
ライル:「オレの鎧は……おお、しっかり強化できてる。
    しかし、まあ、なんて言うか、あまり無理すんなよ」
ケイオス:「うむ、程良く休めた。交代だ」
綾:「あ、交代ですか? 少し集中して疲れちゃいました」
ライル:「んじゃ、兄者、よろしく頼むわ。
    何かあったら、起こす方向でな」
ケイオス:「了解。綾は、私の毛布を使っとけ、ぬくいし」(他意は無い)
綾:「ぬくぬく〜」
  気にせず、毛布に包まります。
GM:では、ケイオスが夜番を始め、
   しばらくして、皆が寝息をたて始めた頃、
   ケイオスは、何者かが、こそこそと近付いてくる気配を感じます。
ケイオス:「……誰だ?」
     静かに、有無を言わさない口調で声を掛ける。
静:「……こんばんは、ケイちゃん」
  木の影に隠れて、おずおずと様子を窺っています。
  その表情は、色んな感情が混ざり、以前の、あの快活さは微塵も無い。
ケイオス:「今となっては、組織の敵となった私に何の用だ?」
     かつてのよしみで、すぐに攻撃は加えない。
静:「そっちに行っても、良いかな?
  大丈夫、何もしないし、わたしには出来ないから」
ケイオス:「……好きにしろ」
     いつの間にか、彼女に向けていた右腕を下ろす。
静:「うん……」
  近寄り、ケイオスの隣に座ろうとするも、
  それを止め、焚き火を挟んだ正面に座ります。
  そして、ケイオスに、いつもの水晶玉を見せます。
アジ:『元気そうでなによりだ、ケイオス=ダルク』
ケイオス:「そいつはどうも、大首領こそ。お変わりないようで」
アジ:『そう見えるか? つい最近、
   優秀な部下を失って、わりと憔悴しているのだがな?』
ケイオス:「そうですか。で、離反した私に何の用で?」
アジ:『うむ、話が早くて助かる……、
   実は、お前に頼みたいことがあってな』
ケイオス:「……話を聞くだけ、なら」
アジ:『先日、我が組織のタイプムーン支部に、泥棒猫が入り込んでな。
   タカムラ様の命で確保したばかりの宝剣ユアサを奪われてしまったのだ』
ケイオス:「それの奪還で?」
アジ:『そうだ。泥棒猫の名は『湯浅 皐月』。
   盗賊ギルドのNo1『那須 宗一』の女だ。
   相手の生死は問わん。必ず、ユアサを奪還するのだ』
ケイオス:「ウロボロス辺りに頼めば良いんじゃないです?
     少なくとも、離反した私に頼むのはどうかと思いますが?」
アジ:『ウロボロスには、別の任務を与えている。
   それと勘違いするな。先程は、頼みと言ったが、
   これは、命令であり、脅迫だ。お前に拒否権は無い』
ケイオス:「……どういう、ことだ?」
アジ:『もう忘れたか? 薄情な奴だな。
   お前の仲間の1人は、こちらで確保しているんだぞ?
   なかなかに手におえないジャジャ馬ではあるが、
   あの女の命は、こちらの手の中にある』
ケイオス:「おや、コレは不思議な事を。
     存在意義があるのに、脅迫の手札に使うと?」
     必要が無ければ、とっとと処分してるくせに……、
     そもそも、誘拐した意味だって無くなる。
アジ:『なるほど、鋭いな。確かに、今は、まだ、あの女に死なれては困る。
   なら、別のカードを出すとするか。
   こういうのはどうだ? ある場所に爆弾を仕掛けた。
   断れば、お前の知らないところで、
   お前の所為で、お前が知らない誰かが死ぬかもしれないな』
ケイオス:「それが本当だという保証がない代わり、嘘という保証もなく、
     それを躊躇いなく実行できる……陳腐ながら有効な手だよ」


アジ:『はっはっはっ、何なら、ダンタリアンに、
   お前の仲間……ライルとイルスと言ったか?
   その2人に変身させて、街のド真ん中で、
   ラブシーンを演じさせる、という趣向を凝らしたカードもあるが?』(笑)
イルス:ちょっ!?(爆)
ライル:――おいっ!?(爆)
ケイオス:よしっ……断るっ!(超爆)
ライル:断るなぁぁぁぁっ!(泣)


アジ:『――まあ、何であれ、お前に拒否権は無いことは変わらん』
ケイオス:「ち、重々承知したよ。くそったれ」
アジ:『うむ、快く引き受けてくれて何よりだ。
   では、宝剣を奪還した暁には、最寄の組織の支部……、
   おそらく、タイプムーンかパルメア支部だろう、そこに来い。
   場所は、姪に地図を持たせた、受け取るが良い。
   ああ、それと、言い忘れていたが……、
   何度も言うようだが、酒とタバコはやめろ。
   もっと体を大事にしないとダメだぞ?』
ケイオス:「うっさいわ」
静:「……これが、地図だよ」
  水晶玉をしまい、支部の位置が記された地図を渡します。
ケイオス:「……わかった」
GM:ちなみに、地図の他にも、
   皐月の似顔絵と宝剣の形状が描かれた紙も渡されます。
   それらの絵には『ANURA』のサイン入りです。
ケイオス:彼女が、この絵を……?
     やはり、無関係ではないのか?
静:「じゃあね……もう、多分、会うことは無いと思うけど……元気でね」
  ケイオスと、一度も目を合わせないように、
  顔を背けたまま立ち去ります。
  ちなみに、彼女が座っていた場所には、
  『原稿料』と書かれた布袋が1つあります。
ケイオス:「……世話になったな」
静:「……その子のこと、大事にしなきゃダメなんだから!」
ライル:「ん〜……誰か来たのか?」
    目を擦りながら、険しい顔で目覚める。
イルス:「みゅ……どうしたの?」
ケイオス:「まぁ、な……例の吸血鬼事件の時の、綾の後輩だ」
綾:「……静ちゃん?」(欠伸を噛み殺しつつ)
ライル:「そっか……原稿料でも渡しにきたのか?」
ケイオス:「その通りだ」
     と、言いつつ、原稿料を綾に渡す。
ナーフ:『ああ、あの娘、来たん? 泣かせてね〜よなぁ?』
ケイオス:「……決別をしたからな、泣かせてしまっただろうな」
イルス:『……まぁ、致し方無しか』
ライル:「ちと早すぎかも知れんが、交代しちゃっていいぞ。
    クソッタレな夢見たせいか、目がどうにも冴えちまった」
ケイオス:「そうか。では、休ませてもらおう」





―― PHASE-02 アルナワーズ=ジャムシード ――


GM:では、翌日となり、何事も無く、魔術都市タイプムーンに到着します。
   時計塔、聖堂教会、アトラス院などなど……、
   他の都市と比べても、かなり多くの組織が存在する街です。
   アクアプラス大陸の最重要主要都市と言っても過言では無いでしょう。
ライル:「とうとう、来たか……」
ケイオス:「……そうだな」
GM:まあ、アヌーラが向かったのは、
   この街から、さらに東の山脈を越えた場所にあるパルメアですけどね。
ケイオス:「さて、とりあえず、どうするかね?
     私は、ちょっと、情報収集と顔出しも兼ねて、盗賊ギルドに行って来るが……」
     きも、時計塔のお膝元とはいえ、盗賊ギルドの支部くらいあるだろう?
GM:もちろん、ありますけど……、


ライル・綾・イルス:…………。(汗)
GM:え、え〜っと……、(汗)
ケイオス:何かね、その反応?


GM:非登録のモグリエージェントって自覚はあるよね?
   元悪の組織の一員のケイオスさん?
ケイオス:あ〜、そうだった。(←忘れていたらしい)
GM:あるならあるで、こっちも、そ〜ゆ〜つもりで対応しますが?
ケイオス:敢えて、虎穴に入る必要もある、か……、
     その方向で頼む。
綾:「……ぷーさんが、冒険者らしくなっちゃった!?」
ケイオス:「なかなかに酷いな、おい」
ライル:「分かった、そんじゃ、オレは酒場への聞き込みかな?
    土地勘も無いし、ここは基本行動でいくわ。
    イルスと綾っちはどうする?」
イルス:「街中だと、することがないよ」
ライル:「じゃ、オレと一緒でいいか?
    綾っちは、兄者に同行するんだろ?」
綾:「はい、心配ですから……良いですよね?」
ケイオス:「いや、別行ど――任せる」
     ちょっと何かを言いかけるが、言っても聞かないかもしれんし……、
     状況次第では、いてもらった方が良いかもな。
綾:「この際、登録しちゃったらどうですか?
  モグリにはモグリの良い所がありますけど……」
ケイオス:「そうだな……そして、清算もせねばならん」
GM:じゃあ、ライルとイルスが酒場で、
   ケイオスと綾が盗賊ギルドで良いですね?
   では、まずは、ライルとイルスのシーンから処理していきます。


