Heart to Heart

  番外編 「軌跡の夢」  〜あかね編〜







『皆様、本日はお忙しい中お集り戴き、当人達に代わり厚く御礼申し上げます。
本日、司会進行を勤めさせていただきますのは、
私(わたくし)、『鶴来屋』現会長、柏木千鶴です。
どうぞ、よろしくお願いします』






 
 ぱち ぱち ぱち ぱち





 ……………………。

 ………………。

 …………。





「ま〜くん」

「………………」

「ま〜くん」

「………………」

「ま〜くんってば!」

「………………」

「もう……仕方ないから最終手段を……」

「………………」

「ねえ……お兄ちゃん」(ポッ)





「俺をその呼び方で呼ぶなーっ!」





 次の瞬間、会場中の視線が俺に集まったのは言うまでもない。








 さて、あの挙式から会場をここ、隆山の鶴来屋に移し、
今これから行われようとしているのは、歴史上類を見ない『披露宴』である。

 まず、顔ぶれからしてものすごい。

 親友に始まり、財界・政界のお嬢様、アイドル歌手、退魔師、牧師、骨董屋、
(元)貴族、神族など様々である。

 さらに並ぶ客席も多く、後ろの方など顔が見えないくらいである。

 端から見れば、俺がどんな人物に映るのだろう。
 いったい、どのような繋がりがあるのかすら分らないと思う。

 ……ホント、変わってると思う。

 まあ、それはさておき……、

 披露宴ということで、俺の目の前には山ほどの料理が並んでいると思うだろう。

 しかし、今日は”食べる事”より”祝う事”の方がメインであるため、
俺の目の前には、あかね達や来賓の方々と同じ、綺麗に盛り付けられた少量の料理だけであった。

 ううっ、折角楽しみにしてたのに……残念。
 でも、まあ、おいしいからこれはこれでよしとしよう。

 しかし、よく楓さん達が納得したものだ。





 その頃の来客席――


「……耕一さん」

「……健太郎」

「……浩平君」

「……なおりん」










 「「「「ものたりない!!」」」」



 「「「「我慢してくれ(汗)」」」」










 続いて、今の俺達の格好だが、結婚式が洋風だったため、それに反して和風である。

 そして、あかね達も白無垢へと衣装換えをして、
俺の左隣にあかね、エリア、右隣にさくら、フランが、それぞれ席についていた。

 こうして一同に改めて見ると、みんな綺麗である……、


 フランは、元々フランス人形のように綺麗だったが、その格好から、
今度は雛人形のように煌びやかだ。


 エリアは、衣装はともかく、化粧は自分でしたらしく、
異世界のその独特の雰囲気が、衣装と妙にピッタリだった。


 さくらは、一番オーソドックスだが、
大和撫子の名に恥じぬ奥深しさが醸し出されている。


 そして、中でも一番驚かされたのは……、



 ……あかねだった。



 いつものあかねから考えると、
また衣装に着せられ『馬子にも衣装』になると俺は踏んでいた。

 しかし、いざ化粧を終えたあかねを見たその時、俺は自分の目を疑った。



 そこにいたのは……、

 いつもの『少女』ではなく『女性』だった。



 うっすらと頬を紅く染め、照れ笑いを浮かべるその笑顔に、
いつもの子供らしさは、微塵も感じられなかった。

 その姿は間違いなく『可愛い』ではなく『綺麗』だった。

 俺が先ほどのあかねの呼びかけに応えられなかったのは、
実は不覚にも、その姿に惚けていたせいだった。

 先ほどのウェディングドレスといい、
今といい、化粧と衣装であそこまで変わるとは、神様でも予測できまい。


「ま〜くん……いい加減話を聞いてくれないかな?」(怒)

『あ、わ、悪い。それで何の話だ?』

「まーくん、新郎のご挨拶ですよ」

『え゙っ』


 あかねとさくらの話し声に会場に目を向けると、先ほどと同じように会場の視線は俺に集中していた。


『はは、はははははは……』


 マイクを通して、会場内に俺の乾いた笑い声が響く。

 ううっ、人生最大の赤っ恥をかいてしまった。(大恥)








