キュリオ:色々あったけど……、
ようやく、砂漠から脱出できたにゃ。
カイン:あまり儲けは無いけどな。
エル:キャラバン隊の護衛も、無事、終わりましたし、
あとは、タイプムーンに戻るだけですね。
ヴァル:ふむ……だが、一つ、気になる事があるのだがね?
キュリオ:パールさんのこと……?
何か、ボクにだけ、態度がキツイよね。
エル:ガラディーンの事を気にしていた様子ですし……、
もしや、アランの失われた記憶と関係が?
カイン:何となく、予想は出来るねんけど……、
いくらなんでもな〜……、
キュリオ:時間軸が違いすぎるもんね。
ヴァル:まあ、それを言ったら、アランだって同様なのだが……、
そのへんも、いずれは、ハッキリさせたいところだね。
GM:前回のおさらいは、終わりましたか?
それじゃあ、シナリオの続きを始めます。
一同:お〜っ!!
『Leaf Quest
TRPG』テストセッション・リプレイ
ばかっぷら〜ズ冒険譚 4
『日輪と赤月の騎士』 後編
―― PHASE-14 トレマの村に到着 ――
GM:グラボイズの群れを退けた、皆さんは、
キャラバン隊を無事、トレマの村へと送り届けることが出来ました。
エル:ようやく、到着ですか……、
ちなみに、トレマの村は、どんな雰囲気なんです?
GM:ごく普通の、のどかな村ですよ。
村人達は、予定を大幅に遅れて到着したキャラバン隊を迎え入れています。
ヴァル:こういう村にとっては、
キャラバン隊は、貴重な物資調達手段だろうからねぇ……、
GM:ちなみに、もう日暮れ時です。
村に一軒しかない小さな宿屋ですが、
キャラバン隊の商人が、皆さんの為に部屋を用意してくれますよ。
ヴァル:それは助かる……すでに気絶寸前だ。(←残りMP5)
カイン:それって、宿代はタダなん?
GM:もちろん、タダですよ。
てか、商人さんが払ってくれます。
ああ、それに、村に到着した時点で、報酬も渡してくれますよ。
ヴァル:全員で1000Gだから、一人250Gだな
エル:ここまで至れり尽せりとは……、
少し、心苦しいものがありますね。
GM:まあ、本当なら、もっと払っても良いくらいの闘いでしたからね。
エル:ある意味、現物支給と考えて良いかもしれません。
冷房薬と結界薬の代金も、払ってくれたわけですから。
カイン:爆裂弾2発分……赤字やん。(泣)
リーラ:外したカインが悪いですぅ。
キュリオ:「あんまり、ゆっくりもしてられないよ〜!
早くしないと、アランが〜っ!」
商人:「嬢ちゃん、何を急いでるかは知らんが、
夜の砂漠は、もっと危険だ。一晩休んでいった方が良いぞ?」
エル:「キュリオ、はやる気持ちは分かりますが、冷静になってください」
カイン:「おっちゃんの言う通りや。暗闇で虫の相手したないやろ?」
キュリオ:「う〜……」(大人しくなる)
カイン:「まあ、取り敢えず、今は休んで、明日の朝に出発やな」
GM:では、そういう事で、各自、宿で休んでくださいね。
ちなみに、一人一部屋ずつ用意してくれましたので、好きなようにお過ごし下さい。
キュリオ:じゃあ、ボクは、部屋で武器の手入れかな?
グラボイズ相手に、割と酷使した気がするし……、
エル:夜中に起き出して、前の戦闘で、
パールの手を煩わせてしまった反省から、剣の鍛錬をします。
ヴァル:今後の課題として、マハザンを覚える為に、魔術書でも読んでいよう。
カイン:あ〜、じゃ、キャラバンのおっちゃんらと世間話しながら、
パールについて、それとなく聞いてみるで。
キュリオ:ありがと〜、カイン!
ボク、あんまり好かれてないみたいだし、
ちょっと声を掛け難かったんだよね。
商人:「ん〜? パールさんのことが訊きたいのか?」
カイン:「あの姉ちゃん、凄い腕前やしな。ちょっと気になるわな」
商人:「まあ、確かに、えらく強い女だな……、
でも、俺達も、旅先で護衛に雇っただけで、詳しくは知らないぞ?
彼女も、自分の事を話そうとしないしな」
カイン:「まあ、冒険者なんて、訳ありは普通か……、
でも、あの姉ちゃん、ウチらの連れに、
エライ対応冷たいけど、いつもあんな感じなん?」
商人:「いや、そんなことはねぇぞ。
確かに、冷たい感じはするが、暇な時は、ガキどもの面倒も見てくれたりするしよ。
あの態度にゃ、俺達も、面食らってるくらいだ。
ところで、嬢ちゃん? 今から、皆でカードでもやらないか?」
カイン:「……レートは?」
ちゃらら〜ん♪ 袖から、微かに自前のカードが見えてたり。(笑)
エル:イカサマ前提ですか?
ヴァル:まあ、カインだからな……、
エル:なるほど、納得……、
まさに、乳出し爆殺強欲商人らしいですね。
リーラ:流石は、乳出し強欲商人ですぅ。
カイン:よ〜し、君らとは、いっぺん、
きちんと話し合う必要があるみたいやな、主に銃弾で。(笑)
GM:今更、変えようも無い共通認識ですよ。
商人:「レートは、そうだな……、
軽く1口10Gでどうだ? もちろん、イカサマは無しだぜ?」
カイン:「クックックッ……、
手加減せんから、覚悟し〜や」
GM:とまあ、そういうわけで、
カインは、そのまま、商人達とカードに興じてて下さい。
ところで、キュリオは、部屋にいるんですよね?
