陣九朗のバイト IN Heart to Heart

第四弾





「平和だね〜〜」

 俺はいつものように新聞に目を通し終わると一息ついた。
 台所からは、少し早めの昼食の匂いが漂ってくる。
 出来るまでもう少しかかりそうだな…
 俺は手じかにあった折り込みチラシに目をやった。



〜 ある日の大安売り 〜




「なにいいいい!!!!」

 チラシを手に、俺は思わず大声を上げていた。

「どうしました!?」
「な、なに!? どうしたの!?」

 俺の声を聞きつけ、チキとリーナが台所からとんでくる。
 リーナなんぞ、文字通り『飛んで』いる。

「二人とも聞いてくれ」

 俺は勤めて神妙な顔つきで二人に向き直る。

「はい…」
「うん、どしたの?」

 二人も、俺につられてか表情が一層引き締まる。

「実は……」
「………」
「………(ごくっ)」

『今日はスーパーの特売日なんだ!!』

「なんなんですかそれは!!!!!!」


 ごすごすっ!!!!!!


 チキが叫びながら『はたき』で俺の頭をたたく。
 ただのはたきにしては妙に音が鈍いが…ってちょっと待て、

「チキ、お前そのはたき、どっから出した?」
「ひみつです!!」

 チキ。ま、まさかあの能力が……、
 考えるのやめとこ。

「?????」

 リーナは理解していないときの顔をしている。
 いつものことだな。

「ま、二人ともこれを見ろ」

 俺はさっきまで見ていた折込チラシの1枚を二人に渡す。

「ええと…『数量無制限!! 安さ爆裂!!!』?」
「卵一パック50円!? キャベツ一玉80円!!?」
「日用雑貨オール60パーセントオフ!!?」
「ぜひ当店へお越しを!!?」

 最後のは驚かなくていいと思う。

「ってなわけだ。安いだろ?」
「はい…元は取れてるんでしょうか?」
「それは俺たちが心配することじゃない。それよりも大事なのは…」

 そう言って俺はチラシの一部を指差す。

「これが今日の3時までの限定だって事だな……あれっ? チキ?」

 顔を上げるとチキの姿がなかった。
 いつのまにかリーナの姿も見えない。

「さあ! 行きますよ、陣九朗さん!!」
「陣ちゃん行くよ〜」

 玄関先で俺を呼ぶ二人の声が聞こえた。
 その様子から準備は出来ているらしい。
 ……昼食は?



E  C  M



「ふっふっふっふ…勝利ぃ V」
「ここまで買い込むことなかったのでは?」
「陣ちゃん、重くないの?」

 並み居るおばはん連中を押しのけ、
 人ごみにつぶされそうになるパックの卵を守り、
 日用雑貨コーナーでは一人一つまでという洗剤を3人で2回並び…
 はっきり言って戦場だった。

 で、今は戦場からの帰り道。
 俺の両手は戦利品でいっぱいである。
 ちなみに、片手に7袋ほど抱えている。(力発動中)
 あ、卵とかの割れ物はチキとリーナに持ってもらっているけど。

「何を言うリーナ。洗剤やたわしやごみ袋なんかは腐らないんだから、
安いときに買い込むべきだろう?」
「限度があるよ… 大体あたしたち3人しかいないのにこれだけの洗剤やら…
使い終わるのにどれくらいかかるだろ?」
「う、ま、まあいいじゃないか。安かったんだし」

 ふだんぽえ〜っとしてるのに、どうしてこういうときだけ鋭いんだろう?

「しかし、食料品は買い込みすぎでは?
コンビニの廃棄品もあることですし」

 確かに、コンビニには廃棄品というものがある。
 簡単に言うと賞味期限が近づいた商品の事で、
 一般に大手のチェーン店ではそのまま廃棄、つまり捨ててしまう。
 持ち帰りは契約違反になってしまうのだ。(もったいないのに…)
 しかしうちは個人営業、しかも俺は店長。
 持ち帰ろうと思えば持ち帰り放題なのだが…

「いや、だって、アレイ…ルミラさんのところ生活苦しいらしいし」
「……陣九朗さん。まさかとは思いますけど、
廃棄品が多く出るように注文数に細工なんてしてないですよね?」

 …………

「はっはっは、まさか。いくら俺でも自分が損するようなことはしないって。
廃棄品はそのまま店の損害だからな〜〜」
「……陣ちゃん」

(陣九朗さんだからこそ、そういうことをやりそうだと思ったんですけど…はぁ)
(陣ちゃん、いつかそれで身を滅ぼすかもよ〜)



