「これはねフランス人形みたいに可愛くてちょっと意地っ張りな女の子が、
ものすごーい朴念仁の男の子と結ばれる物語」


Heart to Heart
          
+人魚姫

   「人形姫 〜Little My Maid〜」







「今ではない時、ここではない世界。
人々が魔界と呼ぶ場所に立っている大きなお城に、
美しい女王さまと、六人の美しい娘達が住んでいました。

 六人の娘達は女王さまに仕える立場でしたが、
優しい女王さまは娘達を自分の子供のように可愛がり、まるで7人は家族のようでした。

 七人はみんなで歌い、踊り、幸せな日々を送りました。

 そんな楽しい日々を送っている娘達の一番の楽しみは、
女王さまから人間の住む世界のことを聞くことでした。

 魔界では法律で魔界の住人は人間界に勝手に行くことを、
厳しく制限しているため娘達が人間の世界について知るには、
女王さまから話を聞くしかないのです。

 女王さまは可愛い娘達のために人間の世界について、知ってる限りのことを話しました。

 色々な話を聞くたびに娘達は自分達の住む世界とは違う世界、
人間の世界に対する憧れと好奇心を大きくしていき、
いつか自分の目でその世界を見てみたいと思うようになりました。

 そんなある日、女王さまがちょっとした届け物があり、
人間の世界に行くので留守番をするようにと娘達に告げました。

 それを聞いた娘達はみな、自分にそのお遣いをさせてほしいと言いました。

 人間の世界に実際に行けるチャンスです。
 娘達は一生懸命お願いしました。

 女王さまも前々から娘達が人間界にとても行きたがっていたことを知っていましたから、
一番『しっかりもの』で一番『綺麗』なメイフィアという娘に今回のお遣いを頼み、
今後、人間の世界に用事がある時は順番に娘達に頼んでいくと言いました。

 娘達はお遣いに行くたびに留守番をしていた他の娘に、
人間の世界で見た珍しいものを土産話として話しました。



 ある娘は、人間の世界に住む目つきの悪い鬼と、夜空に浮かぶ月の美しさを。

 ある娘は、心優しいエクソシストとちょっと変わった天使のことを。

 ある娘は、なぜか雑貨店の店長をしている誇り高き人狼のことを。

 ある娘は、鬼姫の作った料理を食べたさいに見た死後の世界のことを。

 ある娘は、かび臭い留置所について話しました。



 そしてついに、六人目――
 末娘のフランソワーズ番がやってきました。

 女王さまに人間界のトゥーハートの城下町に住むヒカリ・カミギシに、
魔法の中華鍋を届けに行くようにお願いされたのです。

 しかし、彼女は純粋に女王さまのお手伝いをしたいと思っているだけで、
人間の世界に行くことにこだわりはありませんでした。

 そこで、フランソワーズは人間界に行きたがっている他の娘に順番を譲ると言いだ出しました。

 他の五人はこのフランソワーズの申し出を素直に受けようとしませんでした。

 他の娘達は、普段から人一倍家族のために働いているフランソワーズのために、
ちょっとしたリフレッシュとして、このお使い(旅行)を楽しんで欲しいと思ったからです。

 なにより、物語の展開上、フランソワーズには人間界にいってもらい、
『なんぱ』→『王子さまとの出会い』のフラグを立てて貰わないと作者的に困るのです。



 あるものは諭すように――

「人間の世界に行って、見聞を広めるのも良いことよ」

 あるものはわざとぶっきらぼうに――

「頼まれたのはフランソワーズだ。
特に用がなければフランソワーズが果たすべきだろう」

 あるものは自分の経験に照らし合わせながら――

「そ、その格好いい人との出会いとかあるかもしれませんよ」(ぽっ☆)