キュリオ:うん、武器のお手入れしてるよ。
前回のクリティカルで、ちょっと刃が痛んじゃった。
GM:では、突然、ドアがノックされた後、
ドアの隙間から、紙切れが差し込まれます。
キュリオ:「……?」
手を休めて、その紙を見てみるよ。
GM:『お前と話がしたい。皆が寝静まったら、村の郊外に来て欲しい。
ただし、必ず、お前一人で来い。
お前が知りたいと思っている事を教えてやろう。 パール』
と、書かれています。
キュリオ:……じゃあ、行かなきゃダメだよね。
GM:では、真夜中になります。
砂漠での戦闘に疲れたのか、皆、グッスリと眠っているようです。
キュリオ:じゃあ、村の郊外まで行くよ。
もちろん……一人でね。
―― PHASE-15 赤月の騎士 ――
GM:キュリオが村の郊外に行くと、パールが、あなたを待っています。
今、彼女は、何を想っているのか……、
キュリオの気配は察している筈なのに、あなたに背を向けたまま、
ジッと遥かに広がる砂漠を見つめています。
キュリオ:「……こんばんは」
パール:「…………」
キュリオが話し掛けても、
パールは黙ったまま、あなたを見ようともしません。
キュリオ:「パールさん……?」
パールさんの様子を訝しく思いつつ、歩み寄る。
GM:と、キュリオが近付くと……、
パール「――ラグネル、覚悟っ!!」
振り向きざま、パールは、戦輪を振るい、
キュリオに襲い掛かってきます。
キュリオ:「にゃ……っ!?
たんまたんま! ばーちゃんが、ど〜したっての?!」
緊急回避……って、出来る?
GM:回避は可能です。本来の実力差なら無理でしょうが、
今、パールは、激昂し、感情的になっているので、動きが精細に欠けています。
パール:「何故、お前がここにいる!
何故、お前が『彼』の剣を持っている!
『彼』を裏切った、お前がっ!!」
キュリオの声は届いていないようです。次々と攻撃を仕掛けてきます。
キュリオ:「ちょっと待ってよ! これは、アランから預かっただけで……!」
え〜い、これじゃあ、話しにならないよ!
組み付いて動きを止める!
パール:「『彼』に呪いを解いてもらっておきながら、
お前は、たった七年で、『彼』を捨てた!
『彼』の子をその身に宿していながら、『彼』の前から姿を消したっ!
しかも、『彼』の剣を……ガラディーンまで盗んだっ!!
やはり、お前は醜き女だった!
例え、呪われていなくとも、『この世で最も醜き女』だっ!」
組み付こうとすると、素早く武器を振るい、キュリオを寄せ付けようとしません。
ですが、キュリオを罵倒する声には、少しずつ、涙が混ざり始めています。
キュリオ:「あ〜もう、聞いてよ、人の話を!
この剣が、ガラディーンだなんて、
ボク、ちょっと前まで知らなかったってば!」
パール:「なにを白々しいっ! お前に裏切られ、『彼』がどれだけ悲しんだか……、
『彼』がどれだけ苦しかったか……、
それでも『彼』はお前を愛し続けていた!
お前えさえ、お前さえいなければ……私が……私は……っ!!」
涙を流しながら、半狂乱のパールは、
両手に持った戦輪を重ね、キュリオに向けます。
そして、戦輪に魔力が集束していき……、
ヴァル:(就寝中)もしや、砂漠で見た、あの魔力波は……、
エル:(就寝中)そのようですね……、
パール:「『赤き月光の(ローエン)――戦輪(グリン)』!」
パールが真名を唱えると、赤い魔力波が、キュリオに放たれます。
エル:(就寝中)某種の大天使ですか?
GM:イメージ的には、アー○エンジェルの主砲。(笑)
カイン:(博打中)やっぱり、元ネタは、そっちかいな……、
ってか、さっきから、ウチら暇やな〜。
確かに、キュリオ以外は暇だろうな〜。
まあ、シナリオ作ってた時点で、
こうなる事は、分かってはいたんだけど……、
とはいえ、ここは、重要なシーンなので、
他のメンツには、もう少しだけ、我慢して貰おう。
キュリオ:「――うにゃああああっ!?」
魔術攻撃なの?! それは避けられない!!
GM:魔力波が、キュリオに襲い掛かります。
そして、彼女に命中しようとした、その瞬間……、
セイバー:「――そこまでですっ!」
間一髪、飛び込んできたセイバーが、その攻撃を剣で弾き上げます。
キュリオ:「セイバーさん……!?」
セイバー:「両名とも静まれっ! 我が名は、アーサー=ペンドラゴン!
かつての、フィルスノーンが騎士王なりっ!
我が名において、この勝負、私が預かるっ!!」
セイバーは、二人の間に立つと、ザンッと剣を地面に突き立て、
有無を言わせぬ貫禄で、言い放ちます。
パール:「――わ、我が王!?」
キュリオ以上に、パールは、セイバーの乱入に、驚いている様子です。
セイバー:「久しぶりですね……サー・パーシヴァル」
パール:「王よ、どうか、私の我侭をお許しください!
私は、その女を……ラグネルを許すことなど出来ないっ!」
セイバー:「落ち着きなさい……、
彼女の名はキュリオです。
よく似ていますが、ラグネルではない」
パール:「そんな……しかし……っ!!」
セイバー:「……私は『静まれ』と言ったぞ」
パール:「――っ!!」
セイバーに強く言われ、パールは戦輪を取り落とし、ガクッと膝をつく。
そして、ポロポロと涙を流し、子供のように泣きじゃくる。
「だって……だって……私は……、
ボクは……あ、うう、わぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!!」
セイバー:「相変わらずですね、貴女は……、
騎士としての仮面を取ると、幼い子供ようだ」
リーラ:(就寝中)パールさんって、実は『ボクッ娘』だったんですねぇ。
エル:(就寝中)ボクッ娘って、今、流行りなんですかねぇ?
