陣九朗のバイト IN Heart to Heart

大銃弾


「ちっがぁ〜〜〜う」

 ぱしこ〜〜ん!!

 いたた。今回は始めから飛ばしてるな、陣九朗。

「やかましい! なんなんだよ、大銃弾って!」

 ちょっとしたギャグだろうが。
 ところで、その手にもってるのは何だ?

「何って……はっ! なぜ俺の手に『スリッパ』が!?」

 色は青でビニール製か。
 突っ込み三種の神器の一つだな。WCと書いてあれば完璧だったんだが…、
 (ちなみに、裏拳、ハリセン、スリッパの三つを指す)

「そんなことはどうでもいい。帝音、俺は何でこんなのが出せるんだ?」

 くくっ。自分の体に聞いてみるといいさ。

「ひっ! いーーやーーだぁーーーーー!!!」





あらためまして……、


第10弾 (どんどんぱふぱふ!)



「ちわ〜〜、宅配便で〜〜すっ!」

「陣九朗さ〜ん、今、手が離せないのでお願いします〜〜」

「了解」

 俺ん家に宅配便なんて珍しいな。
 っていうか、ここの住所知ってるのは、誠達とルミラさんたちぐらいだと思うが…、

「あ、ここにハンコお願いします」

「はいはい、ごくろうさまです」

「はい! ありがとうございましたぁ!」

 ……DUN・GUNか。
 風見さん、元気にやってるのかな?

 それはともかく、さて、誰からだろう?
 なんか、やたらと重いけど。
 え〜と、差出人は……、

『津岡 新朗太(しんろうた)』

 …………父からじゃねーか。



〜 ある日のおしゃけ 前編 〜



「あら、陣九朗さんのお父様からですか。何を送ってこられたんですか?」

 チキがキッチンから手を拭きながら出てきた。
 エプロン姿もグッド……俺は浩之かってーの。

「ちょっと待て、ええと…『ワレモノ』? 品名が書いてないな」

 …開けてみるしかないか。
 今までの経験上、父が送ってくるものは大体ろくでもないもんばっかりなんだが…、
(例 みの虫 わけのわからん像 流木 天狗の面 布切れ ビーダマ エトセトラ…)

 しかし、木箱とはまた厳重な。
 その割に、上蓋を止めてるのがガムテープだったりするが…、

 こんこん(ちゃぽ)

 う〜ん、叩いた感じ、なんか液状の物が入ってるみたいだな。
 …ま、空けても死にゃあしないだろ。

 そういうわけで……びぃりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ(ガムテはがす音)

「陣ちゃん、なにこれ?」

 リーナが真っ先に中を覗き込んだ。命知らずな。

「まぁ待て、え〜と?」

 箱の中身は…一升瓶が八本……酒か?
 その割にはラベルがはってないが…、

「陣九朗さん、お手紙が入ってますよ」

「お、さんきゅ…手紙?」

 めずらしい。
 あの筆不精の父が手紙を書くなんて。

 ま、せっかく書いてくれてるんだ。とっとと読みましょうかね。

『前略、元気か陣?
旅先で美味い(らしい)酒を手に入れたから送ってやる。
アルコールが入ってないから、酒とは呼べんかも知れんが…
お前もいいかげん、酒ぐらいのめるようになるんだぞ。
これを飲んで練習しとけ。一応酒っぽい味はする(らしい)。
飲むと、とても気持ちよく酔える(らしい)。

それから、お前もそろそろいい歳なんだから、あっちのほうも経験しとけ。
チキさんか? それともリーナさんか? なに!? 二人同時!?
なんにしても、箱に同封してある薬を一服盛ってやるだけでOKだ!
酒に混ぜると効果が倍増するから、今日あたりがんばるんだぞ。
ありがたく頂戴するように。        草々』

「…………あのくそ親父がぁ!!」

 ビリビリビリビリ くしゃっ げしげしげしげしげし!!

「じ、陣ちゃん? どしたの?」

 はぁ、はぁ、たまに連絡よこしたと思えば…、
 あ、あたま痛いわ。
 それに『らしい』ってなんだよ?

「あ〜、なんだ、旅先で見つけた酒なんだと。いや、アルコールは入ってないそうだが」

 父が送ってくれた物にしては、結構マシなもんだったな。
 …いや、飲んでみるまではわからんが。

 ピンポーン

 お、お客か?

