二次創作投稿(Kanon)

 「KEROPY,KEROPY」
                                   (作:阿黒)







「ゆーいちー。ゆーいちー。ゆーいっち〜〜〜〜〜」

「はっはっはっはっはっ名雪ー。
その独特の間延びした口調で人の名前連呼されると、
何故か知らねどムカつくぞコンチクショウ」

「うわひどいよ祐一。横暴だよ」

「うるせ。で、なんだよ?」

「えへへ。さーなんでしょうー?
クイズに答えてハワイへいこー。トリスを飲んでハワイへいこー」

「……話す気ないなら俺は寝るぞ」

「ああっそんなっ!? お母さん直伝のCMネタが通じない!?」

「そんなどこがネタなのかすらわからんネタで笑えというのは拷問だぞ。
っていうか、それ俺らが生まれる遥か昔のCMだし秋子さん!」

「ひどいよ祐一悪人だよ越後屋だよ山吹色の菓子だよ」

「なんでひどいんだ! っていうか何を言いたいのかは
まあ分らなくもないがどういう比喩だそれは!?」

「俺の名前は引導代わりだ迷わず地獄へ落ちるがよい〜」

「なんで長七郎江戸日記!?」

「ところでね祐一」

「お前から振っといて今までの全部スルーかいっ!」

「うん」

「あっさり肯定してるし! まあその方が良いんだけどな」

「祐一っていい加減だよね」

「お前が言うなお前がっ! で、なによ? 言えよ?
可及的迅速に速やかにたちどころに100字以内で半角不可!!?」

「えへへー……できちゃった☆」

 ……………。

「はっはっはっベタだなぁ名雪は。
一瞬俺たちの子供ができたのー、とか思わせて実はご飯ができたのーとか
北斗神拳奥儀無想転生ができたのーとか、そういうオチなんだろ?
そうなんだろ? そうだよな名雪っ!?」

「祐一、念押しが何だか必死だよ」

「そ、そうですカッ? ソンナコトハ全く全然ありマセンヨ名雪サン?」

「もー。とにかくそんなの、念押しされなくても大丈夫だよ。決まってるよ」

「そ、そうか? 大丈夫か? 決まってるんだな?」

「もちろん、私と祐一の赤ちゃんができたんだよ」

「うわいつの間にっ!!!?」

「……祐一、あれだけ生で私の中に出しておいて、今更それは無いと思う」

「い、いや、そりゃそうなんだけど……その……いきなり現実をつきつけられても」

「さ〜、パパでちゅよ〜〜」

「えっもう産まれてる!?
……ってヲイ! そりゃケロピー人形じゃねえかっ!!」

「ケロピー人形じゃないよー。ケロピーだよー」

「ええぃどっちでも同じだ! ったく驚かしやがる…」

「さーケロピー、パパにご挨拶でちゅよ〜〜」


 ゲロゲロ。


「誰がパパだっ!っていうか今鳴いた!カエルが鳴いたっ!?それナマモノ!!?」

「カエルじゃないよう。私と祐一の愛の結晶だよ」

「そんな巨大両生類がなんで愛の結晶だコラ!!」

「そんな言い方ひどいよ祐一…私、がんばって卵産んだんだよ」

「マジかよっ!? っていうか正気か名雪〜〜〜〜〜〜〜!!?」

「祐一、ケロピーはスゴイんだよ!
これを見れば祐一もケロピーのスゴサがわかるよ」

「いやもうその物体はある意味スゴイが。っていうか問題はそこではなくて!」

「ケロピーごはんだよ〜〜、ニワトリ一羽丸ごと〜」

「聞けや人の話!」


 ゲロロ

 ゲロロロロ。

 ……………。

 ヒュパッ!!



「舌でニワトリを絡め取った!?」

「それだけじゃないよ祐一!」


 ぬきょっ、ごきゅっ!!!


「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっ!!!?」

「うふふ、ケロピーは眼球でエサを押して飲み込むんだよ!」

「め、目玉がっ、目玉が顔に陥没してっ…!」


 パキ…ポキ…

 ベキ……ぐちゃっ…!