リーラ:(就寝中)今はツンデレだと思いますけどね。
とか言ってるうちに……、
ツンデレの時代は去り――
今や、時代は、真の意味での『男の娘』――
つまり、LQにおいては、
まさに、イルスの時代となったわけです。(笑)
キュリオ:「え、えっと……?」
あまりの急展開に、呆然としてる。
どうして、セイバーさんが、ここに……?
てか、パーシヴァルって……、
やっぱり、パールさんって、そうなの?
セイバー:「私の部下だ失礼をした。彼女に代わり、非礼を詫びよう」
キュリオ:「あ、ううん、セイバーさん助けてくれたし、
てゆ〜か、ホントに危ない所ありがと〜」(泣)
セイバー:「そう言って貰えるとありがたい。
しかし、本当に良い日が続くものです。
こうして、かつての部下に会えるとは……しかも、二人も……」
キュリオ:「あ、あの……パールさんが、さっき言ってたんだけど……、
ラグネルがアランを……、
ガヴェインを裏切ったって……どういう事?」
セイバー:「わかりません……、
おそらく、ラグネルが、ガヴェインの元を去った事を言っているのでしょうが……、
詳しいことは、私にも……、
っと、それよりも、例の水と花は見つかりましたか?
見つかったのなら、今すぐ渡してもらいたい」
キュリオ:「あっ、うん、ここに……」
精霊水の水筒とセントランは、ボクが持ってたもんね。
ヴァル:(就寝中)ふむ、そうだったな……、
ただ、水筒には『カイン対策』の封印が施してあるぞ。
しかも、私じゃないと解除できん。
セイバー:「ガヴェインが、大変危険な状態なのです。
彼を救うには、一刻も早く、精霊水と、セントランが必要です」
キュリオ:「……っ!」
そんなこと聞いたら、顔が真っ青になっちゃうよ。
セイバー:「私が、それを持って、先に戻るつもりでしたが……、
その水筒には、封印があるようですね。
そういうことなら、明日の朝、一番に出発しましょう。
魔物は私が蹴散らすので、安心しなさい……」
キュリオ:「うん……」
一見、落ち着いてるように見えるけど、内心、気が気じゃない。
エル:(就寝中)全員、今すぐ叩き起こして、強行軍とか……、
ヴァル:(就寝中)騎士王殿が一緒なら、それも可能かもしれんがね〜。
セイバー:「パーシヴァル……貴女も、もう充分に泣いたでしょう?
後で、いつものように、彼に慰めてもらいなさい」
と、セイバーはパールを立たせ、村へと連れて行きます。
キュリオ:じゃあ、ボクも付いていこう。
感情に任せて、アランの所へ走り出したくなるのは理、性でカバーする。
GM:では、翌朝となりまして……、
キュリオ以外の人が起きると、何故か、セイバーがいます。
エル:「セイバー!? 何故、貴女がここに……?」
カイン:「お〜、儲かった、儲かった……ほえ、王様やん?」
ヴァル:「騎士王殿が此処にいる、という事は、火急の事態ですかな?」
エル:「もしや、アランの容態が……?」
セイバー:「詳しい話は道中でします。
今すぐ、砂漠を抜け、タイプムーンー向う。準備はよろしいですか?」
キュリオ:「――うん!」
既に、準備万端だよ。
ヴァル:「しばしお待ちを……隊商の者に一言別れをば」
カイン:「まあ、一応、挨拶はしとかんとな。
義理もあるし……儲けさして貰ったし……」
エル:「そうですね。急ぐにしても、最低限の礼儀は守らねば……」
商人:「おう、もう出るのか? 気をつけてな」
キュリオ:「あぅ……」(←既にラスティ状態)
カイン:「ん、おっちゃんらも気ぃつけてな」
商人:「嬢ちゃん……次は負けないからな」
カイン:「はっ、いつでもこいや」
エル:「皆さんもお気を付けて。
貴方達に、二柱の女神の加護あらん事を……」
ヴァル:「慌しくの出立で、満足に挨拶もできんのは心残りだが、
他の者にも、ヨロシク伝えて置いてください」
リーラ:「ばいば〜い〜♪」(←ますた〜のポーチから)
商人:「おう、達者でな。また会おうぜ〜」
と見送られ、皆さんとセイバーとパールは、村を出ます。
GM:で、セイバーがグラボイズを蹴散らしながら進み、
寝る間も惜しんで、砂漠横断。
数日後、タイプムーンに到着です。
一同:――早っ!!
ヴァル:さ、さすが騎士王殿……、
我々が手こずったグラボイズなど、雑魚以下か……、
GM:まあ、禁断症状で、ブースト入ってますし……、
もう、数日間、士郎のご飯食べてないから。
一同:な〜るほど。(笑)
―― PHASE-16 熱死病とヨクナール剤 ――
GM:さて、皆さんが衛宮宅に到ちゃ――
キュリオ:「――アラン〜〜〜!」
すくらんぶるだっしゅで玄関へっ!
GM:――到着すると、士郎が出迎えてくれます。
エル:「士郎! アランの容態は?」
ヴァル:「騎士王殿を使いに出すくらいだ……余程、悪いのか?」
士郎:「かなりの高熱だが、大丈夫だ。ところで、水と花は?」
エル:「キュリオが持っています……キュリオ?」
キュリオ:「こ、これ……」(ぜーはーぜーはー)
ヴァル:「水筒は、一度こちらに渡してくれ、封を解かねばね。
『我が花の名を此処に封を解く――ライラック』」
リーラ:「きゃん♪ ますた〜ってば♪」
カイン:「普段から、スルーとしる割には、充分、意識しとるやん」
士郎:「確かに、受取った……あとは、遠坂に任せろ」
エル:「しかし……この水は、凛も必要としていたのでは?」
士郎:「遠坂が欲しいのは、水に宿る精霊力だけだからな」
エル:「では、後は、稀代の宝石魔術師殿に託しましょう」
士郎:「これを遠坂に渡してくる。皆は、ここで待っててくれ」
士郎は、皆さんを居間に通すと、そのまま、凛の部屋に行きます。
そして、居間で待つこと、小一時間、薬の調合を終えた凛がやって来ます。
ヴァル:小一時間って、薬の調合って、そんなに早くないと思うが?
