[前書き]

 この作品は、「Leaf Another Story」とのクロスオーバー作品です。
 「Leaf Another Story」については、ここを参照。







「はぁ〜」

 溜息と共に、俺は机の上に突っ伏す。
 最近このパターンが増えてきたような気がするが、気にしてはいけない。

 梅雨も明け、いよいよ夏が近付いてきた。

 となれば、必然的に気温も上がる訳で……。





「あっちぃなぁ〜、最近、毎日毎日……」






Heart to Heart
×
Leaf Another Story

8th Attacker 「熱血」







 時刻は既に放課後――

 生徒達は思い思いの行動に耽っている。

 教室で談義に花を咲かせる者もいたり、部活に勤しむ者あり……、

 そんな中で「涼しくなるまでこうしていよう……」と考えながら、
机の上に伸びている俺は、やっぱり異端児なんだろうか?

「それじゃあね、藤井君」

「あぁ」

 俺の横を、クラスメートの葵ちゃんが元気良く走って行った。

 俺はそんな葵ちゃん対して、
突っ伏しながら軽く手を上げる。

 さっきまで、さくら達と何か話していたようだけど……部活にでも行くんだろうな。

 この気温で外で部活(しかもかなりハードな運動)とか……とても俺には真似できないな。

「まーくん、一緒に帰りましょう」

「まーくん、一緒に帰ろうよ〜」

「…………」

 葵ちゃんが去った後、
二人の元気良い声も聞こえてきた。

 ……単に、俺が環境の変化についていっていないだけなんじゃないのか?

 こんな真夏日な気温の中、こうも立て続けに元気な人間の姿を見ると、
そんな考えすら俺の頭の中に浮かんでくる。

「……いや、俺は涼しくなるまでここで寝てる。
帰りたいなら、お前達先に帰って良いぞ」

「え〜」

 俺が言葉を言い終わらないうちに、あかねが不満の声を上げる。

「まーくんと一緒じゃないと、楽しくないよ〜」

「そうは言ってもな……この暑い中、
住宅街を歩くなんて、熱射病になれって言ってるようなもんだぜ?」

「うぅ〜ん……」

「そうですっ!」

 突然、さくらが何かを閃いたように手を叩いた。

「まーくん、今から涼しくなるまでお昼寝するんですよね?」

「あ、あぁ……」

「でしたら、私達も一緒にお昼寝します。
そうすれば気温も下がる時間になって、
まーくんと一緒に帰る事が出来て……一石二鳥ですっ!」

「わぁ、さくらちゃん! 頭良い〜♪」

 ――え?

 つまり……、
 さくらとあかねも、俺と一緒に寝るって事か?








 さて……、

 教室で連なって寝る、というのも、
アレなので、俺達は神社にやって来た。

 屋上や中庭は、日差しが強いから候補から切り捨てて……、

 木蔭が多い、ここにやって来たのである。

 しかし……、


 ずばあぁ―――んっ!

 ずばあぁ―――んっ!


 寝る行為とは程遠いような乾いた音が、辺り一帯に木霊している。

「何の音だろう?」

「何でしょうね……」

 教室で伸びていたのも、元を正せば暑いのを避けるためだ。

 それに、こんな気温では寝れる保証もないし、
何より、今、寝てしまっては、夜は思いっきり寝苦しいじゃないか。

 俺はそんな風に、気持ちの中で自分を正当化させ……、

「取り敢えず……行ってみようか」

「はい」

「うみゃ」

 好奇心を前面に押し出し、
音の正体を確かめる事にした。

 すると、そこには……、

「あれは……」


 ずばあぁ―――んっ!

 ずばあぁ―――んっ!


「まだまだ、気合入れて打って来い!」

「はいっ、先輩!」


 ずばあぁ―――んっ!

 ずばあぁ―――んっ!


 サンドバッグを力いっぱい蹴る葵ちゃんと、
それを全体重で押さえる本宮さんの姿。

 葵ちゃん……こんな所で練習してたのか……、

「葵ちゃん、ラスト!」

「はああぁぁぁーーーーーーっ!」


 ずばあぁ―――んっ!


 一際大きくサンドバッグの音が響いたかと思うと、
それまで規則正しく聞こえていた、サンドバッグの音はしなくなった。

 これから、休憩に入るのかな?

