[前書き]

 この作品は、「Leaf Another Story」とのクロスオーバー作品です。
 「Leaf Another Story」については、ここを参照。







 土曜の深夜……、
 俺は家路を急いでいた。

 ――え?
 何で、そんな時間に急いでいるのかって?

 う、うるさいな……買い置きのラーメンが切れたんだよ!

 そんな訳で、俺の両手には、
袋一杯に詰められたカップ麺……、

 やっぱ、コンビニで買うと高くつくなぁ……、(泣)

 そんな事を考えながら、
学校の前まで差し掛かった時だった。





「何だ、あれ……?」






Heart to Heart
×
Leaf Another Story

7th Moon 「戦い」







 見上げれば、巨大な満月。
 それを凄い早さで横切る、いくつかの影。

 い、一体何が起こってるっていうんだ……?

 やがて、その影の一つが、動きを止める。
 最初は点だったその影が、徐々に大きくなってきて……、

 ……ってちょっと待てっ!

 それって、こっちに、
向かってきてるって事なんじゃねぇのかっ!?

 そう考えてるうちにも、その影はどんどんこちらに迫ってきて……、

「うわっ!」

 俺は反射的に、身を伏せた。


 ザンッ!


 何かを斬る音が聞こえる。

 その後は……、
 何も、聞こえなくなった。

 あ……俺、斬られて死んじまったのかな……、

 痛みすら感じなかったけど……、
 そうか、そんな暇もなく死んじまったのか……、

 さくら、あかね……ゴメンな……、




「藤井誠……いつまで怯えている気だ?」

 あ、あれ? この声……、





「――も、本宮さん!
なんで貴方がここにいるんですか!?」

「そりゃこっちの台詞だぜ……」

 面倒臭そうに、
頭を掻く、本宮さんの姿が、そこにはあった……、








「綾香が……攫われたんだ」

「えぇっ!?」

 事情を聞いて、俺は驚くしかなかった。

 だって、あの綾香さんが、攫われるなんて……、
 一体、どんな状況なんだ!?

 事態は、約二時間前に遡る。

 今日は、芹香さんが、降霊術をしようと、
綾香さんを引き連れて、夜の学校にやって来た。

 だが、今回も降霊術には、
失敗してしまったようで、変な魔物を大量に呼び出してしまった。

 しかも質が悪い事に……その魔物は綾香さんを攫い、何かに利用しようとしているようだ。

 当然、芹香さんは助け出そうとしたが……、

 如何せん魔物の数が多く、
芹香さんとセバスの爺さん二人では、太刀打ちできなかった。

 そこで……本宮さんの登場という訳だ。

 特殊な力を持った本宮さんなら、
この状況を打破する事ができるかもしれない。

 セバスの爺さんから連絡を受けて、
駆け付けた本宮さんは、綾香さんを助け出すために学校に乗り込んで……、

 ……現在に至る、という訳だ。

「藤井誠はさっさと帰って、この事は忘れた方が賢明だろう。
ここは俺が押さえておくから、早く行け」

「……嫌です」

「――藤井誠っ!?」

 俺は本宮さんの提案を、きっぱりと断った。

「確かに本宮さんの話を聞くまで、
行く気持ちと帰る気持ちが五分五分でした。
でも、知り合いが困っているのに、
助けに行かない訳にはいかないじゃないですか」

「一般人が立ち入れる領域じゃないんだぞ?
遊びじゃない、常に『死』という危険と隣り合わせの状況なんだぞ!?
俺は、お前まで守ってやれる自信なんかない」

「覚悟の上です……俺って割と打たれ強いじゃないですか。
それに、それでもダメと言うんだったら……、
本宮さんが行った後に、俺は独自の判断で学校に入りますよ?」

「でも、お前そんな丸腰で……」

「……俺は、丸腰なんかじゃありませんよ」

 俺は、奥の手の封印を解いた。

 本宮さんに見せるのは少し憚られるけど、
緊急事態なんだ、あれこれ言ってる暇はない。

「藤井誠、それは……」

「マシンガンですよ」

「んな事は見りゃ分かる……覚悟の上なんだな?」

「――はい」

 俺は、強く頷いた。

「綾香は、今、屋上に捕らえられている……、
良いか、危ないと思ったらすぐに逃げるんだ」

「はいっ!」

 本宮さんは、左手に構えた日本刀を強く握り直した。








「良いか……ここは校門だ。
校舎内に入るには、校庭を突っ切るしかない。
俺が言いたい事は……分かるな?」

「はい……」

 校庭には、変なタイツを着た生物が、凄い数でウヨウヨしている。
 恐らく、これが芹香さんが大量に召喚した魔物なんだろう。

 俺は、もう一度、銃身を握る右手に、力を込めた。

「カウントダウンで行くぞ……」

「了解です」

「3、2、1……GOっ!!

