陣九朗のバイト IN Heart to Heart

第三弾





「誠さん。お手紙来てますよ」
「あ? ありがとうエリア」

 手紙? 誰からだ?

「…なんだ、陣九朗からか。ええと…」

『本日22時よりホームパーティーを開きます。
さくらちゃん、あかねちゃん、エリアさん、フランといっしょに来てください』

「ホームパーティーの招待状か…」



〜 ある日のパーティー 〜




「よっ! いらっしゃい!!」

 準備がちょうど終わったころ、時間どおりに誠達がやってきた。

「あ〜、本日はお招きいただき…」
「誠、そんな似合わないことしなくていいって。
今回は気楽なホームパーティーなんだから」
「似合わないってのはひどいな…」

 誠が軽くすねたふりをする。

「津岡さん、本日はお招きいただきありがとうございます」
「ありがとうございます!」

 さくらちゃん、あかねちゃん。
 二人ともいつも変わらず、礼儀正しく元気だね〜。

「あの、こんな格好でよかったんでしょうか?」
「私もご一緒してよろしかったんですか?」

 エリアさんはよそ行きの服を着てきている。
 そのエリアさんのすぐ後ろ、フランがおとなしく控えている。

「二人ともそんなかたく考えずに。とりあえず庭のほうに行こうか」



E  C  M



「いらしゃいませ。本日はようこそお越しくださいました」
「いらっしゃ〜い☆」

 庭ではチキとリーナが人数分のお茶とお茶菓子の用意を終えていた。

「あれ? 料理は?」
「あ、しまった。言い忘れてた」

 誠の言葉に俺は額を抑えた。

「本当は料理も用意しようと思ってたんだが、もう夜も遅いことだし」

 ここで俺は誠にそっと耳打ちする。

「女性が多いんだから、健康(体重)には気をつけないとな」
「そ、そうだな。それでお茶会になったわけか」

 何か思い出したのか、誠は少しどもりながらこたえた。(89話)

「というわけで、紅茶とクッキーを用意したわけだ。
ちなみに緑茶とせんべいもあるが…」
「それはリーナさんにでも…」
「誠くん呼んだ〜?(ぱりぱり)」

 一足先に席についてたリーナが、せんべい咥えながらこちらを向いた。

「リーナにはもう渡してある」
「…らしいな」

「陣九朗さん、そんなところに立っていないで」
「まーくんも、こちらのほうへ来てください」

 チキとさくらさんに促され、俺たちはそれぞれ席についた。
 おっと、その前に、

「エリアさん、フラン、ちょといいかな?」
「はい、なんですか?」
「なんでしょう?」

 俺は二人の了解をとってテーブルから少し離れた。 

「おい、どうかしたのか?」
「ちょっとな。誠はクッキーでも食べててくれ」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おまたせ」
「もういいのか? 何の話だったんだ?」
「帰りにでも話す。それは置いといて…ところでこの前…」
「エリアさん、エリアさんの世界にも妖精っているんですか?」
「どうでしょう? チキさんみたいな…」
「リーナちゃん、あたしにもおせんべい頂戴?」
「うんいいよ〜。はい、あかねちゃん」
「あ、誠様。紅茶のお代わりを…」
「ああ、ありがとう、フラン(にこっ☆)」
「い、いえ(ぽぽっ☆)」

 それから俺たちは、思い思いの話題で盛り上がった。



E  C  M



 楽しい時間はすぐに過ぎていく…

「お、もうこんな時間か…」

 俺は腕時計を確認して立ち上がった。
 時計の針はもう午前一時を指している。

「と言うわけで今日はここまでだな。あんまり遅いと明日つらいだろ?」
「そうだな…おお〜い、あかね?」
「すぴ〜〜〜〜うにゅ〜〜〜」

 誠があかねちゃんの目の前でひらひらと手を振るが、
 あかねちゃんのほうはもうすっかり眠ってしまっているようだ。

「うみゅう〜〜 じんちゃ〜ん すぴょろろろろ……」

 ……リーナも寝てるみたいだな。
 お子様はとっくに寝てる時間だし。

「じんちゃ〜ん?…(くすくすクスクス)」

 ……起きてるんじゃないのか?

