時に、宇宙歴0079………ヨーロッパ

『今回のミッションの目的は、新型機の実践テストです。
あくまでもデータ回収が目的ですので機体は破壊されることの無いようにお願いします』

 通信機を通じて、オペレーターの声がする。

「了解……藤井 誠、GM−Cーx1出る!」
『園村さくら、陸戦型GM、行きます!』
『河合あかね、陸戦型GM、いっくよー!』

 ミデア輸送機のハッチが開き、3機のジムが夜の砂漠に降り立った。



 その頃――

 降下部隊から約100km地点――



<誰か……誰か、わたしを止めて……あの蒼いMSを……破壊してください……>



『……アルフ、何か言ったか?』
「いや、何かあったのか?」
『……気のせいだな。それよりも、降下部隊が位置に着いたみたいだぞ』
「ああ、そうだな」
『俺達は行かなくて良いのか?』
「今回の任務は、此処でジッとしていることだ」
『それで特別手当つきか? あやしいな、何かあるんじゃないのか?』
「まぁ……其れを調べるのも今回の任務の内でね」
『――?』

 蒼一色に染められたジムヘッド・タイプのRX−78Gが其処に立っていた。





学園の図書室100万HIT記念

HTH IN GUNDAM

 蒼き戦慄







 試作型ジム・コマンドを先頭に、3機のジムは砂漠を進む。

 直ぐに、探照灯の明かりが見えてきた。

「さくら、あかね、突っ込むぞ」
『はい!』
『うん!』

 さくらのジムがミサイルランチャーを、あかねのジムが180ミリキャノンを構える。

「3……2……1……GO!!」

 言うなり、誠はジム・コマンドのライフルをぶっ放した。

 新型機の実験台として選ばれたジオン軍の小部隊はたまったものではない。

 当直の兵士が警報を鳴らし、警備のMS部隊が敵を探して右往左往する。
 無駄に通信を発したまま走るザクの1機が、爆発、四散した。

 爆発の閃光の中を、誠のジムコマンドが突っ切っていく。

「さくら! あかね! フォーメーションα! 中央のダブデをやる!」

 さくらのジムが持つミサイルポッドから中型のレーダー誘導式ミサイルが都合6発打ち出され、
その更に後方からあかねが180ミリキャノンを連発で叩き込む。

 揚陸艇、ダブデは固定脚を叩きおられ、メガ粒子砲を打ち出せない。

「もらったぁーーーーーーーー!!!」

 ライフル、バズーカを撃ち尽くしたジムコマンドが、ビームサーベルをダブデの艦橋に叩き付ける。

 指揮系統を叩きつぶされ、混乱した巨艦は一瞬攻撃の手を止め……、
 それは、あかねにとって待ちわびた瞬間だった。

「……えへへ、もーらいっと」

 高速鉄鋼弾がダブデのジェネレータを貫き、兵装を無力化する。
 艦が爆発しないのはただの偶然だ。

 ダブデは頓挫し、辺りのジオン軍の抵抗も止み始めた、後は掃討戦だけだ

『え……? まーくん! 後ろから何かが高速で接近してきます!』
『うにぃ!? な……まーくん! これって……!?』

 さくらとあかねが、悲鳴じみた声を上げる。
 誠の乗るジムコマンドのメインモニターも其れを捕らえていた。

「……なんだ……コイツは……」

 砂煙の向こう側に1機のMSが見える。
 どう見ても連邦のGM系MSだ。

 だが、これだけの距離を開けながらも伝わってくる殺意は、それを敵と判断するに十分だった。

 月を背景に、それが跳躍する。
 その姿は正に……、

 ――蒼き死神。

「さくら! あかね!! 下がれっ!!」

 真っ向から殴りかかってきた「蒼」の一撃をシールドで受け流すと、
頭部に積まれている防衛用バルカンを撃ちまくる。

