時に、宇宙歴00XX――

 そこで、地球の命運をかけた戦いが始まろうとしていた。

「さくら、あかね、エリア、フラン、準備はいいか!?」
『うん!』
『はい!』
『準備完了です!』
『誠様、御武運を………!』

 彼自身を見送る少女達に手を振ってみせると、誠は漆黒の空へと愛機を進める。

「藤井 誠、ヒュッケバインガンナー、出ますっ!!」

 ガンナーパーツを取り付けられたヒュッケバインMK−Vは、沢山の光が煌めく空へと進む。

(ミンメイさんの歌が出来るまで………、
ミンメイさんが見つかるまで、お前達が頼りだ………頼むぞ!)

 前方に幾筋もの光が見え始める。
 光は、直ぐに巨大な戦艦へと姿を変えた。







Heart to Heat パロディ

スーパーロボット大戦 HEART
〜愛・覚えていますか?〜








 生か死か? それは、終わってみなければ判らない。

 ただ一つ言えることは、美しい閃光が煌めくたびに、
何人か、何百人かの命が宇宙の塵と化していると言う事だけだ。

「ブラックホールエンジン出力全開! フル・インパクトキャノン、発射ぁーーーーーー!!」

 ガンナーパーツに据え付けられた4連装のブラックホールキャノンが重力波を撒き散らす。
宇宙を暗く染める閃光は敵の突撃艦に当たり、そのエンジンブロックを削り取っていく。

「よしっ! 次っ!!」

 ガンナーパーツにより、凄まじい加速力を得たヒュッケバインに追いつく敵は居ない。

 戦艦群の中を縦横無尽に駆けめぐり、攻撃を叩き込んでいく。
 しかし、撃沈には至らない、相手が大きすぎるのだ。

『誠!! 退けろっ!!』

 突然、入った通信に、誠は素早く垂直上昇をかける。
 直後、重粒子の奔流が手負いの戦艦を屠っていった。

 光りの出元に居るのは、ジュドーの駆るフルアーマーZZだ。

「ジュドーさん! 助かったぜ!」

 通信モニターの中で親指を立ててみせるジュドーに礼を言うと、
誠は更に敵陣深くに潜り込む。

 戦いは、今、始まったばかりだ。





 ――マクロス 展望室――


 防護隔壁が閉じた展望室は、暗く静まりかえっていた。

 その中に立つ、二つの人影……、

「君にこの歌を………歌って貰いたい」
「ーっ!? なんでっ!? あの人が解析したんでしょう!?
あの人が歌えば良いじゃないっ!!」

 影の一つが、もう一つに縋り付く。

「なんで……なんで私たち2人……この世に残った最後の男と女じゃないの?……」
「…………」
「ねぇ……輝、ここにいて……私と2人だけで……私だけを見ていて……」
「……ダメだよ、この隔壁の向こうで、皆が戦っているんだ」

 背の低い、少女のような影……その目にあたる部分から水滴が流れる。

「なんで!? 勝てる訳無いじゃない!!」
「…………」
「……みんな……死んでしまえばいいのに……っ!!」
「!!」


 ――ぱんっ!!


 暗い展望室に乾いた音が響く。

 頬を押さえた少女は、一瞬怒りにあふれた眼をもう一つの影に向けるが、
直ぐに怒りは困惑に取って代わる。

 もう一つの影は、今、少女の頬を張ったばかりの手を握りしめていた。
 掌から、血が流れ出るほどに。

「……皆、戦ってるんだ……先輩も、誠も、さくらちゃんやあかねちゃんも、
マックスも、柿崎も……自分自身の希望を護るために」
「…………」
「確かに、僕達には、もう明日なんて残っていないのかも知れない……」
「…………」
「未来を奪われた人達だって大勢居る、けど……」