「ふわああ。私も…少し眠いです」
「明日の…朝ご飯は……(こっくり、こっくり)」

 あらら、さくらちゃんにエリアさんまで。
 フランは…

「? なんでしょうか?」

 あんまり眠そうじゃないな。
 一応睡眠は必要なはずだが…、

「陣九朗、どうかしたか?」
「んにゃ。別になんでもない」
「陣九朗さん。そろそろ…」
「ああ、わかってるよ、チキ」

 チキに返事を送ると、俺は誠のほうに向き直った。

「さて、最後になったが…これが今日のメインイベントだ」

 そう言って俺は両手を天秤のように左右に差し出した。

『鬼火』

 俺が短くつぶやくと、それに反応して手のひらに小さな鬼火がともる。

「チキ、頼む」
「はい」

 チキは愛用のほうきを取り出すと意識の集中を始めた。


『幻世(うつしよ)の焔(ほむら)。闇を照らす慈愛をまとい。
幼き迷い子、体(うつわ)持たぬもの。星の導きによりて、
天へとつなぐ扉とならん』


 シュオン…

 チキの『言葉』に導かれて、
 両手の鬼火が俺の頭上で魔方陣へと変わる。

「行きますよ〜〜!!」

 チキがほうきを頭上に掲げる。

「な、なんなんだ!?」
「落ち着け誠。ほれ」

 それまで呆然と成り行きを見守っていた誠に、俺は空を指差した。
 そこには……、

「うっわ、すげぇ〜」
「…きれいです」
「うにゅ…うわ〜、まーくん、これどうしたの!?」

 誠も、さくらちゃんも、いつの間にか起きたあかねちゃんも、
 みんなが、突然の流星群に驚いている。

「陣九朗さん」
「おつかれさまです」
「いや、俺はなんもしてないよ。チキのおかげだな」
「そ、そんな事無いです。…陣九朗さん」
「エリア、フラン? 陣九朗、これはいったい…?」

 さて、無事に終わったな。
 んじゃ、説明しますか。

「始めに謝っとこうと思うんだが…
今回俺は誠達をちょっと利用させてもらった」
「? どういうことだ?」
「まあ落ち着け。順を追って説明していくぞ。
まず、『ここ』が魔力的に特別だってのは前に聞いたよな?」
「ああ、ルミラ先生たちから聞いたな。
でも別に魔力があるわけじゃないんだろ?」
「そうそう。今回重要なのは魔力じゃなくて魔気、瘴気と呼ばれるもののほうだ。
前にも聞いたと思うけど、ここは人間とかにはあんまりいいところじゃないんだ。
誠みたいにしっかりした精神の持ち主はどうってことないんだがな」

 誠が少し悩むようなそぶりを見せるが、気にせず続ける。

「ところがだ。こういう気がたまる場所は『あれ』がよりやすいんだ」
「『あれ』? って言うとまさか…」
「いわゆる幽霊とかそういったやつだ」

 誠、さくらちゃん、あかねちゃんの顔が少し引きつる。

「そう怖がるな。もういないから」
「もういないって?」
「さっき見たろ? 上にあがっていくの」

 そう言って俺はもう一度空を指差した。

「って、さっきの?」
「あのお星様が?」
「ま、そういうこと」

 話を戻そう。

「ここに誠達が来たとき、いくらか皆さん(幽霊)が来てたんでな、
力のあるエリアさんとフランはすぐ気付くだろうと思って口止めしてたんだ。
ま、お茶会が始まってからは結界のせいで気配も感じなかっただろうけど」
「ああ、あれはその話だったのか」

 本当は、もう許容量満配近く集まってたんだが。
 いまさら言って怖がらせることもないよな。

「誠さん、すいません黙っていて」
「誠様…」
「二人とも、そんな顔すんなって」

 なでなでなでなでなで…

「あっ…(ぽっ☆)」
「ふぁ…(ぽぽっ☆)」

「そうそう、俺が無理に頼んだんだから」

 俺は誠たちのほうを見ながらフォローを入れる。
 ううむ。相変わらずほほえましいやつらじゃのう。

「さて、肝心なことだが…」

 誠がなでなでする手を止めてこちらを向いた。

「何で俺たちを呼んだんだ?」
「…しまった。根本の説明をし忘れてたな。
言ってしまえば誠達の力が必要だったからだ」
「俺たちの力?」

 俺は少しためてからこう言った。


「そう! 誠達の『愛の力』がな!!」
「なんですとおおお!!!!」


 おお! 見事なリアクション、センキュウ。

「実際はそこまで大げさなものじゃないがな。
要するに誠達が生み出す歓気や陽の気をさっきの魔法陣に入れたわけだ。
こうすることで成功率が格段にあが……お?」

 俺は言葉を止めて誠達のほうに眼を向けた。
 正確にはその後ろにいた子供に。

『お兄ちゃん、ありがとう』
「よ、楽しかったか?」

 俺はその子のそばまで行って、目線の高さをあわせる。

『うん、とっても! 今度生まれ変わったら…』
「生まれ変わったら?」
『お兄ちゃん達みたいな人の弟になりたいな』
「そっか。強く願えば…かなうかもな」
『うん! じゃあ、もう行くね』
「ああ、また…会おうな」