<ライル&イルス>

GM:さて、ライルとイルスは、2人で、適当な酒場へとやってきました。
   カウンターで、店主がシェイカーを振ってますよ。
ライル:「――お邪魔しますね。オレには、軽めの酒を。
    で、こっちの子には……まあ、ミルクを頼む」
    カウンター席が空いてるなら、そこに座って、とりあえず、注文しよう。
店主:「ほいほい……って、兄ちゃん、羨ましいねぇ。
   久々に顔を見たと思えば、もう他の女を連れてるのかよ?」
ライル:「――ぶぼわっ!?」
    GM、オレって、この店主と顔見知りなのか?
GM:いいえ、思い切り初対面です。
イルス:「いや、もう慣れましたけど……ボク、男です」
店主:「お、男……やるな、兄ちゃん」(親指グッ)
ライル:「くおらぁっ! その『やるな』って、どういう意味じゃいっ!!
    てか、おっさんおっさん、あんたとオレは初対面!!」
店主:「はあ? 何、馬鹿なこと言ってるんだ?
   随分と前だが、お前さん、絵描きの嬢ちゃんと一緒に店に来たじゃねぇか?
   肩まで抱いて、見せ付けてくれやがってよ?」
イルス:「……えっ?」
ライル:「な、なにぃぃぃぃっ?!
    オレに絵描きの嬢ちゃんな良人はいませんって!!
    敢えて言うなら歌姫――じゃなくてっ!!」
イルス:「ど、どういうこと……これって?」
ライル:「その絵描きのお嬢ちゃんって、もしかして、ポニーテールな子?」
イルス:「人違いだと思うんですけど……その人、名前を名乗りました?」
店主:「客の名前なんて、イチイチ聞かねぇよ。
   ああ、そういえば、女の方は、そんな髪型だったな。
   エルフの子供も連れてたし……、
   そうそう、なんか、よくスッ転ぶガキの女(ティーナ)が、
   『浮気現場目撃!? スクーブスクープ!』って、
   写真バシバシ撮ってたからよく覚えるな」
ライル:「ま、待てえええい!!?
    浮気ってなんだ? 誰が浮気したああああ!?」
イルス:「その子が、ライルさんそっくり人といたってなると……、
    って、ライルさん、そっちじゃないそっちじゃ!?」
店主:「俺に訊かれたって知るか!
   ったく、さっきから、訳の分からんことばっか訊きやがって」
ライル:「いかん、混乱してきた……、
    まず、今までの情報を整理しよう。
    随分前に、この酒場にアヌーラさんとおぼしき人が、
    エルトちゃんと一緒に、ついでに、男1名と共に来ている、と」
イルス:「うん、そうなるね……」
ライル:「で、その男が……まあ、オレそっくりな奴、と」
店主:「とにかく、俺は知ってることを言っただけだぞ。
   ったく、最近、変な奴等が多いねぇ。
   妖精連れた変態魔術師やらミルク好きの剣士やら……」(ブツブツ)
ライル:「アランの奴、ここに来てたんか?
    しかし、変態魔術師って……やっぱ、『アイツ』のオリジナル?」
イルス:「き、聞いてみたいような、聞かない方が良いような……」
ライル:「とにかく、その絵描きさんと一緒にいた男ってのは、
    こんな顔した(自分を指差し)ギョロ目のギター持った奴だと?」
店主:「ああ、間違いなくそっくりだったぞ。
   ギターじゃなくて、ウクレレ持ってたがな」
ライル:「ウクレレって……」
店主:「まあ、何だかよくわからんが、あれとあんたが別人ってのは分かった。
   もし、そいつらを探してるんだったら、
   気のいい宿屋兼酒場のマスターからの忠告を伝えておいてくれ」
イルス:「忠告、ですか?」


店主:
「おう、お盛んなのは結構だが、
   もう少し声を抑えろ、ってな。
   
小さな子供も連れてるんだしよ〜」


ライル:「――っ!!」
    ガンッと、カウンターに頭をぶつける。
イルス:「…………」(頭抱える)
ライル:「おうけい、分かりました。
    嫌と言う程理解しました。間違いなく伝えておきます。
    こいつ(長剣)で膾切りにしてからなぁ〜……うけけけけ」
イルス:「ちなみに、その人達が、ここに来たのって、いつ頃です?」
店主:「あ〜、悪い。そこまでは、はっきり覚えてねぇな。
   まあ、ここ1ヶ月以内ってところか?」
ライル:「おうけい、有難うございます。
    では、先を急いでるんで……お勘定!」
    多めに金を置いていくぞ。
店主:「おう、毎度どーも。彼氏とは仲良くな〜」
ライル:「ぶったキルぞ、マスター?」


<ケイオス&綾>

GM:んじゃ、シーンを変えまして……、
   ケイオスと綾は、盗賊ギルドのタイプムーン支部へ向っています。
綾:私、場所を知ってるんですか?
GM:具体的な場所は知らなくても、
   登録しているエージェントにしか分からない、
   目印みたいなモノがあると思ってください。
ケイオス:なるほど、上手く出来てるな。
GM:で、2人がそこに向かう途中、アイスクリーム屋さんがあるんですが……、
   そこから、宝剣を持った皐月が、アイスをペロペロ舐めながら出てきます。(笑)
ケイオス:なんて無警戒な……、
GM:まあ、その大胆不敵さが、皐月たる所以ですから。(笑)
ケイオス:「……すまない、ちょっと宜しいかね?」
     いきなり、ターゲットが現れてビックリだな。
     まあ、ここは、焦らず、まず接触だけでも……、
綾:「ケイオスさん、どうしました? 盗賊ギルドには――」
  と、振り返った時には、もう、話し掛けてるわけですね?
  それって、ほとんど、ナンパ現場じゃないですか。(笑)
皐月:「ん〜、何……って、嘘!? もう見つかった?!」
   ケイオスを見て驚くと同時に、自分が食べていたアイスをケイオスの口に突っ込む!
ケイオス:「この似顔絵(皐月の)を描いた女性につい――むがっ!?」(←突っ込まれた)
綾:「おー、なかなかに良い不意打ちっぷりですー」(遠い目)
皐月:「盗んだのは悪かったとは思うけど、
   これは元々、ウチの家宝なんだから!
   あたしとの関節キスで勘弁してやって〜!」(脱兎)
ケイオス:「……なんか、物凄い方向で勘違いされたワケだが?」
綾:「……ナンパ失敗ですか?」
ケイオス:「いや、違うって……、
     昨晩、静から、アヌーラが、ここで描いた、
     今の娘の似顔絵を受け取ったんでな。
     何か手がかりになるかと思ったんだが……」
綾:「ふ〜ん、へぇ〜、ほぉ〜」
ケイオス:「いや、だから、誤解だって……」(汗)
GM:仲睦まじいところ、申し訳ないですが、
   描写には、まだ続きがあります。
   ケイオスから逃げる皐月……、
   だが、その前に、数人の黒ずくめの男達が立ちはだかります。
   そして、大きな声で、こう叫ぶわけです。
???:「助太刀するぞ、ケイオス=ダルク!!」
綾:「元同僚さん、ですか?」
ケイオス:「……元同僚」
     GM、マハガルで蹴散らして良いかね?
GM:いや、それよりも早く、黒ずくめ達は、
   皐月にアッサリとやられちゃいます。
   で、ケイオス達に向き直ると……、
皐月:「ふ〜ん、やっばり、見逃してくんないわけ?
   じゃあ、後悔させてあげなきゃね……ザッハークのケイオスさん?」
   と、下目遣いで言い放ちます。
ケイオス:「あちゃー、既に私の事知ってたか」
皐月:「そりゃー、これでも、NASTYBOYの恋人だし? そのくらいの情報は掴んでるわ」
ケイオス:「しかし、私は、既にザッハークを抜けた。
     そして、その事について、今から、盗賊ギルドに向かうつもりだった。
     と言っても、信じてもらえるわけ……ない?」
皐月:「じゃあ、なんで、この黒いザコ達は、あんたに協力すわけ?
   つまり、それって、あんたが組織と切れてない、ってことじゃない?」
ケイオス:「その事についても説明がしたい。
     コレでも色々とあるのよ、例えば『私が下手に動く事で、誰かが死ぬ』とかね」
皐月:「それを信じろ――って!!」
   と、言うと同時に、銃を抜き、ケイオスの足を狙って発砲します。
   では、ここからは、新ルールの『演出戦闘』で処理します。
   2d6の即決で、行動の成否を決める、演出優先の戦闘です。
   (ころころ)こっちの出目は8ですが……?
ケイオス:「ぐっ……脚1本を進呈すれば、信じてもらえるかね?」
     敢えて、判定はせず、甘んじて攻撃を受けるぞ。
     撃ち抜かれ、汗を浮かべつつも、綾の前に進み出る。
綾:「……肩、貸しますよ」
  こんな状況で、下がれるわけないです。
  ちゃんと隣に立たせてもらいますよ。
皐月:「……どういうつもりよ?」
   と、今度は、綾にロックオンしつつ、こっちの行動は終了です。
ケイオス:「少なくとも、信頼を得ようとする人間が、
     避けたり応戦するワケにはいかんだろ?
     それと、彼女は今回の一件は無関係だ。
     できれば、攻撃対象から外してもらいたい」
皐月:「……そんな関係には見えないけど?」
ケイオス:「私はな、組織に所属していた事を、
     彼女を含む仲間達にも黙り欺いていた。
     そして、組織を裏切り、その事を懺悔し……、
     恥知らずにも許しをもらった……それだけだ」
綾:「いや〜……このおにーさん、ぷーさんの割りに大酒のみでタバコ大量に吸うし、
  一度、戦えば何時でも瀕死……心配で心配でも〜」
皐月:「……ホントなの?」
   と、ようやく、話を聞く気になったようです。
   皐月は銃を降ろし、警戒を解きます。
ケイオス:「できれば、ギルドまで連れて行ってもらえるかね?
     空気を読まない輩が乱入しないとも、言い切れんのでね」
GM:じゃあ、そのKYな輩に登場してもらいましょうか。
ケイオス:――はい?
GM:皐月が警戒を解いた瞬間、パァンッと銃声が響く。
   撃ったのは、まだ、意識があった黒ずくめの1人……、
皐月:「くっ……あ……」(ばたっ)
   背後から、その銃弾に腹部を貫かれ、皐月は、その場に倒れ伏す。
黒ずくめ:「いまだ、ケイオス! 我らが組織の為に、宝剣を確保――」
ケイオス:「貴様ぁぁぁっ!!」(ガル発動)
黒ずくめ:「(ガルられ)――ギャアアアアアッ!!」(消滅)
ケイオス:「綾、彼女の治療を頼む」
     足を引き摺りつつ、他の黒ずくめ達を射程に収める。
綾:「白昼堂々、ばいおれんすは良くないですよ〜」
黒ずくめA:「貴様、我等の好意を無にするつもりか!!
     ここで宝剣を確保せねば、ギルドに持って行かれた後では、手遅れなんだぞ?!」
ケイオス:「黙れ、そして散れ」
黒ずくめB:「ちっ、やはり、裏切り者などに頼るべきではなかった!
      もういい、この反逆者共々、泥棒猫を排除し、宝剣を我らが大首領様に!」
黒ずくめC:「おうよ、我等『黒蛇団』の力を存分に見せ付けてやる!」
GM:というわけで、ここからは、黒蛇ABCが相手です。
   ちなみに、さっき、ケイオスにガルられた黒蛇Dは死んでます。
   それと、この騒ぎを聞きつけて、ライルとイルスも登場して良いですよ。
   ただし、演出戦闘2ターン目からね。
ナーフ:『お、おいおいおい……、
    今、何か、天下の往来で、大きな声で、
    自分の組織名を叫んでる、アホいなかったか!?』
ライル:「ああ、物凄くアホというか……黒蛇とか言ってたな」
イルス: 「あんなとこに真っ黒な集団……、
     何、あの目立つの? しかも、ケイオスさんと綾ちゃん!」
ライル:「……だな、しかも、相変わらず怪我してやがって!」