 しかし、「蒼」は到底人間が耐えられるとは思えない急機動でそれをかわした。

「――っ!?」

 相手の肩に着いている牽引用のフック取り付け場所をひっつかんで、
強引に接触会話を可能にする。

「おい! 聞こえるか!? いきなり殴りかかってきて何のつもり……!?」
『何故………』

 それは、余りにも小さな、しかに憎悪と苦しみに満ちた声……、

『何故……殺シタ!? ………何故、殺スッ!!』
「なっ………!?」

 「蒼」のメインカメラが赤く染まる。
 刹那、誠の乗るジムは100メートル近く吹っ飛ばされる。

『まーくん!!』

 さくらとあかねの悲鳴じみた叫びが聞こえる。

 「蒼」がさくらの陸戦型を睥睨した。

 「蒼」の胸部で何かが発光する、それがミサイルだと解ったのは、
陸戦型ジムの腕が吹き飛ばされてからだった。

『きゃああああああっ!!』
『さくらちゃん!!』
「さくら!!」

 出力部分がいかれたビームサーベルを投げ捨て、予備のビームサーベルを取り出す。

(余談だが、ビームサーベルを取り出す、ライフルを構えるなどの行動は、
アナハイム系MSに限って言えばすべてコンピューター制御によって、自動で行われる。)

 「蒼」があかねの乗るジムのコクピットハッチを引きちぎりにかかっている、最早一刻の猶予もない。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 ビームサーベルの光が、「蒼」の動力部を切り裂いた。
 これにはあらがう術もなく、「蒼」が止まる。

「……さくら、あかね!無事か!?」

 誠がさくらとあかねに気を取られたその瞬間……、
 「蒼」のメインカメラが再び赤く光った。

 「蒼」は一度大きく跳躍すると、どこかへと去っていく

「……自動帰還プログラムが作動したか……でも一体何処へ……」

 ジムからはい出てきたさくらとあかね、
立ちつくす誠の背後に、ミデア輸送機がVTOL状態で降りてくる。

 彼らには、何がなにやら解らなかった……、





 数日後――

 連邦軍ヨーロッパ方面駐屯基地――



「まーくん、整備の方がブースまで来てくれって……」
「整備? ま〜た、MSの損傷について嫌味言われるのかな……」

 さくら、あかね、誠は、連れだって整備隊の方に向かった。

「あ、あなた方の機体……何とやり合ったんですか?」

 開口一番、整備兵はスパナで後頭部を掻きながらそう言った。

「ドムの1部隊とやりあっても、あそこまで壊されませんよ。
まさか敵の機体が赤く塗ってあったなんて言わないでしょうね?」
「私達にも相手が何だったのか解らないんです……ただ、蒼いMSだったって事しか……」

 さくらの言葉に、整備兵はまたも不思議そうな顔をする

「青いMS……グフですか?」
「そこから先は俺が説明しよう」

 整備兵の言葉に応えるよりも速く、一人の技術士官がやってきた。

「お前さんがテストパイロットの藤井誠だな? ……こっちへ」

 技術士官の言葉に従い、やってきた整備ブースで、
誠達が見たモノは、昨夜の蒼いMSだった。

「ジオンからの亡命者、クルスト博士の制作したシステム『EXAM』の試作機だ。
誠、お前にはこれに乗ってもら……」
「ちょっと待ってください」

技術士官の言葉を遮って、誠が懐疑的に言う。

「実際の所、俺たちは昨夜コイツに襲われたんですがね……」
「……見間違いだろう。前線では機体を自分の趣味の色に塗っているパイロットも居るようだしな」
「『趣味』でMSの胸にミサイル仕込む奴が居るもんですか?」

