Heart to Heart

 番外編 『それでは良い夢を 〜さくら編〜』







「す〜〜〜〜す〜〜〜〜」
「く〜〜く〜〜く〜〜」


 …………………………


「す〜〜〜〜す〜〜〜〜」
「く〜〜く〜〜く〜〜」


 …………………………


 おはようございます。

 只今は……朝の6時です。

 ちなみに、しばらくはセリフ以外全て小声で進行していきます。
 わけはというと……、


「す〜〜〜〜す〜〜〜〜」
「く〜〜く〜〜く〜〜」


 さくらが俺の目の前で眠ってるからです。
 しかもなにげに……、



「まーくん……大好き



 などと可愛い事を言ってくれるから困ってます。
 まるでどこかのピアノが得意な妹……まあ、それはおいといて。

 とにかく、今のさくらは俺の琴線に引っ掛かりぱなしなわけで……、

 それ故に、これはある意味つらいんです。

 普段から愛くるしい人が、目の前で無防備な姿を見せてくれる。
 最近、浩之化が進みつつある俺にとっては生き地獄なわけで……、(汗)

 しかし、ここで手を出せば間違いなくジ・エンド。

 残されたエンディングは……、





『僕たち友達だよね?』





 あれだけは、絶対迎えたくない。


「す〜〜〜〜す〜〜〜〜」
「く〜〜く〜〜く〜〜」


 まあ、時間が時間だからもう少しすれば、さくらも目を覚ますから大丈夫だと思う。

 しかし、さっきから別の寝息が聞こえる気がするが……、

 ……おそらく気のせいだろう。

 さくらの起きた時の寝ぼけた顔を見ていたいが、そろそろ起きないとな。


 ぐい


 ん? なんか袖が引っ張られるような……って!

 起き上がろうとしたその時、
袖が引っ張られるのでそちらを見てみると、そこには……、


 桜色にすこし白が入った……、
 例えるならコスモスに近い髪の色をした………、






 赤ん坊が寝ていた。






 何故、赤ん坊がここに……、

 あ、そうか、まだ寝てるんだ。
 だから、こんな有り得ないものが見えるんだ。

 よし! もう一度寝ることにしよう。


 そして、夢の中に逃げ込もうとした、その時……、


「ふわぁ……」

「え゛」


 布団の中に潜り込んだ、その瞬間、赤ん坊が目を覚ましてしまったのである。
 起きたばかりの赤ん坊の赤い瞳が、俺の顔を映している。

 視線が合い思わず苦笑いする俺。

 そして、お約束どおり……、





「うわあああ〜〜〜〜ん」





「だああああ、やっぱり!」


 赤ン坊は泣き出した。
 まるで、さくらを起す目覚ましのように。

 しかし、目覚ましと明らかに違うのは、それが人の声であるという事である。

 目覚ましは、まだ一定の音であるからいいが、
声となると、口の開き方や肺活量などによって、音が変わってくる。

 したがって、本当の意味での騒音となる。

 おそらく、これなら『あの人』も一発で起きるだろう。

 まあ、あの人がこれを体験する事があるとしたら、
残念ながら『俺の良き理解者』が責任を取らされる以外に考えられないけどな。


「ああ〜〜〜!!」

「わあ!!」


 いつの間に起きたのか………って起きない方がおかしいか。(汗)
 突然、さくらが叫び声をあげた為、俺は驚きのあまり壁に張り付いてしまった。

 そして慌てて俺の目の前で泣き叫んでいる赤ん坊を抱きかかえると……、


「どうしたの? さやかちゃん。」

「びえ〜〜〜ん」


 ……なだめ始めた。

 どうやら、さくらの中の優先順位は、俺より赤ん坊の方が上らしい。
 まあ、泣いてる赤ん坊を放っとくような奴じゃないからな。

 しかし、さくらがいくらあやしても目の前の赤ん坊……、
『さやかちゃん』は泣き止む様子もなく泣き続けていた。

 そんな様子に困り果てたさくらは、いまだ壁に張り付いている俺を見ると……、

「あなた、すみませんけど、冷蔵庫から作り置きのミルクを温めて持ってきてください」

「あ、温めるたってどれ位でやればいいのか……」

「レンジで2分ほどでいいですから、早くしてくださいね」

「ああ、わかった」


 さくらに赤ん坊をまかせ、俺は台所へと向かった。








 台所に入り冷蔵庫を開けると、そこには作り置きのミルクが大量にあり、
俺はそれをレンジに入れ、ダイアルをセットすると、さっきのことを思い出していた。

 しかし、さくらの奴なんか手馴れてたな。

 まるで……、


 その時、俺の中に浮かんだ言葉――


「まるで『母親』のようだ」


 口に出し改めてその意味を認識する。

 俺は冷静に今までの事を分析することにした。



 1:俺とさくらとさやかちゃんは朝まで一緒に寝ていた。

 2:さやかちゃんはさくらに近い髪の色をしている。
   そういえば、目の色も似ていた気がする。

 3:さくらは俺を『あなた』と呼んでいた。

 4:作り置きのミルクが大量にある。



 以上4点から分ること――



 ・俺はさくらから『あなた』と呼ばれる関係、つまり夫婦になっている。

 ・さくらと赤ん坊の特徴が似ていること、さらに作り置きのミルクが大量にあることから、
  さやかちゃんがさくらの子供であることに間違いない。

 ・朝まで一緒に寝ていたことから、俺達は家族であり、
  あの子の父親は当然ということになる。



 なるほど、そういうことか。

 よし、これで納得………、










 できるか〜〜〜〜!!










