陣九朗のバイト IN Heart to Heart

第七弾




 現在午前3時。

 こんな時間に起きてるのはコンビニの店員かトラックの運ちゃんか漫画家か……、
 結構いるな。

 それはさておき、ここでもやたらと朝の早い人物がいた。

「……朝か」

 陣九朗である。



〜 ある日の行動・陣 〜



「おはようございまふぅ〜〜……」

 俺がいつものように出かけようとすると、チキがパジャマのまま部屋から出てきた。

「チキ、いつも言ってるけど別に見送りなんかしなくていいから」
「いえ…そういふわけひはいきません。陣九朗さんは……」

 …………………

「くぅ〜〜〜〜ZZZZZ」
「…ありがとな、チキ」

 立ったまま眠ってしまったチキをそっと抱えると、チキの部屋のベットにそっと寝かした。
 そのまま起こさないように家を出た。



 午前4時30分

「おはよう、雛山さん!」
「津岡くん! いつも早いね〜!」

 俺が二地区めの新聞を配っている最中、偶然雛山さんと会った。
 そういやこの辺は雛山さんが担当している地区だったな。
 浩之の家もすぐ近くだし。

「津岡君、前から気になってたんだけど…」
「なんだ?」
「津岡君って…いくつバイトしてるの? いろんなところで会うよね?」

 そういわれてもな……、

「とりあえず新聞配達が二地区分。牛乳配達が一地区分。
パン屋で仕込みのバイト、花屋と菓子屋で店内業務、
ビル清掃に本屋にバイク便に……雛山さん?」
「…津岡君、それ全部一日でやってるの?」

 驚いた顔で聞いてくる。

「んなまさか。
一日に掛け持ちできるのは、時間の都合でせいぜい5つぐらいだな。
ビル清掃とかの時間がかかるやつが入ってたら2つぐらいになるけど」
「それでも十分すごいよ……」
「でも最近はコンビニの店長もやってるからバイトは控えてるんだけどね」
「そ、そうなんだ」



 午前7時

「あ、おかえりなさい」

 配達のバイトを終えて家に戻ると、チキが朝ご飯の仕度をしてくれていた。
 奥から漂ってくるこの香りは…、

「大根の味噌汁にだし巻き卵と見た」
「正解です。陣九朗さん、リーナさんを起こしてきてくれませんか?」
「了解。先に並べててくれ」

 まっすぐリーナの部屋に向かう。
 とりあえず扉をノックする。

「おお〜いリーナ、朝飯だぞ〜〜」

 ………いつものことだが、反応なし。

 俺は扉を開けて部屋の中へ入る。

「……いつもながらすごい寝相だな」

 本人の名誉のため、露骨な描写は避けることにするが…、
 どうやったらベットの敷布団の下に潜り込めるんだ???

「おお〜〜い、リーナ。お〜き〜れ〜」

 ゆさゆさと体をゆする。
 ついでに頬をつまんで引っ張ったりもする。むみょ〜〜ん。

「うう〜〜ひんひゃん、いひゃいひょ〜〜」

 お、起きたな。

「うにゅ〜〜〜じんちゃんおはよ〜〜〜〜ZZZ」
「寝るな!!」
「じょうだんだよ〜〜〜ZZZ」
「……おい」
「冗談だってば」

 …毎朝こいつは……、

「ほら、さっさと着替えて来いよ。早くしないと先に食っちまうぞ」
「ああ〜〜、ちゃんと待っててよ〜〜」

 そう言って俺の目の前で服(下着込み)を脱ぎ始める。
 俺はとっととチキの待つ食卓へと戻ることにした。
 ……毎朝のことだしな。



 午前8時30分

 今日は特にバイトも入れてないのでゆっくりしようと思ってたのだが…、

 チャチャチャン、チャ、チャン、チャチャチャン、チャ、チャン、チャチャチャ〜〜

 携帯の着信音が響いた。
 ちなみに着メロは『常世之篝火』だ。メール着信は『螺旋抄』。
 ……………誰もわかんねえっての。

「はいもしもし、あ、どうも……はい?
 ……はい…はい…わかりました。すぐ行きますんで」

 バイク便の助っ人か。
 やれやれ。サボるようなやつを採用するなよ。

「チキー! バイト入ったから行ってくるー」
「はーい。気をつけていってきてくださーい」

 洗濯場のほうから返ってきた返事を確認して、俺はバイクを出しに行った。



 午前9時40分

「毎度、ありがとうございましたぁ!」

 よし、これで届け物は終わりっと。
 バイク便のバイトはバイクで走れるから楽しいやね。

「そろそろコンビニに行くか、レジの本点検もしないといけないしな」

 バイク便の会社に終了の連絡を入れ、そのままコンビニへ向かった。

 ……………

「おはよーー」
「あ、店長。おはようございます」

 店に入ってすぐ、朝のバイトの子達と挨拶を交わす。

「本点検、終わった?」
「はい、1レジ、2レジともに異常なしです」

 俺は点検表に目を走らせ、続いてレジのほうを確認する。
 どうやら異常はないらしい。

「ご苦労さん。二人ともあがっていいよ」

「それでは」
「おつかれさまでした〜」

 二人とも奥の事務室の方へ入っていった。
 そういえば今日の昼からは誰が入ってるんだ?

