陣九朗のバイト IN Heart to Heart

第13弾




 さてさて、皆さんこんにちわ。
 一回まとめてデータが跳んでしまい、かなりブルーな帝音です。
 今回は、趣向を変えて短編集なんてお持ちしました。
 さてさてさて、それではしばしのお付き合いを…




〜 ある日の出来事 〜




 商店街にて…

 学校からの帰り、立ち読みでもしようと商店街の本屋へ歩いていると、
ペットショップの前で見知った姿を見かけた。

「あれ、チキさん?」

 …だよな。
 少し離れていたせいか、俺には気がつかずにペットショップの中に入っていく。

 なんとなく声をかけそびれ、なにをしてるのかと外から店の中をうかがう。
 チキさんは……いた。
 入り口から少し入ったところ、壁にかかっている首輪を熱心に見ている。

 …………首輪?

 俺の記憶が確かなら、陣九朗は動物を飼ってはいない。
 じゃあ、なぜ首輪なんて…、
 疑問に首を傾げる俺の目の前で、チキさんは予想しない行動に出た。

 少し大きめの首輪を手にとり、そっと自分の首に当てたのだ。
 まるで、その大きさを確かめるかのように。

 ま、まさかね。
 いや、でも……、


「…ああ、ご主人様…… 御慈悲を……」


「うがあああああ!!!
違う!違うんだあああああ!!!」



 
ガンガンガンゴンゴンゴン!!


