GM:あ〜、もしもし、胞子さん?
光:ん? 何だ?
GM:ちょっと、マイナのデータを、
   LQTRPG用に、コンバートしてくれません?
光:マイナって……SW用のPCか?
  テルトみたいに、LQ用にすれば良いのか?
  でも、何故に……?
GM:今回のシナリオで、場合によっては、
   必要になってくるかもしれないんです。
光:ということは、テルトーズが出てくるのか?
  了解、ちょっと待ってくれ。
GM:メイン技能の最大LVは、
   テルトに合わせて、だいたい、LV5くらいでお願いします。
   マイナの場合、エクソシストになりますね。





光:――よし、出来たぞ。

GM:ご苦労様です。
   では、セッションを始めましょう。






Leaf Quest TRPG』リプレイ

幼馴染〜ズ冒険譚 2

『エルトを追う者達』







―― PHASE-01 お金が無いっ!? ――


GM:さて、皆さんは、前回、出会ったローズの『粋な計らい』で、
   クルスガワの街に向かうことになりました。
美雪:「るるるる〜、るんらら〜♪」
   所謂、婚前旅行なわけね♪
ティナ:「おんせん、おんせん♪ お兄ちゃんと温泉♪」
ミリィ:でも、総勢13人で、ぞろぞろと……?
    物凄いビジュアルよね。(笑)
光:青空に浮かぶ、イイ笑顔のクソメイガスに向って、
  思わず、中指突き立ててやる。(泣)
GM:で、クルスガワは、リーフ島にあるので、光達が住む漁村から、
   そこに向かうには、タイプムーンか、タカヤマに行って、
   連絡船に乗らなければなりません。
   ところが、そこで、とある問題に直面しました。
ティナ:――ふえ?
GM:え〜と……皆さんの生活費を管理してるのは、美雪ですよね?
光:まあ、そうだろうなぁ……、
ミリィ;美雪が適任よねぇ。
GM:では、美雪に、ご報告……、
   もう旅費がありません。すっからかんです。(爆)
美雪:な、なんですとっ!?
   LQTRPGって、生活費に関するルールは、無いんじゃ……、
GM:はい、ルールにはありませんよ。
   だから、そのへんは、全てGMに委ねられます。
   そもそも、13人の大所帯PTなんですよ?
   すぐに生活費が切迫するのは当然です。
ミリィ:確かに、言われてみれば……、
    でも、ルールが無いことを理由に、こんな使い方をされるなんて……、
    このGM……PC弄りが、だんだん、手慣れてきてる?
GM:そういうわけで、当面の生活費は、何とかなりますが、
   船賃だけが、どうしても工面できない状態です。
美雪:「し、しまったわ……皆の食費など、計算に入れてなかった。
   わ、わたしとしたことが、何てこと……っ!」(頭抱え)
ティナ:「……あれ、美雪お姉ちゃん、どうしたの?」
美雪:「う、うん……ちょっと、ね。
   (少し考えて)皆、ちょっと、話を聞いてもらえる?
   今から、重大な問題を言うから、心して聞いて」
ミリィ:「――ほえ?」
美雪:「ぶっちゃけ、ストレートに言って、旅費が底をついたわ。
   つまりは、お金がナッシングでオケラなわけ」
ティナ:「……ええぇぇぇぇっ!?」
美雪:「私も迂闊だったわ。旅をするという事は、
   それだけ運動量も増加するわけで、当然、この大所帯では、
   それに比例して食費も嵩んでしまうことに気付かなかったなんて……」(がっくり)
光:「まあ、気を落とすな。美雪だけのせいじゃない」(肩ぽむ)
美雪:「うふふふ……そうね、私だけの所為じゃないわよね」(にへら〜)
光:「うっ……?」
美雪:「そう言うアンタが、一番、バカスカ食ってるんじゃ〜っ!!」(鍋ツッコミ)
光:「――あんぎらすっ?!」
美雪:「まったく、マグロとか鰹とか、値の張るもん、ここぞとばかりに食べまくってっ!!
   少しは控えなさい、野菜も食べなさい!!」(ガミガミ)
光:「ひぃ〜っ! ゴメンナサイ、ゴメンナサイ!」
ティナ:「み、美雪お姉ちゃん、落ち着いて〜!?」
    美雪お姉ちゃんを羽交い絞めにして、抑えるよ。
美雪:「ええい、離して! 私は落ち着いてるのよぉ〜!」
ティナ:「全然、落ち着いてないよ〜!」
ミリィ:「美雪、そーいう台詞を吐くと、謀殺されたり、ミスって死んだりするのよ?」
美雪:「ま、まさか、こう、背後から、注射でプスリとかやられて?」
GM:(それって、死にフラグ?
   確かに、このPTって、アップルフィールドとは、縁が強いけど……)
美雪:「いや〜、お尻にそれはいやぁ〜っ!
   ま、まだ、前だって許してないのにぃ〜!」
ミリィ:「美雪……あんた、そんなモンで……」(ほろり)
ティナ:「ん〜……お姉ちゃんの場合、こっちかな?」(お尻を触る)
美雪:「て、てぃ、てぃーなっ!? ――あんっ☆」
ティナ:「ふぅ……やっと止まってくれた。
    美雪お姉ちゃん、私、この方法だけは、
    あまり使いたくないんだから、少しは落ち着いてね?」
美雪:「う、うん……ごめん」(もじもじ)
ミリィ:「ティーナ……割と、ノリノリじゃなかった?」
ティナ:「そ、そんな事ないよ〜」
美雪:(ティーナったら、何時から、あんなに上手く……って、そうじゃなくて!)
光:(今度、ハリセンでも作ってみるか)
  こちらでも、美雪を止める手段を模索してみる。
ミリィ:「まあ、食事に関しては、男の子だし、仕方ないとしても……」
ティーナ:「干し魚とか、そういうの、多めに持って来れば良かったね」
ミリィ:「とにかく……どっかで稼がないとねぇ」
ティナ:「そうだよ、お金が無いなら、皆で稼げば良いんだよ!」
ミリィ:GM、現在地から、一番近い都市って何処?
GM:知識都市コミパですね。
ミリィ:あの街に港は無いけど、生活費がある内に稼いでおかないとダメよね?
    とりあえず、そこに行こうか?
ティナ:賛成! コミパなら、ミナモト新聞社もあるし、なんとかなるかも。
美雪:あの出版社じゃ、原稿料の前借りは無理じゃない?
   経営、厳しいんでしょ?
ティナ:鞍馬先輩の記事のおかげで、少しは持ち直してる……よね、GM?
GM:綾の記事以上に、社長が自主出版してる『美少年大全』の売上でね。
ティナ(のPL):ありがとう、イルス……、
         キミの尊い犠牲は、決して無駄にしない。





―― PHASE-02 仕事がないっ!? ――


GM:では、やって来ました知識都市――
   光、美雪、ティーナ、ミリィ以外の面々は、早速、金策に走り出します。
光:「――で、俺達は、どんな仕事をすれば良いんだ?」
美雪:「それを、今から考えるの」
ミリィ:「ってゆ〜か、このメンツって……、
    何気に、即金で貰えそうな日雇い仕事のアテが無い?」
ティナ:「ウチの出版社は……頼れないよね」
美雪:「日雇い仕事は、探せばあるかもしれないけど……、
   そうだ、地下にあるダンジョンに挑戦して、その報酬で――」
GM:――それは無理です。
   キミら、迷宮探索の権利者のコネなんて無いでしょ?
光:「じゃあ、どうするかな?
  図書館が多いから、キラリや、ミンニャオ先生なら、引く手数多だろうけど……」
ティナ:「月花お姉ちゃんや、ナヤお姉ちゃんも、
    単純な力仕事なら、誰よりも頼りになるだろうしね」
ミリィ:「ぶっちゃけ、光よりもね」
光:「事実なんだけど……ちょっと黄昏ちゃうぞ?」
ミリィ:「そ〜いや、この街だよね? 悪霊の武器ってのが見つかったの」
光:「――悪霊の武器?」
ミリィ:「痴情の縺れから殺し合った、女の子達の怨念が宿った武器、だそうよ?」
美雪:「あ、そういえば……、
   なんか、二股の果ての殺し合いとか……イヤよねぇ」
ティナ:「あ、私もそれ知ってる。
    どうして、私達みたいに、仲良くできなかったんだろうね」
GM:……?


 ――はて?
 そんな話、あったっけ?

 ああ、そういえば……、
 ちょっと前に、突発セッションをした、って言ってたっけ。

 未公開のセッションだけど……、

 確か、あのシナリオって、スクールデイズの
『言葉』と『世界』の怨念が宿った、2つの凶器が、
地下ダンジョンで見つかって――って、内容だっけ?

 今の時間軸だと、女学院の幽霊騒ぎも、まだ解決してないことになるし……、

 何気に、この街って、そういう事態に陥り易いのかな?