「どう、祐一!?」

「めっさナマグロいわバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!
っていうか音が! なんか色々と想像できちゃう音が――!!?」

「良かったねケロピー? パパが誉めてくれまちたよ〜〜」

「絶対誉めてない! それからパパ言うな!俺は両生類の子供を持った覚えはない!」

「えっそんな、この子を認知してくれないの!?」

「お前、何が何でもコレを俺の子供と言い張るつもりか!!」

「……ひどいよ祐一、極悪人だよ。そちも悪よのぅ越後屋、だよ」

「だから何で時代劇!
……ああもう、ツッコミどころが多すぎて何から突っ込めばいいのか」

「――私、たくさん卵産んだのに。私一人でどうやってこの子たちを育てていったらいいの?」

「捨てろ! 自然に帰してやれ! …っちゅうか、た、たくさん?」


 ゲロ……ゲロロ…

 …ゲロ…ゲゲゲゲゲッ…

 ゲロゲロゲロ………ゲロッ!



「こ、ここにもそこにもあそこにもっ!!?」

「♪エロイムエッサイムっ、エロイムエッサイムっ」

「呑気に悪魔くんの歌なんか歌ってる場合ではなくて――!」

 ゲロゲロ……ゲロゲロ……

「ひっ、ひいいい!?」


 ゲロゲロ……ゲロゲロ……


「うふふふふ…ゆういちぃ…できちゃった結婚って
あんまり聞こえは良くないけど、でも最近はそう珍しくもないよねぇ…」

「なっ、なゆきっ!?」


 ゲロ……ゲロゲロ……ゲロ


「私……新婚旅行はオーストラリアでコアラ抱きたいなぁ」

「な、名雪……?」


 …ゲロ…ゲロ…ゲロ…ゲロゲロ…


「祐一ぃ……初孫ができて、お母さんも喜んでるよ」

「名雪? 名雪!?」


 ゲロゲロゲロゲロゲロ……
  ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロ………



「名雪っ!」

「………けろ?」

「――――――――――っ……!」
















 だから、なんでカエルなんだよおおおおおおおおおおおおっ!!!?
















「……――――――っ」

 声にならない叫びが爆発して、俺は目を覚ました。

 目を覚ました。

 そう。
 夢か。
 そう…か。
 夢か。夢だよな。

 しかしひどい夢だった。

 俺は無言のまま、薄く瞼を開いた。
 狭い視界にぼんやり見えたのは、リビングの天井。

 ああ。そうか。
 風呂に入った後ソファに寝転んでて、パジャマのままうたた寝してしまったらしい。

 やれやれ。



『……………yo…』

『―――――SUN』



 っ!?
 な、なんだ今の?

 いま、耳元で、地の底から響いてくるような―――!?

「……毎日イチゴサンデー10杯は食べたいよー。手を繋いで歩くのを恥かしがることはないよー。
おはようとおやすみのキスしてくれたらちゃんと私起きられるよー。
学校で一緒にお弁当食べるよー。ピーマンとニンジンもちゃんと食べるよー。
祐一がエッチしたいなら私オッケーだよー。でもブルマでエッチしたがるのは私ちょっと恥かしいよー」

「初孫内孫推奨です。大歓迎です祐一さん。ドンドンがんばってガンガンがんばってください祐一さん。
5人でも10人でも了承です祐一さん。親公認ですから遠慮なく名雪に夜這いしてくださいね祐一さん。
式場の手配は任せてください祐一さん。新婚旅行はオーストラリア七泊八日の旅なんて
お薦めです祐一さん。ところで名雪、お母さんもコアラ抱きたいから一緒に行っていい?」

「……なにやってんすか秋子さん、名雪?」

「はわ!?」

「あらあら。お目覚めになりました、祐一さん?」

 丸めて筒にした新聞紙を慌てて後に隠す名雪と、
おっとりと頬に手を当てながらさり気なくやはり同様に手を後に回す秋子さんを、俺は半眼で見つめた。

「何をやってたんですか、二人とも?」

「うう…祐一、目が怖いよ…」

「あらららら。もしかして、怒ってますか?」

 ピンポン玉大に圧縮された新聞紙を
ぽとっ、とソファーの陰に落としながら、秋子さんはあくまでにこやかに言った。

「実はちょっと睡眠学習の実験など」

 というかどちらかというと洗脳っぽく。
 もしかして開き直りましたかMrs.jam?