GM:だって、パルフェシリーズでは、一時間単位で出来ちゃうんだもん。
まあ、それはともかく、凛は、皆さんの前に座ると、薬をテーブルの上に置きます。
凛:「まずは、お礼を言わせてもらうわ。
あなた達のおかげで、今回はあいつに勝てそうよ」
エル:「それは何よりです。私達も、苦労した甲斐がある、と言うものです」
ヴァル:「競争は否定せんがね。
魔術師の本分は自己研鑽だと……言うまでも無いな」(苦笑)
カイン:「ん、まあ、コッチも仕事やったしな。
これで、負けたら大笑いしたるけど……で、アランの方はどうなってん?」
凛:「そのことだけど、この薬を飲ませれば、彼の病気は治るわ」
と、凛は、テーブルに置いた薬瓶を示します。
エル:「この薬ですか……感謝します、凛」
凛:「でも、その前に、話しておかなきゃならないことがあるの」
カイン:「……副作用とか?」
凛:「まあ、ある意味ね……、
彼の病状なんだけど、熱死病だったのよ」
GM:熱死病とは、古代魔法王国時代にみられた不治の病で
体の熱が徐々に上がっていき、体力や体の水分を奪い、眠るように死に至る病気です。
この熱死病ですが、
かつて、フローレが患った病気です。
パルフェによって、病は治りましたが、
後遺症として、彼女の瞳は光を失ってしまいました。
そして、フローレを助ける為に、
パルフェもまた、大きな代償を払っています。
熱死病とは、それ程の難病なのです。
凛:「熱死病の特効薬であるヨクナール剤……、
つまり、セントランと精霊水で作った、この薬なんだけど……、
あなた達に、この薬を飲ませる覚悟があるかどうか、それを訊きたいのよ」
ヴァル:「危険な薬、なのかね?」
キュリオ:「……どうするの?」
エル:「まさか……口移し、とかではないでしょうね?」
凛:「ご名答。ヨクナール剤を飲ませるには、口移ししなきゃ効果が出ないわ。
それと、もう一つ……これが一番の問題……、
この薬は、薬とは名ばかりのシロモノでね、
飲ませた者の生命力を分け与え、その力で強引に病気を治すものなのよ。
簡潔に言うと……約二十年分の寿命を分け与えることになるわ」
キュリオ:「――判った、口移しで飲ませれば良いんだね」
早速、薬瓶を持って、アランの所に行くよ。
カイン:「ちょい、まち」
キュリオの首根っこを掴む。
エル:「キュリオ……待ちなさい」
ヴァル:「……考えての行動なのだな?」
キュリオ:「ボクなら大丈夫だから、安心してよ」
パール:「そのアランとは、ガヴェインなのだろう? ならば、私が――」
と、パールが、キュリオから薬瓶を奪おうとしますよ。
キュリオ:「パールさんは人間でしょ?
長生きしても100年……でも、ボクなら――(帽子を取って、ネコミミ)
――リュンクス族は長寿、エルフにもひけは取らないよ」
エル:「キュリオ……止めても無駄なようですね」
カイン:「……は〜、まあ、しゃーないか、キュリオやしな」
ヴァル:「本人が考えての末、出した答えならば……それで良いんだろう」
キュリオ:「――ね、任せて」
パールさんに微笑み掛けて、すぐさまアランの所に行くよ。
パール:「くっ……」
パールは、悔しげに歯噛みし、キュリオの後に続きます。
セイバー:「そう、この役は、まさにキュリオが適任でしょう。
かつて、ラグネルが、ガヴェインにしたように……、
これも運命か、ただの偶然か……、
ガヴェインは、一度ならず二度までも、
リュンクスに命を救われることになるのですね。
しかも、まったく、同じ状況で……」
エル:「――と言う事は、過去にも同じ事があったのですか?」
セイバー:「本来、ガヴェインは30歳を越えているはずです。
ですが、彼は見ての通り、まだ二十歳くらいでしょう?」
かつても、彼は、熱死病に犯され、同じように、
ラグネルから命を分け与えられた、と聞いています。
それ故に、老化が遅くなっているのでしょう
エル:「そうか……そう言う事ですか……」
ヴァル:「ふむ、寿命の受け渡しは、
種族間での違いを換算していた、と言うことにもなりかねんな」
リュンクス1000年、人間100年なら
人間20年=リュンクス200年となり、キュリオの寿命は200年縮むことになる。
エル:逆を言えば、人間の寿命は200年延びることになりますね。
凛:「二次感染はないだろうけど、
一応、あなた達は、こっちを飲んでおきなさい」
そう言って、凛は別の薬を皆に渡します。
ヴァル:「予防薬か、何かかね?」
凛:「竜の因子を持つセイバーの血を、精霊水で薄めたものよ。
発病する前なら、これで充分。副作用もないでしょ」
エル:「それは……恐ろしく貴重ですね。謹んで頂きます」
カイン:「……血か〜、まあ、しょうがないか」
ヴァル:「竜の血……」(←その貴重性は重々承知)
凛:「さてと、これで、問題は片付いた事だし――」
カイン:「そうやな〜……、
ここからは、大事な話せんとな〜」
GM:と、皆さんが報酬の話を始めたところで、
場面を、アランがいる客間へと移しますね。
キュリオ:「アラン……」
アランの側に駆け寄って、直ぐに瓶の蓋を開けて中身を口に含む。
そして、そのまま口移し……色気も何もあったもんじゃない。
一応、乙女として、目を瞑ってるけどね。
GM:事情を知る桜とライダー、
そして、パールは、目を逸らしています。
アラン:「うっ……」
アランの喉がこくこくと鳴り、
キュリオが唇を離すと同時に、アランは目を覚まします。
キュリオ:「アラン――」
パール:「――ガヴェイン!!」
パールが、キュリオを押し退け、
アランの胸に飛び込み、泣きじゃくります
キュリオ:「――あぅっ!?」
ここまできて、シリアス台無し!