ミリィ:「ふふっ、光も、はっきりしていないと、修羅場見ちゃうかもよ?」
光:「ゼ、ゼンショシマス」(かくかく)
ミリィ:「ほらほら、そんなに縮こまらないの。
    男でしょ? 二股でも十二股でもどーんと構えなさい……ねっ?」
光:「そ、それはともかく……いい金になるネタは無いかなぁ」
ミリィ:「そういうの探すなら、酒場でしょ?」
GM:では、そんな話をしていると、皆さんは、ちょうど、酒場の前を通ります。
   店の名前は『蒼き瞳の淑女亭』です。
光:あそこか……、(笑)
  時期的に、スアラとランティスは?
GM:まだいません。
ミリィ:「……取り敢えず、中で仕事がないか訊いてみる?」
ティナ:「そうだね、訊いてみようか」
GM:では、店に入るわけですが……先頭は誰です?
光:まあ、俺だろうな。
GM:光が店の入口を潜ろうとしたところで、
   ちょうど、店の中から、誰かが飛び出てきて、ドンッとぶつかってしまいます。
???:「――キャッ!?」
    ぶつかった拍子に、相手は、
    持っていた荷物をバラバラと落としてしまいます。
    どうやら、相手は女性で、荷物から見て画家さんのようです。
光:「おわっ……と、申し訳ない」
美雪:「光、どうしたの?」
光:「いや、ちょっと、ぶつかってしまって……っと、手伝おう」
  しゃがみ込み、荷物拾いを手伝おう。
美雪:「あら? 気をつけてね、ただでさえ体が大きいんだから」
   と言いつつ、荷物を拾う。
ティナ:「それだけ頼りになるんだよね♪」
???:「い、いえ、こちらこそ、すみません。急いでいたもので……」
    と、慌てて荷物を拾い始めますが、
    よほど慌てているのか、拾っては落として――を繰り返しています。
美雪:「あらあら、そんなに慌てないで」
???:「あ、ありがとうございます」
    旅の女画家さんは、ペコペコと頭を下げ、その度に、綺麗なポニーテールが揺れる。
光(のPL):旅の画家? ポニーテール?(何か引っ掛かった様子)
美雪:「うちの亭主が面倒をかけてゴメンなさいね」
ミリィ:「彼氏が迷惑かけてゴメンね〜?」
ティナ:「お兄ちゃんが迷惑かけてゴメンなさい」
光:「え〜、彼氏で兄で亭主な甲斐性なしです」
???:「て、亭主? 彼氏? 兄?」
    皆さんの言葉に、混乱する女性。
    だが、我に変えると、荷物から1枚の絵を取り出し、皆さんに見せます。
美雪:「……?」
???:「皆さん、こんな子を見かけませんでしたか?」
    と、耳の尖った少女の似顔絵をみせます。
ミリィ:「……エルフ?」
???:「私の旅の連れの『エルト』という女の子なんですが……、
    昨夜からいなくなってしまって、今、探しているんです」
美雪:エルトぉぉぉぉっ!?
光:やっぱり、アヌーラかぁぁぁっ!!
ミリィ:「それって……微妙に危なくない?」
美雪:「さ、昨夜からですか……、
   でも、連れがいるのに、遠くに行くなんて、ありえないし……」
ティナ:「もしかして、誘拐された?」
    と言いつつ、似顔絵をカメラで撮っておく。
美雪:「そんな、縁起でもない……」
ミリィ:「結構可愛い子っぽいし、なきにしもあらず、なんじゃない?」
光:「う〜む、何処かではぐれた? 心当たりは?」
???:「それが……私は、いつも、ここで似顔絵を描いているんですけど……、
    その最中に、フラッといなくなって……いつまで経っても戻ってこなくて……」
光:「ふむ……」
美雪:「どうする? 現状、私達には重大問題があるわけだけど……、
   正直、ここまで来て、知らない事にできる?」
光:「できるわっきゃねぇな。探すのを手伝おう」
ミリィ:「じゃ、きまりね」
美雪:「ふふっ、光らしい模範解答ね☆」
光:「それでこそ、お兄ちゃんだよ♪」
アヌーラ:「私は、アヌーラ=シャーナーメといいます。
     もし、この子を見かけたら、この酒場まで連れて来てあげてください。
     少ないですが、お礼はしますので……」
     と言い残し、街の中を探しに行くつもりなのか、アヌーラは走り去ります。
     で、似顔絵の脇には、『ANURA』と、彼女のサインがされています。
美雪:「……で、どうする?
   手分けして探す? それとも、四人で一緒に探す?」
ミリィ:「……この子の名前、なんて言うんだっけ?」
ティナ:「確か、エルト、って言ってたよ」
光:「取り敢えず、4人で捜索し、目星がついたところを、
  それぞれ、バラけて調査する、ってのはどうだ?」
美雪:「探査能力は、ティーナがずば抜けてるしね。
   了解、私に異存は無いわ」
ティナ:「うん、決まりだね……私、精一杯頑張るよ!!」
GM:では、皆さんが、そんな話をしていると、
   不意に、後ろから声を掛けてきます。
???:「そこにいるのは……ティーナか?
    こんなところで、何をしているんだ?
    というか、そんな場所にいたら、他人の迷惑になるだろう?」
    と、その声の主は、ティーナが良く知る人物です。
ティナ:「えっ、その声は……」
    この現れ方って、もしかして、弁慶さん?
GM:はい、その通り。頼れる男の弁慶です。(笑)
   気が付くと、皆さんの後ろに、その巨体があったりします。
ティナ:「あ、弁慶先輩!こんにちはです!」(元気良く挨拶)
弁慶:「うむ、元気そうで何よりだ」
光:(こ、この男……できる?!)
  防衛属性として通じるモノがあったらしい。
美雪:「あら、光より、さらに大きい人……、
   ティーナ、お知り合いの方?」
ティナ:「えっとね、この人は、
    私が働いてるミナモト新聞社の先輩で、弁慶先輩って人だよ」
弁慶:「お初にお目にかかる。武蔵坊弁慶という」(ぺこり)
美雪:「どうも、はじめまして、私は水沢 美雪と言います。
   いつも、ティーナがお世話になってるようで」(ぺこり)
光:「立野 光っす」
ミリィ:「初めまして、ミリィ=ファーレンです」
弁慶:「いやいや、こちらこそ、いつも、ティーナには、よく働いてもらっている」
美雪:「ちょっと、慌てん坊さんな所がありますが、
   一生懸命な所は本物なので、これからもよろしくお願いします」
弁慶:「うむ、社長ともども、彼女には期待している。
   こちらこそ、今後とも宜しく頼む。
   それで、どうしたんだ、こんな所で……?」
ティナ:「実は……ちょっと、これから、人探しをする所なんです」
弁慶:「ふむ……人探し、か……、
   まあ、こんなところで立ち話をしては、他のお客に迷惑だ。
   折角だから、一緒に昼食でもどうだ? もちろん、奢るぞ。
   あまり高いものは無理だがな。そちらのご婦人達も、一緒にどうかね?」
ティナ:「え……良いんですか?」
弁慶:「こういう時は、遠慮せず、先輩の顔を立てるものだ」


 遠慮など出来る懐事情ではない一同。
 弁慶の好意に甘え、ランチを奢ってもらうことにする。

 現在、聖モントレイユ女学院の幽霊の噂の取材をしている弁慶……、

 この街に滞在しているなら、
エルトの姿を見ているかもしれない。

 光達は、食事をしつつ、早速、エルトの似顔絵を、弁慶に見せる。


ティナ:「この子を探して欲しいって人がいるんです。
    昨夜から姿が見えないそうで……」(似顔絵を見せる)
弁慶:「確かに、考え見れば、最近、子供の行方不明事件が多発しているな。
   そのアヌーラという女性は、治安管理局か、自警団には、相談したのだろうか?」
光:「……あの様子をみると、していない可能性がありますね」
ミリィ:「自警団か……後で寄ってみようか」
美雪:「そうね……アヌーラさんも、もしかしたら、
   あの後、治安局か自警団の方に行ったのかもしれないし……」
ティナ:「もしかしたら……何か相談できない理由があるんじゃないかな?」
美雪:「それは考え過ぎだと思うけど……」


 はい、実は、ティーナが正解です。

 バラしちゃいますと、アヌーラは、
エルトの不在を、治安局と自警団には報告していません。

 ――ってゆ〜か、出来ません。

 何故なら、どんな事情であれ、表向き、
アヌーラは、初音島の遺跡からエルトを盗んだ容疑者……、

 ゆえに、極力、治安機関との接触は避けなければならないのです。

 尤も、そんな事情は、光達は知る由もないのですが……、


美雪:「なんにしても、一度、自警団の方に行ってみない?
   その時に聞いてみましょう。
   それにしても、子供行方不明事件だなんて、穏やかじゃない話ですね」
弁慶:「うむ……その捜査の為に、治安局も自警団も、かなり慌ただしくしているからな。
   まったく、先日の爆発魔事件といい、今回といい……、
   最近の世間は、落ち着きが無い」
ティナ:爆弾魔? ああ、禁愚ジャッキーのことか。(笑)
    もう、そっちは解決してるから、今回の件とは関係無いよね。
光:「行方不明になった子供の共通点とかは掴めてるのでしょうか?」
弁慶:「いや、所詮、私は一介の記者にすぎない。
   行方不明事件については、治安局の管轄だ。こっちで首は突っ込めんよ」
光:「そうですか……」
美雪:「まあまあ、自警団に聞いてみれば、特徴なんかも教えてくれるわよ」
ティナ:「とにかく、まずは自警団に行って、それからだね」
ミリィ:「それは、決定事項ね」
光:「う〜む、そうだな……ご馳走さん」(←野菜残し)
美雪:「――こら!(おたまでコンッ)
   折角、ご馳走になったんだから、残さず食べるのが礼儀よ?」
ティナ:「お兄ちゃん? 野菜もちゃんと食べなきゃダメだよ?」
ミリィ:「光、残ってるのも食べた方が良いよ。
    長丁場になりそうな気配もするから」
弁慶:「食事を残すのは良くないな。大きくなれんぞ、若者よ」
光:「ぎゃふん!? うぅ、了解」
  集中砲火されつつ、我慢して食べる。
弁慶:「とにかく、一晩経っても見つからない、となると、
   ただの迷子ではなさそうだな。
   こちろでも、仕事の合間に探してみるとしよう」
ティナ:「ありがとうございます、弁慶先輩。
    でも、無理はしないでくださいね?」
弁慶:「ふむ……無理はせん。
   無茶はすることもあるがな……そうだろう、若者よ?」
光:「――押忍っ!」





―― PHASE-03 情報が無いっ!? ――


GM:で、自警団の事務所に行くんですね?
光:治安局だと、官僚的な対応しかしてくれなさそうだしな。
GM:では、自警団事務所……、
   通称コミパレンジャー基地へとやって来ました。
光:「――お邪魔しま〜す」
???:「は〜い、どちらさんです?」
    と、聖モントレイユ女学院の制服を着た、
    長い黒髪の女の子が、事務所から出てきます。
光:「依頼を受けて、子供の行方不明事件を調べている者です」
美雪:「他からの依頼で、子供を捜してるのですが……、
   どうやら、似たような行方不明事件があると聞いたので……」
???:「ああ、例の事件か……すみません、今、団員が出払ってて……、
    俺、ただのバイトだから、あまり、詳しい話を出来る立場じゃないんだけど?」
一同:
「――俺?」
すばる:「誠君、お客様ですの?」
    奥から、体の所々に包帯を巻いた『御影 すばる』が現れます。
    ちなみに、片手にはスケッチブックがあります。
美雪:「まこと……名前は、女の子っぽいけど?」
ティナ:「でも……誠『君』?」
ミリィ:「どう見ても、女の子じゃない?」
美雪:「でも、男女共通な名前っぽいし……」
誠:「すばるさん、ちゃんと寝てなきゃダメですよ」
すばる:「ぱぎゅ〜、そう言う誠君こそ、モデルが動いちゃダメですの」
誠:「俺は、お客さんの対応に出たんです」
美雪:「……モデル、って?」
光:「まぁ、アレだ。苦労してるんだな、お前さんも」
誠:「……分かってくれるか」(カツラを外す)
ティナ:
「……嘘っ」
ミリィ:
「――嘘だっ!!」
美雪:
「男の子ぉぉぉっ!?」


