[前書き]
この作品は、「Leaf Another Story」とのクロスオーバー作品です。
「Leaf Another Story」については、ここを参照。
さて、季節は夏。
夏と言えば……そう、夏休みだ。
そんな訳で(どんな訳だ)俺は今、夏季休暇期間の真っ只中だ。
真っ只中と言っても、まだ入ったばっかりなんだが……、
「問題集とかの課題は、スケジュールを立てて出来るから良いとして……、
問題は自由研究だな。一体、何について調べよう……?」
まさか、『独自にプログラミングした人工知能の思考ルーチンについて』とか、
提出する訳にもいかないしな……、
ぴんぽーん
おや、誰だろう? こんな時間に。
さくらやあかねが、何か訊きに来たのかな?
俺はそんな事を考え、玄関の方に足を向ける。
「はいはい、どちら様……え?」
「よう、藤井 誠」
Heart to
Heart
×
Leaf Another Story
9th Legend 「鬼」
「珍しい事もあるもんですね。
本宮さんがウチを訪ねてくるなんて……」
「まぁ、ちょっと暇が出来たもんでな」
本宮さんは、リビングのソファに腰を下ろし、俺の出した麦茶を啜っている。
「本宮さん、課題は大丈夫なんですか?」
「課題? あんなもん、最初から提出する気はないぞ」
ぶっ!
俺はタイミング良く、
飲んでいた麦茶を吹き出してしまった。
「も、本宮さん! 貴方って人は――」
「ま、まぁまぁ落ち着けよ。もちろん冗談だって。
とはいっても、100%全部の課題は提出しそうにないけどな……」
本宮さん、性質が悪すぎますって……、
「それで……?」
「それで、とは……どういう事だ?」
「本宮さん、ウチに来た理由は何ですか?
本宮さんの事ですから、ただ暇っていうだけでうちに来た訳じゃないでしょう?」
本宮さんの性格からして、もし本当にただ暇なだけだったら、
理緒さんのバイトを手伝いに行ったりしているはずだろう。
本宮さんは、俺なんかより、
理緒さんと一緒にいたいと思っているだろうし……、
ならば、考えられる理由は一つ。
『俺に何か用事があってウチにやって来た』……と考えるのが自然だろう。
「やれやれ……」
本宮さんは、深く帽子を被り直した。
どうやら俺の考え、当たっているみたいだな。
「自由研究何にするかと思ってな。参考までに聞きに来たんだよ」
「なるほど……そういう事ですか。
せっかくですけど、俺も今その事で悩んでいたところなんですよ」
まぁ、本宮さんに何か案があれば別だけど……、
いくら知り合いとはいえ、こういう事で働く事まではないだろう。
「……そうか」
本宮さんはそう言うと、残りの麦茶を啜る。
「そうだな。せっかくこうして藤井 誠の家を尋ねて来た訳だし……、
この先何も予定がないようなら、少し俺に付き合わないか?」
本宮さんに付き合う?
何か裏がありそうで少し怖いんだけど……、
でも、多少の非常識な事なら、
俺には耐性がついているし……何より興味がある。
「はい、良いです――」
俺が本宮さんの提案をのもうとした、その時……、
ぴんぽーん
「ん? こんな時間に誰だろう……、
俺が出ますから、本宮さんは座って待っておいてください」
「了解した」
本宮さんを居間の方に待たすと、俺は玄関に向かって歩き出した。
「はいはい、今、出ますよ……」
俺は、そんな気だるそうな口調で呟きながら、玄関のドアを開ける。
「……え?」
「おはよー、まーくん!」
「おはようございます、まーくん」
「さくら、あかね……?
こんな時間に、何しに……」
「自由研究の事で、少しお話したい事がありましたから……」
「あたし達で、共同研究する事にしようよ!」
ふむ……自由研究の共同発表か。
こちらとしては、ちょうど、
そのネタに詰まっていたところだから、願ってもない話だ。
「分かった。取り敢えず立ち話もなんだし、上がって話し合おう」
「分かりました」
「お邪魔しま〜す」
・
・
・
「よ、園村さんに河合さん」
「おはようございます、本宮さん」
「おはようございます」
先に部屋で待っていた本宮さんと、二人は挨拶を交わす。
「……それで、俺達が共同研究する事は何なんだ?」
三人で共同研究しなければならない事なら、かなり大掛かりな事なんだろう。
「はい。実は私、お母さんから、
『雨月山に伝わる鬼の伝承』について、少し話を聞いたんです」
「うん……」
「それでさくらちゃん、あたしと一緒に調べようと思ってうちに来たんだけど……、
あいにく、それらしい文献は私の家にはなかったし、図書館に行っても見当たらなかったんだ」
「うんうん」
「それで、これはもう現地に行って調べるしかないと思いまして……、
それで、まーくんも誘おうと、今日こちらにお邪魔させていただいたんです」
なるほど……雨月山の鬼の伝承か。
自由研究で調べるのにはちょうど良い題材だし、ついでに旅行も出来る。
こちらとしても、その提案には賛成だ。
「面白そうな話じゃないか。よし、俺も協力するよ」
「やったー!」
「まーくんがいてくれるなら、心強いですね」
俺が参加を表明したところで、一気に盛り上がるさくらとあかね。
――だが、そんな盛り上がりに水を差すかのように。
「……で、雨月山がどこにあるか調べて来てるのか?」
本宮さんの、冷静な声が居間に木霊した。
「あ、あれ……? さくら、あかね……どうしたんだ?」
「それが……」
「東鳩市にはそれらしい文献がなかったので、
雨月山が、今、どの辺りにあるのかまでは、はっきりしなかったんです……」
お、おいおい……、
それって、計画が最初から頓挫してないか?
