チチチ……

 
チュンチュン……


「う〜ん、今日もいい天気だな〜。
さて今日は何が起こるかな〜楽しみだな〜」

 小鳥のさえずりで目を覚ますカウジー。

 彼は身支度を整えた後フォルテールを背中に背負って、長い階段を上り、
フォンティーユに赴こうとしたが……、


 
ぐう……

 
きゅるるる……


 彼の腹の虫が鳴いた。

「まずは腹ごしらえからだな。腹が減っては戦はできぬというし」

 カウジーはそこら辺の枯れ木を集めて火をおこした。
 そして、すぐ近くの池で魚を釣り、それを直火で焼く。

「う、美味い〜! やはり魚は直火焼きに勝てるもの無しだな!
しかも、釣りたてだから、なお最高!」


 
バクバクバク……

 
ガツガツ……


「う・ま・い・ぞ〜!!!」

 美味いを大声で言いまくるカウジー。

 彼は不老不死で餓死などで死ぬことはないのだが、
食べ物を食べないと永遠に空腹感を味わいながら暮らしていくことになる。

 彼も人なので、やはり食物を摂取しないと生きている感じはしないのであろう。

「今回はソフィル、来なかったな。いつもだったら魚を奪いにやってくるのに……」

 ちなみに、ソフィルというのはアルテが飼っている猫である。
 本名はソフィルノという。

「ま、いいか。食事を邪魔されていい気分はしないし、いつも負けてるしな……」

 そうなのである。
 ソフィルがやって来た時は、大抵、魚を奪われている。

 取り返そうとしたらラスティが現れて、大人げないと思い、やむなく諦めたり、
せっかく捕まえても、物凄い反撃を食らって傷だらけになったりで、良い事は無い様に思えるが……、