E  C  M



「あ、陣九朗さん、こんにちわ」
「ほんとだ、こんなところで合うなんて珍しいわね」
「アレイさん、ルミラさん、こんちわ。どうしたんですか、こんなところで?」

 こんなところというのは、いわゆる住宅地である。
 このあたりには別に知り合いもいないため、普段は通ることもない。
 今回はスーパーの帰りにたまたま通ったのだが。

「ちょっと買い物にね。何とかスーパーが3時から安売りするらしいから」
「陣九朗さんたちもお買い物だったんですか?」

 アレイさんが俺の荷物をみてそう言った。
 安売り? 3時から?
 ひょっとして……

「ルミラさん、そのスーパーって…」
「あ、ここらしいんだけど」

 そう言って俺に紙を差し出す。
 それは出かける前に見たあのチラシと同じものだった。

「……ルミラさん」

 俺は無言で、その一点を指差す。

「? ……!!!!!!!」

 確認したとたんに白く固まるルミラさん。

「ルミラ様!? えっと………!!!! ふぅ…」

 ゆら〜〜

「お、おい!」

 とすっ。

「おっとっと…いきなり倒れるか、普通?」
「ルミラさんたち、そこまで生活苦しいんでしょうか?」
「お〜い、ルミラさ〜〜ん(こんこん)」
「リーナ、ルミラさんをたたくんじゃない」

 ……さて、どうしよう。

「……う、ん あれ?」
「あ、気が付いた。アレイさん大丈夫か?」

 思ったよりはやく回復したな。
 俺は支えていた腕を放し一歩離れた。
 荷物を抱えたままだったので多少つらかった。

「あ…はい、すいませんでした」
「で、やっぱりあのスーパーだったわけか」

 俺は荷物ごと腕をあげ、腕時計を確認する。
 二時三十分。3時までまだあるとはいえ、もう商品のほうがないだろう。

「アレイさん、何かご入用のものがあったのですか?」

 チキがアレイさんに聞いた。

「はい、実は日用品のほとんどが底をついてまして…、
幸い、食料のほうは陣九朗さんのおかげで困ってないのですが」

 なんかチキたちの視線が背中に刺さる。

「しかし、いつも廃棄品があるとは限りませんし、
多少なりとも保存用の缶詰などを……、
それにあの値段。買いだめしておきたかったのですが…」

 はあぁ と、アレイさんがため息をつく。
 確認不足とはいえ、なんて間の悪い。

「…うふふふふ 陣九朗く〜ん☆」
「おわっ! なんですかルミラさん!?」

 いつの間に復活したのか、ルミラさんが背後からしなだれかかってきた。
 一応、首筋に注意する。

「それって、スーパーで買ってきたのよね〜」

 俺の持っている袋を見ながらそう言う。

「日用品とか、たくさん買い込んだんでしょうね〜」
「まぁ、そうですね」
「重たいでしょ?」
「いえ、そんなことは…」
「重たいわよね〜」
「いや、だから…」
「うんうん、そうよね、重たいわよね!」
「……はい」

 いやな予感がする。
 俺は助けを求めるべくチキとリーナの方を見る。

「リーナさん、今日のご飯はなんにしましょうか?」
「ええと〜、あたしお魚がいいな〜」

 ああ! あからさまに無視してるし!

「陣九朗く〜ん?」
「…はい、なんでしょう」

 俺は観念してルミラさんの次の言葉を待った。

「この子、貸し出すわよ!」
「ええっ! ルミラ様!?」

 アレイさんの肩に手を置くルミラさん。
 そして驚くアレイさん。

「いや、でもおん…」

 女の子に荷物を、といいかけて俺は言い止まる。
 考えてみれば、アレイさんは女の子とはいえ俺以上(ノーマル時)の怪力の持ち主。
 別に遠慮は要らないか……、
 でも女の子だしな……いやでも…、
 ああ! 考えがループする。

「お〜い、陣九朗君」
「はい? ………あ、(そういうことですか)」

 ルミラさんからのアイコンタクトで、俺は考えをまとめた。

「んじゃ、悪いけどお借りします」
「陣九朗さん!?」
「陣ちゃん!?」

 チキとリーナが驚いているが、今回は取り合わないことにする。

「アレイさん、すいませんがお願いします」
「はい、いつもお世話になってますし、この程度でよければ!」

 アレイさんは喜んで荷物を持ってくれる。
 (さすがに俺が持つ分より軽くなるように渡したが)

「じゃ、その子のことよろしくね、陣九朗君☆」
「はい、それじゃ」

 …なんか、念を押されたような気がするのは気のせいか?