「雨月山ってのは……今は、隆山にある」
そんな静寂を打破したのは、
以外にも、本宮さんの方だった。
「……え?」
「隆山って、あの温泉で有名なところですか?」
「そうだ。お前ら忘れたのか?
俺が東鳩市に来る前は、隆山に住んでいたって事。
その辺の事なら話は出来るぞ。あまり突っ込んだ話は出来ないけど」
何だか、意外な人の意外な一面を見たような感じだった。
そういえば……、
本宮さん、隆山に住んでいたって事を言っていたような……、
「よーし、まーくん!
そうと決まれば、早速、計画を立てようよ!」
「へ? 計画を立てるって……何の計画?」
「決まってます。隆山温泉に行く計画ですよ」
えええぇぇぇっ!?
いくら夏休みで、俺達は高校生とはいえ……、
そこまで自分達で計画を立てて良いものか!?
い、いや……相手が、さくらとあかねだからこそ、俺は躊躇しているのかもしれない。
「ねぇねぇ、さくらちゃんはいつが空いてる?」
「そうですね……できればお盆の時期は外して……」
しかし、計画は俺の意思とは関係なく既に進んでしまっているようだ。
う、う〜ん……、
どうにかして、二人を止めないと……、
「…………」
「――っ!」
そうだ、本宮さん!
本宮さんなら、抑止力になってくれるかもしれない!
「も、本宮さん!」
「ん、何だ? 藤井誠」
「そうだ、本宮さんも一緒に行かない?」
俺が用件を切り出す前に、先にあかねの方から誘いが出る。
ま、まぁ……本宮さんが、
一緒に行ってくれるのなら、間違いも起きなくてすむかな……、
「いや、俺は行かない」
「え……?」
いきなり、目が点になる俺。
「ど、どうしてですか?」
「俺が言うのもなんだけど、旅するのも結構良いもんだぜ?
その中に引率者……と言うのもおこがましいかもしれんが、
どうも団体で旅をするのには、俺はあまり向いていないようだ。
だから、行くとすれば一人で行くだろう」
「本宮さん……」
「まぁ、お前達の研究内容については興味深いものはあるのだがな。
後で研究結果を見せてもらうだけにするよ。
おっと、丸写しはしないから心配しないでくれ」
そ、そりゃ当然でしょう……、
「それじゃあ、俺はここに長居は無用だな。
そろそろ、帰らせてもらう事にするよ」
そう言って本宮さんは、スッと立ち上がった。
「あ、本宮さん!」
俺の制止を聞かず、
本宮さんは部屋の入り口へ歩き出す。
……かと思えば立ち止まり、俺達の方を向いて。
「……あまり、深入りはしすぎるなよ」
「――え?」
そう言い残し、今度こそ、本当に帰って行った。
「本宮さんの最後の言葉……何だったんでしょう?」
「さ、さぁ……」
「それよりもまーくん、早く計画の続き立てようよ」
この時はまだ、知らなかった。
隆山温泉には、
あんな人達が住んでいるなんて。
そして、あんな事になるなんて――
9th Legend…END
[後書きのコーナー]
はい、(作者の)本宮です。
「Heart to Heart × Leaf Another Story Vol.9」、いかがでしたでしょうか?
この作品は、「Heart to Heart 超絶外伝編『痕』編」に続く形の話のつもりで書いてみました。
どうせ、誠君達が隆山の方に行くのなら、
元々、柏木家に居候していた本宮を絡ませてみようという事で……、
「Heart to Heart × Leaf Another Story」に関しては、次回で一区切りにしたいと思っています。
まぁ第二部という形で、
再び誠君と本宮が絡む話を書く事になると思いますが……、
それでは、次回をお楽しみに〜。
<コメント>
誠 「すみません……、
思いっ切り、深入りしちゃいました」(T▽T)
楓 「…………」(無言で、ギターを構える)(−−)
ジャジャ〜ン――
利幸 「よりにもよって、楓ちゃんか……」(−−;
楓 「誠君……アレをやります」(−o−)
誠 「アレって……アレ?」(^_^?
楓 「……コク」(−−)
誠 「どうしても……?」(^_^?
楓 「……コク、コク」(−−)
誠 「……………」(T_T)
ジャジャ、ジャンジャン、ジャジャ、ジャンジャン――
誠 「わたし、柏木 千鶴♪
ちーちゃん、ちーちゃん、千鶴です♪
胸なんて、飾りです♪
それに、初音達よりは大きいです♪
――って、言うじゃな〜い♪」(T△T)
ジャ〜ン……
誠 「でも、アンタには……、
もう、将来性がありませんからっ!
――残念っ!!」(T○T)
ジャジャ〜ン!
誠 「つるぺたは長所、斬りっ!!」(T△T)
ジャ〜ンッ!!
千鶴 「誠さん……覚悟は良いですね?」(^〜^メ
誠 「もう、好きにして……」(T_T)
利幸 「勇者だ、勇者がいる……」Σ( ̄□ ̄)