月姫 SS

for never ending tomorrow?







「ふう、これが最後の戦いか……」

 コックピットの中……、
 俺こと遠野志貴はため息交じりに呟く。



 1年前から全ては始まった――



 遺伝子操作によって生まれた新人類「コーディネーター」と、
旧人類「ナチュラル」との戦争は、地球側の核の使用により更に激化した。

 たまたま地球軍が秘密裏に作っていた
ロボット(MSと言うらしい)、ガ○ダムに乗るハメになった俺……、

 ――それからは戦いの連続だった。

 迫り来る敵を殲滅しつつ、
俺は戦いの止まらない螺旋に入り込んでいく。

 そして、辛い戦いもあった。

 学校時代、親友であり、
恋人だった自称吸血鬼の女子、アルクェイド――

 彼女は激しい戦争から身を守るため、宇宙にある故郷のコロニーへと戻った。

 しかし、その後、彼女はコーディネーターの軍「ZAFT」へと入隊し、
地球軍にいる俺とは、当然、交戦する運命にあった……、

 戦いは熾烈を極めた。

 「打撃」を意味する俺のガ○ダム「ストライク」と、
「神の盾」を意味する彼女のガ○ダム「イージス」は激しくお互いの正義をぶつけ合った。

 イージスは元々地球軍の機体だったが、ZAFTに奪取されたものである。

 他にも「バスター」「デュエル」「ブリッツ」という機体も奪われたが、
「ブリッツ」「デュエル」は先の戦闘で破壊された。

 戦闘の結果、イージスは自爆、
俺を乗せたままストライクは大破。俺は外へ投げ出された。

 その後、俺はZAFTに保護され、そして、そこでアルクェイドと再会した。

 始めは互いを避けていたが、
いつしか和解し、また元の関係に戻ることが出来た。

 数日後、内部の人の情報で、
俺が所属していた隊が地球軍の裏切りに遭い、消滅の危機にあるという。

 俺は自分の信じる正義のために隊へと戻ることを決意。

 アルクェイドも――

「志貴が行くなら、私も行く。
志貴が好きだから、失いたくないから。」

 ――と言い、共に地球へと降りた。

 その際、俺は「自由」を意味するガ○ダム「フリーダム」に、
アルクェイドは「正義」を意味するガ○ダム「ジャスティス」に乗り込んだ。

 俺はアルクェイドと共に再び戦場へと戻っていった。

 間一髪、自分の隊を救った俺達は、更に三つ巴の戦闘を開始する。





 そして――

 最後に辿り着いたのが、この宇宙だった――





 地球軍は壊滅し、残るは俺達の、
いわゆる「独立軍」とZAFTのみである――

「大丈夫だって、志貴。貴方は十分強いんだし。それにいざとなったら私が守るから」

 上のモニターに、同じように、
コックピットに座るアルクェイドの姿が映る。

 彼女には何度も助けられてきた。

 機体性能なら俺のフリーダムの方が上だが、
テクニックはアルクェイドの方が一枚上手である。

「そうですよ。自信を持ってください、遠野君。私とアルクでサポートしますから」

 もう1つのモニターにも、コックピットで準備する女性の姿が映る。

 彼女の名はシエル。
 アルクと同じ、ZAFTのパイロットだった。

 搭乗機体は奪取作戦で奪われた機体の1つ「バスター」である。

 彼女は、俺とアルクが戦っている際に、
俺の隊の奇襲作戦(考案者は俺)により、捕獲された。

 すぐに皆殺しして逃げようと思っていたが、彼女は隊の優しさに触れて、変わっていった。

 今までZAFTで、人に非ざる者として、
扱われてきた彼女にとって、それは光となった。

 そして、俺達と共に戦う心強い仲間となった。

 元々アルクとシエルは、ZAFTで水と油のような存在で、
事あるごとに争っていたが、今はそのわだかまりさえも綺麗に消えた。

「皆さん、準備はできましたか?」

 スピーカーから秋葉の声がする。

 俺の妹である秋葉は今、隊の艦長を務めている。
 正規の艦長が残念ながら殉職してしまった為、委員長肌の秋葉が艦長となった。

 因みに戦艦名は「永遠」を意味する「エターナル」である。

