GM:では、ここから、エンディングです。
良平:長いシナリオだったな。
雪歌:まあ、最初のシナリオですし……、
ネタがネタだけに、基盤は、しっかりと固めないといけません。
ソレイユ:ようやく、父の仇に会えますね。
マルタ:落ち着いてくださいまし……、
まだ、雪歌さんの師匠が仇と決まったわけでは……、
ソレイユ:砲撃魔術使いなんて、心当たりが一人しかいません。
GM:まあ、そのへんをハッキリさせる為にも、
エンディングシーンを始めましすよ〜。
一同:――は〜い。
『Leaf Quest
TRPG』リプレイ
すとれんじゃ〜ズ冒険譚 1
『そらのおとし者』 後編
―― PHASE-10 勇者?の凱旋 ――
GM:さて、皆さんは、魔猿を倒して、エリファス君の救出に成功しました。
良平は、未だ、ショックから立ち直れて無いかもしれませんが、
少年の怪我のこともあるので、急いで村に戻らなければいけません。
雪歌:「良平、大丈夫? 立てる?」
良平:「あ、ああ、何とか……」
ソレイユ:「エリファス君も、まだ危険な状態です。
急いで戻った方が良いですね」
雪歌:「うん、雑魚達も、そろそろ勘付く頃だと思うし……、
鉢合わせしないように急がなきゃ」
GM:では、少年を背負い、洞窟の出口へ向かうと、
出口に近付くにつれ、血の匂いがきつくなっていきます。
良平:ま、まだ何かあるのかよ?
GM:洞窟から出ると、首と胴体が泣き別れした魔猿の死体の山が転がっています。
雪歌:首チョンパですか?
もしかしなくても、ボーパル?
GM:そのようです。
雪歌:「これ……ボーパルの仕業かな?」
ソレイユ:「ボーパル?」
雪歌:「お師さまの使い魔なんだけど……」
マルタ:「こーいう事ができる使い魔がいるなら、最初から……」
雪歌:「いや、ボーパルじゃ、救出ミッションは無理なの。
敵も味方も、スポポポ〜ンだから……」
と言いつつ、手で自分の首を斬る仕草をして見せる。
ソレイユ:「白い魔王には、危ない使い魔が居る、と……」
GM:で、その死体の山の中に、コロンと水晶玉が転がっています。
雪歌がいつも、師匠との通信で使っているモノです。
雪歌:「うう、ちょっと怖いな……色々とやらかしちゃったし……」
水晶玉を拾い上げ、懐にしまいます。
村長:「勇者様ぁっ!! エリファスーッ!! どこじゃぁぁぁっ!!」
と、叫び声がしたかと思うと、手に手に武器を持った村人達が、その場に現れます。
良平達の後に続き、森狩りを始め、ここに辿り着いたようです。
マルタ:「あっ、皆さん、エリファス君は保護いたしました。
ただ、かなれ危険な状態なので、魔術師か医術の心得のある方に診て貰ってくださいまし」
雪歌:「傷口が開くと危ないので、
慌てず、急いで、揺らさないように村まで連れて行かないとね」
ソレイユ:「私の見立てでは、いきなり魔術での回復は危険です。
かなり衰弱していますので……」
村長:「おお、勇者様方、ご無事でした……か……」
と、現場の惨状を見て唖然とし――
良平:「な、なんとか……と言っても、俺は、殆ど何も出来ませんでしたが……」
村長:「おおおっ! 流石は勇者御一行様!
村の脅威であった魔物達を一掃してくださったのですな!」
良平:「こ、これは俺達じゃ……とにかく急ぎましょう!」
店主:「「わ、わかりましただ。息子を助けて頂いて、感謝してるだよ。
もう、勇者様には足向けて寝られねぇだ」(ぺこぺこ)
村長:「エリファスの治療もしなければいけませんしの。皆の衆、村に戻るぞ!」
と、村長の言葉に従い、村人達は、村に戻り始めます。
少年は、村人達の手によって、慎重に運ばれます。
GM:――さて、皆さんは、無事、村に戻る事が出来ました。
少年の治療も、無事に終わり、命に別状は無いようです。
その日の夜、皆さんは、村人達から、精一杯のお持て成しがされます。
というか、すっかり宴会モードです。
良平:あ〜、GM……俺、そこから抜け出して良いか?