 俺が慌てて挨拶した後は、実にスムーズに進んだ。


 新婦(達)の挨拶―――

 来賓の紹介―――

 友人の賛辞―――


 実にスムーズに進んでしまった。


 所々つまずく場面もあったが、そこはやはり(場数踏んでる)名司会者の千鶴さんが、
すばやくフォローをしてくれた。





『続きまして、河合あかねさんの母方、河合あやめ様の祝辞です。
それでは、お願いいたします』




 ぱち ぱち ぱち ぱち



 場内から湧き起こる拍手に軽く会釈をすると、
あやめさんはマイクを手に取ると、いきなりこう言った。





『あーーー、すっきりした!!』





 そして、突然のその言葉に、俺やあかねだけでなく場内が我が耳を疑った。


『あっ、いきなりでごめんなさい。
まずは誠君、あたし達の娘を娶ってくれてありがとう』



 俺はその言葉に軽く会釈をする。
 しかし、先ほどの言葉の意味の方が気になりどこかその笑顔は堅かった。


『そして、この子達のためにお集まり戴いた方々、本当にありがとうございます』


 その言葉に対して場内の反応は様々だった。

 あやめさん、いったいどうゆう意図であんなことを……おっと、話が始まるみたいだな。


『実は本日に至るに当って、あかねはあたしにある約束をしてくれていました。

 
それは、あかねがまだ幼稚園に通っていた頃でした。

 
あかねはその日、ご近所の花屋で一輪のお花を貰って帰ってきました。

 
その花はとても小さく、今にも散ってしまいそうな儚げな純白の花で、
あかねはその花を手に私の足元に駆け寄り、

「おかあさんにあげりゅ〜」と言ってその花を手渡してくれました』


 なんとなく、その時の光景が目に浮かびそうだな。

 横目であかねの方を見ると、あかねは紅い顔をしてその場で俯いていた。
 やはりどこか恥ずかしいみたいだ。


『しかし、あたしはそれを断りました。

 
あかねは、「どうして?」と涙目になりながら尋ねてきました。

 
あたしは答える代わりにその花の花言葉を教えてあげました。
 そしたら、あかねは笑顔でこう言ったんです。


「じゃあ、あたしがま〜くんのおよめさんになるときには、
おかーさんにこのはなをあげるね」



 
と、満面の笑みでそう言ってくれました。

 
あかねはもう、その言葉を忘れてしまっているのではないかと思っていました。
 でも、あかねはその約束を覚えていて、今日その約束を果たしてくれました』


 そして、目の前に置かれた小さな花瓶に咲く一輪の花。
 たしかに、その花は小さく綺麗な純白の花だった。


『そう、今あたしの目の前に生けられいるこの花……、
この花こそ、その約束の花なのです』



 そこまで言うとその花を手に取り、一息置いてからまた、あやめさんは語りだした。


『ちなみに、この花言葉の由来はギリシャ神話からくるものなのですが……、
語りだしたら終わらないと思うので、その話は今日はしません。

 そう、この花の名は【オレンジ】、そして、その花言葉は……』



 会場中が息を呑みその言葉を待つ。

 ――あやめさん、その言葉は!