「いいよ」

「は〜い」

「いつでもいけます」

「今回が、おそらく最後の戦闘になるでしょう。
目的はあの吸血鬼殲滅砲改の破壊。皆さん、ご武運を。
兄さん、私を置いて死んだら承知しませんよ」

「ああ、分かった」

 ハッチが開く。
 さあ、これで終わりにしよう。

「フリーダム、ジャスティス、バスター、全機どうぞ」

 戦闘管制の遠野家元メイドの琥珀さんの声が響く。

 ――よし、行こう。

「遠野志貴、フリーダム、出る!」

「アルクェイド、ジャスティス、行くよ〜!」

「シエル、バスター、行ってきます!」

 3機は戦場へと飛び出していった。








 その頃――

 吸血鬼殲滅砲改の管制室は、
いつの間にか、無人になっていた。

「さて、邪魔な奴らは消滅してもらったし、私もそろそろ行くかな。
どうやらあと10分で発射されるみたいね。こればっかりはどうしようもないか。
さあて、では、私も行こうかしら――!」

 トランクを持った赤い髪の女性は管制室を後にした。








 吸血鬼殲滅砲改――

 この元となった吸血鬼殲滅砲は、
元々遠野家の屋上にあった普通の大砲であった。

 しかし、ZAFTのガ○ダム奪取作戦の時共に盗られてしまった。

 そして、それは大型化、高攻撃力化され、今やZAFTの切り札となっていた。
 元々特殊な砲弾を打ち出すだけだったそれは、改になって巨大なγ線照射砲となった。

 次の狙いは地球――

 一刻も早く止めないと、全ての生物は死滅する。

「あれ? 機影0……どういう事だ?」

 俺はメインカメラとレーダーの情報を見て呟く。

「どうしたことでしょう? 敵がいませんね」

「私達が怖くて逃げたんじゃないの?」

「いいえ、皆には消えてもらったわ」

「「「――え?」」」

 3人は同時に反応した。
 30メートルほど先に機影、いや、人影が見える。

「な、宇宙服も無しに!? 一体何なんだあれは?
それに、あれの声が、何故、俺達に……」

 上部モニターを見る。
 アルクとシエルが固まっている。

「どうしたんだ!? 知り合いか?」

「ええ、彼女の名は蒼崎青子。
最凶のコーディネーター、例えるなら魔法使いよ……」

「彼女は、普段から何を考えているか、皆目、見当がつきませんでした。
でも、彼女なら皆に消えてもらったという発言は真実でしょう。魔法使いですから」

 俄かに信じがたい話だが、
宇宙服無しでここにいる辺り、間違いは無いだろう。

「それで、貴女の目的は何ですか、ミスブルー!
まさか世界平和というわけでは無いでしょう」

「ええ、私の目的は人類の滅亡よ」

 はっきり、青子という女性は言い切った。

「な、何故?」

「こんな醜い生き物なんて、一度、リセットしたほうがマシよ。
そして、私が、新しく人類を創り出す……その為よ」

 確信に満ちた声……、
 おそらく、説得は不可能である。

「ならば倒、すしかないようですね。遠野君、アルク、行きましょう」

「あら〜、いいのシエル?
あと10分で殲滅砲改は自動発射されるわよ」

「「「――な!?」」」

「早く止めに行かないと地球は無くなっちゃうわよ。
ま、私には手間が省けて楽だし、また作ればいいだけだから♪」

 くそ、どうすればいい……、
 そうだ、1人、あれを止めに行こう。

「アルク、あっちの砲台の方、頼めるか?」

 アルクは少し考え……、

「分かった。でも、2人とも死んじゃ駄目だよ」

「ああ、アルクもな。約束だぞ」

 アルクを乗せた「正義」のガ○ダムは殲滅砲改へと消えていった。

「あら〜、2対1? 私もなめられたものね」

「行くぞ、俺はお前を倒す!」

「これで終わりです、ミスブルー!」

 俺とシエルのガ○ダムは、
最凶の魔法使いへと向かっていった。

 シエルは最初から全開で行った。

 機体の腰の辺りに付いた、
2つの武器を繋げ、パイルバンカーが完成した。

「――セブン!」

 その掛け声で「第七聖典」という名のパイルバンカーにエネルギーが集まる。
 そして、一気に放出した!

