「まこりん、実はなおりんのお仕事が忙しくなってきて、
これからは、今まで以上に家に帰ってこれなくなるの」

 俺の両親は、昔から家にいる事が少ない。

 俺の親父は来栖川エレクトロニクスの、
中央研究所第七研究開発室HM開発課で働いていて、
その仕事の都合上、研究所内の社宅に泊り込む事が多いからだ。

 ちなみに、母さんは専業主婦で、単に親父に付いていってるだけ。

 母さんは月に一度か二度帰ってくるのがせいぜいだし、
親父に至ってはお盆やお正月といった時しか帰ってこない。

「ふ〜ん、でも、今までだって実質独り暮しだったし、
4月からは高校生なんだから気にしなくてもいいよ」

 確かに小さい頃はなにかと大変だったが、
今では気楽な独り暮しも悪くはないと感じている。

「でもね、親としてはやっぱり心配だし、
まこりんはお爺ちゃんのところで預かって貰うことになったの」

「ふ〜ん………、
って、なにぃいぃぃーーーーーっっっ!!





 ――俺、藤井 誠

 15歳(彼女ナシ)

 そういうワケで……なぜか引っ越すことになりました……。






Heart to Heart
           
+ラブ○な

           「ラブはと」

    第一話 「ようこそ! 東鳩荘へ」







 先日、住居に関する重大な発表を『なった』と過去形で報告された俺は、
比較的に春から通う高校に近いこともあり、しぶしぶその温泉街へやって来た。

「う〜ん、おかしいな〜、確かこの辺のはずなんだけどな〜」

 地図を貰うのを忘れた為に、あいまいな記憶を頼りに歩きまわり、
やっと見つけた少しだけ見覚えのある石階段を一歩一歩上っていく。

「あっ」

 階段を上りきったところに目的の建物は、ひっそりとたたずんでいた。

「ここが爺ちゃんが経営してる旅館……東鳩旅館か……」

 その建物をしばし眺める。

 小さな頃は大きく見えたものが、
今は小さく感じる、ということはよくあるが、今回はまったく逆だった。

 小さな頃はしっかりと意識していなかったが、改めて見てみると……、

「うわぁーっ、大きいなぁー」

 これならしばらくの間、孫の一人や二人楽に置いとけるだろう。

 まぁ、それよりも重要なのは旅館の名前だ、鳥は鳥でも『鳩』で良かった、
これが『鶴』だった場合は、看板を見た時点で転進していただろう。

 なぜなら、ちょっとした高台に建つこの東鳩荘の裏手には山が広がっており、
『色々』なキノコがよく採れそうだからだ(謎爆)





 カラカラ……

「こ、こんちはー、すいませーーん」

 扉を開け、そう叫んでみる。 

 シーン

 旅館なのに誰もいないのか、まったく反応なし。

「爺ちゃん。孫の誠でーす!」

 シーン

「……? あれ?
本当に爺ちゃんも旅館の人も留守かな?」

 やはり、返事はない。
 さすがにおかしいと思い首をかしげるが……、

 ……さては、ちゃんと連絡しておかなかったな親父め。

 ここの経営者は父方の祖父なので、恐らく親父が連絡するはずだが、
まあ、親父もなにかと忙しいみたいだしな。

 一応、母さんは話はついてて、後は引越しの日時を伝えるだけだと言っていたし、
突然、孫がやってきても大した問題にはならないだろう。





「おっ、爺ちゃんの部屋だ。ここで待たせてもらおう」

 結局、誰も出てこなかった為、勝手に上がらしてもらった俺は、
管理人室とプレートに書かれた部屋を見つけ、部屋の中へと入る。

「おじゃましまーす」

 管理人室は八畳の和室が二つ繋がったもので、
よく片付いていることもあり、なかなか広く感じた。

 散々歩き回って疲れていたため、入るなりドカッと腰を落とす。
 足を畳の上に投げ出しながら、ここに来る経緯を思い出してみる。。

「全く、うちの親ときたら心配しすぎだっての……」

 たしかに、金欠でインスタント食品漬けの生活を送ったこともあるし、
夜中にやってる再放送アニメの見すぎで寝不足になったこともあるし、
さらに、自分で通知表を処理するようになってから成績も下がった……、


 …………

 ………

 ……


 全然ダメじゃんか!