「しかし、あの猫のおかげで、アルテさんを見つけられたんだよな……」

 カウジーが死んだと思い、そのショックでフォンティーユを飛び出してしまったアルテ。

 カウジーはアルテを捜して旅をしている時、お腹が減って、
魚を捕って焼いていたところ、偶然、ソフィルがやって来たのだ。

 そして、ソフィルを追っ駆けていたらアルテがいた、というわけである。

「あの時は、本当にソフィルに助けられたな〜。
ソフィルがいなかったらあとどれだけ探し回ったかわからないな」

 確かに、フォンティーユではいろいろなことが起きた。

 カウジーが知り合った4人の女の人たちは……、
 「呪い」となんら変わらない、天使の刻印を受けていたのである。

 ラスティは声が出なくなり、フィアは町から出ると死に至る呪い。
 サーリアは自分のご主人様を悲しませないためにご主人様の娘になったり……、

 アルテに至っては堕天使の刻印で両目が見えなくなっていたのである。

 天使の刻印とは……、
 叶えたい願いを叶えるほかに代償を求めるものなのだ。

 昔のことを思い出しながら食事を食べ終えフォルテールを背負う。

「さて、お腹も膨れたことだし、フォンティーユに行くか!」

 カウジーはウキウキ気分で、フォンティーユへ続く長い階段を上る。

 その後、フォンティーユでカウジーに助けられたと言ってもいい4人の美女が、
カウジーを自分のものにする計画を練っていようとは……、

 この時、カウジーはそんなことなど微塵も考えもしなかったのである。





エンジェリックセレナーデSS

戦乙女 〜忘らるる福音の葬送曲〜 前編





「っと……そういえば、もう暖房薬と結界薬がなかったな。
サーリアの店によって買わなくっちゃ」

 カウジーはフォンティーユじゃなくフォンティーユ近辺で生活をしている。
 何度もフォンティーユで暮らそうかとも思ったが、ある理由のためにここで生活をしている。

 その理由も、もう必要なくなったのでカウジーがいる必要は無くなったのだが……、
 場所を変えないのは枕が替わると寝れないのと同じ理由である。

 暖房薬は寒さから身を守るため――
 結界薬は熊から身を守るため――

 この理由から、カウジーにとっては2つのアイテムは必須なのである。

 サーリアの店に行くのに、いつも通り街を歩いていると、フィアを見かけた。

「お〜い、フィア〜! なにしてるんだ〜?」

「あっ、カウジー! はぁはぁ……な、なんでもないわよ」

 フィアはかなり息切れが激しかった。
 まるで誰かと訓練をしていたような……、

「ど、どうした? 何でそんなに息が切れてるんだよ?」

「なんでもないわよ。ちょっと運動していただけだから」

「ちょっとの運動、ね……、
じゃあ、何故、ちょっとの運動でそんなに息が切れてるんだよ?」

 フィアは息を整えながらこういった。

「ええ、ちょっとあなたを手に入れ……う、ううんっ! なんでもないわ!」

 最後の方はよく聞こえなかったし、
何か不穏な言葉が聞こえたような気がするが、気のせいだろう。

「じゃ、じゃあ、私、急ぐから! じゃあね〜♪」

「何なんだ、あいつは……あ、まだ病み上がりなんだから無理するなよ〜!!!」

 大声で走り去るフィアに注意し、
カウジーは納得いかない面持ちで走り去ったフィアを見ていた。

「追い駆けるのもなんだし、サーリアの店に行きますか」

 サーリアの店に近づく度に神妙な顔になるカウジー。

 それはそうだろう……、
 あの時、全ての真実を知ってしまったのだから……、

「サーリア、大丈夫かな? また現実逃避してなきゃいいけど……」

 考えているうちにサーリアの店「ウィネス魔法店」に到着。

「大丈夫だ。そうなったらまた俺が助けてやる。俺の命を懸けてでもな……」


 
カランカラン〜♪


 ウィネス魔法店のドアの鐘がいい音色を出す。

「おーい、サーリア〜! 暖房薬と結界薬が欲しいんだけど〜」

 店の中からの反応は無し。

「――と、あれ? サーリア〜、居ないのか〜? おかしいな?
店に居ない時は、大抵『材料採取に行っています』の看板が掛かっているはずなのに……、
今日は闇の日の定休日でもないしどうしたんだろう?

 カウジーは少し大きめの声で店の奥に話しかけた。

「お〜い! サーリア〜! 居ないのか〜!」

 ――反応無し。

 仕方が無い。
 今、いないのなら、また来るかと思った瞬間……、

「にゃにゃにゃ〜!! 大変ですぅ〜! 早く逃げなきゃです〜!!」

「――んな!?」


 
バタバタバタ!!

 
ドッシーン!!!

 
ドタン!

 
ゴーン!!


 カウジーは床に思いっきり頭を打った。

「いったあぁぁ……どうしたんだ、サーリア――っ!?」

 と、その時、店の奥でめちゃくちゃいやな音が聞こえてきた。


 
キィィィィィン……


 魔法力が一点に集中する音がどんどん高まってくる!


 キュゥゥゥゥン……


「や、やばい! 早く逃げなきゃ!」

 そう思った時にはもう遅い。
 あたりが妙に静かになった瞬間……、


 
ギィィィィィン!!

 
キュゥン!

 
ゴゴゴゴ……

 
チュッドォォォォォォォン!!


「う、うわぁあぁぁあぁ!!」

「きゃあぁぁぁぁ!!」

 魔力が暴走を始める!
 あたりに余波が吹き荒れる!

 だが、不思議なことに、あまり物もカウジーも壊れなかったのである。

「いてててて……サーリア大丈夫か……いっ!?」


 
――ふにゅ♪


「ま、まさか……このやわらかい感触は……」


 
ふにゅふにゅふにゅにゅ〜♪


「カ、カウジーさん……」

「ま、待てサーリア! 今のは不可抗力というかなんと言うか」

 慌てて弁解するが、まだ手はサーリアの胸にあるのだから説得力0である。
 サーリア乱舞を喰らって、トドメにジオスソードが来るだろうと思っていたら……、

「こ、こんなところで、カウジーさんったらもうえっちなのですから〜」

 予想とは反した答えが返ってきて、拍子抜けするカウジー。

「――は?」

 そんなカウジーを余所に、サーリアは妄想フィールドを形成していく!

「もう、カウジーさんたら……私、まだ心の準備が整ってないのに〜♪
でも、カウジーさんだったら、すぐに襲われてもいいかも〜♪」

「あ、あの? サーリアさん?」

「やんやんやん♪ やっぱり、初めてはベッドの上でちゃんとした形でしたいし〜♪
でも、野外プレイもいいかなあなんて♪ いや〜ん、もう困りましたですぅ〜☆」

「や、やばい! サーリアの妄想度が急激に上がってきている!
止めなくちゃ! サーリア!サーリア!!!」

「はう〜、カウジーさん……(ぽぽぽ)」

「仕方が無い……これも俺とお前のため。許せサーリア!」

 カウジーは拳をグーに握りしめ、サーリアのおでこに拳を当てる!