 あるものは自分の果たせなかった夢を――

「きっと美味しいものも一杯あると思うにゃ」

 あるものは行くのは確定とばかりに、行った後の心配を――

「怒っても火とかつけるんじゃないぞ。
放火に対する処罰は他の罪に対して重いみたいだからな」



 このように、五人とも、人間の世界に行くことを熱心に勧めました。

 心あるフランソワーズが、こんな五人の気持ちを無駄にできるはずもなく、
人間の世界にお使いに行くことにしました。








 魔界とつながっている人間の村アノルを出て橋を渡り南にしばらく行くと、
お使いの目的地、トゥーハートの城下町が見えてきました。

 真面目なフランソワーズは寄り道なんて一切しません。
 あたえられた地図を頼りに、真っ直ぐカミギシ家に向かいます。

 しかし――

「……困りました」

 なんと、フランソワーズは町に着くなり、道に迷ってしまいました。
 他の五人に書いてもらった地図と睨めっこしますが一向にわかりません。

「この、よく吠える犬さんは先ほどあちらにいた方でしょうか。
自縛霊の少女というのはあの方で間違えないと思いますが……、
しかし、そうすると、女神様萌えの人というのはどなたでしょうか?
それに『ここまで陣九朗さまに送って貰いました(きゃっ☆)』というのは?」

 基本に忠実なボケをかましてくれた地図のおかげでフランソワーズは大困りです。
 というか、こんな地図でアノルの村からトゥーハートの城下までどうやってきたのでしょう?

 根が真面目なフランソワーズは記載されている動かないものが自縛霊だけという、
ある意味壮絶な地図の謎を解こうと必死で考えます。

「困りました……ワタシの解釈が正しければ、
今いる地点は、『ツンツン頭の男の子に声をかけられたにゃ』のハズですが……」

 一応、謎は解けましたが、現在位置の情報が『ツンツン頭の男の子』ではどうしようもなく、
フランソワーズは途方にくれました。

「やぁ、キミ、どうしたの?」

「――はい?」

 困っていたフランソワーズを見かねたのでしょうか……、
 一人の男の子がフランソワーズに声をかけてきました。

 フランソワーズが振り返ると、
そこにはなんと、地図にある通りツンツン頭の男の子が立っていました。

「見ない顔だね。この町には観光?
暇なら一緒にイチゴサンデーでも食べに行かない?」

「い、いえ、そのお使いで………」

 まさか本当に『ツンツン頭の男の子』が出てくるとは思わなかったので、
フランソワーズは大変驚きました。

ぴろりろりん♪

『なんぱ』フラグが立った。

「えっ?! なんでこのツンツン頭さん相手にフラグが」

「んっ? なんか言った」

「いえ、こちらのことです」

「そうなんだ。そうか〜、おつかいか〜。
俺、このあたりに詳しいし、その地図見せてよ、道を教えられるかもしれないしさ」

「それでは、お願いさせていただきます」

 『ツンツン頭の男の子』が出てきたといっても、
手持ちの地図では心もとなく思ったフランソワーズは、
少し考えたあとに、この少年の好意に甘えることにし、地図を手渡しました。

「むむ〜」

 ツンツン頭の男の子は難しい顔をして地図と睨めっこします……、
 と、言っても、そんな地図からなにかを読み取れるのでしょうか?

「ふむふむ、これが2丁目のAV専門店で、こっちが夜間専用自販機だろ……、
『橋を渡り双子の妖精に背を向けよ、太陽が高く昇る刻に噴水の前に立ち、
逆立ちして英語で挨拶せよ、さすれば道は開かれんか……』ということは、
これが田中さんちでこっちがウィルソンさんちか――」(ぶつぶつぶつ)

 少年は、フランソワーズには、さっぱり理解できなかった紙の上に指を滑らせながら、
地図の内容を口に出して確認していきます。

 中世ヨーロッパ風の昔話の世界に、なぜ自販機があるかは大いなる謎です。

「あの、おわかりになりますか?」

「んっ?! これってカミギシさんの家?」

「は、はい。そういえば目的地を言っていませんでしたね。
ワタシが探しているのはカミギシさまのお家です」

 これでお使いが果たせると、フランソワーズは喜びました。
 よそ者にはさっぱりでも、地元の人にかければすぐわかるモノだったようです。

 五人の地図の書き方に少し疑問を感じていたフランソワーズは、
魔界でお留守番をしている五人に心の中で謝りました。

「ん〜、ちょっと説明するのが難しいな〜。
立ち話もなんだし、良かったら、あそこの喫茶店に入らない」

「えっ、でも、その〜」

 寄り道などせずに、お使いという使命を済ましたいフランソワーズは困りました。

「もちろん奢るからさ。
あっ、俺は矢島。これでも俺ってこの国の王子なんだよね」

ぴろりろりん♪

『王子様』フラグが立った。

「なっ?! 2つ目のフラグまで」

「ほら、ほら、遠慮しないで」(ずりずり)