 軽く頭を振ると、彼は少女の肩に軽く手を置く。

 隔壁の外で小爆発が起こり、展望室のガラスを覆っていた装甲が剥がれた。
 そのガラスの向こうで一機のバルキリーが火球に変わる。



「君はまだ、歌が歌えるじゃないか!!」



 再び沈黙が辺りを支配する。
 今度の沈黙は、最初の沈黙とは違う。

「……そうね……好きでこの道、選んだんだものね」

 沈黙を破ったのは、やはり少女だ。

「ここで止めちゃったら、死んじゃったお父さんやお母さん、うかばれないもの……」

 青年の顔に微笑みが浮かぶ。

「……私、歌うわ! ……思いっきり!!」

 少女の顔に浮かぶのは、これまでにない、最上の笑顔。
 そして、彼女の淡い初恋は終わった。

 青年の手から、歌詞のメモを受け取り、少女は走る。
 彼女自身の思いに決着を付けるために。





 ――マクロス 戦闘ブリッジ――


 巨大なモニターの一つを即席のステージとして、5人の少女がたっている。
 いずれも可愛らしいステージ衣装に身を固め、真剣な面もちで戦場を見ている。

「どうやら、間に合ったようですね」

 艦長席に座る女性が、軽く頬に手を当てて呟く。

「全部隊に連絡! 作戦発動! 全部隊はデルタ1を防御せよ!!」

 オペレーターの声が、無線機を通じてロンド・ベル全ての部隊に伝わる。

「始まったか!」
「輝の奴、うまくミンメイちゃんを説得できたらしいな!」

 フィン・ファンネルの援護を受けたマジンカイザーが、突撃艦に攻撃を加える。
 ファイアーブラスターに焼かれた突撃艦が、爆発、四散し、あたりの機動兵器を消滅させる。

「まったく! 世話焼けるんだから!!
だいたいあんな狡い手を使わなくても、アタシが居れば楽勝なのよ!」
「アスカ、そんなこと言ってる割にほっとしたような表情だよ?」
「なっ!? 何言ってるの、馬鹿シンジ!!」

 2体のEVAが、ATフィールドを張ってマクロスへの攻撃を防ぐ。

『作戦発動まで20秒! 各機、持たせてください!!』

 オペレーターの悲鳴にも近い叫びを背景に、ヒュッケバインガンナーが艦隊の内部を駆け抜ける。
 νガンダムが、マジンカイザーが、バルキリーが、ジャイアントロボが、EVAがマクロスの周りに集う。

 そんな折、マクロスのアームド1から、
この戦いの騰勢を決める力を持つ機体が発進しようとしていた。



「スカル11、出ます!!」



 輝の駆る戦乙女が、光り輝く宇宙へと走り出す。





 ――マクロス 艦橋――


「いい? 皆――」
「はいっ」
「にゅ」
「はい!」
「問題ありません」

 ミンメイを先頭に、5人の少女はゆっくりと宇宙へ手を伸ばす。
 示し合わせたように、その曲が流れ出した。





「今、あなたの声が聞こえる、ここにおいでと」

「寂しさに、負けそうな私に」





 歌姫達の声は、宇宙に響き、虚空を流れる。

「ヤック!?」
「!!?」

 巨人達の統率に、乱れが生まれた。

「……これは…………?」
「ミンメイの歌だ…………!」

 その歌は、巨人達に未知への恐怖を、戦士達に力を与える。





「今、あなたの姿が見える、歩いてくる」

「目を閉じて、待っているワタシに」





 ――ゼントラーディー軍 大型戦艦艦橋――


「不思議だ……この歌……ずっと昔に聞いたような気がする……何故だ……?」

 その艦長は、先ほどから戦闘には参加していない。
 純粋な戦闘種族として作られた存在としては、文字通り考えられぬ事である。

「……判りました」

 艦長の側にたたずむ参謀が静かに呟く。

「我々の創造遺伝子のカアルチューンが呼び覚まされているのです」
「なにっ!?」
「50万周期の時を越えて……」

 参謀の言葉に、その艦長はマクロスを見る。
 炎を吹き上げ、砲を半分もぎ取られながら進むその姿は、まさしく運命の矢と呼ぶにふさわしい。

「我々にも……『文化』が蘇るのか……!」

 艦長の言葉の意味を捉えた者は、誰もいない。

 ただ、彼が真理を口にしている……それだけは、誰もが理解していた。





「それは初めての、愛の旅立ちでした、love you so!!





