はい? 今回、わたし達の話なんですか?

 ししししししかも、ファーストキスの話なんですかぁーーーーーー!?




HTH創作

ふぁーすときす物語







「でっかいうみのむこーにはー♪」
「でっかいそらのはてーにはー♪」
き、 い・ る・ ん・

「……お前等、ホント、朝からノリが良いよな」

 朝、迎えに来た二人の幼馴染が歌う姿にこめかみを抑えながら、藤井誠はそう呟く。





 誠、さくら、あかね、三人とも、まだ14歳――

 中学3年の修学旅行で起こった、ちょっと照れくさい思い出の話が今、始まる。

 修学旅行を間近に控えた3年生は、いろんな意味で燃えていた。
 その燃えている中には、もちろんさくらとあかねの姿がある。

 二人一緒に誠の恋人となってから1年、これまで、全くと言って良いほど進展が無い。

 ……誠が自分達の事を思って何もしないのだと言う事を、2人は良く知っている。
 知っているが故に、不安になるのだ。

 誠を信じないわけではないが、不安なものは仕方が無い。
 だから、この修学旅行で初体験……とは行かなくても、せめてキスくらいは!

 ……などと、二人して握り拳で気合を入れたりしている。





 放課後――

 さくらとあかねは一緒に買い物に来ていた。

「えーと……これとこれと……後は……」

アメニティグッズとにらめっこしているさくらの袖を、あかねがくいくいと引っ張る。

「――?、どうしたんですか? あかねちゃ……」

 言いかけたさくらの声も、それを見て止まる。
 二人の視線の先にあったものは……、


 ――『明るい家族計画(超薄型)』


 しばしの間、それを2人で見続ける。

「あ、あははー、いくらなんでもねぇ……」
「そうそう、まだ必要無いですよね?まだ……」

 ひとしきり乾いた笑いを上げた後で、もう一度、
今度はかなり真剣なまなざしで、2人掛りでそれをみる。

「そう言えば、この前保体で勉強したトコだよね……」

 あかねがぽつりと呟く。

「……復習の為に、資料が必要ですね」
「……うん」

 2人で頷き合って、何事も無いかのようにそれを買い物篭の中に入れる。
 何をどうやって復習するつもりなんだか……、



 ともかく、旅行の開始を明日に控えて、3人はそれぞれの時を過ごす。



「ふぅ、ま……こんなもんかな」

 ボストンバックに荷物を詰めこんで、誠は天井を見上げて息をつく。

「…よし、もう寝るか」



 電気を消して、床にもぐりこんだ誠は夢を見る。

 これまでとは、少し違った夢を…


『まーくん♪』

『まーくん♪』


 夢に現れたのは、誠の幼馴染で恋人の、園村さくらと河合あかね。
 ただ、特筆すべきは彼女達の姿だ。

 誠の恋人達は、一糸纏わぬ姿で夢に現れたのだ。

『ねぇ、まーくん……』
『まーくん……私達のこと、好きですか?』

 2人は、誠にぴったりとくっついて、少し哀しげな瞳でそう問い掛ける。

『好きに決まってるだろ?』

 夢の中で、誠はそう答える。

『なら……』
『態度で、示してください……』

 誠の答えに、2人が目を閉じる。

 誠は、そのまま目を閉じると……、



「うどわっ!!?」

「まこりん!?どーしたの、こんな時間に大声出して……」

 訳の判らぬ悲鳴を上げて誠が飛び起きた時、
誠の部屋の戸を開けて、母親のみことが入ってきた。

「あ……いや、なんでも……?」

 『なんでも無い』そう言おうとして、誠の動きが止まる。

「ねえ、まこりん、大丈夫?」
「なんでも無い、なんでも無いから……」

 その誠の行動から、みことはふっとその可能性に気付く。

(あ、なるほどねー)

