Heart to Heart

  番外編 「軌跡の夢」 〜さくら編〜







 パパパパ〜〜〜〜ン ♪


 パパパパ〜〜〜〜ン ♪


 パパパパパン ♪ パパパパパン ♪


 パパパパパン ♪ パパパパパン ♪










 コケッ!?


 母さん、あやめ義母さん、はるか義母さん、
頼むから曲に合わせて歌うのはやめてくれ !!

 後生だからやめてくれ !!


 はあ〜〜〜それはさておき。

 天使が奏でる祝福の鐘の中、
真紅のじゅうたんの敷き詰められた一本道を歩く2人。


 白のタキシードで着飾っている俺と、

 純白のウェディングドレスに身を包み、ヴェールで顔を覆うさくら。


 さくらの髪と純白のドレスのコントラストは、まるで一輪の花に見えなくもない。

 そう、ここまでいえばもう分っていただけると思うが、
今日は俺達の「結婚式」である。














 …………って、




 ちょっとまて〜〜〜っ!!




「どうしたんですか?」

 俺の様子が気になったのかさくらは式の邪魔にならないよう、小声で話し掛けてきた。


『どうしたんですか?』じゃなくて、なんでいきなり結婚式になってるんだ?」

「それは……私たちが夫婦になるからじゃないですか」(ポッ)


 さも当然と言わんがばかりに応えるさくら。
 確かに結婚式とはそういうものだけど……、(汗)


「どうしてこういう事になってるのかを教えてほしいんだけど」


 すると、さくらは悲しそうな顔で俺を見上げ、


「まーくんは私と……いえ、私達と結婚するのは嫌ですか?」


 と、不安げに聞いてきた。

 当然ながら俺の答えは……、


「そんなこと、あるわけないだろ」


 ――NOである。

 俺としては、さくら達と結婚したくないなどということはない。

 ただ、まだそういう心構えが俺の中で出来ていないのに、
いきなり結婚なんてことになり、かなり戸惑っているのである。

 それに……、


「あかねやエリア、フランは何処にいるんだ?」

「あかねちゃんたちは順番待ちで私の後に式をやるって、
昨日4時間かけて話し合ったじゃないですか」


 呆れた様子で応えるさくらに、俺は今一納得が出来ないでいた。
 それに結婚式といえばアレはどうしたのだろう。


「さくら、そういえば結婚に付き物のアレはどうしたんだ?」

アレのことですか?」


 さくらの視線の先、祭壇の前に立っている芳晴さんの隣には、
光沢の眩い細かい細工のされた……、



 シルバーリングペアでそこに置かれていた。



「……ちなみにアレはどこで?」

「もう、まーくんたら、『陣九郎さんに頼んで作ってもらった特注品だぞ』って、
自分で言ってたじゃないですか」


 ……悪い、さくら。


 俺の記憶には陣九郎に指輪の製作を頼んだ事とか、


 式を挙げるため芳晴さんのいる教会を尋ねた事とか、


 お前達にプロポーズしたこともぜ〜〜〜んぶ、




 ※f(フェムト)単位で残ってないんだよ!




 それこそ文字通り微塵も残ってないってほどに……、

「おっほん」

「「!!!!」」

 咳払いに壇上をみると、芳晴さんが『今は式の最中なんだけど……』と目で訴えかけている。


「「ははは……」」


 とりあえず笑ってごまかし、この場はなんとかなった。
 芳晴さんも浩之お得意の『しょう〜がね〜な』って顔をしている。

 はあ、やっぱり俺達ってこういうとこでもこうなるんだな。(泣)








 祭壇の前に立つと会場は先ほどとは違い、水を打ったような静けさとなる。


 いよいよ『誓いの儀式』である。


 芳晴さんは聖書を開くとさくらと向き合う。


「汝、園村さくらはこの者、藤井 誠を夫とし、
健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しい時も、終始変わらぬ愛を誓いますか?」

「誓います」


 凛としたさくらの誓いの言葉は教会の中を木霊する。

 後ろでは微かなすすり泣く声が聞こえる。
 声の主は、おそらく母さんたちのものだろう。

 普段なんだかんだ言っていても、やはり母親なんだと改めて実感した。





 その頃の人妻’s――


「さくらさん……綺麗ですよ」

「ほらほら、泣かない泣かない。
こういう時は笑顔で見送るって言ってじゃないの」


「そういうあやめさんだって、グズッ、泣いているじゃないですか」

「あっ、こ、これは目にゴミが入っただけで……」

「ヒック、二人とも、グズッ、泣き虫さんだね」



あなた (あんた) (です)





 再び誠サイド


「汝、藤井誠はこの者、園村さくらを妻とし、
健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しい時も、終始変わらぬ愛を誓いますか?」