 一つのフレーズが終わり、間奏が流れ始める。

 そこで、マクロスに通信が入った。

『ジン・ゼン・イン・バン・アドクラス艦隊よりマクロスへ! これより貴艦を援護する!』
「――援護!?」

 ブリッジの誰もが、一瞬その言葉の意味を理解できなかった。

『プロトカルチャーの文化を、失うわけには参りません』

 全長1キロのマクロスに、全長5キロはあろうかという超巨大戦艦が併走する。


『リン・ミンメイの歌を聴く、全ての者に告げる!
我らの敵はただ一つ!
ゴルグ・ボドルザーを倒し、
この手に文化を……取り戻すのだ!!』



 その短い呼びかけに答え、辺りで争いを繰り広げていた、
無数の兵器群が一つの方向に向かい始める。

「ぁ………!!」

 ミンメイの眼に、薄く涙が浮かんだ。
 彼女の歌が、巨人達を純粋な破壊者という呪縛から解き放ったのだ。

 マクロスを……否、ミンメイを中心に艦艇が編隊を組む。

 目の前に浮かぶのは、十キロ単位で計るだけ馬鹿らしい巨大な敵と、その親衛部隊が数万。
 かつての敵味方は、共に手を取り、その巨大な敵に挑む。

 マクロスの艦橋の左右に、輝と誠が陣取る。

 輝は美沙に、誠はさくら、あかね、エリア、フランに微笑みかける。
 分厚い鋼を通して、愛しい人の笑顔を感じる。

 先陣がぶつかり合う頃、間奏が終わった。



「今、あなたの視線感じる、離れてても」

「体中が、暖かくなるの」

「今、あなたの愛信じます、どうぞワタシを」

「遠くから、見守ってください」



 再び、歌姫達の声が宇宙に響く。

 ボドル旗艦から放たれる幾筋もの光線が、無数の戦艦を蚊蜻蛉のように落としていく。
 主砲をチャージしていたメルトランディ砲艦が、光線の一撃を食らってバランスを崩す。

 ボドル旗艦の装甲を貫き、内部に突っ込んで艦各所から爆発を発しながら、
メルトランディ砲艦は主砲を敵艦内に放った。

 アドクラス艦隊司令、ブリタイの行った作戦は単純なものだ。

 敵の攻撃の範囲外……詰まるところ、ボドル旗艦の装甲にとりつき、
零距離で主砲を撃つと言うものだ。

 無論、無傷で装甲に取り付けるわけもなく、艦各所は被弾、艦橋も炎に焼かれる。
 しかしながら、彼はそれに怯むことなく、主砲発射の指示を出した。

 艦の主砲が唸りを上げ、ボドル旗艦の内部を抉っていく。
 そして、その中にマクロスが突っ込んでいった。





「覚えていますか? 眼と眼があった時を」

「覚えていますか? 手と手が触れ合った時」

「それは初めての、愛の始まりでした」

LOVE YOU SO!!





 マクロスの船体各所からミサイルが飛び出す。

 デストロイド、バルキリー、艦装備を問わず、様々な場所から無数のミサイルが飛び出す。
 ピンポイント・バリアをアームド1に集めて突撃する「ダイタロス・アタック」の応用で艦を固定する。

 ここからは、小型機の仕事だ。

 ヒュッケバインガンナーとストライクバルキリー、
二つの機体は見事な敬礼を見せると目的地に向かって飛ぶ。

 ボドルザーまでのダクトは長く、様々な防衛システムは未だに生きていた。
 内部防衛のリガードやヌージャデル・ガーも健在だ。

「ぶっ飛べ! フルインパクトキャノン!!」

 誠の放った一撃が防衛部隊や防御システムを削っていく。

『メインターゲット、A133、G165!!』

 コンピュータにボドルザーの位置が入力される。
 輝と誠は、全力で其処に向かって飛ぶ。





「……良い歌だ、俺たちも行くぜ!!」

 非常に希少な戦闘ポッド、グラージに乗った巨人が叫ぶ。

「隊長! それでは……」
「馬鹿野郎!」

 部下の言葉を遮って、彼は口元に笑みを浮かべる。

「俺は“味方殺しのカムジン”よ!!」





 ボドルザーは驚愕していた。

 虎の子の艦隊が為す術もなく沈んでいく、
それどころか、こちらは相手にまともな有効打撃を与えていない。

「これが……リン・ミンメイの歌か……これが……文化の力かっ!!?」

 ボドルザーの目の前には、巨大なモニターに映る5人の歌姫の姿がある。
 彼女らが開いた腕の中に、光が生まれた。

「チェンジ・ボクサー!! Gソード・ダイバー、起動!!」
「いくぞっ!!」

 輝の乗る、バルキリーが放った無数の弾丸が、ビームが、ボドルザーに吸い込まれていく。
 誠の駆るヒュッケバインボクサーの必殺技、Gソード・ダイバーがボドルザーを切り裂いていく。