 手近にあった電柱に手加減なしで頭を打ち付け、今の想像を打ち払う。

「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」

「藤井さん? どうかされたんですか?」

 会計を済ませてきたらしい、チキさんが俺のほうを見て不思議そうにしている。

「いや、なんでもない」

「その割には、額からこれでもかってぐらい血が出てますけど…」

 チキさんはポケットからティッシュを取り出すと俺に差し出してくれた。

「ああ、ありがと。ところで、それは…」

 ティッシュを受け取りつつ、チキさんの腕の中にある紙袋を指差す。

「これですか? 陣九朗さんが新しくアクセサリーにチョーカーを作るそうでして、
その資料用に買ってくるようにと頼まれまして」

「あ、そ、そうなんだ」

 そうか、そりゃそうだよな。
 陣九朗がチキさんに首輪をはめて、あ〜んな倒錯プレイをするはず……、

「藤井さん…」

 はい? あの、なんだかチキさんの後ろに黄色い炎が見えるんですけど?
 それにその手にもってるハタキは…

「私、首輪なんてしません」

「も、もしかして、声に出てた?」

 ゆっくりと頷くチキさん。
 は、はははは、はははははは…

「反省…してくださいね?」

 その日、俺は星になった。





 昼の陣九朗家…

 かちっ かちっ かちっ

「…なあ、リーナ」

「う〜〜? な〜〜に〜〜?」

 思いっきりタレた状態のリーナが、視線を動かさずに返事をする。

 かちっ かちっ かちっ

「…楽しいか?」

「う〜〜、ふつう〜〜〜」

 リーナの視線の先には、リーナ愛用の目覚し時計がある。
 もっとも、鳴っているところを見たことも聞いたこともないが。

 リーナはかれこれ1時間以上その秒針を見つづけている。

「リーナ?」

「う〜〜?」

「…どっか、遊びに行くか?」

「! うん、行く!!」


 とたんに飛び起きると、俺に飛びついてくる。

 やっぱ、ヒマだったんだな。

 ……そんだけ。





 夜の陣九朗家…

「………ふう」

 ゆっくりと湯船に肩まで浸かり、湯の感触に思わず声が漏れる。

 やっぱ、風呂は良いわ。
 親父臭いかもしれんが。

 手近にあったタオルを適当に畳むと、頭に乗っけて目を閉じる。

「…………」

 静かに耳を澄ますと、キッチンのほうで洗い物をする音が聞こえる。

 今日の煮物は美味かったな〜〜。
 チキもどんどん腕を上げて、家庭料理に関しては、もはや太刀打ちできんな。

 シュゴ…

 ? なんか変な気配がしたが…、

 ゆっくりと目を開ける。

「…………」

「…………」

 俺の目の前、湯船のなかにはリーナが鼻先まで湯に浸かり、口からぷくぷくと泡を出していた。
 当然すっぱ(素っ裸)である。

「……何やってんだ?」

「え、え〜〜っと、一緒に入ろうと思って♪」

 こちらをうかがうように、上目づかいでこちらを見てくる。

「……入り口のドアにはカギをかけといたはずだが?」

「うん、だから壁抜けでシュゴっと」

 …………。

「前に『俺は一人ではいる』って言ったはずだが?」

 少し怒ったように、リーナに告げる。

「う、うん、でも、一緒に入りたかったから……ごめんなさい、後ではいる」

 しょぼんと、泣きそうな顔で湯船からあがろうとする。
 はあ、しゃーない。

「こんな中途半端で上がったら風邪引くだろうが。
さっさと浸かれ、それから、体も洗え」

「……いいの?」

「何度も言わせるな」

 リーナはうれしそうに湯船に戻り、俺のとなりに浸かる。
 …はあ、俺も甘いな。

 いい忘れてたが、この風呂は元デュラル家だけあってかなり大きい。
 2人ぐらいなら余裕で入れる。

「…………ふぅ」

 先ほどと同じく、目を閉じて湯の感触を味わう。
 タオルは頭に乗せたままだ。ここ、ポイント。

「…ねえ、陣ちゃん。背中流してあげよっか?」

「いい、もう洗った。ついでに頭も洗った後だ」

 俺は風呂に入るとまず体を洗う。
 そうすれば、湯船のお湯が汚れないからだ。
 一人の時には考えもしなかったけどな。

「じゃあ、あたしの背中洗って♪」

「なんでやねん!」

 反射的に突っ込んだ拍子に、頭のタオルが湯船に落ちてしまう。
 だって、女の子に背中を流してもらうってのは良く(?)聞くけど、その逆は…、
 ま、浩之辺りは普通にやってそうだな。
 しかも素手で。

 しかし、女の子と一緒に風呂に入ってる時点で、俺もダメなのかも。
 まあ、誰でも普通に(平然と)入れるってわけじゃないけど。
 リーナは妹みたいなもんだから何ともないんだが。

「…ま、いいか。
洗ってやるからそこの椅子をもってきて座れ」

 リーナに椅子を持ってこさせると、湯船から届く範囲にそれを置き、座らせた。
 …湯船から出たくなかったもんで。

 スポンジにボディーソープを適量出すと、良く泡立ててから、ゆっくりとリーナの背中を洗い始める。

 こしゅこしゅこしゅこしゅこしゅ…

「…痛くないか?」

「ううん、大丈夫。 陣ちゃん優しいから」

「……言ってろ」

「えへへ〜〜」

 ゆっくり、強く擦らないように気をつけながら洗っていく。

「はう〜〜…」

 ぴくん、と、リーナの体が震えた。

「? 痛かったか?」

「え? 大丈夫だって。
もうちょっと強くしてもいいぐらいだよ〜〜」

 ぽ〜〜っとした感じで遠くを見ながらそう答えた。
 強くしても良いか。では、お言葉に甘えて。

 こしゅこしゅ、こしゅこしゅ、こしゅこしゅ、こしゅこしゅ…

「はうぅ〜〜」

 どこか恍惚とした感じで遠くを見ているリーナ。
 ? なんなんだろう、この反応は?

