※このSSはAIRのネタばれが含まれます。
 ですから、AIRを完全にクリアした後読むのが望ましいです。







 彼らには、過酷な日々を。
 そして僕らには始まりを。
 下ろした手を固く握る。
「じゃ、いこうか」
 彼女が先に立って、待っていた。
「うん」
「この先に待つもの…」
「無限の終わりを目指して」
 ただ、一度、僕は振り返り呟いた。
 その言葉は潮風にさらわれ、消えゆく。
「さようなら」




旅の終わり




 7月26日 深夜

 一人の青年が堤防に座っていた。
「…どういうことだ?」
 青年は闇に向かってそう問い掛けた。
 誰もいないはずの闇だった。
「あなたが考えてる通りだよ」
 だが、その闇の中に答えるものがいた。
 青年が声のしたほうを向く。そこには一人の少年がいた。
「…子供が外にいていい時間じゃないぞ」
 少年の言葉に耳を貸すこともなく、青年は言う。
「いや、どうしてもいなくちゃいけない訳があるんだ」
 少年は意を決したように――すでに言うと決めている時にもそうするのだろうが――青年に告げた。
「あなたが今考えていた通りの結末をたどるんだ。彼女は。
そして、国崎往人、あなたはそれを救うことができない。このままじゃ、ね」
 少年の言葉に青年――国崎往人は戦慄を覚えた。
「…何を言っている?」
 それでも往人は目の前の少年の言うことを信じる気にはならなかった。
「僕はいろいろと知っているんだ。彼女、神尾美鈴のいきつく先とかをね」
 その言葉は往人に少なからず衝撃を与えた。
「彼女は夢を見る。最初は空の夢。夢はだんだん昔へさかのぼっていく」
 少年の言葉に、往人は明らかに動揺していた。
「その夢が彼女を蝕んでいく。最初は、だんだん体が動かなくなる」
 少年ははっきりとした言葉で告げる。
「それから、あるはずのない痛みを感じるようになる。そして…彼女はすべてを忘れていく。
一番大切な人のことさえ思い出せなくなる。そして、最後の夢を見終わった朝…」
「やめろ!!」
「彼女は、死んでしまう」
 少年はきっぱりと告げた。まるで外れることのない予言のように。
「ふざけるな!! そんなことはありえない!!」
 少年の言葉に往人が激昂する。
「いや、このままだとそうなるのさ。あなたの母が話していた空にいる少女の話の通り」
「!!」
「あなたも思い出しただろう? 母があなたに伝えた言葉を」
「………」
 少年の言うとおり、往人は母に言われた言葉を思い出していた。
 そしてその言葉は、今少年が話した内容と同じものだった。
「だが、その話には続きがあっただろう?」
「…ああ」
「わかるだろう? 彼女を救えるのはあなただけなんだ」
「…だが、どうやって?」
「幸せな記憶」
「え?」
「幸せな記憶が、彼女を救うんだ」
「………」
「母親がいて、大好きな人がいて、大切な友達がいる。そんな幸せな家族の記憶が」
「………」
「その人形には願いがこもっている」
 少年は、往人の持つ人形をさしていった。
「今まで彼女たちを救えなかった『力』を持つ人たち…あなたの先祖たちの願いが」
「………」
「人形に心をこめる、そうあなたは言われたはずだ。
動かすためにではなく、誰かに笑ってもらうために、幸せになってもらうために動くよう念じる」
「………」
「彼女を幸せにしてあげるんだ。海に行きたければつれていってあげる。
楽しいことをたくさんしてあげる。お祭りにだってつれていく。ずっと家族で楽しい時を過ごすんだ」
「おまえは…」
「そうすれば、きっともう一人の彼女も救われる。楽しい記憶は、きっとそらが届けるから」
「おまえはいったい何物なんだ…?」
 往人は少年に問い掛けた。
 少年は明らかに普通ではない。往人や観鈴の事をあまりにも知りすぎている。
 そう、まさに本人以上に。
「無限の終わりを目指す者」
「何?」
 少年の答えは往人が理解できるものではなかった。
「今ならまだ間に合うんだ。母はいるし、痛みも感じていない。あなたにもまだ症状が及んでいない」
 少年はそんな往人にかまわず続ける。
「だがどうすればいい?」
 聞くべきことは山ほどあったが、往人は仕方なく少年の話すことに話題を変えた。
「子供たちに習うんだ。どうすれば笑わせられるか。そして母を旅立たせちゃいけない」
「何だよ? 旅立たせちゃいけないって。それに、晴子は本当の母親じゃないんだぞ?」
「そんなことは問題じゃないんだ。彼女は母親になれる。誰よりも娘を愛しているんだから」
「愛している? 晴子が観鈴を?」
「ああ、そうさ。だけどいつ引き取りにくるかもしれないと恐怖におびえて、母は母親になれない」
「そんな…」
「だから、娘が苦しんでいるときでも母は近くにいられない。
それじゃいけないんだ。だからあなたがそれを救うんだ」
「俺が…」
「早く。手遅れにならないうちに」
「…なぜ今ごろになってなんだ?」
「あなたが思い出すのを待っていたんだ。
今ならまだ間に合うから。無限の終わりにたどり着けるから」
「無限の終わり…」
「僕は、できなかった。だから…今度こそ、あなたが救ってほしいんだ。
あなた達がそこへたどり着く手助けをするのが、無限の終わりを目指す者なんだ」
 少しだけ苦悩を顔に浮かべてそう言うと、少年はきびすを返した。
「おまえは…いったい誰なんだ?」
 往人はもう一度だけ問い掛けた。
「僕は、そこにたどり着けなかったあなただよ」
 その答えはやはり往人にはわからなかった。
 少年が少しだけ悲しそうに微笑んで、今度こそ立ち去る。
 何故だかはわからない。深夜に突然現れた見知らぬ少年の狂言。信じられるはずのない言葉。
 だが、往人はその少年の言葉を信じることを決めた。
(今なら、まだ間に合う…)