 技術士官は、誠の目を1秒きっかり見据えると直ぐに機体の方に目を向ける。

「明日、カリフォルニアベースの攻略作戦がある。
誠、お前さんにはこの機体……ブルーで出てもらう、用件はそれだけだ」

 それ以上の問答は無用……と、技術士官はどこかへ去っていった。





 そして、翌日――



『ねぇ、さくらちゃん……』

 通信機からあかねの声が聞こえてくる。

『まーくん……大丈夫かなぁ……』
「大丈夫ですよ、あのMSに乗ってるんですから……」

 幼馴染みに心配をさせまいと、さくらはあえて、自らの心境とは逆のことを言った。





 同時刻――

 カリフォルニアベースから北西に70q地点、ジオン軍ミサイル基地――

『誠、聞こえるか?』
「はい、感度良好」

 蒼い機体、「ブルー」のコクピットで、誠は通信に答える。

『よし、操作方法は大体わかっただろう、コンソールに赤いボタンがあると思うが……、
それは本当にヤバいと思うときまで押すな……、
それから、予備のない大事な機体だ、お前さんは死んでも良いが、機体だけは、護ってくれよ』
「ああ……」

 誠の操作に応えて、ブルーは小さな基地に向かって突っ込んでいく。

「……なんてGだ……!」

 小規模な基地だけあって、MSの姿は見えない。

 目に付くのは攻撃ヘリとマゼラアタック戦車、
後はダブデタイプの指揮車が一台、ミサイル発射用ランチャーが多数。

 ヘリからの攻撃に警戒して、誠はマシンガンを握り直させる……、

<……あそこに!>
「――!?」

 声が聞こえたと思ったら、岩影から攻撃ヘリが飛び出してきた。
 誠は、すぐさま手にした100ミリマシンガンの弾を叩き込む。

<そこからも!>
「――っ!!」

 ヘリの爆発に紛れて現れたマゼラアタックに、
イヤと言うほどバラ玉を叩き込むと、誠は機体を跳躍させた。

<乱暴な人は嫌……私に触れる人は嫌い……私に触れないで!!>
(……声?)

 メガ粒子砲を撃とうしていたダブデの固定脚を叩き折り、
エネルギーが貯まりに貯まっている砲塔をビームサーベルで切り裂く。

 強制的に、あらぬ方向で解放させられたエネルギーは、ダブデの内部で複雑な爆発を起こす。
 その炎が、ジェネレータを焼き、スチームタービンも吹き飛ばす。

 内部を完全に破壊され、ダブデは停止した。

 基地の一部が開き、巨大なミサイルが現れたのはその時だ。

「あれは……!?」
『誠! ありゃあ、核弾頭ミサイルだ! 戦術核で小範囲にしか影響を及ぼさないが、
あんな物を撃たれたらカリフォルニアベース攻略隊は全滅する!』
「――っ!!」
『俺の計算では発射まであと1分はかかるはずだ、それだけあれば、ブルーならアレを破壊できる!』

 既にミサイルは発射体制に持ち込まれていた、最早 発射は時間の問題だ。
 誠は躊躇うことなく、コンソールの赤いスイッチを押した。

 フロントモニターに「EXAM」の文字が浮かぶ。

 蒼い死神は猛然とミサイルに躍りかかる。



 数分後――

 弾頭を切り落とされ、エンジンを破壊されたミサイルの残骸が、其処に転がっていた……、



<……乱暴な人は……居ない?>
「……ああ」

 どこからか聞こえる声に、誠は無意識のうちに言葉を返していた。

『ご苦労だったな、直ぐに、カリフォルニアベース攻撃隊の援護に回ってくれ』





 カリフォルニアベース――



 連邦軍の前線は、総崩れの様相を見せていた……、

 ……たった1機の、蒼いMSが原因で。

『………た !繰り返す! α1がやられた! 以降の指揮はα3が……』
『くそっ!! 野郎、トニーを……!』
『隊列を崩すな!! Λ小隊は俺に続け!!』
『ちくしょう!! あの赤い肩のやろ……うわ』

