GM:では、“ふぁんぶら〜ズ”の諸君……、
今回も、LQRPGのセッションを始めようじゃないか。
ケイオス:おい、ちょっと待て!
その“ふぁんぶら〜ズ”って何だ?!
GM:――言葉通りだが?
ライル:何と言うか、物凄く不名誉な俗称を付けられたものだな〜……、
GM:どんな場面も、ファンブルで道を切り拓いて来たキミ達には、ピッタリだと思うが?
事ある毎に、ファンブル、ファンブル、ファンブル……、
何か反論出来るとでも? 出来るなら聞きますが?
ケイオス:ふむ……出来んな。
イリス:ってゆ〜か、一番の原因は……、(ジ〜)
イルス:え〜っと……やっぱり、ボクのせい?
ライル:俺と兄者も、人の事は言えんがな。
イリス:まあ、あたしは、まだ、一度も、ファンブル振ってないし〜♪
ケイオス:うわっ、ひでぇ……、
GM:じゃあ、このセッションで、イリスが、
ファンブル振ったら“ふぁんぶら〜ズ”確定ということで、よろしく♪
イリス:せ、責任重大ね……、
『Leaf Quest
TRPG』テストセッション・リプレイ
ふぁんぶら〜ズ冒険譚 3
『俺の歌を聴けっ!』
―― PHASE-01 それぞれの幕間 ――
GM:さて、皆さん……、
前回のラストは、覚えていますよね?
ライル:アロエッテに、コンクールへの出場を勧められたんだよな。
GM:はい、そうです。
返事を頂ければ、アロエッテは、すぐに登録の手続きをしてくれます。
コンクール当日までは、まだ一週間あるから、ゆっくり考えてください。
それまでの宿泊費は、マドレーヌ家が出してくれます。
ケイオス:一週間か……、
当日まで、何をしていようか……、
ライル:……俺は、宿の部屋で悩んでる。
イリス:あたしは、適当に街をブラブラしてようかな。
コンクール云々については、そんなに興味無いし。
実は、今回のセッションでは、イリスの本来のプレイヤーが、
欠席してしまい、急遽、見学として同席していた人に、代理を務めて頂きました。
上記の発言も“イリスの性格なら、そうするだろう”というGMの予想だったりします。
イリスのプレイヤーさん、ごめんなさい。
代理をしてくれた方、ありがとうございました。
イルス:タダで宿泊費を払って貰うのも気が引けるから、
マドレーヌの屋敷の仕事の手伝いでもしていようかな。
GM:前回、貰ったメイド服着て?
イルス:……うん。
ケイオス:そのメイド服が、ロングスカートなら、
きっと、スカートの下に、斧を携帯してるんだろうな。
GM:そう言うケイオスは、何をしてるんです?
ケイオス:ふむ、そうだな……、
アロエッテの兄、マリユスと話がしてみたいな。
GM:マリユスは、王家の近衛騎士の一人ですからね。
割と忙しいのですが、その仕事の合間で良いなら、話せます。
しかし、皆、見事にバラバラに行動してますね。
ここは、別々に処理していきましょう。
<シーン1:イリスと謎の刺客>
GM:じゃあ、まず、傍観者を決め込んでるイリス……、
イリス:「金持ちの家庭の事情に踏み込むと、碌な事はないわ」
と呟きつつ、街をブラブラしてるわ。
GM:つまり、完全に、皆とは別行動ってことですね。
イリス:そういう事になるわね。
GM:では、街中を歩きつつ、ガンスリンガー判定……、
いや、イリスが持つ一般技能のストーカー技能で判定してください。
イリス:もしかして……尾行されてる?
GM:そう思えるかどうかを、判定するんですよ。
メイガスなどの特殊技能の中には、
ライルが持つ『バード』のような、一般技能も存在します。
これは、基本的には、キャラの特徴を、際立たせる程度の意味しかないのですが……、
他の技能よりもLVUPしやすい、
一般技能を、“それに特化している”と考えた場合、こういう使い方もありです。
例えば、今回の場合、街中での追跡判定は、
エージェントか、ガンスリンガーで判定するのですが、
ストーカー技能なら、追跡に長けていると考え、そちらで判定する事にしたのです。
イリス:ストーカー判定は(ころころ)7ね。
GM:それなら、イリスは、
人混みの中に、自分を尾行する怪しい人影の気配を察します。
イリス:やっぱり、こっちがストーキングされてる?
GM:はい、そうです……、
それに対して、どういう行動を取るかは任せます。
イリス:コンクールが近いから、街は、今、かなり活気があるのよね?
じゃあ、その人混みに紛れて、尾行をまくわ。
GM:では(ころころ)目標値11で、ストーカー判定してください。
イリス:「厄介事はゴメンよ……」
(ころころ)10だから、失敗ね。
GM:では、イリスはまくのに失敗し、執拗に後をつけられます。
しかも、人混みに紛れていたつもりが、
いつの間にか、少しずつ、人気の無い場所に追い込まれていきます。
上手く路地裏に誘導されてるみたいですね。
イリス:だったら、止まって呼び掛ける。
「何か用、ストーカーさん?」
GM:呼び掛けるなら、イリスを路地裏の行き止まりに誘導したところで、
黒いマントに身を包み、顔全体を覆う白い仮面をつけた怪しい人物が姿を見せます。
イルス:……変人だ。(笑)
イリス:仮面耐性、出来てるわよね……彼(アラン)のせいで。(笑)
???:「ふっ……やはり、気が付いていたか」
イリス:「何か用、って聞いたんだけど?」
と言いつつ、懐(なのか?)の銃に手を伸ばすわ。
???:「何、大した用ではない……ただ、俺と一緒に来て貰おうか?」
白仮面も、イリスに銃を向けます。
イリス:「変態さんのエスコートはお断り、正装していらっしゃい」
そう言って、ダッシュで逃げ……れるの?
GM:逃がしてはくれそうにないですね。
逃げようとすると、足元に弾丸を撃ち込まれます。
???:「逃げるなよ……、
別に、足一歩くらい、無くても問題は無いのだからな」
というわけで、ここから戦闘となります。
イニシアティブは(ころころ)9ですね。
イリス:あたしは(ころころ)7だから、後攻ね、
GM:では、白仮面の攻撃!
麻痺弾で(ころころ)命中判定は10です。
イリス:(ころころ)回避は6……当たっちゃったわね。
GM:では、ダメージは(ころころ)15点です。
イリス:防御は(ころころ)13だから、2点通ったわ。
GM:ダメージがあるなら、ここで、さらに麻痺弾に対する抵抗判定です。
お互いの達成値の差分ターン、麻痺して、行動不能になります。
イリス:抵抗ね(ころころ)……くすっ、クリティカルね。
GM:振るまでもなく、抵抗成功か。
さすがは、このPTで、唯一、ファンブル経験の無い女。
イリス:今度は、こっちの攻撃ね。
命中判定は(ころころ)5よ。
GM:それは(ころころ)6と言って、紙一重で避けます。
では、第2ターン、またしても、白仮面は麻痺弾で攻撃。
(ころころ)9と言って命中。
イリス:(ころころ)11で回避!
横っ跳びで銃弾を交わし、地面に手をついて、軽業のように宙返りしながら反撃!
(ころころ)命中判定は5!
GM:なかなかにアクロバティックな動きですが、
(ころころ)その攻撃は、12と言って、余裕で回避です。
ライル:未だ、見た事の無いシリアス戦闘だ。
イルス:凄く銃弾が飛び交ってる……ここって、本当にファンタジー?
イリス:あたしは、ファンブルで決着つけるような真似はしないわ。
GM:さて、第3ターン……、
白仮面は、遊びは終わり、とばかりに、もう一丁の銃を構えます。
???:「動きは良いが、狙いが、まだ甘いな……、
まったく、何故、あのお方は、こんな小娘を欲しがるのか……、
この程度の相手など、あの新参者に任さずとも、俺一人で充分だというのに……」
と意味深なことを呟きつつ、二丁持ちで攻撃!
(ころころ)10と言って命中! ズキュキューン!
イリス:さすがに二丁は怖いわね。
(ころころ)よしっ、クリティカルで回避!
GM:くっ、さすがはイリス……、
イリス:「へ〜、新参者に手柄を取られるのがイヤで抜け駆け?」
相手の神経、逆撫でしつつ攻撃。
(ころころ)命中は10っ!
???:「どうやら、口も達者なようだな」
(ころころ)回避は6だから、当たったな。
イリス:ダメージは(ころころ)10点よ!