ちょっと水場で洗い物をしたい。
GM:ああ、死臭や血痕を洗い流したいんですね。良いですよ。
宴会の場から、こっそりと抜け出した良平は、洗い場で、自分を服を洗う。
しかし、どんなに洗っても、手に付いた血の生温かさや、命を狩った感触は消え――
良平:「さ、流石に、あの場にいたら、何時かはバレる。
ううっ、臭いキツイなぁ……」
下半身丸出しの、人には到底見せられない情けない格好で、
下の衣類をジャバジャバと……、(笑)
GM:――そっちか!?
良平:「矢作良平16年の歴史で、
こんな事、記憶の片隅にもありませんでした……トホホホホ」
なんつーか、命を奪った感覚が一気にすっ飛ぶくらいの、情けないシチュエーションだ。
で、何とか『傷跡』を落としてびっちり濡れた服を着て、宴席に戻る。
こう、妙にガニ股歩きで……、(笑)
GM:では、戻ってきた瞬間、『未成年、何それ?』なくらいの勢いで、
良平のジョッキに酒が注がれます。
良平:「あ、いや、その……俺、まだ酒飲めないんです。
ちょ、待って!! うぐおばうげ――!!」
宴席に戻って来た良平と、
入れ替わるように、雪歌が外へ出る。
酒豪が持つようなジョッキに、なみなみとエールを淹れるマルタ……、
酒すら飲めない良平に首を傾げつつ、果実酒を飲むソレイユ……、
そんな彼女達を残し、席を外す雪歌の手には、あの水晶玉があった。
GM:すれ違う〜、毎日が〜、増えてゆくけ〜れど〜♪
雪歌:……何ですか、いきなり唄い出して?
GM:着信音に決まってるじゃないか。(笑)
雪歌:この水晶玉、着メロが設定されてるんですか!?
良平:『WHITE ALBUM』か……、
雪歌の師匠は森川由綺のファンなんだな。(笑)
雪歌:と、とにかく、人目に付かない場所で応答します。
何を言われるんだろう、怖いな〜。
ローズ:『聞こえるか、馬鹿弟子?
ちゃんと、村の結界の展開は成功したか?
無論、失敗してたら即破門♪』
雪歌:――ずしゅ!!(心に刃が突き刺さった音)
ああああ、やっぱり、結界だったんだぁぁぁぁっ!
うわぁぁぁっ、もう駄目、もう駄目!
何を言っても、絶対に破門だぁぁぁっ!
ローズ:『――まあ、それはともかく、
何やら、妙な魔力の波動を感じて、
ボーパルをそっちに寄こしたが……何かあったのか?」
雪歌:「え〜っと……その〜……非常に言い難い事でして……」
ローズ:『怒らないから、正直に話せよ?」
雪歌:「は、はい……実は……」
雪歌は、安直魔術を唱えた。
かくかくしかじか――
かゆかゆうまうま(違)――
ローズ:『つまり、なにか? 要約すると――
魔方陣の展開に失敗したら異世界の人間召喚して、
しかも、魔術消去を体質を持ってました、テヘ☆――と?」
雪歌:「返す言葉もございません」
ローズ:『あのな……嘘をつくなら、もう少しマシな嘘を……』
雪歌:「はい、マシな嘘をつけるくらいの頭はあるつもりです。
でも、でもでも……本当の事なんですよぉぉぉ」
ローズ:『――これは、直接、会って、話をしたした方が良さそうじゃな。
わしの工房……は、マズイから、明日、フロルエルモスで会おう。
街の中央広場に来るが良い」
雪歌:「……はい」
ローズ:『うむ、待っておるぞ』(プツン)
雪歌:「…………」(涙)
GM:ローズとの通信が途切れ、沈黙が支配する。
雪歌:「うわぁぁぁんっ!!
