[前書き]

 この作品は、「Leaf Another Story」とのクロスオーバー作品です。
 「Leaf Another Story」については、ここを参照。







 さて、俺はいつも通り、屋上で昼食を食べている。

 もちろん、さくらとあかねも一緒にだ。

「よう、藤井誠」

「こんにちは、藤井君。
園村さんと河合さんも。こんにちは〜」

 そこに、本宮さんと理緒さんが同席してくる。

 最近、確立された、新しい昼食のスタイルだ。

「ところで、藤井誠。俺一つ気になった事があるんだけど……」

「何ですか?」





「お前って……誰と結婚するんだ?」






Heart to Heart
×
Leaf Another Story

5th Element 「恋人」







「も、本宮さん……いきなり何を言ってるんですか!?」

 本宮さんから出された、
唐突で、突拍子も無い話題に、俺は戸惑いを隠せない。

「まぁ、御託はいいからさ。
取り敢えず、お前の思うところを答えてみろよ」

 両脇に目をやってみれば、
さくらとあかねは、何か期待したような瞳で俺を見つめている。

 うぅ、こりゃ責任重大だぞ。

「そりゃ……さくらとあかね、両方に決まってるじゃないですか。
今更、どちらかなんて選べませんよ」

「まーく〜んっ!」

「嬉しいですぅっ!」

「――おわっ!」

 いきなり、二人の少女に抱き付かれた俺は、
堪らず、バランスを崩し後ろに倒れてしまう。

 どちらか一人ならともかく、二人一度に来られるとちょっと辛いぞ。

 だが、肝心の本宮さんはというと……、

「…………」

 そんな俺達の様子を、
やれやれ、といった瞳で見つめているだけだった。

「何ですか、本宮さん……、
いかにも、何か言いたげな目をしていますけど」

「まぁ、藤井誠の言う事も間違っちゃいないんだけどな……」

 そう言うと、本宮さんは、
顔を上げ、真っ直ぐに俺を見た。

「ここは日本だという事は、知ってるよな?」

「当たり前じゃないですか……何が言いたいんです?」

「現行の日本の法律じゃ、重婚は出来ないって事だよ」

 あ、そうか……、

「そ、それじゃあ……、
私達はまーくんと結婚できないって事なんですか?」

「やだよぅ……あたし、まーくんとずっと一緒にいたいよ!」

 さくらとあかねは、懇願するかのごとく俺に強くしがみついてくる。

 俺だってその気持ちは同じだ。
 でも……こればっかりは、俺一人ではどうしようもない。

「も……本宮さん!
何も、今、こんな話をしなくても良いでしょう!」

 俺はやり場の無い怒りを覚え、
取り敢えず、本宮さんに反論する。

 だが……それを聞いた本宮さんの反応は、いたって冷静だった。

「確かに今、こんな事を話す必要性は無いかもしれない。
でも、それは問題を先送りしているだけで、
いずれは、必ず直面しなければならない問題なんだ。
だから……藤井誠の、はっきりした答えを聞いておきたいと思ったんだよ。
……まぁ、返ってきた答えは予想通りだったけどな」

「も、本宮くん……」

 さすがに、本宮さんの言い方に非があると悟ったのだろう、
 理緒さんが、本宮さんを何とか諌めようとする。

 だが、理緒さんが次の言葉を言うよりも早く――

「まぁ、俺の場合は一人なんだから問題無いけどな……」

 本宮さんはそう言って、理緒さんの肩を抱き寄せた。

「あっ……」(ぽっ☆)

 その本宮さんの行動に、
たちまち、理緒さんは顔を真っ赤にさせる。

 ……はいはい、ご馳走様。

 それにしても……、
 日本の法律では重婚は無理、か……、

 俺は……さくらとあかねに対して、何が出来るだろう?








