G M:――では、自己紹介をどうぞ。
アラン:俺の名は『アラン=スミシー』……、
    と言っても、これは偽名だ。
    記憶が無い所為で、本名が分からないんだ。
    いつ、何が原因で、記憶を失ったのか、すら覚えていない。
    ふと、目を覚ましたら、草原の真ん中に倒れていたんだ。
    持ち物から、自分が冒険者だ、って事は分かったから、
    それ以来、自分の過去を探して、旅を続けている。
G M:また、そんな伏線を勝手に……、
    ちゃんと、責任取ってくれるんでしょうね?
アラン:それは、俺の仕事じゃない。(キッパリ)
G M:うわっ、ひでぇ……、
アラン:とにかく、俺は、自分の過去を求めて、当ても無く旅を続けているのだ。
G M:それだけ聞けば、カッコイイけど……、
    方向音痴だから、同じ場所をグルグルと……、(笑)
アラン:――やかましいわ。
    それで、俺は、今、何処にいる事になってるんだ?





G M:もちろん、リーフ島です♪

アラン:いきなり、そこかよ!






『Leaf Quest TRPG』テストセッション・リプレイ

『ストレイキャット・ザ・サード』

〜その2 セッションをしよう〜







―― PHASE-01 泥棒猫との出会い ――


G M:というわけで――
    自分の過去を求めて、旅をするアランは、
    リーフ島のHtHの城下街へとやって来ました。
アラン:冒険者が情報を集めるなら、やはり、酒場だな。
    日が暮れたら、酒場に繰り出そう。
G M:情報って、自分の記憶の、ですか?
    そんな情報を、どうやって集めるんです?
アラン:人の集まる場所に行けば、俺の顔を見た事がある奴に出会えるかもしれないだろう?
G M:ああ、なるほど……、
    じゃあ、アランは、宿屋兼酒場へとやって来ました。
アラン:カウンターに座って「マスター、ミルクを一つ」(渋い声で)
G M:――ミルクかよっ!?
アラン:だって、俺、まだ未成年だし……、(←自称19歳)
G M:未成年が、酒場なんぞに来るなよ。
    酒場の店主は、怪訝そうな顔で、アランにミルクを出しました。
アラン:それを一気飲みして「マスター……ミルク、御代わり」(笑)
G M:……ミルク好きなのか?
アラン:うん、ミルク大好き……、
    とにかく、出されたミルクを、グイグイと飲みながら、周囲を見るぞ。
    こんな目立つ真似をしていれば、何かしら、反応があるはずだ。
    もしかしたら、俺に見覚えのある奴がいるかもしれん。
店 主:「お客さん、もう10杯目だろ? そろそろ吐くぞ?」
アラン:「そんな軟な胃袋じゃない……御代わり」
G M:と、そんな話をしていると、突然、表が騒がしくなります。

表の声A:「また出たぞ〜! ストレイキャットだ〜っ!!」
表の声B:「どっかのPS版に出損ねた先輩の家がやられたぞ〜っ!!」

アラン:……橋本? じゃなくて「……ストレイキャット?」
    その騒ぎって、店先で起こってるのか?
G M:騒ぎは、店の近くの広場から聞こえてくるようです。
アラン:「何事だ?」と首を傾げつつ、勘定を払うと、
    俺は、帽子とマントを身に付け、騒ぎの元へと向かいます。
G M:現場へ向かうと、大量のお金が、空から降っていて、
    人々は、そのお金を、我先にと拾いまくっています。
アラン:「一体、何の騒ぎだ?」と、そこいらの野次馬を捕まえて訊ねよう。
野次馬:「あぁ、怪盗、ストレイ・キャット(泥棒猫)キュリオ・ザ・サードが、また出たのさ」
アラン:「ほう、この金の雨は、その悪戯猫の仕業か……義賊というやつか?」
野次馬:「あこぎに稼いでる商人や、お貴族様から盗んで、
    俺達にばらまいてくれるから、有り難い事だね」と言って、野次馬は騒ぎの中へと戻っていきます。
アラン:金がバラ撒かれている、という事は……、
    当然、その張本人が、何処かにいる、という事だ。
    その悪戯猫の姿を探すぞ。
G M:探すなら、広場の脇にある店……、
    ちょうど、今、アランがいる場所の近くに建つ店の裏で、ズデンッという音がしました。
アラン:それに気が付いても良いのか?
    じゃあ、物音がした場所に行ってみるぞ。
???:「いったぁ〜〜〜〜お尻打ったぁ〜」
G M:と、ネコ耳ボディスーツの女の子(つるぺた)が涙目で座り込んでます。
    どうやら、屋根から落っこちた様子です。
アラン:……つるぺた、なのか?
G M:巨乳の方が良かったですか?
アラン:つるぺた、で良い。(爆笑)
    「あ〜……何やってるんだ?」と眉間を揉み解しつつ、その女の子に訊ねよう。
    状況から察するに、彼女が、件の悪戯猫で、
    家々の屋根の上を飛び回り、金をばら撒いていたら、
    調子に乗り過ぎて、足を滑らせ、ここに落ちた、ってところだろう?
G M:ご明察……女の子は、目の前に現れた、アランを見上げると……、
???:「にゃっ!? あ〜、え〜っと、アタシは、
    ただの名も無いストレイキャットってヤツでして〜……あは……あはははは〜」(苦笑)
G M:と、誤魔化し笑いを浮かべています。
    どうやら、HM−12に変装していたようで、耳の部分には、センサーパットが付いていますが、
    頭の上の猫耳をしまい忘れています。
アラン:「つまり、お前が、この馬鹿騒ぎの現況か?」と、取り敢えず、彼女に手を差し伸べます。
キュリオ:「お前じゃなくて、キュリオ……ありがとね、どっかの誰かさん」
     素直に、差し伸べられた手を取り、キュリオは立ち上がります。
アラン:「まあ、他人に干渉するつもりは無いから、とやかくは言わんが、
    あまり派手な真似をしていると、いつか痛い目を見るぞ? 見つかった相手が俺でよかったな」
    と、言って、サッサと逃げろと手で示すぞ。
    泥棒は悪い事だか、だからと言って、わざわざ捕まえるつもりも無いからな。
キュリオ:「確かにねぇ……」腕組みしてうんうんと納得した後、
     「うん、判った! じゃあ、また今度ね、剣士さん」と投げキスを1つ飛ばして去っていきます。
     身のこなしは、やたらと軽くて、人間場慣れしています。
アラン:……まさか、ウタワレ人か?
G M:あの国は、まだ鎖国状態ですよ。まあ、密輸とか、密入国とかはあるでしょうけどね。
アラン:つまり、某食欲魔人は、まだ、漫遊の旅に出てない時期、という事か。
G M:そういう事です。
アラン:ウタワレ人じゃないとすると、まさか……、
    なんて事を考えつつ、「ああ、もう会う事も無いだろうさ」とキュリオを見送っておこう。
    で、宿に戻って、何事も無いなら、今夜は、もう寝ます。





―― PHASE-02 リュンクス族からの依頼 ――


G M:では、あの泥棒猫騒動から、二日が経ちました。
    アランは、まだ、HtHの城下街に滞在しています。
アラン:じゃあ、いつもの酒場で、朝メシでも食べていよう。
    「マスター……ミルク、御代わり」
G M:ミルクについては、最早、ツッコむまい……、
    アランにミルクを出す酒場の主人は、すっかり呆れ顔です。
    で、そんなアランの背中に、一人の少女が声を掛けます。
    変装はしていますが、どう見ても、先日、出会ったキュリオにしか見えません。
キュリオ:「剣士さん♪ ちょっと、お話して良い?」
アラン:一つ訊ねるが……猫耳はあるのか?
G M:今日は、猫耳は隠してありますが、
    そのかわり、尻尾がスカート持ち上げて、パンツが丸見えです。
アラン:「マスター……彼女にもミルクだ」
    と言いつつ、彼女のお尻をマントで隠し、隣に座るように勧めます。
キュリオ:「はぅ、ありがと♪ で、ちょっと真面目にお話あるんだけど、良い?」
アラン:「厄介事はごめんだが……条件次第だな」
キュリオ:「おかーちゃん……じゃない、キュリオ・ザ・セカンドの財宝、興味ある?」
アラン:「……話を聞こうか」
キュリオ「え〜とね、迷いの森の中にアタシ達……、
     リュンクスの集落があるんだけど、最近そこにある、
     キュリオ・ザ・セカンドの財宝目当てか、他の目的か、ゴブリンが集まって来ちゃってさ。
     アタシ一人じゃ手に負えないから、剣士さんに助けて貰おうと思って」
アラン:「なるほど、話は分かった……だが、あまり、良い事じゃない。
    軽々しく、リュンクスなんて名前は、口にするべきではないだろう?」
キュリオ:「……コレのこと?」と言って、自分の下腹に手を当てます。
アラン:思わず、そこに目を向けてしまい、
    慌てて、視線を逸らしつつ、無言で頷くぞ。