どんな話するにしても、破門確定だぁぁぁっ!!」
GM:雪歌の嘆き声も、遠くから聞こえる宴会の騒ぎの音に掻き消され、
ゆっくりと、夜は更けていくのであった。
―― PHASE-11 ゆずれない想い ――
GM:で、次の日の朝――
皆さんは、村長が用意してくれた朝食を食べつつ、
今後の行動方針を考えているわけですが……、
良平:考えるも何も……今のところ、手掛かりは、雪歌の師匠だけだし……、
俺は、雪歌について、フロルエルモスに行くよ。
雪歌:うん、それしかない。
とりあえず、件の魔方陣はメモっとくけど……、
状況の情報は、出来る限り集めておかないと……、
ソレイユ:父の仇への手掛かりが目の前にある以上、ついて行くしかないでしょう。
それに、良平の魔術消去体質は、砲撃魔術師には有効かもしれません。
マルタ:フロルエルモスに行くなら、ご案内しますよ。
出身地ですし? 実家もありますし?
雪歌:マルタさんはともかく、そっちの人には同行して欲しくないなぁ。
ソレイユ:たまたま、行く方向が同じなんですよ。
GM:じゃあ、行動方針が決まったところで、村長と酒場の店主がやって来ます。
エリファスが目を覚ましたようで、どうしても、勇者様にお礼を言いたいそうです。
良平:俺は、何もしてないのに……?
マルタ:何もしていない、という事はありませんわ。
あの魔物を倒したのは、紛れもなく、あなたですし……、
良平:正直、気は進まないけど、行かなきゃダメなんだろうな。
GM:では、場所は変わって、エリファス君の部屋です。
ベッドに横たわる少年の体には、至る所に包帯が巻かれ、痛々しい……、
そんな姿であるにも関わらず、少年は、良平達の姿を見て、無理して体を起こそうとします。
良平:「――あっ、無理はしないで」
少年に近付き、再び、ベッドに寝かせる。
GM:寝かされた少年は、良平の手を、
その小さな手で、ギュッと精一杯の力で握る。
エリファス:「ゆうしゃさま……ありがとう」
助けてくけて、仇を討ってくれて――
色んな想いを、その言葉に込めて、少年は微笑む。
そして、ちゃんとお礼を言えたことで安心したのか、
すぐに寝息を立てて眠ってしまいます。
良平:「……どういたしまして、って言うべきなのかな?
もう、悪い奴に困らせられることも、悲しまされる事もないよ。
もし、もし……また、そんな奴が出てきたら……、
俺達がやっつけてあげるから……」
しばらく、無言で少年の手を握りしめる。
そして、誰に語り掛けるわけでもなく、言葉を続ける。
「俺は、大した奴じゃない……、
でも、『ありがとう』って、お礼言ってくれた人の気持ちを、
突っぱねるような奴にはなりたくない」
そう語る良平の脳裏には、元の世界にいた緑の髪の少女の姿が――
「『ありがとう』って言われるのって、物凄く嬉しいんだよ。
言う方も、言われる方も……、
その一言が聞きたいが為に、頑張ってるやつもいる。
だから、俺も、その言葉だけには、せめて誠実でありたいんだ」
良平:「――それ分かるまでに、随分、人を嫌な気分にさせたようだけどな」
ちょっと哀しげに笑いながら、言葉を締める。
雪歌:「その想いは曲げちゃ駄目だね……、
『貴方が貴方である為に』必要なものだ、って感じが伝わってくるよ」
ソレイユ:「さて、お見舞いも済みましたし、
あまり騒がしくすると傷に障るでしょうから、お暇しませんか?」
マルタ:「ですわね、諸々の準備もありますし……」
良平:「ああ、それに、急がなきゃいかん用もある」
少年の部屋を出ながら、最後にポツリと呟く。
今度、勇者様に会う時は、
『本物の』勇者様であってくれよ。
――こんな偽者は、今回限りであってくれ。
―― PHASE-12 並列世界 ――
GM:次のシーンに移ります。
時間と距離を、一気にスッ飛ばして、皆さんは、フロルエルモスに到着しました。
花園都市と呼ばれる程、花と水に彩られた美しい都です。
良平には、オランダとイギリスとイタリアを混ぜたような街並みに見えますね、
良平:「何と言うか……あんまり、世界って変わらんもんだよな」
マルタ:「ん〜、久々の故郷ですわ」
雪歌:「破門は嫌だなぁ……でも、良平の為にも、絶対に行かないと……」(ぶつぶつ)
GM:ローズとの待ち合わせ場所である、中央広場に向かうと、
そこには、剣を持つ女性の石像が立っているのですが……、
良平には、その石像に見覚えがあります。
良平:「……あれ、この石像?
