学園の図書室70万HITオーバー記念

 夢のような旅行記







 さてさて、ここは日本の玄関口成田国際空港――

 6月ともなれば、新婚さんが旅行に出る為に集まるところだ。(違)

 そして、勿論ここに……、


『××からお越しの………まーくん様、お連れ様がお待ちです。1階売店まで……』
「……あかね、なかなか懐かしい事を……」
「放送担当の方……躊躇していましたね……一瞬」


 ……誠達の姿がある。

 ――そう。
 突然で申し訳無いが、これは彼等の婚前旅行(爆)をダイジェストでお送りするSSであるっ!





「まったく……空港に着いた早々、懐かしいネタ振ってくれるじゃねーか、あかね」
「うう……ごめんなさぁい」
「……ま、無事だったから良いけどな」

 そう呟いて、誠はあかねの頭をくしゃくしゃと掻くように撫でる。

「うー……髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃうよー」

 そう言いながら、あかねの目は少しだけ笑っていた。

 高校最後の冬休み――

 誠は何故か、今日から5日間、さくらやあかね、エリア、フランを連れて、
グアム辺りに遊びに行くよう指示された……、

 ……と言うか、気がついたら荷物1式を持って空港に立っていた。

 頭の中で、昨日、自分が父、尚哉と徹底的に話し合っていた事、
これが母、みことやあやめ、はるか達の意見であるという事をぼんやりと思い出し……、

 実母、みことに突っ掛かって文句を言ったところで、突然、背後から――

「了承」

 ――の一言が聞こえてスプーンに山盛りのオレンジ色したジャムが……、

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「まっ…まーくん! どうしたんですかっ!?」
「誠さんっ!?」

 突然、叫び出した誠に驚いて、さくらとエリアが振り返る。

 二人の目に飛び込んできたのは、
蒼白……と言うにはあまりにも真っ白な顔をして倒れる誠の姿だった。





 数十分後、復活した誠は、
自分が何を思い出していたのか、すっかり忘れてしまったのだと言う。





 ともあれ、飛行機の出発時刻は近付いた。
 既に、5人は飛行機に乗り込んでいる。

「これが……空を飛ぶんですか?」
「あれ? エリア、前に祐一さんの所行った時って飛行機じゃなかったのか?」
「あ、あの時は列車で……飛行機は始めてなんです」

 ややあって、前のほうにある「禁煙」と「ベルト着用」のランプが点灯する。

 ゆっくりと、窓の外の景色が動く。
 それは徐々に加速を始め、やがてゆっくりと機首を持ち上げ始めた。

 ボーイング747旅客航空機は、巡航高度である1万メートルを目指して空を駆け上がる。





『皆様、本日はBA国際線のご利用、誠に有難うございます。本機は、これより……』

 機内アナウンスが目的地までの所要時間を告げる。

 それを聞きながら時計を合わせていたさくらは、
窓側に座るエリアが窓の外をじっと見つめている事に気付いた。

「……ほんとに飛んでる……」

 耳を済ませば、何やらそんな事を呟いているらしい声が聞こえる。
 エリアにしてみれば、あらゆる意味で生まれて始めてな事、こうなっても仕方が無い。

 廊下側に座るあかねは、既に軽い寝息を立てている。
 フランは、相変わらずだ。
 そして誠は、あらかじめ買っておいたハンバーガーを美味しそうに食べている。
 その様を見ていたさくらも、直、眠りにつく。





