Heart to Heart 外伝

    
おおものが釣れるとき







 みゃ〜みゃ〜。 ←海猫


 ぽぽぽぽぽ・・・。 ←船の音


「全然釣れないね〜」

 海面上に浮いている浮きを見つめながら、私は言います。

「ピクリともしませんね・・・」

 エリアさんが、私の隣で同じようなことを言います。

「うにゃ〜」

 すでに半分ネコさんモードになっているあかねちゃんは、
まーくんの背中にもたれながら水平線を見ています。


 春休みの中間に差し掛かっている今日。
 ラフな格好している私達が、何処にいるのかっていうと・・・。
 ここまで書けば判りきっていると思いますが、海に来ています。

 理由は、食料調達・・・。

 まーくんが最近嵩んできた食費を少しでも浮かせたいという話を持ちかけましたので、
それなら魚を釣って浮かせばいいのではないか? と、いう、案が出て、
今に至っているのですが・・・。


 ここ数時間、全然釣れていません・・・。


 まーくんが言うには、『諦めないで、ジッと待つのが釣りだ』らしいですけど・・・。

 私にはよく判りません・・・。
 私はそう思いながら、小さく伸びをします。

 しかし、いい天気ですね・・・。
 今日は日本晴れで、周りの景色がが見渡す限り青空です。
 何か、こうのどかですと、ウトウトと眠くなってしまいますね。

「なぁ、お前はそうやって見ているのも暇だろ?」

 不意にまーくんがそんなことを言います。

「えっ? そんなことないですよ」

 欠伸を噛み殺しなから、私は慌てて言います。

「そうですよ、こうやってゆったりと景色を見ているのもいいと思いますよ」

「うにゃ〜、うにゃ〜」

 それに続いて、あかねちゃんとエリアさんも答えます。
 もっとも、あかねちゃんは『答える』にはなってませんでしたが・・・。

「いや、暇そうにしていたからさ。
もし、暇なら、お前達も釣りをやってみたらどうかなってね」

「私達・・・ですか・・・?」

 目をキョトンとさせながら、私は言います。

「私、やったことありませんから、できるかどうか・・・」

 エリアさんも自分が釣りをやるのには、ちょっと躊躇っています。

「なぁに、そんなに難しく考える事なんてないよ。それに、見るよりもやっている方が楽しいぞ」

 そう言って、まーくんのポケットから取り出すのは、3本の釣り竿・・・。
 って、釣り竿!?

「まーくん・・・聞きたいことが・・・」

「何? さくら」

「それ・・・釣り竿ですよね?」

「そうだが?」

「何で、ポケットから出て来るんですか・・・?

「あぁ、これな・・・。この前、俺の家に千鶴さんが来て、その時忘れていったやつだ。
連絡したら、持っていてくれって言うんで、しばらくの間使わせて貰っているんだ・・・。
便利だぞ・・・、クーラーボックスもここに入っているし・・・」

「そ、そうなの・・・?」

 遠い目をしながら語るまーくんに私はそう答えるしかありませんでした。

 いったい・・・、その時に何が遭ったのかな・・・?
 それ以前に、そのポケットはどんな構造しているの・・・?

 知りたいけど、聞かない方がいいと思う・・・。










「えっ! ええっ!?」

 まーくんが餌を付けようとするとき、私は素っ頓狂な声をあげます。

 だって、まーくんが私達の釣り針に付けようとしているモノが・・・。。
 その手に握られているのが・・・。

 そんな私を、ビックリした顔で見ているまーくん。

「どうしたんだ? いきなり大きい声で・・・」

「だ、だって、それ・・・」

 私はそのモノを指差します。

「えっ? あぁ、これのことか? 魚は生き餌のほうが釣れるからな!」

 そう言ってまーくんが小さな入れ物から見せてくれたのは、ウネウネと蠢くミミズ・・・.。

「きっ、気持ち悪いよ〜、まーくん!」

「わ、私もちょっと・・・」

「うにゃ〜」

 私達3人は、ちょっとイヤそうな顔をしてそのミミズを見つめます。

「別に、ただのエサだろ? こんなもの・・・」

 そう言うと、まーくんをさっさと針を刺すと、竿を私達に渡しました。
 2人とも躊躇いながらも、その竿を受け取ります。

「ほら、さくらも・・・」

「うぐっ」

 私も渡される釣り竿を私は躊躇して、手を差し出すのを止めます。

「ね、ねぇ、まーくん。そ、そういうのじゃないのがいいな。
ほら、よく売っている餌とか・・・」

「駄目。こういうほうがアタリがいいんだから・・・」

「うぅ〜」

 私のお願いはあっさり却下され、仕方なくそのまま自分の竿を使うように言いました。
 別に餌を付けるのは、まーくんがやってくれたのでいいんですけど・・・。

 やっぱりヤですぅ・・・。(涙)
 針のところで、ウネウネしてますぅ!(涙)

 ――でも、投げ方を教えてくれる時に、
少しまーくんが抱っこしてくれる形になったからいいかな♪

 えへへ〜、まーくんの身体、暖かかった♪










 ヘロヘロ〜・・・・・・ポチャン!