GM:防御は(ころころ)13だから、銃身で弾丸をキィンッと弾きましたね。
イルス:ねえ、終るのかな、この勝負……、
ケイオス:終らない気がしてきた。
二人の言う通り、戦闘は膠着状態です。
でも、それも仕方なかったりする。
何故なら、麻痺弾を使っているのを見ても分かるように、
白仮面の目的は、イリスの捕獲なので、本気で闘うわけにはいかないのです。
すぐに麻痺して動けなくなると思っていたが、
まさか、イリスの出目が、ここまで良いとは思わず……、
仕方ないので、GMは、サッサと状況を動かす事にする。
イリス:第4ターン、残弾は3発……、
そろそろ、危機感が芽生えてきたわね。
GM:ジリジリと、イリスを追い込んでいく白仮面……、
と、そんな敵の足元に、突然、何処からか飛来した矢が刺さります。
???:「――ちっ、運が良かったな、小娘」
第三者の介入に、白仮面は、バッと跳び退き、イリスと距離を取ると、
壁を蹴り、屋根に登り、あっという間に姿を消してしまいました。
イリス:抜け駆けがバレて、動揺してる?
GM:そういうわけじゃなくて、単に、形勢が不利になったからですね。
???:「――大丈夫か? 怪我は?」
白仮面が姿を消すと同時に、見覚えのある青年が駆け寄ってきます。
ケイオス:まさか、歌姫の板挟みの御仁?
イルス:おお、“普通な人”!
イリス:「あら、この前の……助かりました」
冬弥:「なんか、切羽詰った顔で走っていったから、
気になって追って来たんだけど、正解だったみたいだな……あの黒い奴、何者なんだ?」
イリス:「さあ? "あのお方"とかって言ってたから、
誰かの手下なんでしょうけど……(しかも、新参者に立場奪われそうな)」
GM:では、ここで、イリスはT値で判定してください。
イリス:(ころころ)11ね。
GM:じゃあ、イリスは、白仮面が立ち去る時に、
一瞬、マントが翻り、奴が身に着けていた鎧に、
正六角形の中に二匹の蛇が“∞”な形を描く紋章が刻まれているのを目撃できました。
イリス:……蛇の紋章?
GM:また、小声で「必ず手に入れるぞ、クワルナフ……」
と言っているのも聞こえました。
イリス:蛇の紋章に、クワルナフ……覚えておくわ。
冬弥:「とにかく、仲間達がいるところまで送るよ」
イリス:「では、お言葉に甘えて……」
仲間がいる宿屋まで送ってもらう事にするわ。
<シーン2:イルス、ご奉仕する>
GM:え〜っと、イルスは、マドレーヌ邸で働いてるんですよね?
前回、手に入れたメイド服着て……、
イルス:うん、屋敷の掃除をして、今は、休憩時間……、
他のメイドさん達と一緒に、お茶飲みながら、談笑してる。
GM:きっと、大人気なんだろうな〜。
イルス:どちらかと言うと、ナーフの方が可愛がられてるかもね。
GM:まあ、珍しいだろうしねぇ……、
それはともかく、そろそろ休憩も終わりです。
仕事に戻ってくださいね。
イルス:は〜い、それじゃあ、ナーフと一緒に掃除再開〜♪(ころころ)
ケイオス:うおっ!? コイツ、ダイス振りやがった!
イリス:ファンブルしたら、どうするつもり!
イルス:出目は8……大丈夫、ちゃんと掃除出来てるよ。
ナーフと一緒に、屋敷の廊下をモップ掛け〜。
「えっ、何だい、ナーフ?
『馴染んでる』? いや、まさか、そんなことが……」
GM:絨毯敷きの廊下にモップ掛けは……、
風の魔導石を利用した掃除機くらいありますよ。
イルス:じゃあ、それで掃除中……、
「あっ、どうも、アロエッテさん、お世話になってます〜」(ぺこり)
GM:(出すまでも無く、アロエッテに接触してくれたか……)
では、掃除中のイルスは、アロエッテに出くわします。
アロエッテ:「あら、イルスさん……ごきげんよう」
毎度の如く、優雅に挨拶するアロエッテ……、
だが、すぐに挙動不審な様子で、躊躇いがちに、イルスに訊ねます。
「えっと、あの……ライルさんは……その……」
イルス:「えっ、ライルさんですか?
どうなんだろう……まだ、悩んでるみたいだったけど……」
アロエッテ:「そうですか……まだ、迷っていらっしゃるのですね」
イルス:「ええ……僕も、詳しい様子は、あまり見てないので……」
アロエッテ:「と、ところで、イルスさん……、
つかぬ事をお伺いしますが……」
イルス:「何ですか? あぁ、これは『使用人には必須だ』って押し切られて……」
GM:――違う。メイド服の話じゃない。
アロエッテ:「ラ、ライルさんなんですけど……その……好きな方とかはいらっしゃいますの?」
イルス:「はい? いえ、聞いたことはありません……だよね、ナーフ?
えっ、何?『その辺の流れも悩みの一環だ』って……何のこと?」
ナーフの言葉に首を傾げます。
アロエッテ:「そ、そうなのですか。(ぱぁ☆)
いえ、でも、イリスさんと仰いましたか?
お仲間には、とても綺麗な方もいらっしゃいますし……、
あの方、わたくしを凄い目つきで睨まれますし……もしかして……、
ああ、ごめんなさい。貴女も、もちろん、とても可愛らしいですよ」
ケイオス:何気にトドメをさしたな、妹君。
イルス:「『単に相性的な問題』?うん、まぁ、それは僕もそう思う。
少なくとも、イリスの目は、仲間の特定の誰かには向いてないと思うよ。
ってゆ〜か、まさかと思ったけど……僕、やっぱり女の子だと思われてる?」
アロエッテ:「そういえば、初めて聴いたライルさんの歌は、悲恋の歌でしたわ。
やっぱり、誰か、お好きな方が……」
イルス:「あ〜、あれは、え〜と……、
うん? どうしたの、ナーフ?」
飽きたようにナーフが飛び、閉じた窓を蹴っつき始めるよ
「何? ……うん」
窓を開けて、外に出れるようにすると、ナーフが一声鳴く。
「『考え込んでいるだけでは、何も変われやしない。』……って言ってました。」
窓を閉めつつ、ぼそっと……、
アロエッテ:「……そういえは、そろそろお昼ですわね。
イルスさん、折角ですから、ご一緒にいかがですか?
もちろん、お仲間の皆さんも」
イルス:「あ、はい……」
アロエッテ:「そうですね……こんなに良い天気なのです。
庭で頂きましょう。準備をしてお待ちしていますわ」
イルス:「はーい……さて、みんなを呼んでこないとね」
<シーン3:ケイオスとマリユス>
GM:次は、ケイオスですね……、
ケイオスに呼ばれ、マリユスは、酒場へとやって来ます。
ケイオス:「やあ、忙しい中、申し訳ない」
と、片手を上げて、マリユスを隣の席へ促そう。
マリユス:「いやいや、そんな事はありませんよ。
ただ、なにぶん、忙しくてね……あまり時間は取れませんが……、
それで、どんな用件で?」
ケイオス:「ああ、手短に済まさせて貰うさ……、
用件というのは、妹君のコンクール出場の件なんだけどね」
マリユス:「……と、言うと?」
ケイオス:「私らが、妹君に依頼された事……、
そして、このコンクールのタイミングにも関わらず見咎めなかった事……、
この事から察するに、既に気付いてるのでは?」
マリユス:「……さあ、何のことかな?」
ケイオス:「(その返答は、全てを物語ってるな……)まあ、知らないのなら良いんだ。
これから、私が話すのは、ただの独り言だからね」
マリユス:「ふむ……」
ケイオス:「彼女が、コンクールに出るのを促されたのは、
一体、どんな思惑が絡んでるのだろうね?
正直なところ、彼女の社交デビュー、なんて単語が頭を離れないのだが?」
マリユス:「では、僕も、少し独り言を……、
社交デビューという意味も、もちろんあるが、それ以上の理由がある」
ケイオス:「…………」
おとなしく、酒を飲みながら聞こう。
マリユス:「もう、気付いてると思うが……妹は、兄離れが出来なくてね」
ケイオス:「あ〜、確かに……」
マリユス:「僕も、もうすぐ、コゼートとの婚姻を控えている。
なのに、妹があれでは、さすがにマズイだろう?」
ケイオス:「まあ、色々と世間体は悪いだろうね。
義姉との仲の事もあるし……」
マリユス:「だから、少しでも出会いの機会が増えれば、と思っていたのだが……、
まさか、連れて来たのが・・・・」(嘆息)
ケイオス:「苦労してるんだねぇ……おおっ、そうだ!
今なら、特別キャンペーンと言う事で、
兄君の思惑に沿うよう裏から好き放題動いて見せるが、どうする?」
にや〜、っと邪悪に笑ってみせよう。
マリユス:「好き放題、というのが気になるが……」
ケイオス:「要するに、彼女が、兄君以上に、
誰かを好きになれば、結果的には丸く収まる……そうだね?」
マリユス:「いや、誰を選ぶかは妹の自由だ……、
もう、サイは振られている。
これ以上は、僕達が口を出すべきではないだろう」
ケイオス:「……まぁ、そうだね。馬に蹴られるのもゴメンか」
ふむ、兄君の許可は出ているも同然、と……、(にやり)
マリユス:「妹か、キミ達に頼んで、何を手に入れたのかは知らないが……、
あれを使うも使わぬも、妹が決めること……だが、もし何かあったら……、
その時は、キミ達も、力になってやってくれないか?