 そういうと矢島は馴れ馴れしくフランソワーズの肩に手をまわし、
喫茶店の方に引っ張って……というか、引き摺っていきます。

「こ、困ります」(ずりずり)

 フランソワーズは外見こそ華奢な女の子ですが、魔界の女王さまに仕えるれっきとした魔族です。
 矢島との戦闘力の差を例えるならベジータとキュイ。

 かなり規格外とはいえ人間の手を振り払うことなど簡単です。
 それどころかその気になれば矢島など『汚い花火』になってしまいます。

「わかったよ、喫茶店が嫌なら、その先にある『出会い茶屋』にぃッ!」(ずりずり)

 しかし、そんなこと知る由もない矢島は、調子に乗ってとんでもないことを口走りはじめました。
 フラグを二つばかし立てたことに興奮しているのでしょうか?

 とにかく、フランソワーズ大ピンチです。


ちなみに『出会い茶屋』がわからない人は……、
わからないままでいてください。
下手に知り合いに聞かない方が身のためです。


 ズガガガッガガガッガガガッガガガッ!!


「――きゃっ!?」

「まったく、この馬鹿が……女の子が嫌がってるだろ」

 そんなフランソワーズの救いの主は銃声とともに現れました。

 銃声にびっくりしてフランソワーズが振り返ると、
そこには、硝煙立ち昇るマシンガンを構えた男の子が立っていました。

 撃たれた衝撃で地面にキスをしていた矢島も、着弾した頭を擦りながら振り向きます。

「ってーな。誰だ、こんなことするヤツは?!
……って、またキサマか! 怨敵、藤井 ま−くんッ!!」

「ちっ、銀の弾頭でもダメージ無しか」

「何しやがるんだ、このヤロー!」

 撃たれたのに、すぐ飛び起きた矢島を見てフランソワーズはびっくりしました。
 流石は初めてくる人間の世界、不思議に満ち溢れています。

 それに対してまーくんと呼ばれた男の子は大して驚いた様子もなく、
撃ちつくした『銀』と書いてあるマガジンを、『わさび』と書かれた新しいものに交換していたりします。

「お前こそ、なにしようとしてたんだ、矢島」(ちゃき)

 マガジンを新しいものに換えなおすと、
まーくんは矢島の額に銃口を突きつけ問いただしました。

「この子がカミギシさんちに届け物があるっていうから、道を教えてあげようとしていただけだ」

「カミギシさんちなら、うちのすぐそばだし送っていくよ」

 まーくんは、矢島に銃口を突きつけたまま、
顔だけフランソワーズの方に向けると、そう言いました。

「よろしいのですか?」
 
 普通ならいきなり銃をぶっ放すような人について行こうとはしませんが、
何故か、フランソワーズは、この人なら信用できると思いました。

「ああ、丁度、家に帰ろうと思ってたところだし」

「待てぃ、藤井! 人のナンパ相手を横から攫っていくんじゃない」

 ナンパしはじめて苦節110万人目にてやっと脈があったのに、
ここで、まーくんに美味しいところ攫われしまったらたまりません。

 すぐさま矢島が異議を唱えます。

「ナンパ? 道を教えてるだけじゃなかったのか?」

「そうだ、間違えた。決して下心とか……」

 まーくんに痛いところを突かれ、矢島がどもります。

「『出会い茶屋』という単語が聞こえたが?」

「ふっ、立ち話もなんだからお店でご休憩でもし『死ねっ』――」


 ズキューン!!