 次に彼女達が起きたのは、客室乗務員が機内食を配っていた時だった。

 国際線の機内食は、思ったよりも豪華だ。
 それでも量が足りなかったらしく、誠は腹を誤魔化すのにガムを噛んでいた。

「……あ…ボク、寝ちゃってたんだ」
「キャラット、まだ寝てても大丈夫だぞ?」

 背後から、小さな声が聞こえる。
 その声を聞きながら、フランは割り箸の袋で箸置きを作っていた。

 ただし、殆ど無意識のうちに、だ。

 そして、自分の行動に気がついた時、改めて驚く。

 確かにかつての彼女では有得なかった事だ。
 暇を持て余す……など。

 だが、今の彼女はそれはそれで良いと考えている。
 暇だと言う事は、それだけ好きな人の事を考える時間があると言う事だ。

 彼女の好きな人……、
 それは彼女の主、ルミラであり、ルミラの配下に居る魔族たち……フランにとっての仲間。

 そして、心の底から愛しいと思える青年。

 彼は今、すやすやと心地よさそうに眠っている。

「…………」

 フランは、何をするでなく、ただじっと誠を見つめていた。

「すー…スー…」
「……」
「スー……スカー……」
「……」
「っ!?……今、俺の腹の上にあるのは……ハンマーロックです……」

 訳の判らぬ寝言を呟く誠に毛布をかけ直し、フランは再び思考の海に意識を沈める。
 ただ、今度は……、

「……誠様♪(ぽぽっ☆)」

 だんだんと妙な妄想に走っている様である。





 所要時間ざっと3時間半――

 いいかげん退屈過ぎて眠る事も出来なくなった頃に、飛行機は目的地の空港に着陸した。
 そこにはデカデカとこう書かれた看板が立ててある。


『Wellcome To Gu m』


「……ガム島ってことですか?」
「そりゃグアム……ってホントだ! ガム島になってる!?」
「まーくん……Aがとれて落っこちてるだけだよ」

 お約束を一通り済ませた所で、5人はホテルに向かう。
 なんでも、両親’Sが纏めて5日分部屋を取っているらしい。

「それで、2部屋なんだな?」

 向かい合った部屋の前で、誠は腕組みをして呟く。

 予約してあった部屋は、2人用と3人用が一部屋ずつ。
 なんと言うか……ひしひしと策謀の嵐を感じさせるセッティングである。

「あかねちゃん、エリアさん、フランさん、取り敢えず、お母さん達の粋な計らいに感謝です」
「うん、この旅行でまーくんと……」
「誠さんと……」
「誠様と……」

「「「「既成事実を作っちゃうんですっ!」」」」

 4人から発せられる並々ならぬ闘気に、背筋を震わす誠であった。





 さて、ホテルで一休みした後、
誠達はホテルのプライベートビーチで思いっきりはしゃいでいた。

 ホテル宿泊者だけが使用しているだけあって、余り人影はない。

 真っ白な砂浜に、どこまでも青く透き通った海。
 そして大量に水底を這い回る海鼠。

「「「きゃーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」

 軽快に泳いでいた3人の娘さん達が、凄まじい悲鳴を発している。
 どうやら海鼠をモロに踏みつけたらしい。

「フライパン殺法! 海冥閃です!!」
「バット聖奥義! 天地無双!!」
「ウィルド・バーン!!」

 3人それぞれが、混乱状態で必殺の一撃を繰り出す。
 もっとも、混乱している状態できちんと狙いをつけられるはずもなく、
それら全ては虚しく海面を叩くに終わった。

「いやぁー!! まーくん! 助けてください―!!」
「にゅー!! ナマコがぁ!! ナマコが足に纏わり付くよぉ!!!」
「……たかが海鼠であそこまで大騒ぎになるか? 普通……」

 そうやって呟いてみたものの、やはり彼女達を放って置けないのが誠。
 じゃばじゃばと水を蹴立てて3人の所へ歩いていく。

 となれば、当然彼の足にも海鼠が纏わり付くわけで……<

「…っと、こいつは歩き難い……とわっ!?」

 バランスを崩した誠が振りまわした両腕が、何か布のようなものに触れた。

 溺れる者は藁をも掴むと言う言葉があるように、
誠はその布をしっかりと掴んで体勢を立て直そうとし……、

 突然、布が外れたため、誠はそのまま海の中に突っ込んだ。

「ぶえっ!! だ―………死ぬかと思った……」

 ふと前を見れば、そこには呆然としたままのエリアとあかねの姿。
 髪を掻き上げようと頬の辺りに持ってきた手には、さくらが着けていた水着のブラが……、

「……くんの……」

 背後から聞こえた声と、放たれる凄まじい殺気に誠は身動き一つ取れなくなり……、

「まーくんのえっちーーーーーーーーー!!!」

(その後、さくらによって誠は何をされたか……、
それさえ判ればこの事件はさほど難しいものでは無いのだよ、ワトソン君。)