ああ、キミ達は冒険者だったな……もちろん、報酬は払う」
ケイオス:「ん〜、その依頼は受けられないかもね。
できる限りの事はやってみるから、後は兄君が判断してくれい」
マリユス:「そうか、すまないね、無理なことを言って……、
ああ、そろそろ時間だ……ここで失礼させてもらうよ」
ケイオス:「ああ、引き止めて済まなかった……、
ただ、まあ、妹君を悲しませる事はしない。
そして、させない事を誓うよ」
マリユス:「……頼みます」
そう言って、マリユスは、ケイオスに一礼して、酒場を出て行きます。
ケイオス:「さて、どうやって動いたモノかねぇ」
煙草に火を点け、天井を見上げよう。
「(ブツブツ)出番前の妹君を励まし……、
いや、コレじゃ、イマイチ決め手になぁ……、(煙草プカプカ)
ん〜む、ダメだな。兄君には、ああ言ったがなぁ……、(ちょっと困ってる)
……これならいけるかな……が、弟者がコンクールでなかったらコレも……なぁ。
ちと、発破でもかけてくるか、くっくっく……」
と笑いつつ、弟者がいる部屋へ行くとしよう。
<シーン4:苦悩するライル>
GM:さて、ライルは……、
コンクールに出るかどうか、宿屋で悩んでるんですよね?
ライル:「出るべきか、出ざるべきか……、
オレの歌は、オレ自身が一番良く分かっているはず……、
だったら、答えは簡単なんだが……、
ええいっ、くそっ!! どうにも、彼女の真剣な目が、頭から離れねえ!」
GM:(一人芝居中? しばらく、様子を見ようかな)
実は、他のメンバーのシーンを、
処理している間、ライルは、一人で自問自答を続けていました。
相談相手として、由綺と理奈を登場させるつもりでしたが……、
折角なので、GMは、
プレイヤーに展開を委ねる事にする。
ライル:「オレが出れば、彼女に恥をかかせる……、
かと言って、オレが出なければ、彼女の信頼を裏切る事になる。
で、オレの気持ちはどうなんだ?
そりゃ出てみたいさ、下手といえども、
やっぱり、歌を唄う者にとって、音楽祭は憧れだ。
例え、どんな結果になろうとも、一度でも、あの舞台に上がれれば……、
(ぶんぶんぶん)彼女に責任を押し付けるな!
オレ自身がどうなのかを考えるんだ……出たいのか? 出たくないのか?」
GM:(……上手いな〜)
ライル:そして、壁に立て掛けてあるギターを手に取り……、
「おおおおおっ!! 風に揺れるその黄金色の〜!
(じゃじゃじゃん!!)……ってあれ?」
GM:「うるせ〜!」
と、宿の部屋のドアが叩かれます。
ライル:「す、すいませ〜ん!」(汗々)
GM:(しまった……つい、余計なチャチャを入れてしまった)
ライル:「やっぱり、おかしいな……、
なんでだ? どうして、女神様の歌が唄えないんだ?
くっそぉ……いかんいかんいかん!! どうにも、いかんっ!!
何だ、この、こう……もやもやっとした感じはっ!!」
GM:(ライル(のプレイヤー?)は、女神萌え(?)なキャラだからな〜……、
その歌が唄えないとなれば、ショックだろうな〜)
ライル:『一体、オレは彼女に何を・・・・!?』
ふと、お守りを返し忘れていた事を思い出す。
ごろんとベッドに横になり、お守りを頭上にかざし、しばらく眺める。
「そういや、今回は、このお守りに色々と助けてもらった……ような気がするな」
GM:(それの効果が役立つような戦闘は、ファンブルで回避されたけどね)
ライル:『それじゃあ、いくか……アロエッテ、ご加護を!!
と、そこで、大ミミズ戦前に絶叫した言葉を思い出す。
「ちょ、ちょっと待て!! オレ、あの時、何言った〜〜〜〜〜!?」
GM:「やかまし〜!」
と、またしても、隣から、どんっ、と壁を叩く音が……、
ライル:「はわわわわわ、ごめんなさ〜い!」
GM:……かなり、テンパッてますね。
ライル:「ぜい……ぜい……ぜい……と、取り敢えず、落ち着け。
いいか、彼女は、良家のお嬢様なんだぞ。
そりゃ、色々良くもしてくれたさ。
しかし、それは……もしかしたら……」
そこで、自分と瓜二つのマリユスを思い出す。
「……だろ? そうじゃないか……そうでなければ……なあ……」
確かに、話のキッカケは“それ”であり、
“それ”前回と今回のシナリオの肝でもあったりする。
とはいえ、ライルとアロエッテは、まだ、知り合ったばかり……、
正直なところ、ここまで、
恋愛要素を強めるつもりはなかったのだか……、
折角、ここまで盛り上がっているのだ。
このまま、ちょっと予定を早める事にしよう。
ライル:「――ったく、オレの馬鹿野郎が!!
何、一瞬たりとも、のぼせ上がってやがったんだ!」
と、寝転がったまま、力無く天井を見上げる。
「……はは……これも一種の失恋ってやつか?」
苦笑しつつも、何故か、顔が歪むのを止められない。
ケイオス:そろそろ、良いかな……、
弟者がいる部屋のドアをノックするぞ。
ライル:「(しばらく気付かず)な、なんだ? どうして……?
えぐ……って、あれ? ひぐっ……?」
ケイオス:「(扉を開ける)やれやれ……、
様子を見に来て見れば、どうしたよ?」
ライル:「わわわわわわわっ!! ちょっ、いきなり、開ける……ひっく!?」
ケイオス:「発破をかけに来てみたら……ねぇ。
取り敢えず、何があったか話して見る気はあるか?」
と言いつつ、後ろ手にドアを閉めよう。
ライル:「いや、その流石に……えぐっ……、
これは、兄者といえども……ぐうっ、言えな……うぐぐぐぐう……っ」
この時点でもう、顔が泣き笑いでぐしゃぐしゃ。
ケイオス:「そうか〜、言えないか〜……、
何があったかは解らんが、
一人で考えてても埒はあかない、と私は思うよ?」(のほほん)
ライル:「と、取り敢えず、ちと気持ちを切り替えて!!
駆け足、前へ〜〜〜すすめえ!! いっちにさんしっ!! いっぢに゛いざんじっ!!」
そのまま、ドアに突進し、お約束通り、びたーん!!
ケイオス:「……やっぱり、話してみないかね? かなり楽になることは保証するが?」
その様子に呆れつつ、再度、弟者を促そう。
ライル:「どうにもこうにも、逃げ切れないみたい……」
ケイオス: 「……何から?」
ライル:「色々……音楽祭も、失恋も……」
ケイオス:「……そうか」
ライル:「最初は酔狂と思いつつも、優雅さに、ちと見惚れただけだったのに……、
あくまで、依頼人と冒険者の関係でしかないと思ってたんだけどなあ……いや、本当に」
ケイオス:「…………」
弟者の独白を静かに聴いているぞ。
ライル:「顔を真っ赤にして依頼ごと話していた時も、
『ああ、本当に切羽詰った事態になってるんだ』としか思ってなかった。
今、思い出せば、そうだよなあ……そりゃ、あれだけ似てたら……」
ケイオス:「ふむ……」
ライル:「意識したのは、何時だったんだろう……?
落とし穴に嵌りそうになった時、運良く助かった時なのか。
それとも、大ミミズとの戦いで、彼女の名を叫んだ時なんだろうか。
いや、もしかしたら……」
ケイオス:「――もしかしたら?」
ライル:「……オレの歌に、手を叩いてくれた時なのかも知れねえ」
ケイオス:「それは、私にも解らないさ……ただ、その気持ちは本当なのだろう?」
ライル:「ここまできて、嘘です、なんて言えないだろう」
ケイオス:「まあ、それもそうか……それで、諦めるのかね?」
ライル:「諦めるかどうかは、まだ分からない。
ただ、彼女の事も<音楽祭の事も、同じなのかもな」
ケイオス:「そうか……んじゃ、モヤモヤしたまま、
音楽祭出るのもアレだし……想いを告げに行こうか?」
昼飯を食べに行こうか、と言わんばかりの軽い口調で、弟者の肩を叩こう。
イルス:……そろそろ、僕が出ても良いかな?
ケイオス:――うむ♪(無言で親指立て)
イルス:「え〜っと、皆、戻って来てる〜?」
抜群のタイミングで、部屋のドアをノックするよ。
ケイオス:「あ〜、いるぞ〜」
ライル:「――な゛っ!?」
イルス:「あ、よかった。アロエッテさんが、お昼を一緒にどうかって」
と、メイド服を着たまま、顔を見せるよ。
ケイオス:「ふむ……機会はすぐに来たな。行こうか、弟者」
ライル:「き、来てたのかあっ……っ!?」
ケイオス:「……まぁ、アレだ。まだ、弟者は若いし、面食らうのもわかる。
だけど、な……二度と手が届かなくなってからじゃ、遅いんだぞ」
ライル:「う、う〜む……」
―― PHASE-02 決意と約束 ――
GM:というわけで、マドレーヌ邸――
ライル:「なあ、兄者よ……、
何故に、オレは簀巻きにされているのか?」
ケイオス:「そりゃ、弟者……君が逃げるからだろう?」
ライル:「その……少しは信じてくれ」(泣)
ケイオス:「そうか……」
では、簀巻きを解除しよう。
GM:屋敷の庭には、椅子とテーブルが用意され、そこには、サンドイッチと紅茶もあります。
アロエッテも、少し緊張した様子で、皆を待っています。
ライル:……どうしたんだろう?