 それ以上は何も言わない方が良いと判断したのだろう。
 みことは笑いを堪えながら自室に戻った。

 誠は、安堵のため息をつくと、改めて奇妙な液体で塗れた下着を脱ぐ。

「これが、この前保体の授業で言ってた奴か……?」

 誠だって何も知らないと言うわけではない。
 クラスの男子がそう言う話しをしている所に出くわした事も何度かある。

 ……しかし、実際になったのは初めての経験だ。

「……取り敢えず、洗濯だな」

 ぽつりと呟くと、誠は先程まで履いていたパンツを、
脱いだパジャマに包んで持つと、風呂場に向かった。

 まずは、この謎の液体を洗い流さない事には話しにならない。
 そんな事を考える誠の脳裏に、ついさっき夢で見た恋人達のイメージが、しっかりと残っていた。





 翌日、修学旅行出発の日――

「まーくん、おはよう♪」
「おはようございます、まーくん♪」

 家の前まで、さくらとあかねが迎えに来ていた。

「お……おはよう、さくら、あかね」

 朝方のショックが抜けていないのか、挨拶がぎこちない誠。

 実は、この時、誠の脳裏には、夢で見た二人の裸がイメージ画像としてくっきりと浮かんでいたのだ。

 もしも、今の彼をプリンターにつなぐ事が出来たら、
さくらとあかねのオールヌードがJPG形式でプリントアウトされた事だろう。

「どうしたんですか? 顔色、良くないですよ?」
「まーくん…大丈夫?」

 さくらとあかねが心配そうに誠の顔を覗きこむ。

 ギリギリまで近付いた二人の顔。

 その表情が、夢で見たさくらとあかねの顔にダブった誠は、
顔面を真っ赤にして近くの電柱に景気良く頭をぶつけ始める。

「煩悩退散! 煩悩退散!! 煩悩退散!!! 煩悩退散!!!!」

 これまでの『ゴンゴン……』という音ではなく、
『ごすっ!!』という一際痛そうな音があたりに響き渡り……、

 ……誠は、そのまま崩れ落ちる。

 額から噴水の様に血が噴出しているのは……お約束言っても良いかもしれない。

「まーくん!!」
「あかねちゃん!! 救急車救急車!!」

 さくらとあかねの狼狽する声を聞きながら、誠の意識はより深いところに沈んでいった。





「……んで、修学旅行のバスにはしっかり乗り込んでるんだから、強いよな、お前等も」

 誠達の前に座る男子生徒が、半ば呆れたような声を出す。

「うぅ? そーか?」

 誠の返事に、男子生徒はやれやれと肩をすくめて隣の生徒と雑談をはじめた。
 その後ろで、誠がもう一度くたびれた様に椅子によりかかる。

 かくて、修学旅行は始まった。





 修学旅行1日目の日程は移動だけで潰されると相場は決まっている。

 人によっては電車の中で寝る事が楽しみでもあるらしいが……、
 ここに、とても元気な娘さんが2人ほどいた。

「「わたしーだけがーわたしのこーいをー、あー、み・か・く・にんー♪」」

 誠も完全復活した事で、何時も以上にはしゃいでいるさくらとあかねだ。

「お前等、ほんとに元気だな」

 誠が苦笑しながらそう言う。

「まーくんが無事だったからですよ♪」
「にゅ、そーだよ♪」

 さくらとあかねの微笑が直目の前にある。

 と、誠の脳裏に例のイメージが浮かび上がった。
 途端に誠の顔が真っ赤になり、さくら達から視線を外す。

「どーしたんですか?急に」
「まーくん、具合でも悪いの?」
「あ……な、なんでもねぇよ」

 やっぱり顔を横に向けたまま、誠はそう言って逃げた。
 さくらとあかねは少しの間きょとんとしていたが……、

「あ、まーくん、わたし、ジュース買ってきますね」
「あ、あたしも行く!」

 直に、車内販売を探して歩いていった。
 それを知って、誠は内心ほっとする。

 さくらやあかねに対して浮かぶ、これまでに無かった感情……、

 ――さくらやあかねと1つになりたい。

 そう思う部分が、彼の心の何処かにある。
 しかし、それは許されないと、その感情を抑えつける別の感情もある。

 愛する者と交わりたい、1つになりたいと願う本能。
 それに対して、常に清廉たれと命ずる理性。

 どちらも誠の本音、どちらも恋人を想う心……、
 どちらが本当の自分なのか、誠にはまだ判らない。



 その頃、首尾良くジュースを手に入れたさくらとあかねは、
歩きながら財布の中に入れてきてしまったとあるモノの処分について考えていた。

(アレ……どうしようかな)
(……まさかずっと持ってる訳にもいかないですし……誰かにあげる、なんて出来る訳無いし)

 真剣に頭を抱える二人の脳に、全く同じ言葉が浮かび上がる。

 その言葉とは――



『実践する』



(――っ!! 何をどう実践するんですかっ!!
って言うかそんな事出来る訳無いですっ!!)