<第1ターン>

ケイオス:「吹き飛べ――っ!!」
     (ころころ)達成値6でマハガル!
GM:(ころころ)対処行動失敗。
   ケイオスのマハガルが、黒ザコ達を吹き飛ばす!
   だが、闇属性には耐性があるのか、まだ倒れない。
黒蛇A:「ふっ、貴様が闇属性しか使えないことは承知している!」
    とは言っても、仮想HPは減ってるので、割とボロボロです。
ケイオス:「そうか、ならば、もう一撃くれてやらないとな」
綾:「よっ、と……これでOKですかね?」
  わたしは、自分の番で、メディアを発動。ケイオスさんと皐月さんを治療します。
GM:では、こちらのターンです。
   黒蛇ABCは、三位一体攻撃を、ケイオスに仕掛ける!
黒蛇A:「我等、黒蛇団最強の四天王……いや、もう一人死んだか?
    まあ、良い。この三位一体の攻撃! 受けてみろ!」
    と、三人の何とかストリームアタックな連携攻撃がケイオスに襲い掛かる!
ケイオス:それは、咬ませ犬フラグだな。
綾:自称四天王は弱い、と相場は決まってますからね。
GM:まあ、確かに、そうなんだけど……、
   (ころころ)こっちは9です。
ケイオス:(ころころ)ぐあっ、失敗した!
黒蛇ズ:「ふはははははははっ!!」
    三人が、ケイオスの周囲を目にも留まらぬ速さで飛び交い、体を切り刻んでいく。
ケイオス:「ぐっ……」
     その場から大きく移動するわけにはいかないので、
     体捌きで凌ごうとするが、かわし切れず、全身に斬撃が及ぶ。


<第2ターン>

GM:では、第2ターンです。
   ここで、ライル達は合流して良いよ。
ライル:「兄者っ、綾っち! 大丈夫かっ!!」
    兄者の前に、壁になるように立つぞ。
ケイオス:「……問題ない」
ライル:「ったく、これだから、
    魔術師が前線に立つのは……まあ、無事ならいい・
    で、こいつら、早速、お出ましな兄者への刺客なわけか?」
ケイオス:「そんなところだ」
     さて、まずは、私の番だな。
     三位一体攻撃を受ける最中、敵の1人の喉笛を掴みにいく。
黒蛇A:「――がっ!?」(←掴まれた)
ケイオス:「……死ね」
     全身から流れ出る血から生み出される魔獣が、敵の肉体を喰らい尽くす!
黒蛇A:「ひっ!? な、なんだ、こいつら……、
    ぎゃ、あぎゃ、あばば……ぎゃあああああっ!!」(がしゅがしゅがしゅ)
ケイオス:「これで、2人……」
黒蛇B:「オ、オルテガァァァッ!!」
ライル:待て! それは、他の3人の……、
    てか、最初に死んだ、四人目の名前が気になるぞ!
GM:え、え〜っと……ガルマ?(笑)
綾:「全く、こっちは事態の飲み込みもまだだっていうのに……、
  ぞろぞろと、ぞろぞろと……」
  ばらり、と両手に護符を取り出して、マハザン鎌鼬!
  狙うのは、相手の服とか髪の毛とか(ころころ)……って、ファンブルった〜っ!?(爆)
GM:言っておくが、ファンブル判定は、ちゃんとやるぞ。
綾:(ころころ)『11:自分に被害が出るが有利な結果も及ぼされる』。


 ――おっ、そうきたか。

 なら、予定よりも早いけど……、
 ここで、伏線の回収をしちゃおうかな。

 このタイミングの方が、
ケイオスも、存分に『壊れられる』だろうし……、


GM:じゃあ、風の斬撃によって、相手の頭がハゲになりますが、
   誤って、綾のスカートも切り裂かれ、スカート丈が、
   またしても、絶対領域ギリギリになります。
綾:「……何でしょう、何だか足元がスースーします。
  そして、下を見たくない」
イルス:「げ、現状の確認ぐらいはすることをお薦めするよ」
綾:「…………」
  無言で、スカートをちょっと下げます。
黒蛇B:「ひゅ〜、いい眺めだねぇ〜。
    なんだ、ケイオス? 『また』女を提供してくれるのかよ?」
ケイオス:「……また、だと?」
ライル:「そりゃ、どういうことだ!?」










「さ〜てなぁ……知りたいか、道化師?」

「いや、道化師なんて呼んじゃいけねぇよな?
なんて言うか……『兄弟』?」

「いや〜、いい女だったよな〜?
自殺しちまったのは、ちょっと惜しかったがよ?」

「まあ、仕方ねえよな〜?
いくら薬を使われてたとはいえよ……、
自分の男の前で犯されてるのに、あれだけ、ヒィヒィよがってたんだからな〜」

「けっけっけっ……いやー、面白いよな〜?
自分の女を犯して、自殺させた組織に忠誠誓ってるんだからよ?
まさに、道化師だよな〜?」































「貴様ら、貴様らか……」

「……く――」

「くは――」































はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
ははははははははははは――!!」




















ケイオスが、右手で顔を覆い、
狂ったように、無機質な哄笑を上げる。

哄笑が止み、その目に浮かぶのは……、
仲間も、かつての組織の人間も見たことのない……、

憎悪と、憤怒と、絶望の入り混じった……虚無のみ。

そして、たった一つの言葉が、
壊れたオルゴールのように、その口から言葉が漏れ出る。




















殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す











イルス:「……話術がイチイチやらしいなぁ」
綾:「分かりました。 遠慮なく真っ二つにしても良い人種ってことですね?」
ライル:「クソッタレがっ!!」
ナーフ:『お、おいおい、イルス!
    そろそろ、ケイオス、やベぇぞ?』
イルス:「い、いや、判るけど、どうすれば……」
ライル:「とりあえず、兄者の好きなようにやらせるしか……、
    やばくなったら、オレが刺し違えてでも止める。
    正直、こんな状況じゃ『冷静かつ論理的』な判断も行動も、意味がねえ」
ナーフ:『ってーか、これ、無理矢理止めようとしたら、
    とばっちり食わんともかぎらねぇしなぁ』
ライル:「てめえら、死して己の間違いに気付くまで闇に彷徨えっ!」
    とにかく、オレの番だ!
    演出戦闘だが、乾坤一擲で、ぶった斬るっ!
GM:連続の斬撃が黒蛇Bを襲う!
   そして、連撃の最後の一撃が黒蛇Bの腹部を貫く。
   だが、黒蛇Bは、ライルの腕を掴み、剣を抜けないようにすると、にやりと笑みを浮かべる。
ライル:「ぐっ!? て、てめえっ!?」
黒蛇B:「お前が虹の楽師って情報は得ている。
    ここで1つ潰させてもらうぜ!」
イルス:「――させないっ!」
    黒蛇Bに向かって手斧を投げる!
GM:その手斧は、黒蛇Cが叩き落とします。
   そして、ライルを押さえた黒蛇Bの体が急激に膨れ上がり――
ライル:「こ、こいつ……まさか……っ!?」
綾:「――自爆!?」
  次は黒蛇の行動ですよ?! 対応が間に合いません!
GM:では、ここで、援軍が来ます。
一同:はい? 援軍?



