[前書き]

 この作品は、「Leaf Another Story」とのクロスオーバー作品です。
 「Leaf Another Story」については、ここを参照。







「うぅ〜……」

 俺は溜息と共に、机に突っ伏した。

 別に、体調が悪い訳でもない。
 食欲が無い訳でもない。

 俺が、こうしている理由は、ただ一つ……、
 それは、健全な男子高校生なら、一度は陥りそうな状況。








「うぅ〜……何かムラムラする〜……」









Heart to Heart
×
Leaf Another Story

6th Sense 「本能」







 ――そうなのである。

 普段、そういう事には無関係な俺は、
こう……突発的に、本能が襲って来たりするのだ。

 別に、今のさくらとあかねの関係に不満がある訳じゃない。

 さくらも、あかねも、俺にとっては大事な女の子だ。

 いや……大事な女の子だからこそ、
安易に傷付けたくないという気持ちがあるのかもしれない。

 いや、まぁ……そんな事は置いといて。

「うぅ〜……」
 俺のアレは、既に……臨戦体制だった。

 いつもなら、性欲よりも食欲の方が勝っているのだが……、
残念な事に、今しがた、俺は昼食を取ったばかりだ。

 更に悪い事に、俺がいる場所は学校である。

 流石にこんな所で、その……処理するわけにはいかない。

 俺にできる事はただ一つ。
 ただひたすら、放課後まで待つ事だけだ。

 ほら……こういう事って、
一時的な場合が多いから、放課後まで待てば治ってる事だってあるだろう?

 それに、例え収まっていなかったとしても……、
 速攻で、家に帰れば、どうにかなるし。

 とにかく、俺に出来るのはただひたすら待つ事だけ……、



「あら? まーくん、どうなさったんですか?
机に突っ伏したりなんかして……」


「まーくん、何処か具合でも悪いの……?」

「…………」



 ――訂正。

 俺に出来るのは、ただひたすらに待つ事と……、
 こいつらを刺激しない事だ。



「だ……大丈夫大丈夫。
別に具合が悪い訳じゃないから、安心してくれよ」

 俺は取り敢えず、
余計な心配はかけまいと、二人を安心させる。

「そうですか……でも、もし何かあったら言って下さいね」

「あたし達は、まーくんのためだったら何でも出来るよ!」

「あ、あぁ……」

 俺は二人に、曖昧な返事を返した。

 何かあったら言ってくださいね、って……、
 言える訳ねぇだろうっ!

 ま、まぁ……さくらやあかねは、
俺を心配して言ってくれてるんだし、俺が吠えるのは筋違いだよな……。

 俺の様子を確認すると、
さくらとあかねは、俺の隣の席に腰を下ろして……、



 ――ん?
 ――隣?



 そうだった!

 さくらとあかねは、少なくとも一年間は、
ずっと俺の隣に座り続けるんだった……、(Heart to Heart 第15話「指定席」参照

 何ですか?
 今日の俺はナマ殺し状態ですか?

 勘弁してくださいよ……、





 まぁ……、

 このまま無事に、
家に辿りつける訳がないわけで……、





 それは授業中――

「あっ、あらあら……」

 さくらが、机の上から、
消しゴムを落としてしまったようだ。

 やれやれ、しょうがねぇーなー……、

 と、誰かさん達の口癖を真似つつ、
俺は、さくらの落とした消しゴムの方に手を伸ばす。


 ――ぴとっ


「あ……」

「あ……」

 消しゴムを拾おうと伸ばした手が、
同じ行動をしようとした、さくらの手と綺麗に重なってしまった。

 しかも間が悪く、お互いが何となく見つめあってしまう。

「…………」

「…………」(ぽっ☆)


 だあああぁぁぁーーーーっ!!
何をやってるんだ俺はあああぁぁぁーーーっ!!



 こんな事してたら、
状況は悪くなる一方だろうがっ!

 取り敢えず、ちゃんと席に座って、状況を整えさせなければ……、





「あ……」

「…………」





 ちょっと待て。
 一旦、状況を整理しよう。

 俺は落ちたさくらの消しゴムを拾おうと、手を伸ばした。

 そこでさくらと手が重なって、
思いっきり理性が吹っ飛びかけた。

 だから、一旦、姿勢を正そうと……思いっきり体を起こした。

 そこまでは良いのだが、勢いがつきすぎて……、




「…………」(ぽっ☆)


 だああああぁぁぁぁ―――――――――――っ!!

 見られた!
 今の緩んだ表情、絶対あかねに見られた!

 つーか何でそこで、
頬を赤らめますかあかねさんっ!?



 そんな顔されたら……、
 そんな顔されたら……、


 理性が飛ぶじゃないですか!!