ギャグキャラチックに吹っ飛ばされる。
パール:「ガヴェイン……やっと見つけた……やっと会えた」
アラン:「うおっ!? な、なんだ?
じ、事情は知らんが……その、女に泣かれると、困る。
取り敢えず、ミルクでも飲め。きっと元気になる」
見知らぬ女性に抱きつかれ、アランは狼狽えています。
パール:「記憶を失っても、相変わらずなのね、貴方は……」
アラン:「キミは誰だ? 俺のことを知っているのか?」
パール:「私の名はパーシヴァル……貴方の――」
そこで言葉につまり、自分の浅ましさを嫌悪するような表情を浮かべます。
そして、小さく首を横に振ると……、
「私は、貴方の仲間だった騎士の一人よ……ガヴェイン」
アラン:「やはり……俺は、ガヴェインなのか?」
パール:「そう、貴方はガヴェイン……、
遠い過去の世界で、私と共に円卓に名を連ねた騎士の一人……」
キュリオ:「アラン〜〜〜〜っ!」(復活)
殆ど泣きじゃくり状態で、パールさんの反対側から抱きつく。
アラン:「と、キュリオ!? 良かった、無事に戻ったんだな?」
キュリオ:「うぅ……花の精霊王様にセントランもらって、
それで凛ちゃんに薬作ってもらって、
どうにか助かったんだから、今はボクより自分の心配してよ〜」(泣)
アラン:「そうか……済まない、世話になったな、キュリオ」(なでなで)
キュリオ:「えへへ……」(てれてれ)
GM:と、そんな良い雰囲気の二人の間に、
再び、パールが割って入ります。
パール:「事情は訊いてるわ。記憶が無いのね?
大丈夫、何も心配することはないわ。
貴方は、もう一人じゃない、同じ円卓の騎士であった私がいる。
これからは、私が貴方と共にあろう。
ボクが……貴方の記憶を取り戻してあげる」
そう言うと、パールは、アランから身を離し、キュリオに向き直ります。
キュリオ:「パールさん……負けないからね」
にっこりと、手を差し出すよ。
パール:「というわけだ……、
彼が回復したら、今後、彼は私と行く。
貴公らとは、これでお別れだ」
そのキュリオの手を、パシッと叩き払う。
キュリオ:「へ……?」
パール:「彼の命を救ってくれたことには感謝する。
だが、彼はアランではない、ガヴェインだ。
ならば、同士であった、私といる方が、記憶が戻る可能性も高いだろう?」
キュリオ:「ボクが一緒に過ごして来た、アランの思い出は?
パールさんにとっては、サー・ガウェインかもしれない。
でも、ボクにとって、彼はアランなんだよ。
そう簡単に、はいそうですかって譲れない。
もう暫く一緒にいて、彼自身に決めて貰った方が良いと思うよ」
パール:「それは、私とて同じだ……ならば、彼に決めてもらおう」
エル:まるで、どっちが妻で、どっちが愛人かって聞いているようですね?
ヴァル:いや、二股掛けがバレて『どっちを取るの!』の方が適切ではないか?
リーラ:と、言うか、アランさんは、
病み上がりなんだから、あまり、無理させちゃダメですよ〜。
アラン:「……すまない。
急なことで、混乱しているんだ。
少し、一人で考えさせてくれ」
桜:「薬を飲んだとは言え、まだ、体調は悪いんです。
少し、休ませてあげましょう」
桜が、キュリオとパールを窘めつつ、半ば強引に客間から追い出されます。
キュリオ:「うん……じゃあ、アラン、早く良くなってね」
ほっぺに『ちゅ☆』として居間に戻るよ。
パール:「うっ……では、ゆっくり療養を」
『ちゅ☆』は、恥ずかしくて出来ないので、
ギュッと手だけ握って、客間を出る。
リーラ:キュリオさんが、一本先取ですね♪
―― PHASE-17 あかいあくま vs 守銭奴
パート2 ――
GM:というわけで、二人が居間に戻ると、
ちょうど、凛とカインが、依頼料の話をしています。
キュリオ:「よかった……アラン、助かったよぉ」
居間に入った途端、気が抜けたように、ペタッと座り込む。
ヴァル:「うむ、キュリオ、お前さんには異常は無いか?
何しろ、自身の寿命を渡したのだろう?」
キュリオ:「特に違和感は無いけど……?」
ヴァル:「まぁ、報酬話は(不安だが)カインに任せて、少し安静にしてなさい」
昂ぶると、自身の異常に気が付かない事もあるからね。
キュリオ:「無茶言わないように、ツッコミ入れてね……」
横になって、そのまま、ス〜ス〜と寝息を立てる。
GM:では、眠ってしまった、キュリオの横で、
凛とカインの話は……決着ついてるのかな?
カイン:ついとるわけないやん。(笑)
「――だから、アレはレアもんやってんから、
もうチョット、報酬に色つけてもええやん」
エル:「カイン、あまり無理を言うものではありませんよ」
凛:「なによ、わざわざ、彼の病気まで治してあげたのに」
カイン:「それは、確かに感謝はしてるけど、それはそれ、これはこれ!!」
凛:「確かに、あの精霊水は、予想以上の質だったけど……」
エル:「人一人の命が助かったのです。それで充分ではないですか?
命は何者にも代えがたいのですよ、カイン」
カイン:「ええい、エルやん、うっさい!