 ――お約束の反応、ありがとう。

 というわけで、今回のゲストの一人『藤井 誠』です。

 禁愚ジャッキー事件で奮闘し、
大怪我をした誠は、同じく負傷したすばると留守番中なのです。

 ちなみに、例の女学院の制服を来てますが、別に入学したわけではありません。

 あの女学院の名簿に名を残した男子は、
後にも先にも、ふぁんぶらーずのイルスだけなのです。(笑)


光:「俺は破滅的に似合わないから、最初の一回で済んだけどな」
誠:「羨ましい……俺なんて、行く先々で……うううっ」(泣)
美雪:「光の場合、何処の女子プロレスラー?」
ミリィ:「あれは、もう、屈強な漢が、厚い化粧で女装したのかと……」
ティナ:「……皆、話がずれてきてるよ〜!」
光:「おっと、そうだった」
すばる:「ぱぎゅ〜……とりあえず、上がってくださいですの」
    と、すばるが応接室に案内してくれます。
光:よし、案内されよう。
  で、お互いの紹介は済んだ、ということで……、
誠:「――で、例の行方不明事件についてだっけ?」
光:「おう、こんな子(エルトの似顔絵を出す)を探してるんだが……」
美雪:「……で、出来れば、行方不明になった、
   子供の特徴なんかで、共通するものがあれば、と……」
ティナ:「何でも良いから、情報が欲しくて……」
誠:「ちょっと待った。まだ、行方が分かっていない子供がいるのか?」
一同:「――はあ?」
美雪:「まだ……という事は、もう、皆、戻ったんですか?」
ティナ:「どういうこと?」
誠:「行方不明事件……いや、例の誘拐事件は、
  完全に解決したわけじゃないけど、
  誘拐された子は、皆、無事に発見、保護された、って、
  ついさっき、治安局から連絡があったんだ」
光:「通報者からも、裏付けは取れてるのか?」
誠:「ああ、間違いなく、通報された子供の人数と保護した人数は一致してる」
光:「と言う事は、アヌーラさんは、通報して無いのか?」
美雪:「あの、アヌーラさんという方は、
   こちらに来て、捜索願いなんかを出していましたか?」
誠:「いや、そういう話は聞いてない」
美雪:「そうなると、未だに、こちらに届けはしていない?」
ティナ:「やっぱり……何か届けを出せない理由があるんだよ」
光:「そうみたいだな……でも、それは関係ない。
  今は、引き受けたから探す……それだけだ」
すばる:「細かい事はともかく……、
    まだ、ご両親のもとに帰っていない子供がいるってことは間違いないんですの」
美雪:「そういえば、行方不明の子供の家族に、身代金の要求とかは来たのでしょうか?」
誠:「もちろん、要求は来た。でも、その取引の前に、とある冒険者の一団が、
  街の地下迷宮の一角に潜んでいた犯人グループ『土竜団』って奴等を撃退して、
  子供達を保護……一応、解決に至ってる。
  ただ、リーダー格と思われる奴は逃がしちまったみたいだけどな」
ミリィ:「人質がいたのに、討伐隊を出したわけ? しかも、一介の冒険者を?」
誠:「いや、犯人達を見つけたのは、ホントに偶然だったらしい。
  件の冒険者達が、地下迷宮に潜ってたら、たまたま、犯人達に出くわして……」
美雪:「お互い、完全に想定外の展開だったわけね」
光:「やるなぁ、そいつら……」
ミリィ:「まあ、とりあえず、治安局の方にも行ってみない?
    あっちに、エルトちゃんが保護されてるかどうか、確認してみようよ。
    ただ、、多分、身分証明が必要になると思うんだけど……」
    と、言いつつ、誠をジ〜ッと見る。
誠:「OK、俺も同行するよ」
すばる:「すばるも行きますの。放っておけませんの!」
ミリィ:「いや、あの、さすがに、
    大怪我してるっぽい人を動かすと、寝覚めが悪いと言いますか……」
すばる:「問題ありませんの! こんなの怪我のうちに入りませんの!」
誠:「スイッチが入ったすばるさんは止められないよ。
  大丈夫、俺がフォローするから」
光:「……そうしてもらえると、助かる」
ミリィ:「じゃあ、誠君、身分保障と、いざという時のサポート、お願いね」
    というわけで、誠君を引っ張って、治安管理局に行こう。
誠:「ちょっ、せめて、着替えを――」
ミリィ;「ほらほら、早く早く!」
ティナ:「この事件……かなり大きくなりそうだね。
    これは、私の記者としての直感だけど……」
GM:では、自警団事務所を出る時、
   皆さんには聞こえないくらいの小さな声で、誠が呟きます。
誠:「アヌーラ……エルト……まさか、な」





―― PHASE-04 信用が無いっ!? ――


GM:誠とすばるに同行してもらい、
   皆さんは、コミパ治安管理局にやって来ました。
ミリィ:「た〜のも〜」
南:「は〜い、どのようなご用件でしょうか?」
  と、対応に現れたのは、治安局員でありながら、
  自警団の方にも顔を出している『牧村 南』です。
誠:「ちょうど良かった。南さんがいるなら、話が早い」
美雪:「ええと、子供の行方不明事件についてお聞きしたい事が……」
ミリィ:「カクカクシカジカ――で、保護された中に、
    この子が居なかったか探してるんですけど、心当たりありませんか?」
    似顔絵を見せつつ、ストレートに訊ねる。
南:「え〜っと、この子のお名前は?」
美雪:「――エルト、といいます」
南:「ああ、エルトちゃんね。
  あの子なら、今頃、保護者の方のところに戻ってるはずですよ?」
ティナ:「えっ……?」
美雪:「そ、それじゃあ、無事、保護されたんですか?」
ミリィ:「アヌーラさんの所に連れて行ったんですか?」
光:「親御さんが、引き取りに来られたんですか?」
南:「え、ええ……ちゃんと保護者の方のところに戻ってる筈です」
ミリィ:「入れ違い? でも、なんか引っ掛かるなぁ。
    南さん、エルトちゃんが保護者の所に戻ったのって、何日くらい前?」
南:「何日前も何も、ついさっきよ?
  ちゃんと信頼できる人に、保護者の方のところまで送ってもらっているから」
ミリィ:「う〜ん、なんか、こ〜、
    パズルのピースが噛み合わない違和感があるのよねぇ」
光:「俺もだ、こう。歯茎の間に小骨が刺さったような…」
美雪:「アヌーラさんが治安局に話をした、としても……、
   ほんの1時間程度で、エルトちゃんが帰ってきた、ってこと?
   まあ、普通の迷子なら、ありえる話だけど……、
   でも、昨夜からいないって時点で、普通じゃないし……」
ティナ:「えっと、失礼を承知で聞きます。
    その信頼できる人って、誰なんですか?」
美雪:「自警団の方、なんですよね?」
南:「いえ、違いますよ。エルトちゃんを探して欲しい、と、
  保護者の方から、直接、依頼された冒険者さん達です」
ティナ:「――そんな! 有り得ない!」
美雪:「私達も、依頼を受けた者達なんですよ!
   ああ、なんか、物凄く嫌な予感がする!」
ティナ:「ごめん、すばるさん! 誠君を借ります!
    急ごう、お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
    誠君の首根っこを引っ掴んで酒場までダッシュする!
    もう一度、アヌーラさんに会って、ちゃんと確認しないと!
光:「――了解!!」
美雪:「私は、後から追うから、先に行ってて!」
誠:「ひ、引き摺るなぁぁぁぁっ!!」
南:「ちょっ、ちょっと待って? 何がどうなってるの?」
美雪:「実は、ですね……」
   アヌーラさんからエルトちゃんを探して欲しいと依頼されていた事を話す。
南:「ああ、保護者の方の名はアヌーラって言うのね。
  あの子達、何故か、依頼主の名前を言おうとしなかったんだけど……」
美雪:「すいません、その冒険者の風体と数を教えて頂けますか?」
南:「えっと、四人よ? 剣士に、魔術師に、盗賊、聖職者かしら?」
美雪:「それぞれの身体的特徴なんかは分かりますか?」
南:「……何を慌ててるの? テルト君達が何かしたの?」
美雪:「その冒険者達は、エルトという子を攫おうとしているんです!
   だって、依頼主の名前も知らないなんて、おかしいです!」
南:「知らないって言うか……、
  知ってるけど、事情があって言えない、って感じだったわよ?」
美雪:「……知ってるけど言えない?
   でも、普通、保護者の名前も言わないで、
   行方不明の子を引き取りに来るなんてありえますか?」
南:「え、ええ、ありえないわ。
  私達だって、そんな相手に、子供を引渡したりはしません。
  でも、テルト君達だったから……、
  土竜団を退治したのだって、あの子達なのよ」
美雪:「誘拐団を退治したのが、その人達……でも……、
   いけない、疑い出したらキリが無いわ。
   とにかく、光達と合流して、そのテルトって人達と接触を図ってみます。
   いずれにせよ、こちらとしても、ハッキリさせないといけない問題ですから。
   すいません、お手数かもしれませんが、同行をお願いできますか?
   知り合いの方がご一緒でしたら、こちらも確認がしやすいと思いますので」
南:「そこまでする必要があるとは思えないけど……」
  と言いつつも、南は同行してくれます。
美雪:(余程の信頼があるのね……多分、私達以上に……、
   まあ、誘拐犯達を捕まえた実績があれば、当然よね。
   治安局の人達の判断を疑いたくは無いけど……、
   どうにも、引っ掛かる事が多すぎるわ!)