『お〜い、陣九朗、いるか〜?』
『リーナさ〜ん』
『陣九朗、いる〜?』
『陣九朗、いるならさっさと出てきやがれ〜』
『うにゃお〜〜!』
『ああ、皆さん、そんな大声で…』
『まったく、しょうがないわね、あんたたちは』

 ぐったいみん!

 俺はすぐに玄関に行き、扉を開けた。

「いらっしゃ〜い☆」

 たぶん、このときの俺は会心の笑みをしていただろう。



E  C  M



「ってなわけで、これが父が送ってくれた酒だ」

 部屋の中を見回す。
 部屋の中には先ほど来た誠、あかねちゃん、さくらちゃん、エリアさん、フラン、
それにメイフィアさん、イビル、エビルさん、たま、アレイさん、ルミラさんが座っている。
 もちろん、チキとリーナもいるぞ。

 よくもまあこれだけのメンバーがそろったもんだ。
 そこのところを、誠に聞いてみた。

「いや…たまにはお前のところに遊びに行こうってあかね達がいうから来たんだけど」

「途中で私たちと会ったんでいっしょにきたの。
あ、私たちもたまには陣九朗君のところに顔を出そうと思って☆」

「うににゃぁ〜…うにゅ」

(陣ちゃん、たまちゃんが『ルミラ様、陣九朗の血をもらいに来たんじゃにゃいんですか』だって)
(気にするな、大体そんなことだろうと思ってた)

「陣九朗、二人でなに話してるんだ?」

「気にするな誠、こっちのはなしだ。
そうだ、
せっかくこれだけそろってるんだから宴会でもやるか!?
ちょうど酒もあることだし」

 期せずして時間は15時。つまり、午後3時。
 さらに言うなら、明日は日曜日!

 今からなら、時間的にちょうどいいしな。

「しかし、かえって晩御飯の支度もしなければいけませんし…」

「アレイさん、晩飯ぐらい宴会内でご馳走するって」

「やろうか、宴会!!」
「やりましょう、宴会!!」

「誠さん!?」
「ルミラ様!?(まさか、最初から晩御飯が目的だったんじゃ)」

 ……しまった。
 ルミラさん達はともかく、誠がいるんだった。

 買出しに行かないとな。今ある材料だけじゃ、とても足りないぞ。

「じゃ、俺は買出しに行ってくるわ。
酒のつまみと晩飯の材料。あとは…ま、烏龍茶とオレンジジュースでも買ってくるか。
あ、少しならつまみもあるから、先に始めて…おい」