どこかで見たような……ええっと……」
確か、この石像って『藤井 誠』だよな……、
でも、PC的には、流石に、なかなか、そこには思い至らない。
何故なら、ここは異世界だし……、
GM:異世界に誠が……その石像があるのはおかしい。
その固定観念が、記憶を手繰る良平の邪魔をする。
しかし、どう見ても、それは誠だった。
そこそこに胸はあるし、髪も長いし……間違いなく、女性像なのだが……、
どう見ても、その石像は女装した誠にしか見えない。
良平:「いや、まさか……あいつ、男だし……」
マルタ:「え〜と、そういう伝承もあるのですけど……この像は、女性像ですわ」
雪歌:「どうしたの、良平?」
良平:「いやな、その……元の世界の知り合いに似てるんだ、この石像……」
マルタ:「世の中同じ顔の人間は三人いる、とも言いますし、
他の世界も含めれば、もっと多いですわよね」
良平:「同じ顔が三人いるとはいえ、
その内の二人が、女装趣味ってのも、奇妙な話だよ」
???:「1つ訊ねるが……その女装した『あいつ』の名は知っておるかの?」
良平:「藤井だよ……藤井 誠……って、え?」
GM:と、良平が、声のした方を向くと、
赤いゴスロリ服を着た魔術師風の少女がいます。
???:「その像を見て、その名が出る、ということは……、
馬鹿弟子が言っていたことは、あながち嘘では無いのかもしれんのぅ」
良平:「お嬢ちゃん……誰?」
雪歌:「お師様! お久しぶりです!」
良平:「へっ? 師匠?」
ローズ:「わしの名はローズ=ケリー。
そこの馬鹿弟子の師匠じゃ……今の所はな」
雪歌:「うわぁぁぁぁぁん! やっぱりぃぃぃぃっ!!
駄目ですー、駄目なんですー!
私は、師匠の言いつけも守れないような駄目な弟子なんですー!
もう恥ずかしくて恥ずかしくて、穴掘って埋まりたいですー!!」
ローズ:「落ち着け、馬鹿弟子。
とりあえず、立ち話もなんじゃし、
そこのケーキ屋で、茶でも飲みながら話すとしよう」
と、ローズが示した示した先には『トリアノンノン』というケーキ屋がある。
ちなみに、この店の名前も、良平には聞き覚えのある。
良平:そういや、HtH世界の東鳩駅の近所に、そんな店があるって設定があったな。
GM:ちなみに、パルフェの原作のフロルエルモスにもあります。(笑)
良平:「妙におばさん臭い喋り方する子だな?」
マルタ:「ハーフエルフの様ですし、
魔術師の見た目と年齢は、一致するは言いきれませんわ。
もちろん、その実力も……」
ソレイユ:「え〜と……何か、思ってた様な人と全然違うんですけど?」
白い魔王とか呼ばれてるのに、割とフレンドリーだし、
ケーキ屋で、お茶飲みながら話なんて……、
ローズ:「――で、誰の話から聞こうかの?」
注文したケーキを食べつつ、皆さんを見回します。
特に、良平と、何か聞きたそうにソワソワしているソレイユを……、
ソレイユ:「貴女は『エリファス=レヴィ』ですか?」
ローズ:「――直球じゃな、そこの貧弱女。そういうのは嫌いではない。
だが、その問いには……まだ、答えてやれんな」
ソレイユ:「貧弱……って、引っ掛かるのはそこじゃなくて!
