[前書き]

 この作品は、「Leaf Another Story」とのクロスオーバー作品です。
 「Leaf Another Story」については、ここを参照。







「河合さん……今日、河合さんの家に行って良いかな?」

「う、うみゃ……、
でも、あたしにはまーくんが……」

「そんな事は関係ないじゃないか……それに仕方ないだろ?」

「そ、そういう事なら仕方ないよね……じゃあ……」





「何をやっとるかーーーーっ!!」

 ズガガガガガガガガガッ!!






Heart to Heart
×
Leaf Another Story

4th Children 「母親」







 冒頭からの妖しい展開に、
俺は、容赦なく、マシンガンをぶっ放す。

 しかし、本宮さんは軌道を見切り、素早く身をかわす!

「やれやれ……危ないじゃないか、藤井誠」

「この状況で、危なくないはずがあるかっ!」

 血管が切れそうになっている俺に対して、冷静に対処する本宮さん。

 いつもは余裕たっぷりの表情が、
羨ましいのだが、今回ばかりは逆に腹立たしい。

「まーくん、違うの! 落ち着いて!」

「――へ?」

 あかねの呼び掛けで、ハッと我に帰る俺。

「違うって……何が違うんだよ?」

「えーとね……順を追って説明するから、よく聞いてね」

 そう言うとあかねは、
少したどたどしい口調ながらも、事のあらましを話し始めた。



 ――話は数日前に遡る。

 本宮さんは、知り合いの、
北川さんに「画集を買ってきてくれ」と頼まれた。

 どうやら北川さんの住んでいる地域では、売っていなかったらしい。

 そこで、本宮さんの住んでいる、
東鳩市近辺でも探してほしい、という訳だ。

 当然、本宮さんも探し回った……が、見つからない。

 そんな時、あかねの家が、
本屋だと知り、足を運んでみようと思った。

 しかし、今日は店休日だったらしく、シャッターは下りたまま。

 そこで、あかねに頼んで、
本の在庫を確認させてもらおう、と……冒頭の台詞があった訳だ。

「す、すみません……」

 事情を聞いた俺は、先ず第一に本宮さんに謝った。

 いくら、俺の勘違いとはいえ……、
 人に向けて、マシンガンをぶっ放して良い理由にはならない。

 もちろん、例外はあるけど……、

 しかし、本宮さんは、そんな俺の行動を一蹴した。

「はっはっはっ、勘違いなんて誰にでもあるものさ。
でも、藤井誠、お前はよく園村さんや河合さんに突っ込まれる時に、
『人の話を聞けぇぇぇ――――――っ!!』なんて言ってるみたいだけど……、
お前がそんな調子じゃ、人の事はあまり言えた義理じゃないな」

 うっ……、
 痛い所を突かれてしまった。

 しかし、本宮さんは、フォローを忘れない。

「まぁ、それだけ河合さんの事を、
大事に思ってるって事の裏返しだからな……、
気持ちは分からないでもないさ。
河合さん、こういう事は誇って良いぞ」

「う、うみゃ〜……」(ぽっ☆)

 本宮さんの言葉に、
あかねは、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 その仕草も、また可愛いなぁ〜……じゃなくて……、

(それに、理緒ちゃんがいるのに浮気なんてとんでもない……)