 入ってくる無線は、混乱と絶望に溢れていた。

 両肩の赤いイフリートと、海からの奇襲によって連邦軍は挟撃をうけている。
 そこかしこで、MSが爆発する音と、赤い焔の華が咲き乱れ、人が塵のように死んでいく。

「こんな……っ!」
『あかねちゃん! まーくんから連絡は!?』
「まだないよぉ!」

 さくらとあかねの陸戦型ジムは、背を合わせるようにして手にした火器を撃ちまくっている。

 2人の前に、両肩を赤く染めたMSが躍り出た。
 放たれたグレネード弾をすんでの所でかわす。

『居るじゃないか! 連邦にも腕の立つのが!!』
「――っ!? 強い……!」

 あかねのジムが180oキャノンを撃つのと同時に、さくらのジムが飛び上がる。

「良くも脅かしてくれましたね!? 倍返しですっ!!」

 先ほどの不意打ち気味なグレネードがよほど腹に据えかねるのだろう……、

 右手に100oマシンガン、左手にミサイルランチャーを構えたさくらのジムが飛び上がり、
装備されている火器は、頭部バルカンからミサイルまで全て撃ちまくる。

 さらに弾切れになったミサイルランチャーを投げ捨てると、そのままビームサーベルで斬りつける。

 相手が凡百なMS乗りならば、その一撃でケリが付いていただろう……、
 だが、そのパイロットも、機体も、凡百な物ではなかった。

 弾丸は地面を抉り、ビームサーベルは虚しく宙を裂くばかり

「――避けた!?」

 振り上げられたヒートサーベルを見て、さくらは慌ててシールドを持ち上げさせる。

『目の良さは命取りだな!!』

 ジムのシールドをその腕ごと切り裂き、もう一方の手に持ったヒートサーベルでジムの頭部を貫く。

「きゃああああああああああああああああっ!!!」
『さくらちゃんっ!!』

 あかねが慌てて援護しようとするが、何処からか集まってきたドムに阻まれ、動くとこが出来ない。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」