 俺は胸の鼓動をおさえると、はっきりとした声でその言葉を口にした。


「誓います」


 何処からか聞こえる安堵の息が、
どれ程この場が緊張したものになっていたのかを表していた。


「それでは、指輪の交換を」


 俺と向かい合ったさくらは俺の左手をとる。
 しかし、その手は微かに震えていた。

 それは、みんなの視線を浴びているという緊張からなのか。
 それとも、これからの未来に対しての不安なのか。


 理由は分らない。


 しかし、さくらの手は確かに震えていた。
 俺はそんなさくらを落ち着かせるため、その手を握り締めた。

 さくらはそんな俺に少し驚いていたが、
しばらくすると俺の手を握り返しいつもの顔になっていた。

 そんなさくらの瞳は『もう、大丈夫です』といっているようだった。


 そして、ゆっくりと俺の薬指に優しく指輪をはめた。


 続いて俺もさくらの左手を手にとり優しくその薬指に、
俺達の婚姻の誓いをはめた。


 芳晴さんはそれを見届け、次の言葉を発する。


「それでは、誓いの口づけを」


 俺はさくらのヴェールを挙げる。

 その顔は生まれてから今日まで幾度となく見てきたはずなのに、
化粧のせいか普段より格段に美しく、女神が目の前に降臨したかのように思えた。






 そしてお互いの目蓋は閉じられ、ゆっくりと顔を近づけてゆく。



「さくら、好きだ」


「私も……誠の事が大好きです」



 おそらく、二人にしか聞こえない本当の誓いの言葉。

 その言葉は2人の唇が重なり合うことで、互いに伝わっていた。




 そして、別れる事を拒むかのように顔を離す。




「これをもって、この者達を夫婦と認めます」










 無事に式も終わり俺を挟む形で教会を出ると、




『おめでとう』




 そこは祝福というなの雨あられが巻き起こり、俺達を歓迎してくれた。




「おめでとう! まことく〜ん」


「この幸せ者!!」


「誠く〜ん、女の子を
泣かせちゃダメよ〜〜!」




 なんか気になる台詞が飛び交ったが、気にしないでおこう。




 そして、この喜ばしき時、
共に祝福されたみんなを見て俺は改めて不安に駆られた。



 フラン、エリア、あかね、さくら……、

 なあ、本当にいいのか?
 こんな俺なんかで本当にいいのか。

 今、この場でなら、まだ引き返せるんだぞ。


「ま〜くん!」


 ぎゅ〜!?


「いてぇ、なにすんだよ」

「誠様、そんな顔をしないで下さい」

「前にも言いましたが、私達の誰一人として
あなたと共に歩むことを後悔なんてしてませんよ」


「そうです、わたし達を愛してくれてたから今ここにいるんでしょ」


 そういって、俺の不安を打ち消してくれる愛すべき人達。


「……そうだな。今ここであの言葉を撤回したら、
俺達の今までを否定することになるよな」


 そうだ、何を迷ってたんだろう。



 俺は心の底からみんなを愛し、


 みんなと共に歩み、


 みんなと共に過ごすと決めたんだ。



 もし、この誓いが破られるとしたら、


 それは死が俺たちを別つ時だろう。


 だからその時までは、


 何時までも一緒にいよう。










「みなさーん、いきますよ〜〜」




 そして4人は幸福という名の花束を……、









 天高く解き放った。








<つづく?>


イネスの補足説明

 説明しましょう!


 f(フェムト)単位


 数学などで使われる単位で、 1×10の−15乗(1かける10のマイナス15じょう)
という表わし方をします。

 簡単にいうと、 1000兆分の1

 分数では、 1/1,000,000,000,000,000(0が15個)

 少数では、 0.000000000000001(0が15個)

 と言う具合に書きます。

 PCやCD−Rの容量などで使われる M(メガ)、G(ギガ) などの仲間です。

  ・
  ・
  ・

技 神 :「あの、私が説明するのでは?」
イネス :「これぐらいの出番はいいじゃないですか」
技 神 :「左様で」


<おわり>


『技神的』ラジオトーク

技 神:「さて、今回はゲストをお招きしおります。
     ゲストはさくらさんのお母さん”はるかさん”です。ど〜ぞ!」(^○^)/

はるか:「グスッ、ど〜もこんにちは」(;_;)

技 神:「さっそくですが、娘さんの晴れ姿はいかがでしたか?」(^。^)?

はるか:「ええ、とても素晴らしかったです。
     思わずビデオ編集して全国放映したいくらいに」(;_;)

技 神:「はあ、そうですか」(^_^;)

はるか:「特にあの誓いの儀式は……」(;_;)

技 神:「………………」(^_^;)

はるか:「でもあそこはもう少し……」(;_;)

技 神:「………………」(^_^;)

はるか:「そしてですね……」(;_;)



 ――約3日後――



技 神:「お願いします〜……お家に帰して〜〜〜」(T△T)

はるか:「まだまだこれからですよ。次はですね……」\(^〇^)/

技 神:「もうイヤ〜〜〜〜!!」<(T△@)>


<COMPULSION END>


 あとがき

 というわけでやってきました技神SS第2弾!

 今回は4部作という事で進めていきますが、さてさてどうなることやら。

 とりあえずさくら編ってなってますけど、主演メンバーが『誠君+1』、
という展開で進みますので、他の3人は今回みたいな出方なのでその辺はご了承を。


 さて、次回ですが……予定の目処が立ちません。
 お世辞にも早い方ではないので何時出来るかわかりません。

 おそらく、本編が5話くらい出来てる頃には出したいと思います。


 それでは最後に――

 次のお話でお会いしましょう。


<コメント>

さくら 「は〜……」(* ̄▽ ̄*)
誠 「…………」(^_^;
さくら 「はふぅ〜……」(* ̄▽ ̄*)
エリア 「トリップしてますね〜」(^_^;
フラン 「まあ、お気持ちは充分にわかりますが……」(^_^)
あかね 「さくらちゃん……いいな〜」(;_;)
エリア 「ふふふ……次はあかねさんの番ですよ」(^〜^)
フラン 「しかし、よろしかったのですか? エリア様は一番最後で……」(・_・?
エリア 「はい……正式なものではないにしても、私は神殿で誓いを立てていますから」(^_^)
あかね 「うみゃ〜ん♪ 次はあたしの番だよ〜♪」(*^○^*)

さくら 「ぽー……」(* ̄▽ ̄*)
誠 「……おーい、いつまでアッチの世界にいってるつもりだ〜?」(^_^;