 そう思った俺は、
二人に歩み寄って声をかける。

「お疲れ様。葵ちゃん、本宮さん」

「あ……」

「よう、藤井誠じゃないか。
園村さんや河合さんも一緒だな」

本宮さんは額の汗を拭いながら、俺達に向かって軽く手を上げた。

「にしても、よくこんな暑い中そんなハードな運動やってられますね……、
俺には真似できないっすよ」

「ははは、まぁ確かに暑いのには否定しないけどな。
何か時々こうやって体を動かさないと、勘が鈍っちまうんだよ」

 本宮さんの言葉に、俺は、
この間の夜の事(7th Moon参照)を思い出す。

 そうか……、
 あの時の本宮さんの動き、普通の人の動きじゃなかったからな。

 何と言うか、かなり戦い慣れた人間の動きだったぞ。

「そうだ、藤井誠も少し体を動かして行くか?」

 本宮さんは、突然そんな事を言ってきた。

「……え、遠慮しておきます」

 その誘いを、俺は僅かな間を置いて否定する。

 確かに、この暑い中あんなハードな運動はしたくないけど……、
 俺も男だし、格闘技とか見ていたらやってみたくなる訳で……、

 更に、断った場合、本宮さんに、
どんな条件を出されるか分からない訳で……、

「何だ、面白くないな……まぁ仕方ないか」

 しかし、本宮さんは、すんなり引き下がった。

 あれ……、
 何だか拍子抜けだなぁ……?

「あ、藤井君も一緒にやるの?」

 今度は、ようやく呼吸を落ち着けた、
葵ちゃんが、俺に向かって訊いて来た。

「…………」

 そうか……、
 本宮さんは、この葵ちゃんの行動を考慮して、ここで引き下がったのか……、



 葵ちゃんのクラブ勧誘の仕方は、学校では有名だった。

 普段は大人しい子なんだけど、
いざ格闘技の事を話し出させると相手の反応を省みず喋り続ける。

 そんな感じで、葵ちゃんの事は俺も聞いていた。

 まぁ、「格闘技の同好会を作る」という事が、
珍しかった事もあるんだろうけど……、



「いや、俺はいいよ」

 葵ちゃんが話を始める前に、
俺は先手を打って、申し出を断る。

「でも……」

 葵ちゃんは俺の言葉に、
少しがっかりした様子で目を伏せた。

 うっ、何だか悪い事したような気もするけど……この場合は仕方がない。

「ん? 葵ちゃん、『でも』って……どういう事?」

「藤井君……」

 葵ちゃんが全てを言い終わる前に……、



「…………」(きらきらきらきら)

「…………」(きらきらきらきら)

「…………」(汗)



 期待に満ちた四つの眼差し。

 うっ……、
 そんな瞳で見つめられたら、断るに断れないじゃないか……!

「で? 藤井誠、結論はどうするんだ?
やるのか? やらないのか?」

 まるで、最終宣告を下すかのように、
本宮さんのクールな声が響いた。








 数時間後――

 汗びっしょりになって、体のあちこちを痛めながらも
俺は、何とか玄関のドアを開ける事に成功した。

 うぅっ、今日一日は、まともに動けないかなぁ〜……、








8th Attacker…END


[後書きのコーナー]

 はい、(作者の)本宮です。
 「Heart to Heart × Leaf Another Story Vol.8」、いかがでしたでしょうか?

 誠君達と葵ちゃんがクラスメイトという事で、それを元に一話書いてみる事にしました。

 にしても……誠君って、基本スペックは、
あまり格闘向けではないような気がしますね。

「浩之よりも力が弱い」って事になってますし……、(LQ参照)

 にしても、正月とか挟んだ所為で、
7th Moonから、かなり間が空いちゃったなぁ……、

 それでは、次回をお楽しみに〜。


<コメント>

誠 「う〜、体中が痛い……、
   こりゃ、間違いなく、昨日の影響だな」(;_;)
浩之 「んっ? どうした、誠?」(・_・?
誠 「ああ、実は、昨日……というわけだ」(T_T)
浩之 「おいおい、情けねぇな。
    お前、運動不足なんじゃね〜のか?」ヽ( ´ー`)ノ
誠 「……それは無いと思う」(−o−)
浩之 「――何でだよ?」(−−?
誠 「いや、だってさ……」(;_;)

 ドドドドドドォォォーーーーッ!!

はるか 「誠さ〜ん♪」(*^▽^*)
あやめ 「見〜つけた〜♪」(*^○^*)
誠 「うわっ、来たぁぁぁぁーーーーっ!!」(T△T)

 ドドドドドドォォォォーーーーッ!!

浩之 「……なるほどな」(^_^;