 シエルの攻撃は止まない。
 光で徐々に青子の姿が見えなくなる。

 2分後――

 第七聖典の攻撃は終了した。
 エネルギーが限りなく0になるまで打ち続けた。

 しかし……、

「そんな……」

 青子は少々の火傷を負った程度でほぼ無傷だった。

「すごいすご〜い。私のバリアを完全に破壊するなんて。でも、これでおわりね」

 青子は人差し指をバスターの方に向ける。

「だりゃあ〜!」

 と、青子の指から、無数のビームが放たれる。
 物凄い速さでバスターの方へ飛んでいく。

「――くっ!」

 シエルはかろうじて回避した。
 しかし……、

「甘いわね」

 すでに第二撃が放たれていた。
 しかも、一撃目も追跡してくる。

 バスターに無数のビームが突き刺さる。

「きゃあああ〜!!」

 コックピットはかろうじて回避したものの、コックピットだけになっていた。

「じゃあ、今度こそおしまい。バイバイ」

 青子はシエルに止めをさそうとしている。

「させるか!!」

 俺はフリーダムで、シエルの乗るバスターのコックピットを蹴り飛ばした。
 バーニアさえも残っていないバスターは簡単に吹き飛ばされた。

 これでしばらくは安全だ。

「へえ、優しいのね貴方。名前は何ていうの?」

「……遠野、志貴」

「そう、志貴……、
私に歯向かったこと後悔させてあげるわ!」

 青子の指からビームが放たれる。
 俺は無謀にもそれに突っ込んでいった。








「ああ、もう! 何て硬い装甲なの。ビームも実弾も効きやしない!」

 殲滅砲改の内部に侵入したアルクはぼやいていた。

「くっ、このままじゃ……何か方法は……」

 ビームも効かない、実弾兵器も駄目……、
 そうなると……、

「ある……1つだけ方法が……でも……」

 フリーダムとジャスティスは核エンジンを搭載している。
 核爆発を起こせば、幾ら装甲が硬かろうと確実に破壊できる。

 だが、それは同時に、アルクの死を意味する。

「ま、仕方ないか……ごめんね、志貴。約束守れそうにないわ……」

 自爆の為のパスワードを打ち始める。
 その時だった。

「アルクェイド様!」

 スピーカーから声がする。

 そして、目の前に一台のMS――
 ストライクと同型だが、赤い色のストライク――

 いざという時のために作られた「ストライクルージュ」だった。

 そして、その声の主は遠野家のもう1人の元メイドで琥珀の妹の翡翠だった。

「逃げないでください!
諦めてはいけません。志貴様も懸命に戦っておられます。
途中で逃げるなんてしないで下さい。志貴様も悲しみます!」

 翡翠が懸命に叫ぶ。

「……分かった。ありがとう、翡翠」

 アルクは自爆のスイッチを入れ、
翡翠の乗るストライクルージュへと移った――








 ――機体の左腕が落とされる。

 流石に、100近い光の線を避けるのは無理がある。

「貴女は間違っている!」

「何が違う! 何故違う!」

 光の線が右手に持つビームライフルを破壊する。
 素早くビームサーベルに持ち替える。

「貴女は懸命に生きる人々の気持ちが分からないのか!?」

「知らないわ! 所詮、人は自分の知るところしか知らない!」

 機体の右足が破壊される。

「貴方だって分かっているはず!
人類という存在がいるから世界は乱れる。ならば消すまで!
それに貴方の力では、私に近づく事も出来ない。諦めなさい!」

 何度も光の線がコックピットを掠める。
 そろそろ限界だ。

 ――だから、次で決めてやる!

