陣九朗のバイト IN Heart to Heart

突発余話




 作者注(この作品は 『Heart to Heart 第129話 「血は争えない」』
      をお読みになってから召し上がりください。
      タレは醤油風味のみです。あしからず…)



〜 ある日の遭遇 〜



 ――いつものコンビニ。

「ありがとうございましたー」

 お客さんを笑顔で送り出し、そっと息をつく。
 ふう、なんだか久しぶりだな、この感覚。

「陣九朗さん? どうかしましたか?」

「んにゃ、なんでもない。
――お、もうこんな時間か…それじゃアレイさん、悪いけど後よろしくね」

 俺はレジから抜け、バックルームに入り簡単に事務を済ませると制服を着替える。

「お疲れ様でしたー」
「お疲れー」

 アレイさんとバイトの子に一声かけてから外に出る。

 店の裏に止めてある自分のバイクまで歩く。

 さて、これからの予定は…15時からビデオ屋でのバイトが入ってるな。
 さっき店を出たのが13時だったから、2時間近く時間がある。
 無論、予定があるからなのだが…、

 俺はバイクにまたがり、エンジンをかけ走り出す。




 で、着いたところは商店街……、

 この商店街の『五月雨堂』という骨董品店に用があったんだが……、

「閉まってる……」

 むう、営業日を調べてなかったのは痛いな。
 いきなりすることがなくなっちまった。(自業自得です)

「ん? おお、陣九朗じゃねーか。何してんだ?」

 突然後ろから声をかけられた。
 振り返ると…、

「よ、誠――? と、そちらは?」

 両手に荷物を持った誠と、見知らぬ女の子が一緒にいた。
 髪をツインテールにした、なかなかにかわいらしい子だ。
 でも、この子はどことなく誠に似てる気がする。
 ということは――

「誠、お前、妹いたのか?」

「違う…」

 なんだか少し疲れた表情で否定する誠。

「ねーまこりん、ちゃんと紹介してよー」

 女の子が誠の服を引っ張りながらせかす。
 うむ、なんだか見かけどおりの行動だな。

「…んじゃ、紹介する。こっちが津岡 陣九朗、友達だよ」 

 友達…いい響きだ…変な意味じゃないぞ?

「で、こっちが…」

 そこで一度、誠は言葉を切りため息をついた。

「藤井みこと。
俺の母さんだ


 ………………………


「はい?」

 えーと、この子が? 誠の母親?
 このどう贔屓目に見ても中学生、チキといい勝負(爆)な女の子が?
 商店街のど真ん中で、楽しそうに腕を振り上げて踊ったりなんかしてる女の子が?

「――冗談だろ?」

「大マジだ」

 …………

「誠、ちょっと――」

 俺はこっそり誠を手招きし、ひそひそ話の体制をとった。

「俺はな、かなり長いこと生きてきてるんだぞ?
その俺が、はるかさんやあやめさん達の事でさえ納得し切れてないってのに、
いくらなんでも
アレはないだろう!?」

「人の母親つかまえてアレって言うな!!
陣九朗…俺だってあんまり認めたくないさ。
でもな、
現実はいつも厳しいんだよ

「しかしなぁ…みことさん、どう考えても人間の老化レベルを無視してるぞ?
ひょっとして、『俺たち』みたいな血が流れてんのか??」

「うう、否定しきれない…」

「こらぁ! 何ないしょ話してるのー!」

『うおぅ!?』

 いきなり目の前に現れたみことさんに、俺と誠はそろってその場を飛び退いた。
 正確には普通に目の前に来たんだろうが、話に入り込んでて気がつかなかった。

「むー、まこりんも
くろちゃんもみーちゃんをほったらかしにするなんてー!!」

 ……何か今、不穏な単語が混ざってなかったか?

「あの、みことさん? くろちゃんって…」

「陣九朗くんだからくろちゃん、いいでしょー♪」

 よくない! ぜぇったい良いわけない!!

「…もしかして…いや?
じゃ、私のこと『みーちゃん』って呼んでくれたらゆるしたげるよ?」

「すまん、陣九朗、
母さん、自分のことを愛称で呼ばせようとするんだよ。
で、拒否すると恥ずかしい愛称がもれなく――」

「わかった、みーちゃん」

 
こけっ!

