むかしむかしから
中国奥地に伝わる伝説じゃ
いくつも山を越えた小さな国に
「悪魔召喚プログラム」という名の
不思議なプログラムがあるそうな
プログラムの中を覗けし者
あらゆる災難をはねのける
「メイド」の守りを得よう
その国ではそんなふうに
語り継がれておったそうじゃ
ある年のクリスマス、はるかな年月を経て
そのプログラムは――
小さな頃よりこの家で
一人暮らしを続けている
藤井 誠……
少し寂しい思いを抱えた
この少年のもとに
流れついたようじゃ
Heart to Heart
+まもって守○月天
「まもって守護フラン」
「あれ、オヤジから小包がきてる」
メリークリスマス!! 元気か、我が息子よ。
オレとみーちゃんは今、出張で来栖川の中国支部にいる。
やはり中国はすごい!!
四千年の歴史は伊達ではないぞ!!
長瀬主任のHMシリーズとはコンセプトが大きく異なるが、
先行し素晴らしい人型ロボが開発されている。
「……出張に妻同伴なんて許されるのか?」
まあ、お前はそんな話にはあまり興味はないだろう。
実は今回手紙を送ったのは他でもない、同封されたDVD‐ROM、
こちらで知り合ったプログラマー劉さんに「悪魔召喚プログラム」とかいう、
すごい謂れのあるプログラムを貰ったので送ってやろう。
慈悲深き父からのクリスマスプレゼントじゃ。
「このプログラムを動かせる、心の清い者には、
魔の護りを授かるそうだ…? おいおい、おもいっきり胡散臭いな」
父さんも何度かチャレンジしたのだが、なにも起こらなかった。
息子よ、父さんはすっかり汚れているよ―――はっはっはっ。
「そりゃあ……仕事の都合とはいえ、
ガキの頃から一人で暮させるような親は、清らかじゃないよな」
ちなみにみことならこのプログラムを絶対に動かせるだろうが、
こんな胡散臭いもの触らせてないからな。
「おひ、母さんはダメでも俺なら問題無しかいっ!」
そのプログラムが、お前を幸せに導いてくれる物であることを、父さんは願っている。
「幸せ――願うくらいなら、たまには帰ってこいよな、まったく」
もう小さな子供じゃないし、あくまで『たまに』であってほしい。
とにかく、あの親父の相手は疲れるからな。
あのテンションに着いていけるのは世界広しといえども母さんぐらいだろう。
P.S
もしも、中身が『18才未満お断り』なモノだった場合は、
お前にはまだ早いし、みことにナイショで送り返せ。
核兵器の製造法など、国家レベルでヤバそうなものだった場合は、
俺はなにも見てないし、知らない、男らしく自力で処分してくれ。
「あのクソ親父っ!! 本当に息子の幸せを願ってるんだろうな」
しかし、人格はともかくプログラムに関する親父のウデは相当なもんだ。
その親父ですら中身を覗けなかったって言うんなら、
とんでもないもんが入ってる可能性はあるな。
もしかして、コイツのおかげで人生が大きく変わったりして……。
……な〜んてな。
そんな人生送るヤツなんて漫画やゲームの主人公だけだっての。
ひょいひょいと階段を上り、リビングから自分の部屋に移動すると、
早速DVD−ROMをドライブに入れる。
俺しか居ない部屋、俺しか居ない家、
静寂に満ちた室内に、ディスクの回転する音だけが響く。
ふっ――
突然モニターが真っ暗になる。
「まさか、ウイルス!?」
しかし、それは杞憂だった。
続いてモニターにいかにもそれっぽい魔方陣が映し出される。
「おっ」
成り行きを固唾を飲んで見守る俺。
魔方陣の中心に生まれた光の点が、モニターの中から光が飛び出してくるような感じで、
だんだん大きくなってくる。
そして……、
シュパァァァァーーーッ!!
なんと、モニターの中に生まれた光が本当に飛び出してきた。
あまりに現実離れした出来事に、俺は椅子ごと後ろに引っ繰り返る。
「なんだー! もしかして、マジか?!」
カッ!!