○     ○     ○



 7月27日 朝

 目覚める。すると、ほこりっぽい天井があった。そう、昨日は納屋で寝たのだった。
 なんとなく、家に戻りづらかったせいだ。
 相変わらず、セミがうるさい。
 観鈴はちゃんと眠っているだろうか?
 上体を起こす。
 思い出すのは、昨日の子供の言葉だ。その言葉は、俺の中に重く淀んでいた。
 と、別の音がした。誰かが玄関の引き戸をあけているようだ。
 俺は納屋から外に出た。
 玄関のほうに回ってみると、そこには晴子がいた。
「お、はやいなぁ」
「あんたこそ。仕事は午後からじゃなかったのか?」
「仕事はしばらく休むことにしたんや」
 見ると、晴子の手にはかなり大きい鞄があった。
「何だそれは?」
「旅行鞄や」
「旅行…?」
「ふらり一人旅や」
「どこへ…」
「温泉めぐりや。いい温泉がたくさんあんねんで。温泉つかってゆっくりするんや」
 それは、まさに昨日の少年が言っていたような事態だった。
『母を旅立たせちゃいけない』
 昨日の少年は、確かにそう言っていた。
「本気で、温泉旅行なんてするつもりか?」
 少年の言っていたことが真実なら、晴子の本当の目的は温泉などではないはずだ。
「もちろんや。なんか文句あるか?」
 だが、そう簡単に真実を話してくれそうにはなかった。
(無論、あいつの言葉が真実だと言う確証などないけどな)
 俺は昨日散々考えて信じることにしたのだ。いまさら無駄なことを考えても仕方がない。
「…観鈴はどうするんだ?」
「あんたに任せる。あんたやる時はやるし、それにあの子もあんたのこと好いとるからな」
 そう簡単に説得できそうではなかった。
 他に思いつく方法もなかったから、俺は俺の知っていることをありのままに話すことにした。
「観鈴は今、夢を見ているんだ。そしてその夢が観鈴をこんな風にしているんだ」
「はあ? なんやねんいきなり?」
「そのうちに観鈴は、あるはずのない痛みを感じるようになるんだ。
それから観鈴は忘れていく。俺のこともあんたのこともな。
最後の夢を見終わった朝、観鈴は…」
 ここで俺は一拍おいて、告げた。
「たぶん観鈴は…死んでしまう」
 自分の言葉が、いやに空々しく響いた。
 晴子の顔色が一瞬のうちに変わった。
「あんたなぁ…言うてええ冗談と悪い冗談があるで」
「俺は、母から空にいる少女の話を聞いていた。
彼女は夢を見る。最初は空の夢。夢はだんだん昔へさかのぼっていく。
その夢が彼女を蝕んでいく。最初は、だんだん体が動かなくなる。
それから、あるはずのない痛みを感じるようになる。
そして…彼女はすべてを忘れていく。一番大切な人のことさえ思い出せなくなる。
そして、最後の夢を見終わった朝、彼女は死んでしまう。
その少女はきっと、観鈴なんだ。昨日逢った少年がそういっていた」
「あんた、どういうつもりやねん? そんなわけわからん話して?」
 晴子は俺の言葉を信じてはいなかった。
 それは当然だろう、どこに信じる材料があるというのか?
 突然家にやってきた居候に、あんたの娘はもうすぐ死ぬなんていわれて、信じられるはずもない。
「確かに、信じられる話じゃないだろうが…」
「当然や。あんたもよくそんな話し、まじめにきいとったなぁ」
「…俺が幼い頃に母から聞かされつづけていた話を、あの少年はまったく同じに言ったんだ」
「なんや、そんな本でも流行ってたんとちゃうか?」
「母は、俺たちの家に伝わるこの法術が、空にいる少女を救うためのものだと言っていた。
そんな細部までまるっきり一緒だったんだ。それに、あんたが旅に出ることも予言していた…」
「そんなんたまたまやん」
「その少年はこうもいってたんだ。あんたは誰よりも娘を愛しているのに、いつ引き取りに来るかも
知れないと恐怖におびえて、あんたは母親になれない。だから、娘が苦しんでいるときでも母は近く
にいられないってな…」
 俺の言葉に、晴子は驚愕の表情をした。
「…どうなんだ? 本当のことを話してくれないか?」
 俺の言葉に、晴子はしばらく考えた後、
「……あんたの言うとおりや」
 と、観念していった。
「で、どこに行こうとしてたんだ?」
「あのこの実家や。正式にうちの子として引き取るために交渉しに行こ思っとったんや」
「確かに…それは必要なことなんだと思う。
けど、今何より大切なのは、あいつのそばにいてやることなんだ」
「…できへん」
「…何故だ?」
「さっきあんたが言った通りや。
うちはあの子を…いつうちから離れていくかもわからんあの子を娘としては見れへん。
十年間ずっとそうやったんや。いまさらすぐに変えることなんてできへん」
「どうしても、か?」
「そうや。それに…いくらなんでも、あんたの言うたことをいきなり信じろゆうんも無理やろ?」
「………」
 仕方のない結果だった。いくらなんでも、俺の言葉には説得力がない。
「じゃ、うちはもういくわ」
「ああ…」
 俺は、悲しさを覚えながら晴子の背中を見送った。


「海に行こう」
 観鈴の部屋で、しばらくやり取りしたのち、俺はそう告げた。
 すると、驚いたように観鈴が俺のほうを見た。
「往人さん、どうしたの?突然」
「昨日いけなかっただろ?」
「でも…」
 瞳に不安の色が浮かぶ。
「行きたいんだろ? まだ日も早いし、ゆっくり行けばきっと大丈夫だ。
俺が必ずつれていってやるから」
 それで、安心したようだった。
「うんっ」


「いこっ」
「ああ」
「それじゃ、出発ーっ」
 昨日と同じやり取り。
 あまりにも強い日差しに俺はすぐに後悔したが、ここで止めるわけには行かなかった。
「ゆっくりでいいからな。無理するなよ」
「うん、大丈夫」
 懸命にがんばるその額を、汗の滴が伝った。
 最初の角まで歩いたところで、観鈴が足を止めた。
「ちょっと待って…」
「ああ」
 それほど衰弱しているのだろうか?
 俺は肩を貸す。
「いこう」
 観鈴の手を首に回させた。
「うん…ごめんね」
 再び歩き出す。だが…海はあまりにも遠かった。
「あ…」
 突然、観鈴が何か言いたそうに俺を見つめた。その瞳が潤む。頬を涙が伝う。
「ごめんね…。すぐに…治るから…。海は…また明日…。にははっ…」
 無理な笑顔は、すぐにゆがんでしまう。
 そして俺は悟った。俺は近づきすぎてしまったのだ。
「あ…うぐ…」
 そうなってしまったら、もう俺にはとめる術がなかった。
 観鈴が俺の腕を振りほどいた時…。
「まったく観鈴ちんは泣き虫さんやなあ…」
 角の向こうから、晴子がそっと観鈴に触れた。
「お、お母さん…」
「晴子…」
 突然のことにびっくりしてか、観鈴の癇癪が止まる。
「どうしてここに…?」
「この黒いんがいつまでもうちのこと引き止めるからな。うちも根負けしたんや」
 見ると、そこにはあのカラスがいた。
「しゃあないからうちも付き合うわ。どこにいくんや?」
「海だ」
「オッケーや。ほれ、観鈴ちんつかまりい」
 晴子があいているほうから観鈴を支える。
「それじゃ、改めて…出発ーっ」
 観鈴は少しだけ涙ぐみながら、幸せそうな笑顔で言った。癇癪が起こる気配はもうない。
 みんなでなら…もしかしたら超えられるかもしれない。あの少年の言うように。
 俺達は海に行って、少しの間遊んだ。



○     ○     ○



 7月27日

 今日、往人さんが海にいこうって言ってくれた。
 そうしたら、お母さんも後ろからひょっこり出てきて、海にいこうって言ってくれた。
 往人さんと、お母さんと、そらとみんなで海に遊びに行った。
 みんなで砂山造ったり、水のかけあいっこしたり、いっぱいいっぱい遊んだ。
 とっても楽しかった。でも、途中でちょっと調子が悪くなっちゃったから、
 みんな心配して早めに帰ってきた。
 残念だけど、治ったらまたみんなで遊びにいこうって言ってくれた。
 とても楽しかった。

 7月28日

 今日、往人さんに日記を見られた。
 そうしたら『これからは、やったことじゃなくやりたいことを書け。書いたことは全部
 俺達がかなえてやるから』って言ってくれた。
 とってもうれしい。