【リュンクス】

 猫耳の生えた亜人。この言葉ほど、彼女らを表す表現はない。

 元来、草原や、浅い森の中に小さな集落を作って暮らすリュンクスには、男性が存在しない。
 それ故、生殖には人間の協力が必要不可欠であり、人間社会にも、早くから溶け込んでいた亜人である。

 可愛らしい固体が多く、素早い身のこなしが、
 特徴的だが、彼女らが、リュンクスとして人前に現れるのは、難しい。

 なぜなら、彼女らの胎内で生成されるリグニアと呼ばれる物質が、
 人間にとって長寿をもたらす秘薬となりえるため、古代魔法王国時代一部の都市や地域で、
 リュンクスが乱獲された時期があったのだ。

 後に、リュンクスの捕獲は、厳しく罰せられるようになった為、
 乱獲される事は無くなったが、危険が無くなったとは、決して言えない。

 リグニアを薬品化する手法は伝わっているため、
 今でも、一部の権力者達は、長寿を求めて、リュンクスを探し回っているかもしれない。

 それでも、リュンクス達は、人間との交流を止めるわけには行かないのだ。



アラン:「今のを、誰かが聞いていたかもしれない。
    もしかしたら、俺自身が、お前を襲うかもしれなかったんだぞ?」
キュリオ:「隠しておきたいけどね……、
     もう、手を借りないと、アタシ等にはどうしようもない状況なの。
     それに、剣士さんは、一昨日、アタシを見逃してくれたし、
     口も堅そうだから、信用出来るかな、って……」
アラン:「だが、たかがゴブリン如き……、
    それなりに闘える、お前らなら、何とかなるだろう?」
キュリオ:「戦える人が、同じだけいればね……、
     ほら、アタシ等って、子供産むのに、その……ね?」
アラン:出生率は低そうだし、少子化、ってやつか……
    「……分かった、その話、引き受けよう。それで報酬は?」
キュリオ:「お礼は、そうね……、
     おかーちゃんのコレクションの魔法の武器1つか、金貨で大体300枚位か、アタシ♪」
     最後のは、ちょっと冗談っぽい口調です。
アラン:何を言い出すかな、この小娘は……、
    もしや、種馬候補にするつもりじゃないだろうな?
    自分が何者かも分からんのに、子持ちなんて、冗談じゃないぞ。
    「……じゃあ、最後の以外で頼む」
キュリオ:「んじゃ、金貨で良いかな? 人間には大事なもんでしょ?」
アラン:「――交渉成立だ」と言って、握手を求めましょう。
    「俺は……一応、アラン=スミシーと名乗っている」
キュリオ:「一応って……?」アランの自己紹介の仕方に、首を傾げています。
アラン:「過去の記憶が無いんだ……だから、本名も分からない」
キュリオ:「そっか、アランさんも大変なんだね」
アラン:「まあ、誰にだって、色々と事情はあるもんだ。
    ところで、こっちは名乗ったんだ。そっちも名乗るのが礼儀だろう?」
キュリオ「あ、うん……もう、知ってるだろうけど……、
    ストレイキャット・ザ・サードのキュリオよ、宜しくね、アランさん」と、アランの手を握ります。
アラン:「ああ、よろしくな」と言って、ミルクを飲み干そう。
キュリオ:「それじゃあ、街の入口で待ってるから、準備が出来たら、そこに集合ね」
アラン:マスターに勘定を払い、帽子を被ります。
    「準備は出来た……どうせなら、今すぐに行くぞ」
    と店を出て、スタスタと、街の入口とは反対方向へと……、
キュリオ:「アランさん、そっちは港だよ?」
アラン:「……そうだったな」
キュリオ:「もしかして、方向音痴だったりして?」
アラン:「だったら、何だ……?」
キュリオ:「人選、誤ったかも……」(溜息)
アラン:「――やかましいわっ!」





―― PHASE-03 迷いの森の集落 ――


G M:さて、アランは、キュリオに連れられて、
    HtH城の北にある迷いの森へとやって来ました。
    森に入ると、だんだん、魔気というか、魔物の気配が濃くなっていきます。
    元々、多いのですが、今は、普段以上に、魔気に満ちています。
アラン:「迷いの森か……、
    そういえば、ここには、水の精霊王がいる、という噂を聞くな」
    尤も、噂の出所は、あのタマネギ頭の小娘だから、眉唾モノの情報だがな。
キュリオ:「うん、いるよ……アタシは、見たこと無いけどね。
     向こうは最深部、こっちは隅っこ、会うことないから」
アラン:「そうか、残念だな……、
    もしかしたら、俺の記憶を甦らせてもらえるかと思ったんだが……」
キュリオ:「大丈夫、ダイジョ〜ブ!
     案外、いきなり戻るかも知れないよ? 後頭部にハンマー叩き込む、とか?」
アラン:「物騒な話だな……」
G M:と、そんな話をしている間に、リュンクスの集落に到着します。
    森の木々の中に埋もれるように、質素な家屋が、点々と建っており、
    かなり小規模な集落で、住人も、少ない事が分かります。
アラン:「ここが、リュンクスの集落か……」住人の様子を見てみよう
G M:家の中から、アラン達の様子を窺っています。
    どうやら、この集落では、人間の男は、珍しいようですね。
    中には、興味津々と、寄って来ようとする子供もいますが、
    すぐに大人に捉まり、家の中へと連れ戻されています。
アラン:「大した歓迎っぷりだな」その様子を見て、肩を竦める。
キュリオ:「ゴメンね、でも仕方ないよ……、
     集落に来た人間は、アランさんが初めてだから……」
     申し訳無さそうに言いつつ、集落の真ん中にある家を指差します。
     「ちょっと来て……一応、ばーちゃんから、正式に話があると思うから」
アラン:「祖母というと……初代ストレイキャットか」と内心で苦笑しつつ、キュリオに従おう。
G M:キュリオに連れられ、家に入ると、猫耳を付けた25歳くらいの女性が出迎えます。
アラン:キュリオの母親か? 意外と若いな……、
キュリオ:「ただいま、ばーちゃん!」
アラン:――ぶっ!? 祖母かよっ!!
G M:驚くアランを余所に、二人は話を進めます。
ばーちゃん:「おぉ、キュリオ! その人が、お前さんの選んだ子種かい?」
キュリオ:「違うって、ばーちゃん! ゴブリンを追っ払うのに協力してくれる人だよ!」
アラン:「人を種馬みたいに……、
    まったく、何処ぞの女好きじゃあるまいし……」(ブツブツ)
キュリオ:「そ〜ゆ〜人、知り合いにいるの?」
アラン:「ああ、あいつは仲間内では『歩く種馬』と……、
    はて? そういえば誰だったかな?」
    無意識に呟いた、自分の言葉に首を傾げよう。
G M:記憶を失う前に、そういう知り合いかいたわけですね。
    ってゆ〜か、勝手に伏線張らないでください。(泣)
アラン:まあ、誰にだって、一人は、そういう知り合いもいるさ。
ばーちゃん:「さて、立ち話するもなんじゃて……」
      ばーちゃんは、アランを、家に上がるように促します。
アラン:お言葉に甘え、家に上がりつつ……、
    「彼女が初代か? まだ、現役でもいけそうじゃないか?」と、キュリオに小声で訊ねるぞ。
キュリオ:「あ〜、ダメダメ……、
     見た目アレでも、今年で、確か114才くらいだから。
     他の集落も含めて、リュンクス族の最長老の一人だよ」
アラン:「なるほど……」
G M:客間に案内されたアランには、お茶が振舞われます。
ばーちゃん:「遠いところ良くきなすったの、人間の剣士殿……、
      如何にも、わしが初代ストレイキャットじゃ」
アラン:聞こえていたか……流石はリュンクス族だな。
    「一応、アラン=スミシーと名乗っている」と、帽子を取って、一礼しよう。
ばーちゃん:「アラン殿か……ふむ、良い名じゃ」
      アランの丁寧な態度に、ばーちゃんは目を細めます。
      「さて、来て貰って早々で悪いが、本題入ろうかの」
      どうやら、詳しい話は、お茶を飲みながら話してくれるようです。
アラン:「話は早い方が助かる……聞かせてもらおうか?」
    お茶よりミルクが良いのだが……、
    とにかく、茶を啜りながら、話を聞くことにしよう。
ばーちゃん:「凡その話は、キュリオから聞いておるじゃろ?
      わしらが頼みたいのは、ゴブリンの群れの駆除なんじゃ。
アラン:「それは、もう聞いたが……、
    こんな場所に、何故、いきなり、ゴブリンが現れる?
    何か、心当たりは無いのか?」
ばーちゃん:「それが、全く見当がつかんのじゃ……、
      この集落から、少し奥まった所にある洞穴に、
      わしの娘が遺した宝やら何やらを入れてあっての、
      普段、人間と取り引きする時には、そこから金目の物を出していたんじゃが、
      何故か、急に、ゴブリン共が入り込んでの。
      何かを探しているようなんじゃが……」
アラン:「その洞穴に、原因がある、と考えるのが妥当だが……?」
ばーちゃん:「じゃが、こんな事は、今回が初めてなんじゃよ。
      そこで、アラン殿にはゴブリン退治と、出来れば原因の追及もやってほしいと思っておる。
      無論、それなりの礼はするでな」
アラン:「つまり、その洞穴にのり込んで、ゴブリンを殲滅すればよい訳か……具体的な敵の数は?」
キュリオ:「アタシが、最後に見た時は……10匹くらいだったかな」
アラン:「現場の詳しい場所の、内部構造は分かるか?」
    ゴブリンとはいえ、一人で10匹も相手にするのは、厳しいからな。
ばーちゃん:「案内役として、キュリオを同行させよう」
アラン:「待て、それは危険だ」
キュリオ:「一人で行けるの? 方向音痴さん?」
アラン:「ぐっ……しかし、依頼主の身内を危険に晒すわけには……」
キュリオ:「任せてよっ! これでも、一応、世に名を轟かすストレイキャット・ザ・サードだよっ!」
ばーちゃん:「まあ、母親が急逝したんで名は継がせたが……一通りの事はできる。
      足手纏いにはならんと思うがの……」
キュリオ:「ばーちゃん、ひどいよっ!」
ばーちゃん:「それなら、リュンクスの名残りを残さずに、キッチリ変装してみせんか!」
      と、むくれる孫娘の耳や尻尾を示しつつ、ばーちゃんは、キュリオを叱っています。
アラン:そんな二人に苦笑しつつ……、
    「なるほど……俺が財宝を持ち逃げしないよう、そのお目付け役というわけか」
キュリオ:「そんなつもりじゃ……」
ばーちゃん:「そういう意味合いもあるかのう」
キュリオ:「――ばーちゃんっ!!」
アラン:「構わんさ、寧ろ、それは正しい。
    人間なんぞ、そう易々と信用するモンじゃない。
    特に、あんた達みたいな種族はな」
キュリオ:「ゴメンね、アランさん……」キュリオは、今にも泣きそうです。
アラン:「お前が謝ることじゃない……、
    だいたい、お前は、俺を信用したから、ここに連れて来たんだろう?
    俺には、それで充分だ」
    と、キュリオの頭を、わしわしと撫でて、フォローしておこう。
    「……頼りにしてるぞ、相棒」
ばーちゃん:「キュリオにも<良い修行になるだろうて……宜しく頼みますぞ、アラン殿」
キュリオ:「む〜……二人して、アタシのこと、子供扱いして〜」
     と、少し拗ねながら、キュリオは、家の外へと出て行きます。
     「アランさ〜ん……早く行くよ〜!!」
アラン:「はいはい……」