次の瞬間、飛び出してきた光が一気に輝きを増し、弾ける。
「うぉ!」
俺はとっさに顔、正確には目を覆い隠す。
「大丈夫ですか? 御主人様」
自分以外いないはずのこの部屋に、聞き覚えのない少女の声が響く。
尻餅をついた恰好のままで、驚き目を開くと。
スラリと細く華奢な体。
紺色の服の上にフリルのついた純白のエプロン。
そして、綺麗な金色の髪とそれに良く似合う白いフリルの付いたカチューシャ。
そこには、十四、五歳くらいの、まるで、フランス人形を思わせる美少女が、
見紛うことなきほど完璧なメイドさんスタイルで立っていた。
「大丈夫ですか? 御主人様」
「………は、はい」
他に言いたいことが沢山あるはずなのに、
軽くパニック状態に陥ってるため、素直に返事してしまう。
「はじめまして、永き時を経てワタシを喚びだしし新たなる御主人様。
ワタシは守護メイド・フランソワーズと申します」(にっこり)
「しゅ……しゅごめいど?」
「常にお側で、ご主人様のお世話と守護をするのがワタシの使命です。
名前はフランソワーズ。フランとお呼びください。御主人様のお名前は?」
「ふ…藤井誠…です」
「素敵なお名前ですね。
藤井誠様、これからはあらゆる災いから、ワタシがあなたをお守りします」
「あんなかわいいコが出てくるなら愚息なんぞに……」
「む〜っ、なおりん。なに考えてるのかな〜」(怒)
「い、いや、みこと、これは違うんだ」
「ふん、尚也さんなんて知りません」
「み、み、みことぉぉぉ」(滝涙)
なんなんだ、この娘は!?
待てぇ、落ちつくんだ、落ちつくんだぁ誠。
慌てない、慌てない、一休み、一休……って違うっ!!
とにかく冷静に状況を分析するんだ。
この子はさっき確かにモニターから飛び出してきた……、
しかも、「守る」とかなんとか……、
ポク
ポク
ポク
チンッ☆
な〜んだ、簡単なことじゃないか。
親父の手紙にあった伝説は本当だった……、
って、納得できるかいっっっ!!(魂の叫び)
とりあえず、平穏かつ無事な生活のためこの子には還ってもらおう。
うん。無かったことにすれば、事態の把握などする必要はないしな。
モニターから出てきた女の子と同居なんて、某漫画を読むだけで十分だ。
「誠様、なにか悩み事でしょうか?」
ほったらかしにしたまま、難しい顔で次善策を練っていた俺の顔を、
心配そうな表情でフランソワーズが覗き込んできた。
う゛っ、そんな顔をされたら……、
い、いかんぞ。心を鬼にしてでも還えるように言わなくちゃ。
モニターから出てくるような得体のしれないヤツと関わりあいになったら、
絶対に厄介事に巻き込まれる。
「あのな、ここってフランソワーズが思っている様な危険な場所じゃないし、
俺は誰かに命を狙われているわけでもないんだ……」
なんだか、気まずくなりながらも、俺は続ける。
「なにかあっても、自分の身は自分で守れるし、だから…その……」
彼女の顔を見てられずうつむき、
最後の一言を紡ぎ出すために口を開こうとすると。
「………そう…だったんですか、
それじゃ、ワタシは誠様の迷惑になるだけですね」
「いや…別に、そういう……」
「わかりました、ワタシはプログラムの中に還えります。
いつかまた心の清い方に巡りあえる日もくるでしょう」
そう言うとフランソワーズは悲しそうに微笑み。
吸い込まれるようにモニターの中に消えていった。
これで良かったんだよな。
実際に守ってもらう必要なんて全然なかったし、
これで明日からも静かに毎日が過ごせるんだもんな。
「でも、夕食くらいは一緒に食べても良かったかもな」
その後、俺は自分の望んだ通り、静かで何事も無く食事を終え、
テレビを眺め、フロに入り、そして眠りについた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夢を見ている。
自分で夢だとはっきり認識できる夢だ。
自分を包み込んでいる闇と静寂。
しかし、どこまでが自分の体で、どこからが闇かは分らない。
そこには上も下も、右も左も、温かさも冷たさも、なにも無い。
例外として存在してるのは、俺と時の流れと孤独感だけ。
そんな世界で俺は誰かを待っている。
待ち合わせてるわけではない。
何時来るとも知れぬ待ち人を、一方的に待ってるだけだ。
なにも出来ない世界で、ただ延々と時が流れていくのを感じる。