(ダメだよ!! そんなのはずかしいよぉ!!)


 2人とも、全く同じタイミングで同じような映像をイメージしていた。
 ……すなわち、『誠に抱かれる自分』を。

 2人とも、一瞬で顔が真っ赤になる。
 この辺りはまだまだ中学生と言うわけだ。



 そうこうしている内に、初日の宿泊場所に到着。
 移動の疲れもあってか、殆どの連中が一晩ぐっすり眠っていた。





 翌日の日程は、つつがなく進んでいた。

 清水の舞台から下を見ていたさくらが落ちかけたり……、
 奈良の大仏の鼻の穴を通ろうとして、誠が突っ掛かったり……、
 鹿にせんべいをあげていたあかねが、鹿に手を咥え込まれたりしたが、それは些細なことだ。

 2日目の夜……、
 誠は数人の男友達と極普通に話しをしていた。

 最近、話題になっている歌手の話……、
 この辺りで見かけた可愛い女の子の話……、

 そして……、

「なあ、藤井? お前、園村達とは何処までいってんだ?」
「――え?」

 修学旅行のお約束、恋愛事情の話……、

「なぁ、白状しろよ!」
「そーだそーだ!」
「白状ったって、そんな……まだ手ぇ握るくらいしか……」

 誠の必死の説明など、誰も聞いてはいない。

「聞けよ人の話!!!」
『聞く耳もたん!!』

 喚く声を振りきって、誠は宿の廊下に逃げた。
 その手には、追いすがるクラスメイトの手を振り払うのに使ったタオルが握られている。

「……風呂、入ってこよ」

 既に就寝時間は過ぎているが余り気にしない。

 教師達の部屋の中からは、楽しげな笑い声が響いてくる。
 ……宴もたけなわと言った所だろうか?

