やあ、俺の名は相沢祐一。クールでニヒルなナイスガイだ。

 え? うそつけって?
 はは、ひどいなあ。ちょっと傷ついたよ。いやマジで。

 ……まあ、いいケドね。

 ああ、悪いけど、今はちょっと隠密行動中なんで静かにしてくれると助かる。

 ――え?
 何をしてるのかって?

 水瀬家の謎の一つを探っているのさ!

 そう、アレだよ。

 ――『じゃむ』さ






 相沢祐一、危険な日々!!






「それにしても……だ」

 朝食のパンを見つめる。
 今日はブルーベリーのジャムである。

「うぐぅ……祐一くんどうしたの?」

 居候イエローが問い掛ける。

「うぐぅ、やっぱりいえろーなんだ……」

 何処となくあきらめた感じのあゆ。

「いやな、普通のジャムは結構イケてるのに、なんで『アレ』はああなんだろう……ってな」


 ビビクン!


 途端に静かになる食卓。

「祐一……」

 名雪がゆっくりと首を振る。

「ダメだよ、みんな楽しく食事をしているんだから」

「そうよ! だんらんの時間なのよ!」

 居候ブルーが偉そうなことを言う。
 しかし、きっと意味は良く分かっていまい。

「しかし、気にならんか? 『アレ』が何なのかを?」

「う〜」

「うぐぅ」

「あう〜」

 やっぱり気にはなっているらしい。

 俺だってこれ以上わけの分からない物を食わせられるのは勘弁なのだ。
 せめて材料くらいは知りたい!

「そこでだ! ………調べてみないか?」

「「「調べる?」」」

 きょとんとした顔の真・水瀬シスターズ。

「そうだ! 昨日遊びに来た北川が『アレ』……「J」の洗礼にあったのは記憶に新しい」

 こくこくと頷き、昨日の北川の醜態を思い出している配下の者を見渡す。
 香里の前でいい所を見せたかったらしいヤツは、秋子さんの……、

『いっぱい食べる男の子っていいわよね?』

 と、香里に話し掛ける、という見事な戦略によってバカ食いしたわけで……、

 後は、押して知るべし。である。

「つまり、今「J」の在庫はゼロに等しい。
これにより、近日中に新しく「J」を再生産するであろうという事が予想されるのだ!」

 我ながら見事な推理である。

「そこで、自宅学習でヒマな居候イエロー!」

 ぼけっとしていたあゆあゆを指差す。

「な、なに?」

「お前は今日から秋子さん……目標『A』の買い物に付き合い、買った物のチェックをするのだ!」

「わ、わかったよ、祐一くん」

「違う! 作戦中はレッドと呼べ!」

「うぐぅ! は、はい、れっど!」

 うむ、それでいい。

「さらにバイト先で子供に遊ばれてる居候ブルー!」

「あ、あう。真琴!?」

 びっくりして自分を指す。

「他に誰がいる?」

「あう、名雪とか……」

「残念だがヤツは居候ではないので、今回は見送りだ……」

「わ、仲間はずれ? ひどいよ、ゆういち〜」

 ええい、うるさい。

「ブルーは目標『A』が料理を始めたら『あう〜、手伝う〜』とかいって潜入!
怪しい行動がないかを調べるのだ!」

 なんか、『あう〜、真琴はそんな言い方しない〜』とかほざいているが無視だ。

「もし、怪しい行動をしたら要テェックだ」

「あう? どんなのが怪しいの?」

「そりゃ、お前……」

 唖然とする。

(そ、そっか。正しい料理方法を知らないとなにがおかしいのか分からないか!)

「あ〜、名雪」

「何?」

「まこ……ブルーについてやってくれ」

「わかったよ〜」

 嬉しそうに言う名雪。

「では、作戦名『AJ』今日から決行だ!」

「「「お、お〜」」」






 それから三日たったのだが……、



「うぐぅ、なんかいっぱい買ったからよく分からなかったよ」

「あやしくなかったわ!!」

「う〜ん。今日は作ってないよ……」

 ダメか。いや、もしかして……、

「荷物。今日買ってきた荷物はみんな台所へ持っていったのか?」

「あ、そういえば中身が分からないやつを一袋だけ床下の貯蔵庫に入れてたよ」

 ――っ!!