小さいころからの一人暮しで、寂しさからか悪夢を見ることは良くあった。
しかし、今までみた夢のなかでもコイツは最悪だ。
声もあがらない痛みも、叫びたくなるような恐怖もない。
ただ、ゆくりとゆっくりと孤独感が心を蝕んでいく。
何日、何ヶ月、いや何年待ち続けただろう。
ある日自分は、相手の名前を知らないことに気付く。
よくよく考えてみると名前だけではない。顔も年も性別もなにも。
いや、なにもというのは適切でない。一つだけ知ってることがある。
俺(ワタシ)の待ち人は――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
悪夢を見た朝のの目覚めは今まで例外なく最悪だった。
しかし今朝はなんだかとても心地よい。
寝ぼけた頭で原因を探ってみると、どうやら誰かが頭を優しく撫でてくれているらしい。
しかし、誰が? 答えを知るために、目を開けると、枕元にフランソワーズがいた。
「起こしてしまいましたか? 誠様…」
「えっ……フランソワーズ…」
「一晩中考えました。
それで、もし迷惑でなければ、『孤独』や『寂しさから』
あなたを守ってさしあげたいのですが、それでは…いけませんか」
俺の頭を優しく撫で続けながらそうフランソワーズが言った。
「………ワタシ、ここがどういうところか知らないから、
誠様に迷――
「フランソワーズ」
――惑か、は、はいっ、なんでしょう誠様」
「……昨日も言ったけど『守ってもらう』なんて大げさなことは必要無いよ」
「そうですか」
「そう。君がただそばにいてくれるだけで寂しさなんて、吹っ飛んじゃうよ。
だから、よろしくな………フラン」
「あの、それは」
「ああ……いちいちフランソワーズって呼ぶの煩わしいだろ?
だから略して呼ぼうかなって思ったんだけど……もし嫌なら止めるよ」
「いえ、そうでは無く、
ワタシは誠様にお仕えしてもよろしいということなのでしょうか」
「だ・か・ら、『お仕え』なんてかしこまらなくても良いって」
「……はい、あのっ、善処します」
なんだかこれから平穏無事な生活をおくれないような気がするな〜。
しかし、今後おくるであろう、泣いたり笑ったりの生活の方が、
今までの生活よりずーっと楽しい。そんな予感がする。
色々問題が出てきそうだが、なんとかなるさ。
これからは一人じゃないんだから。
<おわり>
<次回予告>(嘘)
父親からお年玉の代わりにと、不思議な謂れのあるフロッピーディスクを貰った誠。
動かしてみると、お約束通りそのフロッピーも本物だった。
次回・護って守護フラン「慶幸吸血鬼・ルミラ参上」
<あとがき>
護って守護フランいかがだったでしょうか?
ベースとなっている『護って守護○天』の第1話をなるべく壊さずに、HtHと混ぜて見ました。
護って守護月○は面白いしオススメですよ。
設定としては、河合家と園村家の存在しない世界ということになってます。
だから、誠君はドタバタ慣れしてないし、寂しさを抱えていると……、
まぁ、細かいことや流れの強引さは目を瞑ってやってください。
あと、予告書いてますが続きは書く予定ありませんので、
慶幸吸血鬼・ルミラとか、MOから出てくる万難魔女・メイフィアとか……、
みなさん自分で書かれるか、想像して楽しんでくださると嬉しいです。
それでは、最後までお付き合いしてくれてありがとうございました。
また、次の作品で会いましょう。さようなら〜。
<コメント>
フラン 「ワタシがDVD−ROMで……」(^_^;
メイフィア 「あたしがMOで……」(^○^)
ルミラ 「……私がフロッピーディスク?」(−−;
誠 「なんか……先生だけ、妙に安っぽいな?」(−o−)
ルミラ 「うぐ……」(;_;)
誠 「先生を召喚するのに必要な容量って、1MB程度なのか?」(・_・?
ルミラ 「そ、そんなわけないでしょ!?
私を召喚しようと思ったら、最低でも外付けHDくらいは……」(−−メ
誠 「それじゃあ、フランはテラバイトレベルになっちまうな」(^o^)
フラン 「ま、誠様……あまりルミラ様をからかうのは……」(−−;
ルミラ 「血ぃ吸ったるわぁぁぁぁーーーーっ!!」( ̄□ ̄メ
ちうーーーーーーーーっ!!
誠 「ばたんきゅ〜……」(@〜@)
ルミラ 「ん〜♪ さすがは誠君♪ 栄養満点ね〜♪」(^〜^)v