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 今、俺は非常に後悔している�――

 何故、引き受けてしまったのかと�――








 こうなることは、予測できたはずなのに�――









Fate/stay night SS
-Unlimited eat works-










 その発端は、昨日の朝にある。

 聖杯戦争が終わり平和な日々。


 カチャカチャ


 朝のご飯を食べている時に、大きな声が響き渡った。

「やったぁーーーーー! 今日は待ちに待った給料日だよぅ」

「給料日で、そんなに大げさにすることか?」

 藤ねえが朝から騒いでいる。
 俺は適当に相槌を打ちながら飯を食っていた。

「藤村先生、そんなに騒いでいたらご飯零れますよ」

 桜が苦笑しながら注意をした。

「大丈夫よ。士郎と桜ちゃんの作ってくれた、大切なご飯を零すようなまねはしません」

 そう言って藤ねえは、ご飯を食べるのを再開した。

「そういえば先輩。先輩のバイトの給料日、今日じゃなかったでしたっけ」

「そういやそうだったか?
気にしていなかったから気付かなかったな」

「そうか~、士郎も給料日だったのね。だったら�……�」

 藤ねえが妖しい笑みを浮かべた。

 �――�そう。
 あれは何かを思いついて、俺に無理をさせるという感じだ。

「藤ねえ、最初に言っておくが、
そのお金をみかんにつぎ込むという考えだけは許さないぞ」

 前に、藤ねえは何を考えたか知らないが、みかんを三箱も買ってきた経験がある。
 二度とは無いだろうが、最初に釘を刺しておくのは当然だろう。

「違うわよぅ! 全く、前のこと、
いつまでも引きずってると、今度はりんごになっちゃうわよ」

 �……�なぜ、りんご?

 その考えは、頭の隅に追いやっておこう。

 その時に、食事に集中していたセイバーが言った。

「シロウ、おかわりをお願いします」

「じゃあ、私がやりますね」

 桜はセイバーの茶碗を持ちご飯をよそった。

「たくさんありますから、どんどん食べてくださいね」

「�――�うん。いつもながら、シロウとサクラのご飯は美味しい」

 セイバーは黙々と、ご飯を食べ始めた。
 そして、力を込め深呼吸をした後、何を言うかと思い身構えていたら�……�、

 とんでもないこと言ってくれやがりました、この馬鹿姉は。

「セイバーちゃん、ご飯が好きみたいだから、
そのお金を全部つぎ込むって言うのはどうかと」

「なにーーーーーーっ!!!! 全部だとーーーーーー!!」

「あはは、流石に、それは使いすぎだね」

「当たり前だ! 何言ってやがる、馬鹿姉!」

「馬鹿とはなによぅ、馬鹿とは!
ここで奮発してセイバーちゃんを喜ばせようとか考えないの!?」

「シロウ、私はあなたのご飯はとても好きだ」

 セイバーは極上の笑顔で俺に言った。

「う、うん、ありがとう、セイバー」

 あーーー俺、多分、めっちゃ赤くなってるだろうな。

「�…………�」(怒)

 �――�さ、桜が怒ってる!!

