多少、ネタバレを含みますので、読む人は気をつけてください。
Ωサーバ――
『リア・ファイル』――
ここで、カイトは……、
ある苦悩に悩まされていた。
それは、ブラックローズと寺島良子からきた、メールが発端であった……、
.hack ss
カイトはつらいよ
「まさか、二人とも、同じエリアを指定してくるなんて思いもしなかったよな。
そのおかげで、あの二人とは、気まずくなっちゃってるし……」
指定されたサーバでの出来事――
二人は、カイトと二人っきりで、
アイテムを取りたかったのだが、同時期に、同じエリアを選んでしまったのだ。
これでは機嫌が悪くなるのも当たり前……、
それにカイトは「どっちかを選んだ方がよかった?」と、
二人の気持ちを知らないような聞き方をするので、二人とも怒ってしまったのだ。
「……どうしよっかな〜?
ここにいても始まらないし、Θサーバーに行こうか……」
そして――
Θサーバ――
『ドゥナ・ロリヤック』――
「何でか、ここに来てしまった……おっ、あの人達は……」
そこには、ニューク兎丸とレイチェルがいた。
「こんにちは! 何してるんですか?」
「――ん? いや〜、この頃、俺の熱いソウルが燃えなくてな〜」
ニューク兎丸は、相変わらず意味不明なことを言っている。
「――む? このエリアが、俺を呼んでいる気がする!
ちょっくらいってくるぜぇ!」
一人で舞い上がって、とっとと行ってしまったニューク兎丸。
「いっちゃった。なんだったんだろう……」
その様子を、唖然とした表情で見ていたカイト。
「どうしたんや、カイトォ〜? そんな死人みたいな感じ漂わせおって〜」
明るくレイチェルが話しかけてきた。
「――え? いや、ちょっとね」
「はは〜ん♪ ブラックローズ達となんかあったな?」
悪戯っぽい表情でカイトに聞いた。
「そ、そんなことはないよ〜、あははは……」
「カイトは、嘘が下手なんだから、
すぐばれるっちゅーに……いいから話してみ?」
「ふ〜う、レイチェルにはかなわないな。
ちょっと、あの二人のいざこざに巻き込まれてね」
「詳しい事情教えてみ? なんか力になれるかもよ」
カイトはできるだけ簡潔に、しかし、細やかに説明をした。
「う〜ん……それは、あんたが全面的に悪いような気もするなぁ」
「え〜、なんで〜?」
「あの二人の気持ちに、本当に気付いていなかったん?
普通、気付いてあげるのが、男の役割だと思うけど……」
「ま、まあ……多少は気付いていないわけでもなかったけど……、
まさか、あそこまで怒るなんて思わなかったよ」
「ここで呆けていても始まらへんよ、呼び出しかけてみ?」
レイチェルは励ますように言った。
「うん、わかった。まずはブラックローズから……、
いや、寺島さんからのほうがいいかな? う〜〜〜〜〜〜ん……」
カイトはどっちにするか迷っている。
そうしたらレイチェルの顔がだんだん紅潮してきた。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!