「陣九朗、何か言った?(ごきゅごきゅ)」

 とっくに始めてたんかい。
 メイフィアさん、湯飲みで飲むのはやめといた方が…あ、ルミラさんも飲んでるし。

「いえ、なんでもないです。
言い忘れてたけど、この酒、アルコール入ってないそうだからあかねちゃん達も飲めるよ」 

 さくらちゃんとエリアさんの視線が語っている。
 『それは、お酒じゃないんじゃないか』と。

 ……さて、さっさと行くとしよう。

「陣九朗さん、お一人でだいじょうぶですか?」

 部屋を出ようとしたところで声をかけられた。

「チキ……正直、一人だときついかもな。
やっぱり、誰かに付き合ってもらうか。さて…」

 ふたたび室内を見渡す。

 う〜ん……………誠とイビル、あとアレイさんぐらいしか候補がいないな。
 ここは、男手を得るということで、

「誠、イビル、悪いが買い出しに付き合ってくれないか?」

「おう、いいぞ。晩飯ご馳走になるんだし。それくらいはな♪」

 むぅ、すっかり晩飯のほうに思考がいっとるようだな。

「おい、陣九朗。誠はともかく、なんであたいまで行かなくちゃなんねーんだ?
そういうのはアレイかフランソワーズの役目だろうがよ」

「男手が欲しいもんで…」

 ……おや? そういえばイビルは…、

「あたいはおんなだーー!!!」

 ぼうぼうめらめら

「陣ちゃん!」

 ばっしゃぁぁぁあ  しゅううぅぅぅぅぅぅぅう

 うむ、なかなか熱かったな。

「リーナ、さんきゅ。 イビル、軽い冗談だろうが。
すぐにキレて炎召喚するのはやめろ」

「今のは、冗談に聞こえなかったんだよ」

 むむぅ、なかなか鋭い奴。

 さて、冗談はこれくらいにして。

「んじゃ、行くか、誠」

「…陣九朗、お前いつか死ぬぞ」

「そりゃ俺にだって寿命はあるが?」

「いや、そういうことじゃなくてな…」



E  C  M



「結局、アレイさんにも手伝わせちゃって」

「フランも、ありがとうな」

 俺と誠が玄関を出たところで、この二人が同行を申し出てくれた。
 俺としては断るつもりだったんだが、誠がフランの同行を許可したもんだから。

 そっか、考えてみればフランは酒が飲めないからな。
 俺としたことが、迂闊だったな。

「ところでアレイさん、その…重くないのか?」

 誠がアレイさんの荷物を見ながら聞いた。
 当然の反応だな。
 なんと言っても、アレイさんは誠の3倍は荷物を持ってるからな。

 ちなみに、俺が9袋、アレイさんが8袋、まことが3袋、フランが2袋となってます。
 (いずれもスーパーの大袋)

「ええ、だいじょうぶですよ。誠さんの分も持ちましょうか?」

「い、いや、いい。これぐらい平気だから。そうだ、フラン、一個持とうか?」

「いえ、だいじょうぶです。お気遣い、ありがとうございます」

「そうか、重かったらいえよ?」

 くくっ。誠、気持ちはわかるがな。

「なんだ、陣九朗。その含み笑いは」

 しまった。そんなにわかりやすかったか。

「いや、なんでもないよ。
それにしても…買い込んだな〜。ちょ〜っと買い込みすぎたかな?」

 合計22袋か。
 しかもそのうち16袋ほどは晩飯の材料だったりするし。
 残りは珍味系のつまみとジュースね。

「人数が人数だし、こんなもんじゃないのか?」

 …誠がいるから、晩飯が残ることはないだろうが。

「おい、陣九朗、今なに考えてた?」

「お前とおんなじことだろうよ、誠」

「そうか、ところで、誰が作るんだ?」

 俺は
自分を指差し(袋が重い〜〜)誠にこたえた。

「ん、あとチキも手伝ってくれるかな」

「陣九朗が作るのか!? あー、なんか料理とか得意そうだもんな〜」

 どういう意味だ、それは?
 ま、いいか。誉め言葉としてとっておこう。

「あの、ワタシも手伝いますので」

 フランが控えめながら申し出てくれた。
 やはり、『誠の分は自分が作る』って所か?

 しかし、そうなるとエリアさんたちも手伝ってくれそうだな…、
 ありがたいが、宴会の席が少しさびしく…ならんわな。
 デュラル家勢ぞろいの時点で。

「ん、とりあえず家に戻ってから決めるとしよう……おや?」

「どうかしましたか?」

 俺は、一軒の干物屋の前で足を止めた。
 干物屋というのは、するめや昆布とかが売ってる店と思ってもらえれば間違いはない。
 ちなみに、酒も置いているところが多い。

「ちょっと珍しい物が売ってるんでな。
誠たちは、悪いが先に戻っててくれるか?」

「わかった。少しゆっくりと戻るから、用事が済んだらすぐに来いよ」

 誠達が戻っていくのを横目で見ながら、俺はその店に足を踏み入れた。

「すいませ〜ん、これとあれください。後、あれば…」

「はいはい、ありますよ、ちょっと待っててくださいね」

 店の主人は、奥の倉庫らしき所をごそごそやっている。
 しかし、異様に品揃えがいい店だな。
 …! 鯨肉の燻製まであるよ。

「はい、これですね。どうもありがとうございました」

 これでよし。

 さて、急いで戻らないとな。



 E  C  M



「お? まだ入ってなかったか」

 玄関前で誠たちに追いついた。

「陣九朗、案外早かったな。用事は済んだのか?」

「ああ、んじゃ、戻ろうか。急いでメシの支度もしないといけないしな」

 玄関をくぐったとたん、

「う、これは…」

 酒くさい。猛烈に酒くさい。
 アルコールは入ってないんじゃなかったのか?

「お帰り陣九朗」
「戻ったか、陣九朗」

 部屋に入る前に、メイフィアさんとエビルさんが出迎えてくれた。
 誠たちは二人に挨拶だけして部屋の中へと入って行った。

 二人とも、見た感じ酔ってはいないみたいだが、

 じ〜〜〜〜〜〜〜〜っ

「? なによ、そんなにじ〜っと見て?」
「どうかしたのか?」

 どうやらシラフらしい。

「メイフィアさん、あのお酒、アルコール入ってたんですか? やたらと酒くさいですけど」

「酒くさい? それは陣九朗だけだと思うわよ。
アルコール入ってなかったみたいだし。ただ、他の物は入ってたけど」

「げっ…あんまり聞きたくないですが、なにが入ってたんですか?」

「酔いの元。そういった成分が入ってたみたいね。
あたしには全然効かなかったけど。しばらくすれば体の中で水になるみたい。
陣九朗がかいだ匂いはみんなから出てる酒気だと思うけど?」

 なるほど、仙桃や酒泉のひょうたんみたいなもんか。
 いっつも酒飲んでりゃ効果も薄れるってか?