 桜の視線に耐えていた時、藤ねぇが煽ってきた。

「ほらほら、セイバーちゃんが、
美味しいって言っているんだから期待にこたえないと」

「�……�わかった。しかし、全部のお金を、
使うことは出来ない。生活もあるんだからな」

「だけどだけどぉ! そう言ったってことは、やってくれるのね!?」

「仕方ないだろ。俺がなんと言ったって、
藤ねぇが引き下がるとは思えなかったからな」

「今日は思いっきり食べるぞ~~!
セイバーちゃんも思いっきり食べていいのよ!」

 セイバーは箸を置いて、こっちを見た。

「シロウ、今日の夜ご飯を楽しみにしてます」

「�――�おう、任せろ!」

「先輩、そろそろ片付けないと」

「そうだな。じゃ、ご馳走様でした」

 皆が俺に合わせて終わり、片付けに入った。








 �――�キュキュ

 今は、桜と一緒に食器の後片付けをしている。

「でも、先輩�……�あんな約束しちゃっていいんですか?」

「ああ、男に二言は無い。それにな�……�」

「それに�……�なんですか?」

 俺は一息ついて�……�、

「俺の精一杯の料理を食べて笑顔を見せてくれるのが嬉しいんだ。
セイバー、遠坂、藤ねぇ、もちろん桜もな」

「せ、せせせ、先輩�……�」

 桜は顔を真っ赤にしてうつむいている。

「�――�? 桜、洗い物終わったから学校に行く用意するぞ」

「ふえぇ? は、はい!」

 桜は俺の後ろを、とことこ歩いてきた。







「ふ~む、何を作るかな�……�」

「そろそろ寒くなってきたことですし、
鍋物でいいんじゃないですか?」

「それが妥当か。材料さえあれば補充するだけでいいしな」

「私も手伝いましょうか?」

「今日は休んでくれ�……�、
お前もまだ、アンリマユの影響を受けているんだから」

「でも、大丈夫ですよ」

「今日は休んでくれ。俺が作るって決めたんだから」

「�……�はい、わかりました�♪�」

 桜はにっこり笑って答えた。

(俺は皆のために、ご飯を作って笑顔を見れることがいいんだ)

 そう心の中で思った時�……�、



[理想を抱いて溺死しろ�―――――]