 俺達二人は、その合図と共に、ダッシュを開始した。


「散れぇぇぇーーーーーーっ!!」


 
ガガガガガガガガガガガガッ!!


「おらおらおらおらーーーーーっ!!」


 
ザンザンザンザンッ!!


 それぞれの得物を手に、俺達は校庭を駆け抜ける。

 敵も、突然の奇襲に、
何事かと身動きをとる事が出来ない。

 俺達はあっという間に、昇降口まで辿り着く事が出来た。

「はぁ、はぁ……」

「息が上がっているようだな……でも、ここからが本番だぞ」

 息が上がる俺を余所に、
本宮さんは、スタスタと歩き出す。

 お、おいおい……あの人の体力は、どうなってるんだ?

「とにかく……階段がすぐそこにある。
それは良いのだが……登れるかな?」

 本宮さんは、昇降口付近にある階段を見上げる。

 そこからは……、
 例のタイツの変な生物が、大量に降りてきている。

「方法は二つに一つ……上れそうな階段を他に探すか」

「それとも……強行突破、ってところですか」

 俺と本宮さんは、
お互いに顔を見合わせた。

「……そんなもん、訊かなくても決まってるじゃないですか」

「……お前なら、そう言うと思ったぜ」

 そして、不敵にニヤリと笑みを浮かべる。



「――突っ込むぞ、藤井誠ぉっ!」

「はいっ!」



 階段さえ上りきれれば、
屋上までの道のりは、一本道だ。

 俺達は勢い良く、屋上のドアを開けた。


「綾香ぁっ!!」

「綾香さんっ!!」

「――利幸っ!?」


 綾香さんは、屋上に一人……縄で縛り上げられていた。

 俺は、その縄を解こうと、
綾香さんに向かって歩みを進める。

 すっ――

「え……?」

 しかし、それは、本宮さんに阻まれた。

「何するんですか、本宮さん!?
早く、綾香さんを助けないと……」

「おかしいと思わないか? 敵は何か目的があって綾香を攫った。
それなのに、何の警護もつけないなんて……静か過ぎるんだよ。
何か罠があるのかもしれない、気をつけろ」

 な、なるほど……、
 本宮さんの言う事にも一理ある。

 それなら俺も、もう少し様子を見て……、

 ――その時っ!


「ふごおおおぉぉぉーーーっ!!」


 何かの雄叫びが、辺りの静寂を支配した。

「うわっ!?」

「出やがったな……本体が!」

 俺は本宮さんの言葉に、切磋に身構えた。
 そして、声の主の正体が俺達の目の前に……!


「…………」

「…………」


「ふごおおおぉぉぉーーーーっ!!」


 
くまぁ!?


 「ソレ」はどう見ても、
あかりさんが好きそうな、くまのぬいぐるみだった。

 ただ……大きさは、俺達の倍以上……いや、4倍近くはある。

「利幸っ! 見かけでナメちゃだめよ!」

「俺が油断するような真似をするかっ!
最後の仕上げだ、行くぞ、藤井誠っ!」

「はいっ!」

 俺は、本宮さんの掛け声で、屋上に足を踏み出す!


 ガガガガガガガガガガガガッ!!


「――うおっ!?」

 しかし、天から降り注ぐ、
弾の嵐に、堪らず、俺は尻餅をついてしまう。

「な……なんだ!?」

「……あれだな」

 そう言って、本宮さんは、空の方向を指差す。
 本宮さんの指差した先にあったものは……、

「……なんだありゃ」

 変な……戦艦のような……メカっぽいような……、

 とにかく、そんな四角い物体が中を浮いていた。

「仕方ない……俺がくまと戦艦の注意を引きつける。
お前は隙を見て、綾香を助け出してくれ!」

「は、はいっ!」

 本宮さんは俺が頷いたのを確認すると、
屋上の入り口の更に上にある給水タンクの上まで攀じ登った。

「さぁ、俺はここだっ!」

 その言葉に、くまも……戦艦も、注意は本宮さんの方に向く。

 本宮さん……、
 死なないでくださいよっ!

 俺は素早く綾香さんに駆け寄り、縄を解こうとする。

「綾香さんっ!」

「――誠?」

 とにかく、綾香さんは、
俺よりも運動能力に関しては優れていると思うから……、

 この縄を解いてしまえばっ!

「う……うぅ〜んっ」

 しかし、縄は、かなりきつく結んであり、とても指で解けるような固さじゃない。

「ちくしょう……これなら、日本刀を持ってる本宮さんの方が適任じゃないかっ」

 俺が、そんな愚痴をこぼした時だった。

 ぐわぁ!

