『月姫』二次創作SS
「ネコの手帳」(作:阿黒)
「――おはようございます、志貴さミャ」
朝のいつもの目覚め――
いつもの翡翠――
――でも、なにかひどい違和感。
「翡翠……?」
「なんですニャ」
ニャ、って……?
俺は、眼鏡をかけると、翡翠をもう一度見つめた。
いつものメイド服。いつもと変わらぬ毅然とした顔。
でも、心なし頬が赤いかも……、
肩のところで揃えた赤い髪にはヘッドドレス。
そんでもって、ネコ耳。
…………。
――リピート。
肩のところで揃えた赤い髪にはヘッドドレス。
そんでもってネコ耳。
――ネコ耳?
うあ、おまけに首輪までつけてますよ?
「翡翠……それ……?」
「ふみゃ……」
完全に頬を染めた翡翠は、本物のネコが叱られた時のように、
ネコ耳を後ろに伏せながら、…そおっ、と上目遣いで俺を見た。
それは、卑怯だ。
メチャクチャ可愛すぎるっ!
「ひっ、ひすい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
「ふみゃぁ……!!」
「お前がいけないんだっ! お、お前がこんなカッコで誘惑するからっ!」
「誘惑だなんて……そんな……ちがう……」
「なにがちがうなにがっ! そんなネコ耳っ! 首輪までつけて反則っ!」
「フ……フミャアァ……志貴さま……」
「なに!?」
「お願いですから……やさしく……してくださいニャ」
――ぷっつん。
「ひすい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「お……おゆるしください、ご主人様!!」
――ぷちぷちぃ!
完全に――
おれの理性の――
ブレーキが――
壊れた――
つーか、アクセル全開――!!
* * * * *
「――で? 結局どういうことなの琥珀?」
「あははー。志貴さん、ズタボロですねー」
秋葉にしこたま殴られました。
顔が変形するほど……、
「うみゅ……」
ネコ耳翡翠が、そっと、俺の頬を冷してくれている。
と、ちょっとためらって……、
――ぺろっ。
俺の頬を、舐めた。
ザラッとした、猫舌で……、
「翡翠―――――!!! この泥棒ネコ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「あはー。そのまんまですねー」
うわ、最初からブチ切れてる秋葉はともかく琥珀さんの目も怖い。
笑顔で怒る割烹着の魔女。
「うーん、偶然とはいえ、なんていうか冗談みたいな薬ができちゃいましたねー」
つまり原因はこの人。
「偶然ネコ耳生やしちゃう薬を作っちゃう才能が、我ながら怖いですね。原材料リポDで」
リポDなんですか、原材料。
というか、何を作るつもりだったんですか?
「んー、とりあえず、実験材料に翡翠ちゃん使ったのは間違いではないんですけどねー」
「姉さん……」
流石に怒った翡翠が極道姉に詰め寄る。
が……、
「ほらほら〜〜」
プタプタプタプタ……
猫じゃらしを振る琥珀さん。
はしっ! はしっ! はしっ!
思わず、それにじゃれついちゃう翡翠。
なんてーか、性格や言動までネコっぽくなってる。
「あ〜。でもでも、我が妹ながら可愛いったらないじゃないですか〜〜」
「…………」
だまってソレを見ていた秋葉が、翡翠の傍に毛糸玉を転がした。
「ニャン!」
条件反射でそれに飛びつく翡翠。
ころころと転がしてじゃれつく様は、異様だけどかわいかった。
「あうっ……なんかいいかも……」
「に、にいさん何をいってるんですか……」
頬を染めてそっぽ向く秋葉。きっと、一瞬かあいいっ!とか思っちゃったんだろうなー。
俺もそうだから。
「でもさ、琥珀さん……治せるの?」
「さあ〜? どうでしょう?」
どうでしょう、って、そんな無責任な……、
「なんか……これはこれでいいかも」
「にゃっ、にゃっ」
琥珀さんに代わって猫じゃらしで翡翠と遊んでる秋葉が、
まんざらでもなさそうな口調で言う。
つーか、猫化が進んでません?
「なーお?」
「うお、翡翠っ!?」
いきなりソファーに座ってた俺の膝に、翡翠は乗っかってきた。
無論、本物の猫と違って膝の上にすっぽりと納まるわけがないが、
それでも俺の膝に頭を乗せて、ゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らしている。
「お、おい、翡翠……」
鬼妹と魔女が、なんかスゴイ目で俺を見てるですよ!?
ヤベーわ、すげーヤベーっす、翡翠さん!