 7月29日

 隣町の花火大会がある日。
 今年は、みんなで一緒に花火を見たいな。
 きっと、一人で見るよりもきれいで、楽しいんだろうな。

 7月30日

 変なジュースとかもいっぱい飲みたいな。なかなか買いにいけないからストックもきれちゃった。
 まだ飲んでないのもいろいろあるから飲んでみたいな。みんなで一緒に飲みたいな。

 7月31日

 そらの仲間とも会いたいな。
 そらも他のからすさんがいないとさびしいと思うし。
 そのからすさんともお友達になりたいな。

 8月1日

 海に行きたいな。この間は途中で帰ってきちゃったから今度こそへとへとになるまで遊びたい。
 朝から、日が暮れるまで、ずっとずっとみんなで一緒に遊んでいたいな。

 ・
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○     ○     ○



 7月29日

「ようやく眠ったな…」
 観鈴とカラスだけを部屋に残して、俺はそっと観鈴の部屋を出た。
「あら、あんたどこにいくんや?」
 部屋を出たとたん晴子と鉢合わせる。
「ちょっと、講習を受けに、な」
「なんや? それは」
「どうしたら、俺の人形で笑わせられるか習いに行くんだよ」
「あんた、また芸するんかいな?」
「ああ…俺のこの力は、人を楽しませるためにあるんだ。
だから、この力であいつを笑わせてやりたいんだよ。
あいつがいつまでも笑顔でいられるように、な」
「そか。まあ、行ってきいや。けどあんま遅くなるんやないで」
「ああ。それじゃ行ってくる」
 俺はそのまま外に出た。
(しかし、子供達なんてどこにいるんだ?)
 思えばこの街では、あまり子供を見かけてはいなかった。
 子供達の集まる場所なんて見当もつかない。それらしい場所にはすべていったことがある。
「こっちだよ」
 唐突に声がした。そっちを振り向くとまだ小さい女の子がいて、手招きをしている。
「…俺か?」
 周りに人がまったくいないのでそう聞いてみると、少女はうなずいた。
「子供達の集まる場所はあっちだよ。
みんな人形芸のお兄さんが来るのを待ってるから、一緒にいこ」
「!?」
 少女は言いながら微笑んでいたが、俺はそれどころではなかった。
 自分の考えていたことを完璧に言い当てられたのだ。しかも、準備も整えられてあるらしい。
「何故…?」
 一つの仮説を持ちながら――その仮説にはほとんど確信のようなものがあったが――俺は聞いた。
「私も、無限の終わりを目指す者だから」
 俺の仮説はあたっていた。少女も、あの少年と同じ存在なのだ。
「ほら、いこ」
 そう言って手をとられる。俺はそのまま、少女に手を取られてその場所に向かった。
「あ、来た」
「あのお兄さんが人形芸するの?」
「なんだか目つき悪いねー」
「ああいうのを『くーるな人』って言うんだよ」
「くーるってなあに?」
「うーん、ぼくもわからないんだけどね」
「おいしいのかなあ?」
「でもあのお兄さんおいしくなさそうだよ?」
「ていうか、そもそもあのお兄さんを食べられるわけないじゃん」

 わいわい、がやがや……

 そこにはたくさんの子供達がいた。
 少女のほうを見ると、彼女は俺に向かってにっこりと笑う。
(感謝しないとな…)
 そしてたどり着かなければ行けない。無限の終わりに。
 そのために、俺はこの受け継がれてきた力で、受け継がれてきた人形を動かすのだ。
 大切な人を笑顔にするために。
「よーし、それじゃあ、今からこのお人形さんが歩いてみせるからな」
 俺は人形を地面に置き、念をこめた。
 人形がぴょっこりと立ちあがる。

 とてとて…

 歩き始める。子供達は人形の動きをじっと見ていた。
「どうだ?」
「う〜ん…不思議。だけど、面白くはないよ。ね」
『うん』
 満場一致でそういうことらしい。
「じゃあ、どうすれば面白くなるか教えてくれないか?」
『うん』
 今度も満場一致でOKが出た。


 俺は子供達から時間をかけて習った。
 俺がなかなかうまくできないにもかかわらず、子供達は見捨てずにずっと教えつづけてくれた。
 みんな、ひたむきに向き合えば、どれだけでも根気強く付き合ってくれた。
 そして、

 とてとてとて…
 ぽてっ。

 何かにつまずいたように人形が倒れて、そのとたん歓声がはじけた。
「今の面白かったよっ」
「そうそう、さいしょからさいごまでぜんぶ面白かった」
「そうか」
 人を笑わせるために動かすのはとても楽しい。
 人が笑うと嬉しいから、俺も一生懸命に人形を動かす。
『人形に心をこめなさい』
 今ならできそうな気がした。
 俺は子供達に御礼を言い、そして別れを告げた。
 あの少女はいつのまにかいなくなっていた。


 ずいぶんと遅くなってしまった。

 ひゅーーーー……ドン、ぱらぱらぱら……

 花火の音が聞こえる。もう夜だった。
 観鈴はどうしているのだろう? 晴子がいるから特に問題はないと思うが…。
 なんとなく、気持ちがせいでいて、俺は家までの道のりを走っていた。
「居候っ!!」
 家についたとたん、晴子が俺に大声で言った。
「どうした? 何かあったのか?」
 ただ事でない様子に、俺はいやな予感がした。
「観鈴が何かに痛がってるんやっ。どこがいたいのかわからんのに、苦しんどる。
たぶん、あんたのいっとった『あるはずのない痛み』や」
「なにっ!? くそ…」
「なあ、うちはどうしたらええんや? 娘が苦しんどるのに、ただ見てるだけしかできんなんて嫌や」
「とにかく、観鈴のそばにいなくちゃ」
 俺達が観鈴の部屋に入ると、ベットの上で苦しむ観鈴がいた。
 その傍らでは、カラスが心配そうに見守っている。
「どうして…みんな…わたしだけ…残して…はぅっ…」
 息をすう間もないほど、観鈴は泣きじゃくる。
 こんなことが続いたら、無事でいられるはずがない。
早く、早く俺達は『無限の終わり』にたどり着かなければいけなかった。
だが、その具体的な方法はわからない。
 俺達はそれぞれ、観鈴の腕をとって手を握った。
 今は、こうすることしかできなかった。
 熱くほてった手のひら。こんなにか細いのに、どれだけ苦しめばいいのだろうか?
「往人さん…お母さん…そら…」
 観鈴が俺達のことを呼ぶ。俺達はそのまま手をつないでいた。
「いいか…つらくても耐えろよ。そばに…いるから…」
「そうやで、観鈴。うちらはいつまでもあんたのそばにおるからな。せやから、頑張るんやで」

 つんつん。

「…うん」
 観鈴は返事をして、目を閉じた。
 俺達は、ずっとそのままでいた。



 7月30日

 朝が来た。何とか観鈴も苦しみを乗り越え、汗ばんだ手を離す。
「もう、大丈夫なのか?」
「うん、楽になった」
「よかったわ。観鈴ちんが苦しんどると、うちはなんだか生きた心地がせえへん」
 俺は安心したせいか、眠りへと落ちていった。