 首にタオルをかけた誠は、まっすぐに露天風呂に向かって行った。





 流石にこの時間帯になると、露天風呂にも人は殆ど居ない。

 お湯に浸かったまま、誠は大きく伸びをする。

「くぅ〜〜〜、極楽極楽」

 誰も居ない温泉で手足を伸ばしてゆっくりすると言うのは中々に幸せな事だ。
 と、誠の目に、奥のほうにお湯が続いて居るのが映った。

「――? まだ先があったのか…」

 どうせ誰も居ないだろうと、タオルを肩にかけたまま、
誠はばちゃばちゃとお湯の中を進んでいく。



 一方、その頃――

「ふぅ…」

 女湯の方には、今更ながら、のんびりとお湯につかるさくらとあかねの姿があった。

 2人とも恋愛談義に付いて行けなくなってここに逃げてきたのだ。

「さくらちゃーん! こっちに温泉が繋がってるよ!!」

 湯煙の向こうから、あかねの声が聞こえる。
 さくらは立ち上がると、あかねの声が聞こえる方に歩き出した。



 ――そこからは、月が良く見えた。

 中天にかかった満月が、水面に映っている。
 月の光と湯煙が、幻想的な場面を作り上げる。

 誠は、湯煙の向こうに、人影を見たような気がした。

 クラスメイトなら脅かしてやろうと、誠は音を立てぬようにその影に近付く。

「よっ、元気か?」
「――えっ?」

 タイミング良く、風が湯煙を飛ばしていく。
 誠の目に入ったのは、お湯の中に立つ、いつか夢で見たのと同じさくらの姿。

「きゃっ!?」
「わっ!!?」

 お互い慌ててお湯の中に身を隠す。

「わわわわわわ悪い、さくら!」
「いいいいいいいいえ、わたしも全然気付かなくて……」

 混乱したままの二人が、訳の判らぬ会話を成り立たせる。

「さくらちゃん、どうし……あ! まーくん!!」

 不意に、誠の背中に抱きついてくる影があった。

「あかねっ!? お前も来てたのか!?」

 誠は、あかねの急な登場に一瞬焦ったが、
それで緊張が解けたのもまた事実だ。

「ふぅ……まさか、半分混浴になってるなんて思わなかったぞ、俺」
「うん、びっくりしたよ」

 まだ背中に抱きついたまま、肩に顎を乗せてくるあかねの頭を撫でてやりながら、
誠は軽く溜息を漏らす。

 直に、さくらが誠の傍に寄ってきた。

 暫く、無言のまま3人寄り添って月を見る。

 ぎこちない感じだったさくらも、
今は極自然に誠の腕に自分の腕を絡ませ、彼の肩に頭を預けている。

 つい昨日まで、あまりにも意識しすぎて上手く喋れなかったのが、
今は、すらすらと言葉が出てくる。

 ちょっとした行動や言葉が、固まった空気を消し去ってくれる。

「ねぇ、まーくん」

 あかねが、少し恥ずかしげに言葉を発する。

「キス……しましょうか?」

 あかねの言葉を、さくらが続ける。

「……ああ」

 誠は、これまでで一番優しげな言葉で、返答する。

 初めにさくらと、次にあかねと……、





 ――それは、唇と唇を重ねるだけの、軽いキス。

 お互いに初めての、ぎこちないキス。





「さくら、あかね……愛してる、世界で一番」

 誠が、恥ずかしげにそう呟く。

「「まーくん!」」

 2人は、同時に叫ぶと、誠を押し倒さんばかりの勢いで彼に抱きついた。
 誠は、微笑みながら恋人達の頭を優しく撫でる……、

 3人だけの静かな時間が、其処に流れていた……、



 ……と、爽やかに終われるほど世の中は甘くない。



「見たぞー!! 藤井!!」
「さくらったら、だっいたーん♪」

 何処に隠れていたのか、あらゆる場所からクラスメート達が顔を覗かせる。
 その事実に、誠の、さくらの、あかねの顔が朱に染まる。

 茫然自失となった誠に比べ、さくらとあかねの対応は早かった。
 2人は、何処からとも無くフライパンとくまさんバットを取り出すと……、





「きゃー♪」
「うわっ!!」

 ……デバガメ達をどたばたと追い掛け回す。

 その追い駆けっこを、呆然と見ていた誠だが……、
 直にその表情に笑みが浮かぶ。


「こらぁーーーー!! お前等、待ちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 そう叫ぶと、誠はさくら、あかねと一緒にデバガメを追い掛け回した。





 それは、もしかしたら、この恋人達の前途を予言していたのかもしれない。
 まだ、自分たちに起こる事を知らなかった中学時代……、

 その頃の写真は、今も、アルバムの中で眠っている。





 それはこっぱずかしく、くすぐったく、甘酸っぱい……、










 ――彼等なりの、ファーストキスストーリー。





<おわり>


後書きと言う名の怪文章

 誠達のファーストキスはどんなものだったのだろう?

 そう考えた時、この話しがふっと浮かび上がってきました。
 と言う訳で、ふぁーすときす物語を送らせていただきましたぁ

 作中、誠君が何気にあぶない想像をしてますが……、
 恋の目覚めと性の目覚めは別問題と言う事で……、(逃げてる)

 でもまあ、避けて通れなかった問題だろうなぁ、などとも思って見たり……、

 ああ、笑いを取れないわが身が憎い……!!


 ――幕


おまけ

さやか 「お母さん、何を見てるの?」(・・?
さくら 「中学生の時のアルバムですよ」(^○^)
正人 「わっ! 父さんばっかり……」(@0@)
あかね 「あっ! さくらちゃん……そのアルバムって、確か……!」Σ(@□@)
えりか 「あら? この写真って……」(・_・?
さくら・あかね 「あー!! それは……!!!」(*@□@*)
さやか 「わっ……これって……」(*@○@*;
えりか 「温泉で……きすしーん…」(*・・*;
さくら・あかね 「あ、あははははー…」(*^○^*;


<コメント>

みこと 「まこりん達ったら、初々しいねぇ〜♪」(^〜^)
あやめ 「そうね〜♪ 順調順調♪」(^○^)
はるか 「ちなみに……あの時、買った幸せ家族計画は、
     いつか使う時の為に、まだ、ちゃんと取っておいてあるようですよ」(^_^)
みこと 「……あれ? 確か、アレって、使用期限あったよね?」(・_・?
あやめ 「そんなに昔の物を使って、意味あるのかしら?」(^_^;
はるか 「あらあら♪ 別に意味が無くても良いと思いますけど♪」(^▽^)
あやめ 「……それもそうねぇ」(^〜^)v
みこと 「うんうん♪」(^▽^)v

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