 矢島が最後まで答える前に、まーくんは銃口を額からずらし、
股間に向けると、容赦なく引き金を引きました。

「はうっ!!」

 弾が玉に当たった矢島は、股間を押さえて悶絶しています。

「さあ、じゃあ行こうか」

「えっ、でも……」

 矢島には目もくれず、そう言うまーくんに対して、
フランソワーズは心配そうに矢島を見つめています。

「大丈夫、それくらいでどうにかなるようなヤツじゃないから」

「そ、そういうものなんですか?」

「まあ、こいつの回復力と耐久力は特別だから。
ところで、その風呂敷があかりさん……、
じゃなくて、カミギシさんちへの届け物?」

「はい、中身は特別な材質で作られた中華鍋だそうです」

「そうなんだ、重そうだし、持ってあげるよ」

「い、いえ。送っていただけるだけでもご迷惑でしょうし、
そこまでお世話になるわけにはまいりません」

「ん〜、ほら君みたいな女の子が重そうな荷物持ってるのに、
俺が手ぶらだと町の人の視線がさ……、
ここは俺を助けると思って、荷物持ちさせてよ」

 いくら素直なフランソワーズでも町の人の視線云々は方便だとわかります。

「わかりました。そこまでおっしゃるならお言葉に甘えさせていただきます」

 しかし、フランソワーズはまーくんの申し出を受けました。
 なぜか、この少年に優しくしてもらうことがとても嬉しかったからです。








 お遣いを果たし、魔界に帰ってきたフランソワーズはまーくんのことが忘れられませんでした。

 骨の髄まで染み込んだメイド根性が、親切になっただけというのを許さない……、

 そう本人は思っているようですが、まーくんのことを考えてる時のフランソワーズは、
頬をほんのり桜色に染めておもいっきり恋する乙女の表情をしていたりします。

 しかし、恩返ししようにも魔族が人間の世界に自由に行き来することはできません。
 そこでフランソワーズは魔女が経営する魔界ショップに人間になる薬を買いにでかけました。

「ふ〜ん……そういう訳で、人間になる薬が欲しいわけね」

「はい、このお店に置いてあるでしょうか?」

「一目惚れね」(ボソッ)

「な、な、おみゃーさんなにたーけたこと言っとりゃーすの!!」(真っ赤)

 いきなり核心を突かれたフランソワーズは大慌てです。

「ふふふ、まあそういうことにしといてあげるわ。
あなたのいう薬、あるにはあるけど、私も魔女だしタダであげる訳にはいかないのよね」

「お金なら、ルミラ女王さまからいただいているお給金があります」

 フランソワーズの仕えるルミラ様は魔界を統べる女王さまです。
 お給料の額も半端ではなく、給料未払いなんてことは今まで一度もありません。

 フランソワーズは無駄遣いすることもなかったので、かなりの貯えがありました。

「ん〜、魔女が薬を売るときはお金じゃなくて、
そのコの大切なものを貰うことになってるんだけど……、
あなたにその覚悟はある?」

 そう言うと魔女はフランソワーズの顔をじっと見つめます。

「はい。人間になって、もう一度、あの方にお会いできるなら」

 その問いに対してフランソワーズは即答しました。
 その答えを聞いた魔女は後ろの戸棚から瓶を取り出すと、薬の効能を説明し始めます。

「それにね、この薬には呪いの副作用があるの。
人間になったあなたが、そのまーくんって男の子に愛されなかった場合……、
呪いは発熱とともに始まるわ。熱が引くと徐々に記憶が消えていって、
最終的に肉体まで消滅してしまう」

「――っ!!」

 あまりに重い副作用にフランソワーズの表情が凍りつきます。

「あっ、ごめんごめん。この薬は狐用のヤツだったわ。
えっと、自動人形を人間に変える薬はこっちね。
副作用は、その男の子に愛されなかった場合、あなたはドジっ娘になってしまうわ」

