Fate/stay night ＳＳ
veritable end & veritable dawn
あの聖杯戦争から１５年――
私こと、遠坂凛は、今、
月下の衛宮士郎の家の庭先に座っている。
あの戦争後、私は、セイバーにも残ってもらい、三人で士郎の家に住んだ。
「あなたの魔術をもっと確かなものにするの！」
とかいう適当な理由で、未来永劫転がり込むことになった。
まあ、本当の理由は違うんだけど……、
因みに藤村先生は「緋村剣心の技を体得してくる〜！」とか、
よく分からないことを言って、京都の方へ旅立ってしまった。
まず、そんな人が、この世にいたのだろうか……、
それはさておき……、
それからは、三人で、
本当に楽しい日々を送った。
セイバーと統合して、士郎をからかったり、
三人で、新都の方で、前みたいにデートしたり……、
聖杯戦争で、大変な目にあった分、それからは本当に楽しんだ。
毎日の修練はかかざず、
士郎はずっと「投影」の技術を向上させていった。
そして、最終的には……、
Unlimited blade works――
「無限の剣製」を、何時、どんな時でもできるほどまで成長した。
あの時のアーチャーと同じ、いや、もうそれ以上かも……、
正直、私と士郎で戦ったら勝てない……、
そんなことない！ 私は冬木の管理者よ！
そんなこと……、
時間を忘れてしまうほど幸せだった日々――
それも昨年、終わりを告げた――
ある満月の晩――
士郎と私は、庭先でお茶を啜っていた。
セイバーは……、
「私はもう寝ますね。今日は本当に楽しかった。
凛、シロウ、有難うございました」
といって奥へと引っ込んだ。
実は今日、初めて、セイバーを、
いわゆるテーマパークとかいう所に連れて行った。
新都に今年作られた「ＵＳＳ（universal studio
新都）」とかいうとこ。
何か、パクリの匂いがしたが、まあ気にしない。
そこで３人で遊んだのだ。
歳をとらないセイバーと、
もう三十路過ぎの私と士郎は、まるで子供と、その保護者のようだった。
「凄く楽しそうだったよな、セイバー」
「そうね。ああいう所は彼女初めてだろうし」
隣にいる士郎の言葉に相槌を打つ。
「でも、流石にびっくりしたよな〜。
お化け屋敷で出てきたお化けに斬りかかろうとするもんな〜」
「あれには私も驚いた。そうそうこんなことも……」
と、２人で今日の出来事を話した。
３０分して、話す内容が無くなり、２人とも黙ってしまう。
お茶を啜る音だけが聞こえる。
と――
「見ろよ、遠坂。綺麗な月だ」
士郎の言葉に空を見上げると、青白い綺麗な満月が庭を照らしていた。
「本当。すごく、きれい」
私が月に見入っている姿を、
士郎は穏やかな表情で見ていた。
「なあ、遠坂……、
俺って本当に正義の味方になれたんだろうか？」
急に、呟くように、士郎は、私にそう聞いた。
聖杯戦争の時、彼は未来の自分……、
アーチャーこと、英霊エミヤと戦った。
過去の自分を憎むアーチャーと死闘を繰り広げた。
そして、最後には士郎が勝利した。
正義の味方で在り続ける。
それが士郎の昔から、そして、今でも変わらない夢。
アーチャーは人、間の醜さやら何やらで、それに疲れてしまった。
でも、今の士郎は……、
「なれたんじゃない？ 少なくとも衛宮くんは、
多くの人を助けたし、誰１人として犠牲にはならなかったんじゃない？」
――確証は持てない。
士郎は優しいけど、
知らず知らずのうちに誰かを傷つけているかもしれない。
でも、絶対、彼は正義の味方だ。
ずっと傍にいた私が言うんだから間違いない。
「そっか。それは良かった。親父の夢は叶えられた」
士郎は、本当に嬉しそうに、でも、小さく頷いた。
「ありがとうな、遠坂。君といれて、俺は本当に幸せだ」
更に穏やかな声で彼は言う。
そして……、
「何だか眠いや……お休み、遠坂」
彼はゆっくり眼を閉じた。
私は気付いた。
これが士郎の最期――
もう、目覚めることはないのだと――
「――本当、勝手な奴。
この私を残していっちゃうなんて……、
それも自分の義父と同じようにいくなんて。全く本当に同じね」
文句が口に出る。
きっと、顔も怒っているのだろう。
士郎は、あの戦争の時に無理をしすぎた。
それが寿命を縮めてしまったのだ。
「……とは言っても、それは私も例外じゃないかな」
半年前から私も体の調子がおかしい。
自分で調べたが、かなりヤバイ状態だった。
今も体が軋んでいる感じがする。
「あいつ、異常ね。よくこんな状態で平然と居られたわね……」
空を見上げる。
月が庭先を照らす。
「セイバーは、ちゃんと元の世界に戻れたかしら？」
先程、セイバーに別れを告げた。
これ以上、凛の体を酷使できないと言われ、
私は反対したが、結局、魔力の供給をカットした。
別れ際に――
「凛、今まで本当にありがとう。
貴女と共にいれて、私は本当に幸せでした」