―― PHASE-06 確証が無いっ!? ――


GM:では、街の出入り口の門に向かう途中、
   光達は、南を連れた美雪と合流します。
   そして、シーンは移り……、
   皆さんは、街の近くの森の中へ入って行こうとする、
   冒険者の一行を発見します。
   彼らのリーダーと思われる少年剣士に、肩車されている、
   エルフの少女の姿も見えます。
美雪:「南さん……あの方達てすね?」
南:「ええ、そうよ。テルト君、ちょっと待って!」
ティナ:「そこの冒険者達、待ちなさい!」
ミリィ:「じゃすと・あ・もーめんつっ!!」
テルト:「……はい?」
    呼び止められ、少年剣士が振り向きます。
    人の良さが滲み出る女顔の少年です。
美雪:「すみません、失礼ですが、少しお聞きしたい事が……」
ティナ:「貴方達、その子を何処に連れて行くつもりですか?」
テルト:「えっとですね――」
ジェシカ:「(遮り)――その質問に答える義務は無いわ」
     思わず喋りそうになるテルトを遮り、
     やや目つきの悪い女魔術師のジェシカが、キッパリと言い放つ。
光:「では、保護者の名前だけでも教えてもらいたいものだがな?」
美雪:「申し訳ありません、私達も、同じ依頼を受けている以上、
   聞く権利があると思うのです」
ジェシカ:「依頼主の名前は言えわ。
     冒険者が依頼主を明かせるわけないでしょう?」
美雪:「でも、他人の子を保護する際、
   依頼者の名前を言わないのは、おかしいんじゃありません?」
   誰の子供かも言わずに、保護しにきたなんて……、
   どうみたって、誘拐ですよね?」
テルト:「いえ、あの、その、これには、色々と事情が……」
ティナ:「その『事情』とやらを、是非説明してもらいたいですね。
    貴方達の潔白を証明する為にも。
    常識的に考えて、おかしいですよね?
    名前も言わずに行方不明の子を引き取るなんてありえます?
    いえ、それで引き渡す方もどうかと思いますが……」
マイナ:「その意見は、ご尤もなんですけど……」
    ティーナの言い分に、申し訳なさそうに、女神官が頭を下げる。
テルト:「すみません。どうしても、言えないんです」
ジェシカ:「確かに、怪しまれるのは当然ね。
     でも、それが依頼主の意向である以上、仕方ないわ」
キアーラ:「なんか話が拗れちゃってるみたいだし、
     ここは、こっちの事情を、素直に話すべきなのかもしれないけど……、
     あたしらに、そんな権限は無いし、責任も負えない」
     と言うのは、ハーフエルフの女盗賊。
ミリィ:「……どういうこと?」
キアーラ:「それも言えない……例え、同種のよしみでもね」
ティナ:「言えないって事は……やましい事があるからって事ですよ?」
ミリィ:「たったら、これたけは訊かせてよ。
    あなた達も、アヌーラさんから依頼を請けたの?」
テルト:「……それ、誰のことです?」
一同:――はあ?


 お互いの意見の食い違いに、一同は、首を傾げる。

 ちなみに、この状況……、
 GMすらも、どうやって打開すべきか困っていた。

 本当なら、このシーンに来る前に、
ある程度の情報を、街の中で与える予定だったのだ。

 にも関わらず、冒険者達は、誠達を同行させる事によって、
最短ルートで、ここまで来てしまったのだ。

 これでは、テルト達の事情を推理できるわけがない。

 もちろん、今までに、
軌道修正する機会はあったのかもしれないが……、

 全ては、GMの拙いマスタリングが招いた結果である。

 さて、この拗れまくった状況……、
 どうやって、まとめれば良いのやら……、


光:ちなみに、エルトの様子は、どんな感じ?
  アヌーラの名前を聞いて、その反応は?
GM:(あっ、その手かあったか!!)
   エルトは、テルトを信頼しきっているのか、彼に肩車をされたままてす。
   むしろ、キミ達を怖がっています。
光:そ、そうなのか? ソレはますいな。
ジェシカ:「ああ、そうだ……ねえ、エルト?
     アヌーラって人、知ってる?」
エルト:「ううん、知らない」
光:「……へ?」


 ひゅぅぅぅ〜……、

 と、その場を、空っ風が吹き抜ける。


美雪:「……なんか、マズくない?」
ミリィ:「一気に立場が逆転したような……、
    もしかしてなくても、わたし達、担がれた?」
光:「確かに、この状況なら、俺も自分が怪しいと思う」
GM:はい、エルトの一言で、状況は逆転しました。
   誠・すはる・南の3人は、皆さんに疑いの目を向けつつあります。
美雪:「ちょっ、ちょっと待って! おかしいと思わない?
   エルトという名前で、姿も同じで、同じ行方不明で……、
   なのに、保護者が違う、なんて……」
光:「そう、そこが引っ掛かるんたよ。
  しまった、うっかり、アヌーラさんの身元を確認してないぞ」
テルト:「わかりました。すべて話します。
    ただし、どんな形でも良いので、
    あなた達が信用できる人物だと、証明してみせてください」
ジェシカ:「テルトちゃん、何いってるのよ?!」
テルト:「だって、このままじゃ。ラチがあきませんよ」
    と言って、テルトは剣を抜き、その切っ先で光を示します。
光:「――む?」
テルト:「一騎打ちです。あなた達が信用できる人物かどうか、
    その剣で、示して見せてください」
    と、その言葉とともに、彼の魔法銀の剣がきらめきを増す。
    その眼差しと、剣筋に、一点の曇りなし。
光:「……わかった。手出し、するなよ」
  美雪達に言いつつ、盾と剣を構える。
  こちらも、まるで武具が応えるように……、
  受け継がれた護る意志である騎士の盾が、光を反射して煌く。


 こうして、光とテルトの一騎打ちが始まった。

 女性陣からの声援を受け、
2人の若き剣士は、剣戟を走らせる。

 光が『シールドチャージ』を――
 テルトが『強打(クリティカル−1)』を――

 互いに、決め技を発動させるが、
実力は拮抗しており、ダメージを与える事ができない。

 そして、光の渾身の一撃……、
 必殺『ホーリースマッシュ』が……、


光:(ころころ)光り輝く剣を振り下ろす!!
テルト:(ころころ)それを、魔法銀の剣で受け止める!!
光:「どうする? お互い、切り札はきっちまったようだが?」
  テルトと剣を合わせたまま、訊ねる。
テルト:「そうですね……これで、ハッキリしました」
    もう、これ以上、闘う必要は無い、と、剣を収める。
光:「……そうだな」
テルト:「ボクは、まだまだ未熟です。
    でも、そんなボクにでも、あなたの剣に迷いは無かった……と思います」
ティナ:「当然だよ、お兄ちゃんは、強くて真っ直ぐなんだから」
    自分の事のように、えっへんと胸を張る。
光:「そりゃどうも、こっちこそ不審者扱いしてすまなかった。
  俺にはできない、剣の使い方だ。正直、羨ましくもある」
テルト:「すみません……ボクは、この人達を信用しようと思います」
ジェシカ:「はいはい、好きにすれば……」
テルト:「じゃあ、まず、ボク達の方から事情をお話しますね」
光:「すまん、頼む」
GM:では、警戒を解いたテルトが、事情を説明しようとすると――
???:「――なんでぇ、共倒れするかと思って、
    見物してたってのに……とんだ拍子抜けだ」
    と、地中から声が響いてきます。
    それと同時に、ボコッと地面が盛り上がり、
    見上げる程に巨大なストーンゴーレムが姿を現します。
一同:「――出たか、黒幕っ!!」





―― PHASE-07 空気が読め無いっ!? ――


光:「――誰だっ!?」
美雪:「こ、これは……っ!?」
ミリィ:「てっきり、こっちが担がれちゃったかと思ったけど……、
    そーいう三下台詞を吐けるって事は、
    読みは半分正しかった、って事で良いみたいね」
ティナ:「どうやら……私達も貴方達も、騙されてたって事ですね」
テルト:「いえ、騙されたって言うか……、
    ああっ! あいつは、逃げた土竜団のリーダー!?」
GM:と、テルトが指差すゴーレムの頭の上には、一人の男がいます。
   その男の腕には、不可思議な杖が握られている。
土竜:「へへへっ、出来れば高見の見物といきたかったけどよ、
   もう、面倒なのは止めだ! 俺が、直接、ブッ殺してやる!
   俺のを潰してくれた恨み、ここでキッチリとはらしてやるぜ!」
   そう言って、土竜リーダーは、杖をブンッと振るう。
   すると、男の体の半分が、ゴーレムの顔部に埋まり、ゴーレムと同化します。
光:「あー、しかしだな、モグラくん?」
土竜:「なんでぇ、命乞いか?」
光:「ここに、怒らせると、俺達には、
  どうにもならない娘さん方がいらっしゃるのだ゜が?」
  美雪達もそうだけど……特に、すばるとか?
ミリィ:「そうそう、これだけのメンバーが揃ってるのに、
    そんな好戦的な台詞を吐くと、後悔することになると思うよ?」
GM:ところが、すばるは、先日の禁愚ジャッキー事件での、
   ラルヴァとの戦闘での怪我で、ほとんど戦力になりません。
光:いや、それにしたって……、
土竜:「そうかな? 確かに、一見、多勢に無勢だけどよ。
   この『土塊の杖』はな――」
   男が杖を振ると、さらに、ボコンッボコンッと、2体のゴーレムが出現します。
ミリィ:「あ、増えた」
土竜:「どうよ? 土さえあれば、いくらでも、ゴーレムが作れるんだよ。
   しかも、それを自由自在に操れる!」
ティナ:「命乞いをするのは、貴方の方だよ!
    あっち(テルトーズ)はどうでも良いけど、
    お兄ちゃんを共倒れにしようとしたのは許せない!」
光:「あー、これこれ。あまり酷い事を言うもんじゃありません」
ティナ:「だって〜、お兄ちゃんを悪者扱いしたんだよ?」
美雪:「ダメです。謝りなさい」
キアーラ:「あ〜、気にしなくていいよ。
     どんな事情であれ、こっちにも落ち度はあるわけだし」
美雪:「まあ、何にしても、ここは、お互い、
   力を合わせて難局を乗り切らないといけないと思いません?」
テルト:「あいつを逃がしたのは、ボク達の落ち度です。
    できれば、決着をつけさせてもらいたいんですけど……?」
ジェシカ:「3体を一度に相手にして、
     フォーメーションを組まれたら、逆に厄介だしね」
誠:「じゃあ、各チームで、1体ずつってことでどうだ?」
  テルトーズが土竜リーダーを、誠とすばるがゴーレムAを、
  光達がゴーレムBを相手にすることになります。
ミリィ:「光をコケにしてくれたお礼は、
    た〜っぷりしてあげないと気が済まないけど、
    ここは、妥協しておきましょうか」
美雪:「それでいいわ。各々、負担が減りますし」
光:「んじゃ、サポートするから、モグラは遠慮なくボコってくれい」
ティナ:「お兄ちゃんを酷い目に合わせた原因だもの。
    私達にとっても敵だよ。
    それに、私達を信じなかった誠さんも、後でお仕置きしますから!」
美雪:「少なくとも、身元確認を怠ったっていうミスは、さすがに……」
誠:「それって、お互い様と言うか、
  状況からして、疑ったのは仕方ないと言うか……、
  はい、すみません。甘んじて受けさせてもらいます」(泣)
ティナ:「ふふふ……何が良いかな?
    綾先輩から、色々、教わったアレを試してみようかな?」
美雪:「酷いコトしちゃダメよ? 女装写真、一杯撮らせて貰いなさい。
   確か、もうすぐでしょ? 美少年大全2巻の締め切り」
ティナ:「それだよ、美雪お姉ちゃん!
    よ〜し、かなり際どいヤツも撮らせてもらおっと!」
光:「アレだ、その……スマン」
  同じ男として、誠が不憫になってきた。
美雪:「まあまあ、あんまり過激なのも可哀想だし……、
   せめて、猫耳メイドさんにしておきなさい」
ティナ:「それじゃありきたりだよ。
    スクール水着にニーソックス……後は、もっと凄いの考えよっと」
光:「スマン……いや、マジで」
誠:「いっそ、このまま逃げようかな……、
  まあ、それができる性格なら、苦労しないよな……魔法剣、起動」
ティナ:「そうそう、逃げたら分かってるよね?
    私、新米だけど記者だから……何処までも追い掛けるよ?」
GM:は〜い、では、戦闘を始めますよ〜。