「気持ちいいのか?」

「はぅ、…うん。
陣ちゃん上手だね〜〜」

 いや、普通に洗ってるだけなんだが…、
 なんかやばいことになる前に、終わっとくか。

 俺は洗う手を止めると、シャワーのお湯を手にあてて、温度を確認する。

「…え? もうおしまい〜〜?」

「なんだよ、ちゃんと洗ってやっただろ?」

 適温になったのを確認し、リーナの背中を洗い流していく。

「うう〜〜、じゃ、じゃあ今度は…あたま……」

「は?」

「あたま……洗って?」

 はあ〜〜、
 俺は大きくため息をつく。
 これだからリーナとは入りたくないんだよ。

「う〜〜、だめ?」

「ダメって言ったら、2,3日は文句言うだろうが。
ほら、こっちに頭向けろ」

「うん!」

 ……はあ、やっぱり俺って甘いんだな。

 ……結局、俺は前以外のリーナの各部を洗うことになってしまった。
 さすがに前は洗えなかったさ。





 夜中の陣九朗家…

「ふう、リーナのせいでのぼせるところだった」

 タオルで髪を拭きながら、自室に戻る。

「……?」

 ドアを開けようとして、中に気配を感じてそれを止めた。
 部屋の明かりはついていない。
 ついていたら、ドアの隙間から光るが漏れるはずだ。

 リーナはさっきリビングにいたから、必然的にチキってことになるんだが…、

 中の様子をうかがうように、ゆっくりと扉を開ける。

 部屋の真中に、うずくまるように人影があるのが見える。
 一瞬電気をつけようかと思ったが、暗くしているのには意味があるんだろうと考え直しやめた。
 当然、獣の目も使わない。(使えば電気など必要ない)

「チキ? どうしたんだ?」

 わずかに、人影が動くのが気配で知れた。
 同時に、

 チャラ…

 つい最近、嫌というほど聞いた金属音が聞こえる。
 しかし、この部屋にもチキにも、その音とのつながりは見えない。

「陣九朗様……」

 陣九朗『様』?

「チキ?」

 一抹の不安を覚え、少し強めに声をかける。

「私じゃ…ダメなんですか?」

 何の事を言っているのかわからず、反応することも出来ない。
 俺が動きを止めていると、

「先ほど、お風呂のほうで…」

 風呂?
 確かにリーナと入ってたが、それはチキもだいぶ前から知ってることだし…、

 そう言いつつ気が付いた。
 先ほどのリーナとの会話『だけ』を一部分思い返してみる。


「…痛くないか?」

「ううん、大丈夫。 陣ちゃん優しいから」

「……言ってろ」

「えへへ〜〜」

「はう〜〜…」

「? 痛かったか?」

「え? 大丈夫だって。
もうちょっと強くしてもいいぐらいだよ〜〜」

「はうぅ〜〜」

「気持ちいいか?」

「はぅ、…うん。
陣ちゃん上手だね〜〜」


 ………(汗)

 我ながらなんちゅう会話だ。
 チキはこの会話だけを都合『悪く』聞いてしまい、激しく勘違いしたのでは?

「あ〜、チキ? 先に言っとくけど、風呂ではリーナの体を洗ってやってただけだぞ?」

「……素手で…ですか?」

 んな浩之じゃあるまいし。
 いや、浩之がやってるかどうかは知らんが。

「ちゃんとスポンジでだ。なんか激しく勘違いしてないか?」

「え、えっと…」

 動揺の気配が流れてくる。
 どうやら図星だった見たいだな。

「はぁ、チキもそんな勘違いするんだな」

「す、すいません、それで、あの…」

 なにやらもぞもぞと動く気配がする。
 つーか、いいかげん目も慣れてきて意識しなくてもチキの姿が徐々に見えはじめる。

「………え〜〜っと」

 …なんと言うか…その……、

「あ、あの、見なかったことに…」

 そういわれても…ばっちり脳裏に焼きついたんですが。

 
猫耳猫尻尾(本物)
 さらに鎖付きの首輪というオプション付き。

 裸ではなく、メイド服なのは救いなのか起爆剤なのか…、

「ま〜〜こ〜〜と〜〜〜〜」

 こんなことを教えるのは誠しかいない。
 メイフィアさんやルミラさんという可能性もあるが、誠には『裸に猫セット』という前科がある。
 つーわけで、誠に決定!