 2人の悲鳴が重なる……、

 そして、戦場に蒼い疾風が吹いた……、

『さくらっ! あかねっ!! 生きてるか!?』

 2人の前に立つのは、蒼一色に染められたジムヘッド

「「まーくん!!」」

 さくらとあかねの、歓喜の声が聞こえた。

「そこの赤い肩! よくも此処までやってくれたな!!」

 誠は、ブルーを赤い肩に向けて走らせる。
 そこで、異変が起こった。

「なんだっ!?」

 正面のモニターにEXAMの文字が浮かぶ、誠は例のスイッチを押していないにもかかわらずだ。

「何ッ!? EXAMが……」
<……止めて、ヤジマ!!>

 先ほど聞こえたのと同じ声が聞こえる。

『其処にいたのか、ナルミ! 俺を哀れむ必要は、もう無いんだよ!!』

 ヤジマの駆るMS……イフリート改が、誠のブルーに向かって突っ込んでくる。

 誠は距離が縮まる前に、胸部に取り付けられている有線ミサイルを撃ちだした。

 1本は相手の放ったグレネードにぶつかって爆発、
もう一本は操作用の線を切られ、あらぬ方向へと飛んでいった。

 EXAM稼働状態で、機体の電源が持つのは、残り1分――

 イフリート改とブルーがぶつかり合う。
 イフリートのヒートサーベルと、ブルーのビームサーベルが、同時に相手の頭部を貫いた。

 二体の巨兵は動きを止める……、
 時を同じくして、補給の切れたジオン軍は撤退を始めた……、





 カリフォルニアベース攻撃は、どうにか成功に終わった。
さくらとあかねは乗機を失ったが、直ぐに別の試作機が回されるらしい。

 その後、ジオンの特殊部隊にEXAM2号機を奪われ、EXAMの開発者、クルスト博士も殺害される。

 そして、誠達には2号機奪還の命令が下された。





「……誠、お前には話しておきたいことがある」
「なんだ? アルフ」
「……EXAMの事だ」
「……」

 アルフは、彼にしては珍しく言葉を濁す。

「もしかしたら、EXAMは暴走することに……、
暴走状態にあることに意味があるのでは無いかと思ってな」
「――?」
「クルスト博士の出した、NTに関する論文だ」

 そう言って、アルフは分厚いコピー用紙を誠に渡す。
 斜め読みしただけだが、誠にも彼が何を言いたいのかは理解できた。

「調べてみたいところだが、連邦のEXAM搭載機はもうそいつしか残っていない……、
EXAMが1機しかない以上構造を調べるのも無理だ。
ついでに言うなら、1号機と違い、そいつに俺は殆ど関与していない……その意味は解るだろう?」
「ああ……」
「……代えは、効かないからな」





 ややあって、HLVが打ち出される……、

 2号機のある場所……、
 宇宙へと……、





 サイド5、ルウム宙域――



 その廃コロニーの一つから、アルフはEXAMのデータを入手していた。

「……これは……」
『どうした? アルフ』
「俺たちは……とんでも無い物を動かしていたのかもしれん……」

 アルフの声が震えている。

「EXAMは元々、対NT用に作られた疑似NTとも言える装置だ……、
だが、当初はどうあっても通常のAI以上に反応が上がらなかった……」
『まぁ、どう足掻いたところで機械だからな……人間の反射行動は事によっては機械以上に早いし……』
「それでだ……クルスト博士は『ナルミ・カシマ』という、
NTの少女の精神パターンをコンピュータにコピーして利用したらしい……」
『それ……本当なんですか?』
「……真相はわからん……だが、記録によると、
EXAMはそれによって計画以上の能力を発揮し……、
ナルミと言う少女は、そのまま昏睡状態に陥っているらしい……、
まるで、EXAMが彼女の心を吸い出したかのように……」





 コロニーでの情報収集を終えて、HLVがコロニーのドッグを出る……、



『EXAMのパイロット、聞こえるか!?』

 通信は突然入った。

「……ジオン軍!? いつの間に……」
「まーくん、HLVを護るだけなら、私とあかねちゃんで大丈夫です、2号機を!」

 さくらとあかねが乗機のハッチを閉めながら言う。

「あかねちゃん、行きますよ」
「うん!」

 HLVのハッチから両肩にボールを付けた異形のジムが飛び出した。
 連邦軍のNT試験機、「ジャグラー」である。

 もっとも、サイコミュ技術がないので、とんがり帽子の様なビットは装備されていない。

 機体を動かすパイロットと、ボールを操作するガンナーの2人乗り……、
 形だけでもオールレンジ攻撃を出来るようにしてみましたというだけの機体だ。

 誠の乗機はEXAM3号機……、
 ロールアウトしたばかりの機体で、まだEXAMの特徴である蒼いカラーリングは成されていない。

『どちらがEXAMに相応しい騎士か……勝負だ!!』

 両肩を赤に塗り直された2号機が、バーニアの光りを灯してこちらに向かってくる。
 ジャグラーの肩からボールが切り離され、HLVに向かっていた旧ザクを打ち抜いた。





『俺は、EXAMに選ばれたんだ! そして……俺の勝利が、何よりも優先されるのだ!!』
<ヤジマ! やめて!! もうやめて!!>
『黙れナルミ!お前の様な惑は邪魔なんだ!!』