 そして――

 ぐりぐりぐり……

「痛い痛い痛いですぅ〜! やめてくださいぃ〜!」

「やっと正気に戻ったか……さて、説明してもらおうか?」

「あ、あのですね〜、魔法薬を作ってる最中に新しい魔法を習得しようと思って〜……、
本を読んでいたら没頭しちゃって、そのままほったらかしにしてたら、
さっきのようなことになっちゃったのです〜」

「まあ、爆発はいつもあることだから、そんなに驚かないけど……なぜ、新しい魔法を?
サーリアの魔力は強いんだから、ジオスソードで十分だろ?」

 サーリアは本当に魔力が強いのである。

 感情が制御できなくなった時や、
自分自身で魔力を解放したら、どれだけの魔力になるかわからないのである。

「その理由はですね〜、うふふふふふ……」

 サーリアは笑いながらこう言った。

「他の人を吹っ飛ばして、カウジーさんをサーリアの……、
にゃにゃにゃ! 今の言葉は聞き流してください〜!!」

 どうも引っかかる。
 俺の名前とその後に続く言葉……、

 カウジーはにこやかに、そして威圧のオーラを出してサーリアに詰め寄った。

「サーリア……」

「カ、カウジーさん……キスの準備ならいつでもOKですぅ☆」


 
ドガシャァァァン!!!


「ちが〜う!! まったくもう……」

 派手に転んだカウジーは鼻をさすりながらサーリアに訊いた。

「サーリア、俺に何を隠している?」

 カウジーの威圧のオーラがサーリアに襲い掛かる。

「あうあうあう……」

 そして、サーリアの口から……








「それは……」








<続く♪>


あとがき

 どうも、今井です。
 今回はどうにも長くなりそうなので分けてみることにしました。

 話の内容によれば中編が出てくるか、
一気に後編までになってしまうか今の段階ではわかりません。

 ラスティとアルテは前編では出てきませんが、中編か後編で出てくる予定です。

 頑張りますので、長い目で見ていてください。


<コメント>

ラスティ 「ちっちゃな胸だと、ダメなんですか?」(;_;)
カウジー 「――ぶっ! ラ、ラスティ!? いきなり、何を……」Σ(@○@)
ラスティ 「だって、カウジーさん……、
      サーリアさんの胸を、あんなに……何度も……」(*・_・*)
カウジー 「い、いや、あれは不可抗力であってだな……」(^_^;;
フィア 「ふふ〜ん♪ 胸の大きさなら、あたしだって負けてないもんね〜♪
     というわけで、胸の小さいお子様は引っ込んでましょうね〜♪」ヽ( ´ー`)ノ
アルテ 「あらあら、それでは軍配は私に上がってしまうわけですね」(^_^)v
ラスティ 「うう……このままじゃ、カウジーさん、取られちゃう」(T_T)
サフィー 「大丈夫よ、ラスティ! あなたには、あなたにしか無い武器があるんだから!」(^○^)
ラスティ 「私だけの……武器?」(・_・?
フィア 「――くっ! さすがは、カウジーの『元』恋人ね!
     カウジーの性癖を知り尽くしているわっ!」(¬¬)
アルテ 「しかも、ラスティちゃんには、シアリィさんという強力な後ろ盾もあります。
      やはり、最初に倒すべきはラスティちゃんですね」( ̄ー ̄)
カウジー 「おい……さっきから、俺を置いて、何を話して……」(−−;
サフィー 「さあ、ラスティッ! 天使の力でライバル達を倒すのよ!
      そして、カウジーをゲットして……その後は、ちょっとだけ、私にもお裾分けしてね♪」(*^_^*)
ラスティ 「はい! 天使の羽根よ! 我に力をっ!
      ハイジゴディパトリアノンモロゾフリンデディパーダンッ!
      エンジェルラビィーーーーッ!!」( ̄○ ̄)/
カウジー 「ああ、もう……何がなんだか……」(T▽T)

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