[前書き]

 この作品は、「Leaf Another Story」とのクロスオーバー作品です。
 「Leaf Another Story」については、ここを参照。






 夏休みも、既に中盤――

 いくら長期休暇中とはいえ、
不規則な生活をしていてはいけない。

 普段から、それには気をつけているつもりだった。

「ふぁ〜あ」

眠い目を擦りながら、時計を垣間見る。





「……まだ五時かよ」






Heart to Heart
×
Leaf Another Story

Last Fighter 「別れ」







 いくら不規則に生活しない事を、
心がけているとはいえ、限度があるだろ……、

 そう思いながらも、冴えてしまった目はどうしようもない。

「仕方ないな……散歩でもしてくるかな」

 俺はそう思い、自室の窓を開けた。

「あれ? 本宮、さん?」

 遠目からだったが、
あの特徴的な帽子を見間違えるはずはない。

 俺はろくに着替えも済ませないまま、階段を駆け下りた。


 ばんっ!


 勢い良く扉を開け、本宮さんの姿を探す。

 えぇと……いた!

「本宮さん!」

 俺は本宮さんに駆け寄り、彼の正面に立った。

「藤井誠? どうしたんだ、こんな朝早くに……」

「それはこっちの台詞ですよ……」

 とにかく、まずは呼吸を落ち着ける。

「本宮さん、こんな朝早くから何をやってたんですか?」

 本宮さんの格好は、
いつものカッターシャツに黒いリュック……、

 まるで、どこかに旅行にでも行くかのような格好だった。

「いや、ちょっと出掛ける用事があってね」

「どこにですか?」

 俺は本宮さんとの会話を、
出来るだけ引き伸ばそうとした。

 ここで引き留めなければ、
もう二度と、本宮さんとは会えないような……、

 そんな目を、本宮さんはしていたから……、

「……急に隆山の方に帰る事になったんだよ。
しばらくは、向こうの方で暮らす事になりそうだから、頻繁には会えなくなるな」

「理緒さんには……」

「――うん?」

「理緒さんには、ちゃんとその事を伝えたんですか?」

 俺の言葉に、
本宮さんはやれやれと肩を竦め。

「俺が……そんな事をまともに伝えられるような男に見えるか?」





「――何のつもりだ?」





 体が、勝手に動いていた。

 自然に、俺の右手は……、
 自ら課した封印を、解き放っていた。

「……本宮さん、あなたは卑怯です」

「卑怯?」

「理緒さんは大切にするって、言っていたじゃないですか。
なのに、何故……今になって、そんな真似をするんですか?
一言も告げないで、理緒さんの所を出て行くなんて……酷すぎますよ!
残された理緒さんの気持ち、あなたは考えて……」

「……黙れ」

 本宮さんは左手に持っていた、
白い布を解き、その日本刀を露にした。

 いつになく、厳しい口調だった。

「……本当は俺だって、分かってる。こんな別れ方いけないんだって。
でも……こうしなきゃならないんだ。理緒ちゃんの元を離れるには。
理緒ちゃんの顔を見ると、余計に行きたくなくなってしまうから!」

「じゃ、じゃあ……どうして行くのを取りやめないんですか!
一体、何が本宮さんをそこまで突き動かしていると言うんですか!」

「彼女……理緒ちゃんを、守るためだ」

「それじゃあ、本宮さんが傍にいて、
理緒さんを守ってあげれば良いじゃないですか!
離れてまでそう思うんなら、いっそそうした方が……」

「黙れよ!」

 早朝の閑静な住宅街。

 そこに、一際大きな本宮さんの声が響き渡った。

「…………」

 本宮さんが、こんな大声を出すなんて、滅多にない事だ。
 俺は、口を大きく開いたまま、返す言葉が見つからなかった。

「俺だって……俺だってな、一生懸命考えた結果なんだ!
このまま理緒ちゃんの隣にいて、いつでも彼女を守ってあげられるような……、
そんな事が出来たら良いなとも考えていた!
でも……現実は、そううまくはいかないんだ!
この前の戦いで……俺はそれを、はっきりと痛感した!
だから、俺は……自分をもう一度、鍛え直しに行く。
鍛え直して、魔物を倒して……理緒ちゃんが安心して生活できるような。
俺がそれを実感できるようになったら……必ず、理緒ちゃんの元に帰る。必ずな!」