「それだ!! 名雪! 今日は「J」は作ってないんだな!」

「わ、びっくりした」

 ホントにびっくりしているのか怪しい名雪に確認する。

「えっと。うん、普通だったよ〜」

 くっくっく……、
 やっと尻尾をつかんだぞ。

「よし。おそらく「J」の作成は今夜だろう。
名雪……は無理だから、イエロー!」

「ゆういち、ひどいんだお〜」

 知らん。

「うぐぅ! 夜中は怖いからヤダよ!」

「くっ! じゃ、じゃあブルー!」

「え〜、真琴眠いからやだ〜」

 お、おのれ使えん奴等め。

「祐一くんやってよ!」

「な、何だと?」

「そうよ! 祐一何にもしてないじゃない!」

 反逆か!? リーダーに逆らうとは……、

「……よし。俺が確かめよう」

「「いえ〜!」」

 むこうでイエローとブルーがハイタッチしている。
 くっ、最近たくましくなってきやがって……、

 そんな訳で俺が深夜の探索にいく事となったのだ。

 はあ……、






「寒い……」

 やはり夜中は冷え込む。
 これでもし何もなかったら、けっこうブルーになるだろう。

「……台所の電気が付いている」

 ビンゴ!
 どうやら予想的中らしい。

「レッドからコントロール。ヒトフタマルマル。目標『A』に接近を開始する」

 気分はスネークだ。

 気配を殺して(といってもなんとなくそんな感じでだが)台所へ。

 とうとう真実を暴くときが来たのだ。
 そっと中を覗くと何かを鍋で煮詰めている秋子さん。

「……さて、これでVer.2の完成です」

 Ver.2?
 今までの物とは違うのか?

 ――ぎしっ

「祐一さん?」

 マズイ!
 つい体重をかけてしまった!

「あ、秋子さん……」

「どうしたんですか? こんな時間に?」

「い、いやなんか喉が渇きまして……」

「あら、そうですか?」

「秋子さんは何を?」

「ええ、新しいジャムを」

「新しい?」

「祐一さん、甘いのあまり好きじゃないでしょう?」

「え、ええ」

「それで甘くないジャムを」

「ざ、材料は何なんですか?」

「今回はこれを使ってみました」

 と、秋子さんが取り出したのは……、



 たくわんだった。



「た、たくわんっすか」

「たくわんです♪」

 確かにオレンジ色っぽくて甘くないが。

「ええ、どうかしら?」

 と言って、できたてのジャムをすくって差し出す。

「は、はあ」

 と、言う間にもジャムはやってくる。

「その、もがっ!」

 口に突っ込まれるスプーン。

 ぐは! キョ、キョーレツな味だ。
 だ、だが、あの神経にくるあの味ではない。

「どう?」

 なんか目を輝かせて聞いてくる秋子さん。

「うっ、これはちょっと……」

 そう言うと秋子さんはちょっとがっかりしたようで。

「そうですか、なかなか初代は超えられませんね」

「秋子さん……」

「じゃ、次はコレを試してみましょう♪」

 と言って取り出したのは……、



 かずのこ。



「さてっと♪」

 その時、僕には、やけに楽しそうな秋子さんを残して去っていくことしかできなかったわけで……、

「もう、オレンジのジャムには手を出さないようにしよう……」

 と、今更ながらに心に決めたのだった。








<おわり>


 あとがき

 新年あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。

 まじめな話はコレくらいで(笑)
 Kanonではお約束のジャムネタです。
 ちょっと弱かったでしょうか?

 では。

 サイオー phy-o@xk9.so-net.ne.jp


<コメント>

秋子 「〜♪ 〜♪」(^〜^)
祐一 「あれ? 秋子さん、何かご機嫌ですね? どうしたんです?」(^_^?
秋子 「ええ、あのジャムのVer.2が完成したんです♪」(^▽^)
祐一 「そ、そうですか……」(^_^;
秋子 「それで、また誠さん達にも贈って差し上げようと思いまして♪」(^〜^)
祐一 「誠……死ぬなよ」(T_T)


 そして――

誠 「……どうしよう、これ」(T_T)
さくら 「贈ってくれた人が人だけに、捨てる事もできませんし……」(−−;
あかね 「スフィーさんには、あげられないよ? このジャムのこと、もうバレてるから」(−o−)
誠 「じゃあ、楓さん達にあげよう」(^○^;
エリア 「そ、そうですね……柏木家の皆さんなら、耐性もありそうですし……」(^_^;

千鶴 「――はい?」(・_・?