「はぁ……」

 溜息と共に、俺は、
リビングにあるソファーになだれ込んだ。

 あれから、本宮さんの言葉が、
頭を回って、結局、勉強は手につかなかった。

 隣に座るさくらやあかねを垣間見ても……、
 どうやら俺と同じ心境だったらしく、二人の授業ノートは真っ白だった。

 まぁ、俺の場合は、普段、真面目に、
授業を聞いているかと聞かれると少し返答に困る部分はあるけどな。

 それにしても……結婚か。

 俺も学校を卒業すれば、大学に行って、社会人になって……、

 さくらやあかねと、結婚する時は、必ず来るだろう。

 その時、俺は、今まで通りに、
さくらやあかねに接する事が出来るだろうか?

 どうしようもないダメ人間になってないだろうか?

 さくらやあかねが、俺に愛想を尽かして、
他の男について行ったりはしないだろうか?

「…………」

 考えてみれば、さくらやあかねにとってはそれが一番幸せなような気がする。

 俺なんかを取り合って……、
 法律まで犯さなくても、俺より格好良い男なんてのは、世の中にたくさんいるはずだ。

 法律というリスクを犯してまで、
付き合うほどの価値は、俺には無いと思う。








 でも――

 ここに、さくらやあかねがいたら、きっとこう言うに違いないな――








「そんな事は、決してありませんよ」

「あたし達が好きなのは、まーくんだけだから」








 夢を……、
 夢を見ているのか?

 さくらとあかねの姿が、目の前に……、








 夢でも良い。
 現実でも良い。

 俺は、彼女達がそこにいる事が嬉しかったから……、








 だから、抱きしめた――








「……夢にしちゃ、感触がリアルだな?」

「まーくん……少し苦しいです」(汗)

「でも、まーくんの体……あったかいよ……」


「おわあああぁぁぁっ!?」


 俺は身を反り返らせ、
それこそ、光速の早さで、さくらとあかねから飛び退いた。


「うみゃ? まーくん、どうしたの?」

「あ、あの……私なら平気ですから、続きを……」(ぽっ☆)

「さ、さくら! あかね!
何でお前達が、
ここにいるんだっ!?」



 いや、現実でも良いとは言ったけど……

 まさか、マジで現実とは思ってなかったぞ、おい!


「そ、それはその……」

「あたし達も、本宮さんの言葉……、
頭から離れなかったから……」


「あ……」








 それから、さくらとあかねは、俺に事情を話してくれた。

 俺と同じように、昼間の本宮さんの言葉が頭から離れなかった事。
 帰った後も、どうしようもない不安に駆られていた事。

 そして……、

 鉢合わせたかのように、
俺の家の玄関で、二人が出会った事。

「一人でいると、不安になって……
いつもは、あんなに近くに感じられるまーくんなのに、
今日に限ってまーくんを凄く遠い存在に感じて……」


「それで、まーくんの家に行ったらまーくんがいるから……、
きっと、まーくんに慰めてもらえると思ったから……、
まーくんなら、この不安をかき消してくれると思ったから……」


 二人の申し出に、俺は少し目頭が熱くなる。

 俺も、どうしようもなく不安だった。
 それでも二人は、俺を想って……こうして会いにまで来てくれた。

 だから……もう迷う事は無い。


 なでなで……

 なでなで……



「……あっ」(ぽっ☆)

「はにゃ〜……」(ぽっ☆)

 俺に頭を撫でられ、
頬を赤く染めるさくらとあかね。

「俺には……さくらとあかねを両方幸せにしてやれる自信なんて、ない。
でも、それでも……さくらとあかねが俺を好きだと言ってくれるのなら……
俺と一緒にいる事に幸せを感じる事が出来るのなら、
俺は、お前達が幸せになるための努力は惜しまないつもりだ」

「「まーくん……」」

 上気した二人の声が、綺麗に重なる。

「幸せになるカタチ……『結婚』っていうのも一つのカタチだと思うけど、
ほら……幸せのカタチって、一つじゃないだろ?
俺達がみんな一緒に結婚できたら、それはそれで幸せだと思うけど……、
さくらと、あかねと……その……俺達の子供とさ。
一緒に一つの家で暮らす事だって、それも一つの幸せのカタチだと思うんだ。
別に手続きなんかいらない。俺達が夫婦だと思っていれば、それで良いんだから――」

 うわ――

 何、俺、調子に乗って、
恥ずかしい台詞連発してんだっ!