「本宮さん……」

 普段はクールで、物事をあまり喋らないような本宮さん。

 その本宮さんが……、
 こうして感情を剥き出しにして、本音をぶつけてくる。

 そのあまりにも唐突過ぎて、珍しい出来事に……俺はただ、閉口するしかなかった。

「はぁ、はぁ……すまないな、藤井誠」

 さっきまで早口で捲し立てていた、
本宮さんが、落ち着きを取り戻し、呼吸を押さえる。

「お前の気持ちも考えずに、
こっちの言いたい事だけを一方的に言っちまったな……悪かった」

「あの、本宮さん……」

「――ん?」

 俺の問い掛けに、本宮さんは首を傾げる。

「向こうに着いて落ち着いてくれたら……連絡してもらえますか。毎日。
その……俺じゃなくて、理緒さんに……」

「何を言ってるんだ、藤井誠」

「――え?」

 ただ驚くばかりの俺に、
本宮さんは帽子を被り直して一言。

「そんな事……言われなくてもやるに、決まってんだろ?」

「本宮さん……」

「おっと、そんな顔するなよ。
何も、これが、今生の別れになる訳じゃないんだからさ。
向こうでも暇が出来れば、こっちに遊びに来る事だってあるさ」

「……はい」

「それじゃ、藤井誠。また会おうな」

 軽く手を振り、本宮さんは歩き出した。

 本宮さんは、もう俺の姿に振り返る事はなかった。
 だから、俺ももう本宮さんの方には振り返らない。

 本宮さんとは、また……、
 いつかどこかで、会えるような気がするから。

 だから、今回の別れは悲しい物ではない。

 確信めいた物を、俺は胸の中に感じて――








「――また、会いましょう、本宮さん」








Last Fighter…END


[後書きのコーナー]

 はい、(作者の)本宮です。
 「Heart to Heart × Leaf Another Story Vol.10」、いかがでしたでしょうか?

 この話は「Leaf Another Story Vol.4」終了直後の設定で書いてます。

 本宮の言っている「この前の戦い」というのは、LF'97の事です。
 まー、いずれ、本編で、その辺りの話はちゃんと書きますが……、

 一応「Heart to Heart × Leaf Another Story」は、これで一区切りとさせていただきます。

 とはいっても、本宮とエリア・フランを絡ませてみるのも、
面白そうなので、第二部という形で多分この企画は続けると思います。

 その時は……STEVENさん、今後ともよろしくお願いします。(何)

 それでは、今後とも「学園の図書室」、並びに「ILLUSIONISTS」をよろしくお願いいたします。


<コメント>

誠 「…………」(−−メ
あかね 「ま、まーくん……、
      なんだか、ご機嫌斜めだね?」(^_^;
誠 「いや、まあ……、
   正直なところ、納得できないところもあってさ」(−−メ
さくら 「そうですね……、
     本宮さんは、女の子の気持ちを、まるで無視してると思います」(−o−)
フラン 「理緒さんを守るため、ですか……、
     そう想うのなら、本宮さんがするべきことは、力を求める事ではありません」(−o−)
エリア 「剣を捨てること――
     それこそが、理緒さんを安心させてあげられる事ではないでしょうか?」(−o−)
誠 「やっぱり、そう思うよな……、
   まあ、俺達の価値観を押し付ける気は無いけどさ」(−−ゞ
浩之 「……じゃあ、お前ならどうする?」(・_・?
誠 「情けない話だけど、仲間を頼る。
   俺一人で出来ることなんて、たかが知れてるし……、
   って、口にするのは簡単か……、
   どうも、男って奴は、そ〜ゆ〜面では意地っ張りだからな」(−−ゞ
ルミラ 「分かってるなら、それで良いと思うわよ……、
     男としての誇りも大切なのは分かるけど、
     待ってる身としては、どんなに惨めでも、無事に帰って来てくれる事が一番だもの。
     頼れる誰かがいるのなら、一人で背負い込む必要は無いわ。
     彼は、個人として力を持ち過ぎてる……、
     それ故に、誰かに頼ることを、他人との関わりを極力避けてるようにも見えるわ。
     早く、そのことに気付いてくれれば良いんだけど……、
     このままじゃ、あの子、いつか破滅するわよ。
     まあ、自覚はしていると思うけど……、
     ふう〜、やっぱり、男の子よね〜……」ヽ( ´ー`)ノ
浩之 「……耳が痛いな」(^_^;
誠 「まったくだ……」(^_^;