「――ん?」

 本宮さんが小さく呟いた言葉を、俺は聞き逃さなかった。

「理緒さんがいるのに、って……、
本宮さん、理緒さんと何かあったんですか?」

「――うっ」

 俺の言葉に本宮さんは、焦りを隠しきれない。
 いつもの本宮さんらしくない行動だ。

「べ、別に良いだろう。そんな事」

「良くはないですよ。気になります」

 明らかに、表情に焦りが見える本宮さんに、詰め寄る俺。
 いつも余裕綽々の本宮さんだからこそ、その理由が気になる。

 やがて本宮さんはやれやれと肩を竦めると……、

「分かった分かった、話すよ……と言ってもここは場所が悪い。
別の場所で話すから、そこまで我慢してくれ」

「は、はぁ……」

 本宮さんの提案に、俺は渋々了承した。

 何だかんだ言って本宮さんって、割と嘘つかないからな。
 この提案は呑んで良いだろう。

「それじゃあ行こうか、河合さん」

「――うん」

 本宮さんはあかねを引き連れて歩き出す。

 どうやらその足で、
河合書店に向かうつもりなのだろう。

「あ、待った。本宮さん」

「――ん?」

 行こうとした本宮さんを、俺は呼び止める。

「俺も一緒に行――」

 だが、俺の喉まで出掛かった言葉は、そこで中断された。

 確かに、どんなハプニングが、
起こるか分からない以上、あかねと一緒に行動するのが得策だろう。

 だが……考えてほしい。

 河合書店に行く、という事は、
確実に、あやめさんに出会うという訳で……、

 はっきり言って、今の俺に、そんな虎穴に入るような真似はご遠慮願いたい。

 でも、あかねの事は心配だし……、

「――俺も一緒に行きますよ」

「そうか……」

 考えた結果、俺も一緒に行く事にした。

 まぁ、俺とあかねの二人っきりの状態ならともかく……、
 あやめさんにとっては初対面の本宮さんが一緒にいるんだ。

 妖しい雰囲気になるような事は、まず無いと考えて良いだろう。

 あっ、何だか、そう考えると、気が楽になってきた……、

「何やってんだ、藤井誠? 行くのならさっさと行こうぜ」

「あ、すみません」

 本宮さんに促され、俺は歩みを少し速める。

 その時――

「あら? まーくん、あかねちゃん? それに、本宮さん?
三人揃って、何処に向かわれるんですか?」









 結局――

 俺達は、さくらを含め、
四人で河合書店に足を運んだ。

「さぁさぁ、どうぞどうぞ〜☆」

「お邪魔しま〜す」

 あかねに先導され、俺達は家の奥に入る。

「あかね、お帰り〜。誰か来てるの……って、
誠君じゃな〜い☆

 玄関先で迎えてくれた、
妙に甘ったるい声に、俺は背中に少し戦慄を覚える。

「なぁ藤井誠、この人は……?」

 その態度の豹変っぷりに、本宮さんも少し引いているようだ。

「あ、あぁ……この人は河合 あやめさん。あかねの母親だよ」

「あら? 今日は見なれない人が混じってるわね?
あかねが誠君以外の男の人を連れて来るなんて、珍しいわね」

 そこまで聞いて、あやめさんは、
初めて俺達の輪の中に、本宮さんがいるのに気がついたようだ。

「うみゃ、そんなんじゃないもん!」

 あやめさんの言葉に、
あかねは、たちまち頬を膨らませる。

「あ、初めまして。本宮 利幸と申します。
ここ二ヶ月くらい前に東鳩市に引っ越して来て……、
誠君達とは友達なんです。
今日はちょっと、頼まれた本を探しに来たんですよ」

 そんなあかねを察してか、
本宮さんはすかさず自己紹介する。

 何と言うか、一朝一夕の長があって……さすがだな。

「本を頼まれたの?」

「はい。それで、今日は、
朝に通りかかったら河合書店が店休日だったみたいで……、
それで、あかねさんを通して、足を運んだという訳ですよ」

「それじゃあ本宮君、在庫を確認するから……、
一緒に来てもらえないかしら?」

「分かりました」

 あやめさんの言葉に応じ、
本宮さんは一階の書店部分の方に消えていく。

 俺がそんな状況だったら即座に逃げ出すが……、
 まぁ、本宮さんの事だ、まず心配はいらないだろう。

「それじゃあまーくん、私達は上がって待とうよ」

「そうだな……それじゃ、お邪魔します」

 俺達は、あかねに通され、リビングの方に足を運んだ。

「さて、本宮さんの事だけど……どう思う?」

 俺がリビングについて、
一番最初に切り出した話題はそれだった。

「本宮さんが、どうなさったんですか?」

 事情を知らないさくらが、首を傾げる。

「あぁそうか、さくらは知らないんだったな……今日の放課後に……」

 俺は、今日の放課後に起こった事を、分かりやすく説明した。

「そういう事があったんですか……」

「――うむ」

 事を理解し納得したさくらを前に、俺は腕組みをして大きく頷く。

「でも、珍しいですよね?
まーくんが、他の男の人の関係の事を気にかけるなんて……」

「そうだよね〜」

 さくらの提案に、あかねもうんうんと首を縦に振る。

「確かに、この事が浩之の事だったら、
俺もあまり気にかけないかもしれない。
でも、普段情報が何も無い本宮さんだからこそ気になるんだよ。
ましてや、そんな本宮さんが焦るような事なんだぜ?
気にしないはずがあるものか」