「でも……思いだけでも力だけでも駄目だけど……」

 一気に青子に近づく。
 機体の頭部が完全に消し飛ぶ。

「それでも! 俺には守りたい世界があるんだああああ!!」

 俺は意識を集中させる。

 目の前にいる敵に走る「死」の線。
 俺の眼にはそれが視えている。

 その線の通りに機体で攻撃すれば相手を確実に撃墜できる線。
 これが俺を今までの戦闘を戦いぬけてこれた要因である。

 「死」の線に沿ってビームサーベルを青子に突き出す。
 そして、青子の体を完全に貫通した。

「そう……貴方の勝ちね……、
これからも……せいぜい……がんばりなさい……」

 殲滅砲改の砲口が光り、俺とフリーダムはその光に――








 ――ジャスティスが自爆した。

 殲滅砲改の……、
 死を呼ぶ光の線は地球に届くことは無かった。








「志貴は……?」

 ルージュの中のアルクが呟く。

「兄さん……」

 エターナルの中の秋葉が呟く。

「遠野君……」

 バスターの中のシエルが呟く。

 戦艦内にいた猫の形のロボット「レン」が宇宙空間へと出て行く。
 主の下へ、まるで何処にいるのか分かるかのように。

 ――レンは駆けて行く。

 そして、その先にはコックピットさえも、
かろうじて原型をとどめるフリーダムと宇宙空間に漂う青年、遠野志貴の姿があった。

「どうして、俺達は、こんな所まで来てしまったのだろう……」

 俺はそう言いながら、涙を流していた。

 遠くから何かが近づいてくる気配。
 それはレンと、アルクと翡翠を乗せたストライクルージュだった。

「……ただいま、みんな」

 俺はそう小さな声で言った。








 ――こうして、長きに渡る戦争は終結した。








<fin>


後書き

 いやあ、疲れた。でも、簡単に書けたね。

 ぶっちゃけこんなことやろうと思ったのは、
メルブラで「青子って指からファンネル出してるようなもんだなあ」と思ったから。

 ピンクハロこと青子さん、最強ですから!

 始めは青子の台詞に「オマエモナー」とか入れようと考えましたが止めにしました(爆)

 また、始めは原作(SEED最終話)と、
同じにしようと思ったのですが、流石にそれは厳しいので止め。(以下略)

 ま、そういうわけです。(相当投げやり)


<コメント>

誠 「キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定。
   擬似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結――」(−o−)

さくら 「まーくん……何をしてるんですか?」(*・_・*?
あかね 「キラ・ヤ○トの物真似だって。
      ほら、早口で喋りながら、キーボード打つの」(*^_^*)
エリア 「そういえば、某声優さんは、
     このセリフ、1テイクで決めたそうですね」(*^_^*)
フラン 「……しかし、この物真似は、雅史さんがするべきでは?(*−−*)
はるか 「それでは、物真似になりせん」(*^○^*)
あやめ 「まあ、それはともかく……、
      どうして、皆、期待に満ちた目で、誠君を見てるのかしら?」(*^〜^*)
みこと 「……狙いは、みんな、同じだよ」(*^▽^*)

誠 「ニューラルリンゲージ・ネットワーク再構築、メタ運動野パラメータ更新、
   フィードフォワード制御再起動、伝達関数、コリオリ偏差修正、
   運動ルーチン接続、システムオンライン、ブートストラップ起動……、
   って、ぎゃああああっ! 舌、噛んだぁぁぁぁぁっ!!」(T△T)

はるか 「あらあらあら……♪」(*^○^*)
あやめ 「それは大変ねぇ〜♪」(*^○^*)
みこと 「みーちゃん達が治療してあげるね……舐めて♪」(*^〜^*)
あかね 「うみゃ〜〜〜〜っ!!」(@□@)
さくら 「お母さん達は、ダメです〜〜〜っ!!」( ̄□ ̄)