<第1ターン>

GM:まずは、イニシアティブ判定です。
   (ころころ)14ですね。
美雪:は、早い!?(ころころ)7だから、負け。
   ごめんなさい、先攻とられた!
GM:ゴーレムの攻撃!
   両腕を前に突き出して、指から石礫を連射!
   フィンガーランチャー! 全体物理攻撃!
   (ころころ)14と言って命中!
光:修正値+7!? 当然、ミリィを庇うっ!
  と言っても、その達成値だと無理っぽいか?
ミリィ:ほとんど、6ゾロでしか回避できないじゃない!


 ――修正値は、GMを裏切らない!

 光達は、全員、回避に失敗し、
GMは、ここで、16点の全体ダメージを叩き出す。

 防御判定で、ある程度は軽減したものの……、

 元々、HPが低いミリィは、
この一撃で、残りHP4となってしまった。


GM:石礫が、光達に雨あられと降り注ぐっ!
   ちなみに、この攻撃、こっちのHPを10点消費しての攻撃です。
ティナ:「痛たた、痛い痛い!」
光:「ミリィ、大丈夫か!?」
ミリィ:「へ、平気平気……」
美雪:「私は、まだ何とか……でも、ミリィは……、
   もう、胸は大きいのに、なんで他が……」
ティナ:「美雪お姉ちゃん、今は、そんな事言ってる場合じゃ……」
ミリィ:「こんな石ッころよりねぇ……、
    光の(ピー)のが痛いんだからっ!
    おそらく……たぶん……」(笑)
光:「こらぁぁぁぁぁ?!」
美雪:「乗り越えなきゃいけない痛みだもんね」
ティナ:「確かに、私達の(ピー)な経験の方が、痛いよ……きっと……」
光:「そっちものってんじゃないいぃぃぃぃぃ!!」
誠:「戦闘中にちちくりあうな〜!
  すばるさんに邪悪指定されても知らないからな〜!」
光:「やりたくてやってんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
美雪:「男女混じわれば何とやらっていうじゃない?
   『交わる』でなく『混じわる』ここ、重要よ?」
光:「どうでもいいわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ティナ:「いい所をジャマしないでください!
    凄い恥ずかしい格好させますよ!」
誠:「あーはっはっはっ! 自慢じゃないが、
  大抵のモノは経験済みだ、ちくしょうめ!」
美雪:「がーーーーーんっ!!
   そ、そんな……女装の殆どを極めただなんて!!」
ティナ:「ふ〜ん、そうなんですか……じゃあ、遠慮無しで良いですね」
誠:「お願い、手加減プリーズ」
ティナ:「――嫌」(0.1秒即答)
ミリィ:「まあ、真面目な話、次も同じ攻撃が来たら、多分、倒れるから、
美雪:「じゃあ、私が回復を――」


 ゴーレムの攻撃が終わり、光達のターン。
 一番手の美雪は、ディアを唱え、ミリィを全快させる。

 そして、完全回復したミリィは、
マハマグナをアレンジし、ゴーレムの足元に穴を開けようとするも……、


ミリィ:「猛り大地よ……青き衣の騎士を呑み込む永遠の闇よ」
    (ころころ)命中は12!
GM:(ころころ)15で回避しました。
   地面に空いた穴を、ゴーレムは、ギリギリでよけます。
美雪:「デカブツのくせに、素早い!!」
ミリィ:「だったら、次は、逃げ場ごとツブすまで!」
ティア:「でも、お兄ちゃんは、きっと『早く』ないもんね?」
美雪:「あれだけ食べて、体力充分なんだから、持続力も桁違いよ!」
光:「何の話だぁぁぁぁっ!!」
美雪:「でも、あれよね……、
   そこに至る行動は、もっと早くしてもらわないと……ねえ?」
女性一同:「うんうん」
GM:相変わらず、放送コードギリギリのセッションだな。
   ってゆ〜か、そろそろ、戦闘中って、忘れないでね?
ティナ:はいはい! 『ツインスマッシュ』準備!
光:俺は『ホーリィスマッシュ』の準備だ!


<第2ターン>

GM:では、再び、ゴーレムの攻撃!
   その巨大な拳が、光に振り下ろされます!
   (ころころ)18で命中!
光:なんだ、その命中値!?
  クリティカルじゃないと(ころころ)無理だっての!
GM:ふはは〜、ダメージは(ころころ)1ゾロ!?
   たったの15点かよ!
光:1ゾロでも、15点もくるのかよ?
  (ころころ)防御して、4点ダメージだが……、
美雪:「な、なんてパワー?
   まあ、ゴーレムだから、当たり前かもしれないけど……」
   GM、攻撃修正値13って……私達を殺す気?
GM:ボクは、いつだって、PCを殺す気でデータ組んでますが?
   だいたい、4対1なんだから、このくらいが妥当です。
ティナ:「お兄ちゃん、大丈夫!?」
光:「……思ったより、痛くねぇな」
美雪:「まったく、もう……強がりばっかり言って!」
ティナ:「でも、油断したら危ないよ」
光:「ああ、そこは気をつけるさ」
ミリィ:「さ〜て、反撃開始よ」
美雪:「でも、あの回避力はバカにできないわ。
   生半可な攻撃じゃ、避けられそう」
ミリィ:「また、美雪がヤる気を出させてあげれば良いんじゃない?」
ティナ:「回避が高い、と言うより……、
    装甲が硬いから、武器が通り難いんだよ。
    お兄ちゃんなら、美雪お姉ちゃんの援護と力押しでなんとかなるけど……、
    速さメインの私だと、ちょっとキツイかな」
美雪:光は、このターンで、ホーリィスマツシュ?
   となると、素のままじゃ、命中は期待できないわよね。
GM:まあ、美雪の援護を計算に入れて、データ組んでますし。(笑)
ミリィ:パンツ公開が、前提なのね。(爆)
美雪:おのれ、GM……、(泣)
   だったら、期待に応えて『せくしーしょっと』発動!
ティナ:ちなみに、テルトさん達は、どうしてます?
GM:テルトーズも誠達も、真面目に闘ってますよ。
   皆さんと違ってね……、(笑)
   ただ、テルトも誠も決定打に欠けるのか、なかなか勝敗がつかない様子です。
ティナ:万が一、テルトさんが、美雪お姉ちゃんの『援護』を見てたら、
    誠さんと同じ目に遭わせてやる〜。
美雪:「ねえ、光……あの……その……、
   ちょっとだけで良いから、腰落として……?」(もじもじ)
光:「ん? こうか?」(腰を落とす)
美雪:「もう、ここまでやったんだから、
   男を見せなさいよ……こんのどエッチィィィ〜!!」
   で、光の頭の上にスカートをズボッ!!
   つまりは、ぱんつが至近距離からご対面♪(爆)
   (ころころ)支援効果は+3ね。
光:「…………」
  それは、さすがに、状況確認に時間が掛りそうだ。
ミリィ:「他に、なんぼか手ぇあるだろーに……」(頭抱え)
光:「……い、いや、うん、不可抗力、だと思う」
  どんなな状況であれ、気合が入ってしまう、悲しき男の性。
キアーラ:「ちょっ!? 真面目に闘ってる最中に、何やってんのよ!?」
マイナ:「不潔です! 邪悪です!」
ジェシカ:「――あなた、恥ずかしくないの?」
美雪:「不潔だろうが、邪悪だろうが、恥ずかしかろうが、
   これが、わたしの全力全開のスタイルなのよぉ〜!!
   文句あっか、うらああああああ!!
   もう、こうなったら、もっと見なさい。
   すりすりしちゃっても、構わないんだからっ!!」
ティナ:「み、美雪お姉ちゃん、ストップストップ!
    ところで、テルトさん……今の見ました?」(ギロッと)
テルト:「み、みみみ、見てません!」
    少なくとも、パンツは見てない。
美雪:「ふっふっふ、だって〜、光の頭はスカートの中だも〜ん。
   見られるわけないワヨネエ〜ッテ、見タト言ウナラ殺ス♪
誠:「むしろ、もし見てたら、さくら達に殺される」
テルト:「――同じく、です」
美雪:「オウケイ、ヨロシイ♪」
光:「……そぉいっ!!」
  美雪のスカートを捲り上げないよう、細心の注意を払って、顔を出す。
  こっちは準備万端だ! ミリィ、足止めを頼む!
ミリィ:「祖は招く、地霊の風穴、我は召ず、冥界への獄門!」
    さっきと同じく、ゴーレムの足元に穴を開ける!
    (ころころ)命中は11よ!
GM:(ころころ)回避失敗!?
   ダメージ判定してみて、その分、ゴーレムが埋まったことにします。
ミリィ:「屠れ屠れ、喰らえ喰らえ、汝、永劫の飢餓に苛まれたる龍なれば……!」
    (ころころ)16点っ!
GM:うげげっ、それだと、下半身がズッポリ埋まってそうだ!
   ゴーレムは、このターンは、回避不能です!
ティナ:「お兄ちゃん、私が先に仕掛けるよ!!」
    シュタシュタシュタッと大きくバックステップして間合いを取り、
    そのまま一気にゴーレムめがけてダッシュ!
    一撃目のダメージ判定に、ブースト1点使用!
    (ころころ)クリティカルして(ころころ)28点!
    さらに、二撃目は(ころころ)あっ(ころころ)ああっ!!
GM:まて、なんだ、その出目!?
   連続クリティカルなんぞしてんじゃねぇ!!
美雪:……あれ?
   何かな、この既知感……?
ティナ:「ツインスマッシュ! てやぁぁぁぁぁぁ!!」
    渾身の二刀が振り下ろされ、合計ダメージ60点っ!!
GM:(ころころ)防御を引いて、ダメージ42点……、
   ティーナの渾身の攻撃が、なんと、ゴーレムのちょうど装甲の薄いところに直撃!
   その巨体を、見事に粉砕した!!
ティナ:「あ、あれ……嘘? どうして?
    感触は、あんなに軽かったのに……!?」
    自分のやった事が理解できず、呆然としてる。
光:「普段の訓練の賜物だな。頑張ったな、ティーナ」
ティナ:「あ……うん! お兄ちゃんとの成果が出たんだね♪」
美雪:「ってことは、え〜と、どういうことなのかしら?
   ひょっとして、また……無償タダ見お代はいりませんな出血大サービスなわけ?」
ミリィ:「だ、大丈夫、今度は直に見せても居ないし、
    ぱふぱふもしてないんだから!」
美雪:「頭から被せたのに……、
   ドサクサで、鼻でつんつんされちゃったのに……、
   う、うふふふふふふふふふふ……」(壊)
光:「……さて、あっちの方はどうかな?」
  テルト達の方に撤退……いや、援護にいく。
美雪:「アハハハハハハ……ッテ、逃ゲンジャネエ、オラアアアアア!!」
光:「不可抗力だ! 弁護士を要求するぅぅぅぅ!!」
  テルトや誠達の援護に行く! 行かせてくれ!
GM:その必要はない。キミ達の戦闘が終わると同時に、
   テルトと誠の戦闘も決着がついてます。
光:逃げる口実がぁぁぁぁっ!!(泣)
GM:で、まあ、折角なので、
   残り2チームの戦闘描写もやっちゃいますね。