「別にそういったわけじゃないんだけどね」

 う、考えがばれてる。

「と、ところで、メイフィアさんには効かなかったみたいですが、他のみんなは?」

「私は飲んでいないのでな。酒は、あまり得意ではない」

 なるほど、エビルさんは宴会のとき、あまり飲まないでみんなの世話をするタイプらしい。

「ルミラ様は酒には酔わないはずなんだけど…酔ってるみたいだったし。
他の子達は全滅ね。なんか、やたらと楽しそうだったけど」

 はぁ、そうですか。

 確かに部屋の中からは妙な笑い声とかが聞こえてきたりもするし。
 とにかく、自分も目で現状を見ないと始まらないな。
 はぁ、気が重い。

 っと、そのまえに。

「メイフィアさん、これどうぞ」

 俺は、持っていた袋から目当ての物を見つけるとメイフィアさんに渡した。
 それは干物屋で見つけた、いわゆる『ドブロク瓶』に入った日本酒だ。お猪口付き。
 正式な名前は知らないが、なんとなくわかるっしょ?

「ありがと、もらっとくわ」

 心なしか少しうれしそうにして奥のほうに歩いていく。

「あれ? どこに行くんですか?」

「今日は月がきれいだから、月見酒、なんてね。
2階のテラスで飲むことにするわ」

 月見酒か…後でつまみでも持っていってあげよう。

「陣九朗、そろそろ部屋に入らないか?」

 エビルさん、先に入ってればいいのに。
 …待っててくれたのか?

「そうですね。そこはかとなく、嫌な予感もしますが」

「おそらく気のせいではないな、それは」

 少しはフォローしてくださいな。


 俺は、意を決して部屋への扉を開けた。




 つづく!














おまけ


「うう〜、おなかすいた〜」

「ルミラ様、我慢です。もうすぐ陣九朗のところにつきますから」

「わかってるわよ。ところでメイフィア、例の作戦、アレイには言ってないでしょうね?」

「もちろんです、今日はエビルもいることですし、いざとなれば…」

「ふふっ、悪く思わないでね、陣九朗君。
吸血鬼の生理的欲求ってやつなんだから。ふふ、ふふふふふふ」


「たまさん、なんだかルミラ様のご様子がおかしいように見えるのですが、何か知りませんか」

「何もしらにゃいにゃりん。(メイフィアに口止めされてるニャロメ。言ったらひどい目にあうにゃりん)

「??????」


「あれ? ルミラ先生、それにみんなも。なにやってるんですか?」

「あれ、誠さん?」


 陣九朗のところに、宅配便が届いたころのみんな。



おしまい



うしろがき (後書きじゃい)

陣九朗 『なんで前後編なんだ?』

帝音  「いや、始めはただのお馬鹿SSにしようとしたんだが、
      登場人物の数が増えてしまってな」

チキ  「確かに、ちょっと多いような気がしますね」

リーナ 「実力もないのに、こんなに出してだいじょうぶなの?」

陣九朗 「大丈夫なわけないだろう。
      現に、HtHメンバーで、まともな出番があったの、誠だけだし」

チキ  「こんなことで、後半だいじょうぶなんでしょうか?」

リーナ 「すっごく心配。しかも…」

陣九朗 「しかも? なんだリーナ」

リーナ 「前後編じゃなくて、前中後編になるかも」

チキ  「ありそうですね、帝音さんですし」

陣九朗 「帝音だしな」

リーナ  「帝音だしね〜」

帝音  「お前ら、言いたい放題…」



ひとまず・了


<コメント>

誠 「お前の親父って……変わった人だな?」(^_^;
陣九郎 「ほっとけ……」(−−メ
誠 「しまいにゃ『支〇輪』とかも送ってきそうだな?」(^_^;
陣九郎 「勘弁してくれ……それ、ある意味シャレになってない」(−−;
誠 「もしかして、チキさん達と知り合った経緯って、そんな感じだったりして?」(−o−)
陣九郎 「…………」(−−;