―― PHASE-04 遺産の洞穴 ――


G M:というわけで――
    アランは、キュリオの案内で、
    二代目ストレイキャットの財宝が保管された洞穴に向かっているわけですが……、
アラン:その道すがら、キュリオに訊ねよう。
    「母親が急死したそうだな……病気か?」
キュリオ:「……仕事で街に出た時、馬車に轢かれそうになった子供庇って捕まっちゃってね」
     アランの質問に、キュリオは、無表情で答えます。
     「その後は……多分、想像してる通りだよ」
アラン:「……それでも、人間の俺に、助けを求めるのか?」
キュリオ:「恨むのは簡単だけど、恨んでても、何も変わらないもの。
     かーちゃんも判ってくれるだろうし、アタシも納得してる……、
     それに、アランさんの力を借りないと……多分、もっと大変なことになるから」
     溢れそうになる涙を拭って、キュリオは笑ってみせます。
アラン:強い娘だな……、
    「なら、出来る限り、その信頼に応えられるよう、努力するさ」
    万が一の時には、せめて、
    キュリオだけでも、無事に帰さないと……、
キュリオ:「……ありがと“アラン”」
G M:と、話している内に、件の洞穴へと到着しました。
アラン:「キュリオ……侵入者対策の罠とかはあるのか?
    まあ、あるとしても、お前がいれば、問題は無いだろうが……」
キュリオ:「罠なんて仕掛けてないよ。こんな所に、独力で来るような盗賊なんて居ないし……、
     迷いの森自体が、防壁みたいなものだよ」
     キュリオの言う通り、天然洞窟を利用したモノなのか、特に、罠などは無さそうです。
アラン:「なるほど……それもそうだな」
    じゃあ、カンテラを灯して、中に入るとしよう。
G M:そのカンテラは、キュリオが持ってくれるそうです。
アラン:「お前は、後ろに下がっていろ……案内だけ、頼む」と言って、剣と盾を構えます。
G M:では、カンテラの明りの中、暗い洞穴の奥へと二人が進むと、
    通路の先から「ゴブゴブ〜」とゴブリンの声が聞こえてきます。
アラン:早速、お出ましか……、
    通路の先の様子は、どうなっているんだ?
    敵に見つからないように、こっそりと様子を窺うぞ。
G M:通路の先は、やや広めの空洞になっています。
    その空洞の地面を、10匹のゴブリンが掘り返しています。
    どうやら、何か探しているようです。
アラン:「……ここに、何かあるのか?」
キュリオ:「うん……確か、ここらに、かーちゃんがヤバい物を色々埋めてたような……」
アラン:「ヤバイ物か……」
G M:と、アラン達が様子を窺っている内に、ゴブリン達は、何かを発見したようです。
アラン:それが何なのか、見えるか?
G M:黒いオーブのような物です。
アラン:そいつは、本気でヤバそうだ。
    ゴブリン達は、こっちに気付いているのか?
G M:気付いていないようです。
    目的の物を発見した事に喜び、小躍りしています。
アラン:じゃあ、不意打ちしても良いか?
G M:不意打ちしても良いですよ。
    反撃されずに、攻撃を一回だけ行えます。
アラン:10匹いるって事は、エネミーじゃなくて、モブか?
G M:そうですね。闘うのなら、モブ戦闘として扱います。
アラン:モブ戦闘なら、何とかなるかもな。


【エネミー戦闘とモブ戦闘】

 戦闘には、二つのタイプがあります。
 一つは、敵を単体として扱うエネミー戦闘、もう一つは、敵を集団として扱うモブ戦闘です。

 ・モブ戦闘
   大規模な戦闘を、簡単に処理する為のルールです。
   10体以上の敵を相手にする場合、それを1体ずつ処理するのは面倒だし、時間も掛かります。
   そこで、モブ戦闘の場合、敵の集団を1つにまとめ、仮の1個体として処理するのです。

 ・エネミー戦闘
   これは、前述のモブ戦闘とは違い、全ての敵を単体として処理します。
   その分、判定が複雑になり、時間も掛かるようになりますが、
   戦闘にリアリティが増し、緊迫した戦闘を行えるようになります。
   モブ戦闘が、雑魚戦用のルールとするならば、エネミー戦闘は、ボス戦用のルールと言えます。



キュリオ:「アタシも手伝った方が良い?」とキュリオが訊いてますが?
アラン:正直なところ、出てこられた方か困る。
    「お前は、ここにいろ……これは、俺の仕事だ」
    そう言って、キュリオを空洞の入口に残し、中へと躍り出るぞ。
    そして、不意打ちで、全体攻撃魔術だっ!