 目を閉じてドテッと上半身も畳の上に投げ出して仰向けに寝っ転がる。

 あらためて考えると結構思い当たる節が……、
加えて、高校生だからこそ心配だってコトもあるだろうし。

 親にしてみれば子供は何時までたっても子供ってとこもあるだろう。

 ただ、時々発動するシリアスモードがあるとは言え、
アノ母さんに子供扱いされるのは複雑な気分だな。
 親父に関しては、大人、子供以前に人としてだしな。

 なんにせよココに引っ越す事で二人の心配を解消できるならそれで良いか。

 思案を打ち切り、目を開けて天井を眺めると、

「なんだこりゃ?!」

 なぜかそこには『ク○リス』のポスターが貼ってあった。

 じ、爺さん、俺には爺さんがなにを考えてるのか分らないよ。
 何故に『カリオスト○の城』? 

 あらためて部屋をよく見まわすと、テレビの上にアニメのフィギアがあったり、
ビデオデッキの横に妖しげなOVAが並んでたり……、

 ジャンルが全て美少女系なのが非常に気に……いや、深く考えるのはよそう。
 爺さんも藤井の血が流れてるんだ、多少は変わっててあたりまえさ。

「ふぅ〜〜〜」

 ここにいても色々怖くなるだけだから、旅館の中でも探索しようかな……。

 長い廊下を、一閃炸裂と意味不明なプリントがされいるスリッパを履いて、
ペタペタと歩き回る。

 なぜか無人の館内を歩きまわっていると、湯、と書いたのれんが目に入った。





「ババンババンバンバンバン……♪」

 お決まりの歌を口ずさみながら、只今入浴中♪

 いやー、この旅館にこんな露天風呂があるなんてラッキー。

 最初はここに越してくるのに否定的だった自分の意思が、
お湯に溶けて体から染み出ていく感じがするぞ。

「は〜、極楽極楽」

 カラカラカラ

 んっ? 誰だ?
 脱衣所の戸口が開く音がしたのでそちらに目を向ける。


「!?」


 思わず叫びそうになった自分の口を、手で強引に押さえる。
 戸口から桜色の髪の美少女が裸で現れたからだ。

 ここはお風呂だし裸なのは当然だよな〜、などと軽く現実逃避していると、
ほぼ同い年に見えるその女の子がこちらに近づいてくる。

「あ〜〜、いいお湯〜〜」

 な……、

 そう言うと、彼女は俺の真横に腰をおろし、俺に向かってクスッと微笑む。

 だ……、

「やっぱり昼ぶろはサイコーですね♪」

 ん〜〜っと、伸びをしながら平然と話し掛けてくる。

 誰だあーーーーーッ!?

 ムンクの叫びのようなポーズを取りながら、
この少女が何者か脳内検索にかけるがHIT件数はゼロ。

「ねぇねぇ、聞いてください。
最近ムネが大きくなったと思いませんか? ほらほら♪」

 しかし、そのコは胸を見せながら平然と話しかけてくる。

 極限状態にあった俺は頭が回らず、素直にその問いに答えてしまう。
 すなわち……、


「小さい」


 ……と。





シ〜〜〜〜〜〜〜ン





 奇妙で当然な静寂が空間を覆う。

 その静止した刻の中で、俺は自分の状態となにを言ったか認識し、
彼女は自分の前にいるのが男であることに気付いたようだ。

 目が合った。


 1秒。

 2秒。


 どうしていいかわからずに、俺はただ立ちすくむ。
 正確には彼女の瞳に射すくめられて動けなかった。


 3秒


 その女のコは目を瞑り……、


 4秒


 ゆっくりと目を空けながらこう宣言した。


「あなたを殺しま――」

 聞き終わるよりも早く温泉から飛び出し、腰にタオルを巻きつけると、
無意識のうちに脱衣所に向かって全力疾走をしていた。

 ガラッと行きよいよく脱衣所への扉を開け、転がるように中にはいると、

 ムニュ

 今度はバスタオル一枚巻いただけの女性の胸に顔から突っ込んでしまう。
 ここにも女性。ってことは、今まで俺が入ってたのって、女風呂?!

「ごごごごっ、ごめんなさい〜〜〜〜〜〜っ!」

 一歩後ろに下がり、どもりながらも目の前にいる、
細いリボンで長い空色の髪一つに纏めているその女性に謝る。

「何、キミ見かけない顔ね?」

「はっ、あの――」

 なんとか事情を説明しようとした瞬間。

 ドゴッ!!

 後ろにあった扉が爆砕され、鬼気を纏った桜色の髪の少女が現れた。

「あやめさん。その人は痴漢です。狩ってください」

「ひいいっ!」

 少女の姿を確認するなり、泣きそうになりながらその場から逃走する。
 確かに間違いとは言え女湯に入ってしまった俺が悪い。

 しかし、『狩って』って……釈明の余地なく死(私)刑か?!