ケイオス:弟者の心意気に任せ、適当な席に座ろう。
ライル:「やはり……いや、ここでああだこうだ言っても始まらないか」
ギクシャクと、手と足を同時に出しながら、アロエッテの前に座る。
アロエッテ:「お、お待ちしていましたわ、ライルさ――皆さん」
同じく、ギクシャクと皆を出迎えます。
ケイオス:……やっぱり、弟者の心配は、杞憂っぽいなぁ、コレ。
ライル:「お、お招きね……こ、じゃなく、
お招き頂き、ありがとうございます。ああああああアロエッテ!」
アロエッテ:「(呼び捨てだなんて)ポッ☆……、
いえ、こここ、こちらこそ、突然、お呼び立てして、も、ももも、申し訳ありません。
さ、さあ、堅い挨拶は抜きにして、お召し上がりください」
ケイオス:「うむ、遠慮なく頂こう」
ライル:「そ、それでは、頂きますっ!!」
両手を合わせて頭を下げるも、下げすぎて、テーブルにガツン!!
アロエッテ:「ま、まあ、大丈夫ですか!?」
慌てて立ち上がり、日除けのパラソルの骨に頭をガンッ!
ライル:「お゛お゛お゛……そ、そちらこそ……だ、大丈夫ですか?」
アロエッテ:「ううっ……え、ええ、平気ですわ」
イルス:ある意味、似た者……?
ちなみに、さっき、何処かに飛んでいったナーフは、
いつの間にか、屋根の上から、こっそり眺めていたりするよ。
ケイオス:「むっ……ちょっと用事を思い出したので、これで失礼します」
そう大真面目に言って、席を立つぞ。
イルス:「僕も、ナーフとイリスを探しに行かなきゃ」
ケイオスさんに便乗して、僕も立ち上がるよ。
ケイオス:「失礼する……しっかりやれよ、ライル」
小声で、弟者に声援を送って、イルスと共に、その場から退席しよう。
GM:……で、茂みに隠れて、見守るつもりバリバリ?
ケイオス: 無論、某メタルギ○な勢いでな。
その為の、エージェント技能だ。
イルス:街中とは言え、一応、野外だから、ビーストテイマーもOKだよね?
GM:別に判定するまでもないですよ。
イルス:ちなみに、ナーフは、ケイオスさんの肩に降りてくるよ。
ケイオス:「お、お帰り……コレ食うかね?」(小声で)
茂みの中で、こっそり回収してきたサンドイッチをナーフに渡そう。
GM:では、外野は、しばらく黙って見ているように。
アロエッテ:「ど、どうぞ……」
いきなり、二人きりにされ、アロエッテは、
緊張しながら、震える手で、ライルのカップに紅茶を注ぎます。
ライル:「あ、ありがとうございます!」
で、冷めるのも待たずに、そのまま一気飲みする。
GM:なんて、デンジャラスな……、
ライル:「…………っ!!」
熱いのを、必死に堪えるぞ。
アロエッテ:「あ、あらあら……」(クスッ)
そんなライルの様子を見て、少し緊張が取れたようです。
ライル:「ちょっ、それは無いよ……」
アロエッテ:「ふふっ……ライルさん、貴方は冒険者なのですよね?」
ライル:「まあ、そうですね……、
ここ、最近のデビューみたいなもんですがね」
アロエッテ:「イルスさん達……お仲間さん達とは、
どんな経緯でお知り合いになられたのです?」
ライル:「この街に来る前……リーフ島のHtHの街で、偶然、出会ったんです。
その前は、一人で弾き流しをして、旅を続けていたんですが……、
ほら、イリスって子がいるでしょう?
彼女とイルスが、なんやかんやと騒動引き起こして、
それを、ケイオスの兄者が、どうしたもんかと眺めていたのに出くわしたんですよ。
まあ、他にも、守銭奴な商人娘とか、方向音痴の剣士とか、
妄想癖のある猫娘とも知り合ったんですけど、
その三人とは、故あって、今は別行動中です。
まあ、冒険者ってのは、基本的に渡り鳥だから、
次、会えるかどうかも分からんのですがね」
アロエッテ:「偶然ですか? その割には、随分と親しいようですが……、
特に、ケイオスさんとは……もしかして、本当のご兄弟で?」
ライル:「いえいえ、本当の兄弟ではありませんよ。
ただ、何と言いますか……う〜ん、上手くは言えないけど、
『魂の兄弟』ってやつでしょうか?
あの時も、相変わらず、石をぶつけられて、逃げてた俺を、匿ってくれたし……」
アロエッテ:「石だなんて……なんて酷い……」
ライル:「まあ、酷いと言えば酷いんですけど……ただ……」
アロエッテ:「――ただ?」
ライル:「ただ、今は、石をぶつけた人達の気持ちも、何となく分かるんです」
アロエッテ:「何故です? そんな酷い仕打ちを受けたのに……」
ライル:「何処かで、オレは、『唄う気持ち』に甘えていたのかも知れない。
それを、石ぶつける人達は感じていたのかも……」
唄う対象への情熱……それは、確かに大事だけど、
でも、それだけじゃあ、それだけじゃあ、ダメなんだって……、
アロエッテがオレの歌に気持ちを感じてくれたのは疑わない。
ただ、その時のオレと、その前のオレでは、やっぱり何かが違っていた」
アロエッテ:「唄う気持ち……、
あなたは、いつも、どんな気持ちを、歌に込めているのです?」
ライル:「信仰していた、女神様への崇拝の気持ちでした……、
でも、その気持ちを、押し付けてはいなかっただろうか、って……」
アロエッテ:「女神様の……そう、あなたも、女神の美しさに魅入られた方でしたのね」
ライル:「子供の頃に読んだ本に感化されたんでしょうね。
自分の中で、どんどん気高き存在になり、そして、その存在に魅入られていった。
でも、彼女は……少なくとも、その一人はやっぱり『生きていた』」
GM:凄いな、ライル……やはり、ひかりが女神だ、と気付いていたのか?
ライル(のプレイヤー):本人は、何処まで確証を掴んだかどうかは定かではないかな。
もしかしたら、思い込みで『そう突き止めた』だけかもしれない。
「ひかり」という名前と、顔が同じだった、という事で、
女神=ひかりと『勝手』に解釈しただけかもしれない。
GM:そんなところでしょうね。
本来なら、秋子とひかりの正体は、誰にも分からない筈ですから。
アロエッテ:「何があったのかは分かりません。
ですが、女神もまた、一人の女性であることに、お気付きになられたのですね。
そう、あの時の歌は……そういう事でしたか……」
ライル:「あの時、オレの中で、一つの区切りがついたのかもしれません。
そして、このままじゃいけない、って思うキッカケにもなったのかも……、
音楽祭も、本当は出たかった。
順位はどうあれ、あの舞台に、一度でもいいから立ちたかった。
でも、オレはそれから逃げていた……!!」
結局、甘えていたんですよ。
“オレはオレ”なんて言って、自分の至らなさを誤魔化していた!
実力の無さを“自分は自分”と目を逸らしていた!!
結果として、アロエッテ……君の気持ちからも逃げていたっ!!」
と、そこまで叫んで、はあ、はあ……と息をつく。
アロエッテ:「ライルさん……逃げていたのは、わたくしの方ですわ」
アロエッテは、握り締められたライルの拳を、両手で、そっと包みます。
ライル:「君も……逃げていた?」
アロエッテ:「最初は、お兄様に似ていたからでした……、
寂しかったのかもしれません。
もうすぐ、お兄様が結婚してしまうから……」
ライル:やはり、と思いつつも、無言で話を聞く。
『逃げちゃいかん……!!』(ぐっと拳を握り締める)
ライル:「あの時、聴いた、貴方の歌は、わたくしの想い、そのままでした。
だから、わたくしは、貴方を……、
貴方を、お兄様の代わりに思ってしまっていたんだと思います。
わたくしの想いを分かってくれる……自分にとって、都合の良い『お兄様』に……、
分かっていました……酷い事だと、最初から、分かっていました!