「ド、ドジっ娘ですか?」

 なんというか命に比べれば随分軽い対価ですが気にしてはいけません。
 作者的&学園の図書室様的には、この程度が丁度なのです。

「そうよ、なにもないところで転んだり、料理でお砂糖とお塩を間違えたり、
中に人(意中の男の子限定)がいるのに気付かずにお風呂に入っちゃったりするようになってしまうのよ」

 微妙に世間のニーズがありそうな気がしますが、
メイド道も極みの域に達そうかとしているフランソワーズには辛い副作用です。

「私達、魔族が人間との係わりを極力持たないようにしているのに、
その禁を真っ向から破るわけだから、ある程度のリスクは当然ね」

「…………」

「魔族と人間じゃ持ってるチカラも時間の長さも違う。
一緒になって幸せになれる確率よりも、不幸になる確率が高いのは先人が証明している。
そのためにできた禁でもあるわけだしね」

「…………」

「悪いことは言わないわ、止めときなさい。
上手くいけばそのコが生きてるここ数十年の間に、
もう一回、人間界にお使いに行くチャンスがあるわよ」

「…………それでも……、
……それでも、人間になって、あの人のところに行きたいです」

 今度はゆっくり、しかし、はっきりとフランソワーズは答えました。

 やはりドジっ娘になるかもしれないというのは、
フランソワーズにとっては、とても重いことだったようです。

「わかったわ、本当は売りたくないんだけど、
そこまで覚悟があるなら、御代はあなたが、今、着ているメイド服よ」

 魔女が対価として請求したのはなんとフランソワーズのメイド服でした。

 他の人には無価値でも、フランソワーズにとっては自分という存在の象徴……、
 さすがは魔女妥当な対価を要求してきます。

「今、着ているものでなくても、お城に帰ればお洗濯してある代えがありますが」

「洗濯してあると価……、こほん、気にしないで。
ここに、あなたの年恰好の人間が着ている服があるから、
そこの更衣室で着替えてきなさい」

 そういって魔女はフランソワーズに服を渡します。

「あっと、着替える前に写真を一枚取らせて貰うわよ」(ぱしゃ)

「あの、なんで写真を?」

「アハハハハハ、気にしないで、さっさと着替えていなさい」

「は、はあ……」

 着替え終ったフランソワーズに魔女は薬の瓶と一枚の紙を渡しました。

「何か困ったことがあったら、そのメモを見なさい。きっと力になってくれるわ」

 こうして人間となったフランソワーズは、
人間界にいるまーくんの元へ、押しかけメイドをしにいったのです。








 人間の世界に渡ったフランソワーズは、まーくんが一人暮らししていたこともあり、
すんなりと押しかけメイドになることに成功しました。

 自分にはどこにも行く場所がなく、身の回りのお世話をすべてさせていただくので、
置いてください、と、涙目で訴えたところ、三秒で了承をもらえたのです。

 炊事に掃除に洗濯に……、
 夜のお勤めはさせてもらえませんでしたが、
何度か背中を流すこともでき、フランソワーズは充実した毎日をすごしました。

 しかし、気持ちに素直になれないフランソワーズは勇気が出せず、愛を打ち明けることができません。

 やがて、まーくんは隣国のさくら姫とあかね姫と結婚することになりました。

 この二人もまた矢島王子にナンパされていたところをまーくんに助けられ、
一目惚れしてしまったという経歴の持ち主です。

 まーくんとフランソワーズが出会うずーっと前から婚約していた3人でしたが、
法的な問題からいままで結婚が遅れていたのでした。

 王女という立場から、なかなかまーくんに会いにこれない二人の婚約者のことを知らなかった、
フランソワーズは、突然、今回の結婚のことを知らされびっくりしました。

 ――そう。
 このままではフランソワーズは『ドジっ娘』になってしまいます。

 王女と結婚するということは、まーくんも王族になるということです。
 優秀なメイドもたくさん付くことになるでしょう。

 まーくんが幸せな結婚をすることはフランソワーズにとって喜ばしいことですが、
そうなれば『ドジなメイド』となる自分の居場所は、まーくんの側にはありません。

 そこで、フランソワーズは困った時に見るようにいわれたメモを開きました。
 そこには魔界に通じる村『アノル』の地名と魔女っ娘エリアの名前が記されていました。








 まーくんから一日暇を貰いエリアの元を訪れたフランソワーズは、
素直になりきれない為、まーくんに対する気持ちはかなり控えめにして事情を説明しました。

「そうですか、事情はだいたいわかりました。
つまり、一目惚れしたまーくんさんには、すでに婚約者がいて、
藤井の血筋を信じて背徳感漂う浮気や不倫に賭けるのも一つの手ではあるものの、
やはり、ちゃんと正妻の座を射止めたいというわけですね」