「じ、陣九朗? そんなあっさり…」

「わーい、くろちゃんっていい人だねー、まこりん♪」

 なにやらコケたままうめいている誠に向かい、
やたらとはしゃいでいるみことさん改めみーちゃん。

 いや、それより……、

「あの? みーちゃんって呼んだらやめてくれるんじゃ…」

「むー、やっぱりイヤなのぉ?」

「…くろちゃんで良いです」

 ……何故だ。
 なぜかこの人には逆らえない!?

「陣九朗? いいのか?」

「いや、あんまりよくないんだが…」

 深く考えるのやめとこ、なんか怖そうだし。

「ところで、誠達は何してたんだ?」

「ああ、少し服を買いにな…」

 なんか、いきなり誠の表情が暗くなったような…

「どうした? なんか気に入らない服でも買われたのか?」

 母親の買ってくる男物の服ってのは、どっかずれてる事が多いらしいからな。

「いや、俺の服はいいとして…」

 そう言って誠は、視線を自分が持っている荷物へと向ける。

 誠の手にある荷物、その紙袋には見覚えがあった。
 確か、最近オープンして評判になっている…かわいいと評判の…、

 
子供服のブランド。

 よくよく見れば、みーちゃんが今着てるのも……、

「…お互い、母親には苦労してるみたいだな」

「…陣九朗の母親も?」

「容姿は置いといて……一応、人間のはずなんだがなぁ」

「まっこりん、くろちゃん、そろそろ出発するよー?」

 見ればみーちゃんは俺達から少し離れたところで手を大きく振っている。

「どうやらもう帰るみたいだ、それじゃな、陣九朗」

「ああ…またな」

 てくてくてくてく

 てくてくてくてくてく

「? 陣九朗、何でついて来るんだ?

「? いや、そういえばなんでだ?」

 もうすぐバイトだっていうのに、なについて行ってんだ、俺は?
 俺が首をかしげると、誠が少し哀れみのこもった視線で俺の肩に手を置いた。

「陣九朗、俺がなぜか猫に好かれる体質だっていうのは…」

「ああ、知ってるぞ?」

 ――何だ、突然?

「それと同じでな、母さんは何故だか昔から犬に好かれるんだよ」

 ……………………
 人狼に生まれて数百年、ついにこのセリフをいう時が来たか…、

「……誠、
 
俺は犬じゃなくて狼だ!!


 唐突に終わる。



あとがき

 オチがつかないまま……終わってしまいました……、
 だぁ、すいません!!

 第129話を読んで思いついたネタっていうのは、
 『犬な陣九朗は、何故だかみーちゃんに逆らえない』という、
 ある意味お約束なネタだったんですが……、

 陣九朗 『だから俺は犬じゃねえ!!』

 今回、久々にHtH世界の陣ちゃん達を書いた結果……、
 やっぱり『日常』の陣ちゃんは性格がダークだと…(シュカッ うっ! ぱたり)

 それでは、津岡帝音でした……、


<コメント>

誠 「……犬だな〜」(−o−)
みこと 「犬だよね〜♪」(^〇^)/
陣九郎 「だから、俺は犬じゃなくて狼だっ!!」(−−メ
誠 「でもさ、俺達の世界で一度そういうレッテルを貼られたら……」(−−ゞ
みこと 「もう戻れないよねぇ〜♪」(^〜^)
陣九郎 「俺は狼だーっ!! 雪山に住む赤毛の大熊だって倒せるんだーっ!!
      だいたい、犬はあかりちゃんだけで充分だろ――」(−−メ
みこと 「お手♪」\(^〇^)/
陣九郎 「わんっ♪」(^▽^)
みこと 「おかわり♪」\(^〇^)/
陣九郎 「わわんっ♪」(^▽^)
みこと 「……アゴッ♪」\(^〇^)/
陣九郎 「きゅぅん…………って、はうあっ!!」(@〇@)
誠 「ほら……やっぱり、犬だし……、
   でも、お前がそれやると似合わねぇ〜」(^_^;
陣九郎 「う、うう……」(;_;)
みこと 「ねえねえ? くろちゃんって、玉ねぎ食べても平気なの?」(^〇^?
陣九郎 「うわあああああああああああんっ!!」<(T△T)>

 ドドドドドドドドォォォォーーーーッ!!

ルリ 「――? 今の、ハーリー君?」(・_・?
ラピス 「ハーリー……相変わらず煩い」(−o−)


あかり 「う〜ん……う〜ん……」<(@〜@)>
ひかり 「あー、もう……あんたは玉ねぎ食べちゃダメっていつも言ってるでしょ?
     ほんと、いつまで経っても自覚しないんだから……」(−−;
あかり 「う〜ん……う〜ん……」<(@〜@)>