E  C  M



 俺たちが家についたのはあたりがすっかり暗くなったころだった。
 あれから4人でたわいない話をしながら帰ってきたのだが、

「なんかすっかり遅くなったな」
「そりゃ、あれだけおしゃべりしながらだとね〜」

 少しゆっくりしすぎたらしい。

「それじゃ、私はお夕飯の仕度をしてきますね」
「あ、あたしも手伝うよ〜」

 二人はパタパタと家の中に入って行った。

「あの、お電話お借りしてもよろしいですか?
ルミラ様に連絡を入れたいので」
「ああ、いいよ」

 アレイさんはアパートのほうに連絡を入れている。
 ルミラさん達もここに住めればいいのに…

「お、おマたせしました…」

 おや? なんか顔が赤いような…
 気のせいだな。

「それでは、わたくしはそろそろ帰らせていただきます。
皆さんのお夕飯も作らないといけませんし」
「そっか、……んじゃ送ってくわ。ちょっと待っててな」

 俺はアレイさんの返事を待たず敷地の中に止めてあった自分のバイクを取り出す。
 ホンダVTR、排気量249cc、最近買ったお気に入りだ。

「陣九朗さん、バイク持ってらしたんですか?」
「ああ、最近買った。コンビニのほうにも乗っていったことあるけど?
…っとっと、忘れ物〜」

 俺は玄関に戻り、買い物袋から消費系の日用品を一通り詰め替えた。
 そしてその袋を持ってアレイさんのところに戻る。

「ほい、これ持っててな」
「え、でも…」

 何か言いかけたアレイさんに俺は人差し指を立てた。

「ルミラさんが言ってたろ、『貸し出す』って。だからそれは報酬」
「じゃ、じゃあもしかして…」
「はい、乗った乗った。それとも…俺を困らせたいか?」

 あんまりこういう促し(うながし)方はしたくないんだがな。
 ふう、どうもアレイさんは律儀というか…、

 しばらく黙っていたアレイさんだが、
 ぺこりと一つお辞儀をして、俺の後ろに乗った。


「んじゃ、行きますか…」

 ヘッドライトが闇を照らし、俺は走り出した。




おしまい?













 プルルルルルルル、ガチャ――

「あ、もしもし、アレイですが」

『アレイ? どう、うまくやってる?』

「はい、今、陣九朗さんの家につきました。もうすぐ帰りますので」

『ええ!? 帰ってくるの!?』

「はい……あの、どうしてですか?」

『いいのよ、『お泊り』してきても〜♪』

「? ………!!(赤赤) なっ、ルミラ様!?」

『陣九朗君も待ってるかもよ〜♪』

「ル、ルミラ様!!? と、とにかく帰りますので!!」

『あ、ちょっとアレイ!?』

 がちゃん!




おしまいです。



たどり着けば、後書き。

 今回はギャグです。
 何も考えないで書いた結果です。
 ホントはルミラがアレイに命じて陣九朗達の荷物をかっぱらうバージョンもあったりする。
 でも、そんなのルミラやアレイじゃないい!!
 最後のおまけはアレイがした電話の内容です。
 エビルとフランに続いてアレイまでも…
 ルミラ…はやくいい人見つけような。

 ルミラ『あんたには言われたくないわね〜』

 …ぎゃふん。


<コメント>

誠 「ルミラ先生……魔族としてのプライドってのは無いんですか?」(−−;
ルミラ 「……? 何のことかしら〜♪」( ̄ー ̄)
誠 「陣九郎にたかってるじゃないですか」(¬¬)
ルミラ 「あら? あれはアレイの気持ちを考えての行動よん♪」( ̄ー ̄)
誠 「アレイさんの、ですか? まあ、そういう事にしときますか」(−o−)
ルミラ 「ちょっと待った。あなた、アレイの事……気付いてるの?」(@o@)
誠 「はあ? 何言ってるんですか? あんなのバレバレじゃないですか。
   しっかし、陣九郎も鈍感だよな。どうやら気付いてないみたいだし」(´ー`)
ルミラ 「……あなたにだけは言われたくないと思うわ」(−−;
誠 「どういうことです?」(・_・?
ルミラ 「何で他人の事にはよく気が付くクセに、
     自分の事には全然気付かないのかしらねぇ?」(−−?
誠 「――??」(・_・?


フラン 「それでは、ルミラ様……誠様のところに行ってまいります」(^ ^)
ルミラ 「いってらっしゃい。今度こそ、誠君のハートをゲットしてくるのよ♪」(^〇^)/
フラン 「は? 何故、ワタシがそのような?」(・_・?
ルミラ 「……ダメだわ。本人が自覚してない」(T▽T)