 �……�その言葉が蘇った。

「なんで、いまさら�……�?」

「何か、言いました?」

「いや、なんでもない。遅刻しちまうからとっとと行こう」

 俺と桜は学校に走った。








 授業は何の滞りも無く進められ�――

 昼休み�――

 桜と一緒に弁当を食おうと思っていた時に、
俺の前に立ちふさがる優等生の姿があった。

「衛宮くん、そんなににこにこしてどこに行くのかな~」

 �――�ぐっ!
 こいつ、確実にわかって言ってるな。

「桜と一緒に弁当を食べるんだよ」

「いいわね~、仲がいいご夫婦で」

 ここで反論しては、時間が無くなるから。

「というわけで、用が無いなら行かせて貰うぞ」

「あ~、待って待って。私もご一緒させてもらえないかしら」

「�……�なんで?」

「なんでって、それは�……�」

 遠坂はうつむいてしまった。

「まあいいけど。時間が無くなるから早く行くぞ」

 俺と遠坂は、桜の待つ場所へと向かった。








「�――�じゃあ、今日は奮発するんだ」

「藤ねぇの口車に乗っただけのような感じもするけどな」

「ふふふ、姉さんはどうするんですか?」

「どうするって、何が?」

「姉さん、来たいんじゃありませんか?」

「な、何をいってるのよ! 行きたいだなんて、そんな�……�」

「�……�遠坂、1人2人増えたって、俺は別に構わないぞ。
鍋物にする気だから、大人数で食ったほうが美味いだろうしな」

「そ、そう? 士郎がそこまで言うのなら、行ってあげてもいいかな」

「素直に来たいならそういえばいいのに」

「な~んですって~~~~!!」

 こうしたやり取りを、桜はにこやかに見つめている。








 放課後�――

「�――�よし、バイト行ってその後材料の買出しだな」

 俺は鞄を持ってバイト先に直行した。



「�……�店長。本当にいいんですか?」

「士郎君一人いなくても何とかなる。ほら、とっとと帰って料理を作ってあげな」

「ほらほら、さっさと行った行った!」

「それじゃあ、失礼します!」

 俺は今日の事情を、
店長に言ったら、すぐに帰らせてもらえることになった。

 一度は断ったが、せっかくの好意ということで受けた。

「今日は何の鍋にするかなっと」








「ふぅ�……�買いすぎたかな」

 因みに俺は、両手にスーパーの袋を4つほど持っている。

「こんだけあったら、あの二人でも食べられるはずが無いだろう」

 俺はバイト代を奮発して、
約半月分の食べ物を今夜、用意しようとしている。

「待ってろよ~!」

 俺はうきうき気分で家へと帰った。








 トントントン�――

 桜が材料を切っている軽快な音が響く。
 俺は出汁をとっている。

「先輩、野菜切り終えました~!」

「あとはやること無いから、休んでていいぞ」

「でも�……�」

「今日のところは休んでくれって言ったのに手伝ってくれるもんな。
これ以降は、俺一人にやらせてくれ」

「じゃあ、待ってます」

 桜は居間に移動した。

「さて、仕上げだ」


 ドサドサドサ�……


 肉、魚と入れ�……�、
 最後に野菜を煮えにくい順番に入れていく。

「これで、後は煮込むだけだ」

 煮込んでいる間、俺はこれまでのことを振り返っていた。

 セイバーの令呪が消えた時のこと�――
 桜と結ばれた夜のこと�――

 破壊すべき全ての符で、桜をアンリマユの契約から断ち切ったこと�――


 グラグラグラ�……


 そう考えているうちに、鍋が沸騰直前にまでなっていた。

「おっとっと、煮詰まったら大変だ」

 俺はすぐ火から外し居間に持って行った。








「よーし、出来上がりだ!」

 持っていこうとした時、居間を見た。

 既に皆は、臨戦態勢突入状態だった。

「�――�士郎? 早く持って来なさいよ」

 遠坂がせっつく。
 俺は何を考えるわけでもなく皆に対してこういった。



「�――――――�いくぞ皆の者。腹の空腹は十分か」



「ふ、愚問ですよシロウ�……�、
私はあなたの料理を残すことはありえない」

「私もセイバーちゃんには負けてられないわ!」

「この二人には及ばないだろうけど思いっきり食べさせてもらうわ」

「わ、私も頑張ります! 皆さんには負けていられません!」

 なぜか4人の後ろには、
燃え滾る炎が舞い上がっているように見えた。

「これは大食い大会じゃないんだけどな�……�まあいいか」

 俺がガスコンロに鍋を置いて火をつけた途端�――

 半月分の食料が食い潰されていく、その有様を見ることとなった。








「あ、あ�……�あああ」

 俺は、その状況を認めたくなかった。
 半月の食料が瞬く間に消えてったんだぞ?

 これは、予想外だった�……�、

 遠坂と桜は既に食べ終わっているが、
セイバーと藤ねぇはそのスピードが落ちることは無かった。

 そう考えているうちに空になっていた。

「ふーーーーーっ、よく食べたわーーーー」

「私もこれほど食べれるなんて夢のようです。しかし、まだ食べれますね」

 ちょっと待て。
 今、セイバーはなんて言った?