「……なあ、これって不可抗力じゃないのか?」

 海に沈みながら呟いた言葉を聞いてくれたのは、先程さくら達に踏まれた海鼠だった。





 無事に一夜が明けて翌日――

「くぁ……もう朝か……」
「にゅー……まーくん、寒いよ」

 隣で寝ていたあかねがうっすらと目を開けて呟く。

「ああ…悪い…………」

 誠は、あかねを自分の上から退かせると、改めて布団を掛け直してやる。

「すー…すー…」

 直に幸せそうな寝息を立てるあかねの寝顔を堪能している時、当然の疑問が誠の頭をよぎった。

「――って、何であかねが俺の上で寝てるんだっ!! しかも、なんでそんな格好なんだっ!!」
「ふにゃ……? だって…まーくん暖かいんだもん」

 誠の質問にやや的の外れた答えを返しつつ、あかねは再び丸くなる。

「……ひょっとしてお前……夜中に猫さんモードが発動したのか?」

 インテリモードの副作用とも言える猫さんモード……、
 それが何らかの理由で発動したあかねが猫の本能が赴くままに誠の所へやって来たとしたら……、

「……なるほど」

 何故だか酷く納得してしまう誠であったが、冷静さを保つにはあかねの格好が問題だった。
 うさぎの着ぐるみパジャマで、何故かうさみみバンドも着けている。

(エタメロのセロか?)

 普段ポニーテールの様に括ってある髪を下ろしている為、
首の辺りまで垂れている髪が、誠の脳裏にセロの姿を思い浮かばせたのだろう。

 そうやって誠が何故か納得していると、突然、部屋の扉が開いた。

「あ、まーくん、おはようございます」
「おはよう、さくら」

 扉から入ってきたのはさくらである。

 洗顔を終えて直に来たのか、普段垂らしている髪をポニーテールに纏め上げている。
 なんと言うか、普段余り見ない故に新鮮さが感じられる姿である。

「どうしたんですか? ぼーっとして…」
「あ、いや……結構良いもんだな
「――?」
「いや、なんでも無い」

 呟きを聞かれそうになって、慌てる誠に首を傾げながら、さくらはベッドに腰を下ろす。

「あかねちゃん、やっぱりまーくんの所に来てましたね」
「ああ、さっきは死ぬほどビビッたぜ」

 あかねの頭を撫でながら微笑むさくらを見て、誠にも笑みが移る。
 飽きる事無くあかねを撫で続けるさくらの隣に座って、極当たり前にあかねの頭を優しく撫でる。

「うにゅぅ〜……」

 なんとなく満ち足りた鳴き声(?)を上げるあかねを2人掛りで撫で続ける事30分、
エリアとフランが部屋に入ってきた。

「おはようございます、誠さん」
「誠様、おはようございます」

 3人が5人になると、流石に部屋が狭く感じる。
 誠達が談笑をしている内にあかねが目を覚まし、5人は朝食を取りに食堂へ向かった。





 まだ比較的早い時間とあってか、食堂に人影はまばらだ。
 5人は今日の予定を話し合っている。

「まーくん、今日は何処に行くんですか?」

 クロワッサンにバターを塗りながら、さくらが問いかける。

「そうだなぁ……防空豪跡でも見に行くか」

 誠が、観光マップと首っ引きで答える。

「ぼうくうごう?」

 当然そう言う事は知らないエリアが小首をかしげる。

「ああ……防空豪ってのは……ま、行けば判るよ」
「――?」

 なんとなく要領を得ない誠の説明に小首をかしげたまま、エリアはパンを飲みこんだ。

「エリア様……まだ治りませんか? 寝違えたところ……」
「まだ……痛いです」

 フランの言葉に、少しだけ泣きそうな顔で答えるエリアの姿は、
ギャグに見えない事も無かった。





 昼頃、防空豪跡――

 旧日本軍が作ったとされる防空豪は今、観光の為に保存が成されている。
 もっとも、それはこれまでに見つかった分だけで、未発見のものも数多くあるらしい。

「なんだか……洞窟探検みたいですね」

 防空豪の中に入ってエリアが呟いたのが、その言葉だった。
 確かに、せまっくるしい防空豪に入る時はその光景が思い浮かぶ。

 ……本当に、この人工の洞窟がただの趣味で作られてものだったら、どれほど気楽なものだろう。

 ただ、趣味にするにはあまりにもここは生々しすぎた。

「あれ? この壁、何か彫ってある」

 あかねの声に、誠達は壁を見る。
 あかねの指差した辺りには小さく文字が刻まれていた。

「えーと……"佳奈美、君ノ護リト成レヌ我ガ身ヲ今日ホド歯痒ク思ッタ事ハ無イ。
君ガ天命ヲ全ウスル事ヲ心カラ願ウ"……か」
「"悠、例エコノ身ガココニ朽チ果テ様トモ、心ハ君ト共ニ"…って書いてあります」

