Heart to Heart SS

  番外編「Untitled」






 今日はさくらと、久方ぶりにあかねの家へ遊びに来た。

「いらっしゃい! まーくん、さくらちゃん!」
「おっす、あかね」
「おじゃましまーす」

 あかねの家に上がり込んだ俺達は、夕方までの時間を3人で
楽しく有意義に過ごした。久しぶりに3人でたれてみたり、
プラモを組み立てたり、と、まぁ、いろいろ遊んだ。

 そして、そろそろ帰る時間も近付いてきた時…。

「お、なんか沢山映画が有るな」

 俺はビデオデッキの側に並べられたビデオテープの山を眺めながら、
云った。

「あかね、これいくつか借りてっていいか?」
「うん、良いと思うよ」
「おう、サンキュ」

 あかねに許可を貰った俺は、テープの山からめぼしいものを物色し始めた。

「ほとんどはお母さんの趣味だって」

 俺がテープのラベルに書かれたタイトルのいくつかを確認し終わったと
同時に、あかねがそんな事を云った。

「…あやめさん、ジャッ○ー・チェンが好きだったのか」

 ――手にとったテープのラベルには、『W○o am I?』と書かれていた。


「ん、こんなもんかな…」

 選び抜いた3本のビデオテープを傍らに置き、俺はテープの山を整理し始めた。
なんか、こういうのって整理しとかないと気がすまないんだよな。え?じゃあ
自分の部屋もきちんと整理しろって? …それとこれとは別だろ?ま、勘弁してくれ。

「おや?」

 奥の方に、白いケースに入ったラベルの貼られていないテープが見つかった。

「これは…?」

 俺はそのテープを手に取ると、まじまじと見つめた。もしかすると……これは…
ひょっとして…あかねのお父さん秘蔵の
アダルトビデオ!?

 …ゴクッ。
「「まーくん?」」


 
ギクッ!!


 ふいに背後からさくらとあかねに声を掛けられ、心臓が飛び出しそうになる俺。

「選び終わった?」
「あ、ああ…」
「どうしたんです?まーくん?」
「い、いや、なんでもない」

 俺は慌てて、4本のビデオテープを脇に抱えた。ソレを見て、あかねがスーパーの袋を
俺に差し出した。

「はい。これ、テープ入れ」
「あ、サンキュ。それじゃ、また明日な」
「うん、バイバイ!」

 そして俺とさくらは、あかねの家を後にした。




「さ、見てみますか♪」

 夜もたっぷり更けた頃、俺はあかねの家から持って来たラベル無しのビデオを
鑑賞する事にした。

 …さくら、あかね、エリア、許せ。

 とりあえず、心の中で謝っておく。そして、テープをケースから取り出し、
デッキにセット…

「…って、ちょっと待った」

 俺は、ふとあることを思い出した。いつか見たホラー映画。ソレは確か、小説から
映画化されて話題を呼んだ作品だ。

 そして俺はある考えに辿り着く。
これはかの
『呪いのビデオ』じゃないのか? と…。

 …まさかな?いや、でもその可能性は否定できないかもしれない。しかし或いは
そうかも知れないし…だがそんなものが現実に存在するかと云ったら、それは大いに
疑問だ…しかし…しかし…。

「…ええいっ!呪いだろうがなんだろうが来やがれってんだ!!」

 俺は不安を振り切る様にテープをデッキに差し込み、再生ボタンを押す。
もちろん、念のためにティッシュ箱を近くに引き寄せておくのも忘れちゃいない。(笑)

「…頼むから、
井戸を覗き込む老人の顔だけは映らないでくれよ」

 長く続く砂嵐。小さいながらも不安がつのる。

 やがて、唐突に砂嵐が終わり、画面に何かが写し出される。そこには…。

「…」

 …。

「…」

 …。

「…」

 …。

「…」

 …。

 ザァー−−−−−−…

「………
なんでこんな映像がっ!?

 内容は、俺とさくらとあかねの、赤ん坊時代の頃の映像だった。しかし…

「…俺とさくらとあかねの関係って、こんな時から既に約束されていたんだろうか?」

 そんな事を呟きながら、もう一度ビデオを見返す。編集の跡もない、紛れもない事実だ。

「あやめさんやはるかさんが見たら…絶対喜ぶだろうな。とくにはるかさんなんか、
『あらあらあらあら♪』とかって…」

 俺は苦笑しつつ、テレビとビデオデッキの電源を落とした。そして、鏡になった
TVのブラウン管に目をやる。写っていた。何かがいる、俺の後ろに。背筋をつ、と
汗が伝った。間違いなく、それは俺の方を見ている。
 俺は恐怖と緊張に耐えきれずばっと振り向く。
そこには、
白い服を着た女が…!!