「止めて下さい金輪際」

「と、倒置法?」

「お前もだ名雪っ! っていうか母娘揃って何をやってますかっちゅうか!」

 まだ普段着のままの秋子さんと、
俺同様パジャマ姿の名雪は、顔を見合わせた。

 二人並んでいるその姿は、母娘というより姉妹といった趣きだが。

「でも私にだって三十代のうちに初孫を抱いてみたいというささやかな夢が……」

「祐一には一家の主として早いうちから
覚悟決めてもらった方がいいかな、とか…うう、顔が怖いよ祐一」

 ジリジリと戸口へ近づこうとする二人の退路を断つように廻り込みながら、
俺はできるだけ笑ったように見えるよう努力した。

 ――二人の様子から察するに、あまり成功しているようではなかったが。

「名雪……お前今度、スク水でな」

「えええっ!? そ、それはブルマより恥かしいよう」

「名雪、それは寧ろ推奨よ?」

 うろたえる娘に、拳を握って励ますグレートな母である。

「秋子さん……あの『ジャム』、今度の生ゴミの日に出してくださいね」

「えええっ!? ド、ドラム缶で3本はあるのに!?」

「「そんなにあったんかいっ!!?」」

 俺と名雪が、ダブルで突っ込んだ。

 そんなに作ってどうするんですか秋子さん。

 食べるんか? 食べるんすか?
 誰が? 誰に?

「こんなにおいしいのに……」

 真顔でウソをつかないでください秋子さん。

 ウソですよね? ウソでしょう?
 まさか本気じゃないですよね?

「さて、それじゃお母さんもお風呂入ってこようかな」

「ああお母さんズルいよ卑怯だよ強引だよごまかしだよ一殺五百両だよ!?」

 なんで子連れ狼なんだ名雪っ!?

 小一時間くらい問い詰めたい。問い詰めたいが。
 ちゅうか逃げたな、秋子さん。

 俺は、まだ馴染まぬ真新しいパジャマの襟を直すと、名雪にクルリと背を向けた。

「……あ、祐一どこ行くの?」

「なんかドッと疲れた。今日はもうおとなしく寝る」

「あ………えーと、その」

「なんだよ?」

 なにやら意味も無くワタワタとMPを吸い取りそうな怪しい踊りをする名雪。
 多分、慌ててるだけなんだと思うが怪しいし。

「えーと、あの、その、えっと、あのね? つまりだから、その〜〜」

「……おやすみ名雪」

「うわいっちゃやだよ祐一このまま放置じゃバカみたいだよ私!」

「心配するな。今のお前はキッパリとバカだ」

「ひどいよ祐一容赦ないよいじめっ子だよ〜」

「だからその怪しい踊りやめい!ホントに何か吸い取られそうな気がするし!」

「う〜〜〜〜……怪しくないもん……」

 説得力皆無なことを言いつつ、名雪は、
すこし潤んだ瞳でやや上目遣い気味に俺を見てきた。

 ……くそぅ、分っててもやっぱ男ってこういう仕草に弱いよな。

「だ……だから」

「なんだよ」

「祐一、今日は……その、寝るの? ……一人で」

 …………。

 いや、一人でって。

 その。
 えっと。

 くそう、照れるじゃねーか名雪ぃ!