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

「往人さんっ」
「おい、居候、大丈夫かいなっ?」
「んっ…」
 目を覚ますと、観鈴(+カラス)と晴子が目の前にいた。
 暑くて、かけられていた毛布を剥ぎ取る。もうずいぶんと日は高いようだ。
 体を起こそうとして、顔がゆがんだ。背中から痛みが沸きあがり全身が痺れる。
「どうしたの?」
「何でもない…気にするな」
 俺はできる限り普通にそういった。
「うん…」
 うなずきはしたものの、観鈴は納得していないようだった。
 だが晴子にいわれてベットに戻り、やがて寝息を立てた。
 その頃には俺も何とか立ちあがれるようになっており、俺は部屋を出た。
 居間に行くと、晴子が俺に話し掛けてきた。
「これがあの子の苦しみなんやろか?」
「…あんたもなってたのか」
「ああ、なっとった」
「そうか…」
「これは、どういうことなんや?」
「心が近づけばその人も病んでしまう…母はそう言っていた」
「そか…なら、うちもあの子の心に近づけたんやな」
「ああ。あんたは母親だからな」
 あの少年の言うとおり、晴子は観鈴を愛していた。そして、母親となれたのだ。
 皮肉な話だった。苦しみがその証明となるなんて。
「なあ、うちはどうすればいいんやろ?」
「あの少年は、幸せな記憶が観鈴を救うと言っていた。
俺達は、あいつのそばにいてあいつを幸せにしてやることしかできない」
「…助かる保証はあるんか?」
「大丈夫…のはずだ」
「そか」
 それっきり俺達は無言だった。



「ねえ、往人さん。本当の事を教えてほしいの」
 俺と観鈴が二人だけの時、観鈴は突然そう切り出してきた。
「往人さんが探している人と、わたしの夢って関係があるんだよね」
「いや、別にそんなことはないだろ」
 俺はとっさにそういった。
「でも往人さんこの間わたしに聞いたよね。夢の中のわたしに翼があるかって…」
「あんなものは冗談だ。忘れろ」
「ううん、往人さん真剣な目をしてた。ね、教えてほしい」
 強く、まっすぐな目に見つめられる。
 俺は目を閉じ、話し始めた。

 …この空の向こうには、翼を持った少女がいる。
 …それは、ずっと昔から。
 …そして、今、この時も。
 …同じ大気の中で、翼を広げて風を受け続けている。

 母から何度も聞かされ、そして謎の少年によって再び聞かされた詩のような文句。

 …そこで少女は、同じ夢を見つづけている。
 …彼女はいつも一人きりで…
 …大人になれずに消えていく。
 …そんな悲しい夢を、何度でも繰り返す…

 そして、予言めいた母の言葉。

 友達が近づくだけで、その子は苦しがる。
 だからその子は、ずっと一人ぼっち…。
 …それから、だんだん体が動かなくなる。
 あるはずのない痛みを感じるようになる。
 夏はまだ始まったばかりなのに…。
 知っていたのに、わたしは何もできなかった…。

 これは、観鈴がこれからたどってしまうかもしれない道。
 けれど、そんな道はたどらせはしない。そのために、俺がいるのだから。
「往人さん、その子はきっともう一人のわたしなんだよね…」
「………」
「その子は翼があって、自由にそらを飛べた。
それなのに今は何かに苦しんでいて、わたしに何かを伝えようとしている…」
「…それで?」
「わたし頑張って夢を見て、その子が伝えようとしてることを理解して、その子を救ってあげたい」
「でも…おまえは、そのせいで苦しむかもしれないぞ?」
「いいの。わたし、この夏は特別だって思った。がんばって友達つくろうって思ってた。
そしたら往人さんにあえた。そらにもあえた。お母さんと仲良くなれた。
わたしは、この夏を一番幸せなものにしたいから。だから、がんばりたいな」
「ああ…。わかった」
「でもね、往人さん…往人さんもお母さんも、最近、なんか苦しそうだよね。
まるで、わたしと同じように…」
「いや、大したことはない」
「もしも、それがわたしのせいだったら、わたしから離れていってね。
わたしは一人でもがんばるから。一生懸命がんばるから」
 そういって観鈴は微笑んだ。
 なんて…なんて痛々しい笑みなのだろう。
「馬鹿…。俺達は、何があってもおまえから離れないさ。
おまえがいてくれなきゃ…俺達はだめなんだからな」
「往人さん…」
「もうそんなこと言うなよな…。もしまたそんなこと言ったら、セミをこの部屋の中に入れてやる」
「…うん。もう言わない…」
「よし、良い子だ…」
 そっと、俺は観鈴の頭をなでた。



「ほれ、隠し芸大会や。ほな、始めてや」
 いつかと同じように、俺の隠し芸大会は始まった。
「で、またあんたらは観客か?」
「そや。な、観鈴」
「うん、観客。ね、そら」
 日常と言うものが恋しくて、俺達はかつての日常と言うものを演じていた。
「わかったよ…しょうがないな」
 俺はそういうと人形をとりだし、床に置いた。
 その上に手をかざすと、人形が立ちあがった。

 とてとてとて…
 ぽてっ。

 子供達に教えてもらい、うけた芸を披露する。
「にははは…」
「はっはっは…居候、腕上げたな」
 俺はこの力で、人を笑わせることができる。
 俺の大切な『家族』を。
 だが、逆にいえばこの程度のことしかできないのだ。
「………」
 昔求めていたぬくもりを、俺は手に入れることができた。
 それなのに…俺ができることは…。



○     ○     ○



 8月3日

 彼女はつらそうだったけど、決して寂しくはなかったみたいだ。
 彼女のそばにはいつも母と、あの男がいた。
 二人とも最初は彼女をいじめる悪いやつだと思っていた。だから僕にとっては敵だった。
 けれど、彼女が苦しんでいる時――僕が何もできずにいたとき、
二人は確かに彼女のそばにいて、ずっと一緒にいて彼女を励ましつづけていた。
 彼女にとって、二人は大切な人なのだ。
 そんな二人がそばにいて、確かに彼女は幸せだったはずだ。
 それなのに、その時は来てしまった。
 彼女が苦しみだした。
 こんなにも懸命に生きようとしている彼女に、苦しみは容赦なく襲ってきて、
しかもその苦しみかたは、以前の比じゃなかった。
 この部屋には、母とあの男もいる。でも、二人ともとても苦しそうだった。
「うっ…っく…」
 苦痛に耐えかねて彼女の口から声が漏れる。
「観鈴っ…」
「観鈴」
 二人は、彼女のそばにいて彼女を励まそうとしている。
 けれど、二人ともなかなか体が思うように動かないらしく、とても苦しそうだ。
 病人が三人。
 動けるのは僕一人だけだった。
 なのに、僕には何の力もないのだ。
(また、繰り返すのか…)
 僕の頭の中で、何かがそう告げた。
 それは、空を目指していた時の記憶だ。
 それは僕の中で大きく膨らんで、僕は記憶をさかのぼっていった。