その『まだ』とは、どういう事ですか?」
マルタ:「落ち着いてくださいまし……、
まずは、こちら(良平)のお話の方が先決ですわ」
良平:「俺、どうやら異世界から来たらしいんですが、帰る方法を探してるんです!」
ローズ:「――知らん。他を当たれ。第二魔法なんて使えるか、馬鹿」
良平:「いや、知らん言われても……、
事実、俺……雪歌に召喚されちゃったんですけど?」
ローズ:「サルに紙とペンを渡せば、いつかは名作を書く――」
良平:「……?」
ローズ:「――多分、様々な偶然が重なった結果じゃな」
雪歌:「サルに、紙とペン……」(ずず〜ん)
そのサルって、私の事ですよねぇ……、
しかも、その理論って、天文学的な確率です。
GM:まあ、具体的に言いますと……、
雪歌は、あの魔方陣を発動した時に、ファンブルしちゃったと考えてください。
雪歌:ふむふむ……、
GM:で、ファンブル表を振った結果……出目が5だったんです。
マルタ:ファンブル表で――(マニュアル確認中)
雪歌:出目が5って言うと――(マニュアル確認中)
ソレイユ:『5:頼りない/足を引っ張る味方が現れる』。(笑)
良平:なんじゃそりゃぁぁぁぁぁっ!?(爆)
雪歌:な、なんて……なんて……、
マルタ:ルールを巧みに使った召喚方法……、
ソレイユ:こんなの……有りなんですか?
GM:文字通り、足手纏いの味方でしょ?
良平:ほっとけぇぇぇぇっ!!
ローズ:「とまあ、普通なら、偶然と考えるのが妥当じゃが、
それだけで第二魔法を発現させられる、と考えるのも無理な話じゃ。
そして、ここはフロルエルモス……当てが無いこともない。
だが、それを話す前に……1つだけ確認したい」
良平:「は、はい……」
ローズ:「……『高杉 浩次』という名に聞き覚えは?」
良平:「あります。俺の同級生、同じクラスです」
高杉も、こっちの世界に来た事が……と、質問に答えながらも驚く。
ローズ:「そうか……並列世界の人間というのは間違いなさそうじゃの。
ならば、わしに出来る助言は1つしかない。
おぬしは、水の魔石に会う必要がある。
その為に、まずは、この街の西にあるクラベル滝にいる花の精霊王を訪ねよ」
良平:「水の魔石……?」
雪歌:「――花の精霊王?」
マルタ:「クラベル滝に、花の精霊王がいる、って伝説はありますわね。
と言っても、私には、子供の頃から遊び場って印象しかないですけど……」
ローズ:「彼女が、魔石まで導いてくれるじゃろう。
とにかく、不肖の弟子の不始末は、師匠であるわしの責任でもある。
おぬしが元の世界に帰れるよう、協力は出来る限りしよう。
馬鹿弟子よ、『我が弟子』として、
今後も、しっかりと、この男を助けてやるのじゃぞ?」
雪歌:「……は?(考え中)あっ!(理解)――はい!!
全身全霊を掛けて、彼の帰還をお手伝いします!」(びしっ!)
良平:「そこまで大げさに構えなくても……」
それにしても、並列世界って……自分が複数いるって世界概念か?
俺のいた世界と、こっちの世界が、そういう関係なのか?
そういえば、雪歌達は、まーりゃんの事を知っていた。
つまり、こっちの世界にも、まーりゃんはいて、当然、藤井も……、
ということは……こっちの世界にも『俺』はいるのか?
―― PHASE-13 旅の始まり ――
ソレイユ:「そちらの話は纏まりましたか?」
ローズ:「うむ、わしが『エリファス』か否かだったかの?」
ソレイユ:「ええ、先程『まだ答えられない』と言いましたが、それは、どういう意味なんですか?」
ローズ:「そうじゃな、とりあえず……、
何故、おぬしが、エリファスを求めるのかを問おうかの?」
ソレイユ:「父の……仇だからです」
ローズ:「そうか……ならば、答えねばなるまい。
如何にも、わしが『エリファス=レヴィ』じゃ。
――ヘタな気は起こすでないぞ?
ここは街中、無関係の者を巻き込むのは本意ではあるまい?」
ソレイユ:「くっ……ずるいですよ」
咄嗟に、弓に伸びていた手を引っ込める。
ローズ:「確かに、おぬしの父親は殺したのはわしじゃ。
だが、それも故あってのこと……、
と言っても、今のおぬしに説明しても理解は出来ぬじゃろう。
何故、わしが白い魔王と呼ばれ、エルフの集落を襲っているのか……、
おぬしの父を殺したのか……、
いや、理解してもらおうなどとは思わん。
おぬしが、わしの命を望むなら差し出しても良い。
だが、わしには、まだするべきことがある。
それが終わるまで、おぬしに殺されてやるわけにはいかんのじゃ」
ソレイユ:「それが終わるまで……ですか? 随分、勝手ですね?