 戦場に散る者が残すには……余りにも嘆きと口惜しさに溢れた、
決して彼等が望んだ人には届かぬ文が、その壁に刻まれていた。

 半ば苔に飲みこまれ、朽ちかけている、恐らく最も愛しい人に送られたであろう文章……、
 本心を吐き出せる時が、死を目前にした時とは、なんと皮肉な事だろう。

 そして、それらの文章を覆い隠す様に書かれた一列の文字。

『神州ハ不滅ナリ、大日本帝国万歳、天皇陛下万歳』

 60年近く前……人は何を思って争い、何を思ってあの小さな文をこの壁に遺したのだろう?
 ……何を思って、その小さな叫びを徹底抗戦の装甲で覆ってしまったのだろう?

「――あら?」

 エリアが、朽ち掛けた金属の筒を拾い上げる。

 錆び切った金属の筒は、エリアが持ち上げたとたんにぱらぱらと砕け散り、
中からこれもまた朽ち掛けた紙切れが落ちてきた。

「――? なんだろう……」

 あかねとさくらが、エリアと一緒にその紙を覗き込む。

「なんだかぼろぼろで……一部しか読めませんけど……、
"……ニ置ケル消耗ニヨリ、ナ号作戦……中止……年6月20日……"って書いてあります」
「……その命令書が、後2日早く着いていいれば、この人達の運命も変わってたかもな」

 そう呟く誠の視線の先には、こんな文字が彫られていた。

『沙耶、明日六月二十日、俺ハ死ヌ事ニ成ッタ。
特別攻撃隊トシテノ一番槍ヲ勤メル事ニ成ッタノダ……出来ル事ナラ、君ト共ニ生キタカッタ』





 午後になって、ホテルに戻ってきた一同は、
防空豪で見つけたモノを忘れようとするかのように泳ぎつづけた。

 忘れる事は出来ないが、気分転換にはなったようで、
ひと泳ぎした後、彼等は何時もの明るさを取り戻していた。

 海で泳げば身体に付く塩が半端ではない。
 油断してそのまま熱いお湯に浸かれば死ぬような目に遭う事になる。

「だ、熱っ!!!」

 ――そう。
 丁度、今の彼の様に……、

「まーくん……シャワーで流さないでいきなり熱いお湯に浸かろうとするから……」

 お湯を抜いたバスタブの中でダウンしている誠に、
シャワーでぬるま湯をかけながら、さくらが少々あきれた様に言う。

 日焼けして健康的に焼けた筈の誠の肌は、
すっかり真っ赤になっており、見ているだけで痛くなって来る。

「うう……死ぬかと思った……」

 半ば泣きそうになりながら誠が呟く。

「それじゃあ、もうちょっとシャワーかけてた方が良いですよ。油断してると水ぶくれになりますから」
「おう、サンキュな」

 さくらがシャワー室から出たのを確かめて、誠はもう暫くシャワーを浴び続ける事にした。

 まあ、「色々なところ」が痛いのである。





 その日の夜――

「まーくん……まだ、起きてますか?」
「ん? ああ、起きてるよ」

 じゃんけんの結果、隣のベッドで寝ていたさくらが上半身起こして声を掛けてきた。

「どうしたんだ?」
「あの……なんだか、ムズムズして……」

 さくらの言葉を聞いた途端、誠は手にしていた携帯ゲーム機を取り落としかける。

「むずむずって……?」
「はい……それになんだか身体も熱くって……」

 言いながら、パジャマのボタンに手をかける。

「わっ!! さくらっ! ちょっと待てっ!!」

 慌てて両手で目を隠すが、さくらがパジャマを脱いでいく姿を、
指の隙間からじっくり鑑賞しているのだから彼も中々のものである。

 一方、パジャマの上着を脱いださくらは、胸が見えない様に、
そのパジャマを胸元に当てたまま後ろを向き……、

「あの……背中、皮が剥けてませんか?」

 ……そう尋ねてきた。

「皮?……あー、こりゃむず痒いはずだ、相当大きく剥けてる」

 確かにさくらの背には、彼女の掌ほどの大きさがありそうな皮が剥け始めていた。

(それにしたって、たった2日で? 新陳代謝むっちゃ早いぞ!)

