「ふう……気分を落ち着けるなら、やっぱここだな」
Δサーバー水の都マク・アヌ――
カイトは、ここで身体を休ませていた。
八相との戦い、クビアとの戦い、ザ・ワールドの謎……、
体力的にも精神的にも疲れていたカイトは、
これからの戦いの為にも、静かな水の都で休んでいた。
――ピロリロン〜♪
メールが届いたようなので、カイトはすぐ受信メールを見た。
「ブラックローズに、なつめに、寺島さん?
それに、レイチェルからも来ているぞ?」
……なんだろう?
そう思ったカイトは、メールの内容を見た。
「――ん?」
これからが、大変な一日になることも知らず……、
.hack SS
「プレゼントをもらうなら誰?」
偶然か必然か……、
メールの内容は全て同じだった。
『水の都マク・アヌまで来て!』
『マク・アヌまで来てくれませんか?』
『誠に恐縮ですが水の都マク・アヌまで来てくださいませんか?』
『ちょ〜っと悪いけどな、マク・アヌまで来てくれへんか?』
「みんな、どうしちゃったんだろう……とにかく行ってみようか」
不安と期待を持って、
みんなの待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所についた瞬間――
異様なオーラがサーバー全体に展開していた。
まるで、四人が中心となって、
その回りにエネルギーフィールドが展開されている感じだ。
「あ、あの……みんな、どうしたの?」
カイトが、何も知らない顔で四人に聞いたら、その四人は……、
「カイト〜! やっと来てくれたのね!」
ブラックローズが、心底安心したような笑みを浮かべてカイトに寄り添った時……、
「ああぁっ!! 何を寄り添っているんですか!」
「カイトさんに寄り添って良いのは、私だけですのよ!(ぽっ)」
「なに言っとるんや! うちが一番カイトにふさわしいって決まっているやないか!」
「何よ! 私はカイトのパートナーなんですからね!
それに寺島良子!その(ぽっ)は何なのよ、(ぽっ)って!」
四人はいつもの仲間意識はどこへやら。考え付いた理由を大声で言っていく。
「――みんな! ここでは、他の人達に、
迷惑が掛かるから、手頃なエリアに行くよ!!」
カイトがそう叫ぶと、みんなはコロッと静かになった。
「うぐぅ……他のみんなの視線が痛い。早くエリアに行かないと」
某恋愛ゲームのヒロインの口癖を言いながら、カイトはカオスゲートに近づいていく。
「みんな! Δサーバー『萌え立つ 過越しの 碧野』へいくよ!」
「さて……どういうことなのか説明してもらうよ?」
カイトは静かに聞く。
そうしたら、ブラックローズが……、
「カイトにプレゼントしたいものがあって呼び出したのに、他の人たちがいるんだもん。
なぜ居るのって聞いたら、同じ理由だったから……」
「う〜ん……そんな些細なことでけんかしていたの?」
カイトがそう言うと、なつめと寺島良子とレイチェルが、すごい勢いで近寄ってきた。
「そんな事とはなんですか! そんな事とは!」
「そうですよ! カイトさんには、私の物しか受け取って欲しくないんです!」
「まったく……カイトは朴念仁なんやから〜」
ここぞとばかりに、四人がずずいと身体を寄せてきた。
「「「「――で、誰のプレゼントを受け取る(のよ!)(んですか!)(のですか!)(んや?)」」」」
カイトは額に冷や汗をかいて、こう切り出した。
「僕には決められないなぁ〜、ははは……」
渇いた声で、カイトは笑いながら答える。
もはや、現実逃避と言っても良いだろう。
「そう……カイトが決めれないというのなら……」
「最後の手段に出るしかありませんね」
「そうですわね……あの方法しかありませんわよね」
「くくくっ……みんな、覚悟はええか?」
「み、みんな!! 何をする気だ!!」
カイトが言った時には、もう遅い。
もう、みんなは互いを全力で攻撃し合っている。
「カイトは私のものだぁ〜!!! 牙烈火!!」
「甘いですね! 烈波轟雷刃!!」
「私の愛の力にはかないませんよ! オルリウローム!!」
「みんな倒して、うちがパートナーになったる〜!! バクススパイラル!!」
ちなみに、みんな持っている武器は全てカイトからのプレゼントだ。
しかも、ほとんど最強の武器ばかり……、
「みんな使ってくれているんだなあ」と、
カイトは嬉ししがっているが、事態は大変な方向へと向かっている。
「なかなかやるわね!」
「ブラックローズさんこそ!」
「でも、カイトさんは私のものです!」
「そうや! 早くリタイアせいや〜!」
さすが、レベル70以上同士の戦いだ。
そこら辺が、もう火の海になっている。
そろそろ止めなくては、と思ったカイトは、大声で言った。