沙織:
「ひーのーたーまー……
   スパーーーーーイクッ!!」
   黒蛇Bが自爆する瞬間、どこからか飛来した火弾が、
   自爆する寸前の黒蛇Bを吹き飛ばします。



沙織:「こんな天下の往来で、何やってるのよー!」
祐介:「そこに、いきなり攻撃を打ち込むのもどうかと思うけど……」
ライル:「た、助かった!?」
    てか、なんで、このタイミングで『新城 沙織』が?
イルス:あれ、この展開って……、
    そうかっ! 
『遥かなる妖精郷』だよ!
綾:なるほど、LQ雫シナリオの展開に、
  ほとんど同じ場面がありますね。
  黒ずくめの集団に襲われている皐月を『長瀬 祐介』達が助けるシーンです。
ケイオス:もしかして、LQ正史と繋がったか?
GM:そういうことです。
   さて、次の第3ターン目からは、祐介と沙織も参戦です。
   もっとも、残る敵は黒蛇Cだけですが……、


<第3ターン>

ケイオス:「殺す、殺す殺す殺す殺すコロスコロス――」
     先程、斬られた額から流れた血が目に入り、
     まるで、血の涙を流すような形相をしながら、
     残った黒蛇Cに近付き、無造作に、右腕を掲げるように上げる。
     その時、仲間にも、敵にも……、
     腕を振り上げる闇竜の姿が、一瞬、オーバーラップする。
黒蛇C:「な、なんだよ、これ……おい、こんなの聞いてねぇ!!」
    その姿を見て、へなへなと腰を抜かす。
    この圧倒的な負のプレッシャーに、指一本、動かす事が出来ない。
    ここは、成否判定をするのは無粋ですね。
ライル:「な、なんだ……?」
イルス:「えっ、ちょっと……これ……?」
綾:「――っ!?」(息を呑む)
ケイオス:「…………」
     無言で、右腕が振り下ろされる。
     まるで、巨大な何かに押し潰されたかのように、黒蛇Cは叩き潰される。
黒蛇C:「ひっ――」
    悲鳴を上げることすら許されず、
    押し潰された黒蛇Cは、塵も残さず、この世から消滅していく。
ライル:「……今の……竜?」
ケイオス:「…………」
     その消えていく様を、呆然と立ち尽くしたまま、見つめている。
GM:では、ここで、戦闘は終了します。
   そして、呆然としているケイオスに、
   何者かが音も無く近付くと、腹部に1発、拳を打ち込む。
ケイオス:「っ……!」
     その一撃に、気を失い、地面に倒れる。
???:「――フリーズ」
    それと同時に、綾の背後にも、何者かが立ち、
    眉間に、銃口が押し付けられる。
綾:「い、いつの間に……?」
ライル:「また、新手なのかっ!!」
ナーフ:『げっ! 油断した!?』
リサ:「抵抗は無駄よ? この、リサ=ヴィクセンと、
   NASTY BOYを、敵に回したくないでしょ?」
宗一:「まったく、こんな昼間っから、天下の往来で派手な真似しやがって」
   と言いつつ、現れたのは、盗賊ギルドのツートップです。
綾:「リサ=ヴィクセンに、NASTY BOY!?
  は、はいはい、もう終わったので、出来れば、治療くらいはさせてください」
  銃も護符も、投げ捨てて、即座に手を上げます。
ライル:「……ザッハークの仲間なのか?」
綾:「ライルさん、この方達は、ザッハークとは無関係です。
  とにかく、大人しく投降した方が身の為です」
宗一:「あんたもエージェントなら、
   NASTY BOYの名前くらい知ってるだろ? 俺達は盗賊ギルドのもんだ」
リサ:「そうそう、ザッハークとは、むしろ敵対関係よ」
ライル:「いや〜、つい数ヶ月前に登録したばっかりの駆け出しペーペーでな。
    まあ、ザッハークじゃなければ、それでいい。
    すまんが、そこな無茶ばっかりやる怪我人の手当てをさせて欲しい」
宗一:「もちろん、治療は、こっちでやってやる。
   だが、今は、とにかく、サッサとズラかるぞ」
リサ:「時計塔の来る前に撤収よ。
   お願いだから、大人しくついて来てね」
GM:というわけで、皆さんは、祐介と沙織も一緒に、
   盗賊ギルドのタイプムーン支部へと連行されます。
ケイオス:「……コ……ロス……」
     気絶していても、心が壊れたからか……、
     それとも、壊れそうな心を繋ぎ止める為か……、
     憎悪の言葉が僅かに出ている。
ライル:「…………」
    抵抗する気は無い。大人しく従おう。
    だが、気絶した兄者は、俺が運ぶからな。
    これだけは、他人には譲れん。





―― PHASE-04 アジ・ダハーカ ――


GM:黒蛇団に襲われ、街中で派手に暴れ回った皆さんは、
   宗一とリサに拘束され、盗賊ギルドのタイプムーン支部に連行されました。
   ケイオスは、もう、目覚めていて良いですよ。
ケイオス:「…………」
     虚ろな瞳で、床を見詰めたまま、座っている。
GM:で、今、皆さんは、祐介と沙織と共に、取調室にいます。
   目の前には、足を組んで座っているリサがいます。
   しかも、その表情から、かなり困っている様子です。
イルス:「で、えーと、その……?」
ナーフ:「ど〜したもんかな〜、こりゃ〜」
綾:「え、え〜と……どうしました、リサさん?」
リサ:「まったく……事情は、だいたい察してるけど……、
   何も、時計塔のお膝元で、あんな派手にドンパチやらなくても……」
ライル:「そ、それについては、申し訳ありません。
    ただ……正直、暴れた事については、後悔はしてません」
ナーフ:『だいたい、俺達の所為ってわけじゃねぇんだけどな〜」
イルス:「あのドンパチは、どっちにしろやらなきゃいけないドンパチではあったからね……、
    まぁ、今、問題なのは、そこじゃないけど……」
リサ:「そう、誰の責任とか、誰が悪いとか……話は、そんなに単純じゃないの」
   問題は、時計塔の管轄内で、盗賊ギルドの人間が、
   あれだけ派手な大立ち回りをしてしまったこと。
   しかも、白昼堂々とね……」
ライル:「さっきから、時計塔って単語がちらほら出てるんですが……?」
リサ:「時計塔とは魔術師ギルドのことよ。
   そして、盗賊ギルドと魔術師ギルドは……正直、あまり良い仲とはいえないの」
ライル:「……つまり、盗賊側を叩く、格好の要因を与えてしまった、と?」
ナーフ:『魔術師さんトコに、何らか落とし前つけにゃならん、っつーことかい?』
イルス:「そこまではいかなくても、
    最低でも、詫びぐらいは入れにいかないと……」
リサ:「少なくとも、私達、盗賊ギルドに、大きな貸しを作ることは出来るわね」
綾:「ケイオスさんはモグリですけど、そんな事は、あちらには関係ないですし……、
  どうせ、弱みを握る為に、事後処理は、時計塔が、とっくにやっているのでは?
  もしかしたら、あのドンパチも、傍観してた可能性もありますね」
ライル:「祐介君達は、時計塔の人間だけど……、
    巻き込まれた主張されれば、盗賊ギルドの立場は、さらに悪くなる」
リサ:「話が早くて助かるわ。で、まあ、細かい話は省くとして、
   時計塔が、こちらに要求してきた内容は――」
   と、そこで言葉を切ると、リサは、ケイオスと綾を見ます。
綾:「……はへ?」
リサ:「そっちの彼と、貴女が連れている生体装甲……、
   それを寄越せと言って来たわ。それで、今回の件はチャラにするって」
綾:「フォルのこと、そんなに広く知れ渡ってるんですか?」
リサ:「つい先日も、別の生体装甲を持っているのが、時計塔に出入していたのよ」
   ヴァルフェルトとリーラのことです。
綾:「研究対象として、価値はありそうですものね〜」
ライル:「だったら、何故、兄者まで……、
    いや、それも、今なら納得できるか……」
    さっきの戦闘で見た、黒竜の姿を思い出しつつ、頭抱える。
リサ:「もちろん、こちらとしても、そんな要求を呑むつもりはないし、
   あなた達も、そんな状況じゃないんでしょ?」
ライル:「そりゃ、まあ……、
    そもそも、あちらの要求されてる本人が、嫌がるでしょうしね」
ケイオス:「…………」
リサ:「サツキを助けてくれた手前もあるし、
   こちらとしても、便宜を図ってあげたいところなんだけど……、
   盗賊ギルドって立場上、タダじゃダメなのよねぇ」
ライル:「あちゃ〜、やっぱり?」
綾:「まぁ、その辺りは、とーぜんですよね」
ケイオス:「……何を、すれば良い?」
リサ:「というわけで、あなた達……、
   時計塔からの要求を突っぱねてもても良いくらいのモノ、何か持ってる?
   物でも、情報でも……何でも良いわ」
ライル:「つまり、俺達を逃がした後に、当然、時計塔から圧力が掛かる。
    その圧力を撥ね退けられる程のブツが必要なわけだ」
綾:「もしくは、それをする分の、盗賊ギルドの労力に見合う何か、ですね」
リサ:「まあ、そういうことね」
一同:「う、う〜む……」