むしろ、それならば、それを妨害した方が良いかもしれない、って気がしてきましたけど?」
ローズ:「そう思われても仕方無い真似をしているの事実じゃ。
しかし、それでも尚、泥にまみれても為さねばならぬことがある。
だから、今、語ってやれるのは、
おぬしの父の死は、おぬしの父自身が望んだものだった……それだけじゃ」
ソレイユ:「信じられませんね……父は、自ら死を望むような人ではなかった」
雪歌:「お師様に手を出すつもりなら……止めさせてもらうよ?」
ソレイユ:「そのお師匠様が『私の父の仇』だと認めているのに、止めるんですか?」
雪歌:「ううん……『これ』は、私のワガママだから……、
無能と呼ばれた私が、魔術師を目指す切っ掛けになった人だから……、
――だから、絶対に譲れない」
マルタ:「ともあれ、ここで緊迫してても始まりませんわ、ソレイユ。
理由があると言うなら、それを見極めてからでも、行動は遅くないのではありません?」
良平:「俺には、ソレイユの言い分は理解できる。
その、泥にまみれてもやらなきゃいけない事が、
エリファスのような子を、また出してしまうような事だったら……、
『泥にまみれる』なんて言葉は、格好付けでしかない。
巻き添え喰らう方は、下手したら死ぬかもしれない。
いや、もう死んでる人もいるって話じゃないか……、
その人達は、泥にまみれる余裕すらないんだ」
ローズ:「それも自覚した上での事じゃ……、
とにかく、これ以上は語れぬ。
それが、おぬしの父との約束でもあるからな」
良平:「――そうじゃない! その自覚した上って言葉自体が格好つけなんだよっ!
自覚したから何だって言うんだ!? 死んだ人が蘇るのか!?
怪我人が無事でいられるのか!? そうじゃないだろ?!
自覚したからって……ローズさん、貴女に何が出来るって言うんですか!?
マルタ:「勇者様、少し落ち着いてくださいまし。
それ以上は、ただの非難で、批判にすらなっていませんわ」
良平:「自覚してるなら、もう哀しい事を引き起こすは止めてくれよ。
喧嘩の種を撒くのは止めてくれよ。
『みんなの為に』だか、大層な理想の為に、災い引き起こすなんてバカな真似じゃなくて、
もっと、安全な方法を見せてくれよ……」
ローズ:「…………」
ローズは、良平の言葉を黙って受け止める。
表情に変化は無いが、フォークを持つ手が、僅かに震える。
それを誤魔化すかのように、ケーキの残りに、
乱暴にフォークを突き刺すと、一口で、それを飲み込んだ。
まるで、ケーキと一緒に、言葉を飲み込むかのように……、
そして、話は終わりだ、とでも言うように、席を立つ。
ソレイユ:「ちょっ……待ちなさい! 話は、まだ――」
ローズ:「――ならば、見せてくれ、わしと同じ凡人よ。
わしとは違う『答え』を――」
呼び止めるソレイユを無視し、ローズは店を出ます。
ソレイユ:「待ちなさい……っ!!」
ローズを追って、わたしも外に出ます。
マルタ:「取り敢えず、この件は、少し時間を置いた方が宜しいかと存じますわ」
雪歌:「お師様……まさか『世界の為』と言って、自ら死を選んだりしないですよね?
だとしたら、私は、どうすればいいの……どう動けばいいの?」
GM:と、雪歌が自問自答に苦しむ中……、
ローズを追ったソレイユは、手紙を咥えた三毛猫が一匹、
ちょこんと店先に座っているのを発見します。
ソレイユ:「――猫? 手紙?」
手を差し出したら、どうなります?