いくら冷房薬使ってたからて、クソ暑い砂漠歩いて、
大量の虫と戦っての強行軍て、ドンだけしんどかったか!」
ヴァル:「あ〜、追加の報酬云々は、後でじっくりと話し合えば良いだろう?
先ずは、規定の分を清算すれば良いのではないかね?」
凛:「そ、そうよ! とりあえず、領収書よこしなさい!
水増ししてないでしょうね?」
カイン:「ああ、別に水増しなんかしてへんで」(微妙に視線が泳ぐ)
リーラ:領収書には、『衛宮 凛』の文字が……、(爆)
エル:「二柱の女神に誓って、そのような不正はしていないと誓います。
名義の所は、ツッコミは勘弁願いたい。クレームはカインに付けてください」
凛に問題の領収書を渡します。
凛:「(領収書を受取り)……なにこれ?」
カイン:「……領収書やん」
エル:「カインの悪ふざけの結果です」
凛:「この『衛宮 凛』って書いて、消してあるのは?」
ヴァル:「金額に間違いは無い。それは大丈夫だ。
領収書は、将来の名義に対して振り出されるモノでは無いしね。
今、現在の名義に訂正したまでだが、問題があったかね?」
カイン:「あ〜、店のおっちゃんが間違えてん。
まあ、別に大して意味は無いからええやん」
凛:「ふふふふ……ふ〜ん、そう……、
つまり、『私がこの姓になることは有り得ない』と、そう言いたいわけね?」
エル:「確かに、この場合は、家柄の関係上、
士郎の方が『遠坂 士郎』になるべきですよね」
桜:「エルヴィンさん……それは、聞き捨てならないんですけど?」(にっこり)
エル:「何故ですか、桜? 仮に士郎と凛が結ばれた場合、
士郎が遠坂の籍に入るのが、順当だと思うのですが……?」
カイン:「いや、なあ、別にそんな意味は無いねんけど……、
ちょっと、王様からも、何か言うたって〜な」
セイバー:「……ほう、これはなかなか面白い冗談だ」(聖剣ちゃき〜ん)
カイン:「はっ、えっ? 何で、ウチの首に、
ものごっつお宝な剣がつきつけられてんの?」(汗)
領収書のネタを出した時から、予想はしていたが……、
皆、ここぞとばかりに、
NPC達に話を振り、修羅場を大きく展開していく。
こういうシーンは、SSでなら面白いのだが、
TRPGでやると、GMが、ドコトン大変である。
まあ、PC同士でやる分には問題無いのだが、
今回は、渦中の者も、その周囲の者も、皆、NPCなのだ。
さすがに、長くは続けられないので、
かなり強引だが、サッサと話を進める事にしよう。
幸い、こういう場面を、
強引に纏めてくれそうなNPCもいることだし……、
GM:とまあ、居間が、かなり危険な雰囲気になる中……、
輪の外で、成り行きを見ていたイリヤが、凛にツカツカと歩み寄り……、
イリヤ:「はいはい、それまで♪」
と、領収書を破ってしまいました。
エル:「あ……っ」
カイン:「あ〜! ウチの領収書〜っ!?
このお子ちゃま! 精算済んでないのに、何すんねん!」
イリヤ:「別に、良いじゃない、あんな端金……、
あのままだったら、ちょっと洒落にならない事態になってたわよ?」
カイン:「――端金!?」
イリヤ:「だいたい、リンも、イチイチ話をややこしくしないでよね?
ちゃんと、追加の報酬は用意してたんでしょ?
エル:「それは本当ですか、凛?」
凛:「ま、まあ、そうだけど……、
いきなり、色つけろなんて言われて、素直に出すのは癪じゃない?」
ヴァル:「分からんでもない……がね」(苦笑)
エル:「確かに……ですが、もう少し言い方があったのでは?
まあ、カインにも非はありますが……」
カイン:「そこで、当然のように出す事によって、株上がるいうねん。
ちゅうか、皆がウチをいじめる〜」
凛:「悪かったわよ……はい、これで良いでしょ?」
と、凛はカインに、小さな空瓶を一つ渡します。
カイン:「うわ〜い、やった〜……って、あほか〜いっ!
こんな空瓶が、何やいうねんっ!?」
凛:「言っとくけど、ただの瓶じゃないわよ?
魔術を込めておける『魔法瓶』なんだから!
すごく貴重なんだから!」(←GM:凛の手作りだけどね)
カイン:「はは〜〜、毎度ありがとうございました。
今後とも、ご贔屓によろしくお願いいたします」(土下座)
さあ、ヴァルやん! 今すぐ、愛情戦士に合体やっ!(爆)
リーラ:「人前で合体なんて……恥ずかしいですぅ〜」(ポッ☆)
ヴァル:合体して、その瓶に、魔術を込めろと?
アレが、リーラに負担を掛けていそうだというのを忘れないでくれ。
合体が解けると、その都度、睡眠を必要としている様に思うのだが?
―― PHASE-18 ガラディーンと精霊石 ――
凛:「さて、追加の分は、それで良いわよね?
じゃあ、正規の分だけど、アランが持つ剣の、
力の源である宝石について、だったわね?」
エル:「はい……何か、ご存知ですか?」
凛:「単刀直入に言うと……私には分からないわ」
GM:凛いわく、宝石魔術は、宝石に魔力を込めて使用する、
いわゆる護符の高級品のようなもの。
故に、それは使い捨てであり、一つの宝石を、
恒久的に使用するなど、ほぼ不可能、とのこと。
凛:「剣の力の源が、単なる使い捨ての宝石、だなんて、ナンセンスでしょ?
でも、破壊耐性のある恒久使用が可能な宝石なんて――」
イリヤ:「――存在しない事も無いわ。
精霊石なら、決して壊れたりしないし、
宿す力も、宝石魔術の比じゃないもの。
ガラディーンの力の源としては、申し分無いはずよ」
ヴァル:「つまり、単なる魔力宝石ではなく、精霊石の可能性が高い、と言う事かね?」
イリヤ:「そういう事になるわね」
エル:「どうやら、次の目的が決まりましたね。
精霊石の情報を集める事です」
パール:「精霊石を見つけ、剣に戻せば、きっと彼の記憶も……」
凛:「心より生まれし奇跡の石……そんなのが本当に存在するわけ?