 その後…、

 誠家に乗りこんだはいいが、
俺の勘違いということがわかり(あながち勘違いともいえないと思うが)、
さくらちゃん、あかねちゃん、エリアさん、フランの
カルテットコンボを喰らい、俺は星になった。



 教訓  むやみに人を疑うのはやめよう。





 デュラル家にて…

「うう、大きなお風呂に入りたいです」

「贅沢言わないの。入れるだけいいと思わなきゃ」

「…別に入りたくにゃいにゃりん」

 システムバスに、アレイとメイフィア、それに猫化しているたまが無理やり一緒に入っている。
 どう見ても、許容量をオーバーしている。

「仕方ないですよね…貧乏なんですから」

「それは言わない約束でしょ?
ま、後1日我慢すれば4日に一度の銭湯だし」

「うう、情けないです」

「う〜ん、確かにきれいにしてないと陣九朗に嫌われちゃうかもねぇ」

 ビクッ!

「なんてったって、人狼…狼なわけだし、匂いには敏感かも」

 ビクビクッ!!

「ふ、ふえ〜〜ん、ワタクシ、もう一度体を洗います〜〜」

「あ、石鹸は使っちゃダメよ、もったいないから」

「ふええ〜〜〜〜ん!!」

「メイフィア、鬼ニャロメ。
陣九朗がそこまで気にするわけないにゃりん」

「そこに気が付かないアレイもアレイだと思うんだけど」





 おしまい



後書き

 今回はおまけは無しです。
 作品自体がおまけの寄せ集め見たいなもんですから。
 はぁ、もっと精進しないといけませんね。
 こういう小ネタなら、いくらでもでるんだけどな〜。
 もっと文章力をつけないと。がんばるぞ〜〜。

 あ、そうそう、『裸に猫セット』はBBSでやったネタです。

(了)


<コメント>

さくら 「リーナさん……一緒にお風呂だなんて……」(*・・*)
あかね 「うにゅ〜、羨ましいよ〜」(*・・*)
誠 「…………」(−−;
さくら 「まーくん、わたし達も……」(*・・*)
誠 「ダメッ!」(−o−)
あかね 「えー? どうしてー?」(−ε−)
誠 「俺は自分の理性が信用できないのっ!」(−o−)
エリア 「別に、理性を働かせなくても……」(*−−*)
誠 「――あ? 何か言ったか?」(¬¬)
エリア 「い、いえ……何も……」(*−−*)
誠 「そうか? んじゃ、俺は風呂入ってくるから。
   ……リーナさんみたいに問答無用で入ってくるなよ」(−o−)
さくら・あかね・エリア 「はーい……」(−o−)(−o−)(−o−)


 ――かぽーん

誠 「ふー……極楽極楽。
   しかし、さくら達にも困ったモンだよな……一緒にお風呂だなんて……、
   まあ、別にイヤってわけじゃねーんだけど……」(*−−*ゞ

 ――ガラッ

フラン 「誠様、お背中お流ししましょうか?」(^_^)/
誠 「だあああああーーーっ!! フランッ!?」Σ(@〇@)


エリア 「フランさん……なかなかやりますね」(−−;
さくら 「これが無欲の勝利というものでしょうか?」(−−;
あかね 「うにゅ〜……」(−−;


ルリ 「……アキトさん」(−−メ
アキト 「は、はい……」(^_^;
ルリ 「どうして、ラピスとは一緒に入るのに、私はダメなんですか?」(−−メ
アキト 「あ、いや、それは……」(^_^;
ルリ 「ちゃんと答えてくれるまで許してあげませんからね」(−−メ
アキト 「うう……誰か助けて……」(T_T)