―― PHASE-05 ゴブリンとの闘い ――


G M:「――ゴブッ!?」突然、現れたアランに気付き、
    ゴブリン達は、一斉に、アランの方を向きました。
アラン:遅いっ! こっちは、もう攻撃態勢に入ってる!
    不意打ち、いくぞっ!!
G M:では、ここから戦闘ターンに入ります。
    不意打ちなので、最初は、アランが一方的に攻撃出来ます。
    魔術を使うなら、まずは魔術発動判定からお願いします。


【魔術発動判定】

 魔術の発動に成功したか失敗したか決める判定です。
 2D6を振り、出目がファンブル値より高ければ、発動成功となります。



アラン:まずは呪文を唱えるぞ!
    「全ての力の源よ、猛き炎となり、敵を討てっ!」(ころころ)
    出目は4だから魔術発動成功っ!
    「くらえっ! マハラギーッ!!」
G M:火属性全体魔術がゴブリンの群れに襲い掛かります。
    では、次に、命中判定をどうぞ。


【単体攻撃魔術と全体攻撃魔術】

 攻撃魔術には、単体用と全体用の二種類があります。
 威力に違いはありませんが、戦闘のタイプによっては、修正を受けます。

 ・単体攻撃魔術:敵1体を攻撃する魔術です。
         ただし、モブ戦闘で使用した場合、
         与えたダメージを、半分(端数切捨て)にしなければいけません。
 ・全体攻撃魔術:出現した全ての敵を攻撃する魔術です。
         モブ戦闘において、修正を受ける事がありません。
         ただし、ダメージ判定が、単体魔術よりも低くなります。



【命中判定と回避判定】

 命中判定は、攻撃が命中したかどうかを決める判定です。
 この判定値が、敵の回避値よりも高ければ、攻撃が命中した事になります。

 回避判定は、攻撃を回避できたかどうかを決める判定です。
 この判定値が、敵の命中値よりも高ければ、攻撃を回避した事になります。

武器による命中判定 武器技能レベル+2D6(+装備、技能、魔術などによる修正)
武器による攻撃への回避判定 武器技能レベル+2D6(+装備、技能、魔術などによる修正)
魔術による命中判定 メイガス技能レベル+2D6(+装備、技能、魔術などによる修正)
魔術による攻撃への回避判定 メイガス技能レベル+2D6(+装備、技能、魔術などによる修正)



アラン:命中判定(ころころ)……ぶっ、1ゾロ!?(爆笑)
G M:1ゾロは、問答無用でファンブルですね。
アラン:ちくしょうっ!!
    ファンブル表を持ってこ〜いっ!!(泣)


【クリティカル値とファンブル値】

 あらゆる判定には、成功と失敗だけでなく、
 クリティカル(大成功)とファンブル(大失敗)という結果があります。

 基本的には、出目が12(6ゾロ)がクリティカル、出目が2(1ゾロ)がファンブルとなりますが、
 この二つの値は、ヒーローLVと、ギャグキャラLVの差で変動します。

 ・ヒーローLV > ギャグキャラLV → 差異分だけ、基本クリティカル値をマイナス
   例:ヒーローLV4、ギャグキャラLV2の場合、クリティカル値が10以上となる。
 ・ヒーローLV < ギャグキャラLV → 差異分だけ、基本ファンブル値をプラス
   例:ヒーローLV2、ギャグキャラLV4の場合、ファンブル値が4以下となる。

 つまり、ヒーローLVが高ければ、クリティカルしやすくなり、
 ギャグキャラLVが高ければ、ファンブルしやすくなる、という事になるのです。

 判定にクリティカルした場合、普通の成功よりも、優れた成功となります。
 大抵の場合は、判定結果に『2D6+関連技能LV』を追加する事が出来ます。

 判定にファンブルした場合、普通の失敗よりも、酷い失敗となり、
 ファンブル表を振って、その結果を決めなければなりません。



【ギャグキャラファンブル表】

 『Leaf Quest TRPG』の最大の特徴とも言えるルールです。

 あらゆる判定で、ファンブルすると、判定に失敗するだけでなく、
 この表を使って、2D6を振り、失敗の結果を決めなければなりません。

 この表を振った時、何が起こったかは、基本的に振ったプレイヤーが考えるが、
 あまり時間が掛かるようなら、誰がか即興で考えても良い。

2D6

ファンブルの結果内容

本人が行動不能に陥るようなことが起こる
まるっきり予想し得なかったことが起こる
思わぬ敵を作る
頼りない/足を引っ張る味方が現れる
とーーーーーっても「恥ずかしい」失敗
正反対の結果、もしくは仲間に呆れられる様な結果
自分に被害が及ぼされる
仲間に被害が及ぼされる/大迷惑をかける
10 仲間をとーーーーーっても「恥ずかしい」目に遭わせるような大失敗
11 自分に被害が出るが有利な結果も及ぼされる
12 仲間に被害が出る/大迷惑をかける、だが有利な結果も起こる



アラン:(ころころ)ファンブルの結果は……、
    出目は4だから、『思わぬ敵をつくる』だな。
G M:敵の増援が来る、ってところですかね。
    多分、アランの大外れした魔術で起こった、派手な音を聞きつけたのでしょう。
    増援の数は1D6で(ころころ)……ゴブリンが一匹増えました。
アラン:あああっ! 不意打ちのつもりが、
    逆に、不意を打たれたようになってしまったっ!!
G M:というわけで、今、アランの前には、五匹のゴブリンがいるわけですが、
   黒いオーブを持った一匹は、他のを盾にして、洞窟の奥に、逃げようとしています。
アラン:そいつは、優先して倒したいな……出来そうか?
G M:最初のターンの一回だけくらいなら、攻撃出来そうです。
アラン:なら、次のターンで攻撃しよう。
G M:その前に、改めてイニシアティブ判定をしましょう。


【イニシアティブ判定】

 戦闘の最初に、先行後行を決める判定です。
 『2D6+T÷3値(+装備、技能などによる修正)』を振り、数値の多い方が、先行となります。



アラン:そうだな……、
    では、2D6+2(ころころ)……13だ。
G M:ゴブリンは2D6+2で(ころころ)……、
    9だから、先行はアランですね。
アラン:宣言通り、例のオーブを持ったゴブリンに攻撃だ。
    確実仕留める為に、呪文をアレンジして、魔術攻撃するぞ。


【呪文のアレンジ】

 呪文をアレンジする事で、魔術の効果を拡大する方法です。
 消費MPを増加させる事で、二つのアレンジから、どちらかを選んで、使用できるようになります。

 ・範囲拡大:単体魔術を全体魔術にする事が出来る。
       ただし、発動の目標値に+3、消費MPは二倍になる。
 ・威力拡大:消費MPを倍にして、ダメージ判定に+1D6する。
       消費MPの倍数を上げる程に、追加ダイスの数を増やす事が出来る。
       ただし、追加出来るダイスの数はメイガス技能と同値まで。



アラン:消費MPを倍にして、ダメージに1D6追加するぞ!
    「全ての力の源よっ! 荒ぶる業火よっ! 敵を焼き尽くせっ!」
    魔術は発動判定っ!(ころころ)10! 発動成功!
    続いて、命中判定つ!(ころころ)10!
G M:意識的に一匹だけを狙うなら、このゴブリンだけは、エネミー戦闘扱いにします。
    ゴブリンの回避は(ころころ)8だから、命中してますね。
アラン:「いけえっ!! アギッ!!」
    ダメージ判定に+1D6して、4D6+8!
    (ころころ)ダメージは18だっ!!
G M:微妙なところですね。
    ゴブリンの防御判定は(ころころ)6点減らしても、12点きました。
    「ゴブ〜〜〜ッ!!」と、ゴブリンは倒れ、持っていたオーブは地面に落ちます。


【ダメージ判定と防御判定】

 ダメージ判定は、命中判定に成功した後に、相手に与えるダメージを決める判定です。
 また、防御判定は、そのダメージを減少させる為の判定です。

武器によるダメージ判定 武器技能レベル÷2+武器必要B+2D6(+魔術などによる修正)
武器ダメージ対する防御判定 武器技能レベル÷3+防具必要B+2D6(+魔術などによる修正)
(↑簡易防具の場合、防具必要B÷2+1となる)
魔術によるダメージ判定 単体魔術:魔術熟練度LV+M値+2D6(3D6)
全体魔術:魔術熟練度LV+M値÷2+2D6(3D6)
魔術ダメージに対する防御判定 メイガス技能LV+(+魔術などによる修正)
実ダメージの値 ダメージ判定値−防御判定値



アラン:よしっ、仕留めたぞっ!!
    あとは、他のゴブリンを一掃するだけだなっ!
G M:意気込むのは、こっちの攻撃を受けてからにしてくださいね。
    残り四匹のゴブリン達は、一斉に、アランを攻撃します。
    命中判定(ころころ)6ゾロだから、クリティカル!!
アラン:うおっ!? 自動的命中かっ!!
G M:ダメージは(ころころ)バキッと14点っ!
アラン:防御判定(ころころ)は、こっちも同じく14点っ!
    剣を振るって、カキーンと弾いたぞっ!
G M:か、固いですね?
アラン:防御系技能の力だ。
    さあ、次は、俺の攻撃だっ!!