 やっぱり、小さいっていったのが致命的か?!

「あっコラ、キミ待ちなさいっ!」

 あやめさんと呼ばれた女性の静止を振り切り再び駆け出し、
脱衣所を出ると、今度は目の前にいた少女を避しきれず跳ね飛ばす。

「な、なになに? 一体どーしたの?」

 視界の隅にその友○小学校の制服を着たツインテールの小さな少女が、
尻餅をつくのが目に入るが、立ち止り彼女の質問に答えれば、
彼女の前で一生トラウマになるような惨劇が、俺を主役に始まるので、
心の中でお詫びして走り去る。

「うにゅ、どうしたの?」

 くっ! どうして次から次へと女のコが出てくるんだ?!

 今度はいきなり、目の前にエプロン姿でおたま片手の女の子が現れる。

 今回は三度目の正直で急ブレーキをかけ激突を回避に成功したが、
慣性の法則にしたがい腰に巻いていたタオルが捲り上がりご開帳……、


「いやあああああああっ!」


 とっさに顔を両手覆い、悲鳴を上げる女のコ。

 ……ちなみに、俺も泣きたい。





「あっ! しまった!」

 数分後に辿りついたのは見晴らしのいい景色が広がるベランダ、
つまり行き止まりに出てしまった訳だ。

 途中でさらに一人加わり合計5人に追われながらも、
しぶとく生き延びていたんだが、どうやら年貢を納める時が来たようだ。

 恐る恐る振り返ると、五人の全員の女の子たちに睨まれる。

 中でも特に最初に会った桜色の髪のコと、
最後に合流した金色に近い茶色の髪の小柄な少女の視線は非常に鋭い。

「ち、ちょっと待っくれ、俺はただお爺ちゃんを訪ねて来ただけで!!
ただその、この旅館に泊めてもらおうと、別に覗いたり見せたりするつもりは……」

 明日という日を勝ち取る為に一生懸誤解を解こうとするが……、

 すたすたと、最初に会った少女がこちらに近づいてきて、拳を胸に当てたかと思うと、

「虎砲」


 ボゴッ!


「しゅらっっ!!」

 凄まじい衝撃を体内に叩きこまれ、地に沈もうとするが、

「ウイルドバーン」

ブオッ!

「がでむっっ!!」

 茶色の髪のコの声と共に巻き起こった突風により上空に吹き飛ばされ、

「え〜いっ!」

 ピピピピピピ☆

「さらまんだっっ!!」

 ツインテールのコの二昔前のデザインの『未来の光線銃』から放たれた、
謎の輪っか型ビームにより撃墜され、ぐちゃっという水っぽい音とともに、元いたベランダへと落下した。

「旅館に泊まるですって……!? この期に及んでよくそんなウソがつけますね。
ここが旅館だったのは、もうずーーっと前の話しです。今は……、」

 こちらの生死も確認せずに桜色の髪のコが話しかけてくる。

 くっ、余力があるのを見透かされてる?!
 隙を突いて逃走するプラ――、

「男子禁制の契約アパート! すなわち女子寮ですっ!!」

 死んだ振りをやめ、ガバッと跳ね起きる。

「じょ………女子寮ぉ〜〜〜〜っ!?」

 母さん、聞いてないよぉ〜〜。(涙)
 というか、女子寮じゃ無理だろ爺さん。

 まことって名前だけど俺は男だぞ。
そりゃ小さい頃に、何度か母さんに女装させられてここに来たことあるけど……、

「さぁ、おとなしく警察に行ってもらいましょうか」

「ちょっと待って、そんな……」

 じ、爺ちゃん居るなら出てきてよ。
 このままじゃ、孫が犯罪者になっちまうぞ。

「うにゅ、うちの寮に忍びこむなんていい度胸してるね」

「ちがうってぇ〜〜」

 半ば諦めかけてた時にやっと救いの女神が現れた。

「あらあら騒がしいですね、どうかしましたか?」

「あ、寮長。チカンが出没しました」

「あらあら、甥の誠さんじゃありませんか」

 彼女達の後ろ、数メートル離れたところに立つ寮長と呼ばれた女性を見ると、
そこには桃色の長い髪を三つ網みしたやさしそうな女性が立っていた。

「――は…はるかおばさん!! おひ――」

 ヒュン

 あいさつ途中で、はるかおばさんの姿が掻き消えたかと思うと……、

 ゴスッ!!