 などと思ってもみるが、口には出さない。

「どのくらいの大きさですか?」
「さくらの掌位……もう少し小さいかもしれないけど」

 さくらは、暫くの間、自分の掌をじっと見詰めて……、

「あの……ちょっと剥いてくれませんか?」

 そう呟いた。
 その目は、好奇心に輝いていたりする。

「いや、剥くのは良いんだけど……3分の1くらいブラ線に引っかかってるんだよ」

 そう、剥けている皮の下3分の1は、桃色のブラ線の下に潜りこんでいた。

「なら、外してもいいです!」

 好奇心の虫は止められないらしい、目を輝かせたまま、さくらはさらりと言い放つ。

「良いですって、さくら……それりゃいくらなんでも……」(汗)
「でも、自分でやったら皮破りそうだから……外してください(ぽっ☆)」

 慌てたのは誠だ、生まれてこの方、ブラジャーなど外した経験がない。
 まあ、当然と言えば当然なのだが……、

「……ど、どうやるんだ?」

 そう答えてしまう辺り……誠も健康な男の子である。

「えっと……ホックをこうつまんで……少し捻る様に……」
「……こうか?」

 言われた通りにやってみると、
案外あっさりとホックが外れて剥けかけの皮が剥き出しになった。

「それじゃあ、行くぞ……」
「はい……」

 別にナニかする訳でもないのに緊迫する一瞬である。

 既に剥けている皮を破らない様に、
背中を指でなぞりながらゆっくりと日焼けした皮をはがしていく。

 誠の指が背を動くたびに、さくらが「……ぅんっ」だの、「ふあっ…」だのと、
妙に色っぽい声をあげるので、誠はその度に自分を押さえるのに精一杯になる。

 ややあって、さくらの背中から誠の手ほどの大きさがある皮が剥かれた。
 ホックを止めているさくらに、その皮を見せる。

「わ……大きいですね……」
「ああ……俺もびっくりした」

 自分の背中の皮を見ながら驚くさくらに、誠もしみじみと同意する。

「……コレ、あかねちゃんにも見せてきますね」

 楽しそうにそう言うと、ちゃんとパジャマを着なおしてから、
さくらは向かいの部屋に移った。

「あ、さくらさん、どうでした?」

 部屋に入ってきたさくらに、エリアが作戦の成否を問う

「ふふふ……大成功です♪ これで実行日にまーくんが慌てないように、
ブラを外していく必要はないですよ♪」

 そわそわと答えを待つ3人にピースサインをむけて、さくらは微笑む。

 つまり、そう言う事だったのだ。
 園村さくら……なかなかの策士である。

 その頃誠は……、

「危なかった……もう少しでさくらを押し倒す所だった……」

 自らの思考と行為に恐怖していた。





 結局、それ以上の事は何も起こらず3日目の昼――

「今日はそれほどする事はないんですよね?」

 エリアがコーヒーにミルクを入れながら問いかける。

「ああ、取り敢えず街に出ようかと思ってるけど……」

 エリアに答えながら、誠は8つ目のトーストに手を伸ばした。

 グアムの街には、日本人が沢山いた。

 なにせ、食堂に入ればメニューが日本語で書いてあり、
買い物の清算に一万円札を出しても、ちゃんとドル札でお釣りが来るのだから驚いたものである。

「なんだか……海外で買い物してるって気分になりませんね……」

 そう呟くエリアの言葉に、何故か深く頷いてしまう一同だった。





 結局、その晩は特に記す事無く明けて、4日目――

「……あの…まーくん…」
「ん? なんだ、あかね」

 半ば寝ぼけた状態の誠に、あかねが問い掛ける。

「ここ……誰か居る?」
「…俺とあかねが居るだろ?」

 なんとなく奇妙なあかねの言葉に、疑問符を浮かべる誠。

「そうじゃなくって……なんて言うか……他の誰かから見られてるような」
「気のせいだろ?」

 そう言って誠は洗面所に向かう。
 不意に、形容しがたい寒気が彼を覆った。

「な……なんだっ!?」

 背後からの視線に振り向くが、目を向けた先にはドアがあるばかり。