「せっかくお揃いのパジャマなんだし……」

「それ理由になってるか?」

 言いつつ、俺は名雪と揃いの……、
 コミカルにアレンジされたケロピー柄なパジャマを見直した。

 ああ頭イテエ。
 なんでカエルが好きなんだこいつ。

 あ、もしかしてこのせいか? あんな夢みたのは。

「えへへ。私たちってもう立派な新婚さんだよね」

「ペアのパジャマくらいで気分出してんじゃねーよ」

「う〜…」

 少ししょげる名雪に、俺は。

 ……くそ、俺こんなだから舐められるんだよなあ。

「でもまあ、概ね間違っちゃいない……かな?」

「……うんうん、間違ってないと思うよ、概ね」

 にぱっと表情をほころばせる名雪。

 ったく、やっぱダメだ俺。こいつには勝てねーわ。
 多分一生。

「じゃあ寝るか……スク水で」

「……う゛」

 ヒクッ、と名雪は見事に口元を引き攣らせた。
 泣きそうな顔で、言う。

「……どうしてもやるの、祐一?」

「やる。っていうかこれは男として一度は体験しておきたい通過儀礼?」

「祐一、欲望一直線だよ…」

「何を言う。裸エプロンは名雪が本当の新妻になるまで我慢しようって決めてるんだからな」

「に、にいづま……(ぽっ☆)祐一、う、うれしいけど、
うれしいんだけど、でもなんかそれビミョーな気がするよ〜」

 パジャマの上から羽織った綿入れの袖で、
顔を半ば隠しながら、名雪は身体全体を縮こませる。

 そんな名雪をネコのように襟首をつまんで引き立てて、階段を昇る。

「……えっちな事するならするで、それは恥かしいけどイヤじゃないよ。
でもどうして普通じゃだめなのかなぁ? ブルマとかスクール水着とか……」

「男の浪漫というヤツだ!」

「……言い切っちゃったよ祐一」

 少しあきれたような、その小さな呟きは聞こえなかったふりをして俺たちは階段を上がる。

 さっきの夢は馬鹿馬鹿しい、悪夢と呼ぶにはチンケなものではあったが、
俺の内心の一部を反映しているところも、確かにあった。

 俺と名雪は、これからどうしていくのか。

 無論、それは決めている。

 約束がある。
 俺はずっと、名雪の傍にいる…と。

 それは名雪の望みであり、俺の願いであり、
そして、永遠に破られることのない、互いの誓約であり。

 だからまー、ケロピーは論外としても、子供のこととか……、
 考えておかなきゃいけないことは、色々ある。

 将来のこと。未来のこと。それは未知のことだから。

 不安もあるし、畏れもある。
 けれど。

「うにゅ〜〜〜あんまり引っ張っちゃだめだよ祐一、おへそでちゃう〜」

 ……俺に奇蹟は起こせなくても。

 こいつの傍に、いることはできるから。
 照れくさいから、面と向っては言わないけれど。

「名雪……お前、ヘソ責めって知ってるか?」

「ああっ祐一がまたどこからか怪しい知識を!?」

 でも、今は、こうやって毎日を送っていきたい。

 日々繰り返される、小さな夢と小さな幸せを卵のように包みこみながら。
 いつかそれが、大きく孵るように。

「おお、ヘソがあった。名雪、お前やっぱり両生類じゃなかったんだな」

「祐一は私を何だとおもってるんだお!?」

「言わせるな。俺にも情けはある」

 つい、こんなことしておちょくったりはするけどな。








<終わる>
























 ごめんウソ。もちょっと続く。





  * * * * *





「うっふっふっふっふっふ……
3度の肉まんを2度にして、ついに手に入れたわよ
南米産オオツノ赤白マダラゼブラアオカエル!! ……う、うあ動かないでよぉ」

 祐一の枕カバーから中身を抜き出し、
代りに巨大な両生類を詰め込みながら真琴はニヤソと黒い笑みを浮かべた。

「何も知らない祐一が寝ようとしたら……うぷぷぷぷっ、
生臭くってグニャグニャしてそれはもうナマゲニャむびゃぱ〜なことにっ!!」

「ほほう。しかしどこからそんなシロモノ、手に入れたんだ?」

「美汐に相談したらそっから佐祐理に話がいったみたいでさー。
何だかわかんないルートだかつてを頼ってくれたみたいで。
わしんとん条約がどーとかいってたみたいだけど?」