それでも、わたくしは、その『居心地の良い場所』を手放したくなくて、
ずっと、ずっと……!!」
ライル:「いいんだ……いいんだよ!!」
アロエッテの両肩をぐっと握るぞ。
アロエッテ:「今だって、そう……まだ、分からないのです。
この気持ちが、お兄様へのモノなのか、ライルさんへのモノなのか……」
ライル:「ああ、それでいいんだよ……、
気持ちなんて、そうそう割り切りがつくもんか。
今はそれでも……それでもいいんだ!!」
アロエッテ:「ごめんなさい、ライルさん……、
もう少しだけ……わたくしにも、もう少しだけ時間をください」
そう、せめて、コンクールが始まるまで……」
ライル:「ああ……待ってるよ、いつでも待ってる。
いや、コンクールには、オレも出るよ。
順位なんか関係ない、オレの、今、出来る限りの事をして参加する。
罵声を浴びてもいい。物投げられてもいい。
でも、オレの、今の気持ちをありったけぶつけて歌う!!
これから一週間、出来る限りの練習をして参加する。
君の気持ちに応える為、そして、オレの気持ちを伝えるために……!!」
アロエッテ:「『歌には力がある。唄う者は幸せを運ぶ者』……、
亡くなった母シャハルナーズが、幼い頃に、旅の楽師から聞いた言葉だそうです。
その言葉を信じて……きっと、コンクールでは、
わたくしの本当の想いを、歌に出来ると思います」
例の金色のマイクを手に、アロエッテは微笑みます。
「ごめんなさい……折角、取って来てくださったのに、
このマイク、使えそうにありません。
「でも、これで唄います……魔道具なんかじゃなくて、
貴方達が……貴方がくれた、このマイクで……」
ライル:「アロエッテ……!!」
言葉は出ず、ただ、アロエッテの肩を握るだけ。
しばらくして、両手を離し……、
「――それじゃあ、コンクール当日で!!」
アロエッテ:「それでは、ごきげんよう……ライル」
スカートの裾を軽くつまみ、一礼して、背を向けます。
ライル:「…………」
無言で頷くと、クルリと背を向け、走り出す。
GM:…………。(無言)
ライル:…………。(無言)
GM:あ〜、ケツが痒いっ!(爆)
ライル:なんつ〜か……、
とんでもね〜、ジェットコースター野郎だな、オレ!(爆)
―― PHASE-03 エポニーヌの呪い ――
GM:さて、あっという間に、
一週間が過ぎ、コンクールと当日となりました。
イリス:ちょっと待った……、
その間に、調べたい事があるんだけど?
ケイオス:ふむ……何かね?
イリス:あたしを襲った白仮面が身に着けてた紋章よ。
正六角形の中に、二匹の蛇が∞の形を描いてるやつよ。
GM:それを調べるなら、エージェント技能で判定してください。
ライル:エージェント技能なら、オレも手伝えそうだが……、
すまん、兄者……オレは、今、宿の地下倉庫を借り切って、
コンクールに向けて、練習中なんだ。
ケイオス:うむ、任せろ、弟者……(ころころ)11か。
GM:あ〜、その出目じゃダメですね。
ケイオス:「すまん、うちの組織でも洗ってみたのだが、解らなかった」
イリス:「ま、判らなかったらしょうがないわね。
人攫いが目的だったみたいだし……また来るでしょ?」
この台詞を意訳すると……、
「分からないんじゃ、対策立てられないし、もう一度きたら、ちゃんと守りなさいよ」
ケイオス:「正直な所、君なんざ攫ってどうする、って話もあるが……、
話を総合すると、無いとは言いきれないのが現状だね。
しかし、その白仮面の強さからして、
私、かなりの確立で額に風穴開きそうなんだけど?」
イリス:「一人で相手をした私が、ぴんぴんしてるから平気でしょ?」
にっこりと笑って、でも目は笑ってない。
イルス:「でも、本当に、何を目的で、イリスを攫おうとしたんだろうね?」
ケイオス:「もしかすると、その煮えたぎった獣欲の赴くままに、彼女の体を……、
OK、私が悪かったから、その銃を下ろしてくれ」
イリス:「あら? ゴメンなさい?」
無意識に、ケイオスの額にポインティングしてたり。
GM:麻痺してくれてたら、服くらいは破ったかもしれんが……、
と言っても、破ろうとしたところで、冬弥登場、ですがね……、
あとは、何も無いですか?
だったら、コンクール当日となりますが……?
ケイオス:「――弟者よ、準備は良いか?」
当日の朝、地下倉庫まで弟者を迎えに行こう。
ライル:ギリギリまで練習中だ。
「(ぽん、ぽろろろろろん……)そ、そうか……、
ここの弦の使い方、間違ってたのか……って、これ基本中の基本じゃね〜か!」(汗)
ケイオス:「だ、大丈夫なのか、弟者……?」
ライル:「ああ……腹は決まった」
ケイオス:「では、会場に行くとしようか」
GM:コンクール会場は、フォルラータに幾つかある空中庭園の内の一つに建っています。
この会場も、王家がスポンサーなので、
かなり大きく、立派なコンサートホールです。
ライル:オレ達は、チケットを貰ってるから、それで入れるよな。
GM:ライルとアロエッテは出場者だから、専用の入口から入りますよ。
他の皆さんは、ちゃんと、チケットを使って入ってください。
イリス:という事は、ライルの分のチケットが余ってるのよね?
GM:ダフ屋に売るつもりですか……、
王家主催のコンクールで、しかも、近衛騎士のマリユスの前で、そんな真似をしようと?
イリス:……止めとく。
GM:では、出場者であるライルは舞台袖で待機、
他の皆は、マリユスと一緒に、観客席へ行ってください。
コンクールの発表が始まり、次々と、楽師達の歌が披露され、
つつがなく、コンクールはプログラムは進行していきます。
ライル:「ズジャジャジャジャ……ジャララン……ぶつぶつぶつ……」
舞台袖のオレは、他の参加者の歌は耳に入っていない。
ケイオス:私は、コンクールの最中も、
何か物騒な話は無いか、こっそり、周囲の噂話に耳傾けるぞ。
GM:いや、特に無いですね。
皆、歌い手達の歌声に聞き惚れ、口々に評価をし合っています。
ケイオス:正直な所、有力候補を蹴落とそうとする流れがあって当然と思っていたのだが……、
マリユス:「何を警戒しているのか知らないが、警備は万全だよ」
ケイオス:「(軽く観客席も見回し)……そのようだ、いらぬ心配だったかね」(苦笑)
イルス:「ナーフが入っちゃ駄目だったくらいだからね〜」
イリス:ってことは、全員丸腰だったりするの?
GM:本当は装備形態は、ご法度なんだけど、
マリユスが一緒ですからね。大目に見て貰えました。
ケイオス:まあ、私の場合、あまり関係無かったりするのだが……、
イリス:ちっ、丸腰なら、ケイオスを前面に押し出せたのに。
ケイオス:――ひ、ひどい!?
GM:さて、次々と歌い手達の発表が続き、
ついに、残るは、アロエッテ、ライル、冬弥達だけ、となりました。
ちなみに、発表の順番も前述の通りです。
ケイオス:しかし、マリユス殿……、
ぶっちゃけた所、アロエッテ嬢を狙う男は多いのではないかな? 色々な意味でね?」
まぁ、そこに彼女の想いは介在していないだろうけど、と小声で訊ねよう。
マリユス:「まあね、今までにも、縁談や、交際を求める者は何人もいたよ。
ただまあ、妹はアレだから……」
困ったように、マリユスは頭を掻きます。
ケイオス:「……ちなみに、彼らを妨害した事は?」
マリユス:「僕が手を出さずとも、アロエッテが突っ撥ねていたよ。
亡くなった母シャハルナーズも、大恋愛の末の結婚でね。
妹も、それに憧れていたみたいでさ」
ケイオス:「……なるほどなぁ」
貴族も楽じゃないのかねぇ。
マリユス:「さあ、お喋りはおしまいだ……そろそろ、妹の出番だよ」
イルス:「(うつらうつら)……はっ!?」(←寝てた奴)
ケイオス:「さて……サイは投げられた、か」
ライル:「すきだよといえずに〜……って、これ、心の師匠の歌じゃね〜か。
んっ!? アロエッテ?!」
アロエッテ:「では、行ってきますわ……、
聴いていてくださいまし、わたくしの想いを……」
と言う、アロエッテの手には、例の金のマイクがあります。
でも、スイッチは切られたままです。
先日、言った通り、魔道具としての機能を使うつもりは無いようですね。
ライル:「……っ!!」
拳をグッと握り締めるのです。
アロエッテ:「――この歌は、貴方だけの為に」
と、ライルに一礼し、アロエッテは、舞台の中央に進み出ます。
ライル:無言で頷き、彼女の一挙一動を、
全て眼に心に焼き付けるようにして、アロエッテを見送ります。
GM:アロエッテは、観客にも一礼した後、
スポットライトを浴びる中、金のマイクを両手に構え……、
そして、彼女の歌声が披露されます。
アロエッテ:「ボエェェェ〜〜〜♪」(爆)
ライル:「ぬなっ!? ぬななななななっ!?」
イリス:「そういえば……アロエッテの歌って、初めて聴いたのよね」
ケイオス:「…………」
見事に、椅子から、コントのように落ちるぞ。
イルス:「……ばたんきゅう」
ライル:「これって、オレに匹敵するくらいの……しかし……」
GM:アロエッテの歌声に、会場にいる、全ての人々が、のたうち回っています。
イリス:ライル用に用意した耳栓をセットするわ。
マリユス:「いや、馬鹿な……そんなわけが……、
妹の歌は、こんな禍々しいものでは……っ!?」
イルス:「な、ないんだよね……も、もしかして、あのマイク?」
ケイオス:気を取り直し、ここから、アロエッテの周囲に、
変な魔力が働いてないか感知を試みるぞ。
ライル:「んっ……まさか?」
GM:魔力感知するなら、ケイオスは、メイガス判定してください。
ケイオス:(ころころ)13! 頑張った!