「いえ、なんというか、かなり誇大解釈なされているのですが……」(汗)

 フランソワーズは相談する相手を間違えちゃったかな〜、と思いましたが、
いまさら後悔しても始まりません。

「みなまで言わないでください。私も気持ちは同じですから」

「へっ?」

 何気に爆弾発言が飛び出しました。
 なんと、魔女っ娘エリアも、まーくんに惚れていたのです。

 しかも、会って間もないころに『最低男』と言い切ってしまった原因で、
いまいち素直になりきれずに、告白できていないとのことでした。

「大丈夫、起死回生の一手の準備は整っています」

「あの〜、ですからワタシは、まーくん様のお側にいられればそれで……」

「駄目ですよフランソワーズさん。
まーくんさんの性格からして堂々と『側』室は作らないと思いますから」

 なんだか逝っちゃった目つきで受け答えるエリアを見て、フランソワーズは悟りました。

「……もうワタシの声は届かないのですね」(涙)

「私一人では、まーくんさんの腕力に対抗できませんから、
今回、フランソワーズさんが共犯……もとい、協力してくれるのは心強いです」

「ああっ、なんかもうすでに戦力として計算されてるんですか?!
というか腕力? 共犯? なんだか犯罪の香りが……」

「この日のために用意しておいた道具を出してきますね」

 そう言うと、エリアはいったん奥の部屋に入って行き、
しばらくすると、ショッキングピンクの袋をもって出てきました。

「この中に『一発』逆転用のアイテムが入ってるんですよ」

 そう言うとエリアは袋の中から妖しげなアイテムを次々に取り出します。

「その薬はなんに使うのですか?」

「これはですね〜、体の一部が元気になる薬ですよ。
まーくんさんには元気になってもらわないといけませんから」

「その手錠はなんに使うのですか?」

「これはですね〜、ベットにまーくんさんを拘束するために使うんですよ。
元気になるのは良いのですが、今まで何度も逃げられてますから」

「その『ぼーるぎぐ』はなんに使うのですか?」

「これはですね〜、大声を出されて、人を呼ばれないために使うんですよ」

 他にも鞭に蝋燭はては鎖の付いた首輪など……、
 用途不明のものが、どんどんテーブルの上に並べられていきます。

「その〜、なんのためにそれらの道具を使うんですか?」(滝汗)

「それはですね〜、
まーくんさんを喰べるためです♪」


「それは犯罪です〜〜〜っ!!」
「それは犯罪だ〜〜〜〜っ!!」
















「あら、誠くん帰ってきたんだ。
どうしたの? 大声なんかあげちゃって」

「メイフィアさんっ! なにやってるんですか?!」

「なにって、正人くんがお昼寝に入っちゃって、
えりかちゃんとさやかちゃんがつまんなそうだったから絵本を読んであげてただけよ。
母親達は、あたしに留守番まかせて所用で出かけてるわ」

「どこの世の中に、そんな破綻した話の絵本があるんですかっ?!」

「なによ、あたしのお手製の絵本にケチをつけるつもり?」

「わぁ〜、すごいよ、えりか。
次のページはだかでさんにんがだきあってる〜」

「これ『まうんとぽじしょん』っていうやつだよね」

「あ〜、つぎのページは5にんだよ〜」

「だぁーっ、二人とも、見るんじゃない!!」

「ああ〜、パパまだ読んでる途中なんだから本返してよ」

「ああ〜、パパまだ読んでる途中なんだから本返してよ」

「こんなもの読まんでいい!」

「二人とも――」

「なぁーにぃ? メイフィアおば……」
「なぁーにぃ? メイフィアおば……」

(ギロリ)

「メイフィアお姉さま」
「メイフィアお姉さん」

「正しくは、マウントポジションじゃなくて『騎jy――


 ズキューン!!