『その花言葉は……【花嫁の喜び】
今日この日ほど、この言葉が相応しい日はないと思います』



 あやめさんのその言葉に、会場中の誰もが肯き、そして拍手を送る。

 俺も、さくらも、エリアも、フランも、そして、あかねも、
そんなあやめさんに対し拍手を送る。


『最初に口にしたあの言葉、この場には不適切な言葉ではありましたが、
一片の偽りもないあたしの本心です。
母親としての義務、娘と交わした約束の成就、そして――』



 そこで一息つき、俺達の方を、いや、あかねの方へ視線を向ける。


『あたしとあの子、いえ、あたし達とあの子達が望んだこの時が訪れたことで
一つの区切りが付いたことに対しての、偽りないあたしの思いです。

 
誠君、改めて言わせて貰うわ。
 あたし達の娘達の想いに応えてくれて、本当にありがとう』


 そして、心からの笑顔を俺に向けてくれた。

 俺はこみ上げてくる思いを押さえることが出来ないでいた。

 そして、隣にいたあかねやさくらも、瞳を潤ませ、
化粧が流れ落ちるのすら気にせず、その言葉に、頬を濡らさずにいられなかった。








 ――その時だった。








 突然、あかねは目の前のマイクを手に取り……、


『お母さん……』


 声を震えさせながら……、


『あたしも……あたしも……』


 紅く腫らしたその瞳で、あやめさんを見つめ……、


『約束守れて……良かった。
約束……覚えていてくれて……嬉しかった』



 静かにそう言って、再び、涙を流すのだった。

 そして――


『あかね……』


 あやめさんも、そんなあかねにつられるように涙を流し、


『あかね……お母さんも……約束守ってくれて…………うれしかったよ。

 だから………あかね……泣いてないで………笑ってちょうだい』


『グスッ…………うん、わかった』


 涙を拭いながら笑顔を浮かべると、あかねを諭すように、優しくそう告げる。
 場内はそんな親子の姿を、温かく見守っり、その姿に再び頬を濡らしていた。

 そして……、

 俺はそんなあかね達を幸せにすると、堅く決意した。








 …………………………。

 ……………………。

 ………………。








『これを持ちまして、藤井家、園村家、河合家、ノース家、デュラル家の、
合同披露宴を終わります。
皆様、新郎新婦に今一度拍手をお願いいたします』




 ぱち ぱち ぱち ぱち




 は〜〜、ようやく終わった。
 うう〜〜、あとでラーメンでも食べに……、


『なお、引き続き二次会に突入しますが、しばらく会場のセッティングがございますので、
皆様しばしお持ちください。それではここで司会を変わります』



 なに〜〜〜、そんなのありか。
 そもそも千鶴さんの代わりに司会やる人って……、

 ひょっとして……、





『やっほーーーー☆ みなさん司会進行の長岡志保デーーース!!
ここから二次会なので、いまさっきまでの堅苦し〜〜雰囲気は忘れて、
ぶれいこーでいきましょーーーーっ!!』



『おおーーーーーーーーっ!!』





 ……やっぱり。(大汗)





 前々からやるんじゃないかと思ってたけど……、
 まさか俺たちのところに来るとは……、

 それに何処から出したのか知らんが、そのゴールデンマイクはやめろ!!





『こらーっ! そこの藤田2号!!
今日はとことん付き合ってもらうからねーー!
かくごしなさーい!!』



『じょーだんじゃねーー!!』





「ははは……」

「まあ……あいつ等らしいと言えばそれまでだな」






 結局、今までの空気は何処へ行ったのか……、

 その後の二次会は、いつもの俺達の宴だった。





「まーこーとー!! まだ飲みがたらねーーぞーー!!!」

「こういちさ〜〜ん☆ つ〜ぎ〜は〜、私たちが〜祝ってもらいましょ〜〜ね〜〜☆」

「陣ちゃーん。起きてよーー」

「了承☆」





 ………のかな?








 <つづく>


『技神的』ラジオトーク

技  神:「『軌跡の夢 〜あかね編〜』をお送りしました。
     さて、今回もゲストをお招きしおります。
     ゲストはあかねさんのお母さん”あやめさん”です。ど〜ぞ!」(^○^)/

あやめ:「…………」(_ _)

技  神:「あ、あの、どうかされましたか?」(^。^)?

あやめ:「………………」(_ _)

技  神:「あ、あの〜」(^_^;)

あやめ:「………………」(_ _)

技  神:「あ〜〜、5秒以上の無言は放送事故にーー!!」<(@△@)>

あやめ:「………あかね」(;_;)

技  神:「―――!!」(@@)

あやめ:「………幸せになりなさいね」(;_;)

技  神:「え、え〜と………」(^_^;)

あやめ:「………………」(_ _)

技  神:「………………」(^_^;;)

あやめ:「………………」(_ _)

技  神:「い、以上、ゲストトークでしたー」(^_^;;)



<COMPULSION END>


<コメント>

ひかり 「しかしまあ、何とも凄い披露宴だったわね〜」(^○^)
秋子 「そうね。来賓はバラエティーに富んでるし……、
     花婿一人に、花嫁が複数いるなんて、前代未聞だし……」(^_^)
ひかり 「まあ、それはともかく、次は誰になるのかしらね〜」(^〜^)
秋子 「祐一さんでしょうか? それとも、浩之さんでしょうか?」(^_^?
ひかり 「まあ、どっちにしても、次の結婚式は、
     今回ほどトンデモナイものじゃないでしょうけどね〜」(^_^;;
秋子 「あら? そうとは限らないかもしれないわよ?」( ´ー`)
ひかり 「それって、どういうこと?」(・_・?
秋子 「例えば、今回の誠さん達の結婚式を見て、祐一さんが触発されてしまうかも……」(^○^)
ひかり 「あゆちゃんや名雪ちゃん……、
     み〜んな、お嫁さんにしちゃうかもしれない、ってこと?」(^_^?
秋子 「ええ♪ それに、わたしも……」( ̄ー ̄)
ひかり 「――はいっ?!」Σ(@○@)
秋子 「冗談よ……うふふふ♪」(*^ー^*)
ひかり 「今、一瞬、冗談に聞こえなかったわ……」(−−;;;