 人がいなくなった通りで、僕は一人で人型を動かしていた。
 …いや、一人じゃない。
 僕の目の前に彼女は座り込み、そして笑っていた。
「にはは」
 僕は彼女を――みすずを、彼女よりも高い位置から見下ろしていた。
 手を伸ばせば彼女に触れることができる。抱きしめることができる。
 僕は彼女に触れ、そして抱きしめた。
 そう…僕は――俺は人だったのだ。
 俺は彼女と幸せな日々を過ごしていた。
 その日常が崩れる日、俺は自分の命を犠牲にしてまで彼女を生き長らえさせた。
 その時、俺はもう一度やり直したいと、そう願ったのだ。
 そして思いは通じた。
 俺は人としてではないけれど彼女のそばにいられて、
もう一人の俺はずっと彼女のそばにいて、晴子も観鈴のそばにいて…。
 すべてが良い方向に動いているように見えた。
 なのに…。
 何故、観鈴はまだ苦しんでいるんだろう?
 もう一人の俺も、晴子も、何故苦しんでいるのだろう?
 結局、どんなにがんばっても無駄なのか?
 観鈴の運命は変えられないのか?
 だとしたら…俺は、何のためにここにいるんだっ!?
 何とかしたい。
 俺にできることを何かしてやりたい。
 なのに、この姿じゃ思いも言葉も通じない。
 どうすればいい?
 俺はどうすればいいんだ?
 ………。
 頭が痛む。
 記憶と知識がこぼれ落ちていく。
 この記憶は、この体には負担が大きすぎる。
 俺は、あるべき姿へとかえろうとしていた。
 だが…まだだ。
 おそらく、俺がこのことを思い出すことはもうない。
 だから、今がんばらなくちゃ…。
 今がんばって、苦しんでいる三人を、何とかしなくちゃ…。
 そのために俺がいるのだから。
 そのために、俺が人だったときの記憶がよみがえったのだろうから。
 今、観鈴を笑わせるんだ。
 ………。
 俺は人形を口にくわえる。
 そして精一杯歩き回る。
 必死で人形を歩かせた。
 俺にはできなかったこと。
 最後までかなわなかった夢。
 この手で、この人形で観鈴を笑わせること。
 観鈴は俺の行為を薄めで見ていた。
 笑ってもらえるのだろうか?
 今度こそ、俺は観鈴を笑わせたかった。
 もう一人の俺のように。
 だから俺は人形を歩かせつづけた。

 とことこ…

「にはは…」
「ははは…」
「ふっ…はは…」
 みんなが笑った。
 俺はこの手で、人を笑わせることができた。
 とても嬉しかった…。
 俺はできる限り、人形を動かしつづけた。
「…こいつに負けてられないな…」
「そうやな…。うちらももっとがんばらんと」
「うん。がんばる」
 三人とも元気が出たようだった。
 ………。
 やがて俺が消える。
 観鈴と過ごした日々も、観鈴を愛していたことも、人だったことすら忘れていく。
 それでも俺は、観鈴のそばにいたい。
 その思いだけはずっと忘れない。
 だから俺は、観鈴のそばにいる。
 それだけで、俺は十分だった。
 笑う彼女のそばにいることができれば、それで…。
 …記憶が消える。
 けれど、俺は幸せだった。
 僕は、ずっとみすずのそばにいられるのだから。


 そして、長かった夜が明けた…。



○     ○     ○



 8月7日

 俺達は、今日も何とか無事に迎えることができた。
 しかし、観鈴の病状は確実に進行していた。
 もう、立って歩くこともままならず、俺達はずっと家の中で遊んでいた。
「…今日は海に行こうか」
 それでも一抹の願いを込めて、俺は言った。
「うん」
「うちも賛成や」
 二人とも俺の考えをわかってくれたらしい。
 諦めてはだめなのだ。前向きにいかなくちゃいけない。受身になったらそこで終わりだ。
 俺達は乗り越えなければいけないんだから…。
「よっと…」
 観鈴の体を支えて起き上がらせる。そうすると晴子がもう片方から支えた。
「よし…いくか」
 一歩を踏み出す。しかし、観鈴の足はまったく動かなかった。
「どないしたんや? 観鈴」
 晴子が心配そうに話し掛ける。
「うん…ごめん。ちょっと待ってて…」
 必死で足を動かそうとしているのが伝わる。
 だが、観鈴がどれだけ努力しようと、足はもはや観鈴の体ではないかのように動かなかった。
「あれ? おかしいな…」
 それでも諦めずに観鈴はがんばりつづける。とても見てられない光景だった。
 もう止めたかった。観鈴を寝かせてやりたかった。けれど、それを言うことはできなかった。
「観鈴、がんばれ」
「観鈴、ふぁいとや」
 俺達ができるのは励ますことだけだった。


 結局俺達は部屋から出ることもかなわず、夜を迎えた。


「はぁっ…」
 ベットの上で、観鈴が苦しげに息をはく。
「観鈴っ…観鈴…」
「しっかりしろ、観鈴…」
 俺達は必死で呼びかける。
「くそっ…」
 何もできない自分に、怒りばかりが募る。
「往人さん…お母さん…よく聞いて…」
 苦しみながらも、観鈴は俺達に顔を向けた。
「もしかしたらわたし、もう変わっちゃうかもしれない…」
「っ!?」
「それって…つまり、そういうことか?」
「うん…たぶん…」
 変わってしまうということ。
 それはつまり、すべてを忘れるということだった。
「変わっちゃってもね…わたしは覚えてるから。
往人さんも、お母さんも、そらも、みんなとの思い出、ぜんぶ覚えてるから…」
 どうすればいいのかわからなかった。
 観鈴を救うための方法は…何か忘れているのか?俺は。
 あの少年から教えてもらったことの中に、何かあるのか? 今できることが。


『その人形には願いがこもっている』
 少年は、往人の持つ人形をさしていった。
『今まで彼女たちを救えなかった『力』を持つ人たち…あなたの先祖たちの願いが』


 そうだ…この人形。
 この人形の力を解放すれば、あるいは…。
 俺は人形をベットの脇に置き、力を――いや、心をこめた。

 とてとて…
 …とてとてとて…

 人形が歩き出して、不意に動きを止める。
 次の瞬間、人形は真っ白に輝きだした。
 不思議な『力』があたりにみなぎる。この光こそ、俺の先祖たちの『力』だった。
「くっ…」
 だが、その『力』のすべてを解放するのには、俺の『力』では足りなかった。
 限界を感じる。
 それでも俺は『力』をこめつづけた。
 だんだんと、俺の体そのものが『力』に変わるような感じがしてくる。
 意識が人形にすいこまれ、細胞の一つ一つが解放の『力』へと変化する。俺が…消える。
「往人…さん…」
 観鈴がうっすらと目をあけて、俺のことを見ていた。
 …そうだ。
 俺はまだ、消えるわけにはいかない。
 この人形の『力』を…『願い』を観鈴に届けて、俺はずっと観鈴のそばにいるんだ。
 そう誓ったんだ。
「ぐ…うぅ…」
 必死で意識を保ち、俺はすべての『力』と『願い』を観鈴に注ぎ込んだ。



○     ○     ○



 わたしは一人で海を見てた。
 楽しいことがいっぱいあるはずの海。砂山を作ったり、水を掛け合ったり、かけっこをしたり…。
 たくさんの遊びがあるはずだった。パパとママとわたしと、三人で遊んだ。あの日々…。
 もう、戻ってくることはなくなっちゃった。ママは、遠くにいっちゃった。
 だからわたしは一人で海を見てた。一人で見た海はとても寂しかった。
「………」
 わたしは思い出すしかなかった。海で楽しく遊んだことを。
 けれどここは見知らぬ海だった。思い出はあまりにおぼろげだった。
 わたしは要らない子みたい。だからママはわたしを置いてどこかにいって、パパは
 わたしを叔母さんに預けていっちゃった。
 わたしは誰にも迷惑をかけちゃいけなかった。わたしはここにいられるだけで幸せなんだ。
 欲張りをいっちゃだめ。一人で楽しく遊んでればいいんだ。
 それなのに、わたしは馬鹿なことをしてしまった。