「正さんでいい……、
さらに、メイフィアさん、なんで、ここから挿絵が急にリアルになってるんですか?」

「描いてる途中に、あたしのアーティスト魂に火が点いちゃってさ」

「そんな魂捨ててしまえ」

「ひどい言いようね……、
子供達に人生の教訓をあたえる素晴らしい本だと自負してるのに」

「全体通して、どこからなにを学べってんですか」

「ん〜っと、道ならぬ恋でも、相手の男が誠実な人間の場合、
既成事実さえ作ちゃえば、道は開けるということを女の子に伝え……」

「伝えんでいい!!」

「そうかぁ〜、きせいじじつがたいせつなんだぁ〜」
「そうかぁ〜、きせいじじつがたいせつなんだぁ〜」


「こらッ、二人ともっ!!
メモなんかとるんじゃな〜〜〜〜〜い!」

















 果たして、この時の絵本から学んだことが、
えりかとさやかの後の人生で役に立ったかどうか……、

 ……それを知るには、もう少し時間が必要なようです。








<おしまい>


<おまけ>

「ねぇ、メイファお姉ちゃん? 結局、フランソワーズはどうなったの?」

「まーくんと結婚したのぉー? それとも、メイドとして一緒にいることになったのぉー?」

「フランソワーズがなにを思って、なにを望み、そしてどんな未来を得たのか……、
それは、フランお母さんが帰ってきてから聞きなさい」

「えーっ、フランお母さんに」
「えーっ、フランお母さんに」

「――そっ、きっと教えてくれるわよ」


<あとがき>

ふぇぽん「学園の図書室110万HIT超、おめでとうございま〜す」
めいふぃあ「『超』とつけずに済むように109万HITくらいの時に投稿しなさいよ、この馬鹿作者」
ふぇぽん「ご、ごもっともです」
めいふぃあ「大体、あたしにあんな本読まして、藤井家出入り禁止になったらどうするのよ」
ふぇぽん「いや、人魚姫そのまんまなぞると、思いっきり暗い話になるみたいですし」
めいふぃあ「みたいって、あんた人魚姫ちゃんと呼んだんでしょうね」
ふぇぽん「え〜っと、『A○が止まらない!』のそれ系の話と『DA○DYFACE』を……」
めいふぃあ「前者は良いとして、後者は人魚姫じゃないでしょうが」
ふぇぽん「しゅいません、一応、シリアス編のあらすじも考えたんですが……」
めいふぃあ「大体、既成事実よりも子供作っちゃうほうが確実でしょ」
ふぇぽん「――へっ?」
めいふぃあ「まず基本は○○日に穴の開いた(自主規制)を――」
ふぇぽん「え、えっと、これからも学園の図書室の繁栄を祈っております、それではまたっ!」
めいふぃあ「――こっちからリードして付けてあげる……ってちゃんと聞いてる?」


<コメント>

さくら 「何気にリーフクエストとリンクしてるっぽい話でしたね」(^_^)
誠 「そうだな……」(−o−メ
エリア 「ううう……私、誠さんに、あんな真似したりしません!
     まあ、場合によっては最終手段かもしれませんが……」( ̄ー ̄)
あかね 「うにゅ……エリアさんが怖いよ」(^_^;;
誠 「…………」(−−メ
フラン 「誠様? 先程から、何やらご機嫌斜めなようですが……?」(・_・?
誠 「いや、別に……それはともかく、ちょっと出掛けてくる」(−o−)
さくら 「まーくん、魔剣『フィーリングハート』なんか持って、何処に行くんですか?」(・_・?
誠 「ん〜……ちょっと、魔界の商人のところにな」(−−メ

 一方、その頃――

ねーちゃん 「――ゾクッ!! なんか殺気が……」(((;゜д゜)))

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