「無駄に手間隙かかってんなー。しかし金持ちって、そーいうとこが怖いなマジで」

「うんうん。美汐も同じ事いってた。
でも、それわかってて相談もちかける美汐も同じくらいには怖いかもね〜」

「そうだなー。はっはっはっはっはっ」

「あははははははははははははは♪」

「じゃあ、そろそろシヌか?真琴?」

 俺は、引き攣った笑いを強張らせて、
ジリジリと俺から身を離そうとしていた真琴の頭を掴んだ指に力をこめた。

 頭蓋骨がミシミシと軋むのが、音ではなく感触で伝わってくる。

「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだっっ!!? 死ぬっ、死ぬるよ祐一っ!!!」

「さて、真琴……質問は一つだ。何でおまえ、こんなことをする?」

「だって祐一はあたしのオモチャ?」

「名雪、足もって」

「わかったよー」

「うわ名雪までっ! ちょ、ちょっとなにすんのよなにすんのよなにすんのよ〜〜〜〜!?」

 俺と名雪は二人がかりで、有無をいわさず真琴を布団巻きにした。
 更に上からロープで頑丈に縛り付ける。

「なっ、なっ、なっ、なにすんのよ祐一〜〜〜〜!!
ていうかー! ま、まくらがっ!
カエルの枕があたしの顔で密接して大変なことにっ!!?


 ゲロゲロゲロゲロ。


「鳴いてるっ! 鳴いてるよう!
気持ち悪いよ気色悪いよ気味悪いよ
カバー越しにヌメヌメがジタッと張り付いて生臭くて大変なことにっ!!
うわ、出る、出てくるはみ出る〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?
真琴ちゃんDIEピンチ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」

 ジタバタと無様にもがく布団虫を更に窓から吊るしながら、ため息混じりに俺は名雪に言った。

「すまんが、今日は名雪の部屋で寝させてくれ」

「うん。というか勿論だよ。勿論だけど……」

 ぎゅっ、と机の脚にロープを縛り付けてから、
なにやら頬に一筋の汗を垂らしている名雪は言った。

「手伝っておいてなんだけど……祐一って、ほんっっとに容赦ないよね?」

「いやでもな名雪、真琴の場合あれくらいはしないと懲りないからなぁ。学習能力無いし」

「うわ本気で言ってるよ祐一」

 何故か恐ろしそうな目で俺を見る名雪の不可解な態度は
とりあえずスルーしておくことにして、俺は近い将来のことを、
少し真剣に考えてみる必要があるか、と思い直していた。

 とりあえず窓は閉めてから。

「なあ、名雪。別に今すぐってわけじゃないけど……」

「なに、祐一?」

「高校卒業したら、家を出て二人暮ししてみるか?」

「ふぇ!? ……う〜〜ん、ちょっとそれ魅力的かも……」

 そう言葉を交わしながら俺たちは廊下に出た。
 すぐ隣りの自分の部屋のドアに手をかけたところで、クルリと名雪は俺に顔を向けてくる。

「でもさ……それって、お母さんと離れちゃうんだよね。
お母さんと真琴ちゃん、二人だけだと……この家、寂しくなっちゃうかなぁ、って……」

「そうだよな。まあその辺も含めて、おいおい検討してみようか」

「うん。そうだね。でも、いきなりどうしたの?」

「まあ、なんていうかさ……、
こう、身近のゴシャゴシャした人間関係を整理したいというか」

 言いつつ、ドアを開ける。

「あら祐一さん、名雪」


 ずがしゃああああああああああああああああああっっっ!!!


 俺と名雪は、ダブルでズッコケた。

「お、お、お母さんなに私のスクール水着着てるのっ!?」

「なにって……今夜はスク水だって言ってたから準備してあげたんだけど」

「だからってどうしてお母さんが着てるのっ!?」

「うふふ、ちょっと懐かしいかなって……、
ちょっと不安だったけど、うん、まだまだお母さんも捨てたものじゃないでしょ?」

 秋子さん。
 いやもうぱっつんぱっつんつーかムッチムチというか。いやそれある意味犯罪。

 年甲斐もなくとかでも17歳女子高校生の娘と同じ体形はスゴイとか
体形は同じなのに大人の魅力で名雪より遥かにエロいいうかもう色々な意味で問題あるゆーか。

 でも……グッドです!!