「???????????」

 再び凄まじい寒気が、誠を襲った。

「……はは……まさかな……」

 そう、見間違いだ。
 誠はそう思い込みたかった。

 自分の背後に三八式歩兵銃をもった野戦服の男など居るはずがない、と……、

 意を決して恐る恐る後ろを振り返ると……。

 何も居なかった。
 つい数秒前まで鏡にはしっかりと旧日本陸軍の歩兵が映っていたと言うのに……、

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」(泣)

 まるで声になっていない悲鳴を上げて、誠は気を失った。





 そして、半日が経過――

「う……ん?」
「あっ!! まーくん! まーくん!!」

 誠が目を開くと、泣き出しそうな少女達の顔が目の前にあった。

「皆……俺、一体……?」

 まだクラクラする頭を押さえつつ、
立ち上がろうとする誠を、4人の娘さん達が押さえつける。

「あんまり、無茶しないで下さい」
「さくら……」
「そうだよ! ずっと倒れてたんだから、無理しないで」
「あかね……」
「お願いですから……心配、させないで下さい……」
「エリア……」
「誠様……今しばらく、ご自愛成されますように……」
「フラン……」

 4人の言葉に、誠は少々うなだれる。

「ごめんな、皆」
「……いいんです、まーくんが無事なら」

 4人は、その後、誠が動けるまでずっと傍に居た。
 どうやら彼女達は、誠が疲労か何かで倒れたと思っているらしい。

 無理して事実を話す事も無いので、誠も謎の幽霊の事は黙っておいた。





 その日の――

 最後の夜と言う事もあり、誠たちは結構な勢いで騒いでいた。
 まあ、根が真面目だから酒を飲んだりと言う事は無いが……、

「はい、まーくん、あーんして☆」
「あーん♪」

 このノリは少々勢いが過ぎているような気もする。
 そして、なんだかフランを除く全員の顔がやや赤いような……、

 正解は、さくらの足元に落ちているチョコレートの箱にあった。

『明○ブルガリアチョコレート<ウィスキーボンボン>』

 つまりは、そう言う事である。
 アルコールを飲んだのではなく、食べてしまったのだ。

 中々に間抜けな話しだが、良くある事だ。

「ふにぃ……」
「らんか……部屋がくるくるまわってます〜」
「……ひっく……」
「ほらぁ、誠さん飲んで飲んで♪」

 良い具合に酔っ払っている4人を見てフランは……、

「……ひっく」

 ……やっぱり、酔っ払っているようだ。(汗)

「まーくん、最近なんだかスキンシップが足りてない様に思いませんかぁ?」
「そ……そうか?」
「そおだよぉ!」
「はい、私もそうおもいますよぉ」

 さくら、あかね、エリアの3人に詰め寄られ、たじたじの誠。
 なんとなく懐かしい光景である。

「ねぇ、フランさんもそう思うよね?」
「はい、そう考えます」
「ほらぁ、フランさんだってこう言ってますよ?」
「あ……いや、その……」

 一見、唯一まともそうに見えるフランだったが、良く見ると目が座っている。
 これは、普段が普段だけに相当人格が入れ替わっているだろう。

「誠様、そもそもさくら様達がいろいろと誘っていらっしゃるのに、
それに全く気付かないと言うのは少々鈍感が過ぎるのではないですか?」
「は? さそうって……?」
「ですから! みこと様の弁ではございませんが、
ワタクシ達も、その……出来るだけ早く誠様との子供を持ちたいと考えているのです!
その夢を叶える為に色々と頑張っていますし、
誠様さえ気付いていただければ眠れぬ夜を一人で過ごすなど……」
「あのー…フランさん?」
「ワタクシ達も、その時には誠様に悦んでいただこうと色々と考えているのですっ! それを……」
「フランさん……私達の気持ちを代弁してくれて……」
「ワ、ワタクシだって、そうなったあかつきには誠様に色々教えて差し上げようと……」
「あの〜……フランさん?まさか、酔っ払ってるのか? あのチョコレートで……」