はっきりせんやっちゃな!!! そんなもんとっとときめぇ!!!」
「は、はいぃぃ!!」
その声に圧倒されて、ブラックローズに連絡をした。
Λサーバ――
『カルミナ・ガデリカ』――
「で、何のよう? 私も忙しいのよね〜」
「前のことだけど……ごめん!」
カイトは頭を下げた。
「――はあ? 前のことって?」
「前に、寺島さんと同じエリアで喧嘩したでしょ? その事について……」
「そんなこと気にしてないわよ……、
私としては、この頃、パーティに呼んでくれなかった事の方が怒るわね」
ブラックローズは、カイトを攻めるように話している。
しかし、その顔には嬉しさも見え隠れしている。
「……本当に、ごめん」
「もういいわよ……それより、私を冒険に誘ってよね!」
「――わかった」
カイトは、安心した表情を浮かべた。
「でも、今日は駄目。
本当に他の用事があるからね。また今度、誘ってね!」
ブラックローズは、そう言って、ログアウトした。
カイトはそれを見送って……、
「――よし、次は寺島さんだ」
……メールを送った。
Σサーバ――
『フォート・アウフ』――
「う〜〜ん……何でメールが届かないんだ?」
ブラックローズと別れた後も、カイトはメールをすぐに送った。
しかし、連絡が取れなかったのである。
「仕方ない、もう一回メールを……?」
メールを送ろうとした時、
背中に羽の生えた特徴のあるキャラクターが見えた。
「――寺島さん!」
「カ、カイトさん……!」
寺島良子は逃げようとする。
「待って、何で逃げるの!?」
「だってだって、あの事で、カイトさん怒っているかと思って……」
「それはお互い様。僕だって怒っていると思ってたんだから」
「じゃあ、怒っているわけではないのですね?」
「寺島さんこそ、怒ってないの?」
「私は怒ってません! 確かに、あの時は、ちょっとムッときましたけど。
さあ、こんな話終わりにして冒険しましょう!」
「うん、そうだね」
「じゃあ、私に呼びかけてください」
カイトはメールを送った。
「……はい、じゃあいきましょう!」
カイトと寺島良子はダンジョンに向かった。
「今日はありがとう。冒険できて楽しかったよ」
「こちらこそ。また、お願いしますね」
――寺島良子と別れた。
「ふぅ〜〜……これで問題は解決したな」
カイトは気付いていなかった。
これで終わるわけが無いのだと……、
後日――
届いていたメールを見た。
そうしたら……、
ブラックローズと寺島良子からメールがきていた。
「どれどれ……?」
『レベル上げとレアアイテムを集めたいから協力しなさい!
Ωサーバ『隠されし 月の裏の 聖域』に行くわよ。
あそこはウィルスバグばっかりいるから、
私一人じゃどうにもならない、って言うかあなたがいないと駄目なのよ。
Ωサーバで待ってるわ』
「ふふっ、いかにも彼女らしいメールだな。次は、っと……」
『レベル上げをしたいので、あなたの力をお貸しいただきとう申し上げます。
Ωサーバ『隠されし 月の裏の 聖域』に行きたいと思います。
私にはちょっと早いかもしれませんが、あなたの力があれば大丈夫だと思います。
Ωサーバで待っています』
「よし、すぐ行こう……って、えええええええ!!!!」
カイトは叫んだ。
この二人に誘われるのは、まだいいが……、
……また、同じエリアを指定してきたのだ。
「……行ってみよう。話はそれからだ」
Ωサーバ――
『リア・ファイル』――
カイトがそこに行った時、異常な気が身を包んだ。
「――うわっ! 何だ、この気は!?」
耳を澄ますと……、
「あら〜、寺島さん? お久しぶりね〜」
「ブラックローズさんこそ、お久しぶりですね」
顔は笑っているが、内心は笑っていない。
「私は、これから待ち合わせがあるの。
サッサとここを立ち去ってくれないかしら」
「奇遇ですね。私もここで待ち合わせをしているんですの。
貴女こそ、ここから立ち去ってください」
ゴゴゴゴゴ……
二人の背中から、炎が巻き上がるような音が聞こえた気がした。
「ううっ……行きたくないけど行かなきゃ。
あの二人は、ほっとくと何をしでかすかわからないから……」
――カイトの苦労は、まだまだ続くらしい。
<終わり>
後書き
今回は、頭の体操ということで書きました。
このSSは1年前から考えて、
途中まで書いていたのですが、気分が乗らずそのままになっていました。
構想より短くなってしまいましたが、大体、書きたいことは書けました。
今度、書くならば、もっと推敲を重ね、よりよいものを作っていきたいです。
<コメント>
ミレイユ 「マコトマコト〜! 大変だよ〜!」(;_;)
誠 「――ん? どうした、ミレイユ?
もしかして、また、カイト達が痴話喧嘩してるのか?」(・_・?
ミレイユ 「うん……もう、すっごい緊張感……、
シューゴやレナじゃ、ちょっと止められそうにないんだよ〜」(T▽T)
誠 「……オルカやバルムンクは?」(−−?
ミレイユ 「我、関せず……って、顔してる」(−o−)
誠 「なかなか、懸命な判断だな……、
とは言っても、放っておくわけにもいかないし……」(−−;
ミレイユ 「ボクだけじゃ、どうしようもないよ〜」(;_;)
誠 「ったく、しょうがね〜な〜……ちょっくら仲裁に……」(−−;
ミストラル 「……マコトが言っても、説得力無いんじゃない?」ヽ(
´ー`)ノ
誠 「――ぐはっ!!」Σ( ̄□ ̄)