「まーくんっ!」

「うみゃああぁぁんっ!」


 俺の言葉を聞き終えると、
二人は堰を切ったように俺にしがみついてきた。

 俺は、そんな二人に、余計な心配はかけまいと、優しく頭を撫でる。

 焦る事は無い。

 俺達は俺達らしく、
ゆっくり歩んでいくのが一番と思うから……、








 その様子を、藤井家の玄関のドアにもたれかかって感じ取る人間が一人。

「やれやれ……この分なら、
わざわざ、俺が謝りに行くまでも無かったかな」

 その男は帽子を深く被り直すと、
彼の愛する人の待つ家へ歩み始めたのだった……、








「ところで……やっぱり結婚してないのに苗字が変わるのって、おかしいよな……」

「私達は、そんな事気にしませんよ?」

「――うみゃ!」

「い、いや……俺達が気にしなくても、世間がな……」

「その時は、私達が愛の力で……」

「総理大臣になって、日本の法律を変えちゃうよ!」








 あっ、何か今……、

 『愛の力』ってあたりで、
凄く納得してしまった自分がいる。







5th Element…END


[後書きのコーナー]

 はい、(作者の)本宮です。
 「Heart to Heart × Leaf Another Story Vol.5」、いかがでしたでしょうか?

 今回は、できるだけギャグ要素は少なめにして
 HtH2ndに続く矛盾点を突き詰めてみました。

 実はこの話、「Heart to Heart」のAnother Storyを書く辺りで一番最初に思い付いた話です。

 というのも……本編では、誠君はお馴染みのさくらやあかねに加え、
エリアやフランまでも自らの取り巻きに加えているのですから、
当然、この話のような矛盾が発生しても、おかしくはないはずです。

 一応、考えていた当初は、エリアとフランもいて……、

「エリアとフランには戸籍がないから問題外にして……」

 とか、誠君がいきなり冒頭で磔にされて……、

誠「状況を説明しろーーーっ!」

 と言われて誠君争奪戦が、
展開されるとか、そういうのを考えていたんですけどね。

 取り敢えず、冒頭で登場する、本宮の代役を浩之にして
単純なHtHの二次創作で送ろうかな……とか考えていましたが、
浩之はキャラ的には合いそうにないですしね。

 更に、この「HtH×LAS」の期間が、LAS本編の関係で、
誠君が入学する4月〜夏休み(HtH第二部、もしくはLF'97前)までという事で、
結果的に、エリアとフランには登場頂けません。

 まぁ、第二部が(もし)ある場合は、
エリアとフランも登場させる事になると思いますが。

 何だか今回は長々と書いてしまいました。
 それでは、次回をお楽しみに〜。


<コメント>

さくら 「――いうわけで、民法を改正してみました」(−o−)
誠 「おいおい、マジかっ!
   本気で、その為に政治に足突っ込むか!?」Σ( ̄□ ̄)
あかね 「愛の力の前では、どんな権力も無力なんだよ〜」(^〜^)v
誠 「一体、どうやって……」(−−?
さくら 「具体的に解説しましょうか?」(^_^)
誠 「なんか、怖いから、別にいい……、
   しかし、こんな法律、俺達以外に使う奴いるのかね?」(−−ゞ
あかね 「いると思うよ〜」(−o−)
さくら 「そうですね〜……、
     しかも、割りと身近に……」(−o−)

 一方、水瀬家――

祐一 「ぶえっくしっ!!」(><)
名雪 「どうしたの、祐一……風邪?」(・_・?
あゆ 「体は大事にしなきゃダメだよ、祐一君」(^_^)
名雪 「そうだお〜……、
     祐一は、もう、一人だけの体じゃないんだから……」(*^_^*)
祐一 「お、おう……」(*−−*)