<誠&すばる&南チーム>

 すばると南を庇うように、風の魔法剣を振るう誠。

 脚力を魔力強化し、ゴーレムの周囲を駆け回りながら、何度も、斬り付ける。
 しかし、誠の実力では、ゴーレムに決定打を与える事が出来ない。

 南は戦力としては、あまり期待できない。

 頼りは、すばるしかいないのだが、
先日のラルヴァとの戦いで負傷したすばるに、無理をさせるわけにはいかない。

 彼女が満足に技を放てるのは、せいぜい1度きりだろう。

 その一撃に全てを賭け、誠は、
自らを囮役として、反撃のチャンスを窺っていた。

 ゴーレムの足元へと飛び込んだ、誠の魔法剣が、その太い右足を斬る。
 それでバランスを崩し、膝をつくゴーレム。

 その隙を突き、すばるが起死回生の一撃を放つ。

すばる「大影流奥義――地竜走波ぁぁぁっ!!」

 放たれた超振動が、
ゴーレムの全身に、無数の亀裂を生む。

 しかし、やはり、負傷の為か、
その攻撃に、本来の威力は無かった。

 すばるの奥義を受けて尚、ゴーレムは、その動きを止めない。

誠「離れろ! すばるさん! 火属性付与――接続!」

 と、そこで、誠が動いた。

 炎の護符から、炎の属性を剣に叩き込み、
燃え盛る魔法剣と短剣を、ゴーレムの体に……、

 すばるの攻撃によって生み出された亀裂の一つに突き立てた。

 誠が魔力を全力解放すると、剣の炎が、
亀裂を伝い、ゴーレムの全身へと、一気に広がる。

 その瞬間……その巨体の至る箇所から、一斉に爆発が起こった。

 誠は、攻撃を回避しつつ、
敵の全身に、炸裂弾を仕掛けていたのだ。

 それが、一度に爆発し、ゴーレムの体を粉砕する。

 無論、爆発の間近にいた誠もタダでは済まない。

 誠は、爆風に吹き飛ばされ、
何度か、地面の上を跳ね、そのまま気を失った。


<テルトーズ>

 魔法銀剣を振るい、ゴーレムに挑むテルト。

 しかし、非力ゆえに、何度、
斬り付けても、決定的なダメージを与えられない。

 同様に、キアーラも、ゴーレムの装甲を貫くことが出来ない。

 ジェシカの攻撃魔術とマイナの支援魔術の援護のおかけで、
何とか闘えているが、このままでは、時間の問題だ。

 敵も、次第に、前衛二人の動きに慣れてきたのか、テルトとキアーラを追い詰め始める。

 素早さの面において、キアーラよりも、遥かに劣るテルト……、

 敵は、まず、テルトを標的に定め、
何度も、その豪腕を振り下ろす。

 間髪入れず襲い掛かる岩の拳を、
テルトは、地面を転がるように、回避し続ける。

 その無様な逃げを見て、
調子に乗ったゴーレムは、さらに強烈に、拳を振り下ろした。

 それを、ギリギリで回避するテルト。
 豪腕が、地面にめり込み、一瞬、その巨体の動きが止まる。

 ――その瞬間、キアーラが動いた。

 地面に突き刺さったゴーレムの腕を駆け上り、顔面へと……、
 つまり、剥き出しの制御者本人へと肉薄する。

 そして……、

キアーラ「――チェックメイト」

 キアーラの握るマナブレイドが、
制御者の喉元に突きつけられ、勝敗は決した。


GM:――とまあ、こんな感じです。
ミリィ:まともな戦闘だっ!
美雪:それに引き替え、我らがお笑いPTは……、
ティナ:ミリィお姉ちゃんとのコンボとはいえ、一撃だったもんね。
    しかも、オチがついちゃったし……、





―― PHASE-08 立場が無いっ!? ――


美雪:「サア、コウナッタラ、覚悟トカソンナノ良イカラ、
   サッサト婚姻届ニ判オサンカイ!!
   大丈夫、何カアッテモワタシガ食ベサセテアゲルカラ〜!
   アハハハハハハハハハ!!!」(某言葉風壊れ笑い)
光:「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
テルト:「なんとか、終りましたね……って、どうしたんですか?」
    自分の背後に隠れる光に戸惑っています。
美雪:「トリアエズ、依頼人ノコトハイイカラ、
   ソコナ背後ニ隠レテル男ヲトットト引キ渡シナサイ。
   エエ、別ニドウコウスルワケジャナイノヨ?
   タダ、普通ニ男トシテノ責任ヲトッテホシイダケ……ウフ☆」
ティナ:「テルトさん、逃げてください〜!」(美雪を抑えつつ)
美雪:「エエイ、ハナシナサイ、ティーナ!!
   ココガワタシタチノウェディングベルノチャンスジャナイノヨ!!」(じたばた)
テルト:「なんだか、よくわかりませんけど……、
    すみません、ボクは力になれそうにないです」
    申し訳なさそうに、光を美雪に差し出す。
光:「う、裏切り者ぉぉぉっ!?」
ミリィ:「あ〜、あの子の事は気にしなくて良いから、いつもの発作よ」
    多分、オロオロしてるマイナ達に言う。
マイナ:「ま、まあ、何となく気持ちはわかります。
    私も、いつも幸薄いですから……」
ティナ:「も〜……仕方ないなぁ……えい!」
    美雪お姉ちゃんのお尻を触る。
美雪:「あ、ああ……ティーナったら、だめ……んっ☆」
ミリィ:「……ジェシカさん、そいつ、少し尋問良い?」
ジェシカ:「ええ、任せるわ……マイナ、あっちの子(誠)の治療をお願い」
ティナ:「お姉ちゃん? 少し落ち着こうね?」(さわさわ)
美雪:「あふ……や、やあ……そこ、弱いのぉ☆」
マイナ:「……汝らは、破廉恥なり」
    と、呆れつつ、誠の治療に向かう。
ミリィ:「さてさて、美雪も落ち着いたところで……、
    土竜さんには、一から無量大数まで、
    洗いざらい、軒並み、全部、吐いて頂きましょ〜か?」
土竜:「話せって言われても、俺は、
   そこの小僧達(テルトーズ)に、仲間をやられた腹いせに襲っただけだ。
   そしたら、こっちがしかける前に、お前等がもめてやがったから……、
ティナ:「それで、私達を巻き込んだ、と……?
    私だけならまだしも、お兄ちゃんやお姉ちゃん達を巻き込んだのは許せない!」
美雪:「ええと、その腹いせの内容なんだけど……、
   つまり、テルトさん達に、『依頼』をしたのは、貴方達ではない、と?」
ミリィ:「じゃあ、エルトの保護者、なんて嘘付いて、
    子供連れてくるように言った訳は?
    まさか、人質にするつもりだったとか、ちゃっちいこと言わないよね?」
ティナ:「それとも、どっかの組織に売るつもりだった、とか?」
土竜:「――はあ? 何の話だ?
   俺達は、ただの身代金目的の誘拐団だぜ!」(えっへん)
光:「――威張るなっ!(ぼかっ)
  しかし、ブッ飛ばしても、尚、違和感が消えない。
  ちょっと整理してみないか? だいたい、まだ、テルト達側の事情を聞いてない」
美雪:「そういえば……それを聞けば、状況が掴めるかしら?」
ティナ:「テルトさん達は、誰から依頼を受けたんです?」
テルト:「ボク達は、ちゃんと、治安局長さんから、
    エルトちゃんを送り届けるように頼まれましたよ?」
ミリィ:「保護者が誰なのか知らないのに?」
ジェシカ:「誰も、知らない、なんて言ってないわ。
     事情があって、言えないだけ」
ティナ:「南さん……そんな冒険者を、疑問に思わなかったんですか?」
南:「疑問には思ったけど……、
  局長(澤田真希子)が問題ないって言っていましたから」
美雪:「まあ、そこは、信頼できる仲間の話だから、
   任せてしまった、と考えて良いかもね」
ティナ:「人がどうこうとかじゃなくて、
    疑問に思った時点で調べてください!」
    まったく……この事、記事にしてやろうかな?
美雪:「結構、遺失物の管理等で、よく見受けられるミスだし……、
   そこは、以後気をつけて下さいで良しとしない?」
光:「俺も、師匠からの依頼って言われたら、ホイホイついて行きかねんし、
  こっちも、アヌーラさんから、話を聞いた段階で、
  確認しとかないといけない事もあった。
  何を考えてるかはわからないが……ここは、腹に収めてくれんか?」
  と、不満そうなティナの頭を撫でる。
ティナ:「私は、一応、記者だし……裏を取ってから動く方だから……、
    でも、お兄ちゃんがそう言うなら……」