 この後も、アランとゴブリン達の攻防は続きます。

 アランは、剣と魔術を使い、着実に、ゴブリンのHPを削り、
 回避に失敗しても、その高い防御力で、敵の攻撃を防いでいきます。

 そして、9ラウンド目――
 アランの剣が、最後のゴブリンを――


アラン:「これで終わりだっ!」
    (ころころ)ダメージ19点っ!!
G M:防御は(ころころ)8点……HPがマイナスになりました。
アラン:「ふう……終ったか」
    剣を納めつつ、一応、キュリオが無事かどうか、確認しよう。
キュリオ:「アラン、すご〜い!」
     と、隠れていた場所から、ひょこっと出てきたキュリオは、
     アランの闘い振りに、目を丸くしてます。
アラン:「ま、まあな……さて、あいつら、一体、何を見つけたんだ?」
    照れクサいのを誤魔化しつつ、例の黒いオーブを探します。
G M:黒のオーブは、すぐに見付かります。
    何やら、黒っぽいオーラが見えるようなそうでもないようなオーブです。
アラン:イメージとしては、イー○の黒真珠ってところか?
    それは、触っても大丈夫なのか?
    まあ、念の為、直接触らないように、布か何かの上から掴んで観察しよう。
G M:触っても、何でもないですが、魔力が溜まってる気がします。
アラン:ますます、黒真珠だな……、
    キュリオに訊いてみよう。「コレが、何か知ってるか?」
キュリオ:「これ……魔力蓄積のクリスタルだ」ぽか〜んとしつつ、オーブを見ています。
G M:詳しく説明すると、魔力を追加する事で、使い減りしない魔晶石の様なアイテムです。
    主に大量の魔力を消費する魔道具を使用する時の補助に使われます。
    って、こういうアイテムって、有りなんですかね?
STEVEN:Fateに出て来た凛のペンダントのような物ですね。
    LQ世界では、魔力は薬物で回復しますから、精神力を肩代わりするような物はありませんけど、
    魔道具の触媒になる魔導石があるから、こういのも有りだと思います。
G M:じゃあ、そういう事で……、
アラン:「ようするに、物騒なシロモノなわけだ……一応、確保しておくか」
    そう言って、オーブをキュリオに向かって放るぞ。
キュリオ:「わっ、たたっ!」それを慌ててキャッチします。
アラン:「大事な遺品だ……ちゃんと持っておけよ」
キュリオ:「うん……」





―― PHASE-06 開かれし闇の扉 ――


G M:さて、ゴブリンを倒したアラン達は、さらに、洞穴の奥へと進みます。
    すると、向かう先から、ゴブリンの悲鳴が聞こえてきました。
アラン:悲鳴? まだ、ゴブリンがいるのか?
G M:“いる”と言うよりは“いた”ですね。
    おそらく、今のゴブリンの声は、断末魔です。
アラン:何だと? 一体、何が起こっているんだ?
    通路の影に、身を隠して、耳を澄ましてみるぞ。
G M:アランの耳には、何も聞こえません。
    でも、キュリオの鋭い聴覚は、何かを捕えたようです。
アラン:「どうした、キュリオ……?」
キュリオ:「……っ!?」
     猫耳をピクピクさせて、その“何か”を耳にしたキュリオが、
     いきなり、弾かれたように、洞穴の奥へと走り出しました。
アラン:「――お、おいっ!!」
    慌てて追い駆けるぞ! 出来る事なら捕まえる!
G M:名うてのリュンクスだけあって、捕まえるのはちょいと難しそうです。
    アランを置き去りにして、洞穴の奥へと消えていきます。
キュリオ:「この声……かーちゃんだよっ!?」
アラン:「なにっ……?!」
     キュリオの発言の内容が気になるが、とにかく、急いで後を追うぞ!
G M:しばらく走ると、最深部が見えてきました。
    一応、宝物庫と言うべきでしょうか。
    そこは、無造作に敷き詰められた、山のような宝物の光に照らされた空洞です。
    だが、そんな宝の山よりも、目立っているのは、
    空洞の中心に鎮座する、巨大な門のような魔道具です。
アラン:「キュリオ、何処だっ!?」
    そんなモノには目もくれず、キュリオの姿を探すぞ。
    まったく、手間を掛けさせやがってっ!
G M:探すまでも無く、キュリオの姿は、すぐに見つかります。
    キュリオは、その巨大な門の正面に、立ち尽くしています。
    そして、呆然とする彼女の目の前には、大人のリュンクスらしき人影と、
    その人影の足元には、惨殺された、ゴブリンの死体が……、
???:「ふんっ、使えぬ駄犬だ……、
    まあ、良い……目的の物は、わざわざ、持って来てくれたみたいだしな」
    ゴブリンの死体に、侮蔑の眼差しを向けるリュンクス……、
    どうやら、ゴブリンを殺したのは、このリュンクスのようです。
    その顔は、長い髪に隠れて、よく見えません。
アラン:「何だ、何が起こっている!?」
G M:さあ、どういう事なんでしょうね〜?
    ところで、例の黒いオーブは、キュリオが持っていましたよね?
アラン:あ、ああ、そうだが……って、しまった!!
    「キュリオ、迂闊に近付くなっ!!」」
G M:もう、遅いですね。
    まるで、巨大な門に共鳴するように、
    キュリオが持つ黒いオーブが光を放ち、凄い反応を示します。
    そして、その光を浴びた瞬間、キュリオは、バタッと倒れてしまいました。
アラン:「――キュリオッ!!」
    倒れたキュリオを、慌てて抱き起こす。
    命に別状は無いんだろうな?
G M:オーブから放たれ魔力に中てられただけのようです。
    呼び掛ければ、すぐに、薄っすらと目を開きます。
キュリオ:「あれ……アラン……ボク……?」
アラン:「気が付いたか……、
    まったく、とんだじゃじゃ馬……いや、じゃじゃ猫だ。
    後ろに下がっていろ、と言っただろう?」
キュリオ:「ゴメンね……でも、かーちゃんが……」
     アランの腕の中で、キュリオは、弱々しく微笑むと、例のリュンクスへと目を向けます。
アラン:「母、だと……?」
    キュリオの視線を追って、俺も、そのリュンクスを見るぞ。
G M:では、そのリュンクスは、キュリオが、
    落としたオーブを拾い上げ、門にある丸い窪みに埋め込みます。
    すると、固く閉ざされていた門の扉が、ゆっくりと、開き始めました。
    どうやら、黒いオーブは、鍵の役割を果たしているようです。
アラン:その扉の向こうには、何があるんだ?
G M:何があるかは、まだ、見えません。。
    ただ、徐々に開いていく、門の向こうから、無数の獣の唸り声が聞こえてきます。
アラン:門が開き切った瞬間、そいつらが、
    一気に、こちらへ押し寄せて来る、って事か……、
    もしかして、魔界の門? という事は、このリュンクスは……、
G M:そこから先は、プレイヤーとしての知識なので、それ以上は、考えないように。
アラン:門が開くのを、止める術はありそうか?
G M:さあ、どうでしょう?
    門の扉からオーブを外せば、、もしかしたら、止められるかもしれません。
アラン:だったら、答えは簡単だ。
    「キュリオ……ちょっと待っていろ」
    抱き上げたキュリオを、宝物庫の隅へと運んた後、
    門に駆け寄り、嵌め込まれたオーブを外そうと試みるぞ。
G M:アランが、門に駆け寄ると、リュンクスに、腕を掴まれます。
    腐りかけた死体に掴まれたような感触です。
???:「……おやおや、折角、開きかけた扉を閉めるのは、賛同出来ないな」
アラン:「――ちっ! 貴様、何者だっ!?」
     相手の腕を振り解き、飛び退いて、距離を置く。
???:「そうだな、キュリオ……、
    ストレイキャット・ザ・セカンド、キュリオとでも名乗っておこうか」
    そう言うと同時に、リュンクスを顔を隠していた髪を掻き上げます。
    アランの目の前には、少し大人びたキュリオに似たリュンクス……の死体が立っていました。
アラン:「なるほど……貴様、キュリオの母親の遺体を……」
キュリオの母:「ほぅ、案外、察しが良いようだな……、
       いかにも、この身体は、貴様等人間が、長寿目的に殺した、そこの娘の母親の身体よ」
       よく見れば、その下腹部は、抉り取られて、無くなっています。
アラン:「惨い真似を……許せんな」
    吐き捨てるように呟き、剣を抜くぞ。
キュリオの母:「惨いのはどっちだ、人間よ……、
       人間は、私利私欲の為に、この身を殺し、腹を抉ったのだぞ?
       貴様らの所業の方が、よほど、惨たらしいではないか?
       我としては、侮辱されるどころか、感謝して欲しいくらいだ。
       何故なら、我は、その娘を、人間に殺された母と、再会させてやったのだからな!!」
       と、そう言って、キュリオの母は、キュリオに手を差し伸べ、優しい声で呼び掛けます。
キュリオ:「か、かーちゃん……」
キュリオの母:「さあ、こちらへおいで、私の愛しい娘……、
       母を殺した、憎い憎い人間を、母と一緒に、殺してやりましょう」
キュリオ:「あ、ああ……」
     母の言葉に誘われるように、キュリオは、フラフラと、母に手を伸ばします。
アラン:マントを翻し、キュリオの視界を遮ろう。
    「その体で、キュリオの母を名乗るなっ!
    その声で、キュリオの名を呼ぶなっ!
    母と娘の絆を……汚すような真似をすなっ!!」
キュリオの母:ふん……せめてもの思い遣りか?
       そんな真似をしても、今更、貴様らの罪は消えぬぞ?」
アラン:「そんな事は分かっているっ!
    俺達、人間が犯した罪は、素直に認めよう……、
    だが、俺が“惨い”と言ったのは、貴様の所業、そのものだっ!!」
キュリオ:「何だと……?」
アラン:キュリオは、人を恨もうとはしなかったっ!
    キュリオは、人を許そうとしてくれたっ!
    胸に抱いた傷の痛みに堪えて、零れそうになる涙を堪えて、
    決して俯かず、顔を上げて、前を向いて……、
    精一杯の笑顔で、真っ直ぐに、未来を見据えていたんだっ!!
    そんなキュリオの……、
    誰よりも強い少女の、心の傷を、貴様は、無残に抉り返したっ!!
    お前は、キュリオを泣かせたっ!!
    男として、騎士として……貴様の所業を、許すわけにはいかないっ!!
    我が剣に誓おうっ!! 俺は、キュリオを守るっ!
    そして、お前は、今ここで……倒すっ!!」
キュリオ:「アラン……」
     アランの叫びを聞き、悪魔の誘惑で、
     虚ろだったキュリオの瞳に、再び、強い意志が戻りました。
キュリオの母:ふはははははははっ!!
       我が言霊を前に、よく咆えたな、人間よ!!
       褒美として、我が真の名を教えてやろうっ!!
アラン:「…………」
    無言で、剣と盾を構えるぞ。
ラルヴァ:この名を前に、絶望せよっ!
     我が名は『ラルヴァ』――
     悪夢と破壊の使者ラルヴァだっ!!