 俺はレジの後ろに張ってあるシフト表を目で追った。
 ちなみに、事務所のほうにも同じものがはってある。

「…っと、アレイさんと柏木…じゃなくて柏本さんか。
そういえば、いくつか前のバイト先にいた耕一さん、元気にしてるかな?
あの人からは強い力を感じてたんだが、それが何かまでは聞けなかったしな…」

「店長、おはようございます!」

 おや、いつのまにかアレイさんが来ている。
 少しボーっとしていたみたいだな。

「アレイさんおはよう。今日は今から終わりまでだけど大丈夫か?」

 シフト表ではアレイさんは10時から夜の22時までとなっている。
 休憩時間を除いても実質11時間の労働になる。
 ちなみに、コンビニなのに24時間営業じゃないのは、
 夜間に開けてたころ、客数が一桁しかなかったためだ。

「大丈夫です。柏本さんもいますし、夕方からも一人じゃないですから」

 ルルルルル……ルルルルル……

 事務所の電話が鳴っている。
 子機がレジの後ろにあるのでそちらをとる。

「はい、こちら…ああ、柏本さん…… そうか、じゃあしょうがないな」

 ルルルルル……ルルルルル……

 受話器を置いたとたん、また鳴り始めた。

「もしもし? はい……どうしても? はい…はい……わかった」 

 はぁ。

 俺は受話器を置いてからため息をついた。

「あの…どうかされたんですか?」

 アレイさんが心配そうに聞いてくる。

「……柏本さんも夕方の子も今日は急用でこれないって」
「…え? じゃあ、終わりまで私一人ですか?」

 さすがにそれはな……、
 ……今日は休むつもりだったんだけどな〜〜はぁ。

「俺も今日は終わりまで入ることにするわ。アレイさん一人だと大変だろうしな」
「ありがとうございます! 
やった! 陣九朗さんと夜まで一緒♪
「ん? なんか言った?」
「いいえ、何にも♪」

 なんか、やたらと楽しそうだな。
 いいことでもあったのかな?



 ……現在13時、つまり、昼の1時である。

「お〜す。陣九朗、元気か?」

 店に入ってくるなり、まっすぐレジの方へ来る。

「おう、浩之か。相変わらず目つきが悪いな」
「ほっとけ! アレイも元気そうだな。ルミラ達もちゃんとやってるか?」

 隣にいたアレイさんにも話し掛ける。
 どうでもいいが、浩之ってホントに飾らない性格してるよな。
 (具体的に、どこがとは言わないが)