 説教上戸の絡み酒……じみ〜に酒癖の悪いフランだった。
 それにしたって、自動人形を酔わせるなんてどんなアルコール度数だ、そのチョコレートボンボン。

「大体、これではまるでワタクシ達がまとめて誠様の妹みたいなものではないですか!」
「フラン……やっぱり酔っ払ってる?」
「酔ってなどおりません!」

 酔ったフランの愚痴は、それから小1時間続いたと言う……、

 恐ろしや恐ろしや……、





 結局、それ以上の事は何も起こらず翌日――

「あ、頭いてぇ…」
「うぅ……頭がぐらぐらするよぉ……」
「なんだか……具合が悪いです」

 誠とあかね、エリアが苦しんでいるのを見て、
何故か平気だったさくらが薬を買いに行っていた。

「大丈夫ですか?」
「ああ……なんとか」
「今日はこれから飛行機ですよ? 乗れますか?」
「大丈夫……だと……思う、多分」

 具合悪そうな誠達を気遣いながら、フランは思う。

(何故か、昨夜の記憶が無いのですが……何かあったのでしょうか?)

 朝、さくら達に囲まれて眠っていた誠を起こした辺りからははっきり覚えているし、
昨夜、さくらが買ってきたチョコレートを食べた事も覚えている。

 その後、普段の自分なら決してしないような事を散々やったような気がするが……、
 どうもその辺りが記憶から抜け落ちているのだ。

(……いえ、そう言う事があったなら、しっかり覚えている筈ですし)

 ちょっと頬を赤らめて何事か呟いているフランを見て、他の4人がキョトンとした表情を浮かべる。

「どうしたんでしょう、フランさん……?」
「なんだか……トリップしてる時の琴音ちゃんに似てる」
「あ……そう言えば……」

 確かに、赤らめた頬を押さえて頭を振るのは、
トリップ状態の琴音が良くやる仕草だが……、

 宿酔いでそれどころではない誠は、ベンチに座り込んだままダウンしていた。





 ともあれ、こうして誠達の婚前旅行は幕を閉じた。

 日本に向かう飛行機の中で、4人の少女は人知れず握り拳で気合を入れなおしている。

『次は新婚旅行っ!!』

 そして、彼女等の夫となるべき誠は……、





「誰かぁ……水をくれぇ……」








 ……まだ死んでいた。(爆)








 夢のような旅行記……終了しても宜しいですか?

 了承


後書きらしからぬ後書き。

 え〜…まずは、STEVENさん、『学園の図書室』70万HITオーバーおめでとうございます。

 50万HIT記念SSが『エアメール』だったことから、
70万HIT記念は実際誠達に海外旅行に行ってもらいました。

 場所は一応、グアム島としていますが、当然行ったことはございません。

 故に、人づてに聞いた話を思い出したり、旅行パンフとにらめっこしたりしながら、
キーボードを叩いておりましたところ、某有名架空戦記小説が目に飛び込んできました。

 それでぱっとグアム島が旧日本軍の拠点だった事を思い出し、防空豪の辺りを書いたわけですが……、
 なんと言うか、ギャグともシリアスとも取れぬ妙な作品になってしまいましたね。

 ――え? なんでフランを酔っ払わせたかって?
 それは勿論、「意外性」があるからですよ。

 あれ? そもそもフランって酔っ払えたっけ? などと言う意見は黙殺です。(コラ)
 タマには、こんなのも良いですよね? ねっ?(同意を求める目つき)

 では、「真魚のアホに一言物申すっ」と思われた方は、こちらにどうぞ。

 それでは、これにて失礼いたします。

 ――幕

 PS:英字が無茶苦茶ですが、気にしてはいけません。(コラコラ)


<コメント>

あやめ 「…………」(−−メ
はるか 「…………」(´▽`メ
みこと 「…………」(^_^メ
あやめ 「何の為に……」(−−メ
はるか 「二部屋も予約したのか……」(´▽`メ
みこと 「一日一人の計算だったのにね〜……」(^_^メ
あやめ 「こうなったら、次の作戦よっ!」( ̄□ ̄)凸
はるか 「あらあらあらあら……アレですね」(´▽`)
みこと 「んふふふ〜♪ まこり〜ん、もう逃げられないからね〜」(^〜^)


誠 「――ぞくっ! な、何だ? 急に寒気が……」(−−;;;;

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