 困り果てる冒険者達――

 何せ、彼らには、こういう時に出せるカードが無いのだ。

 いや、あるにはあるが、手放すわけにはいかないものばかり……、

 ケイオスが、ザッハークに関する情報を提示するが、
そのへんは、彼よりも、盗賊ギルドの方が詳しいくらいである。

 まあ、GMとしては、こうなるのは想定通り……、

 ここで、助け舟を……、
 というか、予定通り、シナリオを展開させていく。


リサ:「まあ、とりあえず、この件は、ゆっくり話すとしましょう。
   で、あなた達も、ウチに用事があるそうね?」
   と言うと、リサは祐介と沙織に向き直ります。
祐介:「は、はい、実は、友達の香奈子ちゃんの件で――」
沙織:「――あたし達、夢に干渉する方法を探してるんです」
GM:要約しますと、祐介達の友達である『太田 香奈子』が、眠ったまま目覚めない。
   で、眠ったままの彼女を起こす為、彼らは、彼女の夢に干渉する方法を探しているのです。
   遠野家に『レン』という夢魔がいる、との事で、遠野家を訪ねてみたが、
   レンは『遠野 志貴』と共に行方不明……、
   宛が無くなり、困っていたところで、今回の騒動に出くわした、と……、
   詳しくは、LQ正史の
『遥かなる妖精郷』を参照してください。
祐介:「――というわけて、何か良い方法はありませんか?
   夢に干渉できなくても、せめて、香奈子ちゃんが、
   どんな夢を見ているかだけでも分かれば良いんです」
リサ:「夢ねぇ……ウチにも、そんな能力者の情報は、夢魔くらいしかないわねぇ」
   祐介達の話を聞き、リサは、頭を捻って記憶を探り、
   情報処理係である『伏見 ゆかり』にも、その手の情報が無いか確認しています。
綾:とまあ、そんな話が、私達の前でされているわけですが……、
イルス:GM、それが、何か関係あるの?
ライル:わざわざ、一人芝居してるわけだから、何か意味が……、
    ああっ!? そうか、そういうことかっ!!
綾:ど、どうしたんです?
ライル:ある……あるぞ! 交渉する為のカードがっ!
    盗賊ギルドも知らない、夢に干渉する能力者の情報だ!
    オレ達には……それがあるっ!
イルス:えっ、そんなの……ああっ、いたいた!
    そんな話、初音島で聞いたことがあるよ!!
    盗賊ギルドが知らない情報なら、高く買ってもらえるはずっ!
ケイオス:「……初音島に、その手の能力を持つ人物がいるはずだ」(ぽつり)
     なるほど、正史で、この情報をもたらしたのは、我々だったのか。
     純一君には悪いが、ここは、このカードを切らせてもらおう。
ライル:「初音島に住む『朝倉 純一』……確か、彼が、そんな事を言ってたな」
イルス:「他人の夢を『見せられる』能力……」
リサ:「OK、その情報、買わせてもらうわ。
   本当なら裏を取るところだけど……、
   そこは、キュリオのお仲間さんってことで勘弁してあげましょう。
   時計塔との交渉は、こちらに任せてもらって良いわ」
ライル:「ど、どうもありがとうございます……って、キュリオ?!
    あの猫娘……ちっ、こんなところで『助けられる』とはな」
リサ:「さて、これで当面の問題は解決した、ってことで……、
   ここから、本題に入りましょうか?」
   と言うと、リサは、ケイオスに向き直ります。
ケイオス:「…………」
     虚ろな瞳で、リサを見る。
リサ:「あなた、ザッハークから抜けた、と言ったそうだけど……、
   それは本当なわけ? なら、どうして、サツキに接触しようとしたの?
   目的は……やはり、宝剣ユアサかしら?」
ケイオス:「その通りだ。ザッハークの首領……、
     アジ・ダカーハから、宝剣ユアサを回収しないと、
     見知らぬ人間がテロで死ぬ、と言われたのでな……」
ライル:「ちっ、しつこいクソ蛇野郎が……、
    不良グループ抜け出す人間への嫌がらせじゃねーんだぞ」
イルス:「来るものは拒まぬが、去るものは決して許さない、か」
ケイオス:「――だが、もう、どうでも良い話だ」
綾:「ケイオスさん……?」
ケイオス:「誰が、どれだけ死のうと、
     私は、やつらを、刻んで、潰して、殺し尽くす。
     それだけだ……」
     と、虚ろな表情で言いながら、口元に狂気が滲んでくる。
ナーフ:『う〜むむむ……まずいな、こりゃ。
    やっぱ、いくトコいっちまってる』
リサ:「…………」
   そんなケイオスの態度に、リサは笑顔で腕を振り上げ――
綾:「――ふんっ!!」
  その役は譲れません。私が殴ります。
ケイオス:「……っ」
     無言で、殴り倒される。
リサ:「OK、ナイスパンチ」
   と、振り上げた腕を下ろします。
ライル:「ったく、殴るなら、場所を選んで殴りやがれっての」
綾:「いや〜、なんか……気に入らなくて」
イルス:「そ、それは、確かに、そうだけど……」
ライル:「ま、気持ちが混乱している時には、
    一発ブン殴られて、混乱を止めてもらうのが一番だ。
    気持は……分かるなんて、易々とは言えんが……、
    兄者、今は、とにかく、落ち着け」
ケイオス:「…………」
リサ:「まあ、止めてくれる人がいるだけ、まだ、マシだと思っておきなさい。
   で、あなた達は、これからどうするの?
   そっちの彼が言った通り、ザッハークのテロ行為は見て見ぬふり?」
綾:「止めたいのは山々ですけど……、
  『どこで』とか『いつ』とか、大事な情報が一切無いので、
  手の出しようがないんですよねー」
ナーフ:『ぶっちゃけ、どこで誰を殺るのかすら分かんのに、どーしろっつーの』
リサ:「いいえ、そんなことは無いわ。
   テロ行為を止める方法はあるし、ザッハークを潰すチャンスでもある。
   そう、これは、チャンスなのよ。
   よく考えなさい、アルベルト=カーライソン」
ケイオス:「チャ……ンス……?」
     何故、自分の本名を……、
     と、それを疑問に思うまで、最早、思考が回らない。
リサ:「相手は、宝剣ユアサの回収を命じた。
   つまり、取引の場を設けたんでしょ?」
イルス:「……そっか。なら、当然、接触を図ってくる」
綾:「そこに、ボス……とは言わなくても、それなりの立場の者は現れるはず……、
  黒蛇団でしたっけ? あんな三下を送って来た、ってことは、
  もう、ザッハークの中で、わたし達に対抗できる手駒は少ないと見て良い。
  唯一、ザッハークの手駒で、それが出来そうなのは……」
ライル:「あの、白仮面か……」
ケイオス:「ウロボロス……」
リサ:「そう……そして、ここからは有料情報……、
   あなたの彼女を襲い、嬲り者にした奴らの主犯格は、そいつよ」
ケイオス:「ヤツが、そうか……」(ギリギリ)
綾:「ふ〜ん……ど〜りで、なんとも品の無い人だと思いましたが……」
ライル:「『兄弟』なんて、クソッタレな物言い……、
    『やってる』ヤツじゃなきゃ言わねえよな」
イルス:「ある意味、こっちには釣り糸があった訳か……」
リサ:「どうやら、方針は決まったみたいね」
   そう言うと、皆さんの前に宝剣ユアサを置く。
綾:「……えっ、これは?」
リサ:「こんなこともあろうかと、ってね。
   知り合いの贋作師に作らせた、精巧なイミテーションよ。
   残念ながら、本物は貸してあげられないけど、これを持っていきなさい」
ケイオス:「……使わせて、もらう」
綾:「何処からどう見ても本物にしか見えないんだったら、
  わたし達にとってはありがたいです」
イルス:「化け物魚を一本釣り、か……」
リサ:「もちろん、タダではあげない。
   これは、さっきの情報料の分……、
   そして、あなた達に、義務を果たして貰う為の報酬の前払いよ」
ライル:「……義務?」
リサ:「あなた達は、奴等がやろうとしているテロ行為を知っている。
   そして、それを止める術も持っている。
   なら、あなた達には、それを成す義務がある。
   私達は、直接、手を貸してあげられないけど、可能な限りの援助はするわ」
綾:「知ってしまった者の義務……」
イルス:「それを止められる力を持つ者の義務……」
ライル:「つまり、実行犯の可能性の高いウロボロスを叩き潰せ、か……、
    無論、果たさなきゃいかん義務ですね。
    で、義務と聞いて、ふと思ったんだが……、
    とりあえず、兄者が何を考えてるかは、さすがに窺い知れねえが……、
    そういや、教会で戦った時、綾っちに貸し一つ作ったよなぁ?
    兄者が怒りに任せて何するかは勝手だが、
    貸し1の『義務』は果たさんといかんと思うわけだ」
イルス:「うん、今、言うことじゃないかもしれないけど、
    とりあえず、言っておいた方がいいと思うから言うけど……、
    “ケイオス=ダルクは『その後』どうするのか”。
    心の片隅で良いから、考えておくと、後が楽かもしれないよ?
    何も考えてないと、貸しのツケがきつそうだからね」
綾:「ああ、でも、今は、まだいいですよ?
  今、返されても、陰気さとか余計なモノまで付いてきそうですから」
ケイオス:「……ああ」
リサ:「まあ、とにかく、交渉成立ね……」
   と、リサはそう言いつつ、ゆかりを促すと、
   彼女は、皆さんの前に大量の文献を置きます。
ナーフ:『うおっ、何、これ!?』
ゆかり:「アジ・ダハーカに関する資料を集められるだけ集めました。
    何かの役に立ててください」
リサ:「知ってると思うけど……、
   アジ・ダハーカは、ファリードゥーンの伝説に出てくる邪蛇よ。
   もしかしたら、何か有益に情報が見つかるかもしれないでしょ?」
ライル:「なるほど、弱点でも分かれば儲けモンだな」
綾:「どんな相手なのか分かるだけでも充分です」
イルス:「そうだね、皆で手分けして調べようか」
ナーフ:『よ、要約希望』
GM:じゃあ、要約してあげましょう。
   文献の内容から、重要そうなものをピックアップすると、以下の通りになります。
   さらに具体的に知りたいなら、各自、判定してください。


 かつて、この世に、悪しき邪蛇あり。

 その生命は、地の如く、海の如く、森の如く……、

 二人の英雄、邪蛇の前に立つ。
 一人は、天の架け橋の剣を携えし、一人は、天の架け橋の歌を奏でし……、

 しかし、地の如き命は、傷付くことなく。
 しかし、海の如き命は、成長に際限無く。
 しかし、森の如き命は、夥しいまでに増え続け。

 英雄達は、邪蛇をダマーヴァンドに封印するに止まる。

 邪蛇は、天の架け橋の剣の英雄を永久に呪う。

 天の架け橋の剣の英雄、空の王者となり、今も尚、天を駆ける。
 天の架け橋の歌の英雄、彼の者を想い、今も尚、唄い続ける。



ナーフ:『イ、イルス……』
イルス:「ナーフ? どうしたの?」
ナーフ:『俺、3行以上の長文を見ると頭が痛くなる』
GM:あ〜、ナーフの、その頭痛は、
   もしかしたら、それとは違う理由かもしれませんね〜。
イルス:えっ、どういうこと?
GM:さ〜てねぇ……、(にやにや)
   とにかく、皆さん、判定したください。
   言うまでも無く、ここの判定は、かなり重要ですよ。
ケイオス:ならば、ブーストを2点投入して……、
     (ころころ)4d6振って、出目が2、1、1、2……、(泣)
綾:相変わらず、ここぞって時に出目悪いですね。
  ここは、私にお任せです。(ころころ)
  惜しい、あと1で、クリティカルだったのにっ!!
イルス:取り敢えず、ダメ元で――
ライル:イルスが……ひ、平目っ!?
    待て、イルス! それは危険だ――
イルス:――(ころころ)
あ、1ゾロ。(爆)
一同:
やっちまったぁぁぁっ!?