―― PHASE-07 
旭日に祝福された白刃ライジング・サン ――


アラン:「さあ、話して貰おうか?
    その扉は何だ……一体、何が目的だっ!?」
ラルヴァ:水の精霊王を落とす為に、ここは都合がいい。
     ドーバン様に知らせるためにも、ゲートは通らせて貰わねば、な」
     そう言うと、ラルヴァは、キュリオの母の体を捨て、真の姿を現そうとします。
     溢れ出る魔力の奔流は、それだけで、アランの闘う意志を奪っていきます。
アラン:遠回しに勝てない、って言われてるな。
    「クッ……なんて魔力……ケタ違いだ」


 魔王と使徒であるラルヴァは、人間などに憑依し、
 対象の能力、記憶、性格を、自在に操る力を持ちます。

 その代わり、身体能力も、憑依した肉体に、
 依存する事になる為、場合によっては、弱体化してしまいます。

 ここでは、ラルヴァは、アラン相手に、
 リュンクスの肉体のままでは、不利だと判断し、本来の姿を現す事にしました。

 ラルヴァの本来の力は、英雄にも匹敵します。
 今のアランの実力では、ラルヴァには敵いません。

 故に、アランは、絶体絶命のピンチへと陥るのですが……、


G M:キュリオの母の体から、徐々に、ラルヴァの本体が姿を現します。
    だが、完全に、ラルヴァが具現化しようとした瞬間……、
???:「……剣士よ、私を殺しなさい!! 私に……たった一人の娘を殺させないで!!」
    突然、キュリオの母の体が声を発し、
    それと同時に、ラルヴァの体が、遺体の中へと戻っていきます。
ラルヴァ:「黙れ……黙れと言っているっ!!」
     どうやら、強制的に、遺体に繋ぎ止められてしまったようです。
     遺体に憑依したまま、ラルヴァは苦しげに呻き声を上げています。
アラン:「母の愛……か」
ラルヴァ:「油断していたよ、まさか、朽ちかけた魂に、こんな力があるとは……な」
     しばらく、悶え苦しんだ後、ラルヴァは、痛苦に満ちた顔に笑みを浮かべます。
アラン:「私を殺せ、か……損な役回りだが……、
    まあ、いい……あんたを殺した同じ人間として、その憎まれ役、引き受けてやるよ。
    許せ、キュリオ……コイツは、俺が斬る」
キュリオ:「……うん」
ラルヴァ:「お別れの挨拶は、済んだかな?」
アラン:「子を想う母の愛が起こした奇跡……下種への手向けには、勿体無いくらいだな」
ラルヴァ:「では、殺し合おう……、
     抗ってみるがいいっ! 悪夢の如き絶望にっ!!」
     そう叫び、ラルヴァは、手近にあった、装飾剣を抜きます。
G M:ラルヴァは、遺体に憑依したまま闘うつもりです。
    いくら、体がリュンクスのままとはいえ、ラルヴァの魔力は強大です。
    それなりに、補正が入っているので、油断しないでくださいね。
アラン:補正と言うと……?
G M:溢れ出る魔力が、そのまま形の無い鎧にのように、体を包んでいます。
    具体的に言うと、防御力が、かなり上がっていますね。
アラン:最初のシナリオで、ロクに成長もしてないのに、そんな相手に勝てるかっ!!
キュリオ:「――アランッ! これをっ!!」
     と、敵の力に圧倒されるアランに、
     キュリオが、宝物の山の中から探し出した、バスターソードを投げ渡します。
アラン:「これは……?」
    そういえば、報酬の中に、魔力剣ってのがあったな。
    俺は、キュリオに頷き返し、目の前に突き立つ剣を抜くぞ。
ラルヴァ:「そ、それは……何故だっ!? 何故、それがここにあるっ!?
     抜き身の刃は旭日の光を灯し、ラルヴァは、それを見るなり、大きく後退ります。
     明らかに、その剣に脅威を感じているようです。
アラン:「キュリオ……この剣は?」
キュリオ:「その剣の名は『旭日に祝福された白刃(ライジング・サン)』……、
     ここにある理由は知らない……、
     ばーちゃんの代から、ずっと、ここにあったらしいから……」
アラン:「ライジング・サン……?
    そうか……今だけで良い、力を貸してくれ」
G M:アランの言葉に応えるように、魔剣の光が強くなります。
    『ライジング・サン』の必要筋力は6……、
    さらに、魔力剣として、アンデット系の敵に、ダメージ+5です。
アラン:今のラルヴァを、アンデットとして扱うなら、まさに、打って付けの剣だな。
G M:そうですね……、
    ちなみに、アランは、その剣の名を聞いた時、妙な違和感を覚えました。
アラン:違和感って……どういう事だ?
    もしかして、この剣って、俺と何か関係があるのか?
G M:それについては、この闘いが終ってからにしましょう。
    では、ここからは、戦闘ターンに移行します。
    イニシアティブ判定をしてください。
アラン:わかった……、
    コイツを倒して、その違和感の謎を、ハッキリさせてやる!
    イニシアティブは(ころころ)13だ!
G M:ラルヴァは(ころころ)10です。
アラン:よしっ、こっちが先行だなっ!
    まずは、小手調べに、剣で攻撃するぞっ!
    命中判定は(ころころ)8か……ちょっと低いな。
G M:回避は(ころころ)12! 余裕でかわしてますね。
ラルヴァ:「どうした、その程度かっ!?」
     アランの剣を、紙一重でかわしつつ、反撃します。
     (ころころ)命中判定は11です。
アラン:「ふんっ、まだまだ、これからだ!」
    その程度の攻撃……(ころころ)9……くらった!?
ラルヴァ:「遅い、遅いなっ!!」
     装飾剣を、ブンッと振るって(ころころ)ダメージ10点!
アラン:防御は(ころころ)同じく10点!
    盾でガキッと受け止めたぞっ!
    第2ターン目は、いきなりだが、必殺技だ!!
G M:もう勝負に出ますか……、
    良いでしょう、受けて立ちますっ!