「げっ!?」

 突如、くまが、
その巨体を、こちらに向けたのだっ!

 ま……まずいっ!

 でも、綾香さんを置いて、
自分だけ逃げるわけにもいかない!

 俺は綾香さんの前に立ち塞がり、マシンガンを持つ手に力を加える。

「……来るなら、来いっ!」

 そして、マシンガンをくま目掛けて構える。
 後は……引き鉄を引くだけだ!

 さくら、あかね……すまないな。
 でも……これが、俺自身の判断で行動した結果なんだ。

 だから……!





「やれやれ……、
らしくないぞ、藤井誠。こんな所で諦めちまうのかよ?」

 ――え?








「疾風……幻狼斬っ!!」

「ふごおおおぉぉぉーーーっ!!」








「やれやれ……大丈夫か、綾香?」

「ふぇ〜んっ、利幸ぃ〜っ」

 俺がいるのにも構わず、
綾香さんは本宮さんにしがみ付き泣き声を上げる。

「にしても、本宮さん……そんなに凄い技があるんなら、最初から使ってくださいよ」

 その様子を見ながら、
俺は、本宮さんに対して愚痴をこぼした。

「まぁ、最初は俺もそう思ったんだけどさ。
よく考えれば藤井誠もいるし、綾香もいる。
一般人がいる目の前で、そんな規格外の力を使う訳にもいかないだろう?」

 う、うぅ〜ん……、
 本宮さんに言わせてみれば、そうなのかもしれないけど……、

 俺って、割と非日常に慣れてるからなぁ……、

「さてと……俺は先輩を迎えに、
部室に行って帰るけど藤井誠はどうするんだ?」

 あ、そういえば……、

「本宮さん、芹香さんは何をしてたんですか?」

「ん、先輩か? 先輩なら魔物が学校の外に出ないように、
部室から学校全体に結界を張っていてもらってたよ」

 あぁ、なるほど。

「それじゃ俺も、これで失礼しますよ」

「そうか……迷惑をかけたな、藤井誠」

「いえいえ、それじゃ」

 そこで本宮さんとは、手を振って別れた。








 そういえば……、

 何か、大切な事を忘れているような……?
















「ただいまー」

「あっ、お帰り、本宮くん。
電話があって急に飛び出して行ったから……心配したんだよ」

「ははは、悪い悪い……、
ん? それはそうと、理緒ちゃん、
そのラーメンのたくさん入った袋、どうしたんだ?」

「あ、これ? 何だか知らないけど、道端に落ちてたの」

「落ちてた?」

「うん。そのまま置いておくのも悪くなっちゃうし、
警察に届け出ても持ち主が現れなさそうだし……」

「……俺、そのラーメンの落とし主に届けてくるよ」

「えっ!? 本宮くん、知ってるの!?」








 数十分後……、

 空腹と散財を嘆く俺に、
都合良く家の呼び鈴が鳴ったのだった……、








7th Moon…END


[後書きのコーナー]

 はい、(作者の)本宮です。
 「Heart to Heart × Leaf Another Story Vol.7」、いかがでしたでしょうか?

 今回の話のテーマは……ズバリ「お嬢様は魔女」です。

 ちなみにLeafスタッフの話では、
あれは「痕」のパロディだったそうで……、

 何でも企画段階では、
包丁持った千鶴さんが背景を走り回る予定だったとか。

 ……物騒な話ですね。

 一話くらいは、夏休みに入ってからの話を書きたいですね。

 それでは、次回をお楽しみに〜。


<コメント>

誠 「――とまあ、そういう事があったわけだ」(−−)
エリア 「誠さん、なんて軽率な……」(−−メ
フラン 「それでしたら、何故、真っ先に、
     ワタシ達にご連絡をくださらなかったのですか?」(−−メ
誠 「だ、だって、危険だし……」(−−;
エリア 「……誠さん、忘れてませんか?」
フラン 「そのような事態の場合、ワタシ達の方がプロです。
     少なくとも、本宮さん以上に……」(−−メ
誠 「ああ、そういえば……、
   でも、やっぱり、二人を巻き込むわけには……」(−−;
フラン 「誠様、お気持ちは、大変、嬉しく思います。
     ですが、どうか、ご自愛くださいますよう……、
     エリア様達の為にも……」(−o−)
エリア 「そうですよ……、
     折角、新しく覚えた魔法を試す機会でしたのに……」(−o−)
誠 「新しい、って……なんて魔法?」(・_・?
エリア 「えっと、竜破――」(^▽^)
誠 「わーっ! わーっ! わーっ!!」(T△T)