 何故いきなりこんな事になったのか改めて考えてる。

 だが、考えてみるものの、結局何も浮かばなかった。

 ああ、なんでこんな事に。
 昨日まで普通に高校生活送っていたはずなのに、どうしてこうなるんだ。


 なあ、誰か教えてくれ〜〜。(泣)


 そんな事を考えていると……、


 チーン!


「……と、温まったな」

 電子レンジが鳴り、ミルクが温め終わったことを知らせた。

 よし、温めたミルクを哺乳ビンに詰めて……、
 ミルクの温度は人肌程度……、
 味のほうもう……ん、ばっちり。

 さあ、持っていこう。


 ………………………


 何気に作業を終えた瞬間、俺の脳裏に浮かんだ疑問。

 それは……、





 何故、俺はこんな事が出来るんだ。





 もう………どうでもよくなってきた。(泣)








 2階へ駆け上がり、さくらのいる部屋へと向かう。


「さくら、だいたいこれぐらいで……

「……あの……………あなた……」


 部屋に入って俺が見たもの……、

 さくらの胸元に抱き抱えられているさやかちゃん。
 そして、片側の肩と胸部を露にしているさくら。

 ちなみに、さやかちゃんの頭はさくらの胸に宛がわれている。

 つまり……さくらは………さやかちゃんに……、


「あ、あまり見ないで下さい………恥ずかしいですから」(ポポッ☆)

「あ、わ、悪い」

 慌てて踵を返し部屋を出る。


 一瞬しか見えなかったが、さくらの奴やっぱり……、


「もういいですよ」

「あ、ああ」

 改めて部屋に入るとそこにいたのは……、





 窓から差し込む朝日を浴び……、




 
その胸元に赤子を抱(いだ)く……、




 
聖母が、そこにはいた。





 その姿に思わず見とれてている自分がそこにはいた。

 そう、今のさくらを現わせるのはただ一言……、


「あなた?」

「……綺麗だ……」

「――え?」(ポポッ☆)


 俺の言葉に頬を染めるさくら。

 俺の顔はそれ以上に紅くなっているだろう。





 しばらく無言のまま見詰め合っていたが、俺はさくらの前に立つとさくらの肩に手をかける。

 俺が何をしようとしたのか察したのだろう。
 さくらは目を閉じて静かに俺のすることを待っていた。

 息使いさえ聞こえてきそうな距離まで2人の顔が近づき、その唇がいま重なり……、








「うわあああ〜〜〜〜ん!!」








 …………合うことはなかった。

 今まさに、というその時、さやかちゃんが再び泣き始めてしまったのだ。

 う〜ん、赤ん坊なのに結構嫉妬深いのかな?


「あ〜、ごめんね〜さやかちゃん。いま、ミルクをあげますからね〜」

 そういって俺の方を向いて手を差し出すさくらにさっき持ってきた哺乳瓶を手渡す。

 よし、これで万事解決……、


 ちゅ〜〜〜……ごくん!


「ふゅ〜い」


 早っ!


 あっという間になくなったぞ。

「あなた、次のはないんですか?」

 呆気に取られてる俺にさくらが催促する。


「ああ、まさかこんなに飲むとは思わなくって……」

「何言ってるんですか。さやかちゃんは、いつもミルク12本じゃないですか」



 この時……、



 この子が本当に自分の子供であることを……、



 俺は認めざるを得なかった。



 そだよな、俺の子供だもんな。
 これぐらいじゃ足りるわけないもんな。

 半ばヤケになってきた思考が、まともに思える自分がイヤだった。



 だが、衝撃の事実はこれだけでは終わらなかった。



「あなた、ついでにまさとくんえりかちゃん
あすかちゃんの分もお願いしますね」



「………ちなみに、今のは誰のことだ?」


 無駄に終わると分っていたが、一縷の望みを賭けて聞き返えしてみた。


「もう、あかねちゃん、エリアさん、フランさんの子供たちじゃないですか」


「そ、そんな……」


 衝撃の事実にその場に崩れ落ちる。

 あかね、エリアは覚悟していたが、まさかフランまで……、

 俺は………俺は………、


「――誠」


 突然、名前を呼ばれたので振り返ると………、


「やっぱり俺とお前は似たもの同士だな」


 なにか悟ったような顔をしている浩之と……、


「おはようございま〜す」


 ……赤ん坊を抱えたマルチがいた。





 そんな……そんな……、








そんなばかな〜〜〜〜〜っ!!
