「うぎゃああああぁぁぁぁっ!!!」

「きゃっ!?」

 …エリアだった。(笑)

「なんだ、エリアか…脅かさないでくれよ」
「びっくりしたのはこっちですよ…誠さん、いきなり大声あげるから…」

 互いに苦笑しあう。しかし、マジでほっとした。ホントに良かった、
山○貞○じゃなくて。

「それにしても…」
「ん?」
「赤ちゃんの頃の誠さん達って、
あんなに可愛かったんですね♪」

「………」

 見られてしまっていたか…。ま、いいか。エリアは俺達の
小さい頃を知らないからな。…しかし、アレは俺自身、忘却の彼方
だったけどな。ま、赤ん坊の頃なのだからしょうがない。

「…私達の間にも、あんな可愛い子供が生まれると良いな…」
「えっ」

 俺とエリアは顔を見合わせた。

 かあぁぁぁ〜……

 エリアの顔がみるみるうちに紅潮していく。俺も、
ちょっとこっぱずかしくなって、そっぽを向いてしまった。

「…ごめんなさい、私ったら、はしたない事を…」

 そうつぶやくと、エリアはうつむいてしまった。そんなエリアの頭に
俺はポンと手を乗せると、そのまま撫でてあげた。

 なでなでなでなでなでなでなでなで…

「あ…(ポッ☆)」
「大丈夫だよ」
「え?」
「エリアはこんなに可愛いんだ。だから、生まれて来る子供だって
とても可愛いに決まってるって」

「…お戯れを(ポポッ☆)」

 違うだろ、エリア、と突っ込みたいところだったが、
やめておいた。しかし、俺もよくもこんなこっぱずかしいセリフが
口をついて出て来るもんだ。我ながら感心するぜ。

「じゃ、寝ようか。おやすみ、エリア」
「………」
「…エリア?」
「………」

 エリアは上の空だった。目の前で手を振っても反応ナシ。
そこで、俺はちょっとしたいたずらを思い付いて、
横からエリアの顔に自分の顔を近付け…

「………ふーっ」
「うひゃぁっ!!?」

 耳に息を吹き掛けられたエリアは、思いっきりビビって素頓狂な声を
上げた。

「おー、いつものエリアに戻った…じゃなくて、気がついたか、エリア」
「あ、ま、誠さん…どうしました?」
「いや、もうこんな時間だから、おやすみって…」
「は、はい! おやすみなさい…」

 そう云って、そそくさと寝室へ行こうとするエリア。しかし…

 
つるっ!

「あうっ!?」

 
べしゃっ!!

 …コケた。まったく、マルチやうぐぅじゃないんだから、
何もないところでコケるなよな。

『うぐぅ、ボクうぐぅじゃないもん』
「うぐぅじゃないか。今、『うぐぅ』って云ったし」
『うぐぅ…』

 …今の会話は、聞かなかった事にしてくれ。(笑)




「…明日、さくらとあかねにも見せてやるかな?」

 ベッドに潜り込んだ俺は、そんな事を呟きつつ目を閉じた。

「…いや、やっぱやめとこう」

 眉を寄せてそう呟いた数分後には、俺はもう眠っていた。








 一週間後、俺は借りたビデオを返す為に再びあかねの家に赴いた。例のブツは、
元あった場所の更に奥に隠しておいた。

 しかし、それも四日後にはあやめさんに見つかってしまったようだが、
それは俺の知る由ではなかった…。

<おわり>


<コメント>

エリア「あ、あの……呪いのビデオって何ですか?」(・_・?
誠 「ああ、それはだな……(カクカクシカジカ)……とまあ、そういうものだ」
エリア「はあ……そうなんですか」
誠 「ま、言ってみれば『不幸の手紙』みたいなモンだな」
エリア「…………不幸」(−−;;
誠 「……はっ!!」(@o@)
エリア「……不幸……運が悪い……間が悪い……」(;_;)
誠 「しまった……『不幸』って単語はエリアの前では禁忌だったんだ」(−−ゞ
エリア「うう……どうせ私なんて〜〜〜〜〜」<(T▽T)>
誠 「あ〜っ! もう、わかったわかった!
   これからは俺がターップリと幸せにしてやるから……な?」
エリア「……ホントですか?」(;_;)
誠 「ああ……『なでなで』でも『だきだき』で『もさわさわ』でも、何でも好きなの言ってみ」
エリア「じゃあ、全部♪」\(^〇^)/
誠 「はいはい……じゃあ、部屋にでも行こうか」(*^ ^*ゞ
エリア「うふふふふ♪」(*^ ^*)v