「デ カ ル チャーーー!!」

 意外にも脆く、ボドルザーは崩れていく。
 辺りが化石化したように崩れ始め、マクロスが背後に見えた。

 誠と輝は、同時にマクロスに振り返る。

「スカル11よりデルタ1へ……任務完了! これより帰艦する!」
『……こちらデルタ1……了解……!』

「さくら、あかね、エリア、フラン……今から帰るから、飯の準備しといてくれるか?」
『………はいっ!』
『うんっ!』
『沢山作ってますから!』
『楽しみしていてくださいね、誠様!』

 かくて、一つの戦いは終わりを告げた。

「これからが大変ですな……ボドルザークラスの旗艦をもつ艦隊が、
銀河系だけでも1000艦隊以上活動中の筈です」
「ああ……だが、歌一つでこれだけのことが出来たのだ……文化の力を信じるしかあるまい」

 ブリタイの言葉に、エキゼトル参謀は小さく頷く。
 彼らには、まだ戦いの場が遺されているのだ。





 ともあれ、この戦いが、今、終焉を迎えたことは間違いない。

 ブリッジでは、沢山の人々が肩を寄せ合い、勝利を喜んでいる。

「結局……なんだったのかしらね? あの歌」

 マクロスの管制オペレータ、クローディアが美沙に尋ねる。

「ただの流行歌よ」

 それに対して美沙は、軽く伸びをしながら答えた。

「流行歌?」
「そう」

 小さく微笑んで、彼女は続ける。

「何億年も昔に宇宙人の街で流行った……」































(あたりまえの………………ラヴ・ソング)






























 ステージ上で、ミンメイは靴のつま先をこんこんと叩く。
 歌い出しのタイミングをとるための「1・2・3・4」という合成音が聞こえる。

 暗いステージの上で、彼女はその行為を繰り返す。

 突然ステージがスポットライトで照らされ、歓声がわき上がる。

「たそがれ、映す、窓辺へと、舞い降りる……」

 今、彼女はコンサートの真っ最中だ。
 僅かな、本当に僅かな平和だとしても、今の彼女には歌うことしかできない。

 だが、彼女はそれを苦痛には思わない。
 何故なら……、

『ミンメーイ!!』

 ロンド・ベル隊のパイロット達が座っている辺りに手を振りながら、彼女は歌う。
 沢山の仲間達に、感謝を込めて。








 その後、ロンド・ベル隊は第2新東京市においてティターンズによるネルフの接収を妨害、
先行量産型のEVA9機を破壊した後、雷王星宙域においてSTMCと交戦。

 その後の情報は、何もない……、








<This story lasts to the super robot war α. >


後書き

 さて、相互リンク記念にSSを送らせて頂きました。

 スパロボHTH、如何だったでしょうか?
 αやったことの無い人と劇場版マクロス知らない人には良く判らんネタだったかも知れません。

 是非「愛・覚えていますか」を聞きながら読んでみてくださいね♪

 2002.5.真魚


<コメント>

由綺 「さくらちゃん、あかねちゃんっ! 私と一緒に唄ってっ!
    大切なものを守るためにっ! この戦いを終わらせる為にっ!」(^▽^)
あかね 「うんっ! わかったよ、由綺お姉ちゃん!」(^▽^)
さくら 「はい! まかせてくださいっ!」(^▽^)
エリア 「私も、心を込めて唄います!」(^▽^)
フラン 「僭越ながら、ワタシもご協力させて頂きます」(*・_・*)
由綺 「それじゃあ、いくよ! 1、2、3――」(^▽^)

 すっきすっきすっきすっき、すきっすき♪ あ・い・して〜る♪
 すっきすっきすっきすっき、すきっすき♪ まーくん(冬弥君)♪

誠 「なんじゃそりゃーーーーーーっ!!」Σ( ̄□ ̄)
冬弥 「うわあああああーーーーっ!!」Σ(T□T)

浩之 「いきなり、なんちゅう歌を唄ってやがるんだよっ!」( ̄□ ̄メ
あかね 「うにゅ? でも、気力は全部50まで下がってるし……」(・_・?
さくら 「結果としては同じですよ」(・_・?
耕一 「味方の気力まで下げてどうする! この大馬鹿者ーーーっ!!」(T□T)
祐介 「うううう……精神ポイントまで0になってるし……」(T_T)
健太郎 「終わったな……この戦い……」(T_T)

瑞穂 「敵艦より通信! 『これより、貴艦を援護する』っ?!」(@○@)

一同 「「「「「デカルチャーーーーーーッ!!」」」」」(@○@)(@○@)(@○@)


STEVEN 「真魚さん、ボクの我侭なリクエストに応えていただき、
        本当にありがとうございました」<(_)>

<戻る>