「みゅ〜……」
か細く、鳴いて上目遣い。
――ぷちっ。
「翡翠〜〜〜〜お前ってやつわお前ってやつわも〜〜メタメタにしたるがな〜〜!!」
「ふにゃああ―――――――――――――――!!?」
「いーかげんにしなさい、この外道兄っ!!!」
秋葉・渾身のコークスクリューブロー。
「あはー。これは早急に解毒剤とか作らないとダメですねー」
* * * * *
――と、琥珀さんが言っていたのが昨日。
んでもって……、
「なんでこーなるんですか?」
「あはー。ちょっとした手違いってやつですにゃー」
「しょ、しょうがにゃいじゃにゃいですか兄さん」
「秋葉さま……姉さん……お揃いですミャ」
ネコ耳琥珀さん・ネコ耳秋葉・ネコ耳翡翠……、
しかも、今日はシッポまでついてるし。
「……解毒剤作るんじゃなかったんですか?」
「うみゅー、そのはずだったんですけどニャ〜。元々、偶然できたものですし」
困ったような顔をする琥珀さん。
でも、シッポは勢いよくうねっていて、上機嫌であることを示していた。
絶対ウソついてますぜ、この女。
「でも、だからって、なんでみんなして猫耳進化?」
「ミャハー。不幸な事故ですー」
「製錬中の薬品のチューブが外れて、気化して、吸い込んじゃったんですにゃ」
「まったくもう! ニャんで私まで猫耳にニャるんですミャ……」
何気にみんな言い訳っぽいんですが、気のせいですか?
「はー。とにかく琥珀さん、早く解毒剤をお願いしますにゃ」
……………。
……………。
――ハイ!?
今、俺、何をいいましたみゃ!?
「あの……ですから、志貴さミャ……」
「今、ウチはその……薬品汚染というか……兄さんも、その……にゃ?」
「あはー。かわいいですニャ志貴さんー」
Shoooook!!
なんですか、この尻の異物感はっ!
頭の付属物はっ!!?
うあ、なんかこー意味もなく柱で爪を研ぎてえ!!?
「兄さん……かわいいですニャ……」
「志貴さミャ……」(ぽっ)
「あはー。なんかもー、一蓮托生って感じですミャ〜」
はうわ〜〜〜(泣)
なんですか俺ネコミミボーイすか!?
「ハァ、ハア……に、兄さん……」
「し、しきさみゃ……」
うお!? なんですみゃ秋葉に翡翠!?
何故に声を荒げる!? 顔を赤くする!?
そんな、潤んだ瞳で俺を見ユ!!?
どーしていきなり発情期!!?Why!?
「あは〜……やっぱりマタタビって気持ちいいですにゃ〜……ハァハァ」
あんたかいっ!
って、そういう張本人も息が荒いし!!
「に、にいさん……わたし、もう……」
「も、もうしわけありません……こんなはしたないメイドで……」
「えへへ……覚悟しちゃってくださいね、志貴さんー」
――おうわ!
四つんばいで迫ってくるな人類ならばっ!
理性を保て! 正気に戻れ!
そんなネコミミなんかに負けるなみんニャ!
今時ネコミミもニャいだろおい!
ネコミミなんて、ネコミミなんて、そんな、あからさまに媚び売ったヲタクスキーな……、
秋葉ネコなんて! 琥珀ネコなんて! 翡翠ネコなんて!
「かわいいじゃねえかコンチクショ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「「「うみゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん♪」」」
ネコミミ万歳。
萌えまくり。
<終われ>
その後、薬の効果が自然に切れた後、
琥珀さんの秘密地下実験室でヘロヘロになったレンが発見されたとか。
しかも何かの実験に使われたっぽい……、
結局、全ての全てはあんたのせいかいっ!
「あはー♪」
悪びれないしっ!!
【後書き】
シエルいんどかれーな方の出番がないのはともかく、ネコクエイドまで出番無いのはなんででしょ?
>答:当たり前すぎるから。
さいでっか。
翡翠は犬属性だと思うのですが、ビジュアル的にはネコっぽいですし。
つーかネコクエイドに同類視されてますし。(教えて!知得留先生参照)
琥珀さんと秋葉はネコ属性だとは思いますが。
でも、やっぱりシエル先輩はカレクックですし。
自分、実はネコミミには全然ときめかないんですけどね。
エルフ耳とセンサーならともかく。(バカ)
<コメント>
かおり 「ネコって、可愛いですよね〜♪」(^○^)
梓 「え、ええ……」(^_^;
かおり 「柔らかくて〜、あったかくて〜……、
思わず、ぎゅ〜って、抱きしめたくなっちゃいますよね〜♪」(^○^)
梓 「そ、そうね……猫はね……」(^_^;;
かおり 「…………」(*^_^*)
梓 「…………」(−−;;
かおり 「…………じゅる」(* ̄¬ ̄*)
梓 「――っ!?」
かおり 「いや〜ん♪ こんなところに可愛い『ネコ』が〜♪」(*^▽^*)
梓 「やっぱり、そういうオチかぁぁぁぁーーーーっ!!」( ̄□ ̄メ
琴音 「大変ですよね、梓さんも……」(^_^;
葵 「そうだね〜」(^_^;
琴音 「ところで、葵ちゃん?」(^〜^)
葵 「――え?」(・_・?
琴音 「……『ねこ』って、可愛いですよね♪」(^〜^)
葵 「あ、あははははは……」(^▽^;;;