「みんな〜!!! もうやめろぉ〜!!!!」
だが、一向に止める気配がない。
――ここで考えてみよう。
四人は、全力で互いを攻撃し合っている。
普通のモンスターなら、もう『PROTECT BREAK』しているだろう。
しかも、一箇所に集まっている。
この結果から、カイトが考え出した結果は……、
「……みんな、いい加減にやめなよ(怒)」
「なによ、カイト!? 邪魔しないで――っ!!!」
「どうしたんですか、ブラックローズさん――っ!!!」
「えっ? どうかしたんですか――っ!!!」
「何や、今いいとこなのに――っ!!!」
みんな、顔を引きつらせてカイトを見ている。
――それはそうだろう。
今までに、見たことがないカイトの表情……、
それに、腕輪が光っている。
みんなは瞬時に悟ったのだろう……、
カイトが『データドレイン』を使用しようとしていることに……、
しかも、範囲内の『PROTECT BREAK』しているものを、
一気に一網打尽にする『ドレインアーク』を使おうとしていることに……、
「みんな、もうやめてよ……、
もう、みんなが戦っている姿を見たくないんだ。
だから頼む、戦いをやめてくれ……」
カイトは、心底つらそうに四人を見ている。
「答えを出すことはできないけど、みんなの気持ちはわかった。
僕が原因なんだね……ごめん、みんな」
四人は、カイトのそんな行動を見て、
自分達の行動が、如何にカイトを困らせているかわかった。
「謝らなくていいよ、カイト。むしろ謝るのは私達の方なんだし……」
「そうですね、ごめんなさい、カイトさん」
「こちらこそ、ごめんなさい、カイトさん……、
あなたの気持ちを考えずに行動してしまって……」
「でも、うちらのプレゼントは貰ってくれるよね?」
「――うん、もちろんだよ」
カイトは力強く頷いた。
「みんなボロボロだね……、
それじゃあ、僕からも、回復のプレゼントだよ……ファラリプス!!」
ルートタウンにて―――
「それじゃあ、カイト、またね。私のこと嫌いにならないでね?」
「カイトさん、今日はすみませんでした。また冒険しましょうね?」
「これからも一緒に冒険してくださいますよね?」
「じゃ、うちはこれで。本当にすまんかったな、カイト。また一緒に冒険しような?」
不安そうな四人に、カイトはハッキリ言ってあげた。
「こちらこそ、これからもよろしく、みんな!
.hackers(ドットハッカーズ)の絆はこんなものでは壊れないよ!」
四人は嬉しい顔になって……、
「「「「うん(はい)!!!」」」」
――カイトは水を見ながら、こう言った。
「今日は、精神的にも肉体的にも疲れたけど……、
みんなの絆を確かめられたから、ま、いっか」
この後……、
さらに、.hackersの強さが増したのは、言うまでもないだろう。
<終わり>
あとがき
初めて、SSを考えた今井です。
何しろ初めてなので文章構成、
まとめなど未熟なところもあるかと思いますが長い目で見てくれたらうれしく思います。
<コメント>
ミストラル 「――しっつも〜ん♪」(^○^)/
バルムンク 「む? 何だ、ミストラル?」(・_・?
ミストラル 「あのねあのね、作品中に、カイトが皆にデータドレイン使おうとしてたけど、
そんな事したら、み〜んな未帰還物になっちゃうんじゃない?」(・_・?
バルムンク 「まあ、そうだろうな……尤も、カイトにそのつもりは無かっただろう。
せいぜい抑止力にする程度の考えだったはずだ。
カイトは、そんな真似をするような男じゃないからな」(−o−)
ミストラル 「だよね〜♪ でも、あれあれ〜? ちょっと変だよ〜?
あたし、スケィスと闘った時にデータドレインされちゃったけど、
あの時は、状態異常と、ステータス異常くらいにしかならなかったよ」(・_・?
バルムンク 「それは、カイトが持つ腕輪の加護のおかげだな。
カイトとパーティーを組んでいたから、未帰還物にならずに済んだのだろう」(−o−)
ミストラル 「な〜るほど♪ 勉強になったね〜♪」(^▽^)
バルムンク 「まあ、それはともかく――」(−−ゞ
ミストラル 「――ん〜? どったの?」(・_・?
バルムンク 「あれ……助けなくても良いのか?」(^_^;;
ブラックローズ 「…………じと〜」(¬_¬メ
寺島 良子 「…………じと〜」(¬_¬メ
なつめ 「…………じと〜」(¬_¬メ
レイチェル 「…………」じと〜(¬_¬メ
アウラ 「ぴとっ♪ すりすり……」(*−−*)
カイト 「あ、あはははは……」(* ̄▽ ̄*;;;;
ミストラル 「おっけ〜、おっけ〜♪
ああいうのはね、生暖か〜く見守って上げれば良いの♪」(^▽^)b
バルムンク 「そ、そういうものか……」(−−;;;