「ゆ〜〜いちっ、えっちな目でお母さん見ない!」

「アダダダダダダダダダダッ、爪っ、爪たてんなっ!!」

「あらあら。じゃれちゃって」

「いや秋子さんそんな可愛いものではないですこの危機的状況!」

「でも大丈夫。ちゃんと名雪には専用の水着を用意してあるから」

「専用……って?」

「ほら、普通の品より繊維が弱いから、破れやすいの」

「ありがとうございます、秋子さん!」

「ゆ、ゆ、ゆ、祐一の根スケベ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

「それじゃあ、邪魔者は去るわね。
でも二人とも、学校があるんだからあんまり激しくしちゃダメよ? 朝、起きられなくなるから」

「お母さんのばかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 名雪の駄々っ子パンチの射程からあっさり抜けると、
秋子さんはお尻の食い込みを直しながらさっさと部屋を出て行った。

 ……スイマセン、鼻血噴きそうデス秋子さん。

「なに前かがみになってるのよ祐一の裏切りもの〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「うわゴメンでもこれは男の悲しい習性といいますか……!」

「う〜〜〜、う〜〜〜〜、う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
ほんと、このゴチャゴチャした人間関係を整理する必要、あるよね祐一っ!」

「は、はい! 名雪さん!」

 いやもうホント。
 決してイヤではないけれど、イヤじゃないんだけど、むしろ了承なところも多いんだけど。

 ……異様に疲れます、今の環境って。








「ところで名雪、この専用スク水」

「……や、やっぱり、着なきゃダメ?」

 ダメです。








<なし崩しに了>


【後書き】

 実は、純粋にKanonの二次創作SSっていうのは今回が初めてだったりします、自分。
 我ながら、ちょっと意外。(了承学園では何度かあるんだけど)

 最初は真琴のカエル枕仕込みでEnd、というつもりでしたがちょっとオチが弱いかなーと。

 話的にはカエル(ケロピー)がキーになってるんですけどね。
 で、蛇足と思いながらもう少し継ぎ足すことにしました。

 で、色々パターンを模索。

@あゆ&舞がたいやき強奪して逃げ込んできて、ぶら下げれられた真琴を舞が剣で解放。
  同時にカエルが舞の顔面に張り付き、舞が剣をブンブン振り回しながら大暴走→END。

A名雪の部屋に移るとベッドの上に秋子さんが用意したスク水。
  秋子さんはケロピーヌイグルミを着てカモフラージュ、影からそっと娘の成長を見守ろうと……、
  デジカメ片手に。

 結局こういうことになりましたが……、
 やっぱ当初の通り、真琴のところで終わってたほうが良かったような気もします。

 難しいやね。


<コメント>

あかね 「まーくん、まーくん、まーくん♪」(*・・*)
誠 「――ん? どうした、あかね?」(・_・?
あかね 「あのね……できちゃった♪」(*^▽^*)
誠 「……はい?」(−−?
あかね 「――宿題が」(^〜^)v

 ――ズルッ!

誠 「あ、あのなぁ……」(−−;
さくら 「まーく〜ん――」(*^^*)
エリア 「――で、できてしまいました〜」(*・・*)
誠 「今度は、メシが出来たのか? 同じネタは、もう良いって」(−o−)
さくら 「……残念です」(−−;
みこと 「え〜……みーちゃんも出来ちゃったのに〜」(−o−)
誠 「はいはい……何が出来たんだよ?」( ̄△ ̄?
みこと 「えっとね〜、妹が出来ちゃった♪」(*^▽^*)
誠 「はいはい、それは良か――なにぃぃぃぃぃーーーーっ!!」Σ( ̄□ ̄)
みこと 「うそぴょ〜ん♪」v(^ー^)v
誠 「こ、このバカ母……」(−−メ

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