 いや、ホント……、

 狙ったように出すよな、コイツは……、 


イルス:ファンブル効果は(ころころ)……、
    『8:自分に被害が及ぼされる』。
GM:え〜っと、それじゃあ……、
   イルスは、文献を読み漁っていると、古い本だった為か、
   不注意で、ページを破ってしまう。
ナーフ:『オレ、頭痛が凄まじい……寝る』
イルス:「えっ、ナーフ……(びりっ)あっ」
リサ:「貴重な資料の本に、なにやってるの!」
   と、リサのハイキックが炸裂します。
   ただし、イルスの肩に乗っていたナーフに直撃。
ナーフ:『――な、何で、オレ!?』
GM:まあ、ここは、素直に喰らっておけ。
   安心しろ、リサはタイトスカートだから、冥土の土産は、ちゃんとある。
ナーフ:『おーけー、ないすぶらっく……』(ガクッ)
綾:「え〜と……今のは、見なかったことにしましょうか」
  その様子を端目に、文献を読み漁る。
ケイオス:「…………」
     同じく調査中だが、抑えきれぬ憤怒のせいか、効率は芳しくない。
ライル:「蹴られても、タダでは死なないな……」
    しかし、一応、綾っちが判定に成功してるっぽいが……、
    ここは、是が非でも、GMに、全ての情報を吐かせたい。
    皆、この後の戦闘で、オレ、足手まといになるかもしれんが、
    一気に、ブースト4点を使っても良いだろうか?
ケイオス:うむ、是非、頼みたいが、
     まずは、現状で得られる情報を聞こう。
     弟者の判定は、その後でも遅くはあるまい。
GM:では、綾の成功分の情報は、以下の通りです。


<アジ・ダハーカの特殊能力>

・『地の如き命』
 どんなに荒れた大地も、時間を掛けて、豊になっていくように、
 英雄が、何度、剣で斬りつけても、その傷は、瞬く間に癒えてしまう。
 つまり、自己再生。
 HPが0になった時、そのターンの終了後に10d6のHPが回復する。

・『海の如き命』
 生命の進化は海から始まった。
 それと同様に、邪蛇の力は、進化し続ける。
 つまり、自己進化。
 一度ダメージを受けた必殺技は通用しない。(ダメージ0となる)

・『森の如き命』
 英雄が邪蛇を斬ると、その傷口から、夥しい毒蛇が湧き出てきたという。
 しかも、その毒蛇は、邪蛇の分身とも言える存在。
 森が徐々に広がっていくように、邪蛇は、増殖し続ける。
 つまり、自己増殖。
 おそらく、アジ・ダハーカは、一人ではない。


綾:「とまあ、わたしが調べたところでは、こんな感じでしょうか?
  ってか、これ、全部、マジだったら洒落にならないですね」
ライル:自己再生、自己進化、自己増殖……、
    ようするに、デビルガ○ダムか?(笑)
GM:まー、ぶっちゃけ、そうですね。
ケイオス:「コレ(魔典)が切り札になるのか……」
     自己再生を防ぐには、最大HPを削るしかないな。
     しかし、自己進化で、グリムリーバーの連打は封じられてるし……、
ライル:通常魔術に魔典を上乗せすれば……、
    って、そんな真似してたら、兄者の最大MPが尽きるな。
イルス:ねえ、最大MPが無くなったら、どうなるの?
GM:生ける屍、植物人間……廃人確定ですね。
ケイオス:まあ、最悪、刺し違える覚悟はあるが……、
ライル:それは却下。何か方法があるはずだ。
綾:多分、さっきの判定で、
  クリティカルすれば、ヒントが得られるはずです。
ライル:つまり、オレ次第ってことだな。
ケイオス:よし、弟者……やっちまえ。
ライル:では、ブースト4点使用!
    6d6なら、ほぼ確実にクリティカルする!
GM:ダイスの数の暴力だ〜。
   (まあ、想定の範囲内なんだけどね)
ライル:(ころころ)よし、文句無しにクリティカル!
    さあ、GM! キリキリと吐いて貰おうか!
GM:う〜ん、何を教えるべきか……、
   取り敢えず、問題なのは、自己再生ですよね?
ケイオス:まあ、そうだろうねぇ。
綾:どんなにHPを削っても、回復しちゃうんですよね?
イルス:回復しちゃう、と言うか……、
    『ターン終了後に回復する』から、
    実質、HPを0にしても死なないんだよ。
    しかも、ターン終了してるから、それを防ぐ術も無い。
ライル:つまり、普通の方法じゃ倒せない、ってことだな。
GM:はい、そういう事になります。
   で、その問題の自己再生には、例外があります。
   それが『天の架け橋の剣』と『天の架け橋の歌』なんです。
イルス:「天の架け橋の剣って……、
    ノーチェで手に入れた宝剣『グルザ・イ・ガウサール』だよね」
ライル:「そして、天の架け橋の歌は、
    オレの宝具『フィルドウスィー』だな」
ケイオス:「偶然か、必然か……、
     我々の手に、その2つが揃っているのか」
綾:「でも、剣の方は、担い手が……」
イルス:「まだ、赤ちゃんだもんね。
    となると、期待できるのは、ライルさんだけか〜」
ライル:GM、具体的には、虹剣と虹歌で、どうすれば良いんだ?
GM:まず、虹剣の方ですが……、
   虹剣による攻撃でトドメを刺した場合、自己再生は発動しません。
イルス:最後の一撃が、虹剣なら言いわけだね。
GM:で、虹歌に関してですが……、
   アジ・ダハーカは、自己再生でHPは回復しますが、MPは回復しません。
ライル:「第7楽章で、魔力を削り切る……、
    とはいえ、それにも限界はあるぞ」
綾:「やはり、決定打として理想的なのは、虹剣ですよね?」
イルス:「でも、使えないものは仕方ないよ。
    今ある手段だけで、考えていかないと……」





―― PHASE-05 アルフィミィ=マーマレード ――


GM:では、シーンを変えまして……、
   さて、これから、どうしよう?(笑)
ライル:おいっ、GMが困ってどうするんだよ?
イルス:宝剣ユアサの贋作も手に入れたわけだし、
    あとは、一気に、ザッハークとの取引場所に向かえば良いんじゃないの?
GM:まあ、予定では、そうだったんですけど……、
ケイオス:その展開は不自然だな。
     取引場所は、組織の支部なんだぞ?
     そんな場所に乗り込むのは、あまりにも無策過ぎる。
綾:お互い、殺り合う気満々ですからねぇ。
  わざわざ、相手のホームグラウンドに行く事もないです。
  ユアサは、こっちが握ってるんですから、強気でいきましょう。
ライル:取引場所を変更させるのか?
    でも、それに応じるだろうか?
    向こうは、無差別テロで脅迫してきてるんだぞ?
ケイオス:奴らが欲しいのはユアサであって、『人質』に価値は無い。
     つまり、我々が『人質』を無視してしまえば、
     交渉のアドバンテージは、こちらにある。
イルス:宝剣を持って来なければ、人質を殺す……、
    なら、こっちは、人質を殺したら、宝剣を破壊する、ってこと?
綾:目には目を、ってわけですね。
ライル:いや、しかし、そんなこと……、
ケイオス:いいか、弟者……、
     交渉を有利に進めるコツはな……、
     『自分が、いかに冷静でイカレているか』を、相手に分からせる事だ。
     それに関しては、私は、自信あるぞ。
     そして、奴らも、そのことは充分に理解しているはずだ。
GM:じゃあ、組織と連絡を取って、
   取引場所を変更する、って展開で良いかな?
ケイオス:変更場所は、タイプムーンの街の郊外ってことで……、
     でも、どうやって連絡を取れば良いんだ?
     今までは、あっちからの一方通行だったし……、
GM:黒蛇団の生き残り――は無いよな。
   ケイオスが、撃ち漏らしたとは思えない。
ケイオス:うむ、殲滅した。(えっへん)
GM:う〜む、となると……、
ケイオス:「……アルフィミィ、そこにいるのだろう?」
GM:(うおっ、何だ、いきなり!?
   って、なるほど、そういう方向でいくのね)
   では、皆さんが、適当な店で食事をしつつ、
   今後の行動を話し合っていると、
   ケイオスは、店の外から、こそこそと、
   キミ達の様子を窺う、あの少女の姿を発見する。
   そして、ケイオスに呼ばれると、ビクッと身を震わせて隠れてしまいます。
ケイオス:「……すまない、少し離れる」
     席を立ち、彼女を追って、店の外に出るぞ。
綾:「いってらしゃ〜い」
  と言いつつ、後を付ける気マンマンです。
ライル:「綾っち、オレも行く……、
    兄者にはバレてるかも知れんがな……、
    ここまできて、知らない事があるのも、何だか引っ掛かる」
綾:「流石に、此処まで来ると、我関せず、というのは……、
  いえ、正直なところ、気になってしょうがないんですよ」
イルス:「……まあ、ここまできたら、ね」
    僕も、ライルさん達と一緒に行くよ。
GM:では、ケイオスが、自分に気付いて、店を出てきたのを確認すると、
   その少女は、ケイオスを誘導するように、路地裏へと入っていきます。
   そして、人気も無くなったところで、ケイオスには背を向けたまま……、
静:「……ケイちゃん……宝剣は、手に入れた?」
ケイオス:「――ああ」
     いつでも攻撃出来るよう、警戒しつつ頷く。