「………まーくん………」

「う〜〜うう〜〜〜〜」

「まーくん、まーくん」

「違うんだ〜……俺は違うんだ〜〜」(大泣)

「まーくんってば!」

「わあっ!!」

「きゃっ!!」


 慌てて飛び起きるとそこにはさくらがいた。


「まーくん、大丈夫ですか?」

 心配な顔で臨み込むさくら。
 そんなさくらに俺は先ほどの現状を確める。


「さくら……赤ん坊は?」

「――え?」

「さくらの赤ん坊だよ。どこだよ」

「い、いませんよ。そんな」


 さくらのその言葉に俺は周りを見渡す。

 ひょっとしてさっきのは……夢か。

 そのことを悟ると俺は安堵の息をした。

 そうだよな……、
 さくらが俺と赤ん坊と一緒に寝てるなんて、ありえるわけないもんな。

 そして、俺はさくらの方に視線をやると……、



「私が欲しいのはまーくんの子供だけですよ」



 そういって制服のリボンを解いて……ってっ!!


「さ、さくら!?」

「まーくんの夢、叶えてあげますね


 そういって俺のいるベットにのしかかる。


「まーくん 幸せにしてくださいね








「たすけてくれ〜〜!!」








 結局、あかね、エリア、フランが俺の叫び声を聞いて駆けつけた為、
その日は2時限目まで欠席してしまうこととなった。








 欠席した理由は………聞かないでくれ。(滝泣)








<おわり>


『技神的』ラジオトーク


技 神:「おハガキ紹介!
     P.N.”13”さんから頂きました。」
技 神:『技神さん、実は前作を読んでお願いしたい事があるんです。

     私には好きな人がいるんですが、
     その人と私が誠君とフランさんのような関係なのです。

     ですから、是非、私の話も書いてください。

     なお、書いてくれない場合は、あなたに不幸をお届けします。
                                          13より』
技 神:「と、いうことですが速攻でお断りします。
     なんで脅迫までされてまで書かなきゃならんのですか!?
     第一そこまで言うなら本名を書いてください」
某13:「サテライトサービス起動!目標『技神』……、
     ロック……完了! ファイヤ―――!!」

       チュド―――――――ン!!

技 神:「ぎゃああああああああ」
某13:「乙女のお願いは素直に聞くものです」


 忘れてください。(汗)


<END>


あとがき

 前作からだいぶ遅れました『それでは良い夢を 〜さくら編〜』、
いかがだったでしょうか?

 さて、さくらちゃんはもう少しシリアスでいこうと思っていたのですが、
いたずら好きな悪魔が囁きこういう形になりました。(単に表現力の欠落とも言いますが(^^;)

 前作と読み比べると、さらに悪くなった気がするのは、私だけでしょうか?

 次回予定はとりあえずありません。

 みなさまが望むのであれば、私はそれにお付き合いするまでです。


 それでは最後に、

 ご愛読いただきありがとうございました。


<コメント>

技神 「『それでは良い夢を 〜さくら編〜』をお送りしました。
     フラン編が子供の活躍がなかったので今回は少し増やしてみました」(^_^)
さやか 「でも、これだと私がお父さんたちの邪魔してるみたいで嫌だな」(−−;
誠 「まあ、あまり気にしなくていいぞ。なあ、さくら?」(^_^?
さくら 「………………」(−−メ
さやか 「お父さん、お母さんが怖いよ〜」(;_;)
誠  「すまん、さやか。お父さんも怖い」(T_T)
さくら 「あなた………さやかちゃん……」(−−;
誠&さやか 「「――はいっ!!」」(@○@)
さくら 「今日は2人とも食べ物抜き!」(−−メ
誠&さやか 「「ええ〜〜〜!!」」(@○@)
さやか 「そんな!!」(@○@)
誠 「食事じゃなくて食べ物抜き!!」(@○@)
誠&さやか 「「あんまりだ〜〜〜!!」」<(T△T)>
さくら 「じゃあ、次のモノは食べていいですよ」(にこり)(^〜^)
誠&さやか 「「ほんと!!」」(^○^)
さくら 「ええ、謎ジャムと謎の液体なら」( ̄ー ̄)
誠&さやか 「「遠慮します」」<(_)>
技神 「ズズ〜〜、モグモグ……、
     をれでふぁまふぁこんふぉ!(それではまた今度!)」(><)/~~~


STEVEN 「今回のコメントは技神さんから頂いたのを、
        ちょっと加工して使わせて頂きました」(^_^)
誠 「おい……それで良いのか? この『コメント』って、
   管理人であるお前からの感想とか感謝の意味も込められてるんだろ?」(−−?
STEVEN 「だって、ボクがやろうとしてたのとだいたい同じ内容だったから……、
        いいじゃん……こんな時くらい楽させてよ」(−−;
誠 「いい加減な奴だな〜」(−−;
STEVEN 「ほっとけっ!!
       それでは、技神さん、投稿ありがとうございました〜♪」(^○^)
誠 「ありがとうございました〜♪」(^○^)