 しゅううう……

 その子が魔方陣に吸い込まれると同時に、魔方陣は姿を消した。
 そして…星が一つ流れた。

「どうやら最後の一人だった見たいだ…な。
あの子達には気持ちよく旅立てるようにみんなの歓気を注いでたんだ。
どうやら…うまくいったみたいだな」
「…陣九朗?(泣いてるの…か?)」
「陣九朗さん…」

「………迷い子は…家に帰してやらないとな……
今回の目的は…こういうことだよ」



E  C  M



 …後日談…

「最近、津岡さん見ませんね」
「そうだな。コンビニの方にも出てないみたいだし…」
「まーくん、今度様子見に行かない?」
「そうだな…」

 ブゥゥゥウン… キィィィィィィ!!

「よ、誠!」
「陣九朗! お前どうしてたんだ!?」
「ちょっと知り合いに会ってきたんだよ。
いやあ。さすがにバイクで行くのはつらかったなあ」
「津岡さん、どちらまで行ってたんですか?」
「ん? ちょっと中国まで」
「はあ(多分中国地方のことでしょうね)」
「あああ!! こうしちゃいられない。コンビニに行かないと。
あ、これおみやげ。みんなで分けてくれ。じゃあな」

 ブロロロロロロッッ!!

「行っちゃった。でも元気そうでよかったね」
「ああ。さくら、それなんだ?」
「ええと…(ごそごそ)…木彫りのパンダ(着色済み)??」
「あいつ、ほんとに行ってきたのか?」




「アレイさんごめん! お店まかせっきりで」
「いいですよ。なんとルミラ様も手伝ってくれてるんですよ!」
「あら、陣九朗君、お帰り。どうだった?」
「え? どうって?」
「お墓参りに行ってたんでしょ?」
「えっ!? 何でそれを……」
「私たちにとって…人間の一生はあまりにも短いわ」
「ルミラさん?」
「…ま、それでも付き合えば楽しいものよね。別れはつらいけど」
「気付いて…たんですね」
「あったりまえじゃない! 陣九朗くんのことだし〜」
「はあ、さいですか」
「でも、一番に気が付いたのは、私じゃないけどね〜」
「そうなんですか? えっと、誰です?」
「それはね〜〜」
「あああ!!! ルミラ様! 店長も帰ってこられたことですし、
後はわたくしたちにお任せください!!」
「あらアレイ。そんなに陣九朗君と二人っきり…」
「ル〜ミ〜ラ〜さ〜ま〜?」
「……そんなに怒んなくてもいいじゃない。(ぶぅ)
じゃ、陣九朗君、後よろしくね☆」
「はい、ありがとうございました」



 …ありがとうございます





おしまひ


後書きのふりをした後書き。

 だから思いつきで書くなって(猛省)
 今回のラストはちょっとだけシリアスです。
 「どこが?」 とか言わないで……言うな。
 人でない限り、別れは来るんですよね。
 でもそれは当分先のお話。いまはまだ…ね!
 あああ、文力を高めなければ…書きたい気持ちは数あれど…

 でわでわ 失礼します。 (……ちょん 幕)


<コメント>

あかね 「うにゃ〜〜〜ん♪ まーく〜〜〜ん♪」(*^ ^*)
さくら 「うふふふふふ♪ まーくん♪」(*^ ^*)
エリア 「あ、あの……誠さん、私も……」(*・ ・*)
フラン 「…………」(*・ ・*)
誠 「あー、はいはい。ちょっと待ってろ。順番順番」(−−;

 なでなでなでなで……

ルミラ 「別にさ〜……わざわざ成仏させなくても……」(−−;
イビル 「あんなモン見せ付けられたら……」(−−;
アレイ 「幽霊さん達も、自分から消えてしまいそうですよね」(^ ^;
エビル 「私もそう思う」(−o−)
たま 「にゃ〜」(−o−)