綾:「……静ちゃんの声?」
ナーフ:『静ちゃんか……この間も、密談してたな』
ライル:「ノーチェの街でか?」
イルス:「あの時、ケイオスさんの様子がおかしかったのは、
    こういう事だったんだね」
ライル:「宝剣って、ユアサの事だよな?
    話の流れから考えて、静ちゃんは、ザッハークの一員ってことか?」
ナーフ:『……だな』
ライル:「なんで、キャロルちゃんの剣の在処が分かったのか……、
    これで、筋は通ったな」


静:「そんなに警戒しないでよ……、
  まあ、無理もないかもしれないけど……、
  大丈夫、『失敗作』のあたしには、ケイちゃん達をどうこうする力なんて無いから」
ケイオス:「……『貴様』も、知っていたのだろう?」
     静の態度を鼻で笑いつつ、失敗作という言葉に反応する。
静:「うん、知ってた。知っていたから……、
  だから、あたしは、無駄だって分かってても、
  『あの人』の代わりになろうと思ってた。
  だって、あたしは、あの人の……っ!!」
  と、そこまで言って、ケイオスを振り返ろうとし、
  だが、慌てて、また背を向ける。


ライル:「……失敗作?」
綾:「失敗作とか、あの人の代わり、とか……、
  何でしょう、凄く……嫌な感じ……」
ナーフ:『それより、問題は……、
    静ちゃん、ぜって〜泣いてるよな』


ケイオス:「あの人の……何だ?」
     失敗作、あの人の――
     否定したくても、パズルのピースが頭の中で結びついていく。
静:「…………」
ケイオス:「彼女の……アルナの……、
     コピー……ホムンクルスということか?」


ライル:「…………」
綾:「…………」
イルス:「…………」
綾:「そういえば、宝剣の受け渡し場所に、アレ……、
  あの白仮面は来るんでしょうかね?」
ライル:「おそらくは、な……」
イルス:「修羅場になりそうだね」
ライル:「向こうとしては、兄者の『裏切り』は想定の範囲内だろうし、
    多分、兄者を『嬲り殺し』にするつもりだろう」
綾:「どうして、そこまでして……、
  どうして、ケイオスさんばかりを、こんなに虐めるような真似を……」
イルス:「裏切り者への制裁――」
ナーフ:『――の割には、手が込み過ぎてるな。
    ホムンクルスまで用意するなんざ、手間暇掛け過ぎだ』
綾:「まるで、最初から……、
  もう、ずっとずっと最初から、この展開が予定されていたかのようです」
ライル:「全て、蛇野郎の手の平の上、ってか?
    そんなこと、考えたくもねぇな」


静:「……予定、変えるんでしょ?
  ユアサの受け渡しの場所と時間は?」
  肯定も否定もせず、静は、話を戻します。
ケイオス:「受け渡し場所はタイプムーンの街の外……、
     但し、第三者へ危害を加えるようであれば、永遠に手に入らないものと思え。
     時間は、明朝……時間を与えると何をされるか、わかったものではないんでな」
静:「じゃあ、街の東に砂漠があるよね?
  そこに、明日の朝……これで良い?」
ケイオス:「――ああ」
静:「じゃあね……ケイちゃん」
  沈んだ声で路地裏の闇の中へと消え……と、その途中、足を止める。
  「ケイちゃん……あの指輪は、まだつけてる?」
ケイオス:「…………」
     無言で、左手の指輪を見せる。
静:「そう、よかった……」
  泣いているのか、笑っているのか……、
  最後に振り返った少女は、そんな複雑な表情の浮かべたまま、去っていきます。
ケイオス:「……くそっ!」
     自分に対する苛立ちと、敵に対する憎悪がない交ぜになり、
     衝動のまま、拳を壁に叩きつける。
綾:「……ケイオスさん」
  静ちゃんも行っちゃいましたし、ゆっくりと現れます。
ライル:「ここで姿を現す、ってのが、定番なんだろうな。
イルス:「まぁ、そだね」
ライル:「分かってて、咎めなかった、ってのは、
    盗み聞きOKと解釈したぜ。だから、謝らねえからな」
ケイオス:「……なんだ?」
     綾達に背を向けたまま、振り返らない。
綾:「……彼女、嫌いですか?」
ケイオス:「嫌いではなかったさ。そして、謝る必要もない」
綾:「そうですか。 わたしは――
  静ちゃんとしてのあの子しか知りませんけど、好きですよ」
ケイオス:「……どうすれば良いのか解らないんだよ。
     殺せと叫ぶ衝動と、殺したくない、って思う感情がゴチャゴチャでな」
綾:「ケイオスさんがどうかは知りませんが……、
  その返事なら、後輩として、がっちりゲットしてもいいんですね?」
ケイオス:「……好きにすれば、いいんじゃないのか?」(苦笑)
ライル:「まあ、兄者の男と女の惚れたはれたに関しては、
    こっちがどうこう言っても、どうにかなる類のものではないと分かってるが、
    それでも、問題は静ちゃんの件だけに収まるもんじゃねえから、言っておく。
    狂うも狂わないも、人生、自棄になるのも兄者の勝手だがな、
    男として、最低の義務を果たしてから、爛れた生活送りやがれ。
    少なくとも、これは、惚れられた男として、絶対やっておかなくちゃいかん事だ。
    それと、以前フォルラータで言われた事、そっくり返すぜ。
    ……二度と手が届かなくなってからじゃ、遅いんだぞ」
ケイオス:「最低の義務……そうだな」
イルス:「わかってるだろうけど……、
    みんな、ケイオスさんのことを想ってる。
    匙なんて、投げる気ないからね」
ライル:「ったりめぇだ。結婚式の席で、
    この酔っ払いの席だけ空いてたら、何て言い訳すりゃ良いんだよ」
イルス:「ケイオスさんの夜は、まだ、明けなそうだけど……、
    夜明け前が、一番暗いけど……、
    でも、忘れないで――」
ナーフ:『――明けない夜は、決して無い。
    そいつは、お前も、よく知ってるはずだぜ?』
ケイオス:「そう……だな」





―― PHASE-06 エルトゥガランサス ――


GM:では、シーンは変わって……、
   翌日の夜明け前……、
   薄明の時、皆さんは、街の東の砂漠地帯の側へとやって来ました。
   不意打ちを想定しているのでしょう。
   すでに、組織の手の者は、周囲には何も無い、見晴らしの良い場所で待機しています。
ライル:「ふむ、あちらの方がお早いお付きか。
    まあ、先に来られて、色々と仕掛けられたらたまらんだろうしな」
イルス:「見晴らしが良いというのは、
    つまり、こっちも不意打ちをされにくい、って事だから、良しとしようか」
    GM、今の内に、ナーフにスパイダーネットを持たせておいて良い?
GM:良いですよ。ただし、それを使う時は、
   ちゃんと、動物使役を行使してくださいね。


 戦闘前のイルスの提案を、
GMは、深く考えずに、アッサリと承諾する。

 ――これが、そもそもの間違いであった。

 このセッションの時点での、
スパイダーネットの効果は『命中した相手を1ターン行動不能にする』。

 このアイテムの効果が――
 まさか、あんな悲劇を引き起こす要因になろうとは――


綾:「さてさて、大物は釣れますかねー?」
ケイオス:「…………」
     偽ユアサを持って、無言で敵の様子を見る。
     GM、敵は何人だ? 白仮面はいるのか?
GM:敵の人数は四人です。
   1人は、白仮面……ウロボロスです。
ライル:ちなみに、オレにそっくりだったりする?
GM:白仮面を着けてますから、そこまでは分かりませんね。
   そして、残り3人の内の2人は、皆さん、見覚えがあります。
   エルフの少女を連れた女性……、
   まあ、簡潔に言うと、アヌーラとエルトです。
一同:な、何ぃぃぃぃぃっ!?
ケイオス:「……全て、繋がったよ」
綾:「……アヌーラ、さん……でしたっけ?」
ライル:「捜し人まで、ザッハークの一員ってか?
    はははは……今まで一体、何やってたんだ、オレ達は……」
GM:ちなみに、アヌーラもエルトも、
   虚ろな瞳で、呆然と、その場に立ち尽くしています。
   遠目から見ても、その様子は、正気ではなさそうです。
イルス:「凄まじい踊りっぷりだね、僕達………、
    ところで、ナーフ……あれ、どう見る?
    アヌーラさんもエルトちゃんも、
    目の焦点がイマイチ合ってるように見えないけど……」
ナーフ:『……だな。まだ、望みはあるっぽいぜ』
ケイオス:――で、残った四人目は?
GM:最後の一人は、ケイオスは見たことあるでしょうね。
   具体的には、ザッハークに入った時にね。
ケイオス:……なぬ?
GM:ローブを羽織り、チャンバースタッフを持ったスキンヘッドの老人です。
   その頭には、蛇の刺青があります。
   その名を――





 ――アジ・ダハーカ。





一同:
なんだとぉぉぉぉぉっ!?
   