 教えて貰ったことを思い出して、頑張って投げてみましたが、あまり遠くまで飛びませんでした。

「ははは、まぁ、初めはそうだよ」

 まーくんが笑いながら答えます。
 そして、まーくんも餌を捕られた自分の竿に餌を付けると、素早く竿をく投げました。

 ブン!

 きれいなカーブを描いて飛んでいく釣り糸。
 そして、私とは比べられないほど遠くのほうにまで飛んでいきました。
 私はそれに見とれてしまいました。

「うにゃ〜、まーくんのほうが飛んでいます〜」
「上手ですね、誠さん。私もあのくらい頑張りませんと・・・」

 そういう2人はリールを巻いて、もう一度トライしようとします。

「あかね、エリア・・・遠投競争じゃねぇんだから、すぐに竿を上げるなよ」

「うにゃ〜」

「あっ! そうでしたね♪」

 そんな光景に、私達は苦笑してしまいました。


 ・・・。


 ・・・。


 三十分後――。

 ピクピク。

 みんなとおしゃべりしていた私の手に、いきなり振動が伝わってきます。

「えっ!? なになに?」

「さくら! リールを巻くんだ!」

「う、うん・・・」

 まーくんに言われた通り、リールを巻き上げると、そこには銀色に輝く細長いお魚が・・・。
 陸まで釣り上げた、私のお魚はピッチピッチと元気よく跳ねています。

「やったぁ〜! やったよ〜、まーくん!」

 私が糸を持って喜んでいると、私のところに駆け寄るまーくんとあかねちゃんとエリアさん。

「おぉ、いい形だな・・・やったな、さくら!」

「さくらちゃん、すごいです〜♪」

「すごいですね、さくらさん!」

「えへへ〜」

 みんなに誉められて、ちょっと照れてしまう。

「あたしも頑張らないと!」

 あかねちゃんがグッと力を込めて言います。
 そして、もう一度餌の付けた針を遠くに飛ばそうとしますが・・・。

「え〜〜い!!」

 ひゅん・・・・・・ぽちゃん・・・。

 しかし、まーくんよりも比べものにならないほど飛んでいないと豪語する私の、
半分以下しか飛んでいませんでした。

「うにゃ〜?」

「あはは・・・まぁ、頑張れ・・・」

 それを見てまーくんは、ただ空笑いをするだけでした――。


 ・・・。


 ・・・。


 それから二時間後――。

 小さいお魚が多いですが、私は5匹釣りました。
 あかねちゃんは、3匹。
 エリアさんは2匹。

 ・・・でも・・・。

 でも、まーくんの竿はピクリとも動きません。

「釣れないね、まーくん・・・」

「うん? まぁ、俺は鯛とか大物を狙っているからな」

 そう言うまーくんの顔は寂しそうな・・・でも、何かを待っている顔でした。

「おっ、あかね! 引いてるぞ!!」

「あっ、本当だ!!」

 すかさず、あかねちゃんがリールを巻きました。

「う〜ん! う〜ん!!」

 あかねちゃんは一生懸命にリールを巻きます。

 小柄であるあかねちゃんにとっては、
小さなお魚でも一生懸命巻かないとお魚に負けてしまうのです。

 そんなあかねちゃんは、お魚の力に負けずにリールを巻き続けます。

 ジージー。

 そして、徐々にあかねちゃんの巻くペースが早くなります。
 お魚さんのスタミナがなくなってきたのでしょうか?
 少しずつ少しずつあかねちゃんが巻いていく度に、
そのスタミナ切れになっているお魚の姿が見え始めました。
 そして、今までの一番大きいお魚が陸で跳ねました。

「やったぁ〜!! まーくん、やったよ〜♪」

 お魚を持ちながら大喜びするあかねちゃん。

「おっ! 結構でかいじゃないか! やったな、あかね!」

「うにゃ〜♪」

 まーくんに撫でられて、あかねちゃんが喜びます。
 ちょっと羨ましいけど、凄いです、あかねちゃん!