GM:ケイオスは、金のマイクから、
ドス黒い怨念が湧き出ているのが分かります。
そして、その怨念のオーラは、見る見るうちにカタチを作り、
アロエッテの背後に、薄っすらと、ウェーブの掛かった黒髪の女性が現れました。
イリス:「あっ……エポニーヌの呪い!?」
ライル:「――アロエッテ!!」
思わず、舞台に飛び出すぞ。
ケイオス:「ここから、魔術で、マイクを狙い撃ちするつもりだったが、
向こうから出てきたか……行くぞ、皆の衆!!」
舞台に向かって走り出すぞ。
イルス:「ナ、ナーフ……き、きみの疑念は正しかったーっ!?」
むくっと起き上がって、僕もケイオスさんに続くよ。
それと同時に、ナーフを呼び寄せる。
ツッコミアイテム扱いだから、いつでも呼べる。
ライル:「くそっ!! 何で、今の今まで思い出せなかったんだっ!」
???:「近寄るんじゃないよ、そこの男!!」
黒髪の女は、アロエッテの唄わせながら、その髪を、
アロエッテの首に巻きつけ、ライルが近寄れないように威嚇してきます。
ライル:「ぐっ……!!」
GM:さて、お察しの通り、黒髪の女の正体は、エポニーヌです。
彼女について詳しい情報が欲しいなら、
メイガス、アルケミスト、エクソシストで判定です。
ケイオス:(ころころ)クリティカル、きたぞっ!!
GM:では、説明しましょう――
『エポニーヌ=テナルディエ』
今から、数十年前――
生前、あまり歌が上手くもないくせに、
エポニーヌは、自分を天才だと誤解したまま、コンクールに出場する。
だが、何度、出場しても、結果は最下位……、
彼女は、それを認めようとせず、自分が音痴なのではなく、
世間が悪いのだと、それを恨んで、海に身投げして自殺してしまいました。
怨霊となった彼女は、遺跡にあった、
例のマイクに取り憑き、ずっと、復讐の機会を伺っていたのです。
GM:――という噂を耳にした事を、ケイオスは、思い出して良いですよ。
ケイオス:「……典型的な、タチの悪い悪霊か」(舌打ち)
イリス:ねえ、幽霊って……銃、効くと思う?
ケイオス:銀の弾丸なら、効くんじゃないか?
イリス:そんな高価な物、用意してるわけないでしょ。
ケイオス:私の必殺技なら、跡形も無く消し飛ばせるだろうが……、
それだと、アロエッテ嬢も、無事では済まんな。
エポニーヌ:「ふふふふ、こんなコンクール……、
私の才能に気付きもしなかった、こんなコンクール……、
今、ここで、台無しにしてあげるわっ!!」
いつしか、怨念の歌声は、アロエッテから、
エロポニーヌのものへと変わっていきます。
ライル:「ふっ、ふははははははは……」
エポニーヌに関する噂を知り、乾いた笑いを浮かべよう。
エポニーヌ:「そこのブ男……何がおかしい?」
ライル:「……ブ男? ま、まあ、ギョロ目とは、
結構、言われたもんだが、ブ男は初めてだなあ?」
まだ、喉の奥で笑ってる。
ケイオス:ふむ……少し静観してみるか。
ライル:「いやぁな、お前の噂を思い出して、
ついつい、オレの『今までの恥ずかしい過去』も、
ついでに思い出しちまったわけだ! はっはっはっ!」
エポニーヌ:「ふんっ、私は、才能の無い、あんたなんかとは違うのよっ!
才能に溢れていながら認めてもらえなかった私とはねっ!!」
怨念の歌は、よりいっそう、強くなっていきます。
その歌に、会場の人々は苦しみもがいています。
このまま続けられたら、命に関わるかもしれません。
ケイオス:ステージ前へ、のそのそと移動。
そこから、背後の客席を魔力障壁でカバーするぞ。
そういう魔術は持ってないが、ギャグキャラLVのご都合主義で処理出来るかね?
GM:それは、構いませんよ。
ギャグどころか、むしろ、英雄的といえます。
ただ、その場合、魔力障壁の維持の為、他の魔術は使えませんよ。
ケイオス:了解した……、
まあ、長くは厳しいかもしれんがね。
ライル:「オレも同じさ……ここに来るまで、歌う度に石ぶつけられ、追い掛け回され……、
それを『世間は分かっちゃくれねえ、オレはオレ』なんて屁理屈で逃げてたわけだ」
怨念の声に動ぜず語り続けよう。
エポニーヌ:「同じゃないわっ! 私はあんたのような凡人じゃない! 天才なのよっ!」
ライル:「天才? 才能? お前が、オレより才能あるかどうかなんて構まやしねえ!!
だがな、オレにはお前にないものがある!!」
天才だと? 才能だと?
それがお前だというのなら、俺は凡人でたくさんだ!」
冬弥:「そうだ……歌に才能なんて関係ない!」
そう言って、冬弥は苦しみを堪えながら、舞台に現れ、フォルテールを組み始めます。
イリス:彼が言うと、妙に説得力あるわよね。
冬弥:「かつて、魔法王国時代にも、今回のような事件があったそうだ。
悪い魔術師に操られた少女の歌で、会場の人々が苦しみだした。
その時、一人の楽師と二人の歌姫が舞台に上がり、歌い始めた。
その歌声は、まるで天使のようで……、
事実、歌姫の一人の背中には、天使の翼が見えたとか……、
歌姫達の名前は、サフィ=スィーニーとクリノン=リヴァーレ……、
楽師の名前は残っていなかったが、決して、才能に溢れている楽師ではなかったそうだ。
だが、二人の歌姫を導いたのは、その楽師の演奏だった。
残念ながら、俺達の歌は、演奏は、彼らには程遠いかもしれない。
でも、きっと届くはずだ! 彼女にもっ! 本当の歌はっ!」
ライル:「歌ってのはなあ、賞を取る為にあるんじゃねえんだよ。
自分の想いを伝えたい人に伝える為にあるんだ……」
じゃじゃじゃん、とギターの前奏を始めるぞ。
「アロエッテ、ごめん……、
本当は、ちゃんとした舞台で聞いて欲しかったけど……、
でも、俺の気持ち伝えるのなら、どんなトコだっていいよな?」
冬弥:「聞かせてやろう……本当の歌ってやつを!」
どうやら、冬弥も一緒に演奏してくれるようです。
ちなみに、由綺と理奈は、怨念の歌のせいで気絶しているので、協力はして貰えませんよ。
ケイオス:「弟者……迷うな、そして躊躇うなよ?」
左手で障壁張りながら、右手でサムズアップ!
イルス:「大丈夫だね……ライルさんなら、あのくらい、どうにでもなる」
ライルさんに向かって頷いて、斧を構えよう。
ライル:「違いを、今、ここで分からせてやる!!
聞け、オレの歌をっ!!」
エポニーヌ:「あはははははっ!
聞かせてもらおうじゃないかっ! 凡人の歌をっ!!」
―― PHASE-04 コンサートバトル ――
GM:では、ここから戦闘ターンです。
エホニーヌが、指を鳴らすと、三体のファントムが出現しました。
ライル:戦闘と言っても……、
どうやって闘えって言うんだ?
幽霊には、魔術も武器も、通用しないんだぞ?
GM:今、自分で啖呵きったじゃないですか。
もちろん、この戦闘は、ライルの歌で闘って貰います。
ようするに、対抗できるのは、ライルの歌だけ、ってことですね。
この戦闘は特殊ルールになるので、まず、ルールの説明をします。
<エポニーヌ戦闘の特殊ルール>
・戦闘手段は、歌による攻撃(?)のみ。
ライルとエポニーヌのバード技能の判定で競い合い、
勝った方が、達成値の差分だけ、相手のMPにダメージを与えられる。
・三体のファントムは、ライルを集中攻撃する。
一度でも、ダメージ受けた場合、そのターン、ライルは歌う事が出来ない。
・イルス、ケイオス、イリスは、ファントムの攻撃から、ライルを守る事が出来る。
ファントムの命中値(固定8)を、命中判定で上回れば、体を張って、庇う事が出来る。
庇った際は、HPに、ダメージ(固定5・防御無視)を受ける。
・庇う行為は、一体のファントムに対して、全員が試みる事が出来る。
・回復魔術やアイテムなどによる援護は可能。
ただし、そのターンは、庇う行為は出来なくなる。
GM:とまあ、こんな感じです。
ケイオス:ようするに、弟者以外は、とにかく庇え、という事だな。
ライル:バード技能、上げておいて良かった〜。
ケイオス:秘密特訓の成果ありだな、弟者。
ライル:でも、結構、厳しいかも……、(汗)
イリス:大見得切ったんならシャンとしなさいよ!