い、いきなり、本命がきたぁぁぁぁっ!?
ケイオス:「…………」
     憎悪に満ちた目で、そいつを見つめてる。
ライル:「兄者……あのジジイ、知り合いか?」
ケイオス:「――元上司だ」
ライル:「おうけい、了解した」
綾:「なんか、格好はそれ程でも無いけど、
  カリスマとか、何かが溢れ出てる感じがします、はい。
  余程の事が無いと、お近付きになりたくないよーな?」
ナーフ:『とりかく、あのジジイが、すげぇ大物くさくて、
    しかも、見てるだけでムカつくのは把握した』
GM:ちなみに、ナーフは、あの老人を見た瞬間に、
   何故か『違う』という感情が沸き起こります。
   具体的に、何が違うのかは分かりませんがね。
ナーフ:『だが“コイツ”は、ここに“いて良い”ヤツじゃないし、
    ここに“いるはずもない”ヤツなんだよ。
    違和感っつーか、なんつーか……、
    俺の野生の勘が言ってるんだ。
    “何で、コイツがここにいるんだ?”ってよ』
ライル:「てか、お前、あのハゲと知り合いか?」
ナーフ:『いや、知り合った記憶は無いっつーか、
    何があっても、お知り合いになりたくね―よ』
ライル:「まあ、そ〜だろうな」
ケイオス:「……ユアサを、持ってきた」
     とにかく、ここで話をしていても仕方ない。
     ウロボロス達に近付き、取り引きを始めるぞ。 
白仮面:「よう『兄弟』……割と元気そうじゃないか?
    あの自称四天王はどうした?」
ケイオス:「……潰した」
白仮面:「ほほ〜、その反応からして、
    全部、知ったか? 道化師さんよ?」
ケイオス:「ああ、『全部』……な」
白仮面:「――で、真実を知った感想は?
    自分の女を犯し殺した連中の一員になっていた気分はどうだ?」
ケイオス:「最高に、愉快だったよ……、
     実行犯共を、跡形もなく殺したくなる程にな」
イルス:「……ユアサを持ってきた。
    今、必要な事実は、それだけのはずだよ」
綾:「はいはい、落ち着きなさい、ケイオス=ダルク。
  あんまり挑発で昂ぶると、最後に手元が狂ったりするんですよー。
  それで死んだ人、何人もいました」
アジ:「あまり挑発するな、ウロボロス。
   今は、ユアサの確保が先決だ……で、例の物は?」
白仮面:「やれやれ、ウチのボスはせっかちだねぇ。
    おい、兄弟、ユアサをこっちへ渡せ」
ケイオス:「ああ……受け取れぇっ!」
     ユアサを抜き、ガルも一緒に、白仮面へ投げつける!
     GM、判定はいるか?
GM:いえ、判定はいりません。
   白仮面は、剣も魔術も、片手でアッサリと受け止めます。
白仮面:「おおっと! やれやれ、せっかちなのは、そっちも同じか?」
    では、皆さん、ここで、特殊技能で判定してください。
ケイオス:(ころころ)ちっ、低いな。
     ここは、懐中時計を使って、振り直すか?
イルス:それは、まだ残しておこうよ。
    次は僕が(ころころ)ほら、この達成値なら……、
GM:はい、その達成値なら成功です。
   イルスは、白仮面が剣を受け止めた瞬間、
   その手が、一瞬、緑色に光った事に気付いて良いです
イルス:「今、手が光った……?」
GM:皆さん、その光には、見覚えがあります。
綾:緑色の光……何でしょう?
ライル:そっちも気になるが、
    今は、目の前に敵に集中しよう。
ケイオス:「ウロボロス、彼女を……アルナを……、
     移し身であるアヌーラを、これ以上弄ぶなっ!!」
白仮面:「はあ? 移し身? 何を勘違いしてるんだ?」
アジ:「まあ、当たらずとも遠おからず、だな。
   ちょうど良い。ウロボロスが、剣の鑑定をしている間に、
   ケイオスには、我が組織の、新たな仲間を紹介しよう。
   新たな、と言っても、もう、随分と前からなのだが……、
   アヌーラ、こっちに来なさい」
アヌーラ:「――はい」
     アジの言葉に、アヌーラは素直に従い、アジの隣に立ちます。
アジ:「紹介しよう。彼女の名は、アヌーラ=シャーナーメ。
   ケイオス、いや、アルベルト=カーライソン……、
   お前の……実の娘だ」


一同:
「――なにぃぃぃぃぃっ!?」

綾:
「一児のぱぱぁぁぁぁっ!?」


ケイオス:「まさか、貴様ら……、
     彼女の亡骸から……胎から……っ!!」(ぎりぎりぎりぎり)
アジ:「ああ、その通りだ。アヌーラ(ANURA)、アルナ(ARUNA)……、
   上手く名付けたものだろう?
   もう気付いていると思うが、アルナワーズは、クワルナフの解封者の血縁であった」
ケイオス:「……黙れ」
アジ:「しかし、この馬鹿共(ウロボロス)が死なせてしまい、
   その継承は無作為に行われてしまった。いや、行われたと思っていた。
   だが、遺体を調べてみれば、妊娠していることがわかってな。
   受精卵の段階だったが、我が組織の技術で、なんとか育成に成功したのだよ。感謝するが良い」
ケイオス:「……黙れよ」
アジ:「これで、解封者の血は手に入った。
   まあ、わざわざ、ここまで成長させる必要はなかったんだが……、
   慰み者にするには、このくらいが丁度良いだろう?」
   と言いつつ、アジは、アヌーラを抱き寄せ、その胸を揉みしだいて見せる。
アヌーラ:「…………」
     目は虚ろなまま、ただ、その瞳からは、一筋の涙が……、
ケイオス:「アヌーラ……エルト……、
     こいつらを、ぶち殺して……解放してやる!!」
     陰になっていた目が露になってゆく
     思考が一つに収束し、体の内側から、変わっていく感覚がする。
     ソレは、とても恐ろしい事で、今が引き返せる一歩手前。
     でも、その恐怖、躊躇いすらも──
     ──憎悪が――憤怒が――
     今、その体を支える唯一にして、最後の誓いが、全てを塗り潰し――
綾:「……落ち着け。挑発です」
  普段とは、ガラッと声を変え、ケイオスさんをブン殴ります。
ケイオス:「が、ぁぁ……っ!?」
     ――その瞳が、瞳孔が縦に裂けようとする寸前に、殴られる。
ライル:「見事な一発だ、奥さん」
イルス:「うっひゃ……ケイオスさん、無事っ?」
アジ:「持ち堪えたか……ふん、余計なことを……」(ボソ)
ナーフ:『…………』
    隣のごたごたを関せずに、相手の様子をじっと見ている。
    “その”瞬間、ジジイが、どう動こうとしてたか、とか……、
綾:「――そこのジジイも、いい加減、その口を止めないと、
  口から手ぇ突っ込んで、舌引っこ抜きますよ?」
白仮面:「ボス……」
    そんな綾達を様子を無視して、鑑定を終えた白仮面が、
    ボソボソと、アジに何かを囁き、ユアサをアジに渡します。
アジ:「ふむ……なるほど」
   白仮面の言葉に頷くと、ユアサを、アッサリと叩き折ります。
ライル:「さすがに、バレたか……」
アジ:「贋作か……良い出来だが、本物には及ばぬ……交渉は決裂だな」
綾:「あらあら、今更ですが言い忘れました。
  つまらないものですが――お気に召しました?」
アジ:「壊すのを、一瞬、躊躇う程の出来だったよ。
   なかなかに良い物を見せてもらった。
   お返しに、こちらも、一つ、良いことを教えてやろう」
ライル:「……何?」
アジ:「ここにいる、エルトという子供は、そこの小娘が連れているのと同じ生体装甲だ。
   アヌーラに命じて、初音島から盗ませたものなんだが……」
ケイオス:「だろうな……予想はしていた」
     綾の鉄拳で、多少、冷静になった。
アジ:「性能はなかなかだが、ちょっとした副作用があってな……、
   使用制限回数を越えると、装着者が狂人化して、闘うだけの戦闘マシーンになってしまう。
   勿論、解除は不可能……死んで灰になるまで闘い続けるしかなくなる」
ライル:「お、おい……?」
アジ:「では、エルトのマスターは誰なのか?」
ライル:「ちょっと、待て……っ!!」
ケイオス:「――アヌーラ!!」


アジ:「やれ……アヌーラ、エルト」
エルト:「――武装、開花」
ケイオス:「やめろぉぉぉぉぉっ!!」


GM:エルトが呟いた瞬間に、その小さな身体が、
   雪となり、弾け、激しい吹雪を巻き起こす。
   その白銀の雪が、アヌーラを包み込む。
   その姿は、まるで、雪の中で力強く咲こうとする花のツボミのよう……、
   そして、純白の光の花びらが、一枚ずつ開き……、
   吹雪が晴れた時、そこには、白銀の籠手を装備し、
   黒い仮面を着けたアヌーラの姿があった。
アジ:「約束を破った報いを受けて貰おうか。
   さあ、その力を見せてやれ、アヌーラ……いや、エル=トゥ=ガランサス!」
ライル:「ガランサス!? そういうことか!」
ケイオス:「黙れ、彼女の名はアヌーラであり、エルトであり……、
     絵を描く事を好み、花を受け取って喜ぶ少女だ……そのような名ではない!!」
     アヌーラとエルトにも声が届くように叫ぶ。
白仮面:「無駄だ、無駄だ! もう、その装甲は使用制限を越えている。
    お前の声は、もう聞こえない!」
ケイオス:「聞こえる、聞こえないじゃない……届けるんだよ!!」
     その目には変わらず憎悪と憤怒が……、
     しかし、同時に失わないと誓った時の光が――
白仮面:「さあ、死にたくなければ……、
    仲間を殺されたくなければ、殺しあえ! 自分の娘とな!」
ケイオス:「……少しばかり無茶をする。大目に見てくれ」
ライル:「わかった……てか、オレも、もう限界……」
イルス:「……よくもったと思う」
綾:「確かに、彼女の絵は良かったです。
  だからこそ――ね、ケイオスさん?
  その背中、きっちり守って見せますよ」
ナーフ:『さ〜て、そろそろ始めようか、ハゲジジィ』





 それぞれの想い――
 それぞれの誓い――

 心も、力も、魂さえも――
 手にする武器に込めて――

 ――始まる。

 つらく、哀しい闘いが――





イルス:「いつもの愉快とご都合主義は――」

綾:「――開店休業ですっ!!」





<中編に続く>
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注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。

注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
    その為、今後、ルールが改訂される場合があります。