精霊石の所持者なんて、聞いたこともないわ」
イリヤ:「でも、存在するのは事実よ。
現に、古代魔法王国時代では、所持者がいたっていう記録もあるし、
フロルエルモスでは、光の剣を持った女英雄が、
全ての属性の精霊石が揃えた、なんて伝説もあるわ」
ヴァル:「少なくとも、剣に石は有った……ということか、騎士王殿?」
セイバー:「はい、間違いなく……」
エル:「セイバー、その石の形を覚えていますか?」
セイバー:「それは、私よりも、パーシヴァルの方が詳しいでしょう。
常に、彼と共にありましたからね」
カイン:「……精霊石」(ジュル)
エル:「……カイン、盗るのはダメですよ」
ヴァル:「カイン、欲を抑える訓練が必要なのではないか?」
カイン:「……うちの仲間って酷いと思わん、なあ、兄ちゃん?」
GM:士郎は、すでに、先程の修羅場の威圧感で気絶してます。
ちなみに、ちゃっかりと、ライダーが膝枕してたりします。(笑)
カイン:「ん、まあ、あれやな……パルの姉ちゃんで心当たりは?」
パール:「判らない、あの剣の石が何処に行ったのかは……、
ただ、一つだけ確実なのは、ラグネルが、剣を盗んでいくまでは、
確かに、剣に石は宿っていた」
エル:「では、もしかしたら、そのラグネル……、
つまり、キュリオの祖母が、何か知っているかもしれませんね」
カイン:「キュリオの実家へゴ〜、ってことやな」
パール:「彼女の祖母が、本当に、ラグネルであるのなら、な。
しかし、リュンクスの寿命とは、それ程に長いものなのか?」
ヴァル:「さて、キュリオ本人が寝ているので何とも……、
何せ、彼女達、リュンクスは隠れて生きているからね」
エル:「それでも、リュンクスは、人との交流を止められないのですが……」
リーラ:「子孫を残す為に、ですね」
凛:「さて、と……私達が話せるのはこのくらいね。
アランが回復するまで、ここに泊まっていくといいわ。
もちろん、宿代はもらうけど」
エル:「それは凛ではなく、士郎が言う台詞では……?」
GM:士郎に決定権は無い。(きっぱり)
ヴァル:言い切った!?(爆)
カイン:「うわっ、ひどい! 病人から金取ろうなんて、
人としての情というもんが無いんかい!!」
エル:「カイン、その台詞は、強欲を治してから言うべきですよ」
凛:「さて、話はこれくらいにして、そろそろ夕飯の準備しましょうか」
エル:「セイバー、食後に一手、ご指導願えませんか?」
セイバー:「いいでしょう。では、食後に……」
GM:というわけで、士郎、凛、桜の料理に舌鼓を打ち……、
皆さんは、衛宮宅での夜を迎えます。
―― PHASE-19 進むべき道 ――
GM:さて、夜になったわけですが……、
エルとヴァル、二人は、アランに呼ばれます。
エル:アランが、ですか? では、客間に向かうとしましょう。
「アラン、何か用事ですか?」
ヴァル:「――重大事、かね?」
アラン:「こんな姿で済まない……実は、相談にのってもらいたくてな」
アランは、ベッドに横になったまま、話し始めます。
エル:「相談……ですか。私達で答えられる事でしたら……」
ヴァル:「うむ……何なりと、言ってくれ」
さて、実を言うと……、
ここは、このシナリオの最後の山場です。
この場面での、会話の流れによっては、
アランは、第2PTから外れる事になるでしょう。
ダイスでの判定ではなく……、
会話のみによるシナリオ展開……、
まさに、TRPGの醍醐味ともいえる瞬間です。
ここから先は、GMすらも予想は不可能……、
さてさて……、
一体、どんな展開を見せるのやら……、
アラン:「事情は、キュリオから、聞いているだろう?
俺は……どうしたら良いと思う?」
エル:「貴方は……どうしたいんですか、アラン?」
アラン:「……良い機会なんじゃないか、と思っている」
エル:「と、言うと?」
アラン:「キュリオの気持ちには、気付いていた。
もう、ずっと前から……知っていて、気付いていないフリをした」
ヴァル:(あぁ、蟻騒動の時の、夜の会話で気が付いていたさ)
アラン:「俺は、ガヴェインなのだろう?
ならば、俺には、妻がいることになる。
それなのに、キュリオ達の気持ちに応えられるわけが無いだろう?
ならば、この際、このまま姿を消した方が――」
エル:無言で、鉄拳を、アランに叩き込みますっ!
アラン:「――っ!?」(←殴られる)
エル:「そこまで、です……、
その先を言ったら、次は真っ二つですよ?」
アラン:「なら、俺はどうすればいい!?
このまま、彼女を……彼女達を傷つけ続けろ、というのか!?
ヴァル:「それも、やはり、キュリオの事を、
無視しているのに変わりは無いだろうね。
姿を消す事が傷つけないと言えるのかい?
さらに、傷を作る場合だって有るだろうさ」
エル:「貴方達三人で、ゆっくり話し合うべきでしょうね。
三人とも納得がいくまで、何度でも……」
アラン:「もちろん、別れは告げるつもりだ……しかし、俺は……」
エル:「傷つけたくはない……ですか?」
ヴァル:(そもそもの不安の原因は何か? 記憶が無い事だな。
ならば、記憶を取り戻し、それでもなお、アランで有ればよい、か?
そんな都合の良い方法に、心当たりも手掛かりも無い。
まったく……根源たる『 』を目指す魔術師とは、この程度か!)