【必殺技・必殺魔術】

 キャラクターは必殺技(必殺魔術)を持つ事ができます。

 必殺技(魔術)とは、戦況を有利に進める為の、戦闘オプションの一つです。
 具体的には、とある判定にマイナス修正を与える事で、別の判定にプラス修正を加えます。

 必殺技の設定は、自由に行えますが、
必ず、プラス修正に見合った、マイナス修正をする必要があります。

 必殺技の効果を設定する際の、修正の法則は、以下の通りです。

必殺技の効果 必殺技の代償
命中率を上げる 与えられるダメージが減る
ダメージを追加する MPを多く消費する
攻撃回数を増やす 命中率が下がる

 ただし、この法則に限らず、プレイヤー独自の設定を用いても構いません。
 (その際は、必ず、GMに設定使用の許可を得ること。
 また、GMも、ゲームのバランスを考えて、判断すること)

 ちなみに、アランが持つ必殺技は、二つとも、プレイヤーのオリジナル設定です。

 必殺技の数は、キャラ作成時は2つ。
 その後、ヒーローLVが1を越えたら、ヒーローLVが1つ上がるたびに1つ増やす事が出来ます。

 技の名前や、パフォーマンスは、自分で適当に決められ、
 また、ゲームバランスに影響しない程度の、独特な効果もつけられます。
 (胸を5の形に切る、殴りつける拳の速さが光速を超えるetc)

 必殺技は指定した武器(剣技なら剣、弓術なら弓)を装備していなければ使えません。

 また、技を外したり、防御の結果、ダメージが0だったりした場合、
 その技は、相手に見切られた、と見なし、その相手に同じ技は使えなくなります。



アラン:「くらえっ、トリプルスラッシュ!!」
    攻撃力を犠牲にして、1ターンに、三連続攻撃だ。


【トリプルスラッシュ】

 命中判定に成功すれば、敵に、三連続攻撃が出来る。
 ただし、その三回の攻撃力は、全て−1D6となる。
 また、攻撃の結果、ダメージが0だった場合、次の回避に−1D6の修正を受ける。



アラン:命中判定は(ころころ)7……うわっ、低い!(泣)
G M:それは、さすがに、当たってあげられません。
    (ころころ)12で回避します。
アラン:「くっ、流石はリュンクス……素早いな」
    必殺技を、アッサリとかわされ、歯噛みするぞ。
ラルヴァ:「見える……見えるぞ、貴様の焦りが! 恐怖がっ!!」
     (ころころ)命中判定11で剣を振るいます。
アラン:トリプルスラッシュのマイナス効果で、回避に1D6か……、
    (ころころ)9……まずいな。
ラルヴァ:「――死ねっ!!」(ころころ)ダメージ15点!
アラン:頼む……(ころころ)防御16!
    何とか盾で防いだぞっ!!
    第3ターン!  今度は、魔術で攻撃だっ!!
    魔術発動は(ころころ)4! 命中判定は(ころころ)11だっ!
    「炎よっ、悪しき者を焼き払え……アギッ!!」
ラルヴァ:「ぬおおおおーーーっ!!」
     (ころころ)15で回避〜っ!!
     紙一重で、炎弾をかわし、すかさず、アランに反撃!
     (ころころ)命中判定は8っ!!
アラン:「なめるなっ! そんな攻撃でっ!!」
    (ころころ)13で回避だっ!!
G M:……なんて、華麗な闘いでしょう。


 この後も、アランとラルヴァの闘いは、
 互いに、有効打を与えられぬまま、数ターンが過ぎます。

 剣が閃き、魔術が飛び交い――
 まるで、剣舞でも、舞っているかのように――

 ――戦闘は、まさに硬直状態となりました。

 尤も、その途中で……、
 アランが、回避判定に、ファンブルしてしまい……、


アラン:ファンフル表の結果は7だから……、
    『正反対の結果、もしくは仲間に呆れられる様な結果』だな。
    多分、攻撃を避けようとして、マントの裾を踏んで、すっ転んだかな?
G M:そんな感じでしょうね。
    今まで、カッコ良く、攻撃を避け続けていただけに……、
キュリオ:「はあ〜……調子にのってるから……」(嘆息)
アラン:「のおおおお〜〜〜っ!」(ゴロゴロ)
    転んだ拍子に、地面に頭を打ったので、のたうち回ろう。(笑)


 と、間抜けな姿を晒してしまい、
 キュリオに呆れられる場面もあったりして……、

 だが、ついに……、
 第6ターンで、戦況が動きました。


アラン:「いくぞっ! この一撃でっ!!」
    (ころころ)よしっ、クリティカルしたぞっ!
    命中判定だから、自動的に命中だっ!
G M:むうっ、これで決まってしまうのか?
    ダメージは低めでよろしく。
アラン:長期戦は、こちらが不利っ! ここで決着をつけてやるっ!
    俺は、魔剣に意志を込め、一気に振り下ろすぞっ!
    「『旭日に(ライジング)(ころころ)――祝福された白刃(サン)』!!」
    ダメージは、ドーンと18点だっ!
G M:くっ、大きい……防御は(ころころ)8点?!
    ちょうど、10点通ったっ!?
アラン:「消え去れっ、悪夢よっ!!
    ここは、天に輝く陽に抱かれし場所っ!
    夜の闇に蠢く貴様の居場所など、何処にも無いっ!」
ラルヴァ:「ばかな!? 私が……、
     この私が、たかが人間に……人間如きにぃぃぃぃぃ!?」
G M:ラルヴァの体に突き刺さった魔剣は、
    一瞬、目も潰れんぱかりの燐光を発しました。
    それに呑み込まれる様に、ラルヴァの屈辱に満ちた悲鳴が、洞穴中に響き渡ります。
ラルヴァ:「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォォォォーーーッ!!」
     ラルヴァの断末魔と共に、キュリオの母の遺体から、邪悪な魔力が消えていきます。
     残されたのは、物言わぬ遺体のみ、です。
アラン:「ちっ……後味の悪い仕事だ」
    苦い表情で呟きつつ、俺は、扉に嵌め込まれた、黒いオーブを外すぞ。
G M:オーブを外すと、開き掛けていた扉は、音高く閉ります。
    そして、ガチャッと、鍵が掛かる音がすると同時に、すぅ〜と消えてしまいました。
    巨大な門など、最初から、存在しなかったかのように……、
アラン:「…………」
    手にあるオーブを地面に置き、魔剣を振り上げ、キュリオに無言で訊ねるぞ。
    こんな危険なモノ……この世にあってはいけない。
キュリオ:「……うん」
アラン:彼女に頷き返して、オーブを破壊するっ!
G M:オーブが壊された瞬間、凄まじい魔力が、洞穴全体を揺るがします。
    さすがに、洞穴が崩れる事はありませんが……、
アラン:うむ……一瞬、焦った。(笑)
G M:尤も、例え崩れていても、リュンクスの集落の人々が、助けに来てくれるでしょうが……、
アラン:それは、情けないな……、
G M:まあ、それはともかく……、
    オーブが砕け散った瞬間、その魔力の奔流の影響か、
    洞穴の周囲一面が、色とりどりのヒカリゴケに包まれます。
    そして、ヒカリゴケから発する小さな光が集まり、キュリオの母の姿が浮かび上がりました。
キュリオの母:「ありがとう、人間の剣士……ありがとう、キュリオ」
キュリオ:「かぁ……ちゃん……」
アラン:「悪かったな……、
    謝って済むとは思っていないが……、
    人間は、二度も、あんたを殺しちまった」
G M:全て幻だったかのように、キュリオの母の魂は、
    優しく微笑みながら、ゆっくりと消えていきます。
キュリオ:「かーちゃん……行かないでよ、かーちゃんっ!!」
     母の魂を追うように、キュリオが、必死に手を伸ばします。
     ですが、少女の手は空を切り、母の姿は、見えなくなります。
     残ったのは、母の遺品である宝物と、母の遺体だけ……、
     キュリオは、力尽きるように、その場に膝を付き、
     やり場の無い感情をぶつけるように、何度も何度も、地面を叩きます。
アラン:そんなキュリオを、背中から抱きしめよう。
    「許してくれ、キュリオ……、
    人間は、お前の母を、二度も殺してしまった。
    でも、決して、人間全てを恨まないで欲しい。
    人間全てに、絶望しないで欲しい。
    人間には、悪い奴もいるが、それ以上に、良い奴だっている。
    だから、もう一度、お前の強さを、心の強さを見せてくれ。
    もし、それが出来ないなら……、
    誰かを憎まずにはいられないなら……、
    俺を憎め……俺だけを憎め。
    お前の母を殺した責任だ……俺が、全部、受け止めてやる」
キュリオ:「……バカ、かーちゃんも、ボクも助けてくれたのに……恨めるわけないよ」
     キュリオは、アランを振り返ると、ぽふっと胸元に顔埋めて呟きます。
アラン:「あ、ああ……」
    ちょっと照れながら、ぎこちない手付きで、彼女の頭を撫でておこう。
キュリオ:「ありがとう、ボクの一番大切なかーちゃん、助けてくれて……、
     ありがとう、ボクを助けてくれて……」
     実は、キュリオは“ボクっ娘”で、こっちが地の性格のようです。
アラン:「お前の母親も……これで安心だろうさ。
    こんなカタチだったが、元気な娘の姿を見られたんだしな」
キュリオ:「うん……私の娘なのに、胸が無いのは相変わらずね、だって……、
     ホント痛いところ突いてくるよ」
     そう言って、キュリオは、涙を拭い、アランに、精一杯の笑顔を見せます。
アラン:「まあ、無いなら無いで、需要はあるだろう?」
    適当な事を言いつつ、肩を竦めて、苦笑を浮かべておこう。
    さて、これで、全て終ったかな?
G M:いえ、まだ、シナリオは終りません。
    アランが持つ魔剣ですが、闘いが終った瞬間、刀身が砕け散り、
    その中から、ひと回り小さな刀身が姿を現します。
アラン:……どういうことだ?
G M:某スレ○ヤーズの斬妖剣みたいなものです。
    鞘のように、別の刃を被せて、本来の刃を隠していたんです。
アラン:つまり、魔剣が、本来の姿を見せた、という事か?
G M:はい、そういう事です……、
    刀身が砕け、バスターソードだった魔剣は、ロングソード程の大きさになっています。
    しかし、剣としての存在感は強く、先程までの比ではありません。
    さて、ここで、アランは、2D+M値で、判定を行ってください。
アラン:ふむ……(ころころ)13だが?
G M:では、アランは、魔剣の真の姿を見た瞬間、少しだけ、失われていた記憶が甦ります。
アラン:おおっ!! この剣は、俺の過去に関係があるモノだったのか?!
    それで、一体、俺は、何を思い出したんだ?
G M:その魔剣の本当の名前です。
    剣の銘を聞いた時に、覚えた違和感の理由は、コレだったのです。
アラン:なるほど……で、剣の銘は?
G M:プレイヤーである、あなたが決めてください。
    今まで、セリフの端々に、勝手に伏線張ってたんですから、ちゃんと責任とってくださいね。
アラン:う〜ん、それじゃあ……、
    この剣の真の名は『天に昇る猛き日輪(ガラディーン)』だっ!