「先生! 俺、体調が悪いので、
保健室に行ってきます!」



 俺は教師の言葉を待たずに、
少し前屈みになりながら速攻で教室を後にした。

     ・
     ・
     ・





「はぁ、はぁ……」

 そんな訳で、俺は保健室までやって来た。

 まぁ、ここまで来れば大丈夫だろう。
 俺は呼吸を整え、保健室のドアを開けた。

「ん、どちら様……なんだ、藤井誠じゃないか」

「…………」

 どうやら保健のイネス先生はいないらしい。

 代わりに、俺を気だるそうな表情で、
迎えてくれたのは……本宮さん、その人だった。

 あっ、何か今ので凄く萎えたような……、

「どうしたんだ、具合でも悪くなったのか……?
まぁ良いや、座れよ」

「は、はぁ……」

 本宮さんに促され、取り敢えず、
保健室にあるパイプ椅子の一つに腰を下ろす。

「お前が保健室に来るなんて珍しいな……何だ、食欲不振とかか?」

「違いますって……というか、本宮さんの顔見てすぐに治りました」

「そうか……まぁ、お前の役に立ったなら幸いだな」

 そう言って本宮さんは、得意げな顔をする。
 本宮さん、言葉の意味が全然違うよ……、

 そうだ……、
 本宮さんならああいう時どうするか、聞いてみよう。

 いつも余裕綽々で、涼しい顔をしている本宮さんの事だ、

 何か凄く効果的な方法を知っているかもしれない。

「本宮さん、あの……」

「ん、何だ藤井誠?」

「本宮さんって……その……、
ムラムラって来た時、どう対処してるんですか?」

 しかし、本宮さんは、少し首を傾げた後……、

「ムラムラ来るって……どういう状況なんだ?」

「……は?」

「だから、ムラムラ来るって……、
具体的にはどういう状況を指すんだよ?」

 ……本宮さんは、不健全な男子高校生なんだろうか?

「ですから、ムラムラ来るっていうのは……その……、
興奮するというか……欲情するというか……」

「あぁ、そういう事か……、
しかし、俺には理緒ちゃんがいるのに、そんな事が出来るはずがないだろう?」

「いや……それなら、理緒さんに対しては……」

「うーん、何て言うのかな。欲情とか興奮するよりも、
理緒ちゃんに対しては大事にしたいっていう思いが強いからな……、
今のところ、そういった経験はないな」

 あぁ、そうか……、
 本宮さんは欲情する事自体があまりないのか……、

 この人のキャパシティって、一体……、

「まぁ、理緒ちゃんが望めば……それに応える覚悟はあるけどな」

 やべぇ、俺、どう頑張っても、
この人のキャパシティに勝てる気がしねぇ……、

「俺はもう行くよ。藤井誠はどうする?」

 そう言って本宮さんは、椅子から立ち上がる。

「いや……俺は、もう少し、ここでゆっくりしていきますよ。
今、授業に戻ったら、何を言われるか分かったもんじゃないし……」

「――そうか」

 俺の言葉に頷くと、
本宮さんは保健室の入り口に視線をやった。

「それじゃあ……彼女達の相手でもしてるんだな」

「――え?」

 本宮さんにつられて、
視線を保健室の入り口に移動させると、そこには……、


「まーくん……」

「うみゃ……」

「あ……」


 さくらとあかねが、心配そうにこちらを見つめていた。

「それじゃあ、お邪魔虫は退散するかな」

 そう言って本宮さんは、
さくらとあかねを中に招き入れ扉を閉める。



「…………」

「…………」

「…………」



 残された俺達は、
間が持たず何となく沈黙してしまう。

「あの……」

 そんな沈黙を破ったのは、さくらだった。

「まーくん……具合、大丈夫なんですか?」

「ん? あ、あぁ……ここに来たら大分良くなったよ。
次の授業には出られるから、心配しなくて良いよ」

 俺の言葉に、二人はほっと胸を撫で下ろす。


 俺の事……そこまで心配してくれていたんだな。

 そう思うと、くだらない理由で、
保健室に駆け込んだ自分が何だか情けなくなる。

「そうだ……お前達、授業はどうしたんだ?」

「―――えっ?」

 俺の言葉に、何故か頬を赤らめるさくらとあかね。

 ――あれ?
 俺、何か気に触ること言ったかな……?

「私達、まーくんの付き添いという事で……」

「……特別に許可をもらってきたんだよ〜」

 はて……、
 付き添いは良いが……、

 それだと、頬を赤らめる事に対して説明がつかないな?

「あの……今、保健室には誰もいませんから……」

「あたし達……だけだよね?」

 ――はっ!
 この二人が期待してる事って、もしかして、もしかすると……!





「…………」(じ〜)

「…………」(ぽっ☆)

「…………」(ぽっ☆)





 やっぱりそういう事かぁぁぁっ!!

 い、いかん!
 意識した途端、俺の……が臨戦体制に入ったぞ!
 いや、もう既に臨戦体勢というか……「MAXモード」だぁぁぁーーーっ!!

 ――はっ!

 もしや、本宮さん……、
 こうなる状況を見越して、この場を退室したのかっ!?








本宮 「藤井誠……お前も、まだまだだな」








 「うわああああぁぁぁーっ!!」








6th Sense…END


[後書きのコーナー]

 はい、(作者の)本宮です。
 「Heart to Heart × Leaf Another Story Vol.6」、いかがでしたでしょうか?

 前回が割とシリアスに決めた話だったので、
今回はHtHらしく、ギャグ色を前面に押し出してみました。

 まぁ、健全な男子高校生なら誰もが一度通る道という事で……、(^^;)

 それでは、次回をお楽しみに〜。


<コメント>

フラン 「誠様、誠様……、
     そろそろ、お目覚めのお時間です」(*^^*)
誠 「ん〜……おはよう、フラン」( ̄〜 ̄)
フラン 「おはようございます、誠さ――っ!?」Σ(@□@)
誠 「うん? どうした、フラ――うおわっ!!」Σ(@□@)
フラン 「…………」(*・・*)
誠 「……み、見た?」(*−−*)
フラン 「い、いえ、そのような……、
     あの、その……大変、お元気で……」(*・・*)
誠 「あ、あはははは……、
   そういうわけなんで、部屋を出てくれると助かる」(T▽T)
フラン 「か、かしこまりました……」(*・・*)
誠 「あ、ああ、ゴメン……」(;_;)
フラン 「…………」(*・・*)
誠 「――フラン?」(・_・?
フラン 「あ、あの、誠様、よろしければ……」(*・・*)
誠 「えっ……?」(−−?
フラン 「い、いえ……何でもありません。
     もう、朝食の準備は出来ていますので……」(* ̄▽ ̄*;
誠 「お、おう……?」(−−?