『これ、ほしいな』
『うん? なんや?』
『きょうりゅうの赤ちゃん』
『はは、違うんやけどなぁ…これ、ひよこやねん』
『ほしいな』
『だめや。こんなんまともに育つわけあれへん。それにうち、貧乏なんや』

 おばさんに迷惑をかけちゃった。
 だからもう、迷惑をかけないようにする。
 料理も、洗濯も、掃除も、自分でやらなきゃ。もうこれ以上、迷惑かけたくないから…。

『迷惑なんかじゃないさ』

 声がした。やさしい声。

『母親ってのは、娘のことが本当に大切だからな』

 振り向くと、そこには目つきの悪い、けどやさしい男の人がいた。
 往人さん。

『もう、おまえは一人で遊ぶ必要なんてないんだ。だから…ほら、来いよ』

「…うん。うんっ」
 わたしは歩き出した。







 もう、一人じゃない…。



○     ○     ○



「もうそろそろ限界だよ」
「わかってる…」
「気持ちはわかるよ。けど、もう時間がないよ」
「うん…そろそろ手を打たなきゃいけない…」
「やっぱり、自分の力で気づいてほしい?」
「いや…ほしかった、かな」
「じゃあ、いいんだね?」
「うん、僕だって私情に流されて、彼らの努力をなくしたくはないさ」
「じゃあ、まかせるよ」
「うん」



○     ○     ○



 8月8日

 リリリリリリリリリリリリ…

 突然鳴り響いた電話の音に、観鈴の部屋で遊んでいた晴子が軽い苛立ちを覚えた。
「なんやねん、せっかく楽しくあそんどったのに。電話するならちゃんと断ってからせんかいっ!」
「無茶言うなよ…」
 晴子の言葉に、往人はあきれながらも答えた。
「まあええわ。おい、居候。でてき」
「俺がでていいのか? この家に、俺への電話なんてないだろう」
「ええやん別に。それに、もうあんたも家族みたいなもんや」
「そうだよ。往人さん、家族」
「あきらかに居候って呼んでるが…」
「ああっ、ほんなら往人っ、はよでてき」
「わかったよ。ったく」
 そんなことをいいながら、往人は部屋を出て電話を取った。
「もしもし、神尾だが」
『………』
「もしもし?」
『………』
 いたずら電話か? と往人が思い始めた頃、ようやく相手がしゃべり出した。
『神尾晴子の家で、間違いないかい?』
相手の声は、まだ若そうな男の声だった。
「ああ」
『それじゃあ…君は誰だ?』
 晴子の知り合いの男か、と往人は考えた。
 娘と二人暮しのはずの家に男が出たら、それは驚くだろうと納得もした。
「俺はこの家にちょっと厄介になってるものだ。あんたは?」
『ああ、僕の名前も言うべきだったね。僕は橘 敬介という。晴子に取り次いでもらえないか?』
「わかった」
 そういって往人は受話器を置き、観鈴の部屋へと戻る。
「おー、何の電話やったんや?」
「あんたにだ。橘 敬介、とか言ってたな」
 往人の言葉に、晴子と観鈴は少し顔をこわばらせた。
「あんのあほ…今ごろになって何の用や」
 肩を怒らせながら、晴子は往人の横を通りすぎて歩いていった。
「いったい誰なんだ?」
 二人の態度に少々困惑しつつ往人がたずねる。
「…わたしの…本当のお父さん…」
 観鈴は、とてもか細い声でそうとだけ告げた。
「そうか…」
 往人もそれ以上は聞こうとはしなかった。


「どうしたんや? 今ごろ」
『晴子、その前に質問に答えてもらおう』
 敬介は少し憤りをこめた声で言った。
「なんやねん?」
 質問の内容はわかりきっているのに、晴子はそうたずねる。
『さっき電話に出た彼は、誰だ?』
「観鈴がどっかから拾ってきた、旅をするクラスメイトや。で、今は家に居候しとる。
名前は田淵。ちなみに、うちの息子や。職業はガンマンやで」
 晴子は初日に往人から言われたことをごちゃごちゃにして言った。
『晴子…ふざけないでくれっ!』
 敬介が激昂する。
「ほんの冗談やん。とにかく、観鈴が拾ってきて、今家に居候しとるんや」
『…そんな素性の知れない男を家に置くなんて、どんな神経をしているんだ? あなたは』
「別にええやん。根はええやつやで。以外にしっかりしとるし」
『…やはり、あなたに預けたのは間違いだったのかもしれないな』
「…いまさらなんや? それは」
『観鈴と変わってくれ』
「あ、あの子は今風邪をこじらせとるからだめや」
『そうか。ではあなたから伝えておいてくれ』
「なにをや?」
『あの子を引き取ることにする』
 その言葉は晴子に衝撃を与えた。
『今からそっちに行くつもりだ』
「待ってや。今、どこにおるんや?」
『今、武田商店というところにいる』
「なっ、すぐそこやんか」
『ああ』
「まっとれ、今こっちから行くわ」
『いや、さっきの彼にも用がある。僕がそっちに行くよ』

 プツッ、ツー、ツー、ツー…
 ガチャッ。

 脱力したように、晴子は受話器を置いた。
 そしてのろのろと観鈴の部屋へと戻る。
「どうだったんだ?」
「どんなこと言われたの? お母さん」
 少し緊張した面持ちで、往人と観鈴は聞いてきた。そらも心配そうに見上げている。
「…今から来るそうや。そんで、観鈴を引き取る言うとる」
「えっ…」
「なにっ?」
 さすがに二人の顔もこわばる。
「…法的にいえば、うちらには何の権限もあらへん。まずいわ…」
「で、でもわたしがいやだってはっきり言えば…」
「そうやな、普通だったらそれで引き下がる。せやけど、今は観鈴の足が動かん。
せやから、あいつは何が何でも入院させようとするはずや」
「だが、そんなことをされれば間違いなく観鈴は…」
「わかっとる。せやけど、やっぱり法的手段に出られたらうちらにはどうしようもない。
それに、いつ回復するのかもわからん。うちらは不利なんやっ」
「くそっ…」
 往人が歯噛みをする。
「…大丈夫だよ」
 静かに、観鈴がそう言った。
「わたし達は家族なんだもん。一番自分がいて幸せな場所。
そこがわたしの家。そしてずっと一緒にいてくれる人が家族」
 観鈴がここで一息置いてから続けた。
「だから、大丈夫だよ。にはは」
 屈託のない笑顔だった。
「…そやな」
「ああ」
 観鈴の言葉と笑顔に、二人も勇気付けられる。

 ピンポーン

 その時、チャイムが鳴った。
「来たみたいやな。往人もついてき」
「ああ」
 そして二人は部屋を出て、玄関先へ行った。
「おはよーさん」
「どうも」
 そして玄関先にいる男――敬介に挨拶をする。
「やぁ、元気かい」
 敬介が、まず晴子に向かって挨拶をする。
「そして…君が居候だね…って、あれ?」
「あっ!」
「なんや? 知り合いなんか?」
驚く二人をみて、晴子が意外そうに言った。
「君は確か…宇宙から来た生物…」「違うっ!」「まぁ、冗談はさておき…」
 バタッ!!