 ……ティナ、割と拘るなぁ。

 まあ、確かに、傍から見れば、
治安局側の迂闊な行為が招いた結果に見えるし、当然か。

 おかげで、光や美雪に、
こうして、フォローまでさせてしまった。

 GMのシナリオ構成が甘さ故か……反省。


光:「――で、話を戻そう」
美雪:「私達は、アヌーラさんからの依頼で、
   エルトという少女の捜索を依頼されました」
ティナ:「で、その時、渡された似顔絵が、これなんです」(似顔絵を見せる)
美雪:「それを見てもらっても分かるように、
   エルトと言う少女は、テルトさんと一緒にいる彼女と、
   同一人物と言っても良いくらいに、そっくりなんです」
光:「それで、まあ、色々、事態がややこしくなってしまったわけだ」
テルト:「じゃあ、ボク達の事情もお話しますね。
    まず、ボク達は、コミパ地下迷宮の探索の、
    とある権利人から、迷宮探索の依頼を受けたんです。
    で、その探索中、偶然、土竜団のアジトをみつけました。
    どうやら、迷宮の中に潜伏していたようです。
    ボク達は、土竜団を倒し、今までに誘拐された子達を助け出し、
    治安局に保護をお願いしたんです。
    届出もあったので、子供達の身元は、すぐに分かりました。
    ただ、この子……エルティアちゃんの身元だけが分らなかったんです」
ミリィ:「エルティア? そっか……、
    その子の『エルト』って、愛称だったのね」
ジェシカ:「テルトちゃんの説明には、ちょっと語弊があるわね。
     正確には、身元を知っていたのが、治安局長だけだったのよ。
     で、ここからは、ちょっと込み入った話になるんだけど……」
テルト:「まず、エルティアちゃんはエルフです。
    そして、エルフの集落は、おいそれと、人に話すわけにはいきません」
ミリィ:「それは、分からないでもないかな」
ティナ:「私はチェンジリングだから、良くわからないかな」
美雪:「まあ、私達の場合、そこは感覚が麻痺しているところがあるから……」
光:「全種族、オールコンプリートだからな〜……」
ジェシカ:「そして、もう1つ……、
     この子の両親は……人間を信用していない」
ミリィ:「ウッドエルフの、特に森の奥に暮らしてるタイプだね」
ジェシカ:「なんでも、私達からすれば大昔に、
     エルティアの両親は、ミュルクサって名乗る人間達に、
     1人目の子供を奪われたらしいわ。
     治安局長は、その事情を知っていた。
     で、エルティアはテルトちゃんに懐いてたし、
     ハーフエルフのキアーラもいたから、
     私達に、彼女を送り届ける役目が回ってきたのよ」
光:「……どうやら、『エルト』は2人いる、と考えると、筋が通るみたいだな」
美雪:「そうなると、私達は、それぞれ、
   別々の『エルト』ちゃんの捜索をしていた?
   もしかして、これは仮定でしかない話だけど……、
   その、ご両親のお子様は姉妹……双子だった、とか?」
ジェシカ:「さあ? 私達も、治安局長から事情を聞いただけだし……、
     1人目の子が攫われたのは、もう何百年も前の事だし……」
美雪:「何百年も前……、
   さすがに、エルフとはいえ、大人に成長してるわよね」
光:「まあ、なんにしても……非常に申し訳ないが、
  どこからどう見ても、そっちの筋が通ってる。
  ややこしい事言ってすまなかった」
テルト:「いえ、こちらこそ……、
    失礼な態度をとってしまって、すみませんでした」
美雪:「そちらの事情は、大体、分かりました。
   無理を言ってしまい、申し訳ありません」
ミリィ:「アンタらが誘拐した『エルト』は、間違いなくあの子だけなのね?」
    チャンバースタッフの撃鉄を起こして、銃口を土竜に突っ込む。
土竜:「お、おう……名前は知らぇが、そのガキと同じ顔したのはいなかった」
ミリィ:「この状況で、嘘をつき通す剛胆な人間は、そう居ないわね」
光:「しかし、そうなると……、
  俺達が探している『エルト』は、何処にいるんだ?
  まだ、街の中にいるんだろうか?」
GM:では、そんな話をしていると、
   街の方から、弁慶とアヌーラが駆けて来ます。
弁慶:「おおっ、街の外が騒がしいから見に来て見れば、やはり、お前達か」
ティナ:「弁慶先輩! アヌーラさん!?」
アヌーラ:「皆さん、ご迷惑をおかけしました。エルトが見つかったんです」
美雪:「えっ? 見つかった?」
アヌーラ:「申し訳ありませんでした。私が、もっと、落ち着いて対応していれば……、
     すぐに、治安局なり、自警団の皆さんに相談していれば……」(ぺこぺこ)
ティナ:「その事で、私達も、ちょっとお話があります」
アヌーラ:「――はい?」
ティナ:「エルトちゃんが見つかったと言いましたよね。
    では、その証拠……つまり、エルトちゃん本人を出してもらえますか?」
弁慶:「証拠も何も……エルトは、街の商店街で、私が見つけた。
   どうやら、以前、とある冒険者から貰った花を落としてしまい、
   ずっと、それを探し回っていたそうだ。
   疲れたんだろう……今は、宿で寝ている」
アヌーラ:「エルトは、それを、凄く気に入っていているんです。
     貰った時は、花束だったんですけどね。
     旅をする間に、それ一輪だけになってしまいました」
ティナ:「じゃあ、あの子は、何なんです?」
    エルト……エルティアを指差す。
ミリィ:「昔、攫われたというあの子の姉妹にそっくりなエルト……、
    正直、気にならないと言えば嘘になります。
    もっとも、人間である貴方が、その犯人でない事は間違いないでしょうけど……」
アヌーラ:「他人の空似……では、ないでしようね。
     確かに、似ていますが……、
     それでも、エルトとその子とは、無関係です」
ティナ:「偶然ですね……昔、攫われた子の名前も、エルトっていうんですよ」
    隠し事を、全部、話してくれない限り、納得はしないよ。
アヌーラ:「……どうしても、話さなければいけませんか?」
ミリィ:「正直、誘拐犯と間違えられかけた身としては、聞かせて頂きたいです」
美雪:「貴女が望まないというなら、無理には聞きません。
   でも、もし、私達に出来る事があるのなら……」