「う、う〜ん……そう言われると確かに……」

 俺の意見に、さくらは疑問を残しながらも賛同してくれる。

「でも……本宮さんって、
他の女の子と一緒にいるのも結構見るよな?」

 俺のその意見を皮切りに、
俺達は全員で、本宮さんの目撃情報を語り合った。

「まぁ、一番隣にいる確率が多いのは理緒さんなんだけど……」

「琴音ちゃんも、結構、
本宮さんに接近してますね」


「格闘技同好会で、葵ちゃんと一緒に練習してるのも結構見るよ」

「じゃあ、綾香さんとセリオさんと一緒にいるのを見た事があるけど……、
あれはそれ繋がりかな」


「芹香さんの魔術のお手伝いもしていましたね」

「二年の……坂下先輩だっけ?
あの人も本宮さんの事を観察してるような……」


「本宮さんって、意外と手広いな……」

「しかも、その方達との噂は聞きませんから……
余程、強力な情報規制を敷いているのか、それとも……」


「あとは……浩之さんに押し付けてるか、だね」

「でも、良いんでしょうか? 本宮さんのこんな話して……」

「そうだなー、噂話はあまり誇れるものじゃないな」


 びくぅっ!


 部屋の入り口には、
いつからだろうか……本宮さんが佇んでいた。

「も、本宮さん……本は?」

 俺は恐る恐る後ろを向きながら尋ねる。

「在庫確認終わって、今、発注してもらってるよ」

「そ、それで……どの当たりから聞いてらしたんですか?」

「全部って訳じゃないけど、藤井誠が、
『でも……本宮さんって、他の女の子と一緒にいるのも結構見るよな?』って言った辺りから」

 ――ぐはっ!

 それって、聞かれたら、
ヤバい辺りから全部じゃないか!

「まぁ、藤井誠達は口は堅い方だと思うから、言いふらしたりはしないと思うけどよ……」

 そう言うと本宮さんは、
俺と向かい合うように腰を下ろした。

 本宮さんがこんな性格で、助かった……、

「ちなみに俺達がそんな口が堅くない性格だったら……どうするんですか?」

 聞く事に恐怖はあったものの、
好奇心の方が勝っていた俺は、本宮さんにその事を尋ねてみた。

「ん? 取り敢えず俺はそんな奴は信用しないけど……、
そうだな、電波でちょっと記憶を削るくらいはさせてもらうかな」

 本宮さんの言葉に、俺は身震いを隠せない。

 あぁ……、
 本宮さんに信用されてて良かった……、

「それはそうと本宮さん、ここなら邪魔も入らないし、
そろそろ、放課後の事を話しても良いんじゃないですか?」

 体勢が悪くなった俺は、話題を逸らす。
 すると、本宮さんは顔を真っ赤にさせながら。

「わっ……分かった分かった。
本当は、あまり言いたくはないんだけどな……、
ちなみに、簡単に口外したらもれなく電波だ。その辺よく覚えておけよ」

 俺達は本宮さんの言葉に、少し寒気を覚えながらも頷く。

 そして、本宮さんは一息つくと……、



「実は俺……理緒ちゃんと付き合ってるんだよ」



 以前から、理緒さんに対する自分の気持ちには気付いていた本宮さん。

 しかし、理緒さんが、浩之を想っている事を知っている以上、
本宮さんは、その気持ちを決して表に出すまいと決心していた。

 無論、浩之はあかりさんを第一に想っている事も知っていたらしく……、

 いや、だからこそ……、
 理緒さんにはその事実を告げられないでいた。

 そんな折、理緒さんは、
浩之があかりさんと付き合っている事を自らの目で知ってしまう。

 落ち込む理緒さんに対して、本宮さんは慰める事が出来なかった。

 それが災いしてか……、

 魂が抜けたようになっていた理緒さんは、
本宮さんが目を離した隙にふらりと外に出ていってしまう。

 行く当ても無く、ただ街をさまよう理緒さん。

 ある横断歩道に差し掛かった時、
理緒さんは赤信号に気付かず、そのまま歩き出してしまう。

 運命は理緒さんを嘲笑うかのごとく、そこに20tトラックが通りかかる!

 トラックは勢いを止める事が出来ず、
理緒さんは、絶体絶命のピンチを迎える!

 ――そんな時、間一髪で、本宮さんが助けに入った。

 怪我もなく、本宮さんのおかげで無事に生還できた理緒さん。

 本宮さんはその時、
自分の素直な気持ちを理緒さんに伝えた。

 理緒さんはそれを快く承諾し、晴れて二人は付き合う事になった……という事だった。

「……とまぁ、こんな事があったんだ」

「じゃあ……」

 俺は本宮さんの話で、とある事を思い出していた。

「本宮さんの話の翌日……帰る途中で見つけたんですけど、
大通り辺りの歩道一部分に大仰な穴が開いていたのって……」

「あぁ、そりゃ多分俺だ。理緒ちゃんを助けようとして、勢い良く踏み込んだからな」

 踏み込んだだけで、あんな穴が開くなんて……、
 本宮さん、あなたは一体何者なんですか?(汗)