 突然音がしてその方向に視線を向けると、そこには観鈴が倒れていた。
「観鈴っ! おまえ部屋で寝てろって…」
「何やっとんのや観鈴っ!」
「だい…じょうぶだよ…わたしは…元気、だから…」
「どういうことなんだっ!? こんな…こんな状態で何故入院させないんだ!?」
「わたしは、大丈夫だよ…」
「そんなわけないだろう! 晴子、ちゃんと事情を聞かせてもらおう」
「わかった…せやけど、まずこの子を部屋まで運んでからや」
「わたしは大丈夫だから、心配しないで。このままわたしも話に参加するよ」
「観鈴、無理はするなよ…」
「大丈夫。にはは」
 往人も晴子も説得を試みたが、観鈴はいうことを聞きそうになかった。
「…しゃあないわ。このままつれてったる」
 晴子が観鈴を支えて居間へといく。往人と敬介もそれに続いた。


「さて…説明してもらおう」
 居間についたときの敬介の第一声がそれだった。
「そうやなあ…どこから話そか…」
「それじゃ、彼について説明してくれないか?」
 そういって敬介が往人のほうを指す。
「さっき電話で言った通りや。付け足すことは名前ぐらいやな。国崎往人、言うねん」
「それじゃあ国崎君、君がここの家に来た経緯を教えてくれないか?」
「あんたも知っていると思うが、俺は旅をしていて、金は大道芸でまかなってる。
バスに乗ってこの街に来たんだが、バス賃がなくなってこの街で降りた。
そんで、どうしようか考えてる時にこいつに声をかけられてな。
飯を買う金もないからついてきて、そのまま、さ」
「なるほど…了解した」
 敬介はうなずいた。
「さて、それじゃあ観鈴の今の状態は?」
 いかにも、こっちが本題であるというような雰囲気で敬介が尋ねる。晴子がしばらく
 いいあぐねいていたがついに観念したように答えた。
「…足が動かなくなっとる。それとたまに、痛みを感じるんや」
「痛みとは、足の痛みか?」
「ううん、違うよ…翼の痛み」
 今度は観鈴が答えた。
「翼の痛み?」
 その答えに敬介が眉根を寄せる。
「どういうことなんだ?」
「わからないけど、感じるの。この痛みは翼の痛みなんだって」
 自分の思う通りの回答を得られなかった敬介が、再び晴子に向き直った。
「…入院させる必要があるんじゃないのか?」
「だめや。そんなことしたらこの子は…」
「少なくとも、意味なくこの家において置くよりはましだ。観鈴はつれてかえる」
 最悪の事態へと進んでいる…往人はそんなことを思った。
「晴子、今までこの子が世話になった。ありがとう。国崎君にも感謝する」
「ちょっと待ちい、その子は…」
「このままただ病気が進行していくのを黙ってみていろというのかっ!? あなたはっ!!」
 今まで見せなかった気性の激しさを敬介が見せた。
「…この空には翼を持った少女がいる」
 このことを話すのは何度目だろうか…そんなことを考えながら、往人はポツリと呟いた。
「は?」
 その往人の言葉は、敬介の注意をひくことに成功した。

 …この空の向こうには、翼を持った少女がいる。
 …それは、ずっと昔から。
 …そして、今、この時も。
 …同じ大気の中で、翼を広げて風を受け続けている。
 …そこで少女は、同じ夢を見つづけている。
 …彼女はいつも一人きりで…
 …大人になれずに消えていく。
 …そんな悲しい夢を、何度でも繰り返す…
 …友達が近づくだけで、その子は苦しがる。
 …だからその子は、ずっと一人ぼっち…。
 …それから、だんだん体が動かなくなる。
 …あるはずのない痛みを感じるようになる。
 …やがて彼女はすべてを忘れていく。一番大切な人のことさえ思い出せなくなる。
 …そして、最後の夢を見終わった朝…彼女は死んでしまう。

「これが、俺が旅をしていた理由。
俺の家系は代々、その少女を救うために旅を続けていた。少女を探し続けて、な」
「…それで?」
「その少女が、観鈴だ」
「どうしてそんな話が信じられるんだい?」
 往人はそれには答えず、人形を床において動かして見せた。

 とことこ…

「俺には、他人から見れば非現実的な力を持っている。
非現実的な目的のためにこの力があるといえば納得してくれるか?」
「君は、少女を救うと言ったろ? 人形を動かすのが少女を救うことなのかい?」
「俺の芸で楽しませてやるだけさ。悲しみに囚われた少女をな…」
 往人の表情から何かを悟ったのか、敬介は黙っていた。
「…わたし、ここにいたい」
 静まったところで、不意に観鈴が口を開いた。
「一番自分がいて幸せな場所。そこがわたしの家。そしてずっと一緒にいてくれる人が家族」
 一言一言噛み締めるように言う。
「だと思うから。にはは」
 そして笑顔。
「…わかった」
 敬介が呟いた。
「確かに、君達は家族だ。僕が入る隙間なんかない。引き離すこともできない」
 諦めたような、それでいてすがすがしいような口調で続ける。
「でも聞かせてくれ。それでこの子が不幸になるとしても、それでいいのかい?」
「不幸になんかさせへん。絶対に幸せにしたる」
 ふっ、と敬介が笑みを浮かべた。
「それを聞いて安心したよ」
 そして真剣な表情に戻り、続けて言う。
「観鈴のことを、よろしく頼む」
「まかしとき」
「それから国崎君、ちょっと二人で話がしたいんだが…」
 そう言って、往人を連れて敬介は外に出た。
「そういえば、黒いんはどこいったんや?」
「うん、朝起きたときいなかったの」
「そうかー、まあ見られんでよかったけどなー」
 ちなみに、戻ってきた時、往人は少しだけ頬をはらしていたという…。



○     ○     ○



 僕は二人の子供に囲まれていた。
 それでも、不思議と彼らは敵とは思えなかった。
 そしてどこか悲しげな様子で僕を見ていた。
「もう、君は飛び立たなくちゃいけないんだ…」
 男の子のほうがそういった。とても、悲しそうに。
「できれば君に気づいてほしかったけど…仕方ない。君は、空へと飛び立たなくちゃいけない」
 つらそうに続ける。
「彼らが助かるためにはそうするしかないんだ」
 何かを必死で伝えようとしているのがわかる。
 そして僕もそれを理解したいと思う。
 だけど、僕には男の子が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「そら…」
 今度は女の子のほうが僕に話し掛けてくる。
 何故だろう…彼女に似ている気がした。
「そらのことを待っている人がいるの。この空の向こうに」
 女の子の言っていることもわからなかった。
「空は…届かない場所だ。僕ら翼のない人にとっては」
「そら、そらには翼があるんだよ」
「だから、君は行かなければいけないんだ」
「お願いだよ、そら…」
「過酷な日々に終止符を打つため、君は飛んでくれ。彼らの…僕達の、夢や希望をのせて」
「踏み出して。生きていくために」
「人が、きっと穏やかに暮らしていけるようにするために…」
「飛んでっ!」
 ………僕は、空を見上げた。
 空はいつだって悲しみの色をたたえていた。
 限りなく続く空は、恐怖だった。僕はずっとこの空を恐れていた。
 今でも恐かったけど…でも、飛べる。
 そう信じる。
 飛ぼう。
 僕は駆け始めた。翼を広げて、地をける。
 初めて両の翼が風をつかんだ。
 体が浮く。
 腕に力をこめる。
 しっかりと風を受け止めて、はばたく。
 どこまでも、どこまでも高みへ…。
