ケイオス:な〜に、外野から叱咤激励飛ばせば……、
弟者なら、不屈の闘志で立ち上がってくれるさ。
ライル:挫けそうな時、それでもグッと踏み止まるのが男!
GM:苦しい時こそ、ニヤリと笑え、傍から見てみりゃ漢だぜ♪
ケイオス:炎の○校生とは、懐かしい……、
ところで、GM……魔力障壁は、解除するとヤバイ雰囲気かね?
GM:いや、戦闘が始まる時点で、
怨念の歌は、指向性を持ち、ライルにのみ集中されます。
ケイオス:ふむ……では、障壁解除。弟者の前に躍り出よう。
あと、イリスにも小声で伝える。
「もしかすると、マイクに取り憑く事によって、力を増幅しているのかもしれん。
旗色が悪くなったら……アレの破壊を頼む」
イリス:「はいはい、狙い撃てば良いのね?」
頷きながら、さり気なく、アロエッテを傷付けずに、マイクを狙えそうな位置へ。
イルス:「……邪魔はさせないよっ?」
同じく、ライルさんの前に立って、斧を構えるよ。
ライル:「皆、ありがとう……、
じゃあ、いっちょ、ダブルコンサートと行きますか。
――なあ、化け物!」
GM:戦闘ルールは理解出来ましたか?
では、ここから、第1ターンです。
特殊戦闘なので、イニシアティブは無し。
ライルの行動は、一番最後になります。
ライル:「おおおお〜〜〜っ!!」
ジャンジャンとギターで、前奏を掻き鳴らすぞ。
GM:アロエッテは、ライルの歌の邪魔しようと、
三体のファントムに命じ、襲い掛からせます。
ケイオス:「……ふむ、偉そうな事を言う割りに、妨害しないと勝負も出来ないのかね?」
エポニーヌ:「お黙りっ! そんな男の歌なんて、一秒たりとも、聴く耳は持たないのよ!」
と、言いつつ、一体目のファントムの攻撃です。
ケイオス:直接戦闘能力は皆無なのだが……、
(ころころ)9だから、庇えたな。
GM:5点のダメージを受けてくださいね。
ライル:「――兄者!?」
ケイオス:「構うな! お前は、唄う事だけを考えろ!!」
GM:二体目の攻撃いきます!
イリス:私の場合、期待値ださないと(ころころ)……あっ、1ゾロ。
GM:ファンブった〜〜〜っ!!
一同:『ファンブラーズ』確定〜っ!!
イリス:ファンブル表は……、
『5:頼りない/足を引っ張る味方が現れる』。
イルス:……マリユスさん?
ケイオス:マジで、頑張れ、お兄ちゃんっ!!
ライル:トンデモナイ展開に、なんだか、オラ、ワクワクしてきたぞ。(笑)
GM:じゃあ、助っ人のマリユスさんが舞台の上にやってきます。
でも、先程までの怨念の歌の影響で、ロクに動けそうにないです。
ライル:お義兄……いやいや、マリユスさん、大丈夫か〜!?
エポニーヌ:「あら? ブ男が二人に?
まあ、いいわ。二人とも殺ってしまいなさい」
ケイオス:「あ〜、確かに瓜二つ……」(汗)
GM:とういわけで、守る対象が増えたので、よろしく。
言っておきますけど、ちゃんと守らないと、死にますからね。
ケイオス;ちなみに、兄君殿のHPは?
GM:マリユスのHPは40です。
今後、ファントムの一体は、必ず、マリユスを攻撃します。
ケイオス:ふむ(計算中)……、
「まあ、しばらくは耐えてくれ、兄君殿」
めっさ良い笑顔で親指立てる。
GM:その行動は、英雄予備軍として、どうよ?
ケイオス:もちろん、マリユス殿は、一発当たったら回復コースだ。
イリス:確か、ケイオスの回復魔術って、範囲効果よね。
だったら、マリユス行きは無視して ケイオスは、常に行動を最後にする。
で、わたしとイルスでも、ライルを庇い切れなかった時のみ、
ケイオスは庇い行動をする。
わたし達で庇えたら、ケイオスは回復行動をする、って事にしよう。
GM:足手纏いは増えたけど、同時に、的も増えたわけか……、
やっぱり、ファンブルが有利に働くな……、
流石は、ファンブラーズ(確定)だ。
それはともかく、まだ、二体目のファントムの攻撃の最中です。
イルス:じゃあ、僕が(ころころ)11で庇えたよ!
GM:最後の三体目は、マリユスに……、
マリユス:「――グフッ!?」(←残りHP35)
ケイオス:「マリユス殿……大丈夫か?」
マリユス:「ぼ、僕の事は良い……妹を……」
ケイオス:「わかった……貴方の犠牲は無駄にはしない!」
GM:まだ死んでないって……、
ライル:と、とにかく、三体の攻撃を凌ぎきった!
なら、このターンは唄えるなっ!
「五月雨は緑色〜♪」
バード技能判定2d6+3で(ころころ)13だ!
エポニーヌ:「ハラホロヒレハレ〜♪」
こっちは、2d6+4で(ころころ)10です。
ライル:通ったっ! 差分ダメージで3点っ!
GM:エポニーヌの残りMPは22点です。
あっ、ちなみに、ヒーローLVによるダイス追加はOKですからね。
ライル:――了解っ!
とまあ、こんな調子で、戦闘は第2ターンへ突入。
イルス、ケイオス、イリスの三人は、
マリユスの様子を気にしつつも、体を張ってライルを守り……、
ライルもまた、仲間の奮闘に報いる為に、懸命に歌い続ける。
しかし、ダイス目が振るわず、
今度は、逆に、ダメージを受けてしまう。
GM:第3ターン、ファントム一体目の攻撃!
イリス:今後こそ(ころころ)4……なんで〜っ!
イルス:覚悟を決めなよ、イリス〜!
そんなに、痛い目に遭うのはイヤなの〜?
イリス:ゴメン! 次は、ヒーローダイス使ってでも防ぐからっ!
ケイオス:ならば、私が(ころころ)9! 防いだぞっ!
「弟者には、手は出させんっ!!」
とはいえ、このままだと、マリユス殿よりも先に、
私が、お花畑を見る羽目になりそうだ。(←残りHP15)
GM:次、二体目の攻撃いきます!
イルス:こっちも、いつ事故るかドキドキなのに(ころころ)12!
GM:二体目も庇われたか……、
では、三体目は、また、マリユスに攻撃して……、
ライル:オレの番だなっ!! 一気に決めるっ!
「白い壁を染めて草笛が響く丘〜♪」
ヒーローLVの効果発動っ!!
1d6をプラスして、3d6+3(ころころ)出目が13だから、達成値は16だ!
GM:出目がクリティカル値以上だから、クリティカルです。
達成値に、さらに、2d6をプラス出来ます。
ケイオス:こういうのを、俗に『回った』という。(笑)
ライル:なら、さらに2d6追加!
(ころころ)合計して25点っ!!
エポニーヌ:「ハララ〜♪」(ころころ)9……、
うわ〜っ! 16点、一気にきた〜っ!!(残りMP6)
ライル:みたかっ! これが英雄の力だっ!!
これが、本当の歌の……オレの想いの力だっ!!
エポニーヌ:「そんな……これが、本当の……歌?」
ライルの怒涛の声量(違う)に、大ダメージを受けるエポニーヌ。
残りMPは、あと僅か……、
このまま、決着はついてしまうのか?
正直、これで終っては、
盛り上がりに欠けるな、とGMは不安を覚える。
だが、しかし――
忘れてはいけない――
――このパーティーには『奴』がいるのだっ!
GM:第4ターン! ファントム一体目の攻撃っ!
イリス:今後こそ(ころころ)10……受けたっ!
「いたた……一つ貸しだからねっ!」
GM:ファントム二体目〜!
イルス:次は、僕が(ころころ)……出目が11?
ケイオス:お、おい……、(汗)
イリス:ということは……、(汗)
GM:……きましたね。
イルス:傍迷惑な幸運!?
一同:やっぱり来たぁぁぁぁ〜っ!!
――ほら、来ましたよ。(笑)
さすがは、イルス……、
色んな意味で、期待を裏切らない。
イルス:効果は『自分に被害が出るが有利な結果も及ぼされる』だけど……、
さて、何が起こるのかな?
GM:ファントムの攻撃にフッ飛ぶイルス。
それが、ケイオスの股間に命中し、思わず笑っちゃうエポニーヌ。
ケイオス:……差し当たり、イルスの肘直撃かね?
GM:いや、むしろ顔面から……、(爆)
エポニーヌ:「男の人同士……ぽっ☆」
その光景に、つい見入ってしまい、歌が止まります。
イリス:「腐女子……?」
GM:(イリス、お前が言うか……?)