―― PHASE-08 キュリオとの別れ ――


G M:集落に戻ると、ばーちゃんが出迎えてくれます。
    事の顛末に関しては何も言わず、ただ「ありがとう」と言うだけです。
アラン:「報酬分の仕事をしただけだ……」
    ぶっきらぼう言いつつ、帽子を目深に被って、照れた顔を隠しておこう。
G M:そんなアランに、ばーちゃんは、報酬の金貨300枚を渡してくれます。
アラン:「それはいらない、その代わりと言っては何だが……」
    金貨を返して、腰に下げた魔剣を軽く揺すって見せる。
    折角、記憶の手掛かりを見つけたんだからな。
    このまま手放すのは、正直、かなり惜しい。
ばーちゃん:「その剣は、元々、アラン殿の物じゃ。遠慮せず、持って行きなされ」
      ばーちゃんは、そう言って、アランに、半ば強引に、金貨を握らせます。
アラン:「あんた、まさか……?」
    最初から知っていたのか、と視線で訊ねるぞ。
ばーちゃん:「さてのう……」
      アランの問いをはぐらかすように、ばーちゃんは、視線を逸らします。
アラン:知っていも、話すつもりは無い、という事か……、
    「なら、最後に一つ訊かせてくれ……、
    あんたらは、何で、危険を冒してまで、怪盗家業なんかやってるんだ?」
ばーちゃん:「人間は、産まれた子供を棄てる者もおる……、
      意に添わず犯され、無理矢理、子供を産まされる娘もおる……、
      無論、全てがそう、とは言わんが……、
      そんな子供達や娘達が、少しでも何処かに、
      何かに希望を持てるならば、危険を冒す価値はある……そうは思わんかの?」
アラン:「なるほど、その通りだ……、
    なら、この金もまた、同じように使うとしよう」
    と、納得して、俺は、キュリオ達に背を向けるぞ。
キュリオ:「一人で帰れるの? 方向音痴さん?」
     迷いの森の出口までは、キュリオが送ってくれます。
アラン:「……やかましい」
    と言いつつ、内心でホッとしてたり……、(笑)
キュリオ:「これで……お別れだね」
     迷いの森の出口へと到着し、別れを惜しんでいるのか、
     キュリオは、アランのマントの裾を掴みます。
アラン:「じゃ〜な……もう会う事も無いだろうさ」
    キュリオの手を、優しく振り払い、森の外へと出よう。
キュリオ:「そうかも、ね……アラン、記憶、戻ると良いね?」
アラン:「なーに、案外、簡単に戻るもんさ……例えば、後頭部にハンマー叩き込む、とか?」
キュリオ:「あははっ……かもねぇ……じゃあ……バイバイ」
     キュリオは、アランの姿が見えなくなるまで、ずっと見送ってくれます。
アラン:「……ああ、じゃ〜な」
    振り返る事無く、立ち去ろう。





―― PHASE-09 ストレイキャット・ザ・サード ――


GM:で、キュリオとの別れから、数日後……、
   アランは、HtH城下街に向かったはずが、TH城下街に来ています。
アラン:また、行き先を間違えたか……、
    まあ、良いか……所詮、当ての無い旅だしな。
    とりあえず、例によって、酒場にでも繰り出すとしよう。
    「マスター……ミルク、御代わり」
G M:相変わらず、ミルクですか……、
    そんなアランの耳に、他の客達の話が聞こえてきます。
    しかも、その話の内容は……、
???:「ねぇねぇ、まーくん、聞きました?
    HtH城下街の方に出てたストレイ・キャットが、この町にも出たって噂ですよ?」
???:「一度、見てみたいよね〜、正体不明の女怪盗〜」
???:「ん〜……そうか?
    正直、俺は、関り合いにはなりたくないな〜」
アラン:「――ぶっ!?」
    色んな意味で驚いて、思わずミルクを吹き出すぞ。
G M:では、そんなアランの肩が、ちょんちょんと、後ろから突付かれます。
アラン:イヤな予感を覚えつつ、後ろを振り向こう。
キュリオ:「えへへ〜……来ちゃった♪」
     アランの後ろには、噂の女怪盗キュリオが……、
     アランの服装を真似ているのか、フード付きのマントを身に着けています。
     尤も、フードを被っていても、相変わらず、猫耳が、チラチラと見えていますが……、
アラン:「……もう、会う事も無いんじゃなかったのか?」
    眉間を揉み解しつつ、悪戯猫に訊ねよう。
キュリオ:「そう思ったんだけど、ばーちゃんが……、
     『ストレイキャットとあろう者が、まんまと盗まれおってっ!
     盗み返してくるまで、帰ってくるな〜っ!』ってさ……」
アラン:「ちょっと待て……俺は、盗みなんぞ働いていないぞ?
    魔剣も金貨も、正当な報酬だったはずだ」
キュリオ:「そんなモノじゃないもん。
     盗まれちゃったのは、もっと、大切なモノだもん」
アラン:「大切なモノ……何だ?」
キュリオ:「それは……ひ・み・つ♪」
アラン:「あのなぁ……」
キュリオ:「それに、こ〜んな方向音痴、放っておけないでしょ?」
     と、にっこりと、凄く良い笑顔で、
     キュリオは、アランに抱きつき、ゴロゴロと、喉を鳴らしています。
???:「見て見て、まーくん……あそこの二人……」
???:「らぶらぶですね〜♪
    これは、わたし達も、負けてはいられませんね♪」
???:「うわっ、待て待てっ! お前ら、こんな人前で……っ!?」
G M:アランとキュリオは、周囲からは、注目の的ですね。
キュリオ:「そういうわけで、ボクも一緒に行ってあげるよ♪」
アラン:「……ふんっ、未だに耳を隠せない奴が何を言ってるんだか」
    フードから見え隠れする、猫耳を示し、やれやれと肩を竦めよう。
キュリオ:「そのうち、隠せるようになるもんっ!」
アラン:「……そのうちねぇ〜」
    と、自分の帽子を、キュリオの頭に、乱暴に被せよう。
    そして、隣の席を軽く叩いて……、


アラン:「お前も……ミルク、飲むか?」

キュリオ:「――うんっ♪」










 この冒険の後……、
 彼の記憶が戻ったかどうかは定かではない。

 ただ、第二次ガディム大戦にて、
 彼は、『百の英雄』の一人として、名を連ねる事となる。





 名を持たぬ冒険者――

 『太陽の騎士』アラン=スミシーと――





<その3へ続く>
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注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。

注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
    その為、今後、ルールが改訂される場合があります。