『まだ食べれる?』

 おいおい�……�、
 だったらいつもの食事はどうなってるんだよ。

「シロウ、これで終わりなのですか?」

「�――�ん? ああ、最後にうどんを入れて食べるんだ」

「普通、雑炊じゃないの?」

 遠坂が口を挟んだ。

「世間一般ではそうだろうが、家ではうどんだ。食べてみれば解る。
――�な、藤ねぇ、桜」

「うん! このいろんな出汁が出たところに、うどんを入れて食す�……�最高よぅ!」

「はい。前に食べさせてもらいましたけど、とても美味しいですよ」

「�――�そう。なら、私も食べてみようかしら」

「じゃ、待ってろ。すぐに用意するから」

 俺は台所へ向かった。





 袋に入ったうどんを笊に開けて水でさっと洗う。
 こうしないと汁にストレートにぬめりが出てしまうからだ。

 チャッチャッ�……

 水を切って居間に持っていった。





「じゃ、入れるぞー」


 ザバッ�――

 うどんを入れて煮込む。


 グツグツグツ�……


 うどんが温まり食べごろとなった。

「じゃ、改めていただきます」

 遠坂がうどんを取り口に含む。


 ちゅるちゅるちゅる。


「美味しい! これは新発見だわ!」

「だから言ったろ?」

 他の3人は一心不乱に食べていた。







「「「「ご馳走様でしたーーーー!」」」」

「お粗末様。さて片付けるかーー」

「�――�あ、私手伝います」

 桜が一緒になって後片付けを手伝ってくれた。

「先輩。今日のお鍋、とても美味しかったです」

「それは良かった」

「だけど、本当に思い切ったことをしましたね。大丈夫ですか?」

「まあ、何とかなるんじゃないか?
こんなことは今日一日だけだろうし」

「そうですね。それにしても、本当に美味しかったなぁ�……�」

 桜と話をしながら後片付けを終わらせた。








「�――�士郎。今日、私、帰りたくなくなっちゃった。泊まって行っていいわよね?」

「ああ。別に構わないぞ」

 その時、桜から嫉妬のこもった表情で睨まれたが、何とか耐えた。

「じゃあ、おやすみなさい。夜更かしなんてしないのよ!」

 藤ねぇは帰った。








 今日も平和に終わった。

 �――�と、思ったが。

 その次の日に、また苦悩が待ち受けているとは、
今の俺には予想がつかなかった。








 次の日�――

「ちょ~~~~~~~~~っと待て!!!!!」

「何よぅ! なんか文句でもあるの?」

「なんか文句でもあるの?」

「シロウ。何か問題でも?」

「先輩、ここまで来たらもう�……�」

 桜�――
 お前まで、あちらの味方か。

 俺は悲しいぞ�……�、

 何故、俺が大声を出しているかというと、
昨日の大奮発の料理に関係がある。

 なんと、藤ねぇが大奮発の料理を月に1回出せというのだ。

 当然、断ろうとしているのだが。

「「「「�……�」」」」(ニコニコ)

 4人が満面の笑みで微笑んでくるから無碍に断れない。

 俺は皆の笑顔が見たくて料理を作った。
 なら断る理由は無いのだが、お金の問題となるとそう簡単に了承できない。

 あ~~!
 どうすればいいんだ!

 その時、アーチャーの言った言葉が鮮明に思い出された。



[理想を抱いて溺死しろ�―――――]



 この時、俺は思った。

 この4人に理想を持つと、
それを上回る現実によってその理想は溺れ死ぬのだと�――








<終わり>


後書き

 一応、これは桜トゥルーエンド後です。
 それに凛グッドエンドをちょこっとプラスしました。

 簡単にいえばご都合エンドですね。

 Fateには、ご飯を、結構、食べる人がいるようなのでこれを書きました。

 イリヤを出そうとも考えたのですが、
鍋物を突いているイメージが考え付きませんでしたので登場させませんでした。

 イリヤちゃんごめんなさい!

 また書けるのならば、今度はイリヤも交えて書こうと思っています。

 最後に、鍋物の最後はやっぱり雑炊が一般的なんでしょうか?
 私は、昔からうどんだったので、そっちの方がよいのですが。


<コメント>

 体は胃袋で出来ている�――

 右手にナイフ、左手にフォーク�――
 幾度の食事を越えて不敗�――

 ただの一度も満足は無く、ただの一度も満腹も無い�――

 空腹者はここに五人�――
 食卓の前にて料理を待つ�――

 ならば、彼らに遠慮の意味は不要ず�――


 �――�この体は、�“�究極の胃袋で出来ていた�”�。



スフィー 「ぱくぱくぱくぱく�……♪�」(^�▽�^)
みさき 「モグモグモグモグ�……♪�」(^�▽�^)
楓 「むしゃむしゃむしゃむしゃ�……♪�」(^�▽�^)
すばる 「ガツガツガツガツ�……♪�」(^�▽�^)
誠 「�――�おかわり�♪�」(^�▽�^)=�▼

奢り者一同 「もう止めて~! 勘弁して~!!」<(T�△�T)>

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