アラン:「そうじゃない……キュリオを前にして、言う自信が無い。
本当は、キュリオと離れたくない……、
笑ってやってくれ。そんな度胸も無い男なんだ、俺は……」
エル:「笑いませんよ。少なくとも、今のアランを笑ったりなどしませんよ。
アラン、まずは貴方の中に眠る記憶を取り戻しましょう。
決着をつけるのは、その後でも良いのではないですか?」
ヴァル:「悩めると言うのは、真剣に考えている証拠だろう。
ならば、それで良いのではないか?
悩みもせずに、安易な答えを出すよりは……ね」
アラン:「記憶か……おかしな話だな……、
俺の失われた記憶が、こんなにも人を傷付ける、とは、思ってもいなかった。
所詮は、自分だけの問題だ、と……、
なのに、今では、記憶の失う前の自分自身に、気を遣って……、
記憶を失う以前に、恋人がいたかもしれない。妻を娶っていたかもしれない。
だから、パーシヴァルの気持ちにも、キュリオの想いにも、応えてやることができない。
それは、二人に対して、あまりにも残酷なのに……、
どんなに懺悔しても……俺が向かう先は地獄だろうな」
エル:「そうは思いません。
真剣に悩み、苦しみ、傷つきながらも、
答えを出そうとする貴方をきっと……二柱の女神は見捨てませんよ」
アラン:「……すまない。助言、感謝する」
と、アランは再び眠りにつきます。
ヴァル:「さて、寝入ったようだし……我々も、お暇するかね?」
エル:「そうですね。お暇しましょう」
―― PHASE-20 騎士の誓い ――
GM:さて、それから数日経ちまして……、
アランの体調も、すっかり回復しました。
カイン:「……あ〜、もう出かけんの?」
居間で寝転がって、お菓子食いながら、元気になったアランを見る。(笑)
ヴァル:「馴染んでるな、カイン……」(溜息)
カイン:「ん〜、畳はええよな〜」
エル:「流石は、かの国に其の人あり、と言われた騎士王でした。
この数日の間に、ついに一太刀浴びせる事すら出来ませんでしたよ」
セイバー:「いや、貴方の剣は、とても真っ直ぐものでした。
これからも、その剣の心を忘れぬよう」
エル:「はっ……肝に命じます」
GM:とまあ、皆さんは、そんな感じで、過ごしていたわけですが……、
ついに、旅立ちの日となり……、
その準備の最中、セイバーが、皆さんを、庭の道場に呼び集めます。
キュリオ:「……何だろ?」
エル:「何か用事でしょうか?」
ヴァル:「騎士王殿のお呼び……か、何事だろうね」
GM:皆さんが、道場に行くと、そこには、完全武装したセイバーがいます。
その前には、アランとパールがいます。
皆さんが姿を見せると、セイバーは、軽く笑みを浮かべた後、目を伏せます。
セイバー:「忙しい中、申し訳ない。皆に立ち会って貰いたかったのです」
ヴァル:「立ち会う? 何にだね?」
セイバー:「騎士としてのケジメを……」
そう言って、セイバーは、アランとパールに向き直ります。
アラン・パール:「…………」
セイバーの前で、二人は片膝をつきます。
セイバー:「我が親愛なる部下にして、盟友、サー・ガヴェイン、サー・パーシヴァルよ。
私は、すでに王ではない。今の私は、シロウに剣を捧げた、一人の騎士でしかない。
故に、かつて、貴方達が、私に捧げてくれた剣を、今、ここで返そう。
私は、良い王ではなかったが……、
そんな私の為に、そして、国の為に、今まで、よく尽力してくれた。
貴方達二人に、深く謝罪します。そして、感謝を……」
パール:「勿体無いお言葉です……」
アラン:「…………」
GM:セイバーの言葉に、パールは、感涙しながら、頭を下げる。
アランもまた、パールにならい、頭を下げる。
すると、何を思ったのか……、
アランは、突然、立ち上がると、キュリオの前へとやって来ます。
キュリオ:「……へ?」
アラン:「キュリオ……これは何だ?」
と、アランは、キュリオの前で剣を抜いて見せます。
キュリオ:「ガラディーン……アランの剣だよ」
アラン:「そうだ、剣だ……今、セイバー殿より返された俺の剣だ。
すでに以前、誓っているが、今、ここで、改めて誓おう」
アランは、片膝を立て、両手に恭しく剣を捧げ持つ。
キュリオ:「ア、アラン……?」
アラン:「我が身、我が魂、常に貴女と共にあり。
その身に降り注ぐ矢のことごとくを撃ち落とし、
その身に迫る槍のことごとくを切り落とし、
剣となり、盾となり、この身果てるまで御身を護り通すことを、
騎士の名誉と、この剣に賭けて誓う……、
我が名は――」
そこで、アランは、ひと呼吸おき、ハッキリと言います。
「――我が名は、アラン=スミシー」
キュリオ:「――っ!!」
アラン:「今は……俺が、お前と共にあることを、これで納得してやってくれないか?」
キュリオ:「アラン……っ!!」
それは、もう、抱きつくしかない!
GM:それを見たパールは、悔しげにキュリオを見ます。
そして、クルッと、二人に背を向けると……、
パール:「私は負けない、負けたわけじゃない。
私が、貴女よりも先に、彼の記憶を取り戻す方法を見つけてみせる」
と、そう言い残して、去っていきます。
キュリオ:「勝ちとか負けとかじゃない気もするけど……気を付けてね!
そして……がんばろうね」
エル:「流石は聖杯の騎士……、
その去り際も潔い……、
また、何処かで会えるのでしょうね……」
GM:とまあ、こんなところで、
今回のシナリオは終了で〜す♪
一同:おつかれさま〜♪
<おわり>
<戻る>
注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。
注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
その為、今後、ルールが改訂される場合があります。