「すごいね〜、頑張ったね。あかねちゃん」

「本当、頑張りましたね」

「うにゃにゃ〜♪」

 私達も一緒に撫でると、目を細めて喜ぶあかねちゃん。
 うふふ、可愛いです・・・。










 みゃ〜みゃ〜。 ←海猫


 ぽぽぽぽぽ・・・。 ←船の音


 海猫の声も次第に聞こえなくなっていきます。
 周りの風景も、少しずつ赤みが深くなっていきました。

「暗くなってきたな・・・。そろそろ変える準備をするか・・・」

 まーくんが立ち上がって、私達に言います。

「結局、まーくん釣れなかったね」

「まあ、釣れないのも釣りっていうものだからな。しょうがねえよ」

 そう言って、私達に微笑みかけます。
 でも、その微笑みは何処か空笑いに感じました。

「まーくん・・・」

「誠さん・・・」

 あかねちゃんにエリアさんもそう感じたのか、心配そうにまーくんを見つめます。
 そんなまーくんは、周りの片付けを始めていました。

 やっぱり、寂しそうな顔でした。





 あぁ、神様。


 まーくんに釣らせて上げて下さい・・・。


 まーくんの寂しい顔・・・私見たくないです・・・。

 優しい、まーくんの笑顔、見ていたいです・・・。


 まーくんの笑顔、見せてください・・・。!





 私がそう願うと――。










 まーくんの竿がピクっと動きました――。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 そして、私達の町――。


 クーラーボックスの中には、11匹のお魚と目立つほど大きなお魚が1匹・・・。

「よかったね! まーくん♪」

 まーくんが最後の最後に釣れた大きなお魚を見て、私が言います。



 あの後、まーくんの釣り竿に大きなアタリが来ました。
 それは、まーくんが片付けをして、自分の釣り竿を巻こうとしたときでした。
 そのアタリの大きさは、私達の比ではありませんでした。

 まーくんも慌ててリールを巻きます。
 糸がピンと張り、今にも切れそうな感じでした。

 そして、10分の格闘の末・・・。

 戦いの敗者はまーくんのところに姿を現しました・・・。



「そうだな。みんなが頑張ってくれたお蔭かな?」

 照れくさそうに笑って、私達の頭を撫でてくれます。

「まーくん♪(ポッ)」

「にゃ〜♪(ポッ)」

「誠さん・・・(ポッ)」

 そして、私達もまーくんに微笑みかけます。

 よかったね、まーくん。
 やっぱり、まーくんの笑顔が一番だよ♪

「まさか、あそこで釣れると思わなかったからな」

 喜びの顔で、まーくんが言います。

「きっと神様のお蔭だよ」

 すると、私がそう答えました。

「神様ですか・・・?」

「そうですか〜?」

 あかねちゃんとエリアさんが、私に聞き返します。

「神様か・・・。そうだな、そうかもしれないな・・・」

 そう言って、私にニコッと微笑みました。

「じゃ、今日は神様にお礼として、魚づくしといくか!!」

「にゃ〜、おっさかなさん♪」

「ふふふ、腕によりをかけますね♪」

 嬉しそうに言う、あかねちゃんとエリアさん。




 そして、深い夕焼けの中、4人手を繋いで家へと帰っていきました・・・。




















 ありがとう、神様・・・。










おわり


あとがき

 どうも、ぴろりなのだ。
 STEVENさんの300000HIT記念SSなのだ!!
 おめでとうございますぅ〜♪

 前回同様”Heart To Heart”のSSなのだ。
 今回は、好きなさくらちゃんの視点から見たのどかな釣り風景です〜♪
 ちょうど書き始めた頃に117話ができたので、時間設定は春休みっていうことにしました♪

 本当は、ボクのオリキャラも出そうかなっていう悪巧みを考えちゃったりして・・・。(笑)

憂希「出すなよ!!」

 はうはう〜(涙)

 ではでは、これからも頑張ってください〜♪

小説作成日 2001/04/16


<コメント>

晴子 「…………(ジージージージー)」(^_^)
観鈴 「お母さん? 何してるの?」(・_・?
晴子 「何って……見ての通り、釣りや」( ̄ー ̄)/
観鈴 「釣りって……陸地でするものじゃないよ」(−−?
聖 「甘いな……陸地で出来る釣りというのもあるのだ」( ̄ー ̄)/
観鈴 「へー、そうなんだ〜……で、ちなみにエサは何使ってるの?」(^〇^)
晴子 「そうやな……今日はエビフライやな♪」\(^〇^)/
観鈴 「――へ?」(−−?
晴子 「おっ!! かかったでっ!!」( ̄ー ̄)


往人 「――っ!!(ジタバタジタバタ)」<(@〇@)>


観鈴 「ゆ、往人さん……」(^_^ゞ
晴子 「なんや、あんまピチピチしとらんな〜。このままリリースしたろか?」(−o−)
観鈴 「そ、そんなことしたらダメだよ〜!」\(@〇@)/
聖 「では、取り敢えず、さばいてみるか?(シャキーンッ)」( ̄ー ̄)
観鈴 「それもダメ〜! 往人さん、死んじゃう〜!」(T△T)


往人 「――っ!! ――っ!!(ジタバタジタバタ)」<(@〇@)>