 2号機のビームライフルが火を吹く。
 光をかわすと、誠もライフルを撃つ。

<乱暴な奴……消えてしまえ!!>
「違う……」

 いつの間にか、誠は叫んでいた、EXAMに向かって

「違う、君はナルミじゃない! クルスト博士の妄執が生み出したシステムに過ぎない!!」

 すでに、2体の戦いは佳境に入っていた。

『ははははははははははは!! ますますマシンに力がみなぎってくるのが解るぞ!!』

 ヤジマはライフルを捨て、サーベルを両手に構える。

『やはりEXAMに選ばれたのは、この俺だ!!』

 誠の放ったライフルの光をかわして、2号機がサーベルを振るう。

<マコト……止めて、わたしを止めて!>

 斬撃をかいくぐり、放たれたミサイルが2号機にぶつかって火球に変わる。

『ぐっ……俺は……ヤジマ! 選ばれたジオンの騎士だ!!』

 左腕を吹き飛ばされた2号機が、残った右腕で3号機の肩を押さえる。

『お前に勝のは俺だ!! ナルミィィィィィィィィィィィッ!!!』

 2号機の頭部バルカンが、3号機の頭部に叩き付けられる。
 誠は、ビームサーベルを使用可能な状態にすると、2号機のコクピットに刃を叩き込んだ。

『何故だ……』

 接触通信で相手の声が聞こえる。

『何故、お前は……俺を裁いた……?』
「……違う」
『俺とお前と……何処が違うと言うんだ……』
「…………」
『ふ……ふふふ……お前も、傲慢な人間の一人なんだ……!』
「違う……それだけは、違う!!」

 数回、痙攣でもするかのように手足を細かく動かして、2号機は機能停止した。

「…………」
<あなたは、ヤジマとは違うわ……>
「ナルミ……?」
<あなたは、私がナルミじゃないと言ってくれた……だから、私はこう言うの……>
「…………」
<あなたは、EXAMじゃない……>
<争うことや、奪うことだけを考えて、此処まで来た訳じゃないでしょう?
そうじゃなければ、あなたに彼を裁く事なんて出来なかったわ……>
「…………」
<……マコト……ありがと……う……>

 3号機頭部が爆発を起こし、ナルミの声をかき消した……、





 かくて、この戦いはルウムと名付けられた戦場で終わりを告げた。

 機体を破壊されたためか、或いはその役目を終えたためか……、
 誠の3号機もその機能を停止する。

 死への確信……だが……、



<宇宙には、あるわ……>

 声が、聞こえた。

<宇宙には、“心”が満ちているの……>

 それは、ナルミのNTとしての力だったのか……、

<その“心”は、敵意だけじゃないわ……>

 誠の視界に蒼い宇宙が広がり……、

<マコト……あなたを、呼んでいる人がいる……>

 機能停止したはずの、3号機の再起動……、
 誠は、恋人達の待つ、『蒼い宇宙』へと還えって行った……、





 それから、しばしの時が経ち――
 シャアの反乱が終焉を迎える頃――



 アクシズを支える白い機体から放たれた「蒼い光り」……、
 それは、かつての蒼の物語で誠が見た物と同じなのだろうか……?

 それは、誠にしか知り得ぬ事である……、

 しかし、誠が「軍人」としてではなく「一人の人間」として闘っても、
その重圧に押しつぶされないのは、その色があるからだ。





 その色こそ、かつてナルミという少女が見せてくれた「宇宙の蒼」だった……、





<了>


後書き

 え〜、この度は学園の図書室100万HITおめでとうございます。

 記念のパロディSS送らせて頂きました。

 といっても、まんま「機動戦士ガンダム外伝」ですが(^^;
 ホントに……パロディって難しいです……、

 それにしたって、何故俺がこう言うの書くとギャグが無くなるのだろう……、


<コメント>

さくら 「まーくん、まーくん♪ このセリフ、言ってみてください」(^○^)
誠 「――ん? え〜っと、なになに……、
   『俺は生きる! 生きて、さくら達と――』って、キャラ違うだろ」(−−;
あかね 「うにゅ〜……一番肝心なところで止めないでよ〜」(−o−)
誠 「――やかまひい」(−−;
エリア 「誠さん、それでは、こっちのセリフを♪」(*^_^*)
誠 「今度はガンダムWのヒイロか?
   『お前を犯――』って、パロディー編のネタは止めいっ!」( ̄□ ̄メ
フラン 「誠様、こちらなどは如何でしょう?」(*・_・*)
誠 「Gガンダムのドモンのセリフなんて、
   恥ずかしくて言えるわけねぇだろうがぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!」(T△T)

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