 いきなり真横に現れ、出刃包丁の柄でテンプルに一撃いれられた。

「はるかさんです。はるかお姉さんでも良いですけど」

 縮地からの一撃がまるでなかったかのように、
平然としたまま、そう注文するはるかおばさんが少し怖かった





「ぜーーーったい! ダメです!!」

 はるかさんのおかげで誤解が解け、服を着たあと、
寮のロビーにて事情を説明したところ、茶色い髪の女のコ、エリアさんから、
完全に否定のお言葉を頂いた。

 まあ、そりゃそうだろう、女子寮に男が住んで良い訳がない。

「俺も女子寮に住ましてくれって頼むほど非常識じゃないよ。
ところで、はるかさん、なんで旅館をやめたんです?」

「趣味です」

「へっ」

「お爺さんが趣味と実え――」

「はるかさん、もう良いです」

 流石は藤井家の男、いや漢。
 血の繋がりをきっぱりと否定したくなるぞ。

「で、その爺ちゃんはどこにいるんです。
一言挨拶してから帰ろうと思うんですが」

「そうでした、お爺さんは、丁度、昨日から旅行に出かけてて、
誠さん宛に手紙を預かっているのをすっかり忘れてました。
はい、これがその手紙です」


 FROM じーちゃん TOまこと

 やる


「爺さんアンタは某特務機関の司令かい?!
たった2文字でなにが言いたいんだーーっ!!」

「あらあら、新しい管理人兼オーナーに任命されたということですよ。
ちなみに拒否権はありません」



「そんなこと言ったって」

 そう言い、この寮にすんでいる5人の顔を見渡す。


「男の人が管理人なんて絶対にダメです」

さすがエリアちゃん常識があります。

「まあ、誠くんだし、あたしはOKよ」

この世界では初対面ですよ、あやめさん。

「みーちゃんもさんせー」

二役目お疲れ様です。

「事故でも、全てを見られた責任をとってもらわないと」(ポッ)

誤解が解けて良かったです(汗)。

「あたしも見ちゃったし、責任を……」(ポッ)

お、お幸せに(汗)。

「4対1で決まりましたね。良いですか、エリアちゃん?」

 はるかさんが皆の意見をまとめ、一人反対したエリアさんに確認をとる。
 4対1という数的なものより後半の発言が気になるんだが……、

「分りました、とりあえず歓迎ってことにしておきます」



「よ……よろしくおねがいします」








 ――俺、藤井 誠

 15歳

 そういうワケで……なぜか女子寮の管理人になりました……。








<おわり>


 <次回予告(嘘)>

 管理人室への荷物の運び入れもすまし、部屋を片付けていく誠くん。
 天井のポスター(クラ○ス)をはがしてみると、なんと上の階へと続く穴が。

 はたして、誠くんがそのワープゲートの先に見たものとは?!

 次回 ラブはと 「襲撃!? 女子寮管理人!」


 <あとがき>

 このたびは70万HIT記念パロディー「ラブはと」に最後までお付き合いいただき、
まことにありがとうございます。

 元となった○ブひなですが、最初の方はオススメです。
 後半は世間の評価がイマ一つなようなので(私は好きなんですけど)オススメしませんが。

 それでは、さようなら。またどこかで、お会いしましょう。


<コメント>

誠 「いや〜、何気に本編に忠実だな」(^_^;
あかね 「うにゅ? どのへんが?」(・_・?
誠 「俺に対するエリアの反応」(−o−)
エリア 「あ、あうあう……あ、あれは……その……」(*・・*)
さくら 「で、物語後半では、すっかりラブラブになっちゃうんですね♪」(^〜^)
エリア 「はう〜……」(*T▽T*)
あやめ 「まあ、あたしの役は妥当と言えば妥当でしょうけど、
      はるかの場合、すいか抱えてる方が似合いそうな……」(−−;
はるか 「あらあらあらあら……」(^▽^)
誠 「ま、まあ、はるかさんの場合は名前が同じってことで……」(^_^;
フラン 「となると、ワタシは誠様の妹役でしょうか?
     誠様をお兄様とお呼びするなんて、ワ、ワタシには……(*−−*)
誠 「フランの場合、TV版のオリキャラで、まんま自動人形の女の子がいるけど……」(^_^)
くるみ 「ボク達は何の役なのかな?」(・_・?
なるみ 「……絵馬だと思う」(*・・*)
誠 「母さんが二役やってるのが、何気に気になるがな……」(^_^;

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