GM:ソレイユが手招きすると、猫は、手紙を咥えたまま、ソレイユの腕に飛び込みます。
ちなみに、猫が咥える手紙には『我が弟子へ』と書かれています。
ソレイユ:雪歌さんに、ですか……、
では、猫の喉を撫でながら、戻りましょう。
雪歌:「――良平、ソレイユさん……、
私と、貴方達との意見は平行線で、絶対に交わらないと思う。
けれど、私は、お師様に死んで欲しくない。
でも、あの目は……何と言うか、その……『死にに行く人の目』なんだ。
それは認めたくないの……だから、多少、手荒に叩いてでも説得しなきゃ……、
今は、それじゃ……駄目かな?」
ソレイユ:「つまり『仇討ちで殺しちゃうのはマズイけど、倒す所までは手伝うよ』って事?」
良平:雪歌の想いを聞いてから、俺も、自分の考えを言わせてもらうぞ。
「――俺、さっさと元の世界に返りたかったんだよ。
早く、親を安心させて、先輩にも会いたかったんだよ。
勇者なんて、ガラにもないことなんかやりたくなかったし……、
俺、偽者だと思ってたし……、
なのに、ったく……啖呵切った以上、逃げられないじゃないか。
目の前で、あの嬢ちゃんが物騒な事言いやがってる。
それで知り合った人が喧嘩しそうになってる。
それを、のほほんと見過ごすほど……俺、スレた度胸ねぇよ」
マルタ:「世に歌われる英雄なんてそんなもんですわ。
それをひっくるめて、運命なんて陳腐な言葉にするのかもしれません。
とにかく、まずは精霊王に会って見るのは如何です?
見方の違う人の話で、別の側面が見えてくる、って良くありますし、
元の世界に戻る方法も、何かヒント位は見つかるかもしれません」
ソレイユ:「そうですね……、
ところで、その『お師匠様』から手紙が着てるんですけど?」
雪歌:「手紙? お師様から?」
手紙を受け取り、読みます。
『つらい役目を任せることになってすまぬ。
彼らを導いてやってくれ。
困った時は、いつでも連絡するが良い。
あと、その猫の名は『シュガー』。貧弱女の役に立ってくれるじゃろう。
合成陣も1つ同封しておいた。
上手く使えよ、我が弟子よ。
アレイスター=クロウリー』
雪歌:「……はい、わかりました」
力強く頷いて、手紙を懐にしまいます。
ところで、合成陣って、どんな効果のモノなんです?
GM:懐中電灯とロングソードを合成して、マナブレード+1に出来ます。
付与された魔術は『ライトマ』です。
良平:懐中電灯が、マジモンのビームサーベルになるのか。
GM:あと、シュガーにも特殊能力があります。
『シュレディンガー(シュガー)』
一見ただの三毛猫だが……身体的には、本当に普通の猫。
ただし、自分の主人の命を守る不思議な力を持つ。
・特殊能力『シュレディンガー』:どんなにマイナス修正があろうと、
死亡判定の成功率が常に1/2になる。
この能力は任意発動である。
・特殊能力『ナインライブ』:猫には9つの命がある、という諺がある。
その命で、死亡した自分の主人を9回まで蘇生させられる。
9回目の蘇生でシュガーは死亡する。
ソレイユ:これは、まさに、私専用の能力ですね。
GM:破格の能力ですよ。
生命力が低い所為で、行動が制限されたら嫌でしょ?
(まあ、それ以外にも、理由はあるんだけどね)
雪歌:「さて……これで、当面、私達は一緒に行動する事になったんだけど……、
改めて、自己紹介した方が良いのかな?」
良平:「それが良いかも……なんだかんだで成り行きだったからな」
雪歌:「鞍馬雪歌、人間、15歳です。
よろしくお願いしますね!」
ソレイユ:「ソレイユ、エルフの16歳……、
父の仇をとっちめる為に頑張ります」
マルタ:「マルタネッタ=ラクシャリィ、ドワーフ族の17歳です。
よろしくお願いいたしますね」
良平:「矢矧良平、別の世界からやってきた高校生……で、人間。
16歳だ……よろしくお願いします」
――こうして、良平の冒険は始まった。
仲間内で、様々な人間関係が交錯する中……、
果して、良平は、無事、元の世界に戻る事が出来るのか?
彼の前途は……多難だ。
良平:ところでさ……、
俺って、どんな感じにLVupすれば良いの?
一般人が、いきなり剣術とか上げても不自然じゃね?
GM:そのへんもフォローできるように、
シナリオを組んで行かないとなぁ……、
……そして、GMの前途も多難だ。(泣)
<おわり>
<戻る>
注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。
注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
その為、今後、ルールが改訂される場合があります。