 もう、悲しまなくていいよ…。
 幸せは、ここにあるから…。



○     ○     ○



「ちょっと興味ないか? 観鈴」
「うん、とってもある。みんなと一緒に遊びたいな」
 そういってにははと笑う。
 あの時から少し時がたっていた。
 観鈴の調子はある時嘘のように回復し、今では普通の一以上に健康な暮らしをしている。
(まあ、子供は元気だっていうからな)
 実際子供のようにはしゃぎまわる観鈴を、俺は暖かい気持ちで見つめていた。
 あのカラスは、結局見つからなかった。今も、どこかの空を飛んでいるのだろうか?
 晴子は仕事を止め、なんと保育園の保母さんになった。
そんな資格をとっていたとはかなり意外だ。
 その仕事ぶりを見てみたいということで、俺達は保育園に行こうとしていたところだ。
「往人さん、早く早く」
「ったく、本当におまえはガキだな。いや、最近はガキの方が大人びてる。おまえはガキ以下だ」
「はぁ…どうしてそういうこというかなあ?」
「…まあいい。ほら、さっさと行くぞ」
「あっ、うん」


「ここか」
「そうだね」

「あほっ! なんべん言われたら
わかるんやっ!?」


「…近所迷惑だと思うぞ」
「うーん、元気いっぱいだよね」
 中のほうを見やる。何人もの子供達が晴子にしかられていた。
(こんなに子供、いたんだな…)
 よく見ると、前に人形の件で世話になった子供達もいた。
 笑顔で手を振ってくるので、こちらからも手を振り返してやる。
「わっ、往人さん子供と仲良し」
「いや…別に仲良しなわけじゃ」
「いいな。うらやましい…」
 そんな観鈴を見て、少し嘆息する。
「だったらお前も仲良しになってくればいいじゃないか」
「え…」
 意外そうに観鈴が俺を見上げる。
「だろ?」
「でも…できるかな?」
「大丈夫だ。俺が保証する」
 すると、観鈴は満面の笑みを浮かべてうなずいた。
「うんっ」
 そして中に入っていく。
「お、観鈴来とったんかいな」
「うん、子供達と遊んでていい?」
「ああ、ええで」
「おねーちゃん、何して遊ぶ」
「そうだね、何しよっか」
「あ、往人も来とったんかいな。せやったらボケっと突っ立ってないで手伝ってや」
「それはあんたの仕事だろ?」
「ええやん、そんなみずくさいこと言わんでも。あっ、こら」
 そう言ってる晴子の横から逃げてきた男の子と女の子の二人組を見たとき、俺は驚いた。
 それは紛れもなく、俺達を助けてくれた二人だったからだ。
 だが、あの時のようなある意味神秘的な雰囲気はかけらもなく、ただ年相応の無邪気さと
 小憎らしさ、わんぱくさなどがあるだけの普通の子供だった。
 人違い、と言われれば納得してしまいそうだ。
(でも…)
 俺はなんとなくわかっていた。俺達は、確かにあいつらに助けられたんだ。
「なあ…」
「んっ、お兄ちゃん誰?」
「わー、目つき悪い」
「お兄ちゃん、お金なさそうだね」
「ひんこんにあえいでたりしない?」
「黒ずくめの格好だね」
「もしかしてやくざとか」
「そんなどこぞの極悪魔術師みたく言うなっ」
「「わー、にげろー」」
 たとえあいつらが覚えていなくても、俺は忘れない。
 『無限の終わりを目指す者』のことを。
「…ありがとうな」
 その背中に向けて、俺は小さく呟いた。
「………」
 空を見上げる。
 空は青く、どこまでも続いていた。
 悲しみだけに満たされることのない空。
 自由な翼を取り戻して、幸せを知った空。
(俺の旅は、終わったんだよな…)
 俺達はとまることなく歩いていく。
 夏はもう終わったけど、それでも空は果てしなく続いている。
 俺達は、雲を追いかけて、ずっとずっと歩いていく。

 秋が来て…
 冬が来て…
 春が来て…

 そしてまた夏が来て…

 悲しいこともあるだろうけど…。
 俺達は、生きているんだから…。

「…だよな」

 ばさばさっ…

 その時、1羽のカラスが降りてきて俺の肩に止まった。
 そして、俺の問いに答えるかのように、頬をつついた。
「うわ、肩に止まるなっ」
「あっ、そら。久しぶり」
「観鈴…お前、カラスの見分けがつくのか?」
「うん、そらは特別だから」
 そして、にはは、と笑う。
 俺達は今、間違いなく幸せだった。



○     ○     ○



 彼らには、過酷な日々を。
 そして僕らには始まりを。
 下ろした手を固く握る。
「じゃ、いこうか」
 彼女が先に立って、待っていた。
「うん」
「この先に待つもの…」
「無限の終わりを目指して」
 ただ、一度、僕は振り返り呟いた。
 その言葉は潮風にさらわれ、消えゆく。
「さようなら」


 翼を持った少女よ…。








<終わり>








あとがき

 どうも、DILMです。
 つかれた…このSSは本当につかれました。
 こんなに長いのは初めてで、まだ終わらないんだな…などと考えていました。
 そんなわけで、自分の中では少し思い入れがあります。
 内容ですが、AIR編の最後の部分からの続きですね。
 あの終わり方に個人的に納得できなかったので書きました。
 けれど、まだまだうまく書くことができない自分が悔しいです。
 さて、どんな評価になるのか楽しみなんですが…。
 こんなところですね。
 それでは。

追伸

 上の文章中で、一箇所だけ反転文字を書きました。
 ま、死ぬほど暇だったら探してください。


<コメント>

誠 「ま、何はともあれ……お疲れさん」(^〜^)
往人 「お前な……俺達の苦労をそれだけで片付けるなよ」(−−メ
誠 「冗談だよ、冗談。とにかく、観鈴さんが助かって良かったよな」(^〜^)
往人 「ああ……まあな……」(−o−)
誠 「何だよ、その気のない言い方は?
   これで心置きなく観鈴さんとらぶらぶ一直線だってーのに」(^〜^)
往人 「んなっ!?」Σ( ̄□ ̄)
観鈴 「……(ポッ☆)」(*・・*)
往人 「お、おい、誠! 何を馬鹿なことを……って、観鈴っ!!
    お前まで何を美凪みたいなことを言っているっ!!」(@o@)
誠 「素直じゃねーなー」(^〜^)
観鈴 「にはは♪ 観鈴ちんと往人さん……らぶらぶ♪」(*^^*)
往人 「だから、なんでそうなるんだーーーーーーーっ!!」Σ( ̄□ ̄)