「はい、ルミラ様たちは……相変わらずですね」
「…そうか」

 まーたルミラさんなんかやったのかな?
 たとえば…空腹に耐え切れず誠を襲ったとか。
 ……そんなことしたら死んでるよな、ルミラさんの方が。

「で、今日は何の用だ浩之?」
「あ? ああ、特に用があったわけじゃねーんだけど…
近くを通りかかったからついでに寄ってみただけだ」 

 そう言って俺とアレイさんを交互に見る浩之。
 なんか怪しいが…、

「ま、俺はそろそろ帰るぜ。お邪魔しちゃ悪いしな」
「邪魔? 何のことだ?」
「いいからいいから。じゃあな、アレイ、がんばれよ!」
「は、はい!」

 そう言って足早に店を出て行った。
 なんだったんだろう??
 アレイさんのバイトの激励にでも来たのだろうか?
 う〜〜ん、謎だ。



 ……月も輝く23時

「遅くまでごめんな」
「いえ、私が勝手に待ってたんですから」

 先に帰るように伝えたのだが、アレイさんは閉店業務が終わるまで待っていてくれた。

「せっかくだからアパートまで送ってくよ。バイクの……あ、しまった」
「どうかしたんですか?」

 俺は少しバツが悪く頭を掻いた。

「予備のメット持ってくるの忘れた。悪いけど歩きでいいか?」
「はい。全然かまいませんよ!」

 元気よく答えるアレイさん。
 あ、そうそう。一応チキに連絡入れとかないとな。

 俺は携帯を取り出して家のほうへとかけた。

『はい、津岡ですが』

「チキか? 俺だけど」

『陣九朗さん? どうしたんですか、今日はコンビニの方はなかったのでは?』

「うん、まぁそうだったんだけど、ちょっと用事が出来てな。
店はもう閉めたんだけど」

『じゃあ、今から帰ってくるんですね?』

「いや、アレイさんが一緒でな。アパートまで送ってから帰るわ。
遅くなるだろうから先に寝てていいぞ」

『……そうですか。気をつけてくださいね』

「じゃあな」

『あ、あの、陣九朗さん』

「ん、なんだ?」

『……いえ、なんでもありません。早く帰ってきてくださいね』

 プツ、ツー、ツー、ツー…

 切れた。何だったんだろう?

「陣九朗さん、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。んじゃ、行こうか」

 それから俺達は少しだけ時間をかけて、ルミラさんのアパートまで向かった。



 ……現在午前0時。

「ただいま〜」

 静かに玄関のドアを開け、体を内に滑り込ませる。
 電気がついてないところを見ると、もう二人とも眠ってるんだろう。

 少し汗をかいていたのでシャワーだけでも浴びようかと思ったが、
二人が起きてしまうかもしれないと思い直し、明日の朝に浴びることにした。
 夜中の風呂場って、結構音が響くんだよな。

 俺は静かに自分の部屋のほうへ向かい、

「……?」

 台所のほうに明かりがともっているのを見て動きを止めた。
 そのまま明かりのほうへ足を向ける。

「……う、ん… 陣九朗様……」
「チキ?」

 どうやら眠っているようだ。
 …俺を待っててくれたのか?
 ったく、先に寝てていいって言ったのに。

 俺はチキをそっと抱き上げるとチキの部屋へと向かった。

(なんだか…少しやせたんじゃないか?)

 朝に抱き上げたときには気がつかなかったが…、
 昔に比べるとなんだか軽くなっているような気がする。

 それだけ苦労かけてるってことなのかもな。
 考えてみりゃ、家の事はみんなチキがやってくれてるんだもんな。
 昔から…ずっと…、

(チキ、いつもありがとな)

 俺はベットで眠っているチキの髪をそっとかきあげ……、



 ………そしてまた朝が来る。




おしまい































やっぱりある。おまけ

「チキちゃん、今日は朝からご機嫌だね〜〜。どしたの?」

「ふふ。昨日、とっても素敵な夢を見たんです」

「へえ〜… ね!ね! どんな夢か教えてよ〜!」

「それは、秘密です♪」

「あ〜!そう言われると気になるよ〜〜
ねぇ、陣ちゃんも気になるよね〜〜!?」

「あ? い、いや。俺は別に?」

「ぶ〜〜。陣ちゃんノリ悪いよ〜」

「気にすんな。そんなことより飯だメシ!」




おわり



『何奴!』『後書きにございます』

 今回は陣九朗の一日を書いてみました。
 ええ、比較的平和な一日ですね。ルミラさんにたかられることも無かったし。

『別にいつもたかってるわけじゃないわよ!!』

 あ、それは失礼。ところで、予備校の仕事は終わったのか?

『うん、これから少し個人授業をしようかな、な〜んて♪』

 …お〜い陣九朗、ルミラさんを見張ってるように〜〜。

『あ! なによそれ! ずるいわよ〜〜(泣)』


(了)


<コメント>

誠 「うーむ……お前って元気だよな」(^_^;
陣九郎 「ん? 何でだ?」(・_・?
誠 「だってさ、あんなにたくさんバイトしてるのに……」(−−;
陣九郎 「まあ、趣味だしな……生活もかかってるし……」(^_^;
誠 「俺も何かやろうかな?」(−−;
陣九郎 「何なら、俺の店で働くか?」(^▽^)
誠 「いや、いい……お前から金貰うわけにはいかねーだろ?」(−−;
陣九郎 「別に問題無いぞ」(・o・)
誠 「そうか? じゃあ、いざとなったらお言葉に甘えさせてもらうかな?」(^_^)
陣九郎 「おう。いつでもこい。ところで、お前って、生活費はどうしてるんだ?」(・_・?
誠 「親からの仕送り……後は、ネットでソフト売ってる」
陣九郎 「ほう……どんなソフトなんだ?」(・_・?
誠 「ま、色々とな」(^_^;
陣九郎 「まさか、悪魔召喚プログラムを……」(−−;
誠 「ンな物騒なモンを売るかっ!!」(−−メ