ケイオス:「…………っ!!!」
ちょっと、その手の話にツッコめないくらいに、ダメージ甚大だ。
イルス:「ケ、ケイオスさん……取り敢えず、ピョンピョンして!」
ライル:「く、くぉの、ド変態がぁぁぁ〜〜〜っ!!」
(ころころ)トドメの13点だっ!!
ケイオス:「代弁してくれて、ありがとう……弟者」
GM:エポニーヌは唄えないので、ダメージは素通しです。
MPがマイナスに突入しました。
ライルの歌声が届いたのか、エポニーヌの怨念が消えていきます。
ケイオス:「お、終った……か……?」(ピョンピョン跳びながら)
ライル:「と、届いた……のか?」
って、ダメだな……、
やっぱり、オレ達だと、こんな展開だ。(笑)
エポニーヌ:「ああ、本当の歌……、
やっと、やっと分かったわ……、
いえ、本当は、最初から分かっていたのよ。
私には、才能なんて無かったんだって……」
ライル:「そうじゃない、そうじゃないんだ……才能なんかじゃない……」
エポニーヌ:「なんて、私は、愚かだったのでしょう。
自分の才能を誤解したまま、自ら命を絶ってしまうなんて……、
私よりも、あんなに下手な人でも、立派に楽師として生きて、
あんなにも心に届く、本当の歌が唄えるというのに……、
そう、歌は技術や才能なんかじゃない。
本当に必要なのは心と、込められた想い……、
特別なモノなんて、何も必要無かったのね。
ありがとう……、
私の間違いを、気付かせてくれて、ありがとう……」
ライル:「下手は余計だ……、(笑)
だが、それで良いのなら……どういたしまして、だ」
GM:晴れ晴れとした表情で、エポニーヌは成仏していきます。
そして、彼女から解放されたアロエッテは、パタッと倒れます。
ライル:「――アロエッテ!!」
ハッと気付くと、すぐさま駆け寄るぞ。
イリス:「さてと、お邪魔無視は退散しますか?」
イルス、ケイオス、マリユスを引っ張っていくわよ。
ケイオス:「そうだな……」
イリス:とか言って、多分、舞台袖で覗いてる気がしないでもない。
ケイオス:今回は、大人しく下がるよ……イルスを引き摺ってな。
イルス:「えっ、あの……ごめんなさい」
ケイオス:「まぁ、アレだ……君は悪くないかもしれない。
だが、やっぱり、逆襲はさせてもらおうか?」
と言いつつ、手に物騒な魔力があったり。
で、ズルズルとイルスを引っ張り、フェードアウト。
イルス:何があったかは、聞くなの方向で。(笑)
ケイオス:ただ、裏手で闇の柱が上がった、とだけ言っておこう。
イリス:かなり本気ね……ケイオス。
ライル:と、そんな騒ぎに気付かず、アロエッテを抱き起こす。
「い、息……は、してるな。お、おい、大丈夫か?」
軽く頬をぺしぺし……ではなく、軽く撫でるに留める。
アロエッテ:「聞こえていましたわ……貴方の唄……」
うっすらと目を開けて、ライルの頬に手を当てます。
ライル:「そ、そうか……で、どうだった?
その、オレの……気持ち……」(顔が急速に真っ赤っか〜♪)
アロエッテ:「ふふふ……前にも言いましたでしょう?
貴方の歌は、とても素晴らしい歌だ、と……」
それが答え、とでも言うかように、アロエッテは、
ライルの腕の中で瞳を閉じ、そのまま眠ってしまいました。
ライル:「あ、あう……おう」
頭の中は、ゴチャゴチャのまま、眠ったアロエッテを抱き上げる。
GM:じゃあ、それと同時に、王家の騎士や、警備員達が駆け付け、事後処理を始めますね。
後に、皆さんは、事情徴収を受ける事になるでしょう。
まあ、マリユスさんが証言してくれるでしょうから、面倒な事にはならないはずです。
ちなみに、冬弥達の姿も、すでにありません。
ライル:「そ、そういえば。皆は……いない?
兄者〜? イリス〜? イルス〜? ついでにナーフ〜?
って、誰もいねぇっ!?
仕方ない……それじゃあ、お姫様のお目覚めまで付き合うか」
控え室に運ぶ為、アロエッテをお姫様抱っこする。
GM:そんな二人に、いや、ライルに、
目を覚ました会場の観客達が、盛大な拍手を送ってくれます。
観客A:「あの楽師だ! あの楽師が、魔物を倒してくれたんだっ!」
観客B:「彼の歌が、私達を救ってくれたのよっ!」
観客C:「凄い……伝説の再現だ!!」
GM:自分達を救った歌い手に、会場総立ち。
スタンディングオペレーションってやつですね。
ライル:「えっ? ちょ、ちょ……あの、その……ええっ!?
こ、これは……どうやって、応えたら良いもんか、今の今まで、こんな経験ないし!!」
とにもかくにも、ちょっと恥ずかしげに頭を下げて、退散しよう。
GM:拍手は、ライルが舞台から姿を消すまで……、
いや、消えた後も、ずっと止まずに送られ続けましたとさ。
―― PHASE-05 そして、旅立ち ――
GM:というわけで、事件は無事に解決。
コンクールは、後日、改めて行われることになりました。
尤も、アロエッテは、再出場を辞退しましたが……ライルはどうする?
ライル:オレも辞退する……、
本来の目的は、果たしてしまったしな。
GM:もう一つの意味では、どうする?
ライル:――と言うと?
GM:キミは……冒険者だろう?
ライル:それは、これからも冒険を続けるのか、という事か?
ケイオス:もしくは、薔薇色の鎖に絡めとられるか、だな。
こればかりは、私達には口出しできんことだ。
弟者が考えて、決めろ。
GM:そうですね……、
ちなみに、アロエッテも、何も言いませんよ。
ライル:「オレは……もう少し旅をしたい」
アロエッテ:「……何故?」
ライル:「今回の事で、もやもやとしてはいるけど、
歌を唄うという事で、何をしたいのかが分かってきたんだ。
女神様を称える歌もいい……、
でも、オレが歌うのは、それだけじゃないような気がして……」
アロエッテ:「そうですか……そう仰ると思っていましたわ」
と言って、アロエッテは、皆に500Gずつ入った布袋を渡します。
王家から、事件を解決した報酬だそうです。
「それと……貴方には、これを……」
彼女は、ライルに一冊の本を渡します。
ライル:「……これは?」
GM:楽曲の本のようですね。
ただし、書かれているのは楽譜だけで歌詞はありません。
アロエッテ:「それは、『想い届ける虹の楽譜(フィルドウスィー)』……、
古代魔法王国時代の叙事詩人であり、
楽師でもあったフィルドウスィーが残した未完の歌です。
女性であるフィルドウスィーが、
英雄ファリードゥーンへの想いを綴った歌、だそうです。
旅の中で、この曲に相応しい歌詞を紡いでください。
そして、来年、また、この街に来て欲しい。
その時は、わたくしのパートナーとして、
一緒に、コンクールに出場しましょう」
ライル:「あ、ああっ! 約束する、約束するよ!
もっともっと腕を磨いて、今年よりは……(ちょいましに)上手くなって君と歌おう!」
アロエッテ:「約束ですわよ、ライル……、
もし、忘れたりしたら、風の届く限り追い駆けて、
約束を破った事を後悔させてさしあげますわ♪」
ライル:「……っ!!」
照れ隠しに、思わず抱きしめてしまう。
アロエッテ:「いってらっしゃい、ライル……」
ライル:「……いってきます」
GM:抱きしめ合う二人……、
アロエッテとの再会の約束をしたライルは、
彼女に見送られ、仲間と共に、次なる冒険の舞台へと向かうのだった。
というところで、長かったシナリオの終了です。
ケイオス:前回に引き続き、このシナリオは、弟者専用のシナリオだったな。
GM:はい、折角だから、バード技能を活かそうと思って……、
ああ、そういえば、ライル……、
例のペンダントだけど、あれも預けておきます。
アロエッテの母の形見だから、大事にするよ〜に。
ライル:……わかった。
ケイオス:これで、人生の墓場への片道切符(返品不可)を入手してしまったな。
GM:間接的にではありますが、ケイオスは妹者を手に入れてますし。
イリス:まさに、楽譜の名を借りた婚姻届ね。
GM:恋文書いてきてね、って事ですからね〜。
ライル:第二次ガディム大戦中に、これが唄われるのかと思うと……ふぁいと、オレ。(汗)
GM:まあ、それはともかく……、
今回の経験値は、皆に10点ずつとなります。
次回は初音島が舞台です。
GM:それでは、お疲れ様でした〜♪
一同:お疲れ様でした〜!
<おわり>
<戻る>
注釈1:リプレイの様子と内容を、分かり易くする為に、かなり加筆・修正・脚色をしています。
注釈2:今回の内容は、あくまでもテストプレイです。
その為、今後、ルールが改訂される場合があります。