「でも……」

 本宮さんの言った事を元に、少し想像してみる。

 何と言うか、浩之の隣にいるのは、
あかりさんが一番似合っているように……、

 本宮さんには理緒さんが一番似合うような気がする。

 『重すぎる責任だけど、それでも背負っていく』――

 と言った、本宮さんの事だ、
そう簡単に理緒さんを悲しませるような真似はしないだろう。

「それじゃあ用事も済んだ事だし、俺は帰るよ。
藤井誠達は、まだゆっくりしていくかい?」

「あぁ、それじゃあ俺も……」

 帰る、と言おうとして、俺は口篭もった。

 何故なら、隣であかねが「えぇ〜、もう帰っちゃうの〜?」と言いたげな
潤んだ瞳で俺を見つめていたから……、

「はは、聞くだけ無駄だったかな。
それじゃあ、藤井誠も、早く、園村さんや河合さんの気持ちに応えてやれよ〜」

「なっ……」

 手をヒラヒラと振ると、
本宮さんは、俺の言葉を待たずに部屋を出ていった。

 ――何となく、間の悪い沈黙に囚われる俺達。

「あの……」

 そんな沈黙を破ったのは、さくらだった。

「私達……その……まーくんさえよければ、いつでも……」

「あたしも……」

 さくらの言葉に、すぐにあかねも賛同する。

「お、おいおい……俺達はまだ、そんな……」

 何だかヤバそうな展開に、俺は反射的に身構える。
 だが、俺は、そんな考えを改め直すと……、

「――あっ」

「――うみゃ」

「二人とも……焦る必要はないよ。そういう時って自然に来るもんだろ?
少なくとも俺はそう思ってるけど……だから、結果は急がないでほしい。
二人の期待に応えられるような人間に、なってみせるからさ……」

 俺は、出来るだけ優しい口調で、二人の頭を撫でる。

「はふぅ……」

「うみゃ〜ん♪」

 良かった……、
 二人とも、落ち着いてくれたみたいだ。

 さぁ〜て、課題もあるし……そろそろ帰ろうかな。

 だが、運命の神様は、
これでもか、というくらいに俺を弄ぶ。

「はい、お茶と羊羹持ってきたわよ……って、あれ? 本宮君は?」

 本宮さんと入れ違いのようなタイミングで、あやめさんが入ってくる。

「あ、あぁ……本宮さんなら、今さっき帰りましたよ」

「ん〜、残念。せっかく羊羹五人分切ってきたのに」

 羊羹と聞いては、
俺の体が反応しないはずが無い。

「あ、良いですよ。俺が本宮さんの分まで頂きますから」

「ふふ、誠君ならそう言うと思ったわ。でも!」

 あやめさんは何を思ったか、素早く羊羹を一つ口に含み……、


「――ん☆」


「…………」(大汗)

「…………」(汗)

「…………」(汗)

 無駄な事とは分かっていても、一応、質問してみる。

「あ、あの……あやめさん、何を……?」

「くひうふひ(口移し)♪」

「…………」(滝汗)

「…………」(大汗)

「…………」(大汗)








「藤井 誠!
飛っびまぁぁぁぁーーーすっ!」



 ガシャアアアァァァンッ!!








「もう、お母さん!」

「ごめんごめ〜ん、
あまりに誠君が可愛かったもんだから、つい……」


「つい、じゃな〜い!」








4th Children…END


[後書きのコーナー]

 はい、(作者の)本宮です。
 「Heart to Heart × Leaf Another Story Vol.4」、いかがでしたでしょうか?

 今回のテーマは、ズバリ――
 「本宮と人妻ズを絡ませたらどうなるか?」です。

 はい、大して絡んでませんね。すみません。

 いや〜、あまり行きすぎた描写をすると、
本宮が誠君と、同じ状況に陥ってしまう可能性があるので……、

 それでは、次回をお楽しみに〜。


<コメント>

誠 「そういえば……、
   あかねの家って、本屋だったんだよな」(^_^;
あかね 「うみゃ……まーくん、忘れてたの?」(;_;)
誠 「いや、だってさ……、
   HtH本編では、一度も使われてない設定だし……」(^_^;
あかね 「そういえば、そうだよね……」(−−;
誠 「一体、どういうつもりで、こんな設定にしたのやら……」(−−?

STEVEN 「うん? 忘れちゃった♪」(^▽^ゞ

あかね 「…………」(−−;
誠 「…………」(−−;