と笑顔で言い残し、セイバーは光のように消えていった。
「……結局、最期は一人ぼっちなんだね」
自分以外誰もいない衛宮の屋敷で呟く。
当然分かっていた事だった。
士郎の方が私より早く消え、私が消える前にセイバーも消える。
分かっていたはずなのに、何故か――
「あれ？ どうしたんだろう、私……」
――涙が出ていた。
戦争が終わってから、
今までの日々が、あまりに楽しすぎて……、
セイバーや士郎と共に笑っていることがあまりに嬉しくて……、
「……でも、仕方ないか」
私はゆっくり眼を閉じようとした。
「――さか」
――ん？
何か声が……、
「――おさか」
瞼は、もう重くて、
上がらないが、誰かが、何か言っている。
「――とおさか」
視界が開ける。
広がるのは、緑豊かな庭園。
そこに、自分に背を向けて、一人の男が立っている。
「アーチャー……？」
赤い服を着た男は、その声に振り返る。
確かにアーチャーだった。
白髪で精悍な体つきの騎士。
……でも、どこか違う。
「１年ぶりだね、遠坂」
アーチャーは静かに微笑む。
その顔は、聖杯戦争時の、
アーチャーでは無く、紛れも無い衛宮士郎のものだった。
「……て、ことはここは天国か。
はあ、私なら、てっきり、地獄行きだと思ってたのにな」
私が愚痴を言うと、
そんなことない、遠坂はいい奴だ、と士郎は否定する。
その様子や仕草は前と寸分も変わらない。
「……まったく、私を置いて１年もこんなとこに。
あんたがいないと、あっちの世界なんて、
何にも面白くないんだから。ほんとに・……」
いけない、また涙がこみ上げてきてる。
別に士郎を責めてるからじゃない。
士郎に会えて嬉しかったから。
私の顔を見て、士郎はすまなそうに……、
「――ごめん」
と一言だけ言って、そのまま私を抱きしめた。
「もう、遠坂を独りにしない。
いつでも俺は遠坂の傍にいる。絶対に悲しませない」
士郎は強くも無く弱くも無い力で、私を抱いている。
「……まったく歯の浮くような台詞を。でも、嬉しいよ」
私も強く士郎のことを抱きしめた。
「……でも、何で、アーチャーの格好なの？
いつものラフな格好じゃなくて」
「いつも、遠坂の傍にいるなら、この格好の方がかっこいいかなと思って」
ま、確かに、この格好のほうが、士郎は一段と引き立って見える。
「ふうん、じゃあ、そんな格好してるついでだから、
令呪使うみたいに、１つ命令しちゃおうかな」
「う、なるべく守る……」
そして、私は、下を向きながら……、
「……私のこと、凛って呼んでほしい。
いつまでも、上の名前じゃイヤ」
――言った。
なんか恥ずかしい。
私がこんなこと言うなんて。自分でも顔が赤くなっているのが分かる。
やっぱ、やめようかなと思って、
士郎の顔を見ると、しばしキョトンとした後、微笑みながら……、
「了解したよ、凛――」
う……そんな顔で言われたら、
恥ずかしいのに。取り消したく無くなるじゃない。
「じゃあ、行こう、士郎。あっちの方に！」
赤くなった顔を隠す為、
士郎の顔を見ずに手だけ握って歩き出す。
――ああ、暫く慣れるのに、時間がかかりそうだ。
なのに……、
「お、おっと待てよ、凛。
ここらへんのこと分かるのかよ？」
「し、知らない。と、とにかく、どこか連れて行きなさい……！」
――きっと、今、私の顔は凄いことになってるんだろうな。
でも、やっぱ、こんな感じのほうが私には合ってる気がする。
君と過ごした幸せな日々。
それは、まだ終わりそうにない。
きっと永遠に、私は君と歩いていく――
＜ｆｉｎ＞
＜コメント＞
士郎 「――よしっ、着いたぞ、凛」（＾○＾）
凛 「着いたって……ここって、士郎の家じゃない！？
なんで、アヴァロンに、こんなのがっ！？」Σ（￣□￣）
士郎 「こんなのとは酷いな……、
ここは、理想郷だから、何でもありだ。
それに、俺達にとっては、やっぱり、この家が一番だろ？」（＾〜＾）
凛 「それもそうね……、
あっ、もしかして、セイバーも居たりする？」（＾▽＾）
士郎 「当然だ、もう、皆、家の中で待ってるぞ」（＾＿＾；
凛 「そう……って、皆って、どういう事よ？」（−−？
士郎 「いや、それがさ……」（−−ゞ
セイバー 「おかえりなさい、シロウ……そして、リンも」（＾＿＾）
桜 「あっ、姉さん、遅かったですね」（＾▽＾）
イリヤ 「まあ、リンにしては、頑張った方じゃない？」（￣ー￣）
ルヴィア 「あら、ミス・トオサカ……ようやく、お目覚め？」ヽ(
´ー`)ノ
凛 「何で、あんた達までいるのよっ！？
特に、そこの、金ぴかルヴィアーーーーッ！！」Σ（＠□＠）
イリヤ 「理想郷で、シロウと、
二人きりだなんて、絶対にさせてあげないんだから」（￣ー￣）
桜 「姉さん……わたし、負けません！」（−ｏ−）
セイバー 「全員、シロウを追って、
英霊にまで昇り詰めたそうです……」（＾＿＾；
凛 「ダメ〜！ コイツは、私の〜〜〜っ！！」Σ（￣□￣メ