アヌーラ:「私もエルトも、ホムンクルスです。
     できれば、これ以上は聞かないでください」

一同:「…………」


ティナ:「月花お姉ちゃんと同じ……」
美雪:「つまり、エルトちゃんも、エルフではない」
ミリィ:「そうですか……、
    心苦しい事をお聞きしたこと、お詫びします」
光:「これは、俺達が口出しできる事じゃ無いな」
アヌーラ:「家族なんていません。身内なんていません。
     これが、エルトと、その子が無関係という理由です」
ティナ:「『遺伝子的には同じ』かもしれませんけどね」(ぼそ)
美雪:「で、今の話ですけど……、
   この場にいる皆さんは……考えは同じ、ですよね?」
光:「俺は信じるし、口外するつもりもない」
ミリィ:「てか、言えるわけないでしょ?
    ま〜、長い人生、世界の秘密の3つや4つに触れる事はあるわよ」
ティナ:「記者としては、記事にすれば凄いネタになると思うけど……、
    『私』としては、墓の中まで持っていくつもりだよ」
アヌーラ:「そう言って頂けると助かります」
ミリィ:「ねえ、2人とも、行く宛とかある?
    私らの知り合いで、孤児院やってる神父さんがいるんだけど?
    あそこなら、ゆっくりするなら丁度良いよ? あんまり人も来ないし」
ティナ:「いざなったら、頼りにもなるしね」
光:「確かに、言っちゃなんだが、あの神父、俺より強いしなぁ」
  過去、悪戯がバレて、ケン玉でフルボッコにされた記憶が蘇る。(笑)
美雪:「そうねぇ……何処かに行く予定はあるんですか?」
アヌーラ:「はい、パルメアに行く予定です。
     実は、そこで知り合いと待ち合わせをしているので……」
ミリィ:「あ〜、予定あり、か〜」
ティナ:「う〜ん、それは残念だな〜」
ミリィ:「まあ、月日は百代の過客ってね。生きてりゃ、また会えるよ」
ティナ:「ミリィお姉ちゃんらしいね」(苦笑)
美雪:「縁があれば、いつかは……、
   もっとも、エルフ基準で考えられても困るわけだけど……」
テルト:「え〜と、それじゃあ、色々と誤解も解けたことですし、
    そろそろ、ボク達は、エルトちゃ――エルティアちゃんを送っていきますね」
美雪:「あっ、はい。どうも、ご迷惑をおかけしました」
ミリィ:「ごめんなさいね、なんか変な手間取らせちゃって……、
    ま〜、彼氏がこんなだと大変だろうけど、がんばって」
    と、テルトーズの女性陣を激励しておこう。(笑)
ティナ:「あ、その前に、テルトさん、ちょっと良いですか?」
テルト:「――はい?」
ティナ:「えっと……その……酷い事言っちゃって、ごめんなさい!」(頭を下げる)
テルト:「そ、そんな! 顔を上げてください!
    どんな事情であれ、ボク達だって、
    誤解されるような真似をしたんですから」(おたおた)
ティナ:「でも……私……」
美雪:「はいはい、お互い、けじめをつけるタイミングを外しちゃだめよ。
   一度謝ったら、謝られたら、それでおあいこ♪
   そうでないと、今度は逆に、テルトさん達を困らせることになっちゃうわよ。
   それは、ティーナだって嫌でしょ?」
ティナ:「うん、それは嫌だ……分かりました! 私、頑張ります!」
テルト:「ティーナさん、常に真実を探求し、自分の正義に真っ直ぐなのは、
    決して悪いことじゃないし、間違ってはいないと思います。
    あなたは、何も間違っていない。
    これからも、あなたらしく、自分の正義に胸を張ってください」
ミリィ:「そーそー、テルト、ついうっかりが重なっちゃって、ゴメンネ。
    光くらい、いい男になる素質あるんだから、
    ジェシカ達の事、しっかり護ってあげなさいよ」
テルト:「もろちん、そのつもりです……まだまだ未熟ですけどね」
ミリィ:「もーちょっと男を上げたら、
    美雪みたいに、色々、見せてくれるようになるかもヨ?」
光:「改めて、すまなかった。
  また、機会があれば仕合をしようぜ、今度は感情抜きでな」
テルト:「はい……次は、勝ちますからね」
光:「はっはっは、むしろ、
  今度こそ、力押しの強さを見せ付けてくれる」
ティナ:「あっ、そうだ! パーティーの皆さんと、
    一緒に、写真を撮らせてもらえませんか?
    『旅の途中で出会ったパーティ』って言う題で、記事を書こうと思うんです」
ミリィ:「……ティーナ、見せ損娘奮闘記、そんなに好評だったの?」
美雪:「あ〜ら、でか乳エルフ娘大乱闘冒険旅の間違いでしょ?」
ティナ:「ミリィお姉ちゃん、それ題名違う。
    美雪お姉ちゃんも喧嘩しないで〜!?」
ミリィ:「んっふっふっ、私らは、
    一度よーく話し合う必要あるみたいね、主に肉体言語で」
美雪:「な、何言ってるのよ!?
   あんた、まさか……そんな趣味があったわけ!?」
ミリィ:「……あんたは、まず、その妄想癖どうにかするべきね。
    その内、街中で、いきなり頬に手を当てて、やんやんとかは勘弁よ?」
美雪:「話し合うなら、言葉でやりなさいよ!
   そんな……触られたら……わたし、勝てるわけないじゃない」(真っ赤)
ミリィ:「お願いだから、そっちの方向性から離れて、ぷり〜ず」
ティナ:「え、え〜っと、写真……」
キアーラ:「職業柄、あまり顔見せは……、
     まあ、ここは、硬い事を言うのは野暮かな?」
南:「私達も参加したいところですけど……、
  誠君の容態が心配なので、私達は先に戻りますね」
弁慶:「では、その少年は、私が背負っていこう」
光:「うす、ありがとうございました。
  そして、苦労をかけて申し訳ありません」 
美雪:「でも、将来は一緒に光のお嫁さんになるわけだから、
   やっぱりそういう事も起こりうるわけで……、
   べ、別に、あなたを嫌ってるわけじゃないし……」
一同:「お〜い、帰ってこ〜いっ!」


 こうして……、
 無事、お互いの誤解はとけた。

 誠は、傷を癒す為、自警団へ――
 光達は、仲間達が待つコミパの街へ――
 テルト達は、エルティアを連れて森の奥へ――

 ――今、進むべき道へと戻っていく。

 光の獅子、清泉の騎士、員数外の英雄……、

 後に、英雄と呼ばれることになる、
若き三人の冒険者の、初めての邂逅であった。


GM:では、シーンの最後に……、
   エルティアを連れて去っていく、テルト達を見送りながら、
   アヌーラが、ポツリと呟きます。
アヌーラ:「良いですね、家族って……、
     正直、あの子が、羨ましいです。
     お母さんの料理って、どんな味なんでしょう?
     お父さんに抱きしめらるのって、どんな感じなんでしょう?」
ティナ:「きっと……百万の言葉でも表現できないと思いますよ」


 彼女の言葉に、どんな意味があったのか?
 どんなに深い想いが込められていたのか?

 光達が、それを知ることは、おそらくは、無いであろう。

 だが、光と美雪は――
 いや、正確には、光の美雪のPLは――

 ――いずれ、嫌でも知ることになる。

 アヌーラに隠された秘密と……、
 覆すことの出来ない、残酷な運命を……、




―― PHASE-09 逃げ場が無いっ!? ――


GM:では、シーンは変わって、次の日です。
   宿屋にいる皆さんのところに、治安管理局の澤田真希子がやって来ます。
澤田:「ごめんなさいね……、
   私が、変に気を回し過ぎてしまったせいで、
   なんだか、ややこしい事態になってしまったみたいね」
ティナ:「全く、一歩間違えれば、大変な事になってましたよ?」
ミリィ:「でも、まあ、結果的に……、
    と言うのも何ですけど、丸く収まりましたから」
美雪:「何にしても、疑問の大方は解決できたし……、
   それに、新しい友人もできましたから。
   お互い、今後は注意を払うってことで、良しにしましょうか」
光:「ま、結果オーライでいいんじゃないすか?
ティナ:「お兄ちゃん……ちょっと楽観的だよ」
美雪:「ここらへんを、私達でフォローしていかないとねぇ」
ミリィ:「あ、そうそう、誠君は大丈夫でした?
    かなりへばってたみたいですけど?」
ティナ:「もう、遠慮も手加減も無しでやったから……」
澤田:「ああ、彼? まあ、命に別状は無いわ。
   ただ、先日の爆発魔の事件でも、かなり無茶してたらしいから、当分は療養が必要ね。
   身体が動くようになったら、タカヤマにでも湯治に行く、と言っていたわ」
美雪:「ほんと、こう、なんて言うか……、
   どうして、彼女がいっぱいいる男って、無茶ばかりするのかしら?」
ミリィ:「あたしらが、それを考えちゃダメ」
ティナ:「そこを、私達が支えるんだよ」
澤田:「まあ、それはともかく……、
   私からは、こんなお詫びしかてきないけど……」
   と、皆の前に金袋を置きます。
ティナ:「……袖の下?」(もちろん冗談)
澤田:「あの土竜団のリーダを捕まえてくれたことへの報奨金よ。
   受け取ってちょうだい」
   というわけで、全員に500Gずつの報酬です。
光:「うす、有り難く頂きます」
美雪:「正直、背に腹は変えられない状況なので……ありがたく頂きます」
ティナ:「えっと……どうもありがとうございました」
ミリィ:「でも、良いんですか?
    担当だ、って言うから、九品仏って人に引き渡したんですけど?」
澤田:「ええ、問題ないわ。これは正当な報酬よ。
   それと、これは、迷惑を掛けちゃったことへの、私個人からのお詫び♪」
   と、13枚の船のチケットをくれます。
ミリィ:「重ね重ね、ありがとうございます」
美雪:「お姉さまって呼ばせてくださいっ!!」
ティナ:「美雪お姉ちゃん……、(汗)
    あの、局長さん、本当に良いんですか?」
澤田:「いいのよ、誠君からのお詫びの分も入ってるし……、
   あと、彼から、1つお願いしたいことがあるそうだから、
   その依頼料の前払い、かしらね」
ミリィ:「お願い? 彼、大抵の事は、
    自前でどーにかするタイプに見えたけど……何かあるのですか?」
澤田:「誠君から手紙を預かってきたわ。
   この手紙をHtHの王女『園村はるか』さんに渡して欲しいそうよ」
ミリィ:「国のトップに直に……無茶言うわねぇ……、
    でも、まぁ、受けないのもただの人でなしか」
美雪:「まあ、一国のトップの彼氏だから、
   そこのところは大丈夫だとは思うわ。
   ただ、うーん、そっか、転送便だとお金かかるようだし」
澤田:「それについては問題無いわ。彼の名前を出せば会ってくれる。
   噂通りの人物なら、出さなくても会ってくれるでしょうけど」
ミリィ:「それ、国の防衛システムとして、色々問題有るような……」
GM:でも、それが、あの国の良いところですから。(笑)
ミリィ:あのリベラルな空気は、マスタリングが難しいのよ。
澤田:「じゃあ、そういうことで、お願いね」
光:「ほんじゃ……皆に声をかけて、船に向かおうか」
澤田:
「ああ、そうそう……、
   
予算の関係上、船室は全員で大部屋1つだから♪」
   と、言い残して、澤田局長は帰っていきます。
美雪:「い、いい、今から、一言いっておくわよ!」
光:「――お、おす!?」
美雪:「い、い、一緒の部屋だからって、
   変な事したら承知しないからね!!
   まだ、結婚も婚約もしてないんだからっ!!!」
ティナ:「美雪お姉ちゃんも、したいならしたいって言えばいいのに……」
美雪:「したいとか、そういう問題じゃなくて、
   これはけじめの問題なのっ!! ちゃんと将来の見通しも立てずに、
   そうそう軽みはずみなことできるわけないじゃない!!」
光:「…………」
  こそこそと、その場から退散する。
ティナ:「お兄ちゃん、何処行くの?」(がしっ)


ミリィ:
「こ・づ・く・り、しまっしょ♪」
ティナ:
「お兄ちゃん……私の初めて……あげるね」
美雪:
「ま、まあ、光なら、
   
別に口約束でも、構わないんだけど……」





光:「……船の上、俺の逃げ場は、多分ない」(泣)

一同:――辞世の句!?(爆)





<おわり>
<戻る>


注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。

注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
    その為、今後、ルールが改訂される場合があります。